(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
300℃を超える沸点を有する炭化水素を含有する供給材料を、中間留分及び軽質オレフィン、プロピレン及びブチレンに変換するための統合型水素化分解及び流動接触分解プロセスであって、
a.前記供給材料及び水素を、第1の水素化分解触媒を含有する第1の水素化分解反応帯に導入して、第1の反応帯溶出物を生成するステップ、
b.前記第1の反応帯溶出物を分留帯に送って、少なくとも低沸点留分及び高沸点留分、並びに随意に1つ又は複数の中間留分を生成するステップ、
c.前記高沸点留分を流動接触分解反応及び分離帯に送り、前記流動接触分解反応及び分離帯が、オレフィン消費反応を最小限に抑える条件下で操業し、下降流構成である流動接触分解反応器を含み、580℃〜630℃の範囲の反応温度、10:1〜30:1の触媒対油比、並びに0.1秒〜1秒の触媒粒子及び前記高沸点留分間の接触時間で操業するステップ、
d.前記供給材料の容積に基づき、少なくとも10V%〜20V%の量の軽質オレフィン、プロピレン及びブチレンを、前記流動接触分解反応及び分離帯から回収するステップ、
e.前記流動接触分解反応及び分離帯からガソリンを回収するステップ、
f.前記流動接触分解反応及び分離帯からの残りの循環油の少なくとも一部分並びに水素を、第2の水素化分解触媒を含有する第2の水素化分解反応帯に運搬して、第2段階溶出物を生成するステップ、及び
g.前記第2段階溶出物の少なくとも一部分を、前記分留帯及び/又は前記第1の水素化分解反応帯に再循環させるステップを含み
前記統合型水素化分解及び流動接触分解プロセスは、前記第1及び第2の水素化分解反応帯のいずれか又は両方において水素化分解ユニットの変換率を変更することにより、所望の産物スレートに基づいて、柔軟性を提供するように操業され、前記水素化分解ユニットの変換率の変更は、
前記第1の又は第2の水素化分解反応帯において効率が低下した触媒で操業することにより、残油生産を促進し、流動接触分解反応器への供給材料の量を増加させ、それによりその産物オレフィン及び/又はガソリンの増加をもたらすこと、又は
比較的低いレベルの水素供給で操業することにより、水素の費用を低減し、流動接触分解反応器への供給材料の量を増加させ、それによりその産物オレフィン及び/又はガソリンの増加をもたらすこと
の1つまたは複数によるものであり、前記第1の又は第2の水素化分解反応帯における前記操業条件は、1m3当たりの正規化m3で500(Nm3/m3)〜2500Nm3/m3の水素/油比を含む、プロセス。
300℃を超える沸点を有する炭化水素を含有する供給材料を、中間留分及び軽質オレフィン、プロピレン及びブチレンに変換するための統合型水素化分解及び流動接触分解プロセスであって、
a.前記供給材料及び水素を、第1の水素化分解触媒を含有する第1の水素化分解反応帯に導入して、第1の反応帯溶出物を生成するステップ、
b.前記第1の反応帯溶出物を分留帯に送って、少なくとも低沸点留分及び高沸点留分、及び随意に1つ又は複数の中間留分を生成するステップ、
c.前記高沸点留分を流動接触分解反応及び分離帯に送り、前記流動接触分解反応及び分離帯が、オレフィン消費反応を最小限に抑える条件下で操業し、上昇流構成である流動接触分解反応器を含み、500℃〜620℃の範囲の反応温度、8:1〜20:1の触媒対油比、並びに1秒〜2秒の触媒粒子及び前記高沸点留分間の接触時間で操業するステップ、
d.前記初期供給材料の容積に基づき、少なくとも10V%〜20V%の量の軽質オレフィン、プロピレン及びブチレンを、前記流動接触分解反応及び分離帯から回収するステップ、
e.前記流動接触分解反応及び分離帯からガソリンを回収するステップ、
f.前記流動接触分解反応及び分離帯からの残りの循環油の少なくとも一部分及び水素を、第2の水素化分解触媒を含有する第2の水素化分解反応帯に運搬して、第2段階溶出物を生成するステップ、及び
g.前記第2段階溶出物の少なくとも一部分を、前記分留帯及び/又は前記第1の水素化分解反応帯に再循環させるステップを含み
前記統合型プロセスは、前記第1及び第2の水素化分解反応帯のいずれか又は両方において水素化分解ユニットの変換率を変更することにより、所望の産物スレートに基づいて、柔軟性を提供するように操業され、前記水素化分解ユニットの変換率の変更は、
前記第1の又は第2の水素化分解反応帯において効率が低下した触媒で操業することにより、残油生産を促進し、流動接触分解反応器への供給材料の量を増加させ、それによりその産物オレフィン及び/又はガソリンの増加をもたらすこと、又は
比較的低いレベルの水素供給で操業することにより、水素の費用を低減し、流動接触分解反応器への供給材料の量を増加させ、それによりその産物オレフィン及び/又はガソリンの増加をもたらすこと
の1つまたは複数によるものであり、前記第1の又は第2の水素化分解反応帯における操業条件は、1m3当たりの正規化m3で500(Nm3/m3)〜2500Nm3/m3の水素/油比を含む、プロセス。
前記形状選択的ゼオライトが、ZSM−5ゼオライト、ゼオライトオメガ、SAPO−5ゼオライト、SAPO−11ゼオライト、SAPO−34ゼオライト、ペンタシル型アルミノケイ酸塩、及び前記形状選択的ゼオライトの少なくとも1つを含む組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載のプロセス。
【背景技術】
【0002】
水素化分解プロセスは、多数の石油精製所で商業的に使用されている。水素化分解プロセスは、従来の水素化分解ユニットでは、370℃〜520℃の範囲で沸騰する種々の供給原料を、残油水素化分解ユニットでは、520℃以上で沸騰する種々の供給原料を処理するために使用される。一般的に、水素化分解プロセスでは、供給原料の分子が、より高い平均揮発性及び経済的価値を有するより小さな分子、つまりより軽い分子へと分割される。加えて、水素化分解プロセスは、典型的には、水素対炭素比を増加させることにより、並びに有機硫黄化合物及び有機窒素化合物を除去することにより、炭化水素供給材料の品質を向上させる。水素化分解操業は、著しい経済的利益をもたらすため、プロセス向上及び高活性触媒の本格的な開発が行われている。
【0003】
穏やかな水素化分解又は単段階貫流水素化分解は、水素処理プロセスよりも過酷であるが、従来の全圧水素化分解プロセスほど過酷ではない操業条件で生じる。この水素化分解プロセスは、対費用効果がより高いが、典型的には、製品収率及び製品品質の低下をもたらす。穏やかな水素化分解プロセスでは、従来の水素化分解と比較して、より少量で比較的より低品質の中間留出物産物が生成される。加工される供給材料及び製品仕様に応じて、単一触媒系又は多触媒系を使用することができる。単段階水素化分解は、種々の構成の中で最も単純なものであり、典型的には、単一触媒系又は2元触媒系よりも中間留出物収率を最大化するように設計されている。2元触媒系は、積層床構成又は複数反応器として実施することができる。
