特許第6054388号(P6054388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054388
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】3次元イメージングのための可膨張薄膜
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/227 20060101AFI20161219BHJP
   A61B 1/233 20060101ALI20161219BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   A61B1/22
   A61B1/00 300E
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-518941(P2014-518941)
(86)(22)【出願日】2012年6月27日
(65)【公表番号】特表2014-525774(P2014-525774A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】US2012044325
(87)【国際公開番号】WO2013003416
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年4月28日
(31)【優先権主張番号】61/501,600
(32)【優先日】2011年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(72)【発明者】
【氏名】ハート,ダグラス,ピー
(72)【発明者】
【氏名】フリジェリオ,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン,ダグラス,エム
(72)【発明者】
【氏名】メノン,マナス,シー
(72)【発明者】
【氏名】ヴラシック,ダニエル
【審査官】 小田倉 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/011938(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/227
A61B 1/00
A61B 1/233
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する近位端、該開口から離間して配置された遠位端、及び開口を介してアクセス可能な内部を有する可膨張薄膜であって、所定の態様で該可膨張薄膜の膨張を生じさせる不均一な膨張特性を有し、該所定の態様が、前記近位端での膨張よりも前に前記遠位端での膨張が生じることを含む、可膨張薄膜と、
前記開口を介して前記内部に結合された媒体の供給源と、
前記内部からデータを捕捉するために該内部に配設された少なくとも1つのスキャナ要素と、該データに基づいて前記内部の3次元形状を計算するようプログラムされたプロセッサとを含む、3次元走査システムと
を備えている装置。
【請求項2】
前記媒体を前記内部に制御可能な態様で供給するよう構成されたポンプを更に備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポンプが、前記媒体を制御された圧力で供給するよう構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記内部内に配設され該内部の表面を照らすよう配置された照明源を更に備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記3次元走査システムが、2つの異なる波長の光の比を使用して前記内部上の一点までの前記媒体を介した距離を計算する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記媒体が、1つの波長の光をもう1つの波長の光よりも多く選択的に吸収する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記媒体が、液体、気体、及びゲルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記可膨張薄膜が、ヒトの外耳道、胃、食道、又は膀胱に対応する全体的な形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記膨張特性が、前記可膨張薄膜の厚さ及び該可膨張薄膜の硬さの一方又は両方を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記可膨張薄膜に不均一な膨張特性を与える該可膨張薄膜の一部の周囲の補強シースを更に備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記可膨張薄膜が、蛍光染料、発光材料、及び黒顔料のうちの1つ以上を含む光学的被覆を前記内部上に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
外部の物体に対する前記遠位端の近接性を示す信号を提供するよう構成された近接センサを更に備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記遠位端における透明材料の窓であって、前記可膨張薄膜の前記内部から該可膨張薄膜の外部への眺望を提供する、透明材料の窓を更に備えている、請求項1ないし請求項12の何れか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記可膨張薄膜が、該可膨張薄膜が通路内で膨張する際に前記遠位端から前記近位端へと該可膨張薄膜の外部の周囲における空気の通過を可能にする1つ以上の特徴を含む表面加工された外部を有している、請求項1ないし請求項12の何れか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記可膨張薄膜が、その外部に通気管を有しており、該通気管が、該可膨張薄膜が通路内で膨張する際に前記遠位端から前記近位端へと該通気管を介した空気の通過を可能にするチャネルを有している、請求項1ないし請求項12の何れか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2011年6月27日付米国仮出願第61/501,600号に基づく優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、本出願人の米国特許第8,107,086号で説明されているように、膨張した薄膜の内部の厚さの測定値を捕捉し該測定値から3次元イメージを再構築するための技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる技術は、一般に、内部キャビティを測定するのに有用なものであるが、人間の外耳道といった特定の環境でかかるデータを捕捉するよう構成された改良された可膨張薄膜が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
