(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンスデバイスにおける、特にエミッタとしての使用に適する金属錯体に関する。
【0002】
有機半導体が機能性材料として採用された有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLED)の構造が、たとえば、米国特許第4539507号、米国特許第5151629号、欧州特許第0676461号および国際公開第98/27136号に記載されている。採用された発光材料は、しばしば、蛍光の代わりにリン光を示す有機金属錯体である(M.A.Baldoら、Appl.Phys.Lett.1999、75、4〜6)。量子力学的理由により、有機金属化合物をリン光エミッタとして使用して、4倍までのエネルギーおよび電力効率が可能である。概して、三重項発光を示すOLEDでは、特に効率、動作電圧および寿命に関して、改善の必要性が依然として存在する。
【0003】
従来技術に従って、リン光OLEDにおいて使用されている三重項エミッタは、特に、イリジウムまたは白金錯体である。使用される白金錯体の改善は、四座リガンドを有する金属錯体を使用し、その結果、錯体がより高い熱安定性を有することによって実現され得る(国際公開第2004/108857号、国際公開第2005/042550号、国際公開第2005/042444号)。これらの錯体では、2つの二座の部分リガンド(part-ligand)は、以下橋頭と呼ばれる架橋基によって互いに結合している。従来技術では、四座リガンドを有する白金錯体も公知であり(国際公開第2010/069442号)、この錯体は、フルオレンを橋頭として含有しており、ここで2つの二座の部分リガンドは、フルオレンの9位でそれぞれ結合している。これらの錯体は、一般に、良好な効率および良好な寿命を有しているが、ここで特に寿命については依然として改善が必要である。
【0004】
したがって本発明の目的は、ここで改善をもたらし、OLEDで使用するためのエミッタとして適した新規な金属錯体を提供することである。
【0005】
意外にも、以下にさらに詳説する金属キレート錯体が、この目的を達成し、有機エレクトロルミネセンスデバイスの改善をもたらすことが判明した。したがって、本発明は、これらの金属錯体、およびこれらの錯体を含む有機エレクトロルミネセンスデバイスに関する。
【0006】
本発明は、式(1)の化合物に関する
【化1】
【0007】
式中、使用した記号には下記の事項が適用される:
Mは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、イリジウムおよび金から成る群から選択され;
Xは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、CR
1またはNであり;
Yは、CR
2、C=O、BR、SiR
2、NR、PR、P(=O)R、O、S、CR=CR、CR
2−CR
2もしくはCR=Nであり;
またはYは、次式(2)の基を意味し、
【化2】
【0008】
式中、破線で示される結合は、この基の連結を示し;
Dは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、CまたはNであり;
Eは、Eが結合している環が、芳香族もしくはヘテロ芳香族の6員環である場合には、Cであり、またはEが結合している環が、ヘテロ芳香族の5員環である場合には、CもしくはNであり;
Ar
1は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、基DおよびEと一緒になって、5から18個の芳香族環原子を有するアリールまたはヘテロアリール基(これは、1以上のラジカルR
1で置換されていてもよい)であり;ここで隣接する基Ar
1およびAr
2は、互いに連結している2つのラジカルR
1によって、または基CR
2=Nによって互いに連結していてもよく;
Ar
2は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、基DおよびEと一緒になって、5から18個の芳香族環原子を有するアリールまたはヘテロアリール基(これは、1以上のラジカルR
1で置換されていてもよい)であり、ここで隣接する基Ar
2およびAr
1は、互いに連結している2つのラジカルR
1によって、または基CR
2=Nによって互いに連結していてもよく;
Rは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、N(R
2)
2、CN、C(=O)N(R
2)
2、Si(R
2)
3、B(OR
2)
2、C(=O)R
2、P(=O)(R
2)
2、S(=O)R
2、S(=O)
2R
2、1から20個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2から20個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、または3から20個のC原子を有する分枝状もしくは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらの各々は、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよい)(ここで、1以上の隣接していないCH
2基は、R
2C=CR
2、C≡C、Si(R
2)
2、C=O、NR
2、O、SまたはCONR
2によって置きかえられていてもよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IまたはCNによって置きかえられていてもよい)、または5から60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これは、それぞれの場合に、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよい)、または5から40個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これは、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよい)、または5から40個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基(これは、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよい)であり、ここで同じCまたはSi原子に結合している2つのラジカルRは、互いに、単環式または多環式、脂肪族または芳香族環系を形成していてもよく;
R
1は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R
2)
2、CN、NO
2、OH、COOH、C(=O)N(R
2)
2、Si(R
2)
3、B(OR
2)
2、C(=O)R
2、P(=O)(R
2)
2、S(=O)R
2、S(=O)
2R
2、OSO
2R
2、1から20個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2から20個のC原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、または3から20個のC原子を有する分枝状もしくは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらの各々は、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよい)(ここで、1以上の隣接していないCH
2基は、R
2C=CR
2、C≡C、Si(R
2)
2、C=O、NR
2、O、SまたはCONR