【0004】
連続流動構成では、軽質ガス(light gas)(例えば、C
1〜C
4、H
2S、NH
3)及び残り全ての炭化水素を含む、第1の反応器からの水素処理/水素化分解された産物流動全体が、第2の反応器に送られる。2段階構成では、供給材料は、第1の反応器の水素処理触媒床を通過することにより精製される。溶出物は、分留塔を通過し、36℃〜370℃の温度範囲で沸騰する軽質ガス、ナフサ、及びディーゼル産物が分離される。その後、370℃超で沸騰する炭化水素が、更なる分解ために第2の反応器に送られる。
【0005】
流動接触分解(FCC)プロセスでは、石油由来炭化水素は、流動状態に維持された酸性触媒を用いて触媒的に分解され、触媒は、継続的に再生される。そのようなプロセスの主要産物は、一般的にガソリンである。液化石油ガス及び分解軽油等の他の産物も、FCCプロセスにより、より少量が生成される。触媒に堆積したコークスは、再生触媒を反応帯に再循環させる前に、空気の存在下で高温にて焼却される。
【0006】
近年、ガソリンに加えて、種々の化学プロセスに有用な原料である軽質オレフィンをFCC操業で生産する傾向がある。このような操業は、特に、石油化学製品生産設備と高度に統合されている石油精製所の場合、著しい経済的利点を有する。
【0007】
FCC操業により軽質オレフィンを生産する方法には、様々なものが存在する。あるFCC操業は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,419,221号(特許文献1)、米国特許第3,074,878号(特許文献2)、及び米国特許第5,462,652号(特許文献3)に開示されているように、供給材料を触媒と短時間接触させることに基づく。しかしながら、供給材料と触媒との接触が短時間だと、典型的には、供給材料の変換率が比較的低くなる。
【0008】
他のFCC操業は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,326,465号(特許文献4)に開示されているように、ペンタシル型ゼオライトを使用することに基づく。しかしながら、ペンタシル型ゼオライト触媒の使用は、これも価値の高い産物であるガソリン留分を過度に分解することにより、軽質留分炭化水素の収率を増強することになるに過ぎない。
【0009】
更なるFCC操業は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,980,053号(特許文献5)に開示されているもの等、高温にて分解反応を実施することに基づく。しかしながら、この方法では、比較的高いレベルの乾燥ガス生産がもたらされる場合がある。
【0010】
更なるFCC操業は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,656,346号(特許文献6)に開示されているように、特定の塩基分解触媒(base cracking catalyst)及び形状選択的ゼオライトを含む添加剤の触媒混合物を使用して、高温及び短い接触時間で供給材料油を分解することに基づく。この方法に基づくプロセスは、高過酷度流動接触分解(HS−FCC)としても知られている。このプロセスの特徴には、下降流反応器、高い反応温度、短い接触時間、及び高い触媒対油比が含まれる。
【0011】
下降流反応器は、気化供給材料で固体触媒粒子を上昇させる必要がないため、より高い触媒対油比が可能であり、これは、HS−FCCに特に好適である。加えて、HS−FCCプロセスは、従来のFCCプロセスと比較して、かなりより高い反応温度(550℃〜650℃)で操業される。こうした反応温度下では、2つの競合分解反応、熱分解及び接触分解が生じる。熱分解は、乾燥ガス及びコークス等の軽質産物の形成に寄与し、接触分解は、プロピレン及びブチレン収率を増加させる。また、下降流反応器での滞留時間が短いことは、熱分解を最小限に抑えるのに好ましい。オレフィンを消費する水素転移反応等の望ましくない二次反応は、抑制される。反応器入口で触媒粒子及び供給材料を混合及び分散させ、その後反応器出口で直ちに分離することにより、所望の短い滞留時間が達成される。接触時間が短いことによる変換率の低下を補うために、HS−FCCプロセスは、比較的高い触媒対油比で操業される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
減圧軽油等の炭化水素供給材料を精製及び水素化分解して、収率の向上、並びに軽質オレフィン、プロピレン、及びブチレン、並びに中間留分産物を含むより高品質の産物を得るための統合型プロセス及び装置が提供される。典型的には、水素化分解ユニットは、軽質オレフィンを生成せず、従来のFCCプロセス又は高過酷度FCCプロセスは、輸送燃料としての使用に好適な中間留出物を生成しない。しかしながら、本明細書で提供される統合型プロセス及び装置では、全て又はほとんどの未変換残油が統合型ユニットの装置境界内で処理されるため、副産物の生成を最小限に抑えつつ、軽質オレフィン及び中間留分産物が両方とも生成される。本プロセス及び装置によると、第1段階水素化分解流出物が分留装置の上部に供給され、残油(例えば、370℃以上で沸騰する)のみが、FCC反応及び分離帯に送られて分解され、したがって重質留分が中間留分(例えば、180℃〜370℃の範囲で沸騰する)に更に分解されるため、全体的な中間留分収率が向上する。
【0022】
重要なことには、水素化分解及びFCC操業を統合することにより、個々の非統合型プロセスでは不可能なレベルの柔軟性が達成される。例えば、反応器の選択、触媒のタイプ、触媒活性低下の程度、操業条件、及び供給材料の特定の特徴を含むが、それらに限定されない要因により、水素化分解ユニット転換率が比較的高い、例えば80V%である操業では、FCCユニットへの供給材料はより少量となり、その結果、統合型ユニットは、より多くのナフサ及びディーゼル産物を生成し、プロピレン等の軽質オレフィンの生成はより少量となるであろう。他方では、水素化分解ユニット変換率が、比較的低いレベル、例えば60V%である操業では、FCCユニットへの供給材料は相対的に増加し、それにより、比較的より高いレベルのオレフィン産物が生じることになる。表1には、水素化分解ユニットの変換レベルに対する、オレフィン、ナフサ、及び中間留分産物の例示的な容積パーセント収率が示されている。特に、オレフィン収率は、水素化分解装置変換率が20V%に過ぎない場合の約19V%と高い値から、水素化分解装置変換率が100V%である場合の0V%までの範囲であり得、容積パーセントは、初期供給材料の容積に基づく。
【0023】
【表1】