距離測定に基づく内部空間の3次元イメージングで使用するための可膨張薄膜に対する様々な改良が開示されている。かかる技術は、単独で又は組み合わせにより改善されたデータ捕捉のために使用することが可能である。
【0005】
一態様では、本書で開示する装置は、開口を有する近位端、遠位端、及び前記開口を介してアクセスすることができる内部を有する可膨張薄膜を含み、該可膨張薄膜は、不均一な膨張特性を有しており、これにより該薄膜を所定の態様で膨張させることが可能となり、該装置が更に、前記開口を介して前記内部に結合された媒体の供給源と、前記内部からデータを捕捉するために該内部内に配設された少なくとも1つのスキャナ要素及び該データに基づいて前記内部の3次元形状を計算するようプログラムされたプロセッサを含む3次元走査システムとを含む。
【0006】
該装置は、前記内部に前記媒体を制御可能な態様で配送するよう構成されたポンプを含むことが可能である。該ポンプは、制御された圧力で前記媒体を配送するよう構成することが可能である。該装置は、前記内部内に配設され該内部の表面を照らすよう配置された照明源を含むことが可能である。前記3次元走査システムは、光の2つの異なる波長の比を使用して前記内部の一点までの前記媒体を介した距離を計算することが可能である。該媒体は、1つの波長の光を他の波長の光よりも一層多く選択的に吸収することが可能である。該媒体は、液体、気体、及びゲルのうちの少なくとも1つを含むことが可能である。前記可膨張薄膜は、ヒトの外耳道に対応する全体的な形状を有することが可能である。該可膨張薄膜は、胃、食道、及び膀胱からなるグループから選択された人体構造に対応する全体的な形状を有することが可能である。前記所定の態様の膨張は、前記近位端における膨張の前の前記遠位端における膨張を含むことが可能である。前記膨張特性は、可膨張薄膜の厚さを含むことが可能である。該膨張特性は、可膨張薄膜の硬さを含むことが可能である。前記装置は、可膨張薄膜に不均一の膨張特性を与えるための可膨張薄膜の一部の周囲の補強シースを含むことが可能である。該シースは、可膨張薄膜の近位端の近傍に配設することが可能である。前記膨張特性は、可膨張薄膜の一部に配設された所定のパターンの比較的非弾性的な材料を含むことが可能である。該膨張特性は、可膨張薄膜の一部に形成されたベローズを含むことが可能である。可膨張薄膜の一部は、該部分の弾性を変化させるよう使用前に鍛錬する(exercise)ことが可能であり、これにより該可膨張薄膜に膨張特性が与えられる。可膨張薄膜は、長円形の断面を有することが可能である。可膨張薄膜は、円形の断面を有することが可能である。可膨張薄膜は、弾性材料から形成することが可能である。
【0007】
別の態様では、本書で開示する装置は、開口を有する近位端、遠位端、及び前記開口を介してアクセスすることができる内部を有する可膨張薄膜を含み、該可膨張薄膜は、前記内部に1つ以上の基準を有しており、該装置が更に、前記開口を介して前記内部に結合された媒体の供給源と、前記内部からデータを捕捉するために該内部内に配設された少なくとも1つのスキャナ要素及び該データに基づいて前記内部の3次元形状を計算するようプログラムされたプロセッサを含む3次元走査システムとを含み、前記プロセッサは、前記1つ以上の基準を使用して前記3次元形状を計算する。
【0008】
前記装置は、前記内部に前記媒体を制御可能な態様で配送するよう構成されたポンプを含むことが可能である。該ポンプは、制御された圧力で前記媒体を配送するよう構成することが可能である。該装置は、前記内部内に配設され該内部の表面を照らすよう配置された照明源を含むことが可能である。前記3次元走査システムは、光の2つの異なる波長の比を使用して前記内部の一点までの前記媒体を介した距離を計算することが可能である。該媒体は、1つの波長の光を他の波長の光よりも一層多く選択的に吸収することが可能である。該媒体は、液体、気体、及びゲルのうちの少なくとも1つを含むことが可能である。前記1つ以上の基準は、前記少なくとも1つのスキャナ要素から獲得した複数フレームのイメージデータを登録するために使用することが可能である。該1つ以上の基準は、前記内部にプリントされた所定のパターンを含むことが可能である。該1つ以上の基準は、前記可膨張薄膜の材料に埋設された所定のパターンを含むことが可能である。該1つ以上の基準は、前記可膨張薄膜の内部の所定の3次元形状を含むことが可能である。
【0009】
別の態様では、本書で開示する装置は、開口を有する近位端、遠位端、及び前記開口を介してアクセスすることができる内部を有する可膨張薄膜を含み、該可膨張薄膜は、前記内部に光学的な被覆を含むことが可能であり、該装置が更に、前記開口を介して前記内部に結合された媒体の供給源と、前記内部からデータを捕捉するために該内部内に配設された少なくとも1つのスキャナ要素及び該データに基づいて前記内部の3次元形状を計算するようプログラムされたプロセッサを含む3次元走査システムとを含み、前記光学的な被覆は、該3次元走査システムの性能を改善するよう選択することが可能である。
【0010】
該光学的な被覆は、艶消し仕上げを含むことが可能である。該光学的な被覆は、蛍光染料を含むことが可能である。該光学的な被覆は、光吸収性被覆を含むことが可能である。該光学的な被覆は、所定の色を含むことが可能である。
【0011】
別の態様では、本書で開示する装置は、開口を有する近位端、遠位端、及び前記開口を介してアクセスすることができる内部を有する可膨張薄膜を含み、該可膨張薄膜は、該可膨張薄膜の壁内に配設された光学材料を含むことが可能であり、該装置が更に、前記開口を介して前記内部に結合された媒体の供給源と、前記内部からデータを捕捉するために該内部内に配設された少なくとも1つのスキャナ要素及び該データに基づいて前記内部の3次元形状を計算するようプログラムされたプロセッサを含む3次元走査システムとを含み、前記光学材料は、該3次元走査システムの性能を改善するよう選択することが可能である。
【0012】
前記光学材料は、蛍光染料又は発光体を含むことが可能である。該光学材料は、黒色色素を含むことが可能である。該光学材料は、前記3次元走査システムのための1つ以上の基準を形成するよう一定のパターンで配設することが可能である。
【0013】
別の態様では、本書で開示する装置は、開口を有する近位端、遠位端、及び前記開口を介してアクセスすることができる内部を有する可膨張薄膜と、前記開口を介して前記内部に結合された媒体の供給源と、外部の物体に対する前記遠位端の近接性を示す信号を提供するよう構成された近接センサと、前記内部からデータを捕捉するために該内部内に配設された少なくとも1つのスキャナ要素及び該データに基づいて前記内部の3次元形状を計算するようプログラムされたプロセッサを含む3次元走査システムとを含み、該プロセッサは更に、前記近接センサからの信号を受信して1つ以上の所定の条件下で警報を生成するようプログラムすることが可能である。
