(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054358
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/407 20060101AFI20161219BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20161219BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
H04N1/40 101E
H04N1/00 C
H04N1/387
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-247660(P2014-247660)
(22)【出願日】2014年12月8日
(65)【公開番号】特開2016-111535(P2016-111535A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2016年6月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】田上 裕也
【審査官】
石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−115701(JP,A)
【文献】
特開2015−023418(JP,A)
【文献】
特開2001−268335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/407
H04N 1/387
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取るスキャナー部と、
読み取られた前記原稿の画像データに対する画像処理を行う画像処理部と、
読み取られた前記原稿の画像データから黒データの有無を判別し、黒データが無ければ読み取られた前記原稿が白紙であることを検知する白紙検知部と、
前記スキャナー部による読み取り動作、前記画像処理部による画像処理、前記白紙検知部による検知動作を制御する制御部とを備え、
前記画像処理部は、
白紙除去機能がONに指定されている場合、前記白紙検知部により白紙であると検知された原稿に該当する前記画像データを除去する白紙除去部と、
読み取られた前記画像データから文字情報を抽出し、抽出した文字情報のデータに対して薄文字補正を行う薄文字モード部とを有し、
前記制御部は、前記白紙除去機能がOFFに指定されている場合、前記白紙検知部により白紙であると検知されると、前記画像処理部に対し、前記薄文字モード部による抽出した文字情報のデータに対する薄文字補正を伴った画像処理を行わせる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記薄文字モード部による薄文字補正は、読み取られた前記画像データから抽出された文字情報のデータに対して濃度を上げるか、又はエッジ強調を行うか、又はガンマ補正を行うことであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を読み取って画像データを生成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、プリンター、多機能プリンター、複合機などのMFP(Multifunction Peripheral)である画像形成装置においては、白紙除去機能を搭載したものがある。
【0003】
この白紙除去機能とは、スキャナー部によって読み取られた原稿が白紙である場合、その白紙に該当する画像データを除去する機能である。
【0004】
このような白紙除去機能を搭載したものとして、特許文献1では、黒データ有無判断手段により、読み取られた原稿の画像データに黒データが全く無いと判断されると、印字出力などを停止させる手段により印字出力などが停止されるようにした画像処理装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−321987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1での画像処理装置では、画像データに黒データが全く無い場合、読み取られた原稿が白紙と判定され、印字出力などが停止されるようにしているため、記録用紙の消費量の増加などが抑制されるようになっている。
【0007】
ところで、このような画像処理装置では、たとえばFAX送信により、セットした原稿を確実に送りたいときには、白紙除去機能をOFFする必要がある。つまり、白紙除去機能をONにしておくと、セットしたいずれかの原稿の文字や細線などが薄いとき、場合によっては読み取られた原稿の画像データに黒データが無いと判断され、読み取られた原稿が白紙と判定されることがある。この場合、白紙と判定された文字や細線などの薄い原稿の画像データの送信が行われなくなってしまうため、白紙除去機能をOFFする必要がある。