*FCC供給材料値は近似であり、水素化分解変換レベルに基づく。値は、水素化分解装置に取り込まれたガス供給材料の組成及び水素の量のため、わずかに高い又は低い場合がある。
【0024】
一般的に、分解を向上させるためのプロセス及び装置は、供給材料が、水素の存在下で水素処理(つまり、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化)及び分解される第1の水素化分解反応帯を含む。第1の水素化分解反応帯から得られる分解された炭化水素、並びに部分的に分解された炭化水素及び未変換炭化水素を含有する、第1の水素化分解反応帯からの流出物を分留する。未変換炭化水素、並びに所定の流動接触分解供給材料カットポイント超で沸騰するあらゆる分解された炭化水素及び/又は部分的に分解された炭化水素を含む分留装置残油を、流動接触分解(FCC)反応及び分離帯に送る。FCC装入物を分解し、FCC流出物を、分解反応から生じる軽質オレフィン及びガソリン、並びに未変換炭化水素及び部分的に分解された炭化水素、例えば循環油を含む重質成分に分離する。重質成分を、第2の水素化分解反応帯で更に水素化及び分解し、流出物を、FCC反応及び分離帯から上流の分留装置に戻す。
【0025】
特に、
図1を参照すると、統合型水素化分解及び流動接触分解装置6のフローダイヤグラムが提供されている。装置6は、第1の水素化分解触媒を含有する第1の水素化分解反応帯12、分留帯16、FCC反応及び分離帯32、並びに第2の水素化分解触媒を含有する第2の水素化分解反応帯46を含む。
【0026】
第1の水素化分解反応帯12は、供給材料及び水素ガスを受容するための供給材料入口11を含む。入口11は、導管8を介して供給材料の供給源と、導管10を介して水素の供給源と液体連通している。更なる実施形態では、第1の水素化分解反応帯は、別の供給材料入口及び1つ又は複数の別の水素入口を含んでいてもよい。
【0027】
第1の水素化分解反応帯12では、ガス、ナフサ、中間留分、並びに部分的に分解された炭化水素及び未変換の炭化水素を含むより高沸点の炭化水素を含む中間産物が生成される。中間産物は、第1の水素化分解反応帯出口14を介して吐出され、分留帯16に運搬される。
【0028】
分留帯16は、第1の水素化分解反応帯出口14と流体連通している入口15を含む。加えて、下述のように、入口15は、混合装入物が分留帯16で分留されるように、第2の水素化分解反応帯出口47とも液体連通している。
【0029】
1つの実施形態では、混合装入物は、例えば、約36℃未満の沸点を有する分子を含有し、出口18を介して吐出される頂塔ガス;約36℃〜約180℃の範囲の沸点を有し、出口20を介して吐出されるナフサ留分、及び約180℃〜約370℃の範囲の沸点を有し、出口22を介して吐出される中間留分画分を含む随意の1つ又は複数の中間留分;及び例えば、約370℃の初留点を有し、出口24を介して吐出される残油留分に分留される。頂塔ガスの部分18aは、分離及び洗浄した後で、第1の水素化分解反応帯12及び/又は第2の水素化分解反応帯46に再循環させることができる。
【0030】
別の実施形態では、混合装入物は、出口18を介して吐出される低沸点留分、出口(出口20又は出口22のいずれか1つであればよく、他方の出口は必要ではない)を介して吐出される中間沸点留分、及び出口24を介して吐出される高沸点留分に分留される。中間沸点留分は、例えば、ナフサ留分及び中間留分へと更に分離又は処理するための下流単位操作(非表示)に送ることができる。
【0031】
更なる実施形態では、分留帯16からのナフサ及び/又は中間留分は、例えば、軽質オレフィン及び/又はガソリンに転換するために、FCC反応及び分離帯32(
図1には表示されていない)に送ることができる。ナフサ及び/又は中間留分は、高沸点留分と一緒に運搬することができる。或いは、ナフサ及び/又は中間留分は、高沸点留分とは別々に、FCCユニットの異なる上昇流又は下降流に、又は別々のFCCユニットに運搬される。
【0032】
更なる実施形態では、混合装入物は、出口18を介して吐出される低沸点留分、及び出口24(この場合、出口20及び出口22は必要ではない)を介して吐出される高沸点留分に分留される。この実施形態では、分留装置のカットポイントは、例えば370℃であってもよく、その温度では、約36℃〜約180℃の範囲で沸騰するナフサ留分、及び約180℃〜約370℃の範囲で沸騰する中間留分画分が、頂塔ガスと共に吐出され、ナフサ及び中間留分の収集を含む更なる分離又は処理のための下流単位操作(非表示)に送られる。水素及びC
1〜C
4等の軽質炭化水素を含む頂塔ガスの部分18aは、分離及び洗浄した後で、第1の水素化分解反応帯12及び/又は第2の水素化分解反応帯46に再循環させることができる。
【0033】
ある実施形態では、装置汚損を引き起こす可能性がある重質多環芳香族化合物を除去するために、出口24からの吐出流と液体連通する随意の流出口49が設けられている。流出する残油留分又は高沸点留分の部分は、約0V%〜約10V%であってもよく、ある実施形態では約1V%〜約5V%であってもよく、及び更なる実施形態では約1V%〜約3V%であってもよい。
【0034】
出口24を介して吐出される残油留分又は高沸点留分は、水素転移反応等のオレフィン消費反応を最小限に抑えつつオレフィンの形成を促進する条件下で操業されるFCC反応及び分離帯32に運搬される。FCC反応及び分離帯32は、一般的に、装入物及び有効量の流動分解触媒が導入される1つ又は複数の反応域を含む。加えて、FCC反応及び分離帯32は、コークス化しており、したがって活性触媒部位への接近性が制限されているか又は存在しなくなった分解触媒を、高温及び酸素供給源に曝して、蓄積したコークスを燃焼させ、使用済み触媒に吸着した重油を水蒸気で剥離する再生域を含む。加えて、FCC反応及び分離帯32は、FCC反応産物をオレフィン、ガソリン、及び重質産物に分配するための分留塔等の分離装置を含む。あるFCCユニットの配置が、
図2及び
図3に基づき本明細書に記載されているが、当業者であれば、他の周知のFCCユニットを使用することができることを理解するだろう。
【0035】
一般的に、FCC反応及び分離帯32は、分留帯16の高沸点又は残油出口24と液体連通している供給材料入口28を含む。更なる実施形態では、第1の水素化分解反応帯12に導入される供給材料とは別の供給材料の供給源が、随意に、例えば導管26を介してFCC反応及び分離帯32に運搬される。この供給材料は、第1の水素化分解反応帯12に導入される供給材料と、その特徴が同じであってもよく又は異なっていてもよい。ある実施形態では、導管26を介して導入される供給材料は、硫黄及び窒素含有量が低い、処理された減圧軽油である。加えて、水蒸気を供給材料28と一緒にして、供給材料をFCCユニットに噴霧又は分散してもよい。
【0036】