2によって置きかえられていてもよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、IまたはCNによって置きかえられていてもよい)、または5から60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これは、それぞれの場合に、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよい)、または5から40個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これは、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよい)、または5から40個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基(これは、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよい)であり、ここで2つの隣接するラジカルR
1は、互いに、単環式または多環式、脂肪族または芳香族環系を形成していてもよく、さらに、隣接する基Ar
1およびAr
2に結合しているラジカルR
1は、互いに、単環式または多環式、脂肪族または芳香族環系を形成していてもよく、さらに、2つの基Ar
2に結合している2つの基R
1は、互いに環系を形成していてもよく、したがって環状リガンドを構築し;
R
2は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、N(R
3)
2、CN、NO
2、Si(R
3)
3、B(OR
3)
2、C(=O)R
3、P(=O)(R
3)
2、S(=O)R
3、S(=O)
2R
3、OSO
2R
3、1から20個の炭素原子を有する直鎖のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、または2から20個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル基、または3から20個の炭素原子を有する分枝状もしくは環状のアルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(これらの各々は、1以上のラジカルR
3により置換されていてもよい)(ここで、1以上の隣接していないCH
2基は、R
3C=CR
3、C≡C、Si(R
3)
2、C=O、NR
3、O、SまたはCONR
3によって置きかえられていてもよく、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO
2によって置きかえられていてもよい)、または5から60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これは、それぞれの場合に1以上のラジカルR
3によって置換されていてもよい)、または5から40個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基(これは、1以上のラジカルR
3によって置換されていてもよい)、または5から40個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基(これは、1以上のラジカルR
3によって置換されていてもよい)であり、ここで、2以上の隣接するラジカルR
3は、互いに、単環または多環式の、脂肪族環系を形成していてもよい;
R
3は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、または1から20個の炭素原子を有する脂肪族、芳香族および/またはヘテロ芳香族炭化水素ラジカル(ここにおいて、さらに、1以上のH原子はFで置きかえられていてよい)であり、ここで、2以上の置換基R
3は、さらに、互いに、単環または多環式の、脂肪族環系を形成していてもよい;
ここで、2つの基Ar
2は、基Yによって互いに架橋されていてもよい。
【0009】
アリール基は、本発明の常識では、6から40個の炭素原子を含み;ヘテロアリール基は、本発明の常識では、2から40個の炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含み、炭素原子とヘテロ原子との合計が少なくとも5になることを条件とする。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選択される。ここでのアリール基またはヘテロアリール基は、単純な芳香族環、すなわちベンゼン、または単純なヘテロ芳香族環、たとえばピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または縮合アリールもしくはヘテロアリール基、たとえばナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン等の何れかを指すものと捉えられる。
【0010】
芳香族環系は、本発明の常識では、環系に6から60個の炭素原子を含む。ヘテロ芳香族環系は、本発明の常識では、環系に1から60個の炭素原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含み、炭素原子とヘテロ原子との合計が少なくとも5になることを条件とする。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選択される。芳香族またはヘテロ芳香族環系は、本発明の常識では、必ずしもアリールまたはヘテロアリール基のみを含まず、その代わり、さらに、複数のアリールまたはヘテロアリール基が、たとえばC、NもしくはO原子またはカルボニル基などの非芳香族単位(好ましくは、H以外の原子の10%未満)によって割り込まれていてもよい系を指すものと捉えられることを意図する。したがって、たとえば、9,9’スピロビフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベン等の系も、本発明の常識では、2以上のアリール基が、たとえば、直鎖状もしくは環状アルキル基、またはシリル基によって割り込まれた系と同様に芳香族環系であると捉えられることを意図する。また、たとえばビフェニルまたはターフェニルなどの、2以上のアリールまたはヘテロアリール基が互いに直接結合された系も同様に、芳香族またはヘテロ芳香族環系であると捉えられることを意図する。
【0011】
環状アルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基は、本発明の常識では、単環式、二環式または多環式基を指すものと捉えられる。
【0012】
本発明の目的では、さらに、個々のH原子またはCH
2基が上記の基によって置換されていてもよいC
1−からC
40−アルキル基は、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、tert−ペンチル、2−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、s−ヘキシル、tert−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、ネオヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロペンチル、2−メチルペンチル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、4−ヘプチル、シクロヘプチル、1−メチルシクロヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロオクチル、1−ビシクロ[2.2.2]オクチル、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル、2−(2,6−ジメチル)オクチル、3−(3,7−ジメチル)オクチル、アダマンチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは2,2,2−トリフルオロエチルラジカルを指すものと捉えられる。アルケニル基は、たとえば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニルを指すものと捉えられる。アルキニル基は、たとえば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、へプチニルまたはオクチニルを指すものと捉えられる。C
1−からC
40−アルコキシ基は、たとえば、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシまたは2−メチルブトキシを指すものと捉えられる。
【0013】
