特許第6054356号(P6054356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054356
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】結合組織再建のための支承体
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/08 20060101AFI20161219BHJP
   A61L 27/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   A61F2/08
   A61L27/00 Y
【請求項の数】7
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-239752(P2014-239752)
(22)【出願日】2014年11月27日
(62)【分割の表示】特願2011-145319(P2011-145319)の分割
【原出願日】2004年6月29日
(65)【公開番号】特開2015-44056(P2015-44056A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2014年11月27日
(31)【優先権主張番号】610362
(32)【優先日】2003年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507083478
【氏名又は名称】デピュイ・ミテック・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・ハマー
(72)【発明者】
【氏名】ハーブ・シュワルツ
(72)【発明者】
【氏名】プラサナ・マレイビア
【審査官】 石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特表平07−505326(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0044659(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/08
A61L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合組織支承体において、
互いに反対側に位置する第1および第2の繋留アイレットであって、複数本の生体再吸収性ポリマー繊維で作られており、開放領域を確定する、第1および第2の繋留アイレットと、
前記互いに反対側に位置する第1および第2のアイレットに隣接して設けられている第1および第2の結合領域であって、結合組織支承体の長手方向軸に平行な方向および前記長手方向軸に平行ではない方向に向いている複数本の生体再吸収性ポリマー繊維で作られた第1および第2の結合領域と、
前記第1および第2の結合領域に隣接して位置している中央セグメントであって、前記結合組織支承体の長手方向軸に平行な方向に向いている複数本の生体再吸収性ポリマー繊維から作られた、中央セグメントと、
を有し、
前記第1の結合領域は前記中央セグメントと前記第1の繋留アイレットとの間に形成され、前記第2の結合領域は前記中央セグメントと前記第2の繋留アイレットとの間に形成されている、結合組織支承体。
【請求項2】
請求項1に記載の結合組織支承体において、
前記第1および第2の結合領域の繊維は、ウィーブパターンをなして互いに接合されている、結合組織支承体。
【請求項3】
請求項1に記載の結合組織支承体において、
前記結合組織支承体は、前記第1の結合領域、前記第2の結合領域、および前記中央セグメントの少なくとも一部を被覆する生体適合性かつ生体再吸収性の材料を更に有している、結合組織支承体。
【請求項4】
請求項3に記載の結合組織支承体において、
前記生体再吸収性の材料は、ラップ、スリーブ又はシースとして前記第1の結合領域、前記第2の結合領域、および前記中央セグメントを覆って形成されている、結合組織支承体。
【請求項5】
請求項1に記載の結合組織支承体において、
前記結合組織支承体の少なくとも一部と関連した少なくとも1つの10mm未満の組織粒子を更に有し、当該少なくとも1つの10mm未満の組織粒子は、少なくとも1つの10mm未満の組織粒子から出て前記結合組織支承体に定着可能な有効量の生存細胞を含む、結合組織支承体。
【請求項6】
請求項1に記載の結合組織支承体において、
前記結合組織支承体は、複数の10mm未満の組織粒子を更に含み、
前記複数の10mm未満の組織粒子は、
(a)少なくとも1つの10mm未満の組織粒子が無骨組織タイプであり、
(b)少なくとも1つの10mm未満の組織粒子が骨組織タイプであり、
前記中央セグメントは骨組織タイプの組織粒子を含まない、結合組織支承体。
【請求項7】
請求項1に記載の結合組織支承体において、
前記結合組織支承体の前記生体再吸収性ポリマー繊維は、ラクチド、グリコリド、ジオキサノン、およびカプロラクトンから成る群から選択されたモノマーから作られたポリマー又はコポリマーから作られている、結合組織支承体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断裂又は損傷した結合組織、例えば靱帯や腱を再建したり置換する人工器具又はプロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
靱帯、腱又は他の軟組織をこれらと関係した体内の骨から完全又は部分的に分離することは、特に運動選手の間では比較的よく見られる障害である。かかる障害は一般に、これら軟組織に過度の応力が加わることに起因して生じる。例えば、組織を分離させる障害は、例えば落下のような事故、仕事に関連した活動中、競技中又は多くの他の状況及び(又は)活動のうち任意のものにおける過度の運動の結果として生じる場合がある。
【0003】
一般に「捻挫」という一般的な用語で呼ばれている部分的分離の場合、障害は、もし十分な時間が与えられると又、障害部を治癒中に過度の又は異常に大きな応力にさらさないよう注意していれば自然治癒する場合が多い。しかしながら、靱帯又は腱がその関連の1又は複数の骨から完全に分離した場合、又は外傷の結果として切断された場合、その結果として部分的に又は永続的に使えない場合がある。幸いなことに、かかる分離した組織を再び取り付けると共に(或いは)著しく損傷した組織を完全に置換する多くの外科的方法が存在している。
【0004】
かかる一方法では、体内の他の場所から摘出した自家組織移植片を用いて分離した組織を置換することが行われる。例えば、人の膝関節中の前十字靱帯は、膝蓋腱自家移植片又は膝窩腱を用いて置換すると共に(或いは)再建できる。膝蓋腱の中央3分の1を用いて脛骨から骨ブロック付き且つ膝蓋骨から骨ブロック付きで摘出される。本移植片は、高い初期強度を有すると共に固定を容易にする骨栓子を有するという利点がある。これら移植片を植え込むには、前十字靱帯の通常の取付け箇所のところに骨トンネルを脛骨及び(又は)大腿骨中に形成する。膝蓋腱移植片は、その端部の各々に骨栓子を付けた状態で摘出され、骨トンネル内に嵌まるよう寸法決めされる。次に、縫合糸を各骨栓子の外端部に取り付け、しかる後これを大腿骨及び(又は)脛骨トンネル中へ通す。次に、大腿骨栓子及び脛骨栓子を縫合糸の背後の適当な骨チャネル内へ挿入する。次いで、縫合糸をしっかりと引っ張って骨栓子を所望の場所に位置決めし、そして所望の引張度を靱帯移植片に及ぼす。最終的に、骨栓子を定位置に保持した状態で、干渉ねじ、クロスピン又は他の固定器具を用いて骨栓子を定位置にしっかりと係止する。膝窩腱移植片をこれと同様な仕方で植え込む。
【0005】
自家組織移植片を首尾よく用いて結合組織を置換する際、どの医学的処置であれそれと同様に、摘出手技には危険が伴う。2つの主要な関心事は、除去プロセス中における摘出部位の組織損傷及びドナー側の合併症である。摘出の際の合併症の結果として、膝蓋骨の骨折が生じる場合がある。他の場合、膝蓋大腿の痛みがドナー側の合併症に起因して観察される。しかも、摘出手技が首尾よく行われても、サンプルは、移植片に十分な組織供給源とならない場合があると共に(或いは)組織は、所望の品質又は首尾一貫性を備えていない場合がある。加うるに、首尾よく手術を行っても、患者が移植片を再び断裂させ、修正手術を必要とする場合がある。これらの理由のため、自家組織移植片の特性をもたらすことができる代替組織移植片源が要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
代替移植片の一例は、同種(同種異系)移植片組織である。同種移植片を用いた場合の利点は、ドナー側での合併症が無くなり、手術時間が短くなるということである。しかしながら、かかる移植片は、病気を伝染させ、免疫反応を誘発させる恐れが潜在的に存在する。また、移植片の機械的性質の首尾一貫性が無く、供給源が限られる。
【0007】
これらの理由で、最終的に滅菌され、合成材料又は生物学的に誘導された材料で作られた結合組織移植片を開発することが要望されている。従来、合成人工靱帯器具を用いる初期の結果は、将来有望であるように思われた。しかしながら、長期間にわたる使用結果、例えば1年以上の使用結果の示すところによれば、これら器具は機械的に破損した。これらプロテーゼは、患者の寿命に鑑みて永続的な置換手段として働くのに十分な強度及び耐久性を欠いていることが判明した。他のプロテーゼ、例えば合成材料で作られたものは、物理的性質が良好であるが、腐食を生じ又は骨の侵食を生じさせる場合がある。
【0008】
既存の技術にもかかわらず、置換又は強化されるべき生まれつき備わった組織の近似物となることができる結合組織インプラントが要望され続けている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は一般に、結合組織支承体であって、支承体の長手方向軸線に実質的に平行な方向に向けられた複数本の生体再吸収性ポリマー繊維及び支承体の長手方向軸線に実質的に横断する方向に向けられた複数本の生体再吸収性ポリマー繊維で形成された互いに反対側の第1及び第2の繋留セグメントを有する結合組織支承体を提供する。第1の繋留セグメントと第2の繋留セグメントとの間に位置した中央セグメントが、支承体の長手方向軸線に実質的に平行な方向に向けられた複数本の生体再吸収性ポリマー繊維で作られている。この構造により、組織の内方成長を容易にするのに十分な空所が中央セグメント内に形成される。
【0010】
繋留セグメントの長手方向且つ横断方向に向けられた繊維は、長手方向繊維と横断方向繊維が例えばこれら繊維をウィーブパターンに接合することにより相互に連結された結合領域を有するのがよい。結合領域は連続したものであってもよく、長手方向に向けられた繊維の1以上の領域が長手方向に向けられた繊維と織り合わされた横断方向に向けられた繊維を有する1以上の領域によって互いに分離されるように不連続のものであってもよい。
【0011】
本発明の繋留セグメントは、結合領域に隣接してアイレットを更に有するのがよい。アイレットは、支承体の固定を容易にするループ状又は開放領域を形成するよう結合組織を向けることによって形成されたものであるのがよい。
【0012】
中央セグメントの長手方向繊維は、互いに連結することなく、互いに平行に延びるのがよい。加うるに、中央セグメントの繊維は環状に向けられた繊維相互間で中央に形成された空間が存在するよう環状パターンに緩く束ねられたものであるのがよい。変形例として、長手方向繊維をブレード(編組)パターンに形成してもよい。
【0013】
本発明の支承体の繊維は、生体再吸収性ポリマー材料、例えばラクチド、グリコリド、ジオキサノン及びカプロラクトンから成る群から選択されたモノマーから形成されたポリマー又はコポリマーで作られる。
【0014】
本発明の別の実施形態では、支承体が、第1の繋留セグメント、第2の繋留セグメント及び中央セグメントの少なくとも一部を覆っている生体適合性生体再吸収性材料を更に有するのがよい。生体再吸収性材料は、生物学的物質、例えば自然に生じる細胞外マトリックス(ECM)物質であるのがよい。かかる自然に生じる一ECMは、一例を挙げると、小腸粘膜下組織である。生体再吸収性物質は又、ラップ、スリーブ又はシースとして第1の繋留セグメント、第2の繋留セグメント及び中央セグメントを覆って形成されたものであるのがよい。
【0015】
さらに別の実施形態では、本発明の支承体は、支承体の少なくとも一部と関連した少なくとも1つのみじん切りされた組織粒子を更に有し、少なくとも1つのみじん切りされた組織粒子は、みじん切りされた組織粒子から出て支承体の中に場所を占める有効量の生存細胞を含むようになっている。少なくとも1つのみじん切りされた組織粒子に加えて、支承体は、接着剤及び(又は)少なくとも1つの追加の生物学的成分を有するのがよい。