FCC反応及び分離帯32は、産物、部分的に分解された炭化水素、未反応炭化水素、及び副産物を吐出するための複数の出口を含む。特に、流動接触分解反応器からの流出物は、分留されて、水及びガス出口34、オレフィン出口36、ガソリン出口38、軽質循環油出口40、及び重質循環油出口41を介して吐出される。ある実施形態では、軽質及び重質循環油が両方とも、単一の出口を介して吐出されてもよい。オレフィン及びガソリンは、最終産物又は中間産物として回収及び収集され、つまり、更なる下流の分離及び/又は処理にかけることができる。
【0037】
FCC反応及び分離帯出口40からの軽質循環油、及びFCC反応及び分離帯出口41からの重質循環油を含む循環油は、混合され、例えば、導管43を介して第2の水素化分解反応帯46に運搬される。重質循環油流動よりも重質なスラリー油流動であり、典型的には、触媒粒子を含有する流出流動42が、FCC反応及び分離帯32から吐出される場合もある。第2の水素化分解反応帯46は、導管44を介して導管43及び水素の供給源と液体連通している、循環油及び水素を受容するための入口45を含む。更なる実施形態では、第2の水素化分解反応帯は、別の循環油入口及び1つ又は複数の別の水素入口を含んでいてもよい。なお、水素の供給源は、第1の水素化分解反応帯12に供給するのと同じ供給源であってもよく、又は別の供給源であってもよいことに留意されたい。例えば、あるシステムでは、第1の水素化分解反応帯12及び第2の水素化分解反応帯46で、異なる純度レベル及び/又は水素分圧の水素を提供することが望ましい場合がある。
【0038】
第2の水素化分解反応帯46では、ガス、ナフサ、中間留分、並びに部分的に分解された炭化水素及び未変換の炭化水素を含むより高沸点の炭化水素を含む中間産物が生成される。第1の水素化分解反応帯12からの中間産物流動と共に、導管48を介して分留帯16に送られる中間産物流動は、第2の反応帯出口47を介して吐出される。
【0039】
ある随意の実施形態では、第2の水素化分解反応帯中間産物の少なくとも部分を、例えば、導管50を介して第1の水素化分解反応帯12の入口11に再循環させることができる。
【0040】
有利には、本発明のプロセスでは、中間留分生産量は、入口8及び26からの初期供給材料に基づき、約10V%〜約60V%、ある実施形態では約20V%〜約50V%、及び更なる実施形態では約20V%〜約40V%であり得る。加えて、軽質オレフィン生産量は、入口8及び26からの初期供給材料に基づき、約3V%〜約20V%、ある実施形態では約5V%〜約20V%、及び更なる実施形態では約10V%〜約20V%であり得る。上記の表1に示されているように、軽質オレフィン生産量及び中間留分生産量は、ほぼ反比例し、つまり、水素化分解装置変換のレベルが低下することにより中間留分生産量が減少するため、より多くの供給材料がFCC操業に送られ、それにより軽質オレフィンの生産量が増加する。
【0041】
上述の装置及びプロセスで使用される(つまり、導管8及び随意に導管26を介して導入される)初期供給材料は、種々の供給源から得られる部分的に精製された石油産物であってもよい。一般的に、供給材料は、約300℃を超える、ある実施形態では約370℃〜約600℃の減圧軽油範囲の沸点を有する炭化水素を含有する。部分的精製油供給材料の供給源は、粗精製油、合成粗精製油、ビチューメン、オイルサンド、シェルオイル(shell oil)、石炭液化油、又は先述の供給源の1つを含む組み合わせであってもよい。例えば、部分的精製油供給材料は、減圧軽油、溶剤脱瀝プロセスから得られる脱瀝油及び/若しくは脱金属化油、コーカープロセスから得られる軽質コーカー若しくは重質コーカー軽油、本明細書に記載の統合型FCCプロセスとは異なるFCCプロセスから得られる循環油、ビスブレーキングプロセスから得られる軽油、又は先述の部分的に精製された石油産物の任意の組み合わせであってもよい。ある実施形態では、減圧軽油は、統合型分解プロセスに好適な初期供給材料である。
【0042】
第1の水素化分解反応帯及び第2の水素化分解反応帯は、同じタイプの反応器又は異なるタイプの反応器を含んでいていてもよい。好適な反応装置には、固定層反応器、移動層反応器、沸騰床反応器(ebullated bed reactor)、バッフル付スラリー槽反応器(baffle−equipped slurry bath reactor)、撹拌槽反応器(stirring bath reactor)、回転管反応器(rotary tube reactor)、スラリー床反応器(slurry bed reactor)、又は当業者により認識されることになる他の好適な反応装置が含まれる。ある実施形態では、特に減圧軽油及び類似の供給材料の場合、固定層型反応器が、第1の水素化分解反応帯及び第2の水素化分解反応帯の両方に使用される。更なる実施形態では、特により重質の供給材料及び他の分解困難な供給材料の場合、沸騰床反応器が、第1の水素化分解反応帯及び第2の水素化分解反応帯の両方に使用される。
【0043】
一般的に、水素化分解反応帯における反応器の操業条件には、以下のものが含まれる:
約300℃〜約500℃、ある実施形態では、約330℃から約475℃、及び更なる実施形態では、約330℃〜約450℃の反応温度、
約60kg/cm
2〜約300kg/cm
2、ある実施形態では約100kg/cm
2〜約200kg/cm
2、及び更なる実施形態では約130kg/cm
2〜約180kg/cm
2の水素分圧、
約0.1時間
−1〜約10時間
−1、ある実施形態では約0.25時間
−1〜約5時間
−1、及び更なる実施形態では0.5時間
−1〜2時間
−1の時間基準液空間速度(LHSV)、及び
1m
3当たりの正規化m
3で約500(Nm
3/m
3)〜約2500Nm
3/m
3、ある実施形態では約800Nm
3/m
3〜約2000Nm
3/m
3、及び更なる実施形態では約1000Nm
3/m
3〜約1500Nm
3/m
3の水素/油比。
【0044】
特定の装入物及び所望の産物に好適な触媒は、反応帯内で水素化分解反応器に維持される。当業者に知られているように、触媒は、第1の反応帯と第2の反応帯とで異なっていてもよい。
【0045】
ある実施形態では、第1の反応帯水素化分解触媒には、非晶質アルミナ触媒、非晶質シリカアルミナ触媒、ゼオライト系触媒のいずれか1つ又はそれらを含む組み合わせが含まれる。第1の反応帯水素化分解触媒は、ある実施形態では、Ni、W、Mo、又はCoのいずれか1つ又はそれらを含む組み合わせを含む活性相材料を有していてもよい。
【0046】