【0014】
前記装置は、前記内部に前記媒体を制御可能な態様で配送するよう構成されたポンプを含むことが可能である。該ポンプは、制御された圧力で前記媒体を配送するよう構成することが可能である。該装置は、前記内部内に配設され該内部の表面を照らすよう配置された照明源を含むことが可能である。前記3次元走査システムは、光の2つの異なる波長の比を使用して前記内部の一点までの前記媒体を介した距離を計算することが可能である。該媒体は、1つの波長の光を他の波長の光よりも一層多く選択的に吸収することが可能である。該媒体は、液体、気体、及びゲルのうちの少なくとも1つを含むことが可能である。前記警報は、可聴警報を作動させることが可能である。該警報は、視覚的な警報を作動させることが可能である。該警報は、触覚的な警報を作動させることが可能である。前記近接センサは、前記可膨張薄膜の内部に配設することが可能である。該近接センサは、該可膨張薄膜の外部に配設することが可能である。該近接センサは、超音波トランスデューサを含むことが可能である。
【0015】
別の態様では、本書で開示する装置は、開口を有する近位端、遠位端、及び前記開口を介してアクセスすることができる内部を有する可膨張薄膜と、前記開口を介して前記内部に結合された媒体の供給源と、前記内部からイメージデータを捕捉するために該内部内に配設された1つ以上の光学センサ及び該データに基づいて前記内部の3次元形状を計算するようプログラムされたプロセッサを含む3次元走査システムとを含み、前記1つ以上の光学センサは、第1の屈折率を有する被覆を含み、該第1の屈折率は、前記媒体の第2の屈折率と一致する。
【0016】
前記装置は、前記内部に前記媒体を制御可能な態様で配送するよう構成されたポンプを含むことが可能である。該ポンプは、制御された圧力で前記媒体を配送するよう構成することが可能である。該装置は、前記内部内に配設され該内部の表面を照らすよう配置された照明源を含むことが可能である。前記3次元走査システムは、光の2つの異なる波長の比を使用して前記内部の一点までの前記媒体を介した距離を計算することが可能である。該媒体は、1つの波長の光を他の波長の光よりも一層多く選択的に吸収することが可能である。該媒体は、液体、気体、及びゲルのうちの少なくとも1つを含むことが可能である。
【0017】
別の態様では、本書で開示する装置は、開口を有する近位端、遠位端、及び前記開口を介してアクセスすることができる内部を有する可膨張薄膜と、該可膨張薄膜の内部から該可膨張薄膜の外部への眺望を提供する前記遠位端における透明材料の窓と、前記開口を介して前記内部に結合された媒体の供給源と、前記内部からデータを捕捉するために該内部内に配設された1つ以上のスキャナ要素及び該データに基づいて前記内部の3次元形状を計算するようプログラムされたプロセッサを含む3次元走査システムとを含み、前記1つ以上のスキャナ要素のうちの少なくとも1つが、前記窓に向けられたカメラを含む。
【0018】
前記装置は、前記内部に前記媒体を制御可能な態様で配送するよう構成されたポンプを含むことが可能である。該ポンプは、制御された圧力で前記媒体を配送するよう構成することが可能である。該装置は、前記内部内に配設され該内部の表面を照らすよう配置された照明源を含むことが可能である。前記3次元走査システムは、光の2つの異なる波長の比を使用して前記内部の一点までの前記媒体を介した距離を計算することが可能である。該媒体は、1つの波長の光を他の波長の光よりも一層多く選択的に吸収することが可能である。該媒体は、液体、気体、及びゲルのうちの少なくとも1つを含むことが可能である。該装置は、前記カメラに接続されて該カメラからのビデオイメージを表示するよう構成された表示装置を含むことが可能である。該装置は、前記カメラに第1の屈折率を有する光学的な被覆を含むことが可能であり、該第1の屈折率は前記媒体の第2の屈折率と一致する。該装置は、外部の物体に対する前記遠位端の近接性を示す信号を提供するよう構成された近接センサを含むことが可能である。
【0019】
別の態様では、本書で開示する装置は、開口を有する近位端、遠位端、及び前記開口を介してアクセスすることができる内部を有する可膨張薄膜と、該可膨張薄膜の内部から該可膨張薄膜の外部への眺望を提供する前記遠位端における透明材料の窓と、該可膨張薄膜の内部の固定手段であって、イメージング装置を受容するための形状及び大きさを有し、及び該イメージング装置を用いて前記窓を介した外部の眺望を提供するように該イメージング装置を該窓に位置合わせする、固定手段と、前記開口を介して前記内部に結合された媒体の供給源と、前記内部からデータを捕捉するために該内部内に配設された1つ以上のスキャナ要素及び該データに基づいて前記内部の3次元形状を計算するようプログラムされたプロセッサを含む3次元走査システムとを含む。
【0020】
前記装置は、前記内部に前記媒体を制御可能な態様で配送するよう構成されたポンプを含むことが可能である。該ポンプは、制御された圧力で前記媒体を配送するよう構成することが可能である。該装置は、前記内部内に配設され該内部の表面を照らすよう配置された照明源を含むことが可能である。前記3次元走査システムは、光の2つの異なる波長の比を使用して前記内部の一点までの前記媒体を介した距離を計算することが可能である。前記1つ以上のスキャナ要素は、イメージング装置を含むことが可能である。前記媒体は、液体、気体、及びゲルのうちの少なくとも1つを含むことが可能である。該装置は、前記イメージング装置に接続されて該イメージング装置からのビデオイメージを表示するよう構成された表示装置を含むことが可能である。該イメージング装置は、前記媒体の第2の屈折率と一致する第1の屈折率を有する光学的な被覆を有するレンズを有することが可能である。該装置は、外部の物体に対する前記遠位端の近接性を示す信号を提供するよう構成された近接センサを含むことが可能である。
【0021】
別の態様では、本書で開示する装置は、開口を有する近位端、遠位端、及び前記開口を介してアクセスすることができる内部を有する可膨張薄膜を含み、該可膨張薄膜が、1つ以上の特徴を含む表面加工された外部を有し、該1つ以上の特徴は、該可膨張薄膜が通路内で膨張する際に該可膨張薄膜の外部周辺の空気が前記遠位端から前記近位端へと通過することを可能にするものであり、該装置が更に、前記開口を介して前記内部に結合された媒体の供給源と、前記内部からデータを捕捉するために該内部内に配設された1つ以上のスキャナ要素及び該データに基づいて前記内部の3次元形状を計算するようプログラムされたプロセッサを含む3次元走査システムとを含む。
【0022】
前記装置は、前記内部に前記媒体を制御可能な態様で配送するよう構成されたポンプを含むことが可能である。該ポンプは、制御された圧力で前記媒体を配送するよう構成することが可能である。該装置は、前記内部内に配設され該内部の表面を照らすよう配置された照明源を含むことが可能である。前記3次元走査システムは、光の2つの異なる波長の比を使用して前記内部の一点までの前記媒体を介した距離を計算することが可能である。該媒体は、1つの波長の光を他の波長の光よりも一層多く選択的に吸収することが可能である。該媒体は、液体、気体、及びゲルのうちの少なくとも1つを含むことが可能である。