【0016】
本発明は又、支承体を用いて結合組織、例えば靱帯や腱を再建し又は置換する方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の組織支承体は、損傷し又は断裂した結合組織を置換し又は強化するインプラントとして有用である。この支承体は、置換又は強化されるべき生まれつき備わった組織の近似物となる。この支承体は、初期の機械的性質が生まれつき備わった組織と同等又はこれ以上であり、それと同時に組織の内方成長及び再生を支援する。時間の経過につれて、インプラントは劣化し、健常で機能的な組織によって置き換えられることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は一般に、結合組織、例えば靱帯又は腱の再建又は置換のための生体再吸収性支承体10を提供する。図1に示すように、支承体10は、互いに反対側に位置した第1及び第2の繋留セグメント又は領域12a,12bを有し、これら繋留セグメントは、支承体の繊維を互いに結合することができると共に患者の体内の支承体10と結合する組織固定器具を受け入れることができる。支承体10は、繋留セグメント12a,12b相互間に位置し、支承体の長手方向軸線に実質的に平行な方向に向けられた複数本の生体再吸収性ポリマー繊維で作られた中央セグメント又は領域14を更に有している。
【0019】
本発明の支承体は、好ましくは腱又は靱帯の代わりとなるのに十分な強度を持つ生体再吸収性ポリマー材料、例えばACLで作られているという点において特に有利であり、かかる支承体は、これが置き換わる障害のある結合組織の再生を可能にすると共に促進する。使用に当たり、支承体は、組織再生を促進する結合組織用の再吸収性のオフ・ザ・セルフ(off-the-self)置換手段となり、その結果、自家移植片インプラント、同種(同種異系)移植片インプラント及び永続的合成置換手段の欠点無く、損傷した結合組織の自然な置換が得られる。さらに、自家移植片代替物を提供することにより、本発明の生体再吸収性支承体は、同種移植片摘出手技と関連した危険を無くす。
【0020】
本発明の支承体10の繋留セグメント12a,12bは好ましくは、支承体10の長手方向軸線に実質的に平行な方向に向けられた複数本の繊維16及び支承体10の長手方向軸線に対し実質的に横断する方向に向けられた複数本の繊維18を有する。一実施形態では、長手方向に向けられた(「長手方向」)繊維16及び横断方向に向けられた(「横断方向」)繊維18は、支承体10をその端部のところで互いに結合する結合領域20a,20bを形成している。一実施形態では、結合領域20a,20bの長手方向及び横断方向繊維16,18は、長手方向及び横断方向繊維16,18でウィーブパターンを形成している。
【0021】
最も簡単な例では、1本の長手方向繊維又は繊維16のグループの一方の側とその隣の長手方向繊維又は繊維16のグループの反対側の側部が交互に位置することにより横断方向繊維18が長手方向繊維16と絡み合うように構成されたものであるのがよい。織編結合領域20a,20bは、長手方向繊維16と横断方向繊維18を互いに連結する種々のウィーブパターンから構成できる。当業者であれば、このウィーブを多くのパターンに基づいて構成することができ、しかも種々の特性、例えばウィーブ密度を有することができるが好ましくは、結果的に長手方向繊維16と横断方向繊維18を互いに結合するのに十分なウィーブが得られることは理解されよう。
【0022】
横断方向繊維は、一方向だけではなく二方向において長手方向繊維を互いに係止することができ、従って3次元の織編構造が作られるようになる。インプラントは、40%〜99%の実質的に長手方向フィラメント(x軸)、1%〜50%の実質的に直交する横断方向(y軸)フィラメント及び1%〜50%の実質的に横断するz方向フィラメントから成るのがよい。縦材は、長手方向及びz方向フィラメントから成り、横材はy方向フィラメントから成る。織編構造は、その耐摩耗性及び耐研磨性に鑑みて望ましい。この特性は、このグラフトを引っ掻く場合のある尖った縁部を有する骨トンネル内へこのグラフトを挿入するので靱帯の再建にとって重要である。
【0023】
長手方向繊維16と横断方向繊維18を互いに織編することに加えて、結合領域20a,20bを種々の他の方法で構成することができる。一変形実施形態では、横断方向繊維18のうち少なくとも何割かを長手方向繊維16の外部に巻き付けて長手方向繊維16と横断方向繊維18を固定してもよい。例えば、横断方向繊維18を長手方向繊維16に巻き付けると、結び目(knot)又は端止め(whipping)を形成することができる。当業者であれば、端止め、例えばアメリカンホイッピング(American Whipping )、セールメーカーズホイッピング(Sailmaker's Whipping)、ウエストカントリーホイッピング(West Country Whipping )等を形成するのに種々の方法があることは理解されよう。スタイルは変わるが、端止めは、同一の原理で働き、横断方向の1本の繊維(又は複数本の繊維)18は、長手方向繊維16にきつく巻き付けられ、横断方向繊維18の端部は、結び目又はタックにより固定される。端止めは好ましくは、横断方向の1本の繊維(又は複数本の繊維)18を長手方向繊維16を全て含む束に巻き付けることにより形成され、長手方向繊維16を小さな束にグループ分けして端止めするのがよい。一実施形態では、長手方向繊維16を大きな束の状態に互いに端止めし、大きな束に隣接して追加の端止めを用いてもよい。さらに、隣り合う端止めは、長手方向繊維16の小さな束から成っていてもよい。
【0024】
さらに別の実施形態では、結合領域20a,20bの長手方向繊維16及び横断方向繊維18を縫い付け(ステッチング)により互いに連結してもよい。長手方向繊維16を束の状態にグループ分けするのがよく、横断方向繊維18を束に繰り返し通してしっかりと引いて結合領域20a,20bを固定するのがよい。さらに、2次元ウィーブの2以上のプライを互いに縫い合わせることにより3次元ウィーブをシミュレートし又は複製するのがよい。編組及び(又は)編成も又用いてフィラメントを相互に連結するのがよい。当業者であれば、横断方向繊維18と長手方向繊維16を種々の他の方法で互いに連結することができることは理解されよう。
【0025】
さらに別の実施形態では、長手方向繊維16と横断方向繊維18を物理的に結合することにより、又は繊維を別の作用物質、例えば接着剤又はポリマーと物理的に結合することにより結合領域20a,20bの繊維を互いに連結することができる。フィラメントも又熱的方法により互いに結合することができ、かかる熱的方法としては、超音波結合、赤外線結合、レーザ結合又は加熱した電気的表面へのフィラメントの付着が挙げられるが、これらには限定されない。また、フィラメントを化学的手段により互いに結合することができ、かかる化学的手段としては、溶剤結合が挙げられるが、これには限定されない。また、フィラメントを適当な接着剤の塗布により互いに結合することができ、かかる接着剤としては、生体吸収性接着剤及び非生体吸収性接着剤が挙げられるが、これらには限定されない。最後に、上述の技術の組合せを用いて繊維又はフィラメントを互いに連結し又は結合することができる。加うるに、繊維を上述したように互いに連結し、次に物理的に結合すると、機械的連結強度を高めることができる。
【0026】
相互連結方法に関わらず、結合領域20a,20bをこれら結合領域が連続ではないように幾つかの部分に分けてもよい。例えば、図1に示すように、結合領域20a,20bは、互いに連結された長手方向繊維16と横断方向繊維18の領域と長手方向繊維16だけの領域が交互に並んだものであってもよい。図2に示す別の実施形態では、各結合領域20a,20bを長手方向繊維16と横断方向繊維18の連続ゾーンで形成してもよい。
【0027】
長手方向繊維16と横断方向繊維18の相互連結により得られる1つの性質は、結合領域20a,20bが好ましくは、締りのなさを最小限に抑えると共に生まれつきの組織の剛さに類似した剛さを達成するよう互いに連結されることにある。弾性率は、繊維を構成するのに用いられる材料が何であるか及び長手方向繊維16と横断方向繊維18を互いに連結するのに用いられる方法に応じて変化する性質である。好ましくは、十字靱帯再建の場合、移植片の結合領域20a,20bの剛性は、100N/mmよりも高く、好ましくは150N/mmよりも高い。
【0028】
結合領域20a,20bの一機能は、支承体10を例えば組織固定器具を受け入れることにより患者の体内に繋留できることにある。組織固定器具は、支承体10を貫通して伸びると共に(或いは)支承体10と組織領域との締り嵌めを形成することにより支承体10を取り付け又は繋留させることができる。本発明の支承体10に用いることができる例示の組織固定器具としては、ねじ、縫合糸、ステープル、ピン、ボタン及びこれらの組合せが挙げられる。
【0029】
結合領域20a,20bは、図3に示すような組織固定器具を受け入れる受け入れ領域21を形成するよう構成されたものであるのがよい。受け入れ領域21を形成するには、長手方向繊維16及び横断方向繊維18の織編、ホイッピング、編組又は縫い付けを行って繊維の無い開放領域又は繊維密度の減少した領域を形成するのがよい。使用に当たり、次に組織固定器具を1又は複数の結合領域に押し込むと、支承体を組織に固定することができる。
【0030】
一実施形態では、各繋留セグメント12a,12bは、図4に示すようなアイレット22を有するのがよい。適当なアイレット22は、開放領域26の周りにループ24を形成するよう結合領域から延びる一グループをなす繊維によって形成できる。好ましくは、アイレット22の開放領域26は、組織固定器具、例えば組織固定ピンを受け入れるよう適当に寸法決めされている。アイレット22の開放領域26を単独で又は固定中、移植片に張力を及ぼす縫合糸と関連して利用できる。
【0031】
好ましい実施形態では、繋留セグメント12a,12bのうち少なくとも一方は骨トンネル、例えば大腿骨及び(又は)脛骨トンネル内に取り付けられる。したがって、繋留セグメント12a,12bは、かかる骨トンネル内に嵌まるよう適当に寸法決めされたものであることが必要である。好ましくは、繋留セグメント12a,12bの長さは、骨トンネルの長さにほぼ等しく又はこれよりも短く、例えば約10mm〜80mm、より好ましくは約20mm〜60mmである。これと同様に、繋留セグメント12a,12bの直径も又、骨トンネル内に嵌まるようになっていることが必要である。繋留セグメント12a,12bの直径は、約2mm〜15mmであるのがよい。
【0032】
上述したように、本発明の支承体10は、繋留セグメント12a,12b相互間に設けられた中央セグメント14を更に有している。中央セグメント14は、長手方向に向いた繊維28を有し、かかる繊維は、互いに連結されていてもよく、或いは互いに連結されていなくてもよい。中央セグメント14は、これが置き換わる結合組織の機能性を発揮するようになっている。例えば、支承体10を前十字靱帯の置換手段として用いる場合、中央セグメント14の繊維28は、生まれつきの靱帯の性質をもたらし、組織内方成長を支える性質を備えている。
【0033】
中央セグメント14は好ましくは、この置換対象の結合組織に置き換わるのに十分な長さを有している。当業者であれば、中央セグメント14の長さは患者の体の大きさ及び支承体10の意図した用途に応じて様々であることは理解されよう。例えば、当業者であれば、サイズは、前十字靱帯の再建、後十字靱帯の再建又は屈筋腱再建の際にこのインプラントの使用に合わせて大幅に様々であることは認識されよう。
【0034】
一実施形態では、中央セグメント14の繊維28は、互いに連結されておらず、実質的に長手方向に向けられた繊維28の束をなした状態で繋留セグメント12a,12b相互間に延びている。図5(A)乃至図5(F)は、中央セグメント14の例示の断面形状、例えば長円形(図5(A))、円形(図5B)、矩形(図5(C)及び図5(D))及び不規則な形状(図5(E))を示している。加うるに、中央セグメントの長手方向繊維28は、図5(D)では密に充填され、図5(E)及び図5(F)ではルーズに束ねられている。
【0035】
中央セグメント14の長手方向繊維28がルーズに束ねられている場合、これら長手方向繊維は、これらがひとまとまりになって図5(F)に示すような中央空間30を形成するように環状パターンに差し向けられるのがよい。環状パターンは、処理の方法で、例えば長手方向繊維28を結合領域20a,20b内で結合する前に僅かな撚りを長手方向繊維28にかけることにより形成できる。繋留セグメント12a,12b相互間の長手方向繊維28の例示の撚りは、約0°〜720°であるのがよい。