【0008】
ところが、白紙除去機能をOFFにしてFAX送信した場合、セットした原稿を確実に送ることは可能となるものの、文字や細線などの薄い画像データがそのまま画像処理(2値化処理など)されると、受信側では薄い文字や細線などの識別が不能となってしまったり、最悪の場合は薄い文字や細線などが消えてしまったりするという問題があった。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解消することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像形成装置は、原稿を読み取るスキャナー部と、読み取られた前記原稿の画像データに対する画像処理を行う画像処理部と、読み取られた前記原稿
の画像データから黒データの有無を判別し、黒データが無ければ読み取られた前記原稿が白紙であることを検知する白紙検知部と、前記スキャナー部による読み取り動作、前記画像処理部による画像処理、前記白紙検知部による検知動作を制御する制御部とを備え、前記画像処理部は、
白紙除去機能がONに指定されている場合、前記白紙検知部により白紙であると検知された原稿に該当する前記画像データを除去する白紙除去部と、
読み取られた前記画像データから文字情報を抽出し、抽出した文字情報のデータに対して薄文字補正を行う薄文字モード部とを有し、前記制御部は、前記白紙除去
機能がOFFに指定されている場合、前記白紙検知部により白紙であると検知されると、前記画像処理部に対し、前記薄文字モード部による
抽出した文字情報のデータに対する薄文字補正を伴った画像処理を行わせることを特徴とする。
また、前記薄文字モード部による薄文字補正は、
読み取られた前記画像データから抽出された文字情報のデータに対して濃度を上げるか、又はエッジ強調を行うか、又はガンマ補正を行うことであることを特徴とする。
本発明の画像形成装置では、制御部により、画像処理部の白紙除去部がOFFに指定されている場合、白紙検知部により白紙であると検知されると、画像処理部の薄文字モード部による薄文字補正を伴った画像処理が行われる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像形成装置によれば、画像処理部の白紙除去部がOFFに指定されている場合、白紙検知部により白紙であると検知されると、画像処理部の薄文字モード部による薄文字補正を伴った画像処理が行われるようにしたので、原稿から読み取った薄い文字や細線などを識別可能となるように補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の画像形成装置の一実施形態を示す図である。
【
図2】
図1の画像処理部の薄文字モード機能による文字や細線などの薄文字補正の一例を説明するための図である。
【
図3】
図1の画像形成装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の画像形成装置の一実施形態を、
図1〜
図3を参照しながら説明する。なお、以下の説明においての画像形成装置の一例としては、たとえばプリンター機能、FAX機能、スキャン機能などの複数の機能を搭載した複合的な周辺機器であるMFP(Multifunction Peripheral)であるものとする。
【0014】
まず、
図1に示すように、MFP100は、制御部110、スキャナー部130、プリンター部131、FAX部132、パネル部133、HDD(Hard disk drive)134を備えている。
【0015】
スキャナー部130は、イメージセンサー(図示省略)によって読み取られる原稿の画像データを制御部110に入力する。すなわち、スキャナー部130は、イメージセンサー(図示省略)からの原稿の画像信号をデジタルの画像データに変換し、順次、制御部110に入力する。
【0016】
プリンター部131は、制御部110から出力される画像データに基づき、用紙上に画像をプリントする。FAX部132は、制御部110から出力される画像データを、電話回線を通じ相手方となるファクシミリへと送信し、また、相手方ファクシミリからの画像データを受信して制御部110に入力する。すなわち、FAX部132は、図示しないNCU(Network Control Unit)により電話回線との接続を制御しつつ、制御部110から出力される画像データを圧縮し変調して、相手方ファクシミリへと送信する。また、FAX部132は、NCUにより電話回線と接続しつつ、相手方ファクシミリからの画像データを復調し伸張して、制御部110に入力する。
【0017】