【0023】
別の態様では、本書で開示する装置は、開口を有する近位端、遠位端、及び前記開口を介してアクセスすることができる内部を有する可膨張薄膜を含み、該可膨張薄膜が外部に通気管を有しており、該通気管が、前記可膨張薄膜が通路内で膨張する際に前記遠位端から前記近位端へ該通気管を介して空気が通過することを可能にするチャネルを含み、該装置が更に、前記開口を介して前記内部に結合された媒体の供給源と、前記内部からデータを捕捉するために該内部内に配設された1つ以上のスキャナ要素及び該データに基づいて前記内部の3次元形状を計算するようプログラムされたプロセッサを含む3次元走査システムとを含む。
【0024】
前記装置は、前記内部に前記媒体を制御可能な態様で配送するよう構成されたポンプを含むことが可能である。該ポンプは、制御された圧力で前記媒体を配送するよう構成することが可能である。該装置は、前記内部内に配設され該内部の表面を照らすよう配置された照明源を含むことが可能である。前記3次元走査システムは、光の2つの異なる波長の比を使用して前記内部の一点までの前記媒体を介した距離を計算することが可能である。該媒体は、1つの波長の光を他の波長の光よりも一層多く選択的に吸収することが可能である。該媒体は、液体、気体、及びゲルのうちの少なくとも1つを含むことが可能である。
【0025】
別の態様では、本書で開示する装置は、開口を有する近位端、遠位端、及び前記開口を介してアクセスすることができる内部を有する可膨張薄膜を含み、該可膨張薄膜がキャビティ内で膨張する際に該キャビティの表面に沿った該可膨張薄膜の運動を容易にするために該可膨張薄膜がその外部表面上に潤滑剤を有しており、該装置が更に、前記開口を介して前記内部に結合された媒体の供給源と、前記内部からデータを捕捉するために該内部内に配設された1つ以上のスキャナ要素及び該データに基づいて前記内部の3次元形状を計算するようプログラムされたプロセッサを含む3次元走査システムとを含む。
【0026】
前記装置は、前記内部に前記媒体を制御可能な態様で配送するよう構成されたポンプを含むことが可能である。該ポンプは、制御された圧力で前記媒体を配送するよう構成することが可能である。該装置は、前記内部内に配設され該内部の表面を照らすよう配置された照明源を含むことが可能である。前記3次元走査システムは、光の2つの異なる波長の比を使用して前記内部の一点までの前記媒体を介した距離を計算することが可能である。該媒体は、1つの波長の光を他の波長の光よりも一層多く選択的に吸収することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】可膨張薄膜を含むイメージングシステムを示している。
図2】外耳道内で使用すべく配置された可膨張薄膜を有するスキャナを示している。
図3】外耳道内で使用すべく配置された可膨張薄膜を有するスキャナを示している。
図4】実質的に円錐状の外形を有する可膨張薄膜を示している。
図5】可膨張薄膜を示している。
図6】可膨張薄膜を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本書で開示するものは、3次元イメージングシステムで使用するためのバルーン等の可膨張薄膜に対する様々な修正であり、より詳細には、内部空間のイメージング用に設計された3次元イメージングシステムで使用するための修正である。以下の説明では、ヒトの外耳道のイメージングに重点を置くが、本発明の原理は、一層広い適用範囲を有するものであり、膀胱又は胃といった臓器を含むあらゆる他の内部空間並びに精確な3次元データが所望される他のあらゆる非生物学的なキャビティのイメージングにとって有用なものであることが理解されよう。
【0029】
本開示の全体を通して、定量的及び定性的な説明に関して様々な用語が使用される。かかる用語は、本開示の特徴について厳密な数値境界を主張することを意図したものではなく、ある程度の変動性を許容するよう解釈すべきである。このため、例えば、媒体が特定の波長で透過性を有するものとして説明される場合、これは、測定又は人間の知覚の限界で絶対的に透明であるということではなく、精確な厚さの計算をもたらす測定を可能にするよう実質的に透明であり又は十分に透明であることを意味するものと理解されるべきである。同様に、ターゲット表面が均一な色を有するものとして説明され、又は染料が特定の波長で蛍光を発するものとして説明される場合、これは、あらゆる従来の材料又は製造プロセスに特有の可変性を排除するものと解釈されるべきではない。このため、以下の説明では、全ての説明上の用語及び数値は、本発明が本質的に許容するものとして広範に解釈されるべきであり、及び、異なる意味が明示的に提供される場合又はそうでない場合であっても文脈から自明である場合を除き、本書で開示する本発明の思想の正しい動作と矛盾することのない一定範囲の可変性を考慮したものとして当業者には理解されよう。
【0030】
以下の説明では、用語「波長」は、光又はその他の電磁エネルギーの特性を説明するために使用される。用語「波長」は、所定の周波数範囲についての中心周波数又は限界又は境界を指す場合のように、1つの特定の波長を称するものとして理解されよう。該用語は、追加的に又は代替的に、センサや画素等に関して波長が規定される場合のように、所定の波長帯域を一般に指すことが可能である。このため、一般に、本書で用いる場合、用語「波長」は、より特定の意味が提供されない限り又は文脈から自明でない限り、特定の一波長及び一定範囲の波長の何れか一方又は両方を指すものとして理解されるべきである。
【0031】
本書で言及する全ての文書はその引用によりその全てを本書に組み込んだものとする。明示的に言及しない限り又は文章から明らかでない限り、単数形でのアイテムの引用は、複数形でのアイテムを含む(逆も又同様)ものと理解されるべきである。文法的な接続詞は、特に言及しない限り又は文脈から明らかでない限り、結合された節、文、及び単語などのあらゆる全ての接続的及び離接的な組み合わせを表現することを意図したものである。
【0032】
以下の開示は、例示的な実施形態を含むが、これら実施形態は、例示のみを目的として提供したものであり、制限的な意味を意図したものではない。当業者には自明であるように、各構成要素の全ての変更、修正、拡張、応用、及び組み合わせ等を本開示の範囲内に含めることが意図されている。
【0033】
図1は、可膨張薄膜を含むイメージングシステムを示している。一般に、該システム100は、可膨張薄膜102、媒体104の供給源、及び3次元スキャナ106を含むことが可能である。
【0034】