【0036】
変形例として、中央セグメント14の繊維28を互いに連結してもよい。例えば、長手方向繊維28を中央セグメント14に沿ってルーズに編組し又は撚り合わせるのがよい。種々のブレード(編組)パターンを用いることができる。例えば、中央領域14の長手方向繊維28を幾つかの束の状態にグループ分けし、束を編組してもよい。ブレードパターンは好ましくは、中央セグメント14の繊維28を整然としたパターンに差し向けるものである。
【0037】
中央セグメント14の繊維28の相互連結は、結合領域20a,20bに対し可撓性が高いという特徴を備えている。可撓性の向上は、中央セグメント14の繊維密度が低いことに起因している。というのは、繊維は詰め込まれておらず、しかも拘束されていないからである。繊維は好ましくは、特に繰り返し荷重下において或る程度動き、それによりボイド空間又は気孔を中央セグメント内に形成することができる。好ましくは、ボイド空間の最小量は、約14体積%である。結合領域20a,20bの密度の増大は、長手方向繊維16だけでなく横断方向繊維18をも含むことに基づいており、長手方向繊維16と横断方向繊維18は、例えば六方最密構造の状態に緊密に結合されている。
【0038】
物理的性質及び生まれつきの靱帯又は腱の機能性を真似た機能性をもたらすことに加えて、中央セグメント14は、生まれつきの靱帯又は腱の再成長及び置換を開始させるよう支承体10に組み込むことができる組織フラグメント(断片)、細胞又は生物活性剤を受け入れて保持する領域となる。繊維密度が低いことにより、組織フラグメント又は細胞を支承体10内に保持することができ、しかも支承体10に定住させることができる。中央セグメント14の繊維28が中央空間30を形成するよう環状パターンで構成されている場合、組織フラグメント、細胞又は生物活性剤を中央空間30内に播種させることができる。セグメント12a,12bは又、骨再建及び移植片と宿主組織の一体化を促進するよう組織フラグメント、細胞又は生物活性剤を受け入れて保持することができる。
【0039】
本明細書で用いる「長手方向」及び「横断方向」という用語は、繊維(16,18,20)の延びる全体的な方向を指示しており、例えば図3及び図4に示すような実質的に長手方向及び横断方向繊維を含む。長手方向の向き及び横断方向の向きからの許容可能なばらつきとしては、非限定的な例として繊維を互いに連結することにより又は撚りを繊維にかけることにより生じるばらつきが挙げられる。例えば、支承体の一方の端部から他方の端部まで延びる長手方向繊維は、これが編組又はウィーブ中の他の繊維に出会うと上下する場合があるが、繊維は全体として、長手方向に延び、長手方向に延びる隣の繊維に実質的に平行な経路を辿る。
【0040】
支承体は好ましくは、生体適合性生体再吸収性材料で作られ、従って結合組織の置換又は再建のために患者の体内に植え込まれた後、支承体は時間の経過につれて次第に劣化するようになる。最初に植え込まれたとき、支承体は好ましくは、生まれつきの結合組織、例えば靱帯と類似した引張強さ及び弾性率を備えている。前十字靱帯又は後十字靱帯用の支承体の好ましい引張強さは長手方向において、約500N〜4,000N、より好ましくは約1,000N〜2,500Nである。支承体の好ましい剛性は、約50N/m〜300N/m、より好ましくは約100N/m〜200N/mである。支承体の繊維が再吸収を行って生まれつきの組織によって置き換えられると、繊維の強度は減少する場合がある。したがって、支承体の再吸収プロフィールは、再生プロセス中、組織を補強しこれに構造を与えるのに十分長いものであることが必要である。当業者であれば、支承体の所望の用途に応じて適当な再吸収プロフィールを決定することができ、支承体の構成に用いられる材料を変えることにより吸収プロフィールを調整することができる。好ましくは、支承体が、再吸収に少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月以上、より好ましくは少なくとも10ヶ月かかるようゆっくりとした再吸収プロフィールを有する。
【0041】
本発明の一実施形態では、支承体の繊維は生体適合性ポリマーから形成されたものであるのがよい。本発明による繊維を作るのに種々の生体適合性ポリマーを用いるのがよく、かかる生体適合性ポリマーとしては、合成ポリマー、天然ポリマー又はこれらの組合せが挙げられる。本明細書で用いられる「合成ポリマー」という用語は、たとえポリマーが天然に産する生体材料から作られていても、自然界には見られないポリマーを意味する。「天然ポリマー」という用語は、天然に産するポリマーを意味する。支承体の繊維が少なくとも1つの合成ポリマーを含む実施形態では、適当な生体適合性ポリマーとしては、脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、チロシン誘導ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含むポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、ポリウレタン、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)及びこれらの配合物から成る群から選択されたポリマーが挙げられる。本発明で用いられる適当な合成ポリマーとしては更に、コラーゲン、エラスチン、トロンビン、絹、ケラチン、フィブロネクチン、でんぷん、ポリ(アミノ酸)、ゼラチン、アルギン酸、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、リボ核酸、デオキシリボ核酸、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ポリヌクレオチド及びこれらの組合せに見られる序列又は反復単位に基づく生合成ポリマーが挙げられる。
【0042】
本発明の目的上、脂肪族ポリエステルとしては、ラクチド(乳酸、D−ラクチド、L−ラクチド及びメソラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、ε−カプロラクトン、パラジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体である1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルフォリン、ピバロラクトン、α,αジエチルプロピオラクトン、エチレンカーボネート、エチレンオキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,6−ジメチル−ジオキセパン−2−オン、6,8−ジオクサビシクロクタン−7−オン及びそれらのポリマー配合物のホモポリマー及びコポリマーが挙げられるが、これらには限定されない。さらに、例示のポリマー又はポリマー配合物の非限定的な例としては、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシブチレート−コ−ヒドロキシバレレート、ポリオルトカーボネート、ポリアミノカーボネート、ポリトリメチレンカーボネートが挙げられる。本発明で用いられる脂肪族ポリエステルは、ホモポリマー又は線状構造、枝分かれ構造又は星形構造を有するコポリマー(ランダム、ブロック、セグメント、テーパードブロック、グラフト、トリブロック等)であるのがよい。本発明の目的上、ポリ(イミノカーボネート)は、ドンブ(Domb)他編,「ハンドブック・オブ・バイオデグレーダブル・ポリマーズ(Handbook of Biodegradable Polymers)」,ハードウッド・アカデミック・プレス(Hardwood Academic Press),1997年,p.251−272所収のケムニッツアー(Kemnitzer)及びコーン(Kohn)の論文に記載されているようなポリマーを含むと理解される。本発明の目的上、コポリ(エーテル−エステル)は、コーン(Cohn),ヨウネス(Younes)共著,「ジャーナル・オブ・バイオマテリアルズ・リサーチ(Journal of Biomaterials Research)」,第22巻,1998年,p.993−1009及びコーン(Cohn)著,「ポリマー・プレプリンツ(Polymer Preprints)(エーシーエス・ディビジョン・オブ・ポリマー・ケミストリー)(ACS Division of Polymer Chemistry)」,第30(1)巻,1989年,p.498に記載されているようなコポリマーエステル−エーテルを含むと理解される(例えば、PEO/PLA)。本発明の目的上、ポリアルキレンオキサレートとしては、米国特許出願第4,208,511号明細書、同第4,141,087号明細書、同第4,130,639号明細書、同第4,140,678号明細書、同第4,105,034号明細書及び同第4,205,399号明細書に記載されたものが挙げられる。ポリホスファゼン、L−ラクチド、D,L−ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、パラジオキサノン、トリメチレンカーボネート及びε−カプロラクトンから作られるコポリマー、ターポリマー及び高次混合モノマーを主成分とするポリマーは例えば、「ジ・エンサイクロペディア・オブ・ポリマー・サイエンス(The Encyclopedia of Polymer Science)」,第13巻,ウィリー・インターサイエンシズ・ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(Wiley Intersciences,John Wiley & Sons),1988年,p.31−41に所収のオールコック(Allcock)の論文及びドンブ(Domb)他編,「ハンドブック・オブ・バイオデグレーダブル・ポリマーズ(Handbook of Biodegradable Polymers)」,ハードウッド・アカデミック・プレス(Hardwood Academic Press),1997年,p.161−182に所収のヴァンドルプ(Vandorpe)他の論文に記載されている。ポリ無水物としては、化学式HOOC−C−O−(CH−O−C−COOH(式中、“m”は2〜8の整数)の二価酸から誘導されるポリ無水物及び最大12個までの炭素を持つ脂肪族アルファ−オメガ二価酸を有するそのコポリマーが挙げられる。アミン及び(又は)アミド基を含むポリオキサエステル、ポリオキサアミド及びポリオキサエステルは、次の米国特許明細書第5,464,929号明細書、同第5,595,751号明細書、同第5,597,579号明細書、同第5,607,687号明細書、同第5,618,552号明細書、同第5,620,698号明細書、同第5,645,850号明細書、同第5,648,088号明細書、同第5,698,213号明細書、同第5,700,583号明細書及び同第5,859,150号明細書のうち1以上に記載されている。ポリオルトエステルは、例えば、ドンブ(Domb)他編,「ハンドブック・オブ・バイオデグレーダブル・ポリマーズ(Handbook of Biodegradable Polymers)」,ハードウッド・アカデミック・プレス(Hardwood Academic Press),1997年,p.99−118に所収のヘラー(Heller)の論文に記載されたものである。
【0043】
本明細書で用いる「グリコリド」という用語は、ポリグリコール酸を含むと考えられる。さらに、「ラクチド」という用語は、L−ラクチド、D−ラクチド、これらの配合物、乳酸ポリマー及び乳酸コポリマーを含むと考えられる。
【0044】