パネル部133は、MFP100のプリンター機能、FAX機能、スキャン機能のいずれかの選択や、各種設定を行うための操作ボタンなどを表示する。また、MFP100に故障などが生じた場合、故障などが発生した旨を伝えるアイコンなども表示する。
【0018】
HDD134には、MFP100の種々の機能を提供するためのアプリケーションプログラムなどが記憶されている。
【0019】
制御部110は、MFP100全体の動作を制御するものであり、スキャナー制御部111、プリンター制御部112、FAX(Facsimile)制御部113、RAM(Random Access Memory)114、ROM(Read Only Memory)115、画像処理部116、白紙検知部117、パネル操作制御部118、HDD制御部119、システム制御部120を備えている。また、これらは、データバス121に接続されている。
【0020】
スキャナー制御部111は、スキャナー部130の読み取り動作を制御する。プリンター制御部112は、プリンター部131のプリント動作を制御する。FAX制御部113は、FAX部132による画像データの送受信動作を制御する。
【0021】
RAM114は、プログラムを実行するためのワークメモリである。ROM115には、各部の動作チェックなどを行う制御プログラムなどが格納されている。画像処理部116は、たとえばスキャナー部130によって読み取られた原稿の画像データに対する画像処理を行う。すなわち、たとえばパネル部133を介してFAX送信の指定がある場合、FAX送信に必要なデータに変換するための画像処理(ラスタライズ)を行う。また、たとえばパネル部133を介して印刷の指定がある場合、印刷に必要な画像処理(ラスタライズ)を行う。
【0022】
また、画像処理部116は、図示しない白紙除去部と薄文字モード部とを有している。なお、これらの白紙除去部と薄文字モード部とは、機能を示すものである。以下、説明の都合上、白紙除去部を白紙除去機能とし、薄文字モード部を薄文字モード機能と読み替えるものとする。白紙除去機能とは、白紙検知部117により、スキャナー部130によって読み取られた原稿が白紙であると検知された際、白紙原稿に該当する画像データを除去する。なお、白紙除去機能による原稿が白紙であるかどうかの判定は、たとえばスキャナー部130によって読み取られた原稿の画像データの黒データの有無によって行われる。また、この白紙除去機能は、パネル部133を介しての操作により、機能のON/OFFを設定することができる。
【0023】
また、薄文字モード機能とは、スキャナー部130によって読み取られた画像データから文字情報(文字画像)を抽出し、抽出した文字情報(文字画像)のデータに対して、濃度を上げたり、エッジ強調したりすることで、薄い文字や細線などをくっきり表示できるように補正する機能(以下、薄文字補正機能という)である。なお、濃度を上げる方法としては、抽出した文字情報(文字画像)のデータに対して一律で濃度を上げるようにしてもよいし、低濃度の文字情報のデータのみを一定の濃度まで引き上げるようにしてもよい。
【0024】
また、
図2に示すように、入力値(濃度in)に対して出力値(濃度out)を補正直線に沿って一定の補正出力値(補正濃度out)まで高くするようなガンマ補正を行ってもよい。なお、スキャナー部130によって読み取られた画像データを2値化する場合、画像データの黒データを判別する際の閾値を通常より下げてもよい。これにより、原稿の文字や細線などが薄くてもスキャナー部130によって読み取られた画像データから文字情報(文字画像)を確実に抽出することができる。
【0025】
また、スキャナー部130によって読み取られた画像データに含まれる文字情報(文字画像)以外の黒データである、いわゆる通常ノイズを除去するために、ある濃度(予め設定されている濃度)より低濃度のデータを除去する必要がある場合は、より低濃度のデータまで抽出できるように、除去するための閾値を低くすることが好ましい。
【0026】
白紙検知部117は、スキャナー部130によって読み取られた原稿の画像データから黒データの有無を判別し、黒データが無ければ白紙であることを検知する。なお、本実施形態での白紙検知部117は、画像処理部116の白紙除去機能のON/OFFに関わらず、白紙検知を行うものとする。
【0027】
パネル操作制御部118は、パネル部133の表示動作を制御する。HDD制御部119は、HDD134に対するデータの書き込みや読み出しなどを制御する。システム制御部120は、詳細は後述するが、主として画像処理部116の白紙除去機能がOFFに設定されていて、白紙検知部117により白紙であると検知された場合、強制的に画像処理部116の薄文字モード機能を動作させるように制御する。
【0028】
次に、
図3を参照し、MFP100の画像処理の具体例について説明する。
【0029】