該システム100は、様々なフォームファクタを有することが可能である。例えば、該システム100は、ハンドヘルドスキャナとして単独で動作するためのプロセッサ及びその他のハードウェアを含むスタンドアロン型ハンドヘルドエンクロージャを含むことが可能である。該システム100は、追加的または代替的に、図2に示すようにコンピュータまたはその他のコンピューティング装置に接続されたハンドヘルドプローブを含むことが可能である。該コンピューティング装置108は、プロセッサを含むことが可能であり、該プロセッサは、可膨張薄膜内のセンサからデータを受信して該データから3次元データを計算するように、及び本書で説明するイメージングシステムに関連する他の機能を実行するように、プログラムされる。該コンピューティング装置108はまた、3次元イメージを表示し並びに該システム100の動作のためのユーザインタフェイスを提供する表示装置110を含むことが可能である。一般に、該システム100に関する処理機能は、コンピューティング装置108、ハンドヘルドプローブ、又はそれらの組み合わせによって実施することが可能であることが理解されよう。
【0035】
可膨張薄膜102は、一般に、キャビティ内への挿入及びその内部での膨張に適したあらゆる可膨張薄膜とすることが可能である。該可膨張薄膜102は、例えば、可膨張薄膜102がその膨張時にかかるキャビティに適合することを可能にする弾性材料から形成することが可能である。外耳道イメージングの場合には特に、可膨張薄膜102は、該可膨張薄膜102がその使用のために挿入されることになるあらゆるキャビティに一般に適合する全体的な形状すなわち全体的な膨張した3次元形状及び寸法を有することが可能である。例えば、可膨張薄膜102は、ヒトの外耳道に対応する全体的な形状を有する形状及び寸法とすることが可能である。代替的に、可膨張薄膜102は、胃、食道、及び膀胱といった他の人体構造に対応する全体的な形状を有する形状及び寸法とすることが可能である。実施形態によっては、この対応関係は、可膨張薄膜102がキャビティ内を完全に占有して該キャビティの内壁を(例えば所定の又は測定された圧力で)押圧することができるようにある程度大きめにすることを含むことが可能である、ということが理解されよう。代替的に、実施形態によっては、この対応関係は、可膨張薄膜102の配置時にそれ自体が折り重なる可能性を緩和させるようある程度小さめにすることを含むことが可能である。
【0036】
媒体104は、あらゆる液体、気体、ゲル、又はそれらの組み合わせとすることが可能であり、及び特定のイメージング技術にとって適切となるように媒体104内に溶解され又は懸濁された添加剤を含むことが可能である。例えば、媒体104は、有色色素又はその他の波長選択性添加剤を使用した場合のように1つの波長の光を他の波長の光よりも多く選択的に吸収することが可能である。媒体104は、追加的又は代替的に、3次元の形状又は距離を決定するために3次元スキャナ106により使用される発光又は蛍光物質を含むことが可能である。
【0037】
3次元スキャナ106は、可膨張薄膜102の内部からの3次元データを回復させるためにあらゆる適当な技術を使用することが可能である。様々な有用な技術が、単一のイメージデータフレームから3次元データを回復させるための米国特許第8,107,086号に一例として記載されているが、ストラクチャードライト、レーザラインスキャニング、コンフォーカルイメージング、シェイプフロムモーション、プレノプティックライトフィールドなどを用いた技術を含む(がそれらには限定されない)多数の他の有用な技術を本書で考察するイメージングに適用することが可能である。可膨張薄膜の内部の3次元形状の捕捉に適している全てのかかる技術は、本書で説明する3次元スキャナ106として使用することが可能である。
【0038】
表示装置110は、システム100からの2次元イメージ、システム100からの再構築された3次元イメージ、及びシステム100を制御するためのユーザインタフェイスなどを見るために配設することが可能である。
【0039】
図2は、外耳道内に使用するために配置された可膨張薄膜を有するスキャナを示している。該可膨張薄膜202は、該可膨張薄膜202を使用するためのハンドヘルドプローブ206に一層近い近位端204と、外耳道210内に挿入するためのハンドヘルドプローブ206から離間した遠位端208とを含む。使用時に、可膨張薄膜202は、外耳道210内に挿入し、次いで、外部の供給源からの(例えば、ハンドヘルドプローブ206内のリザーバ及びポンプからの)媒体を用いて膨張させることが可能である。
【0040】
可膨張薄膜202は、一般に、該可膨張薄膜202の内部214からデータを捕捉するために該内部214内に配設された3次元走査システムのための1つ以上のスキャナ要素212を含むことが可能である。該スキャナ要素212は、視界の操舵を容易にすべく剛性ロッド214等に固定することが可能であり、又は任意の態様で及び任意の位置で可膨張薄膜202内に配設することが可能である。
【0041】
3次元スキャナは、一般に、プロセッサ、光源、光学的な構成要素、及びトランスデューサ(例えば超音波トランスデューサ)などに加えて、様々なセンサその他の構成要素を含むことが可能であり、その全ては実施される特定の3次元走査技術によって決まり、かかる構成要素は可膨張薄膜202の内部及び外部に様々な態様で分配することが可能である、ということに留意されたい。一般に、本書で意図する用途では、かかるシステムは、可膨張薄膜102内に配設された少なくとも1つの「スキャナ要素」を含む。これは、ディジタル構成要素とすることが可能であり、例えば、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)デバイス、又は可膨張薄膜102内に配置されプロセッサ等の外部要素に接続されたその他の光センサとすることが可能である。これは、追加的又は代替的に、光学的構成要素を含むことが可能であり、例えば、外部の捕捉及び処理システムへイメージを光学的に転送する1つ以上のファイバおよびレンズ等を含むことが可能である。これは、追加的又は代替的に、トランスデューサを含むことが可能であり、例えば、超音波トランスデューサ又は3次元情報を非光学的に取得するために使用される能動及び受動素子の他の任意の組み合わせを含むことが可能である。よって、用語「スキャナ要素」は、広範な意味で用いることが意図されており、該スキャナ要素が内部214から3次元処理のためのデータを取得するために可膨張薄膜102内に配置されることを除き、如何なる特定のタイプのスキャナ要素、スキャナ、又はスキャニング技術を示唆することを意図したものではない、ということが理解されよう。
【0042】
図3は、外耳道内で使用すべく配置された可膨張薄膜を有するスキャナを示している。該可膨張薄膜302は、一般に上述したものとすることが可能である。
【0043】
該可膨張薄膜302をハンドヘルド・プローブ(図示せず)等に結合させるための受け板304を配設して、該可膨張薄膜302及びそれに関連するハードウェアの位置決めその他の操作を可能とすることが可能である。
【0044】