エラストマーコポリマーも又、本発明では特に有用であり、かかるエラストマーコポリマーとしては、ε−カプロラクトンとグリコリドのモル比が約35:65〜約65:35、より好ましくは45:55〜35:65のε−カプロラクトン及びグリコリド(ポリグリコール酸を含む)のエラストマーコポリマー、ε−カプロラクトンとラクチドのモル比が約35:65〜約65:35、より好ましくは45:55〜30:70又は約95:5〜約85:15のε−カプロラクトン及びラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの配合物、乳酸ポリマー及び乳酸コポリマーを含む)のエラストマーコポリマー、p−ジオキサノンとラクチドのモル比が約40:60〜約60:40のp−ジオキサノン(1,4−ジオキサノン−2−オン)及びラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの配合物、乳酸ポリマー及び乳酸コポリマーを含む)のエラストマーコポリマー、ε−カプロラクトンとp−ジオキサノンのモル比が約30:70〜約70:30のε−カプロラクトン及びp−ジオキサノンのエラストマーコポリマー、p−ジオキサノンとトリメチレンカーボネートのモル比が約30:70〜約70:30のp−ジオキサノン及びトリメチレンカーボネートのエラストマーコポリマー、トリメチレンカーボネートとグリコリドのモル比が約30:70〜約70:30のトリメチレンカーボネート及びグリコリド(ポリグリコール酸を含む)のエラストマーコポリマー、トリメチレンカーボネートとラクチドのモル比が約30:70〜約70:30のトリメチレンカーボネート及びラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、これらの配合物、乳酸ポリマー及び乳酸コポリマーを含む)のエラストマーコポリマー及びこれらの配合物が挙げられるが、これらには限定されない。適当な生体適合性エラストマーの例は、米国特許第4,045,418号明細書に記載されている。
【0045】
一実施形態では、エラストマーは、ジオキサン溶剤中で形成される35:65のε−カプロラクトンとグリコリドのコポリマーである。別の実施形態では、エラストマーは、40:60のε−カプロラクトンとラクチドのコポリマーである。さらに別の実施形態では、エラストマーは、35:65のε−カプロラクトンとグリコリドのコポリマーと40:60のε−カプロラクトンとラクチドのコポリマーの50:50配合物である。
【0046】
本発明の繊維を体内環境内で時宜を得て再吸収可能な生体再吸収性又は生体吸収性材料から作るのがよいが、このようにするかどうかは任意である。インビボ(生体内)条件下における吸収時間の差も又、本発明の繊維を形成する際に2つの互いに異なるコポリマーを組み合わせる上での根拠となる。例えば、35:65のε−カプロラクトンとグリコリドのコポリマー(吸収性の比較的早いポリマー)を40:60のε−カプロラクトンとL−ラクチドコポリマー(吸収性が比較的遅いポリマー)と配合させると生体適合性繊維を形成することができる。用いる処理法に応じて、2つの成分は、ランダムに相互連結された同相であってもよく、成分は、2つの成分層相互間に良好に組み込まれたインタフェースを備える勾配(グラディエント)状アーキテクチャを有してもよい。
【0047】
例示の実施形態では、本発明の繊維は、ラクチド:グリコリドが95:5のポリマー、例えばエシコン・インコーポレイテッド(Ethicon,Inc.)から入手できるパナクリル(PANACRYL)から作られる。
一実施形態では、ポリマー配合物を用いて一組成から別の組成に勾配状アーキテクチャで移行する繊維を形成することが望ましい。この勾配状アーキテクチャを有する支承体は、生まれつき備わっている組織、例えば軟骨(関節、半月板、中隔、気管、耳介、肋骨等)、腱、靱帯、神経、食道、皮膚、骨及び血管組織の構造を再建し又は再生させる組織設計用途において特に有利である。明らかなこととして、当業者であれば、これとほぼ同等な勾配効果を得るため又は種々の勾配(例えば、種々の吸収プロフィール、応力応答プロフィール又は種々の弾性の度合い)をもたらすのに他のポリマー配合物を使用できることは理解されよう。例えば、かかる設計特徴は、本発明のプロテーゼと関連したみじん切り組織のサスペンションについての濃度勾配を定めることができ、組織フラグメントの高い濃度が支承体の一領域(例えば、内側部分)の方に別の領域(例えば、外側部分)よりも存在するようになる。
【0048】
また、組成相互間の勾配状移行を繊維の半径方向に向けることができる。例えば、支承体の繊維のうち何割かを同時押し出ししてシース/コア構造を備えた繊維を作ることができる。かかる繊維は、生分解性ポリマーのシースで別の生分解性ポリマーで構成された1以上のコアを包囲したものである。吸収性の遅いコアを吸収性の早いシースで包囲した繊維が、長期にわたる支持のために望ましい。
【0049】
別の実施形態では、繊維を生体吸収性ガラスで作ることができる。バイオガラス、即ちリン酸カルシウムガラス又は再吸収時間を制御するために種々の量の固体粒子が添加されたリン酸カルシウムガラスを含むシリケートが、ガラス繊維の状態に紡糸されて強化材料に用いることができる材料の例である。添加できる適当な固体粒子としては、マグネシウム、ナトリウム、カリウム及びこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
繊維が少なくとも1つの天然ポリマーを含む実施形態では、天然ポリマーの適当な例としては、フィブリンを主成分とする材料、コラーゲンを主成分とする材料、ヒアルロン酸を主成分とする材料、糖タンパク質を主成分とする材料、セルロースを主成分とする材料、絹及びこれらの組合せが挙げられるが、これらには限定されない。非限定的な例を挙げると、生体適合性支承体10をコラーゲンを主成分とする小腸粘膜下組織から作るのがよい。
【0051】
本発明の別の実施形態では、生体適合性セラミック材料を支承体の繋留セグメント12a,12bに組み込むことができる。適当な生体適合性セラミック材料としては、例えば、ヒドロキシアパタイト、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、生体活性ガラス、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、異種骨材料、同種骨材料及びこれらの組合せが挙げられる。本発明で用いられる適当な生体活性ガラス材料としては、リン酸カルシウムガラス又は再吸収時間を制御するために種々の量の固体粒子が添加されたリン酸カルシウムガラスを含むシリケートが挙げられる。リン酸カルシウム生体活性ガラス中に混入できる適当な化合物としては、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム及びこれらの組合せが挙げられるが、これらには限定されない。
【0052】
当業者には理解されるように、本発明の生体適合性繊維を形成する適当な材料は、幾つかの要因で決まる。これら要因としては、インビボ機械的性能、細胞結合、増殖、移動及び分化の観点における細胞に対する細胞応答、生体適合性及び任意的に生体再吸収(又は、生分解)運動学が挙げられる。他の関連要因としては、化学組成、成分の空間分布状態、ポリマーの分子量及び結晶性の度合いが挙げられる。
【0053】
本発明の別の実施形態では、支承体10は、互いに異なる組成の生体再吸収性繊維を含むのがよい。これら繊維は、種々の性質を持つ繊維の相補的混合物を形成するよう選択されたものであるのがよく、又は種種の組成を持つ繊維を支承体10に添加して特定の機能、例えば細胞付着を実行してもよい。一実施形態では、長手方向繊維を横断方向繊維とは異なる材料で構成してもよく、好ましくは長手方向繊維は、長い再吸収プロフィールを有する。
【0054】
長手方向及び横断方向生体再吸収性繊維に加えて、本発明の支承体は、支承体の少なくとも一部と関連した生存組織の少なくとも1つのサンプルを更に有するのがよい。本明細書で用いる「生存」という用語は、1以上の生存細胞を含む組織サンプルを意味する。事実上任意種類の組織を用いて本発明の組織再建支承体を構成することができる。好ましくは、用いられる組織は、軟骨組織、半月板組織、靱帯組織、腱組織、皮膚組織、骨組織、筋組織、骨膜組織、心膜組織、滑膜組織、神経組織、脂肪組織、腎臓組織、骨髄、肝臓組織、小腸粘膜下組織、膀胱組織、膵臓組織、脾臓組織、椎間板組織、胚組織、歯周組織、血管組織、血液及びこれらの組合せから選択される。組織支承体を構成するために用いられる組織は、自家組織、同種(同種異系)組織又は異種組織であってよい。
【0055】
支承体10が靱帯又は腱の再建に有用である場合、中央セグメント内に組み込まれる組織は好ましくは、再建されるべきタイプと同種の腱組織、靱帯組織、再建されるべきタイプとは異種の靱帯組織、滑膜組織、軟骨膜組織、軟骨組織、半月板組織、筋膜、皮膚及びこれらの組合せから成る群から選択された無骨組織である。一実施形態では、骨組織フラグメントを繋留セグメント12a,12bに付着させるのがよい。例えば、十字靱帯再建のために脛骨及び大腿骨トンネルの形成中、器具、即ちコア採取リーマーを用いてこれを部位から摘出することができる。次に、このコア採取骨の全体又はフラグメントを用いて繋留セグメント12a,12bの横に配置する。
【0056】
種々の従来方法のうち任意のもの、例えば生検又は他の外科的取り出し法により組織を得ることができる。好ましくは、組織サンプルを無菌状態下で得る。生きている組織のサンプルをいったん得ると、次にサンプルを滅菌条件下で処理して少なくとも1つのみじん切りされ又は細かく分けられた組織粒子を有するサスペンションを作ることができる。各組織フラグメントの粒子サイズは様々であってよく、例えば粒子サイズは、約0.1m〜30mであるのがよいが、好ましくは組織粒子は、10mm未満である。組織フラグメントの形状は、等方性(即ち、立方体又は球形)である必要はなく、組織フラグメントは、組織の一寸法が厚さ1mm以下であるように組織のストリップ又はシートの形態をしていてもよい。
【0057】
好ましくは、みじん切りされた組織は、組織フラグメントから支承体上に移動できる少なくとも1つの生存細胞を有する。より好ましくは、組織は、組織フラグメントから移動し、支承体10の定住を開始させることができる有効量の細胞を含む。任意的な実施形態では、みじん切りされた組織フラグメントをマトリックス消化酵素と接触させると、細胞を包囲している細胞外マトリックスからのセルの移動を容易にすることができる。酵素は、細胞外マトリックスから支承体内へのセルの移動の速度を増大させるために用いられる。本発明で用いることができる適当なマトリックス消化酵素としては、コラゲナーゼ、コンドロイチナーゼ、トリプシン、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、ペチダーゼ、サーモリシン及びプロテアーゼが挙げられるが、これらには限定されない。一実施形態では、みじん切りされた組織粒子を組織粒子が生理学的緩衝溶液と関連したサスペンションとして形成することができる。適当な生理学的緩衝溶液としては、食塩水、リン酸緩衝溶液、ハンクの平衡塩、トリス緩衝食塩水、ヘペス緩衝食塩水及びこれらの組合せが挙げられるが、これらには限定されない。加うるに、組織を血清の存在又は不存在下において当業者に知られている標準細胞培養基中でみじん切りするのがよい。みじん切りした組織のサスペンションを支承体又は植え込み部位のところに被着させる前に、みじん切りした組織サスペンションを濾過して濃縮するのがよく、従って、ほんの僅かの量の生理学的緩衝溶液がサスペンション中に残って組織粒子が乾燥するのを阻止するようにし、そしてみじん切りした組織粒子を直接支承体又は植え込み部位に付着させるのがよい。好ましくは、みじん切りした組織粒子を約1mg/cm〜100mg/cm、より好ましくは約1mg/cm〜20mg/cmの濃度で加える。
【0058】
みじん切りした生体組織のサスペンションを用いると本発明の結合組織支承体を作ることができるが、その手段として生体組織のサスペンションを支承体に被着させて組織と支承体が関連するようにする。好ましくは、組織を支承体の少なくとも一部と関連させる。加うるに、支承体を被験者の体内に直ちに植え込むのがよく、又は変形例として、組織播種支承体を或る持続時間の滅菌条件下において且つ組織サンプルの生存性を維持するのに有効な条件下で培養するのがよい。かかる構成体を培養する実施形態では、培養条件は様々であってよいが、好ましくは支承体は、1時間〜6週間の期間、より好ましくは約1週間〜6週間の期間にわたり約20℃〜40℃の温度で、約5%〜10%二酸化炭素(CO)を含む雰囲気中で高い湿度、例えば約100%湿度で培養する。
【0059】
本発明の組織支承体の作製を助けるキットを用いることができる。本発明によれば、このキットは、1以上の生体適合性支承体を収容する滅菌容器、患者からの生きている組織サンプルを収集する摘出ツール及び組織サンプルの生存性を維持する1以上の試薬を含む。組織サンプルの生存性を維持する適当な試薬としては、生理学的溶液、例えば食塩水、リン酸緩衝溶液、ハンクの平衡塩、標準細胞培養基、ダルベコの改造型イーグル培地、アスコルビン酸、HEPES、非必須アミノ酸、L−プロリン、胎児ウシ血清、自己血清及びこれらの組合せが挙げられるが、これらには限定されない。キットは、組織をみじん切りした組織粒子に分ける処理ツールを更に有すのがよいが、変形例として、摘出ツールは、組織サンプルを収集し、サンプルを細かく分けた組織粒子に処理するようになっている。キットは、支承体を滅菌容器から植え込みのために被験者に移送する運搬器具を更に有するのがよいが、このようにするかどうかは任意である。