それぞれの場合に上記のラジカルRによって置換されていてもよく、任意の所望の位置を介して芳香族またはヘテロ芳香族環系に連結されていてもよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系は、たとえば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ベンゾフェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、ターフェニル、ターフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス−またはトランス−インデノフルオレン、シス−またはトランス−インデノカルバゾール、シス−またはトランス−インドロカルバゾール、シス−またはトランス−モノベンゾインデノフルオレン、シス−またはトランス−ジベンゾインデノフルオレン、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフチミダゾール、フェナントリミダゾール、ピリジミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾキサゾール、ナフトキサゾール、アントロキサゾール、フェナントロキサゾール、イソキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5−ジアザアントラセン、2,7−ジアザピレン、2,3−ジアザピレン、1,6−ジアザピレン、1,8−ジアザピレン、4,5−ジアザピレン、4,5,9,10−テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサゾアゾール、1,2,4−オキサゾアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサゾアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールに由来する基を指すものと捉えられる。
【0014】
前述の通り、同じCもしくはSi原子に結合しているラジカルR、または隣接する基Ar
1およびAr
2上の隣接するラジカルR
1もしくはラジカルR
1は、互いに環系を形成していてもよい。隣接するラジカルは、本発明の意味では、互いに直接結合している原子に結合しているラジカルを意味すると解釈される。隣接する基Ar
1およびAr
2は、互いに直接結合している基Ar
1およびAr
2を意味すると解釈される。ここで、ラジカルは、先に定義の通りであり、2つのラジカルは、互いに結合しており、それぞれの場合に水素原子が正式に排除され、化学的結合が形成される。したがって、ラジカルがアルキル基である場合、たとえば縮合シクロアルキル基が形成される可能性がある。したがって、ラジカルがビニル基またはビニル基および水素原子である場合、たとえば縮合アリール基が形成される可能性がある。ラジカルRまたはR
1が環系を形成する場合、この環は、好ましくは5員環または6員環である。2つのラジカルRが、互いに環系を形成する場合、それによってスピロ系が生じる。
【0015】
環の形成は、再度、以下のスキームによって例示される。
【化3】
【0016】
しかしさらに、前述の配合物は、2つのラジカルの一方が水素を表す場合に、他方のラジカルが、水素原子が結合している位置に結合して環を形成することを意味すると解釈されることも企図される。これは、以下のスキームによって例示される。
【化4】
【0017】
帯電していないこと、すなわち電気的に中性であることを特徴とする式(1)の化合物が好ましい。これは、錯化金属原子Mの電荷を補償するようにリガンドの電荷を選択することによって簡単に達成される。リガンドの電荷は、それぞれが負電荷を有する配位炭素または窒素原子の数によって決まる。
【0018】
さらに、金属原子の周囲の価電子の合計が16であることを特徴とする式(1)の化合物が好ましい。
【0019】
金属は、好ましくは、前述の金属の酸化状態、Pt(II)、Pd(II)、Ni(II)、Rh(I)、Ir(I)およびAu(III)から選択される。Pt(II)、Ir(I)およびAu(III)が特に好ましい。Pt(II)が特に非常に好ましい。
【0020】
さらに好ましくは、本発明の化合物の2つの基DがNを意味し、他の2つの基DがCを意味する。
【0021】
したがって、式(1)の好ましい構造は、次式(3)、(4)、(5)または(6)の構造である。
【化5】
【0022】
式中、使用した記号は、前述の意味を有する。ここで、式(3)および(4)の構造が、特に好ましい。
【0023】
さらに好ましくは、Yは、CR
2、NR、O、S、または式(2)の構造を意味し、特に好ましくはCR
2、NRまたはOを意味し、特に非常に好ましくはOを意味する。Yが式(2)の構造を意味する場合、化合物のそれぞれ半分の2つの白金含有部分は、電子的に脱共役されている。
【0024】
さらに好ましくは、式(1)、(3)、(4)、(5)および(6)の環1個当たり最大2つの記号Xは、Nを意味し、他の記号Xは、CR
1を意味する。特に好ましくは、環1個当たり最大1つの記号XはNを意味し、特に非常に好ましくは、すべての記号XがCR
1を意味する。
【0025】
したがって、特に好ましい態様は、式(3a)、(4a)、(5a)および(6a)の構造である。
【化6】
【0026】
式中、使用した記号は、前述の意味を有し、明確に図示されているラジカルR
1は、好ましくはHを意味する。
【0027】
再度、さらに好ましくは、前述の式のEは、Cを意味する。
【0028】
さらに好ましくは、すべての基Ar
1は、同じものが選択され、また同様に置換されている。同様に好ましくは、すべての基Ar
2は、同じものが選択され、また同様に置換されている。したがってこれらは、好ましくは、それぞれ2つの同一の部分リガンドを有する式(3)または(4)または(3a)または(4a)の対称性リガンドである。
【0029】
本発明の好ましい一態様では、Ar
1およびAr
2は、5から13個の芳香族環原子、特に好ましくは5から10個の芳香族環原子を有し、1以上のラジカルR
1で置換されていてもよい。
【0030】
部分リガンドAr
1−Ar
2は、好ましくは、有機エレクトロルミネセンスデバイスのためのリン光性金属錯体の分野で一般に使用されている通り、それぞれの二座モノアニオン性リガンドである。基Ar
1として適切なものは、好ましくはそれぞれの場合に、以下の群(7)から(26)の1つであり、基Ar
2として適切なものは、好ましくはそれぞれの場合に、以下の群(27)から(48)の1つである。ここでこれらの群は、好ましくは、部分リガンドAr
1−Ar
2における基Ar
1またはAr
2の一方が、中性窒素原子またはカルベン炭素原子を介して結合され、部分リガンドAr
1−Ar
2における基Ar
1またはAr
2の他方が、負電荷炭素原子または負電荷窒素原子を介して結合されるように選択される。
【0031】
したがって、適切な構造Ar
1は、次式(7)から(26h)の構造である。
【化7-1】
【化7-2】
【0032】
適切な構造Ar
2は、次式(27)から(48d)の構造である。
【化8-1】
【化8-2】
【0033】
式(7)から(48)の構造では、橋頭の炭素原子、M、およびAr
1またはAr
2との結合は、それぞれの場合に、破線で示される。さらに、式(7)から(48)のXおよびR
1は、前述と同じ意味を有し、Vは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、O、S、NR
1またはC(R
1)
2を意味する。好ましくは、それぞれの基における最大2つの記号Xは、Nを意味し、特に好ましくは、それぞれの基における最大1つの記号Xは、Nを意味する。特に非常に好ましくは、すべての記号XがCR
1を意味する。
【0034】
特に好ましい基Ar
1は、式(7)、(8)、(9)、(10)、(13)および(14)の基である。特に好ましい基Ar
2は、式(27)、(28)、(30)、(31)、(32)、(34)、(35)、(36)、(39)、(40)、(43)、(44)、(46)、(47)および(48)の基である。
【0035】
したがって、Ar
1およびAr
2の以下の組合せが、特に好ましい。
【化9-1】
【化9-2】
【0036】