第1の水素化分解反応帯での目的が水素化脱窒素であるある実施形態では、Ni−Mo活性金属若しくはNi−W活性金属又はそれらの組み合わせに坦持された酸性アルミナ系又はシリカアルミナ系触媒が使用される。一般的に窒素の存在を許容しない第2の水素化分解反応帯触媒が提供できるように、第1の水素化分解反応帯では、一般的に水素化脱窒素反応が目的とされる。水素化脱硫反応も、これら水素化脱窒素触媒を使用するプロセス圧力及び温度で生じる。相当量の硫黄化合物が、水素化脱窒素条件で変換される。窒素を全て除去し、炭化水素の変換を増加させることが目的である実施形態では、Ni−Mo、Ni−W、又はそれらの組み合わせを含む活性金属と共に、シリカアルミナ、ゼオライト、又はそれらの組み合わせが、触媒として使用される。
【0047】
ある実施形態では、第2の反応帯水素化分解触媒は、ゼオライト系触媒、非晶質アルミナ触媒、非晶質シリカアルミナ触媒のいずれか1つ又はそれらを含む組み合わせを含む。精製された又は部分的分解された供給材料をより軽質な留分へと効果的に変換するための好適な触媒には、Ni−Mo、Ni−W、又はそれらの組み合わせを含む活性金属と共に、シリカアルミナ、ゼオライト、又はそれらの組み合わせ等の酸性触媒が含まれる。
【0048】
オレフィンの形成を促進し、水素転移反応等のオレフィン消費反応を最小限に抑える条件下で、接触分解反応が、FCC反応及び分離帯32で生じる。これら条件は、一般的に、FCCユニットのタイプ及び構成に依存する。
【0049】
オレフィン及びガソリンの形成を促進する条件下で稼働する種々のタイプの流動接触分解反応器が知られており、それらには、以下のものが含まれる:日本の新日本石油株式会社により開発された高過酷度FCCプロセス、北京、中国のSINOPEC Research Institute of Petroleum Processing社により開発された深度接触分解(Deep Catalytic Cracking)(DCC−I及びDCC−II)及び接触熱分解プロセス(Catalytic Pyrolysis Process)、インドのIndian Oil Corporation社により開発されたIndmaxプロセス、アービング、テキサス州、米国のExxonMobil社及びヒューストン、テキサス州、米国のKBR,Inc.社により開発されたMAXOFIN(商標)、Fortum、フィンランドのFortum Corporation社により開発されたNExCC(商標)、デスプレインズ、イリノイ州、米国のUOP LLC社により開発されたPetroFCC、ブルームフィールド、ニュージャージー州、米国のABB Lummus Global,Inc.社により開発された選択的成分分解(Selective Component Cracking)、ブラジルのPetrobras社により開発された高オレフィンFCC、及びストートン、マサチューセッツ州、米国のStone & Webster,Incorporated社により開発された超選択的分解(Ultra Selective Cracking)。
【0050】
ある実施形態では、好適な高過酷度流動接触分解単位操作は、下降流反応器を含み、反応温度が高いこと、接触時間が短いこと、及び触媒対油比が高いことを特徴とする。下降流反応器では、気化した供給材料で触媒を上昇させる必要性が求められないため、より高い触媒対油比が可能になる。反応温度は、従来の流動接触分解反応温度よりも高い約550℃〜約650℃の範囲である。こうした反応温度下では、2つの競合する分解反応、熱分解及び接触分解が生じる。熱分解は、より軽質の産物、主に乾燥ガス及びコークスの形成に寄与し、接触分解は、プロピレン収率を増加させる。したがって、熱分解を最小限に抑えるためには、下降流反応器での滞留時間は、比較的短く、例えば、約1秒未満であり、ある実施形態では約0.2〜0.7秒間である。オレフィンを消費する水素転移反応等の望ましくない二次反応は、滞留時間が非常に短いため抑制される。短い滞留時間で変換を最大化するために、例えば20:1を超える高い触媒対油比が使用され、触媒及び供給材料は、反応器入口で混合及び分散され、反応器出口で直ちに分離される。
【0051】
ある実施形態では、オレフィンの形成を促進し、水素転移反応等のオレフィン消費反応を最小限に抑える条件下で稼働する、下降流反応器を有するように構成されたFCCユニットが提供される。
図2は、下降流反応器を含み、本発明によるハイブリッドシステム及びプロセスで使用することができるFCCユニット100の一般化プロセスフローダイヤグラムである。FCCユニット100は、反応帯114及び分離帯116を有する反応器/分離器110を含む。FCCユニット100は、使用済み触媒を再生するための再生帯118も含む。
【0052】
特に、装入物120は、ある実施形態では、有効量の加熱された新しい固体分解触媒粒子又は再生帯118からの高温で再生された固体分解触媒粒子と共に、また供給材料を微粒化するための水蒸気又は他の好適なガスと一緒に反応帯に導入され、また、例えば、一般的に移送ライン又は給水塔と呼ばれる下方に向かう導管又はパイプ122を通って、反応帯114の最上部の取り出しウエル又はホッパー(非表示)に移送される。高温触媒流は、典型的には、反応帯114の混合帯又は供給材料インジェクション部分に均一に送るために、安定化することが可能である。
【0053】
分留帯からの残油留分は、単独で又は上記で考察されている追加供給材料と組み合わせて、FCCユニット100への装入物としての役目を果たす。装入物は、典型的には、再生触媒を反応帯114に導入する地点付近に位置する供給材料インジェクションノズルから混合帯にインジェクトされる。これら複数のインジェクションノズルは、触媒及び油の完全な及び均一な混合をもたらす。装入物が高温触媒と接触すると、分解反応が生じる。炭化水素分解産物の反応蒸気、未反応供給材料、及び触媒混合物は、反応帯114の残りを通って、反応器/分離器110の底部にある迅速分離帯116に迅速に流れる。分解された炭化水素及び未分解の炭化水素は、導管又はパイプ124を介して、当技術分野で知られている従来の産物回収域に送られる。
【0054】
温度管理のために必要な場合、急冷インジェクションを、分離帯116直前の反応帯114の底部近くに設けることができる。この急冷インジェクションは、分解反応を迅速に低下又は停止させ、分解過酷度を制御するために使用することができ、プロセス柔軟性の追加を可能にする。
【0055】
再生帯118からの再生触媒の反応帯114の最上部への流れを制御する触媒スライド弁(非表示)を開閉することにより、反応温度、つまり下降流反応器の出口温度を制御することができる。吸熱分解反応に必要な熱は、再生触媒により供給される。高温再生触媒の流速を変更することにより、操業過酷度又は分解条件を制御して、軽質オレフィン炭化水素及びガソリンを所望の収率で生産することができる。
【0056】