【0060】
生物学的成分を本発明の組織支承体内に組み込むのがよいが、このようにするかどうかは任意である。好ましくは、生物学的成分を上記において開示した支承体内に組み込み又はこれに被着させる。生物学的成分を支承体に被着させる実施形態では、生物学的成分を好ましくは支承体の少なくとも一部と関連させる。非限定的な例を挙げると、生体適合性支承体は、みじん切りした組織フラグメントのサスペンションを支承体に繋留させる付着剤を有するのがよい。好ましくは、付着剤は、繋留剤、架橋剤(即ち、化学的又は物理的)及びこれらの組合せである。
【0061】
適当な繋留剤としては、ヒアルロン酸、フィブリングルー、フィブリンクロット、コラーゲンゲル、アルギン酸ゲル、ゼラチン−レゾルシン−ホルマリン接着剤、イガイから作られた接着剤、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)を主成分とする接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)を主成分とする接着剤、セルロースを主成分とする接着剤、多糖類を主成分とする接着剤、合成アクリレートを主成分とする接着剤、血小板に富んだ血漿(PRP)ゲル、血小板の少ない血漿(PPP)ゲル、マトリゲル(Matrigel)、モノステアロイルグリセロールコ−スクシネート(Monostearoyl Glycerol co-Succinate:MGSA)、モノステアロイルグリセロールコ−スクシネート/ポリエチレングリコール(MGSA/PEG)コポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン及びこれらの組合せが挙げられるが、これらには限定されない。
【0062】
適当な架橋剤としては、例えばジビニルスルホン(DVS)、ポリエチレングリコールジビニルスルホン(VS−PEG−VS)、ヒドロキシエチルメタクリレートジビニルスルホン(HEMA−DIS−HEMA)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アルデヒド、イソシアネート、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、イミドエステル、N−置換マレイミド、アシル化合物、カルボジイミド、ヒドロキシクロリド、N−ヒドロキシスクシンイミド、光(例えば、青色光及び紫外光)、pH、温度及びこれらの組合せが挙げられる。
【0063】
本発明に用いられる生物学的成分は又、それが外傷部位に存在すると患部組織の治癒及び(又は)再生を促進する種々のエフェクタの中から選択されたものであるのがよい。実際に治癒を促進し又は早める製剤又は薬剤であることに加えて、エフェクタは、感染症を阻止する製剤又は薬剤(例えば、抗菌剤及び抗生物質)、炎症を減少させる製剤又は薬剤(例えば、抗炎症剤)、癒着の形成を阻止し又は最小限に抑える製剤、例えば酸化再生セルロース(例えば、エシコン・インコーポレイテッド(Ethicon,Inc.)から入手できるインターシード(INTERCEED)とサージセル(Surgicel(登録商標)))、ヒアルロン酸及び免疫システムを抑制する製剤又は薬剤(例えば、免疫抑制剤)を更に含むのがよい。
【0064】
一例を挙げると、本発明の支承体中に存在する別のタイプのエフェクタとしては、異種成長因子又は自家成長因子、タンパク質(マトリックスタンパク質を含む)、ペプチド、抗体、酵素、血小板、糖タンパク質、ホルモン、サイトカイン、グリコサミノグリカン、核酸、鎮痛薬、ウイルス、ウイルス粒子及び細胞タイプが挙げられる。同一の又は異なる機能を持つ1以上のエフェクタが支承体の中に混ぜ込まれてもよいことは理解されよう。
【0065】
適当なエフェクタの例としては、傷を受けた又は損傷した組織の治癒及び(又は)再生を促進することが知られている多くの異種成長因子又は自家成長因子が挙げられる。かかる成長因子を支承体の中に直接混ぜ込むのがよく、又は変形例として、支承体が成長因子の源、例えば血小板を含んでいてもよい。「生体活性剤」は、以下に挙げる物質、即ち、走化作用剤、治療薬(例えば、抗生物質、ステロイド系鎮痛薬及び抗炎症薬、非ステロイド系鎮痛薬及び抗炎症薬、例えば免疫抑制剤等の抗拒絶剤及び抗がん剤)、種々のタンパク質(例えば、ショートターム(short term)ペプチド、骨形態形成タンパク質、糖タンパク質及びリポタンパク質)、細胞付着媒介物質、生物活性リガンド、インテグリン結合配列、リガンド、種々の成長剤及びそれらのフラグメント及び(又は)種々の分化剤及びそれらのフラグメント(例えば、上皮成長因子(EGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、IGF−I、IGF−II、TGF−β I−III、成長及び分化因子、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インシュリン由来成長因子(IGF)、インシュリン変異成長因子、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、bFGF),TFGβスーパーファミリー因子、BMP−2、BMP−4、BMP−6、BMP−12、ソニックヘッジホッグ、GDF5、GDF6、GDF8、MP52、CDMP1)、特定の成長因子の上方制御に影響する小分子、テネイシン−C、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、デコリン、血栓エラスチン、トロンビン誘導ペプチド、ヘパリン結合ドメイン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、DNAフラグメント及びDNAプラスミドのうち1以上を含む。同様に、適当なエフェクタは、上述の薬剤の作用薬及び拮抗薬を含む。成長因子は、上述の成長因子の組合せを含んでもよい。加うるに、成長因子は、血液中の血小板によって供給される自家成長因子であってもよい。この場合、血小板から得られる成長因子は、種々の成長因子の未決定カクテルである。別のこのような物質が整形外科分野において治療的価値を持つ場合、それらの物質のうち少なくとも幾つかは本発明で用いることができ、かかる物質は、別段の明示の限定がなければ、「生体活性剤」(1又は複数の種類)の意味に含まれるべきである。
【0066】
「生物学的誘導剤」は、以下に挙げる物質、即ち、骨(自家移植片、同種移植片及び異種移植片)及び骨の誘導体、例えば半月板組織を含む軟骨(自家移植片、同種移植片及び異種移植片)及び誘導体、靱帯(自家移植片、同種移植片及び異種移植片)及び誘導体、例えば粘膜下組織を含む腸管組織の誘導体(自家移植片、同種移植片及び異種移植片)、例えば粘膜下組織を含む胃組織の誘導体(自家移植片、同種移植片及び異種移植片)、例えば粘膜下組織を含む膀胱組織の誘導体(自家移植片、同種移植片及び異種移植片)、例えば粘膜下組織を含む消化管組織の誘導体(自家移植片、同種移植片及び異種移植片)、例えば粘膜下組織を含む呼吸器組織の誘導体(自家移植片、同種移植片及び異種移植片)、例えば粘膜下組織を含む性器組織の誘導体(自家移植片、同種移植片及び異種移植片)、例えば肝臓基底膜を含む肝組織の誘導体(自家移植片、同種移植片及び異種移植片)、皮膚組織の誘導体、血小板に富んだ血漿(PRP)、血小板の少ない血漿、骨髄穿刺液、脱ミネラル骨マトリックス、インシュリン由来成長因子、全血、フィブリン及びクロットのうち1以上を含む。精製ECM及びその他のコラーゲン源も又「生物学的誘導剤」に含まれるであろう。別のこのような物質が整形外科分野において治療的価値を持つ場合、それらの物質のうち少なくとも幾つかは本発明で用いることができ、又、そのような物質は、別段の明示の限定がなければ、「生物学的誘導剤」の意味に含まれるべきである。
【0067】
「生物学的誘導剤」は又、生物学的に再構築可能な膠原性組織マトリックスを含む。「生物学的に再構築可能な膠原性組織マトリックス」及び「天然に産する生物学的に再構築可能な膠原性組織マトリックス」という表現は、その源が何であれ、皮膚、動脈、静脈、心膜、心臓弁、硬膜、靱帯、骨、軟骨、膀胱、肝臓、胃、筋膜及び腸管から成る群から選択された生まれつきの組織に由来するマトリックスを含む。「天然に産する生物学的に再構築可能な膠原性組織マトリックス」は、清浄にされ、処理され、滅菌され及び必要であれば架橋されたマトリックス材料を指すものであるにもかかわらず、天然繊維を精製すること及び精製された天然繊維からマトリックス材料を二次成形することは天然に産する生物学的に再構築可能な膠原性組織マトリックスの定義には含まれない。
【0068】
支承体の中に存在するタンパク質としては、支承体内に入っている細胞又はその他の生物学的な源、例えば血小板から分泌されるタンパク質や孤立形態で支承体内に存在するタンパク質が挙げられる。タンパク質の孤立形態は典型的には、純度約55%以上、即ち他の細胞タンパク質、分子、細片等から孤立された形態である。より好ましくは、孤立状態のタンパク質は純度が少なくとも65%、最も好ましくは少なくとも約75%〜95%である。上述のことにもかかわらず、当業者であれば、純度約55%以下のタンパク質であっても依然として本発明の範囲に属すると考えられることは理解されよう。本明細書において「タンパク質」という用語は、糖タンパク質、リポタンパク質、プロテオグリカン、ペプチド及びそれらのフラグメントを含む。エフェクタとして有用なタンパク質の例としては、プレイオトロフィン(pleiotrophin)、エンドセリン、テネイシン、フィブロネクチン、フィブリノゲン、ビトロネクチン、V−CAM、I−CAM、N−CAM、セレクチン、カドヘリン、インテグリン、ラミニン、アクチン、ミオシン、コラーゲン、マイクロフィラメント、中程度のフィラメント、抗体、エラスチン、フィブリリン及びそれらのフラグメントが挙げられるが、これらには限定されない。
【0069】
グリコサミノグリカンは、細胞付着役割を果たす高荷電多糖類であり、本発明のエフェクタとしても役立つ場合がある。エフェクタとして役立つ典型的なグリコサミノグリカンとしては、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロナン(ヒアルロン酸としても知られている)及びこれらの組合せが挙げられるが、これらには限定されない。
【0070】
本発明の支承体は又、その中に組み込まれた細胞を有していてもよい。本発明のエフェクタとして役立つ適当な細胞タイプとしては、骨細胞、骨芽細胞、溶骨細胞、線維芽細胞、線維軟骨細胞、幹細胞、多能性細胞、軟骨細胞前駆体、軟骨細胞、内皮細胞、マクロファージ、白血球、脂肪細胞、単球、形質細胞、肥満細胞、臍帯細胞、間質細胞、間葉細胞、上皮細胞、筋芽細胞、タン細胞、靱帯線維芽細胞、神経細胞、骨髄細胞、滑膜細胞、胚幹細胞、脂肪組織由来の前駆細胞、末梢血前駆細胞、成人の組織から分離した幹細胞、遺伝子形質転換細胞、軟骨細胞と別の細胞の組合せ、骨細胞と別の細胞の組合せ、滑膜細胞と別の細胞の組合せ、骨髄細胞と別の細胞の組合せ、間葉細胞と別の細胞の組合せ、間質細胞と別の細胞の組合せ、幹細胞と別の細胞の組合せ、胚幹細胞と別の細胞の組合せ、成人の組織から分離した前駆細胞と別の細胞の組合せ、末梢血前駆細胞と別の細胞の組合せ、成人の組織から分離した幹細胞と別の細胞の組合せ、遺伝子形質転換細胞と別の細胞の組合せが挙げられるが、これらには限定されない。別の細胞が整形外科分野において治療的価値を持つと認められた場合、それらの細胞のうち少なくとも幾つかは本発明で用いることができ、かかる細胞は、別段の明示の限定がなければ、「細胞」(1又は複数)の意味に含まれるものとする。細胞は典型的には、その表面のところに同種のリガンド(例えば刺激物質)に反応するレセプター分子を有している。刺激物質は、それと同種のレセプターと接触するとレセプターを持つ細胞が特定の生物学的作用を誘発するリガンドである。例えば、細胞は、刺激物質(又はリガンド)に反応して、相当なレベルのCa+2のような二次伝達物質を生じる場合があり、かかる二次伝達物質は、細胞プロセス、例えば、タンパク質キナーゼC(本発明の例に従えば)のようなタンパク質のリン酸化に対して後で影響を及ぼすことになろう。場合によっては、細胞が適切な刺激物質でいったん刺激されると、細胞は、通常はタンパク質(糖タンパク質、プロテオグリカン、リポタンパク質を含む)の形態で細胞伝達物質を分泌する。この細胞伝達物質は、抗体(例えば形質細胞から分泌されたもの)、ホルモン(例えば傍分泌、自己分泌又は外分泌ホルモン)、サイトカイン又はそれらの天然又は合成フラグメントであるのがよい。