可膨張薄膜302の近位端は開口306を含むことが可能であり、該開口306を介して該可膨張薄膜302の内部307にアクセスすることが可能となる。このように、開口306は、1つ以上のスキャナ要素308等の内部内の構成要素にアクセスするためのポートを提供することが可能である。該開口306を介して内部307に媒体310の供給源を(例えばポンプ312を介して)結合することも可能である。該ポンプ312は、手動、自動、又は半自動のポンプとすることが可能であり、及び可膨張薄膜302を外耳道318内で所定の圧力又は体積まで膨張させるように媒体310を制御された圧力又は体積で供給するよう構成することが可能である。
【0045】
1つ以上のスキャナ要素308並びにプロセッサ338及びディスプレイ340等を有するコンピュータ又はその他のコンピューティング装置を含む3次元走査システム320は、一般に1つ以上のスキャナ要素308からデータを取得することが可能である。該プロセッサは、該データに基づいて内部307の次元形状を計算するようプログラムすることが可能である。上述したように、これは、当業界で周知の様々なあらゆる3次元処理技術を採用することが可能である。例えば、米国特許第8,107,086号に記載される技術を使用して、3次元走査システム320は、2つの異なる波長の光の強度の比を使用して、内部307の(より詳細には内部307の表面309上の)ポイント322までの(可膨張薄膜302を膨張させるために使用した)媒体310を介した距離を計算することが可能である。この多数のポイントに関する情報をスキャナ要素308からのかかるポイントの方向に関する情報と組み合わせることにより、内部307の3次元イメージを単純な形状を使用して再現することが可能である。
【0046】
走査システム320は、内部307内に配設され該内部307の表面309を照らすよう配置された照明源330を含むことが可能である。該照明源330は、ディスプレイ340等のイメージを見ることを可能にする白色光、又は使用される特定のイメージング技術に適した任意の狭い波長、特定の波長範囲、又は一組の波長範囲の光といった、任意のタイプの照明を提供することが可能である。
【0047】
一般に、可膨張薄膜302は、上述した可膨張薄膜の何れとすることも可能であり、円形の断面、又は長さ方向に沿って形状が変化する長円形の断面といった他の適当な断面形状を有することが可能である。
【0048】
可膨張薄膜302は、追加的に又は代替的に、不均一な膨張特性を有することが可能である。本書で用いる場合、用語「膨張特性」とは、可膨張薄膜302特徴又は特性、又は該可膨張薄膜302上に配設され若しくは該可膨張薄膜302の材料内に配設された材料の特徴又は特性であって、該可膨張薄膜302がその加圧時に膨張する態様に影響を与えるものを示すことを意図したものである。例えば、可膨張薄膜302は、該可膨張薄膜302の表面に関して変化する厚さ又は硬さといった膨張特性を有することが可能であり、該膨張特性は、該可膨張薄膜302をその加圧時に所定の態様で膨張させるものとなる。例えば、外耳道318内で膨張する場合には、加圧時における外耳道318の加圧を低減させ又は緩和させるために可膨張薄膜302が(開口306から離間した)遠位端から近位端へと膨張することが望ましい。最初に遠位端で外耳道318内にシールを形成することにより、可膨張薄膜302と外耳道318との間の接触面に沿った気泡等の捕捉を緩和させることも可能となる。これを達成するために、近位端を遠位端よりも一層厚い層又は堅い材料から形成して、前記所定の態様での膨張が、近位端での膨張よりも前に遠位端での膨張を伴うようにすることが可能である。
【0049】
別の態様では、可膨張薄膜302は、伸張、変形、加熱、又はその他の弾性を変化させるための操作によって(例えば遠位端が)鍛錬された弾性材料から形成することが可能であり、これにより、所定の態様で膨張する(例えば該鍛錬が行われた領域が該鍛錬が行われていない領域よりも先に膨張することができる)ように可膨張薄膜302に所望の膨張特性(例えば弾性材料の局所的に低下されたバネ定数)を与えることが可能である。可膨張薄膜302は、このように、その使用直前に又はその使用前の任意の時点で(例えばエンドユーザへ輸送すべく梱包する前に)その鍛錬を行うことが可能である。
【0050】
実施形態によっては、可膨張薄膜302の厚さは、3次元イメージデータの取得時に明らかにすることが可能である。可膨張薄膜302の厚さは、任意の態様で決定することが可能である。例えば、可膨張薄膜302の厚さは、既知の厚さ又は先験的に仮定される厚さとすることが可能である。しかし、可膨張薄膜302の厚さは、それが未知の寸法のキャビティ内で膨張した後には予測不能な態様で変化する可能性がある。かかる変化を明らかにするために、多数の他の技術を実施することが可能である。
【0051】
例えば、該キャビティの全体的な形状を、円筒形、球形、又はその他の適当な形状であると予め仮定することが可能である。配置後の可膨張薄膜の体積の増大を該仮定した形状と組み合わせて使用して、可膨張薄膜302の厚さの平均減少を決定することが可能である。次いで、この平均減少が可膨張薄膜302の表面全体にわたって一様に行われたものと仮定することが可能である。
【0052】
別の態様では、可膨張薄膜302上の(後述する)基準点の相対的な位置を、配置状態と非配置状態又は可膨張薄膜の厚さが既知である他の状態とで比較することが可能である。この比較を可膨張薄膜302の既知の材料特性(圧縮率、ポアソン比など)と組み合わせて使用して、可膨張薄膜の潜在的に変動する厚さをモデル化することが可能である。これは、可膨張薄膜302がその配置状態で被る潜在的に不均一な厚さの変動を明らかにするという利点を有する。
【0053】
光学的な3次元イメージング技術の場合、可膨張薄膜は、その内部309上に、3次元走査システムの性能を改善するよう選択された光学的被覆を含むことが可能である。例えば、該光学的被覆は、光の散乱及びその結果として生じる(光沢面により生成される)アーチファクトを防止するための艶消し仕上げを含むことが可能である。該光学的被覆は、追加的又は代替的に、蛍光染料を含むことが可能である。該光学的被覆は、追加的又は代替的に、黒又はその他の高度に吸収性の顔料又は複数の顔料の組み合わせといった、光学的に吸収性の被覆を含むことが可能である。別の態様では、該光学的被覆は、例えば、米国特許第8,107,086号に記載されるような所定の色を含むことが可能であり、異なる波長を異なる態様で吸収する媒体と組み合わせて使用して3次元データを決定することが可能である。様々な特定の色は、様々な条件で他の利点を提供し得るものであり、上記説明は、特定の色が所定の色を必要とすることを意図したものではない。
【0054】
同様の影響を与えるために可膨張薄膜の壁内に光学材料を配設することが可能である。該光学材料は、例えば、蛍光染料、蛍光材料、発光材料、黒色材料、顔料その他を含むことが可能である。該光学材料は、可膨張薄膜302全体にわたって分散させることが可能であり、又は3次元走査システムのための1つ以上の基準を形成するよう所定のパターンで配設することが可能である。