また、再生帯118へと移送される触媒から油を分離するためのストリッパ132が設けられている。分離帯116からの触媒は、水蒸気等の好適なストリッピングガスが流動ライン134を介して導入される触媒ストリッピング域を含むストリッパ132の下側域へと流れる。ストリッピング域には、典型的には、下方に流れる触媒が、流動ストリッピングガスと対向する流動で通過する幾つかのバッフル又は構造化パッキング(非表示)が設けられている。上方に流れるストリッピングガスは、典型的には水蒸気であり、触媒細孔又は触媒粒子間に残留するあらゆる追加の炭化水素を「ストリップ」又は除去するために使用される。
【0057】
ストリップされた触媒又は使用済みの触媒は、再生帯118の揚力上昇管を通る燃焼空気流動128からの揚力により移送される。この使用済み触媒は、追加燃焼空気とも接触させることができ、あらゆる蓄積コークスを制御された様式で燃焼させる。煙道ガスは、導管130を介して再生器から除去される。再生器では、副産物コークスの燃焼から生じる熱が触媒に移動して、反応帯114での吸熱分解反応のための熱を提供するのに必要とされる温度を上昇させる。
【0058】
1つの実施形態では、オレフィンの形成を促進し、オレフィン消費反応を最小限に抑える、
図1のシステムに統合することができる好適なFCCユニット100は、高過酷度流動接触分解反応器を含み、米国特許第6,656,346号(特許文献6)及び米国特許出願公開第2002/0195373号(特許文献7)に記載のものに類似していてもよく、それらの文献は両方とも、参照により本明細書に組み込まれる。下降流反応器の重要な特性には、反応器の最上部から供給材料を下方流で導入すること、上昇流反応器と比較して滞留時間がより短いこと、及び触媒対油比が、例えば約20:1〜約30:1の範囲と高いことが含まれる。
【0059】
一般的には、好適な下降流FCCユニットの反応器の操業条件には、以下のものが含まれる:
約550℃〜約650℃、ある実施形態では、約580℃〜約630℃、及び更なる実施形態では約590℃〜約620℃の反応温度、
約1kg/cm
2〜約20kg/cm
2、ある実施形態では約1kg/cm
2〜約10kg/cm
2、更なる実施形態では約1kg/cm
2〜約3kg/cm
2の反応圧力、
約0.1秒〜約30秒間、ある実施形態では約0.1秒〜約10秒間、及び更なる実施形態では約0.2秒〜約0.7秒間の接触時間(反応器中で)、及び
約1:1〜約40:1、ある実施形態では約1:1〜約30:1、及び更なる実施形態では約10:1〜約30:1の触媒対供給材料比。
【0060】
ある実施形態では、オレフィンの形成を促進し、水素転移反応等のオレフィン消費反応を最小限に抑える条件下で稼働する、上昇流反応器を有するように構成されたFCCユニットが提供される。
図3は、上昇流反応器を含み、本発明によるハイブリッドシステム及びプロセスで使用することができるFCCユニット200の一般化プロセスフローダイヤグラムである。FCCユニット200は、上昇管部分212、反応帯214、及び分離帯216を有する反応器/分離器210を含む。FCCユニット200は、使用済み触媒を再生するための再生容器218も含む。
【0061】
炭化水素供給材料は、ある実施形態では、供給材料を微粒化するための、及び再生容器218から導管222を介して運搬される有効量の加熱された新しい固体分解触媒粒子又は再生された固体分解触媒粒子と混合及び緊密に接触させるための水蒸気又は他の好適なガスも一緒に、導管220を介して運搬される。供給材料混合物及び分解触媒は、上昇管212へと導入される懸濁物を形成する条件下で接触する。
【0062】
連続プロセスでは、分解触媒及び炭化水素供給材料の混合物は、上昇管212を上方へと通って反応帯214に進行する。上昇管212及び反応帯214では、高温分解触媒粒子は、炭素間結合を切断することにより比較的大きな炭化水素分子を触媒的に分解する。
【0063】
反応中、従来のFCC操業と同じように、分解触媒はコークス化され、したがって、活性触媒部位への接近性は、制限されるか又は存在しなくなる。反応産物は、例えば、反応帯214の上の反応器210の最上部に位置する、FCCユニット200では一般的に分離帯216と呼ばれる、FCCユニットで知られている任意の好適な構成を使用して、コークス化触媒から分離される。分離帯は、例えばサイクロン等の、当業者に知られている任意の好適な装置を含むことができる。反応産物は、導管224を介して取り出される。
【0064】
炭化水素供給材料の流動分解に由来するコークスを含む触媒粒子は、導管226を介して分離帯214から再生帯218に送られる。再生帯218では、コークス化触媒は、導管228を介して再生帯218に進入する酸素含有ガス、例えば、純酸素又は空気の流動と接触する。再生帯218は、典型的なFCC操業において知られている構成及び条件下で操業される。例えば、再生帯218を流動床として操業し、導管230を介して吐出される燃焼産物を含む再生オフガスを生成することできる。高温再生触媒は、再生帯218から導管222を介して、炭化水素供給材料及び上述のものと混合するために上昇管212の底部部分に移送される。
【0065】
1つの実施形態では、オレフィンの形成を促進し、オレフィン消費反応を最小限に抑える、
図1のシステムに統合することができる好適なFCCユニット200は、高過酷度流動接触分解反応器を含み、米国特許第7,312,370号(特許文献8)、米国特許第6,538,169号(特許文献9)、及び米国特許第5,326,465号(特許文献4)に記載のものに類似していてもよい。
【0066】
代替的な実施形態では、残油留分、中間留分、及びナフサ留分を含む、分留帯16からの液体産物は、複数の上昇管を有するFCCユニットの1つ又は複数の別々の上昇流反応器へと別々に導入することができる。例えば、残油留分は、主上昇管を介して導入することができ、ナフサ及び/又は中間留分の流動は、二次上昇管を介して導入することができる。このように、各上昇管で異なる操業条件が使用できるため、メタン及びエタンの生成を最小限に抑えつつ、オレフィン生産を最大化することができる。
【0067】
一般的に、好適な上昇流FCCユニットの反応器の操業条件には、以下ものが含まれる:
約480℃〜約650℃、ある実施形態では、約500℃〜約620℃、及び更なる実施形態では約500℃〜約600℃の反応温度、
約1kg/cm
2〜約20kg/cm
2、ある実施形態では約1kg/cm
2〜約10kg/cm
2、更なる実施形態では約1kg/cm
2〜約3kg/cm
2の反応圧力、
約0.7秒〜約10秒間、ある実施形態では約1秒〜約5秒間、更なる実施形態では約1秒〜約2秒間の接触時間(反応器中で)、及び
約1:1〜約15:1、ある実施形態では約1:1〜約10:1、更なる実施形態では約8:1〜約20:1の触媒対供給材料比。
【0068】
特定の装入物及び所望の産物に好適な触媒は、FCC反応及び分離帯内の流動接触分解反応器に運搬される。ある実施形態では、オレフィンの形成を促進し、水素転移反応等のオレフィン消費反応を最小限に抑えるために、FCC塩基触媒及びFCC触媒添加剤を含むFCC触媒混合物が、FCC反応及び分離帯で使用される。