まず、システム制御部120により、原稿がセットされたかどうかが判断される(ステップS101)。原稿がセットされていなければ、原稿のセット待ちとなる(ステップS101:No)。これに対し、原稿がセットされたと判断すると(ステップS101:Yes)、システム制御部120によりスキャナー制御部111を介してスキャナー部130が駆動され、原稿の読み取りにより画像データが取得される(ステップS102)。
【0030】
次いで、システム制御部120により、全ての原稿に対する読み取りが終了したかどうかが判断される(ステップS103)。全ての原稿に対する読み取りが終了していなければ(ステップS103:No)、ステップS102に戻り、次の原稿の読み取りにより画像データが取得される。
【0031】
全ての原稿に対する読み取りが終了すると(ステップS103:Yes)、システム制御部120により白紙検知部117が白紙を検知したかどうかが判断される(ステップS104)。白紙検知部117が白紙を検知していなければ(ステップS104:No)、システム制御部120による制御により画像処理部116が駆動され、ユーザー指定の画像処理が行われる(ステップS105)。
【0032】
ここでのユーザー指定の画像処理とは、たとえばパネル部133を介して補正/加工/編集などのいずれか又は全てが指定されている場合、その指定に沿って読み取られた画像データに対する処理を行うことである。
【0033】
これに対し、白紙検知部117が白紙を検知していると(ステップS104:Yes)、システム制御部120により画像処理部116の白紙除去機能がOFFであるかどうかが判断される(ステップS106)。ここで、画像処理部116の白紙除去機能がONであれば、画像処理部116により白紙原稿に該当する画像データが除去される(ステップS107)。
【0034】
これに対し、画像処理部116の白紙除去機能がOFFであれば(ステップS106:Yes)、システム制御部120により強制的に画像処理部116の薄文字モード機能が動作される(ステップS108)。
【0035】
この薄文字モード機能により、スキャナー部130によって読み取られた画像データから文字情報(文字画像)の抽出が行われる(ステップS109)。ここで、文字情報(文字画像)の抽出が行われた場合(ステップS110:Yes)、抽出した文字情報(文字画像)のデータに対して、濃度を上げたり、エッジ強調したりすることで、薄い文字や細線などがくっきり表示できるように薄文字補正が行われる(ステップS111)。
【0036】
これに対し、文字情報(文字画像)の抽出が行われなかった場合(ステップS110:No)、原稿には文字や細線などが記載されていないことになる。そして、ステップS110で文字情報(文字画像)の抽出が行われなかった場合や、ステップS111での薄文字補正や、ステップS105でのユーザー指定の画像処理が終了すると、画像処理部116による出力処理が行われる(ステップS112)。
【0037】
ここでの出力処理は、たとえばパネル部133を介してFAX送信の指定がある場合、FAX送信に必要なデータに変換するための画像処理(ラスタライズ)が行われる。また、たとえばパネル部133を介して印刷の指定がある場合、印刷に必要な画像処理(ラスタライズ)が行われる。
【0038】
このように、本実施形態では、制御部としてのシステム制御部120により、画像処理部116の白紙除去機能(白紙除去部)がOFFに指定されている場合、白紙検知部117により白紙であると検知されると、画像処理部116の薄文字モード機能(薄文字モード部)による薄文字補正を伴った画像処理が行われるようにした。
【0039】
このように、画像処理部116の白紙除去機能(白紙除去部)がOFFに指定されている場合、画像処理部116の薄文字モード機能(薄文字モード部)による薄文字補正を伴った画像処理が行われるようにしたので、原稿から読み取った薄い文字や細線などを識別可能となるように補正することができる。
【0040】
また、本実施形態では、薄文字モード機能(薄文字モード部)による薄文字補正が行われる際、画像データから抽出された文字情報のデータに対して濃度を上げるか、又はエッジ強調を行うか、又はガンマ補正を行うようにしているため、原稿の文字や細線などが薄くてもスキャナー部130によって読み取られた画像データから文字情報(文字画像)を確実に抽出することができる。
【符号の説明】
【0041】
100 MFP
110 制御部
111 スキャナー制御部
112 プリンター制御部
113 FAX制御部
114 RAM
115 ROM
116 画像処理部
117 白紙検知部
118 パネル操作制御部
119 HDD制御部
120 システム制御部
121 データバス
130 スキャナー部
131 プリンター部
132 FAX部
133 パネル部
134 HDD