【0071】
本発明の支承体は又、核酸、ウイルス又はウイルス粒子が、少なくとも1つの関心のある遺伝子生成物をコード化する関心のある遺伝子を特定細胞又は細胞タイプに送り出す遺伝子治療技術でも利用可能である。したがって、生物学的エフェクタは、核酸(例えばDNA,RNA又はオリゴヌクレオチド)、ウイルス、ウイルス粒子又は非ウイルスベクターであるのがよい。ウイルス及びウイルス粒子は、DNAウイルス又はRNAウイルスであるか又はそれら由来のものであるのがよい。関心のある遺伝子生成物は好ましくは、タンパク質、ポリペプチド、干渉リボ核酸(iRNA)及びこれらの組合せから成る群から選択される。
【0072】
利用可能な核酸及び(又は)ウイルス剤(即ち、ウイルス又はウイルス粒子)をいったん支承体内に組み込むと、次にこれらを特定の部位に植え込むと、或る形式の生物学的応答を引き出すことができる。次に、核酸又はウイルス剤を細胞によって吸収させるのがよく、これら細胞がコード化するタンパク質を細胞により局所的に生じさせることができる。一実施形態では、核酸又はウイルス剤をみじん切りした組織サスペンションの組織フラグメント内で細胞により吸収させることができ、又は変形実施形態では、核酸又はウイルス剤を損傷した組織の部位を包囲する組織中の細胞によって吸収させることができる。当業者であれば、生じたタンパク質は、上述した種類のタンパク質又は外傷又は病気を治癒させ、感染と戦い又は炎症反応を軽減させる組織の向上した機能の発揮を容易にする類似のタンパク質であるのがよいことは理解されよう。また、核酸を利用すると組織再建プロセス又は他の通常の生物学的プロセスに悪影響を及ぼす場合のある望ましくない遺伝子生成物の発現を阻止することができる。DNA、RNA及びウイルス剤は、かかる発現阻止機能を達成するよう用いられる場合が多く、これは、遺伝子発現ノックアウトとも呼ばれている。
【0073】
当業者であれば、生物学的成分が何であるかは医学の原理及び適用可能な治療対象に基づいて外科医によって決定できることは理解されよう。
【0074】
支承体の生物学的成分又はエフェクタを支承体の製造の前後又は支承体の外科的配置の前後に組み込むのがよい。
【0075】
外科的配置に先立って、支承体を生物学的成分を構成する適当な容器内に配置することができる。適当な時間の経過後及び適当な条件下において、支承体は、生物学的成分で含浸状態になる。変形例として、生物学的成分を例えば生物学的作用物質を支承体中へ注入する適当な規格に合致した注射器を用いて支承体内に組み込んでもよい。支承体に適当な生物学的成分を加えるために当業者に周知の他の方法、例えば混合、加圧、塗布、遠心分離及び支承体中への生物学的成分の配置を利用することができる。変形例として、生物学的成分を、支承体内への注入前にゲル状キャリヤと混合してもよい。ゲル状キャリヤは、生物学的又は合成ヒドロゲルであるのがよく、かかるヒドロゲルとしては、アルギン酸塩、架橋アルギン酸塩、ヒアルロン酸、コラーゲンゲル、フィブリングルー、フィブリンクロット、ゲラチン−レゾルシン−ホルマリン接着剤、マッセル(mussel)を主成分とする接着剤、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)を主成分とする接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)系接着剤、セルロース系接着剤、多糖類系接着剤、合成アクリル樹脂系接着剤、血小板に富む血漿(PRP)ゲル、血小板の少ない血漿(PPP)ゲル、マトリゲル(Matrigel)、モノステアロイルグリセロールコ−スクシネート(Monostearoyl Glycerol co-Succinate:MGSA)、モノステアロイルグリセロールコ−スクシネート/ポリエチレングリコール(MGSA/PEG)コポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカンスポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(オキシアルキレン)、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)及びこれらの組合せが挙げられる。
【0076】
外科的配置に続き、生物学的成分を全く含まない支承体に生物学的作用剤を注入することができ、又は少なくとも1つの生物学的成分を含む支承体を補足的な量の生物学的成分を追加してもよい。生物学的成分を外科的に留置された支承体内に組み込む一方法は、適当な規格に合った注射器を用いる注入法である。
【0077】
生体適合性支承体に含まれる生物学的成分の量は、種々の要因に応じて様々であり、かかる要因としては、支承体の大きさ、支承体の構成材料、支承体の密度、生物学的成分が何であるか及び組織支承体の意図した目的が挙げられる。当業者であれば、組織の治癒を容易にすると共に(或いは)促進するために所与の用途について支承体内に含まれる生物学的成分の適当な量を容易に決定することができる。当然のことながら、生物学的成分の量は、生物学的成分が何であるか及び所与の用途に応じて様々であろう。
【0078】
別の実施形態では、支承体は、組織担持支承体上に配置される追加の保持要素を有してもよい。好ましくは、この実施形態では、組織サスペンションの少なくとも一部が支承体の外面の少なくとも一部と関連し、組織サスペンションが支承体と保持要素との間で「サンドイッチ」されるようになっている。保持要素を事実上任意の生体適合性材料から作ることができ、一実施形態では、保持要素は、組織移植片を用いて形成でき、かかる移植片としては、同種異系組織、自家組織、異種組織から得られた移植片、上述した生体適合性材料から選択された追加の生体適合性材料及びこれらの組合せが挙げられる。別の実施形態では、保持要素は、多孔質メッシュ、多孔質メッシュ状材料、例えばニット、ウィーブ、不織布又は組織内方成長を可能にする気孔又は小穴を有する薄い有孔エラストマーシートであってもよい。薄い有孔エラストマーシートは好ましくは、コラーゲン又は絹或いはポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)及びポリジオキサノン(PDO)の配合物又はコポリマーから作られる。用いられる保持要素の種類は、所望の組織再建に応じて様々であってよい。非限定的な例を挙げると、ACL再建のための一実施形態では、保持要素は、メッシュ構造であるのがよい。保持要素が同種移植片又は自家移植片である場合、好ましくは同種移植片又は自家移植片は、骨膜、心膜、腸脛靱帯又は大腿筋膜、薄腱、半腱様筋腱、膝蓋骨腱、滑膜及びこれらの組合せである。保持要素が異種移植片である実施形態では、異種移植片は好ましくは、小腸、骨膜、心膜、腸脛靱帯又は大腿筋膜、薄腱、半腱様筋腱、膝蓋骨腱、滑膜及びこれらの組合せについての対応関係にある解剖学的構造から選択される。これら保持要素を支承体10を覆って配置するのがよく、或いは変形例として、保持要素を例えば縫合又はステープル止めにより支承体10に取り付けて保持要素として働くようにしてもよい。当業者であれば、保持要素の追加の処理、例えば保持要素への穴の配置は、医学の原理及び適用される治療対象に基づいて外科医によって決定できる。
【0079】
一実施形態では、保持要素は、過形成及び組織付着に対するバリヤとして働き、かくして手術後付着の恐れを減少させるよう支承体に付加される静電紡績織物である。織物バリヤは好ましくは、支承体に付加された密度の高い繊維織物の形態をしている。好ましくは、繊維織物は、支承体の頂面及び(又は)底面に融着された小径繊維で構成されている。これにより、構造体の或る特定の表面特性、例えば多孔性、透過性、崩壊速度及び機械的性質を制御することができる。
【0080】
繊維層の組成、厚さ及び多孔性を制御すると、所望の機械的及び生物学的性質を得ることができる。例えば、繊維層の生体吸収速度は、その下に位置する支承体と比較して長い又は短い生体吸収性プロフィールをもたらすよう選択できる。繊維層を上述した生体適合性ポリマーから構成するのがよい。加うるに、繊維層は、複合体により高い構造的一体性を与えて機械的力を構造体の繊維質側に加えることができるようにするのがよい。一実施形態では、繊維層により、縫合糸、ステープル又は種々の固定器具を用いて複合体を定位置に保持することができる。好ましくは、繊維層の厚さは、約1ミクロン〜1,000ミクロンである。
【0081】
別の好ましい実施形態では、保持要素は、例えば動物の胃、袋状管、消化管、呼吸器管、尿路、外皮管、生殖管又は肝臓の基底膜に見受けられる天然に産する又は生まれつきの細胞外マトリックス材料(ECM)から構成されている。好ましくは、ECMは、哺乳動物、例えばウシ、ひつじ、犬の消化管、最も好ましくはブタの腸管から得られる。ECMは好ましくは、粘膜の基底部分特に粘膜筋板及び緻密層と共に粘膜下組織を含む場合がある小腸粘膜下組織(SIS)である。
【0082】
本発明の開示の目的上、ECMを掃除すると共に(或いは)粉砕し又はECM内でコラーゲン繊維を架橋することは、天然に産するECMの定義に含まれる。しかしながら、天然繊維を抽出して浄化し、浄化した天然繊維からマトリックス材料を二次成形することは天然に産するECMの定義には含まれない。また、SISについて言及するが、他の天然に産するECMはこの開示内容の範囲に含まれる。かくして、本明細書で用いる「天然に産する細胞外マトリックス」又は「天然に産するECM」は、清浄にされ、消毒され、滅菌され、任意的に架橋された細胞外マトリックス材料を意味するものである。
【0083】
SISを用いる場合、SIS移植片32を当業者には理解されるように種々の方法で摘出することができる。その結果得られた移植片材料は、種々の幾何学的形状及び首尾一貫性を有するのがよく、かかる幾何学的形状及び首尾一貫性としては、例えばコイル状、螺旋状、ばね状、任意配列状態、枝分かれ状態、シート状、管状、球形、フラグメント化状態、流動化状態、粉砕状態、液状化状態、フォーム状、懸濁状、ゲル状、注射可能状態、粉末化状態、研削状態及び剪断状態が挙げられる。好ましい実施形態では、SIS移植片32は、本発明の支承体を覆うよう用いることができる管状又はシート状の形として作成される。
【0084】
図6及び図7に示す一実施形態では、管状ECM移植片32(例えば、SIS)は支承体の少なくとも一部を覆うスリーブとして用いられる。変形例として、シート状ECM移植片32の1又は複数の層を支承体の外部に巻き付けてもよい。
【0085】
ECM移植片32、例えばSIS移植片は、長手方向及び(又は)横断方向繊維を損傷させないで支承体を骨トンネル中へ容易に挿入するための滑らかな外面を提供すると共に繊維上に位置したみじん切り組織を保護するために本発明に用いると特に有利である。ECM移植片32は、支承体の少なくとも一部を覆うことができ、みじん切りされた組織及び(又は)生物学的成分をECM移植片32と支承体との間に配置するのがよい。みじん切り組織及び(又は)生物学的成分をECM移植片32の位置決め前に追加してもよく、或いは支承体及びECM移植片32を植え込み、次にみじん切り組織及び(又は)生物学的成分を関節鏡を用いてECM移植片32と支承体との間に注入してもよい。一実施形態では、みじん切りされたACL組織及びPRPを関節鏡を用いてECM移植片32と支承体との間に注入する。
【0086】
変形実施形態では、ECMを特にECMが注入可能又は塗布可能である場合、本発明のみじん切り組織又は生物学的成分と混ぜ合わせてもよい。一実施形態では、ECMは、上述したようにみじん切り組織及び(又は)生物学的成分と混ぜ合わされるフォームとして用いられる。
【0087】
本発明の一実施形態では、支承体が、組織外傷、例えば靱帯又は腱に対する外傷の治療の際に用いられる。かかる外傷の修復は、当業者に知られている種々の技術のうち任意のものを用いて損傷した生きている組織のサンプルを得る段階と、その生きている組織のサンプルを滅菌条件下で、その切断により処理して少なくとも1つのみじん切りされ、細かく分けられた組織粒子を生じさせる段階と、組織サンプルを支承体上に付着させて組織サンプルが支承体と関連するようにする段階と、支承体を組織外傷部に対して所望の位置に配置する段階とを含む。組織外傷の修復は、支承体を組織損傷部位に配置する段階と、細かい組織粒子を支承体上に付着させる段階とを更に有するのがよい。支承体と関連した組織粒子中の細胞は、支承体に移動して増殖及び植え込み部位での周囲組織との一体化を開始し、それにより組織外傷部を修復する。組織外傷部を修復するこの方法は、追加の任意的な段階を含むのがよい。支承体を組織外傷部に対し所望の位置に配置する段階の実施前に、支承体及び関連の組織粒子を、組織粒子内の細胞がその組織から出て支承体の中に場所を占め始めることができるのに有効な持続時間の間及び条件下において培養するのがよい。