先に示した通り、隣接する基Ar
1およびAr
2上の2つのラジカルは、互いに環を形成していてもよい。このタイプの閉環は、好ましくは、基CR
2=CR
2、CR
2=N、C(R
2)
2−C(R
2)
2、C(=O)−OまたはC(=O)−NR
2を介して生じ、ここではCR
2=CR
2およびCR
2=Nが好ましい。それによって全体で、1つの縮合アリールまたはヘテロアリール基が形成されていてもよく、したがってAr
1およびAr
2が別個のアリール基を表すことはなくなる。
【0037】
このタイプの閉環反応によって形成される好ましい基Ar
1−Ar
2は、次式(49)から(59)の基である。
【化10】
【0038】
式中、金属または橋頭の炭素原子との結合は、それぞれの場合に、破線で示される結合によって示され、Zは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、CR
2またはNを意味し、ここで最大1つの基ZはNを意味し、他の記号は、前述の意味を有する。
【0039】
Ar
1もしくはAr
2上、または橋頭の芳香族基上の好ましいラジカルR
1は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、N(R
2)
2、CN、C(=O)R
2、1から10個のC原子を有する直鎖アルキル基、または2から10個のC原子を有するアルケニル基、または3から10個のC原子を有する分枝状もしくは環状アルキル基(これらの各々は、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよく、ここで、1以上のH原子は、DまたはFで置きかえられていてもよい)、または5から30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これは、それぞれの場合に、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよい)から成る群から選択される。
【0040】
これらのラジカルR
1は、特に好ましくは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、N(R
2)
2、1から6個のC原子を有する直鎖アルキル基、または3から10個のC原子を有する分枝状もしくは環状アルキル基(ここで、1以上のH原子は、DまたはFで置きかえられていてもよい)、または5から24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これは、それぞれの場合に、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよい)から成る群から選択される。
【0041】
さらに、式(7)から(59)の基XがNを意味する場合、この窒素原子に隣接している基XまたはZは、CR
1(基Xの場合)またはCR
2(基Zの場合)を意味し、R
1またはR
2は、HまたはDに等しくないことが好ましく、好ましくは1から10個のC原子を有するアルキル基、または5から30個の芳香族環原子を有する芳香族環系を意味する。ここでアルキル基は、好ましくは3から10個のC原子、特に好ましくは3から5個のC原子を有する第二級または第三級アルキル基である。
【0042】
ここで「隣接する」は、このXもしくはZが、窒素に直接結合していてもよく、またはXが存在することが可能な次の位置にあることを意味する。このことは、再度、以下の図の特定のリガンドを参照して説明される。
【化11】
【0043】
この表示では、窒素に直接結合している位置と、Xが存在することが可能な次の位置との両方に、印を付けた。両方の位置が、本願の意味では、窒素原子に隣接する位置とみなされる。
【0044】
さらに、式(49)から(55)の基ZがNを意味する場合、この窒素原子に隣接している基XまたはZは、CR
1(基Xの場合)またはCR
2(基Zの場合)を意味し、R
1またはR
2は、HまたはDに等しくないことが好ましく、好ましくは1から10個のC原子を有するアルキル基、または5から30個の芳香族環原子を有する芳香族環系を意味する。ここでアルキル基は、好ましくは3から10個のC原子、特に好ましくは3から5個のC原子を有する第二級または第三級アルキル基である。
【0045】
基Yが、基CR
2またはSiR
2を意味する場合、基Rは、好ましくは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、1から10個のC原子を有する直鎖アルキル基、または2から10個のC原子を有するアルケニル基、または3から10個のC原子を有する分枝状もしくは環状アルキル基(これらの各々は、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよく、ここで、1以上のH原子は、DまたはFで置きかえられていてもよい)、または5から18個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これは、それぞれの場合に、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよく、好ましくは、縮合アリールまたはヘテロアリール基を含有していない)を意味し、ここで同じ炭素またはケイ素原子に結合している2以上のラジカルRは、互いに、単環式または多環式、脂肪族または芳香族環系を形成していてもよい。特に好ましいラジカルRは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、1から5個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基、特にメチル、または3から5個の炭素原子を有する分枝状または環状アルキル基、特にイソプロピルまたはtert−ブチル(ここで、1以上のH原子は、DまたはFで置きかえられていてもよい)、または5から12個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これは、縮合アリールまたはヘテロアリール基を含有しておらず、各々の場合において1以上のラジカルR
2によって置換されていてもよい)から成る群から選択され、ここで、同じ炭素またはケイ素原子に結合している2つのラジカルRは、互いに、単環または多環式の、脂肪族または芳香族環系を形成してもよい。
【0046】
同じ炭素またはケイ素原子に結合しているラジカルRが、互いに環系を形成する場合、これは、本発明の好ましい一態様では、次式(a)、式(b)または式(c)の構造である。
【化12】
【0047】
式中、Qは、C(R
2)
2、NR
2、OまたはSを意味し、構造は、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよく、mは、1、2、3、4または5、好ましくは3または4を意味する。ここで、破線形態で示される結合は、この基Yから橋頭までの結合を意味する。式(b)および(c)のフェニル基は、好ましくは無置換である。
【0048】
基Yが基NR、BR、PRまたはP(=O)Rを意味する場合、基Rは、好ましくは、5から18個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系(これは、それぞれの場合に、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよく、好ましくは、縮合アリールまたはヘテロアリール基を含有していない)を意味する。特に好ましい芳香族またはヘテロ芳香族環系は、オルト−、メタ−もしくはパラ−ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、2,4,6−トリアルキルフェニル、特にメシチル、または2,6−ジアルキルフェニル、特に2,6−ジメチルフェニルから選択される。
【0049】
Yが、式(2)の基を意味する場合、橋頭を介して互いに連結している2つの金属錯体は、好ましくは同一であり、また同様に置換されている。
【0050】
前述の好ましい態様を、要望に応じて互いに組み合わせることができる。本発明の特に好ましい一態様では、前述の好ましい態様が同時に適用される。
【0051】
したがって、本発明の好ましい一態様では、式(1)、または(3)から(6)、または(3a)から(6a)の化合物は帯電しておらず、以下が適用される:
Mは、Pt(II)、Pd(II)、Ni(II)、Rh(I)、Ir(I)およびAu(III)から成る群から選択され;
Yは、CR
2、C=O、NR、OおよびSから成る群から選択され;
Xは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、CR
1またはNであり、ここで環1個当たり最大2つの記号XはNを意味し、他の記号XはCR
1を意味し;
Ar
1は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、前述の式(7)から(26)の構造から選択され;
Ar
2は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、前述の式(27)から(48)の構造から選択され;
または
Ar
1−Ar
2は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、前述の式(49)から(59)の構造から選択され;
R
1は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、N(R
2)
2、CN、C(=O)R
2、1から10個のC原子を有する直鎖アルキル基、または2から10個のC原子を有するアルケニル基、または3から10個のC原子を有する分枝状もしくは環状アルキル基(これらの各々は、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよく、ここで、1以上のH原子は、DまたはFで置きかえられていてもよい)、または5から30個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これは、それぞれの場合に、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよい)から成る群から選択され;
Rは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、Y=CR
2では、1から10個のC原子を有する直鎖アルキル基、または2から10個のC原子を有するアルケニル基、または3から10個のC原子を有する分枝状もしくは環状アルキル基(これらの各々は、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよく、ここで、1以上のH原子は、DまたはFで置きかえられていてもよい)、または5から18個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これは、それぞれの場合に、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよく、好ましくは、縮合アリールまたはヘテロアリール基を含有していない)を意味し、ここで同じ炭素またはケイ素原子に結合している2以上のラジカルRは、互いに、単環式または多環式、脂肪族または芳香族環系を形成していてもよく、その結果、スピロ系が形成され;
またRは、Y=NRでは、5から18個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系(これは、それぞれの場合に1以上のラジカルR
2で置換されていてもよく、好ましくは縮合アリールまたはヘテロアリール基を含有していない)を意味する。
【0052】
したがって、本発明の特に好ましい一態様では、式(1)、または(3)から(6)、または(3a)から(6a)の化合物は帯電しておらず、以下が適用される:
Mは、Pt(II)、Ir(I)およびAu(III)から成る群、特にPt(II)から選択され;
Yは、CR
2、NRおよびSから成る群から選択され;
Xは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、CR
1またはNであり、ここで環1個当たり最大1つの記号XはNを意味し、他の記号XはCR
1を意味し、好ましくはすべての記号XがCR
1を意味し;
Ar
1は、出現する毎に同一であるかもしくは異なり、前述の式(7)、(8)、(9)、(10)、(13)および(14)の構造から選択され;
Ar
2は、出現する毎に同一であるかもしくは異なり、前述の式(27)、(28)、(30)、(31)、(32)、(34)、(35)、(36)、(39)、(40)、(43)、(44)、(46)および(47)の構造から選択され;
または
Ar
1−Ar
2は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、前述の式(49)から(59)の構造から選択され;
R
1は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、D、F、N(R
2)
2、1から6個のC原子を有する直鎖アルキル基、または3から10個のC原子を有する分枝状もしくは環状アルキル基(ここで、1以上のH原子は、DまたはFで置きかえられていてもよい)、または5から24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これは、それぞれの場合に、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよい)から成る群から選択され;
Rは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、Y=CR
2では、1から5個のC原子を有する直鎖アルキル基、特にメチル、または3から5個のC原子を有する分枝状もしくは環状アルキル基、特にイソプロピルもしくはtert−ブチル(ここで、1以上のH原子は、DまたはFで置きかえられていてもよい)、または5から12個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これは、縮合アリールまたはヘテロアリール基を含有しておらず、それぞれの場合に、1以上のラジカルR
2で置換されていてもよい)を意味し、ここで同じ炭素またはケイ素原子に結合している2つのラジカルRは、互いに、単環式または多環式、脂肪族または芳香族環系を形成していてもよく、その結果、スピロ系が形成され;
またRは、Y=NRでは、5から18個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系(これは、それぞれの場合に1以上のラジカルR
2で置換されていてもよく、縮合アリールまたはヘテロアリール基を含有していない)を意味する。
【0053】
本発明の化合物のリガンドは、スキーム1に従って調製することができる。オルト位にハロゲン官能基を有するピリジンケトンを、有機金属化合物と反応させて、対応するトリアリールメタノールを得、次にそのトリアリールメタノールを、第2のステップで酸触媒作用により環化すると、対応するスピロ化合物が得られる。その後のウルマンまたは鈴木カップリングによってリガンドが得られ、このリガンドを、適切な金属前駆体と反応させると、本発明の金属錯体を得ることができる。白金錯体の合成は、たとえば以下のスキームに図示される。
【化13】
【0054】
次にたとえばスキーム2のフェナントリジン誘導体について示す通り、2つの部分リガンドを既に担持しているケトンを、同様に有機金属化合物と反応させて、対応するトリアリールメタノールを得、次にそのトリアリールメタノールを、第2のステップで酸触媒作用により環化すると、対応するスピロ化合物が得られる。この目的で使用されるケトンは、当業者に公知の方法によって、たとえばアリールヘテロアリールハロゲン化物およびC1求電子試薬から調製することができる。非対称金属錯体は、この経路によって非対称ケトンから得ることができる。
【化14】
【0055】
スキーム3に従って、3,3’−ジアリールケトンから出発すると、o−メタル化(metallated)芳香族環上にスピロ架橋性のC原子を担持する金属錯体が得られる。
【化15】
【0056】
したがって、本発明はさらに、対応する遊離リガンドと適切な金属化合物との反応によって式(1)の化合物を調製するための方法に関する。適切な白金出発材料は、たとえばPtCl
2、K
2[PtCl
4]、PtCl
2(DMSO)
2、Pt(Me)
2(DMSO)
2、PtCl
2(ベンゾニトリル)