【0069】
特に、塩基分解触媒のマトリックスは、カオリン、モンモリロナイト(montmorilonite)、ハロイサイト、及びベントナイト等の1つ又は複数の粘土、及び/又はアルミナ、シリカ、ボリア、クロミア、マグネシア、ジルコニア、チタニア、及びシリカ−アルミナ等の1つ又は複数の無機多孔性酸化物を含んでいてもよい。塩基分解触媒は、好ましくは、0.5g/ml〜1.0g/mlのバルク密度、50ミクロン〜90ミクロンの平均粒径、50m
2/g〜350m
2/gの表面積、及び0.05ml/g〜0.5ml/gの細孔容積を有する。
【0070】
好適な触媒混合物は、塩基分解触媒に加えて、形状選択的ゼオライトを含有する添加剤を含有する。本明細書で参照されている形状選択的ゼオライトは、限定的な形状を有する炭化水素のみが、その細孔を通ってゼオライトに進入することができるように、細孔直径がY型ゼオライトの細孔直径よりも小さなゼオライトを意味する。好適な形状選択的ゼオライト成分には、ZSM−5ゼオライト、ゼオライトオメガ、SAPO−5ゼオライト、SAPO−11ゼオライト、SAPO34ゼオライト、及びペンタシル型アルミノケイ酸塩が含まれる。添加剤中の形状選択的ゼオライトの含有量は、一般的には、20〜70重量%の範囲であり、好ましくは30〜60重量%の範囲である。
【0071】
添加剤は、好ましくは、0.5g/ml〜1.0g/mlのバルク密度、50ミクロン〜90ミクロンの平均粒径、10m
2/g〜200m
2/gの表面積、及び0.01ml/g〜0.3ml/gの細孔容積を有する。
【0072】
触媒混合物中の塩基分解触媒の割合は、60〜95重量%の範囲であってもよく、触媒混合物中の添加剤の割合は、5〜40重量%の範囲である。塩基分解触媒の割合が60重量%未満であるか又は添加剤の割合が40重量%よりも高い場合、供給原料油変換率が低いため、高い軽質留分オレフィン収率を得ることはできない。塩基分解触媒の割合が95重量%よりも高いか又は添加剤の割合が5重量%未満である場合、高い供給原料油変換率を得ることができるが、高い軽質留分オレフィン収率を得ることはできない。この単純化された概略図及び説明には、従来から使用されており、当業者に周知である流動触媒分解の多数のバルブ、温度センサ、電子コントローラ等は含まれていない。例えば、流出流動、使用済み触媒吐出サブシステム、及び触媒置換サブシステム等の従来型水素化分解ユニットに存在する付随的要素も表示されていない。更に、例えば、空気供給、触媒ホッパー、及び煙道ガス処理等の従来型FCCシステムに存在する付随的要素は示されない。
【0073】
幾つかの実施形態では、装置及び/又は装置の個々の単位操作は、産物スレート(product slate)をモニターし、所望のように調節するためのコントローラを含むことができる。コントローラは、例えば、顧客の需要及び/又は市場価値に基づいていてもよい所望の操業条件に応じて、装置内のパラメータのいずれかを指図することができる。コントローラは、操作者データ入力及び/又は自動的に取り込まれたデータにより発生する1つ又は複数のシグナルに基づいて、1つ又は複数の単位操作に伴うバルブ、フィーダ、又はポンプを調節又は制御することができる。
【0074】
1つの実施形態では、コントローラは、分留装置16からの溶出物に関連するバルブ、フィーダ、及び/又はポンプと電子的に通信し、及び、これらを調節し、所望の産物スレートが、これら1つ又は複数の中間留分を犠牲にして、オレフィン生産量を増加させることを含む場合、ある量の1つ又は複数の中間留分(例えば、出口22からの中間留分及び/又は出口20からのナフサ)を、それぞれの産物貯留へと送るのではなく、FCC反応及び分離ユニットに向けることができる。
【0075】
別の実施形態では、コントローラは、第1の水素化分解反応帯12及び/又は第2の水素化分解反応帯46に関連するサーモスタット、圧力調整器、バルブ、フィーダ、及び/又はポンプと電子的に通信し、及び、これらを調節して、滞留時間、水素供給速度、操業温度、操業圧力、又は他の変数を調節し、水素化分解装置変換効率を変更することができる。
【0076】
統合型水素化分解及びFCC装置の1つ又は複数の実施形態のシステム及びコントローラは、複数の入力に対応して、回収産物の柔軟性を高めることができる、複数の操業モードを有する多用途ユニットを提供する。コントローラは、例えば、汎用コンピュータであってもよい1つ又は複数のコンピュータシステムを使用して実装することができる。或いは、コンピュータシステムは、特別にプログラムされた特殊目的のハードウェア、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)又は精油所内の特定の単位操作用のコントローラを含むことができる。
【0077】
コンピュータシステムは、典型的には、例えば、ディスクドライブメモリ、フラッシュメモリデバイス、RAM記憶デバイス、又はデータ格納用の他のデバイスのいずれか1つ又は複数を備えていてもよい1つ又は複数の記憶デバイスに接続された1つ又は複数のプロセッサを含むことができる。メモリは、典型的には、システム操業中にプログラム及びデータを格納するために使用される。例えば、メモリは、データを操作するだけでなく、ある期間にわたってパラメータに関する履歴データを格納するために使用することができる。本発明の実施形態を実装するプログラムコードを含むソフトウェアは、コンピュータ読み取り可能な及び/又は書き込み可能な不揮発性の記録媒体に格納することができ、その後、典型的には、メモリにコピーされ、その後、そこで1つ又は複数のプロセッサにより実行することができる。そのようなプログラムコードは、複数のプログラミング言語のいずれか又はそれらの組み合わせで書くことができる。
【0078】
コンピュータシステムの要素は、例えば同じデバイス内に統合されている要素間の、及び/又はネットワーク、例えば個別の別々なデバイスに存在する要素間の1つ又は複数のバスを含むことができる1つ又は複数の相互接続機構により接続することができる。相互接続機構により、典型的には、通信、例えばデータ、指示が、システムの要素間で交換できるようになる。
【0079】
また、コンピュータシステムは、1つ又は複数の入力デバイス、例えばキーボード、マウス、トラックボール、マイクロホン、タッチスクリーン、及び他のマン−マシンインターフェースデバイス、並びに1つ又は複数の出力デバイス、例えば印刷デバイス、表示スクリーン、又はスピーカを含むことができる。加えて、コンピュータシステムは、コンピュータシステムを、システムの要素の1つ又は複数により形成されていてもよいネットワークに加えて又はその代わりに、通信ネットワークに接続することができる1つ又は複数のインターフェースを含むことができる。