【0088】
本発明で用いる組織サンプルを適当な摘出ツールを用いてドナー(自家、同種異系又は異種)から得る。組織を集めているときに組織サンプルを細かくみじん切りして分けて小さい粒子にするのがよく、或いは変形例として、組織を摘出し、体外で集めた後、組織サンプルをみじん切りしてもよい。組織を摘出した後に組織サンプルをみじん切りする実施形態では、組織サンプルを秤量し、次にリン酸緩衝食塩水中で3回洗浄する。次に、約300mg〜500mgの組織を少量の、例えば約1mlの生理緩衝溶液、例えばリン酸緩衝食塩水又はマトリックス消化酵素、例えばハムス(Hams)F12中の0.2%コラゲナーゼの存在下でみじん切りするのがよい。組織をみじん切りすることにより、組織を約1mmの粒子又は小片に分ける。組織のみじん切りを種々の方法で行うことができる。一実施形態では、みじん切りを長手方向を用いる2つの滅菌円刃刀で達成し、別の実施形態では、組織を自動的に所望サイズの粒子に分割する処理ツールにより組織をみじん切りしてもよい。一実施形態では、みじん切りした組織を生理流体から分離し、当業者に知られている種々の方法のうち任意のもの、例えばふるい分け、沈殿又は遠心分離により濃縮するのがよい。みじん切りした組織を濾過して濃縮させる実施形態では、みじん切りした組織のサスペンションは、組織が乾燥するのを阻止するよう少量の流体をサスペンション中に保持する。別の実施形態では、みじん切りした組織のサスペンションを濃縮させず、みじん切りした組織を直接高濃度組織サスペンション又は他のキャリヤ、例えばヒドロゲル、フィブリングルー又はコラーゲンを介して組織修復部位に直接送ってもよい。この実施形態では、組織フラグメントを定位置に保持するための上述した生体適合性材料のうち任意のものでみじん切り組織サスペンションを覆うのがよい。
【0089】
次に、細胞スプレッダを用いてみじん切り組織を支承体上に分布させて支承体全体を覆うのがよい。また、みじん切りした組織を組織体中へ注入してもよい。上述の接着剤のうち任意のもの、例えばフィブリングルー又は血小板に富んだ血清を用いて組織粒子を支承体に付着させるのがよいが、このようにするかどうかは任意である。フィブリングルー又は血小板に富んだ血清を用いる実施形態では、活性化剤を用いてクロット又はグルーを形成することができる。活性化剤は、トロンビン、アデノシン二リン酸(ADP)、コラーゲン、エピネフリン、アラキドン酸、リストセチン、塩化カルシウム及びこれらの組合せであるのがよいが、これらには限定されない。組織粒子及び任意の追加の作用物質を支承体上にいったん被着させると、次に支承体をすぐに植え込むのがよく、或いは変形例として支承体を組織粒子中の細胞が組織粒子から支承体上に移動できるのに十分な期間及び条件下においてインビトロ(in vitro)で培養してもよい。組織再建支承体を植え込み前に培養する実施形態では、支承体は好ましくは、20%子ウシ血清(FCS)、100mg/mlペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシン及び0.25mg/mlのアンホテリシンBを追加した線維芽細胞増殖培地、例えばDMEM高グルコース中で約1週間〜3週間インビトロで培養される。別の実施形態では、支承体を植え込み、次に組織粒子及び任意の追加の作用物質を支承体上に被着させることができる。
【0090】
本発明の組織支承体を用いて組織外傷部を修復する方法を外科手術中に行って組織外傷部を修復するのがよい。変形例として、組織サンプルを処理してみじん切りされ、細かく分けられた組織粒子を生じさせる段階、組織粒子を支承体上に被着させる段階及び(又は)支承体を植え込み前に培養する段階を外傷部位に対する支承体の外科的配置前に別の滅菌場所で行ってもよい。
【0091】
上述したように、生物学的成分を支承体の製造中又は製造後、或いは支承体を患者の体内に配置する前後に支承体に付加するのがよい。支承体を配置した後追加量の生物学的成分を付加するのがよい。患部としての解剖学的部位にいったん接近すると(低侵襲、開放手術法又はミニオープン手術法のいずれかで)、支承体を組織外傷部に対して所望の位置に取り付けることができる。支承体を所望位置にいったん配置すると、適当な方法で支承体を取り付けるのがよい。一特徴では、支承体を化学的及び(又は)機械的締結法により取り付けることができる。適当な化学的締結手段としては、グルー及び(又は)接着剤、例えばフィブリングルー、フィブリンクロット及び他の公知の生物学的に適合性のある接着剤が挙げられる。適当な機械的締結手段としては、縫合糸、ステープル、組織タック、縫合糸アンカー、ダート、ねじ、ボタン、ピン及び矢が挙げられる。1以上の化学的及び(又は)機械的締結手段の組合せを用いることができることは言うまでもない。変形例として、任意の化学的及び(又は)機械的締結手段を用いることは不要である。その代わり、支承体の配置を支承体と治療されるべき組織中の適当な部位との締り嵌めにより達成するのがよい。
【0092】
支承体を用いて人体組織を再建する実施形態では、支承体を組織増強のため、或いは変形例としてスタンドアロン型器具として用いることができる。支承体を増強のために用いる実施形態では、支承体を当業者に知られている種々の標準型の確立された再建法のうち任意のものと関連して用いるのがよい。支承体をACL再建中、増強のために用いる実施形態では、外科医は現在においては、組織再建のために靱帯組織、骨−膝蓋骨腱、腱−骨腱、膝窩腱又は腸脛靱帯から成る自家移植片を用い、本発明の支承体を自家移植片の周りに、自家移植片によって包囲された状態で或いは自家移植片に横付けして配置するのがよい。組織再建要素をスタンドアロン型器具として用いる実施形態では、断裂した靱帯を除去し、支承体で完全に置き換え、断裂靱帯は好ましくは、みじん切りされた組織の源となる。次に、支承体を骨に取り付けるのがよい。ACL再建の場合、支承体の一端部を大腿骨の元の起点部位のところで安定化させ、他端部を脛骨上の元の挿入部位のところに配置するのがよい。
【0093】
以下の実験例は、本発明の原理及び実施の例示である。当業者であれば、本発明の範囲及び精神に含まれる多くの追加の実施形態を想到できよう。
【0094】
実験例1
天然に産する前十字靱帯(ACL)組織をヤギの膝関節から切除して取り出し、ACLを図4に示す形式の靱帯移植片に似た靱帯移植片を用いて再建した。移植片をパナクリル(PANACRYL)、即ち、95:5のラクチドとグリコリドのコポリマーで形成し、約2mlの血小板に富んだ血清(PRP)を移植片中に混ぜ込むことにより植え込み可能に作製した。一評価例では、約600mgのみじん切りACLフラグメント(寸法が約1mm)も又移植片中に混ぜ込んだ。この研究の目的は、ACLの再生のための自系成長因子を備えた合成支承体及び(又は)みじん切り組織の潜在性を評価することにあった。移植片は、直径が3.5mmであり、PRP及びみじん切り組織を脛骨及び大腿骨トンネル中への挿入前に移植片上に配置した。ビクリル(VICRYL)メッシュをパナクリル(PANACRYL)移植片及びみじん切り組織の周りに縫合して組織を移植片上に保持するのを助けた。ねじ/ワッシャシステムを用いて器具の固定を大腿骨側と脛骨側の両方で達成した。12週間後、ACLの靱帯部分を切除し、10%緩衝ホルマリン固定液中に保存し、組織学のために処理した。組織学的切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した。図8は、パナクリル(PANACRYL)及びPRPだけで形成したインプラントを示しており、この場合、新たに再生したコラーゲンが支承体の繊維に沿って被着している。図9は、パナクリル(PANACRYL)、PRP及びみじん切り組織で形成した移植片の偏光下で得た像を示しており、この場合、新たなコラーゲンが繊維相互間に形成され、新たなコラーゲン内には複屈折により立証される配列がある。
【0095】
実験例2
図4に示し、パナクリル(PANACRYL)、即ち95:5のラクチドとグリコリドのコポリマーで形成されたタイプの合成ACL移植片をゲージ長さが8インチ(20.32cm)、歪み速度が1インチ(2.54cm)/分張力下で機械的に試験した。剛性を測定すると160N/mmであり、移植片は、極限引張強さが2,600Nであることが分かった。
【0096】
当業者であれば、上述の実施形態に基づいて本発明の別の特徴及び利点を理解されよう。したがって、本発明は、具体的に図示して説明したものには限定されず、本発明の範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。本明細書に記載した全ての非特許文献及び特許文献の記載内容全体を本明細書の一部を形成するものとして引用する。
【0097】
本発明の具体的な実施形態は、次の通りである。
(A)結合組織支承体であって、支承体の長手方向軸線に対し実質的に平行な方向に向けられた複数本の生体再吸収性ポリマー繊維及び支承体の長手方向軸線に対し実質的に横断する方向に向けられた複数本の生体再吸収性ポリマー繊維から作られた互いに反対側の第1及び第2の繋留セグメントと、第1及び第2の繋留セグメントに隣接して位置していて、支承体の長手方向軸線に対し実質的に平行な方向に向けられた複数本の生体再吸収性ポリマー繊維から作られた中央セグメントとから成る結合組織支承体。
(1)繊維は、合成ポリマー、天然ポリマー及びこれらの組合せから成る群から選択された材料で作られていることを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
(2)支承体の繊維は、生物系中に植え込まれると、再吸収に6ヶ月以上かかることを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
(3)第1及び第2の繋留セグメントの繊維は、ウィーブパターンをなして互いに接合されていることを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
(4)ウィーブパターンは、複数本の長手方向に向いた繊維を有する1以上の領域を長手方向に向いた繊維と織り合わされた横方向に向いた繊維を有する1以上の領域によって分離したものから成ることを特徴とする上記実施形態(3)記載の支承体。
(5)中央セグメントの繊維は、ブレードパターンをなして互いに接合されていることを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
【0098】
(6)第1及び第2の繋留セグメントは、メッシュを構成していることを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
(7)中央セグメントの繊維密度は、第1及び第2の繋留セグメントの繊維密度よりも低いことを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
(8)中央セグメントの繊維は、環状パターンをなして向けられていて、環状に向けられた繊維相互間の中央には空間が形成されていることを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
(9)支承体は、第1の繋留セグメント、第2の繋留セグメント及び中央セグメントの少なくとも一部を被覆する生体適合性且つ生体再吸収性材料を更に有していることを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
(10)生体再吸収性材料は、生物学的物質であることを特徴とする上記実施形態(9)記載の支承体。
【0099】
(11)生体再吸収性材料は、小腸粘膜下組織であることを特徴とする上記実施形態(10)記載の支承体。
(12)生体再吸収性材料は、ラップ、スリーブ又はシースとして第1の繋留セグメント、第2の繋留セグメント及び中央セグメントを覆って形成されていることを特徴とする上記実施形態(11)記載の支承体。
(13)支承体の少なくとも一部と関連した少なくとも1つのみじん切りされた組織粒子を更に有し、少なくとも1つのみじん切りされた組織粒子は、みじん切りされた組織粒子から出て支承体の中に場所を占める有効量の生存細胞を含むことを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
(14)少なくとも1つのみじん切りされた組織粒子は、腱、靱帯、膝蓋腱、前十字靱帯、後十字靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯、骨膜、軟骨膜、腸脛靱帯又は大腱筋膜、薄筋腱、半腱様筋腱、滑膜、皮膚及びこれらの組合せから成る群から選択された無骨組織タイプのものであることを特徴とする上記実施形態(13)記載の支承体。