2、PtCl
2(アセトニトリル)
2、またはPt−オレフィン錯体、たとえば(COD)PtCl
2などである。適切なイリジウム出発材料は、たとえばイリジウム(III)塩化物水和物、たとえばCODをリガンドとして有するイリジウム−オレフィン錯体、Ir(acac)
3、Ir(tBu−acac)
3、またはVaska錯体である。適切な金出発材料は、たとえばAuCl
3またはHAuCl
4である。
【0057】
合成は、熱的、光化学的に、および/またはマイクロ波放射線によって活性化することもできる。本発明の可能な一態様では、反応は、追加の溶媒を使用せずに溶融状態で実施される。ここで「溶融」は、リガンドが溶融形態であり、金属前駆体がこの溶融物に溶解または懸濁していることを意味する。さらに可能な本発明の一態様では、対応する遊離リガンドを、氷酢酸中で金属前駆体、たとえばK
2PtCl
4と反応させる。
【0058】
これらの方法の後に、任意に精製、たとえば再結晶または昇華などを行うと、本発明の式(1)の化合物を、高純度で、好ましくは99%超(
1H−NMRおよび/またはHPLCを用いて測定した場合に)で得ることができる。
【0059】
本発明の好適な化合物の例は、以下の表に示す構造である。
【化16-1】
【化16-2】
【化16-3】
【化16-4】
【化16-5】
【化16-6】
【化16-7】
【化16-8】
【化16-9】
【0060】
本発明に係る化合物を、たとえば、(約4から20個の炭素原子の)比較的長いアルキル基、特に分枝状アルキル基、または場合により置換されたアリール基、たとえば、キシリル、メシチル、または分枝状ターフェニルもしくはクオーターフェニル基による好適な置換によって可溶性にすることもできる。次いで、このタイプの化合物は、たとえばトルエンまたはキシレンなどの有機溶媒に、錯体を処理するのに十分な濃度で室温にて可溶である。これらの可溶性化合物は、たとえば印刷法による溶液からの処理に特に好適である。
【0061】
したがって本発明は、さらに、以上に示した式(1)または好ましい態様の少なくとも1つの化合物および少なくとも1つの溶媒を含む配合物、特に溶液、懸濁液またはミニエマルションに関する。
【0062】
以上に記載した式(1)または以上に示した好ましい態様の錯体を電子装置における活性成分として使用することができる。したがって本発明は、さらに、式(1)の化合物または先に示した好ましい態様を、電子装置で使用することに関する。本発明はさらに、式(1)の化合物または先に示した好ましい態様を、一重項酸素を発生させるために、または酸素センサーで使用することに関する。
【0063】
本発明は、またさらに、式(1)の少なくとも1つの化合物または先に示した好ましい態様を含む電子装置に関する。本発明に係る電子装置は、アノード、カソード、および以上に示した式(1)の少なくとも1つの化合物を含む少なくとも1つの層を含む。ここで、好ましい電子装置は、有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機太陽電池(O−SC)、有機光検出器、有機光受容体、有機電場消光デバイス(O−FQD)、発光電気化学セル(LEC)、有機レーザダイオード(O−レーザー)または酸素センサー(これらは、以上に示した式(1)または以上に示した好ましい態様の少なくとも1つの化合物を少なくとも1つの層に含む)から成る群から選択される。有機エレクトロルミネセンスデバイスが特に好ましい。用語「活性成分」は、一般に、アノードとカソードとの間に導入された有機または無機材料、たとえば、電荷注入、電荷輸送または電荷遮断材料、特に発光材料およびマトリックス材料に適用される。本発明に係る化合物は、有機エレクトロルミネセンスデバイスにおける発光材料として特に良好な特性を示す。したがって、有機エレクトロルミネセンスデバイスは、本発明の好ましい態様である。
【0064】
有機エレクトロルミネセンスデバイスは、カソード、アノード、および少なくとも1つの発光層を含む。これらの層とは別に、それは、さらなる層、たとえば、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔遮断層、電子輸送層、電子注入層、励起子遮断層、電子遮断層、電荷発生層、および/または有機もしくは無機p/n接合を含んでいてもよい。たとえば、励起子遮断機能を有し、かつ/またはエレクトロルミネセンスデバイスにおける電荷バランスを制御する中間層が、同様に2つの発光層の間に導入されてもよい。しかし、これらの層の各々が、必ずしも存在する必要がないことに留意されたい。
【0065】
有機エレクトロルミネセンスデバイスは、ここで、1以上の発光層を含んでいてもよい。複数の発光層が存在する場合、これらは、好ましくは、全体で、380nmと750nmの間に複数の発光極大を有するため、全体的に白色発光をもたらす(すなわち、蛍光またはリン光を発することが可能である様々な発光性化合物が発光層に使用される)。3つの層が青色、緑色および橙色もしくは赤色発光を示す三層系(その基本構造については、たとえば国際公開第2005/011013号参照)、または3つを超える発光層を有する系が特に好ましい。それは、1以上の層が蛍光を発し、1以上の他の層がリン光を発するハイブリッド系であってもよい。
【0066】
本発明の好ましい態様において、有機エレクトロルミネセンスデバイスは、以上に示した式(1)または好ましい態様の化合物を発光性化合物として1以上の発光層に含む。
【0067】
以上に示した式(1)または好ましい態様の化合物が発光性化合物として発光層に採用される場合、それは、好ましくは、1以上のマトリックス材料と組み合わせて採用される。マトリックス材料は、本発明の意味では、発光材料中で典型的には体積25%未満の濃度でドープするために、発光層で使用することができるが、ドープされたエミッタ材料とは対照的に、それ自体は発光に著しく寄与しない材料である。エミッタ層中でいかなる材料が発光に著しく寄与するかしないか、したがっていかなる材料をエミッタとしてみなすべきか、および何をマトリックス材料としてみなすべきかは、エミッタ層が存在するOLEDのエレクトロルミネセンススペクトルを個々の材料のフォトルミネセンススペクトルと比較することによって、認識することができる。以上に示した式(1)または好ましい態様の化合物およびマトリックス材料の混合物は、エミッタおよびマトリックス材料の全混合物に対して、以上に示した式(1)または好ましい態様の化合物を0.1〜99体積%、好ましくは1〜90体積%、特に好ましくは3〜40体積%、特に5〜15重量%含む。それに応じて、その混合物は、エミッタおよびマトリックス材料の全混合物に対して、マトリックス材料を99.9〜1体積%、好ましくは99〜10体積%、特に好ましくは97〜60体積%、特に95〜85重量%含む。
【0068】
採用されるマトリックス材料は、概して、従来技術によるこの目的に対して既知の何れの材料であってもよい。マトリックス材料の三重項準位は、好ましくは、エミッタの三重項準位より高い。
【0069】
本発明に係る化合物のための好適なマトリックス材料は、たとえば、国際公開第2004/013080号、同第2004/093207号、同第2006/005627号もしくは同第2010/006680号に記載されているケトン、ホスフィン酸化物、スルホキシドおよびスルホン、国際公開第2005/039246、米国特許出願公開第2005/0069729号、特開2004−288381、欧州特許第1205527号、国際公開第2008/086851号もしくは米国特許出願公開第2009/0134784号に開示されているトリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえばCBP(N,N−ビスカルバゾリルビフェニル)、m−CBPもしくはカルバゾール誘導体、たとえば国際公開第2007/063754号もしくは同第2008/056746号に記載されているインドロカルバゾール誘導体、たとえば国際公開第2010/136109号もしくは同第2011/000455号に記載されているインデノカルバゾール誘導体、たとえば欧州特許第1617710号、同第1617711号、同第1731584号、特開2005−347160に記載されているアザカルバゾール、たとえば国際公開第2007/137725号に記載されている双極性マトリックス材料、たとえば国際公開2005/111172号に記載されているシラン、たとえば国際公開第2006/117052号に記載されているアザボロールもしくはボロン酸エステル、たとえば国際公開第2010/054729号に記載されているジアザシロール誘導体、たとえば国際公開第2010/054730号に記載されているジアザホスホール誘導体、たとえば国際公開第2010/015306号、同第2007/063754号もしくは同第2008/056746号に記載されているトリアジン誘導体、たとえば欧州特許第652273号もしくは国際公開第2009/062578号に記載されている亜鉛錯体、たとえば国際公開第2009/148015号に記載されているジベンゾフラン誘導体、またはたとえば米国特許出願公開第2009/0136779号、国際公開第2010/050778号、国際公開第2011/042107号もしくは未公開出願独国特許第102010005697.9号、独国特許第102010012738.8号、独国特許第102010019306.2号および欧州特許第11003232.3号に記載されている架橋カルバゾール誘導体である。