【0055】
スキャナ要素308が、能動(例えば、電荷結合素子)又は受動(例えば、レンズ又は光ファイバの先端)イメージング装置等の光学センサである場合、該光学センサは、媒体310の屈折率と一致する屈折率を有する被覆を有利に含むことが可能である。このようにして、光学センサと媒体との境界における光学的な歪みを緩和させることが可能である。
【0056】
別の態様では、可膨張薄膜302は、その内部307から外耳道318等のその外部への眺望を提供する透明材料の窓350を遠位端352に含むことが可能である。これは、可膨張薄膜302の位置決めのための視界を提供することが可能であり、これにより、例えば、可膨張薄膜302を外耳道318内の十分深い位置に確実に挿入することが可能となり、又は鼓膜等の傷つきやすい組織との衝突を防止することが可能となる。かかる実施形態では、スキャナ要素308は、前記窓350に向けられたカメラその他のイメージング装置を含むことが可能であり、及び走査システム320により該カメラにディスプレイ340を接続して該カメラからのビデオイメージを表示させることが可能である。該カメラその他のイメージング装置は、媒体310の屈折率と一致する屈折率を有する光学的被覆を有することが可能である。
【0057】
外耳道318内への可膨張薄膜302の挿入時などの特定の時点で、その先端の手作業による誘導を容易にするために、該可膨張薄膜302の遠位端からの眺望を得ることが望ましい。該誘導を容易にするために、遠位端352は、内視鏡又は耳鏡等のイメージング装置を受容して該イメージング装置を窓350に位置合わせするような形状及び大きさを有する固定手段を内部307中に含むことが可能であり、これにより、該イメージング装置を用いて該窓350を介した外部の眺望を提供することが可能となる。該イメージング装置は、スキャナ要素308とすることが可能であり、又は走査システム320とは別個の独立した更なるイメージング装置とすることが可能である。ディスプレイ340は、該イメージング装置に接続することが可能であり、及び該イメージング装置からのビデオイメージを表示するよう構成することが可能である。該イメージング装置は、媒体310の屈折率と一致する屈折率を有する光学的被覆を有することが可能である。
【0058】
図4は、実質的に円錐形の外形を有する可膨張薄膜402を示している。該可膨張薄膜402は、上述したシステムの何れでも使用することが可能である。該可膨張薄膜402は、該可膨張薄膜402に不均一な膨張特性を与えるための第2の弾性材料又は非弾性バンド等の補強シース404をその一部の周囲に含むことが可能である。すなわち、該可膨張薄膜402の1つ以上の領域を補強することにより、該補強された領域が、かかる補強を有さない領域の後に膨張する傾向を有することになる。該シース404は、可膨張薄膜402に接着することが可能であり、及び/又は該可膨張薄膜402の周囲を一周させることが可能である。該シース404は、該可膨張薄膜402の近位端406の近傍に配設することが可能であり、又は、意図する所定の態様の膨張に従って他のあらゆる適当な場所に配設することが可能である。
【0059】
一態様では、可膨張薄膜402は、その外部410に通気管408を含むことが可能であり、該通気管408は、外耳道等の通路内で可膨張薄膜402が膨張する際に該通気管408を介して前記遠位端から前記近位端406へ空気が通過することを可能にするチャネルを含む。このようにして、可膨張薄膜402がキャビティの壁に対して膨張して遠位端におけるチャンバ内をシールする場合に、該遠位端に向かう該可膨張薄膜402の膨張によって該チャンバの体積が減少する場合であっても該チャンバ内の空気が環境圧力を維持することが可能となる。
【0060】
別の態様では、可膨張薄膜402の外部410の表面に潤滑剤を配設して、該可膨張薄膜402がキャビティ内で膨張している間に該キャビティの表面に沿った該可膨張薄膜402の運動を容易にすることが可能である。これは、可膨張薄膜402の膨張時に摩擦によって生じる歪みを有利に防止して、該可膨張薄膜402がキャビティのあらゆる隣接する表面に沿って完全に膨張することを可能にする。
【0061】
図5は、可膨張薄膜を示している。該可膨張薄膜502は、上述したシステムの何れでも使用することが可能である。該可膨張薄膜502は、キャビティ内でシールを形成するため又は外耳道等のキャビティの全体的な形状に適応するための球根状領域504を含むことが可能である。一定のパターン506の比較的非弾性的な材料を可膨張薄膜の一部に配設することが可能であり、該材料は、該パターン506の領域で一定の膨張特性(非弾力性)を提供して該可膨張薄膜502が膨張する態様を制御することが可能である。該パターン506は、可膨張薄膜502の膨張を制御するための、任意の大きさ、形状、及びパターン数を含むことが可能である。例えば、パターン506は、可膨張薄膜502の周囲の複数の周方向のバンドを含むことが可能であり、又は湾曲した態様の膨張を強制するための様々な場所における横方向のバンドを含むことが可能である。
【0062】
より一般的には、外部に対する様々な有用な被覆を配設することが可能である。パッド印刷(例えば、3D表面上への2Dイメージ)等を採用して、例えば、基準、非伸張性のドットもしくはライン、又は可膨張薄膜の内部表面上の反射を低減させるパターンを印刷することが可能である。パッド印刷はまた、可膨張薄膜502の特定の部分が他の部分よりも先に(例えば、より低圧下で)膨張するように該可膨張薄膜の弾性を特定の領域で低下させるために有利に用いることが可能である。この技術は、例えば、先端から基部までの膨張を促進させる可膨張薄膜502の周囲の複数のバンドをプリントするために使用することが可能である。
【0063】
一態様では、可膨張薄膜502は、近接センサ508等のセンサを装備したものとすることが可能である。該近接センサ508は、鼓膜等の外部の物体に対する遠位端の近接性を示す信号を提供するよう構成することが可能である。該近接センサ508は、有線式又は無線式のものとすることが可能であり、及び可膨張薄膜502の内部又は外部に配設することが可能である。該近接センサ508は、赤外線源/検出器、超音波トランスデューサ、又は距離を測定し又は近接性を検出するのに適した他の任意の1つ以上の装置を含むことが可能である。3次元走査システムのプロセッサは、該近接センサ508からの信号を受信し、及び1つ以上の所定の条件下で(例えば、キャビティの壁との可膨張薄膜502の遠位端の衝突が差し迫っているときに)警報を生成することが可能である。該警報は、可聴警報、視覚的警報、触知的警報等を作動させることが可能である。該警報は、追加的に又は代替的に、可膨張薄膜502の膨張の中断といった他のアクションをトリガすることが可能である。
【0064】