(15)少なくとも1つのみじん切りされた組織粒子は、支承体の第1及び第2の繋留セグメント中に配置された骨組織タイプのものであることを特徴とする上記実施形態(13)記載の支承体。
【0100】
(16)支承体は、付着剤を更に含むことを特徴とする上記実施形態(13)記載の支承体。
(17)付着剤は、ヒアルロン酸、フィブリングルー、フィブリンクロット、コラーゲンゲル、アルギン酸ゲル、ゼラチン−レゾルシン−ホルマリン接着剤、イガイから作られた接着剤、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)を主成分とする接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)を主成分とする接着剤、セルロースを主成分とする接着剤、合成アクリレートを主成分とする接着剤、血小板に富んだ血漿(PRP)ゲル、血小板の少ない血漿(PPP)ゲル、マトリゲル(Matrigel)、モノステアロイルグリセロールコ−スクシネート(Monostearoyl Glycerol co-Succinate:MGSA)、モノステアロイルグリセロールコ−スクシネート/ポリエチレングリコール(MGSA/PEG)コポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン及びこれらの組合せから成る群から選択された繋留剤を含むことを特徴とする上記実施形態(16)記載の支承体。
(18)付着剤は、ジビニルスルホン(DVS)、ポリエチレングリコールジビニルスルホン(VS−PEG−VS)、ヒドロキシエチルメタクリレートジビニルスルホン(HEMA−DIS−HEMA)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アルデヒド、イソシアネート、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、イミドエステル、N−置換マレイミド、アシル化合物、カルボジイミド、ヒドロキシクロリド、N−ヒドロキシスクシンイミド、光、pH、温度及びこれらの組合せから成る群から選択された架橋剤を含むことを特徴とする上記実施形態(16)記載の支承体。
(19)少なくとも1つのみじん切りされた組織粒子は、自家移植片組織から成ることを特徴とする上記実施形態(13)記載の支承体。
(20)支承体の生体再吸収性ポリマー繊維は、ラクチド、グリコリド、ジオキサノン及びカプロラクトンから成る群から選択されたモノマーから作られたポリマー又はコポリマーで構成されていることを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
【0101】
(21)支承体の生体再吸収性ポリマー繊維は、モノマー比が約95:5のラクチドとグリコリドのコポリマーから作られていることを特徴とする上記実施形態(20)記載の支承体。
(22)支承体の生体再吸収性ポリマー繊維は、脂肪族ポリエステル、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート−コ−ヒドロキシバレレート、ポリオルトカーボネート、ポリアミノカーボネート、ポリトリメチレンカーボネート、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、ポリアルキレンオキサレート、ポリアミド、チロシン誘導ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含むポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、ポリウレタン、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(エステルウレタン)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)及びポリマーを形成するモノマーを含むコポリマーから成る群から選択されたポリマー又はポリマー配合物から作られていることを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
(23)支承体の生合成ポリマーは、コラーゲン、エラスチン、トロンビン、絹、ケラチン、フィブロネクチン、でんぷん、ポリ(アミノ酸)、ゼラチン、アルギン酸、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、リボ核酸、デオキシリボ核酸、ポリペプチド、タンパク質、多糖類、ポリヌクレオチド及びこれらの組合せに見られる反復単位に基づくポリマー又はコポリマーから作られていることを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
(24)支承体は、靱帯移植片から成ることを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
(25)支承体は、十字靱帯移植片から成ることを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
【0102】
(26)支承体は、これに被着された少なくとも1つの追加の生物学的成分を更に有していることを特徴とする上記実施形態(13)記載の支承体。
(27)少なくとも1つの追加の生物学的成分は、異種成長因子又は自家成長因子、タンパク質、マトリックスタンパク質、ペプチド、抗体、抗生物質、抗炎症薬、治療薬、化学走性剤、細胞付着媒介物質、生物活性リガンド、インテグリン結合配列、酵素、サイトカイン、グリコサミノグリカン、ウイルス、ウイルス粒子、核酸、鎮痛薬、細胞、血小板及びこれらの組合せから成ることを特徴とする上記実施形態(26)記載の支承体。
(28)第1及び第2の繋留セグメントの互いに反対側の端部に形成されたアイレットを更に有していることを特徴とする上記実施態様(A)記載の支承体。
(B)結合組織支承体であって、複数本の生体再吸収性ポリマー繊維で作られていて、開放領域を形成する互いに反対側の第1及び第2の繋留アイレットと、互いに反対側の第1及び第2のアイレットに隣接して設けられていて、支承体の長手方向軸線に実質的に平行な方向に且つ長手方向軸線に実質的に平行ではない方向に向けられた複数本の生体再吸収性ポリマー繊維で作られた第1及び第2の結合領域と、第1及び第2の結合領域に隣接して位置していて、支承体の長手方向軸線に実質的に平行な方向に向けられた複数本の生体再吸収性ポリマー繊維で作られた中央セグメントとを有することを特徴とする支承体。
(29)第1及び第2の結合領域の繊維は、ウィーブパターンをなして互いに接合されていることを特徴とする上記実施態様(B)記載の支承体。
(30)支承体は、第1の結合領域、第2の結合領域及び中央セグメントの少なくとも一部を被覆する生体適合性且つ生体再吸収性材料を更に有していることを特徴とする上記実施態様(B)記載の支承体。
【0103】
(31)生体再吸収性材料は、生物学的材料であることを特徴とする上記実施形態(30)記載の支承体。
(32)生体再吸収性材料は、小腸粘膜下組織であることを特徴とする上記実施形態(31)記載の支承体。
(33)生体再吸収性材料は、ラップ、スリーブ又はシースとして第1の繋留アイレット、第2の繋留アイレット、第1の結合領域、第2の結合領域及び中央セグメントを覆って形成されていることを特徴とする上記実施形態(31)記載の支承体。
(34)支承体の少なくとも一部と関連した少なくとも1つのみじん切りされた組織粒子を更に有し、少なくとも1つのみじん切りされた組織粒子は、少なくとも1つのみじん切りされた組織粒子から出て支承体の中に場所を占める有効量の生存細胞を含むことを特徴とする上記実施態様(B)記載の支承体。
(35)少なくとも1つのみじん切りされた組織粒子は、腱、靱帯、膝蓋腱、前十字靱帯、後十字靱帯、内側側副靱帯、外側側副靱帯、骨膜、軟骨膜、腸脛靱帯又は大腱筋膜、薄筋腱、半腱様筋腱、滑膜、皮膚及びこれらの組合せから成る群から選択された無骨組織タイプのものであることを特徴とする上記実施形態(34)記載の支承体。
【0104】
(36)少なくとも1つのみじん切りされた組織粒子は、支承体の第1及び第2の結合領域中に配置された骨組織タイプのものであることを特徴とする上記実施形態(34)記載の支承体。
(37)支承体は、付着剤を更に含むことを特徴とする上記実施形態(34)記載の支承体。
(38)付着剤は、ヒアルロン酸、フィブリングルー、フィブリンクロット、コラーゲンゲル、ゼラチン−レゾルシン−ホルマリン接着剤、イガイから作られた接着剤、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)を主成分とする接着剤、キトサン、トランスグルタミナーゼ、ポリ(アミノ酸)を主成分とする接着剤、セルロースを主成分とする接着剤、合成アクリレートを主成分とする接着剤、血小板に富んだ血漿(PRP)、マトリゲル(Matrigel)、モノステアロイルグリセロールコ−スクシネート(Monostearoyl Glycerol co-Succinate:MGSA)、モノステアロイルグリセロールコ−スクシネート/ポリエチレングリコール(MGSA/PEG)コポリマー、ラミニン、エラスチン、プロテオグリカン及びこれらの組合せから成る群から選択された繋留剤を含むことを特徴とする上記実施形態(37)記載の支承体。
(39)付着剤は、ジビニルスルホン(DVS)、ポリエチレングリコールジビニルスルホン(VS−PEG−VS)、ヒドロキシエチルメタクリレートジビニルスルホン(HEMA−DIS−HEMA)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、アルデヒド、イソシアネート、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、イミドエステル、N−置換マレイミド、アシル化合物、カルボジイミド、ヒドロキシクロリド、N−ヒドロキシスクシンイミド、光、pH、温度及びこれらの組合せから成る群から選択された架橋剤を含むことを特徴とする上記実施形態(37)記載の支承体。
(40)支承体の生体再吸収性ポリマー繊維は、ラクチド、グリコリド、ジオキサノン及びカプロラクトンから成る群から選択されたモノマーから作られたポリマー又はコポリマーで構成されていることを特徴とする上記実施態様(B)記載の支承体。
【0105】
(41)支承体の生体再吸収性ポリマー繊維は、モノマー比が約95:5のラクチドとグリコリドのコポリマーから作られていることを特徴とする上記実施形態(40)記載の支承体。
(42)支承体は、靱帯移植片から成ることを特徴とする上記実施態様(B)記載の支承体。
(43)支承体は、十字靱帯移植片から成ることを特徴とする上記実施形態(42)記載の支承体。
(44)支承体は、これに被着された少なくとも1つの追加の生物学的成分を更に有していることを特徴とする上記実施形態(34)記載の支承体。
(45)少なくとも1つの追加の生物学的成分は、異種成長因子又は自家成長因子、タンパク質、マトリックスタンパク質、ペプチド、抗体、抗生物質、抗炎症薬、治療薬、化学走性剤、細胞付着媒介物質、生物活性リガンド、インテグリン結合配列、酵素、サイトカイン、グリコサミノグリカン、ウイルス、ウイルス粒子、核酸、鎮痛薬、細胞、血小板及びこれらの組合せから成ることを特徴とする上記実施形態(44)記載の支承体。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1】本発明の結合組織支承体の一実施形態の略図である。
図2】結合組織支承体の別の実施形態の略図である。
図3】結合組織支承体の別の実施形態の略図である。
図4】結合組織支承体の別の実施形態の略図である。
図5】(A)乃至(F)は本発明の結合組織支承体の代表的な中央セグメントの断面図である。
図6図3の結合組織支承体の別の実施形態の略図である。
図7図4の結合組織支承体の別の実施形態の斜視図である。
図8】実験例1で説明した結果を示す顕微鏡写真図である。
図9】実験例1で説明した結果を示す顕微鏡写真図である。
【符号の説明】
【0107】
10 生体再吸収性支承体
12a,12b 繋留セグメント
14 中央セグメント
16 長手方向繊維
18 横断方向繊維
20a,20b 結合領域
21 受入れ領域
22 アイレット
24 ループ
26 開口領域
28 繊維
32 ECM又はSIS移植片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9