【0080】
統合型分解装置の1つ又は複数の実施形態によると、1つ又は複数の入力デバイスは、装置及び/又はその単位操作のいずれか1つ又は複数のパラメータを測定するためのセンサ及び/又は流量計を含むことができる。或いは、センサ、流量計、ポンプ、又は装置の他の要素の1つ又は複数は、コンピュータシステムに作動可能に接続されている通信ネットワークと接続することができる。上記のいずれか1つ又は複数は、1つ又は複数の通信ネットワーク上のコンピュータシステムと通信するために、別のコンピュータシステム又は要素に接続することができる。そのような構成は、任意のセンサ又はシグナル発生デバイスを、コンピュータシステムから著しく遠距離に配置することを可能にし、及び/又は任意のセンサを、任意のサブシステム及び/又はコントローラから著しく遠距離に配置することを可能にし、その間にデータを依然として提供することができる。そのような通信機構は、無線プロトコールを使用するものを含むが、それらに限定されない任意の好適な技術を使用することにより影響を受ける場合がある。
【0081】
統合型分解装置の種々の態様を実施することができる1つのタイプのコンピュータシステムとして、コンピュータシステムが、例により説明されているが、本発明は、ソフトウェアでの、又は例示的に示されているコンピュータシステムでの実施に限定されないことが認識されるべきである。実際、例えば汎用コンピュータシステムで実施されるのではなく、その代わりに、コントローラ又はその要素若しくはサブ領域は、専用システムとして、又は専用プログラム可能ロジックコントローラ(PLC)として、又は分散制御システム内で実装することができる。更に、統合型分解装置の1つ又は複数の特徴又は態様は、ソフトウェア、ハードウェア若しくはファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせで実装することができることが認識されるべきである。例えば、コントローラにより実行可能なアルゴリズムの1つ又は複数のセグメントは、個別のコンピュータで実施することができ、次いで、1つ又は複数のネットワークを介して通信することができる。
【0082】
幾つかの実施形態では、1つ又は複数のセンサ及び/又は流量計は、統合型分解装置のどこに配置されていてもよく、手動操作者又は自動制御システムと通信して、プログラム可能ロジック制御統合型分裂装置の好適なプロセス変更が実施される。1つの実施形態では、本明細書に記載の統合型分解装置は、任意の好適なプログラムされた又は専用のコンピュータシステム、PLC、又は分散制御システムであってもよいコントローラを含む。分留装置16及びFCC反応及び分離帯32からのある産物流動の流速を、測定することができ、必要な産物スレートを満たす必要に応じて、流動を方向転換することができる。
【0083】
ある実施形態では、本明細書に記載されているような操作者又はコントローラの制御下で、第1の又は第2の水素化分解反応帯12、46の効率が低下した触媒、つまりそれぞれの操業に使用するのに適さないと従来は考えられている活性レベルを有する触媒を用いて、統合型分解装置を操業して、残油生産を促進することができる。このように、FCC反応及び分離帯32への供給材料の量は増加し、それにより出口36及び/又は38からのその産物オレフィン及び/又はガソリンの増加がもたらされる。
【0084】
更なる実施形態では、本明細書に記載されているような操作者又はコントローラの制御下で、第1及び第2の水素化分解帯12、46のいずれか又は両方は、比較的低いレベルの水素供給で、つまりそれぞれの操業に使用するのに適さないと従来は考えられているレベルで操作することができる。このように、水素の費用は低減されるが、FCC反応及び分離帯32への供給材料の量は増加し、それにより出口36及び/又は38からのその産物オレフィン及び/又はガソリンの増加がもたらされる。
【0085】
種々の調節又は制御をもたらすことができる要因には、以下のものが含まれる:種々の炭化水素製品の顧客需要、種々の炭化水素製品の市場価値、API比重又はヘテロ原子含有量等の供給材料特性、及び製品品質(例えば、ガソリンのオクタン価及び中間留出物のセタン価等の、ガソリン及び中間留出物表示特性)。
【0086】
実施例
脱金属化油並びに軽質及び重質減圧軽油留分を含有する供給材料を、水素化分解ユニットの第1段階で水素化分解した。供給材料混合物は、889.5kg/Lの密度、2.32W%の硫黄、886ppmwの窒素、12.1W%の水素、及び1.2W%の微小残留炭素を特徴としていた。初留点は、216℃;5W%、337℃;10W%、371℃;30W%、432℃;50W%、469℃;70W%、510℃、90W%、585℃;95W%、632であり、最終沸点は、721℃だった。シリカ−アルミナ系触媒を、第1の水素化分解反応帯で使用した。第1段階の操業条件は、以下の通りだった:水素分圧は115bar、温度は385℃、時間基準液空間速度は0.27時間
−1、及び水素対油比は1263:1。
【0087】
第1段階水素化分解反応帯溶出物流動を分離し、その後、370℃の初留点を有する未変換水素化分解装置残油流動(44W%)を、下降流反応器を有する高過酷度FCCユニットに送った。酸性部位密度が低いH−USY型ゼオライトの塩基触媒(75V%)、及び添加剤、10W%の市販ZSM−5(25V%)を高過酷度FCCユニットで使用した。触媒対油比(質量:質量)は、30:1だった。下降流温度は、630℃だった。93W%の水素化分解装置残油が、高過酷度FCCユニットで変換された。
【0088】
235℃の初留点を有する循環油流動(6W%)を、第2段階水素化分解反応帯に送った。第2段階の操業条件は、以下の通りだった:水素分圧は115bar、温度は370℃、時間基準液空間速度は0.80時間
−1、及び水素対油比は1263:1。
【0089】
全体的な変換率は、100V%であった。収率は、下記の表2に要約されている。
【0090】
【表2】
*100%を超える収率は、水素化分解ユニットでの水素追加によることに留意されたい。
【0091】
このプロセスは、41.7W%の中間留分産物及び11.1W%のプロピレン産物を産出し(初期供給材料に基づく)、残留物はなかった。高過酷度FCCユニットガソリン及び水素化分解装置ナフサを含む全ガソリン生産量は、ガソリンとして使用するために、リサーチオクタン価を約80の値から約95に増加させる下流の改質装置プロセス(これは、従来から知られているように、全収率をわずかに減少させる)の後で、24.0W%であると推定される。
【0092】
本発明の方法及びシステムは、上記の記述及び添付の図面で説明されているが、当業者であれば、改変は明白であり、本発明の保護範囲は、下記の特許請求の範囲により規定されることになる。