図6は、可膨張薄膜を示している。該可膨張薄膜602は、上述したシステムの何れでも使用することが可能であり、該可膨張薄膜602を所定の態様で膨張させるための膨張特性を含むことが可能である。一態様では、該膨張特性は、該可膨張薄膜の一部に形成されたベロー604を含むことが可能であり、又は所定の膨張パターンを促進させるための他の形状または複数の形状の組み合わせを含むことが可能である。
【0065】
可膨張薄膜602は、その内部に配設された1つ以上の基準606を含むことが可能である。該基準606は、3次元走査システムのプロセッサが3次元形状を計算するために使用することが可能なものである。基準の使用は、3次元処理業界で周知のものであり、本書では詳細に説明しないが、一般に、認識可能な特徴は、一層効率的な処理を促進させるために1つのイメージ内及び/又は多数のイメージにわたる特定の場所を決定することに資することができるものであることに留意されたい。該1つ以上の基準606は、例えば、複数のイメージから単一の3次元モデルを提供するために1つ以上のスキャナ要素から取得された複数フレームのイメージデータを登録するために使用することが可能である。基準606は、可膨張薄膜602の内部にプリントされた十字線、円、正方形、線、又は他の任意のパターン、及びそれらの組み合わせ等の所定のパターンを含むことが可能である。基準606は、追加的又は代替的に、製造時に可膨張薄膜の材料内に埋め込まれたかかる1つ以上のパターンを含むことが可能である。別の態様では、基準606は、可膨張薄膜602の内部上の尾根又は半球等の所定の3次元形状を含むことが可能である。
【0066】
可膨張薄膜602は、表面加工された外部608を含むことが可能であり、該表面加工された外部608は、該可膨張薄膜602が通路内で膨張する際にその遠位端から近位端へと該可膨張薄膜602の外部の周囲での空気の通過を可能にする1つ以上の特徴を含むものである。該表面加工された外部608は、隆起、尾根、又は可膨張薄膜602とキャビティ(その内部で該可膨張薄膜602が膨張する)の壁との間に断続的な空間を形成するための他の任意の特徴を含むことが可能である。
【0067】
上記のコンピューティング装置及びプロセッサは、ハードウェア、ソフトウェア、又は本書で説明した制御、データ取得、及びデータ処理に適したそれらの任意の組み合わせで実施することが可能である、ということが理解されよう。これは、1つ以上のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、埋込型マイクロコントローラ、プログラマブルディジタル信号プロセッサ、又はその他のプログラマブル装置、並びに内部及び/又は外部メモリによる実施を含む。これは、追加的又は代替的に、1つ以上の特定用途集積回路、プログラマブルゲートアレイ、プログラマブルアレイロジックコンポーネント、又は電子信号を処理するよう構成することが可能な他の任意の1つ以上の装置を含む。更に、上述した処理又は装置の実施は、C等の構造化プログラミング言語、C++等のオブジェクト指向プログラミング言語、又は複数の上記装置のうちの1つ並びにプロセッサ、プロセッサアーキテクチャの異種の組み合わせ、もしくは異なるハードウェア及びソフトウェアの組み合わせで実行するために、格納し、コンパイルし、又はインタープリトすることが可能な他の任意の高級又は低級プログラミング言語(アセンブリ言語、ハードウェア記述言語、及びデータベースプログラミング言語及び技術を含む)を用いて作成されたコンピュータ実行可能コードを含むことが可能である、ということが理解されよう。同時に、処理は、カメラ及び/又はコンピュータ及び/又はサーバ又はその他のリモート処理資源等の複数の装置に多数の態様で分散させることが可能であり、又はその機能を全てを専用のスタンドアロン装置に組み込むことが可能である。かかる置換及び組み合わせの全てを本開示の範囲内に含めることが意図されている。
【0068】
図示し及び詳細に説明した好適な実施形態に関して本発明を説明したが、それらに対する様々な修正及び改良が当業者には容易に理解されよう。したがって、本発明の思想及び範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、法律により認められる一層広範な意味で理解されるべきものである。
【0069】
以下においては、本発明の種々の構成要件の組み合わせからなる例示的な実施形態を示す。
1.開口を有する近位端、遠位端、及び前記開口を介してアクセス可能な内部を有する可膨張薄膜であって、所定の態様で該可膨張薄膜の膨張を生じさせる不均一な膨張特性を有する、可膨張薄膜と、
前記開口を介して前記内部に結合された媒体の供給源と、
前記内部からデータを捕捉するために該内部に配設された少なくとも1つのスキャナ要素と、該データに基づいて前記内部の3次元形状を計算するようプログラムされたプロセッサとを含む、3次元走査システムと
を備えている装置。
2.前記媒体を前記内部に制御可能な態様で供給するよう構成されたポンプを更に備えている、前項1に記載の装置。
3.前記ポンプが、前記媒体を制御された圧力で供給するよう構成されている、前項2に記載の装置。
4.前記内部内に配設され該内部の表面を照らすよう配置された照明源を更に備えている、前項1に記載の装置。
5.前記3次元走査システムが、2つの異なる波長の光の比を使用して前記内部上の一点までの前記媒体を介した距離を計算する、前項4に記載の装置。
6.前記媒体が、1つの波長の光をもう1つの波長の光よりも多く選択的に吸収する、前項1に記載の装置。
7.前記媒体が、液体、気体、及びゲルのうちの少なくとも1つを含む、前項1に記載の装置。
8.前記可膨張薄膜が、ヒトの外耳道、胃、食道、又は膀胱に対応する全体的な形状を有する、前項1に記載の装置。
9.前記膨張特性が、前記可膨張薄膜の厚さ及び該可膨張薄膜の硬さの一方又は両方を含む、前項1に記載の装置。
10.前記可膨張薄膜に不均一な膨張特性を与える該可膨張薄膜の一部の周囲の補強シースを更に備えている、前項1に記載の装置。
11.前記可膨張薄膜が、蛍光染料、発光材料、及び黒顔料のうちの1つ以上を含む光学的被覆を前記内部上に含む、前項1に記載の装置。
12.外部の物体に対する前記遠位端の近接性を示す信号を提供するよう構成された近接センサを更に備えている、前項1に記載の装置。
13.前記遠位端における透明材料の窓であって、前記可膨張薄膜の前記内部から該可膨張薄膜の外部への眺望を提供する、透明材料の窓を更に備えている、前項1ないし前項12の何れか一項に記載の装置。
14.前記可膨張薄膜が、該可膨張薄膜が通路内で膨張する際に前記遠位端から前記近位端へと該可膨張薄膜の外部の周囲における空気の通過を可能にする1つ以上の特徴を含む表面加工された外部を有している、前項1ないし前項12の何れか一項に記載の装置。
15.前記可膨張薄膜が、その外部に通気管を有しており、該通気管が、該可膨張薄膜が通路内で膨張する際に前記遠位端から前記近位端へと該通気管を介した空気の通過を可能にするチャネルを有している、前項1ないし前項12の何れか一項に記載の装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6