【0070】
複数の異なるマトリックス材料、特に少なくとも1つの電子伝導性マトリックス材料および少なくとも1つの正孔伝導性マトリックス材料を混合物として採用することも好適であり得る。好ましい組合せは、たとえば、芳香族ケトン、トリアジン誘導体またはホスフィン酸化物誘導体と、トリアリールアミン誘導体またはカルバゾール誘導体との、本発明に係る金属錯体としての混合マトリックスとしての使用である。たとえば国際公開第2010/108579号に記載されている、電荷輸送性マトリックス材料と、電荷輸送に関与しないかまたは実質的に関与しない電気的に不活性なマトリックス材料との混合物の使用も好ましい。
【0071】
また、2以上の三重項エミッタをマトリックスとともに採用することが好適である。より短波長の発光スペクトルを有する三重項エミッタは、より長波長の発光スペクトルを有する三重項エミッタに対する共マトリックスとして機能する。したがって、たとえば、本発明に係る式(1)の錯体を、より長波長で発光する三重項エミッタ、たとえば緑色または赤色発光三重項エミッタに対する共マトリックスとして採用することができる。本発明の錯体は、金属錯体と一緒により短波長で発光する三重項エミッタとしても同様に用いることができる。ここでは、2種の白金錯体の組合せ、または1種の白金錯体と1種のイリジウム錯体の組合せが好ましい。
【0072】
本発明に係る化合物を電子装置における他の機能に、たとえば、正孔注入もしくは輸送層における正孔材料として、電荷発生材料として、または電子遮断材料として採用することもできる。本発明に係る錯体を、発光層における他のリン光性金属錯体のためのマトリックス材料として採用することもできる。
【0073】
カソードは、好ましくは、仕事関数が小さい金属、金属合金、またはたとえばアルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属もしくはランタノイドなどの様々な金属(たとえば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)を含む多層構造体を含む。アルカリ金属またはアルカリ土類金属および銀を含む合金、たとえば、マグネシウムおよび銀を含む合金も好適である。多層構造の場合は、前記金属に加えて、仕事関数が比較的大きいさらなる金属、たとえばAgを使用してもよく、その場合は、たとえばMg/Ag、Ca/AgまたはBa/Agなどの金属の組合せが一般に使用される。高い誘電率を有する材料の薄い中間層を金属カソードと有機半導体との間に導入することも好適であり得る。たとえば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物、さらには対応する酸化物または炭酸塩(たとえば、LiF、Li
2O、BaF
2、MgO、NaF、CsF、Cs
2CO
3等)がこの目的に好適である。有機アルカリ金属錯体、たとえばLiq(キノリン酸リチウム)もこの目的に好適である。この層の層厚は、好ましくは、0.5から5nmである。
【0074】
アノードは、好ましくは、仕事関数が大きい材料を含む。アノードは、好ましくは、真空に対して4.5eVを超える仕事関数を有する。一方では、高い酸化還元電位を有する金属、たとえば、Ag、PtまたはAuがこの目的に好適である。他方では、金属/金属酸化物電極(たとえば、Al/Ni/NiO
X、Al/PtO
X)も好適であり得る。用途によっては、有機材料の照射(O−SC)または光の取出し(OLED/PLED、O−LASER)の何れかを促進するために、電極の少なくとも1つが透明または部分的に透明でなければならない。ここで、好ましいアノード材料は、導電性混合金属酸化物である。インジウム錫酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)が特に好ましい。また、導電性ドープ有機材料、特に導電性ドープポリマー、たとえば、PEDOT、PANIまたはこれらのポリマーの誘導体が好ましい。
【0075】
一般に、従来技術によりそれらの層に使用されているすべての材料をさらなる層に使用することができ、当業者は、進歩性のあるステップを用いることなく、電子装置において、これらの材料の各々と本発明に係る材料とを組み合わせることが可能である。
【0076】
デバイスは、(用途に応じて)相応に構成され、接触が設けられ、最終的に密封される(当該デバイスの寿命は、水および/または空気の存在下では著しく低下するためである)。
【0077】
また、材料を真空昇華装置にて、通常10
-5mbar未満、好ましくは10
-6mbar未満の初期圧力で真空蒸着する昇華法によって1以上の層を塗布することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。初期圧力をさらに低くするか、またはさらに高くすること、たとえば10
-7mbar未満にすることも可能である。
【0078】
材料を10
-5mbarから1barの圧力で塗布するOVPD(有機気相成長)法またはキャリヤガス昇華を利用して1以上の層を塗布することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスも好ましい。この方法の特殊なケースは、ノズルを介して材料を直接塗布するOVJP(有機蒸気ジェット印刷)法である(たとえば、M.S.Arnoldら、Appl.Phys.Lett.2008、92、053301)。
【0079】
また、1以上の層を、たとえば、回転塗布により、またはたとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷もしくはノズル印刷などの任意の所望の印刷法、特に好ましくはLITI(光誘発熱画像化、熱転写印刷)もしくはインクジェット印刷によって溶液から作製することを特徴とする有機エレクトロルミネセンスデバイスが好ましい。この目的には可溶性の化合物が必要であり、それらは、たとえば好適な置換を通じて得られる。
【0080】
有機エレクトロルミネセンスデバイスは、1以上の層を溶液から塗布し、1以上の他の層を蒸着によって塗布することによってハイブリッド系として製造されてもよい。したがって、たとえば、式(1)の化合物およびマトリックス材料を含む発光層を溶液から塗布し、正孔遮断層および/または電子輸送層を真空蒸着によって上部に塗布することが可能である。
【0081】
これらの方法は、当業者に広く知られており、当業者によって、以上に示した式(1)または好ましい態様の化合物を含む有機エレクトロルミネセンスデバイスに、問題なく適用され得る。
【0082】
本発明の電子装置、特に有機エレクトロルミネセンスデバイスは、従来技術を上回る以下の意外な利点によって区別される。
【0083】
1.式(1)の化合物を発光性材料として含む有機エレクトロルミネセンスデバイスは、非常に長い寿命を有する。
【0084】
2.式(1)の化合物を発光性材料として含む有機エレクトロルミネセンスデバイスは、同時に非常に良好な効率性を有する。
【0085】
特に本発明の化合物は、2つの基Rが橋頭として互いに環を形成しない基CR
2を含有するか、または橋頭としてフルオレンを含有し、2つの部分リガンドが9位でそれぞれ結合している化合物と比較して、効率および/または寿命に関して改善を示す。
【0086】
これらの上記利点は、他の電子特性の悪化を伴わない。
【0087】
本発明を以下の例によってより詳細に説明するが、それらによって本発明を限定することを望まない。当業者は、進歩性のあるステップを用いることなく、それらの説明に基づいてさらなる電子装置を製造することが可能であるため、特許請求の範囲全体を通じて本発明を実施することが可能である。
【0088】
[実施例]
以下の合成を、別段の指定がない限り、乾燥溶媒中保護ガス雰囲気下で実施する。出発材料を、たとえばSigma−ALDRICHまたはABCRから購入することができる。角括弧内の数字は、文献から公知の出発材料の場合、CAS番号に関するものである。
【0089】
A:シントンの合成
例1:(2−ブロモフェニル)フェニル−(2,4,6−トリメチルフェニル)アミン、S1
【化17】
【0090】
1.0g(5mmol)のトリ−tert−ブチルホスフィンおよび561mg(2.5mmol)の酢酸パラジウム(II)を、21.1g(100mmol)のフェニル(2,4,6−トリメチルフェニル)アミン[23592−67−8]、31.1g(110mmol)の1−ブロモ−2−ヨードベンゼン[583−55−1]および13.5g(140mmol)のナトリウムtert−ブトキシドのトルエン600ml中混合物に添加し、次に混合物を還流下で20時間加熱する。60℃に冷却した後、水500mlを反応混合物に添加し、有機相を分離し、毎回水300mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。トルエンを真空中で除去した後、少量の酢酸エチルを添加することによって残渣をメタノールから再結晶させる。収率:25.7g(70mmol)、70%;
1H−NMRによる純度約96%。
【0091】
例2:ビス(2−ブロモフェニル)ビスフェニルメタン、S2
【化18】
【0092】
100ml(100mmol)の1Mフェニルマグネシウム臭化物溶液を、34.0g(100mmol)の2,2’−ジブロモベンゾフェノン[25187−01−3]のTHF500ml溶液に滴下添加し、その後、混合物を50℃で3時間撹拌する。1N酢酸300mlを添加し、室温で30分間撹拌した後、有機相を分離し、酢酸エチル300mlで希釈し、水500mlで1回、飽和塩化ナトリウム溶液500mlで1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、次に真空中で蒸発乾固させる。こうして得られた泡状物質を、ジクロロメタン300mlに溶解し、8.0ml(110mmol)の塩化チオニルおよびDMF2滴を添加し、混合物を還流下で30分間加熱する。ガスの発生が完了したら、混合物を真空中で蒸発乾固させ、残渣を27.4ml(300mmol)のアニリンに溶解し、撹拌しながら200℃で5分間加熱する。反応混合物を80℃に冷却し、2NのHCl150mlおよびメタノール120mlの混合物を添加し、混合物を還流下でさらに30分間撹拌する。冷却後、固体を吸引により濾別し、少量のメタノールで1回洗浄し、固体をエタノール200mlおよび濃硫酸30mlの混合物に懸濁させ、反応混合物を、氷/塩化ナトリウム浴中で−10℃に冷却し、25ml(220mmol)の亜硝酸イソアミルを滴下添加し、混合物をさらに30分間撹拌する。次に、50重量%水性次亜リン酸50mlを添加し、混合物をゆっくり温め、還流下でさらに30分間撹拌する。冷却後、固体を吸引により濾別し、毎回エタノール50mlで3回洗浄し、次にジオキサンから2回再結晶させる。収率:32.6g(68mmol)、68%;
1H−NMRによる純度約97%。
【0093】
例3:9,9−ビス(6−ブロモピリジン−2−イル)−9,10−ジヒドロアントラセン、S3
【化19】
【0094】
変形体A:グリニャール試薬を用いる
対応するグリニャール試薬を、70℃の油浴を使用して二次加熱しながら、2.7g(110mmol)のヨウ素活性化削り状マグネシウム、ならびに24.7g(110mmol)の2−ブロモフェニルフェニルメタン[23450−18−2]、1,2−ジクロロエタン0.8ml、1,2−ジメトキシエタン30mlおよびTHF200mlの混合物から調製する。マグネシウムが完全に反応したら、混合物を室温に冷却し、次に34.2g(100mmol)のビス(6−ブロモピリジン−2−イル)メタノン[42772−87−2]のTHF150ml溶液を滴下添加し、次に混合物を室温でさらに12時間撹拌する。水100mlを添加し、次に混合物を手短に撹拌し、有機相を分離し、溶媒を真空中で除去する。残渣を、40℃に温めた氷酢酸500ml、無水酢酸50mlに懸濁させ、次に、濃硫酸10mlをその懸濁液に滴下添加する。こうして得られた溶液を、80℃でさらに1時間撹拌し、次に溶媒を真空中で除去し、残渣をジクロロメタン500mlに溶解し、2NのNaOH500mlで1回、水300mlで1回、飽和塩化ナトリウム溶液300mlで1回洗浄し、次に硫酸マグネシウムで乾燥させる。ジクロロメタンを真空中で除去した後、エタノール約40mlを添加して、残渣を酢酸エチル40mlから再結晶させる。収率:27.6g(56mmol)、56%;
1H−NMRによる純度約98%。
【0095】
変形体B:リチウム試薬を用いる
40.0ml(100mmol)のn−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M)を、−78℃に冷却した24.7g(110mmol)の2−ブロモフェニルフェニルメタン[23450−18−2]のTHF300ml溶液に撹拌しながら滴下添加する。混合物をさらに30分間撹拌し、次に、34.2g(100mmol)のビス(6−ブロモピリジン−2−イル)メタノン[42772−87−2]のTHF150ml溶液を滴下添加し、混合物を室温までゆっくり温めた。さらに、変形体Aの場合に記載した手順を行う。収率:23.2g(47mmol)、47%;
1H−NMRによる純度約96%。
【0096】
以下の誘導体を、同様に調製する。
【化20-1】
【化20-2】
【化20-3】
【0097】
例16:9,9−ビス(6−ブロモピリジン−2−イル)アントラセン−9−オン、S16
【化21】
【0098】
20.0g(200mmol)の三酸化クロムの水200ml溶液を、酢酸500mlおよび水300mlの混合物に49.2g(100mmol)の9,9−ビス(6−ブロモピリジン−2−イル)−9,10−ジヒドロアントラセン、S3およびガラスビーズ(直径3mm)300gを懸濁させ、激しく撹拌した懸濁液に、100℃で滴下添加する。反応混合物を100℃でさらに16時間撹拌し、冷却し、酢酸エチル1000mlを添加し、毎回混合物を水500mlで3回洗浄し、飽和塩化ナトリウム溶液500mlで1回洗浄し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させる。酢酸エチルを真空中で除去し、残渣をトルエン/シクロヘキサンから再結晶させる。収率:35.4g(70mmol)、70%;
1H−NMRによる純度約96%。
【0099】
例17:9,9−ビス(6−ブロモピリジン−2−イル)アントラセン−9−オン、S17
【化22】
【0100】
27.1g(110mmol)のm−クロロ過安息香酸(70%含水)を、58.6g(100mmol)の5,5−ビス(6−ブロモ−ピリジン−2−イル)−5,10−ジヒドロ−10−フェニルアクリドホスフィン酸化物、S11のジクロロメタン500ml溶液に、撹拌しながら数回に分けて添加する。混合物をさらに16時間撹拌した後、有機相を1NのNaOH500mlで1回洗浄し、水300mlで3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。ジクロロメタンを真空中で除去した後、エタノールを添加することによって残渣を酢酸エチルから再結晶させる。収率:47.1g(78mmol)、78%;
1H−NMRによる純度約97%。
【0101】
例18:9,9−ビス(6−ブロモピリジン−2−イル)−9,10−ジヒドロアントラセン−10,10−スピロビフルオレン、S18
【化23】
【0102】
対応するグリニャール試薬を、70℃の油浴を使用して二次加熱しながら、2.7g(110mmol)のヨウ素活性化削り状マグネシウム、ならびに25.6g(110mmol)の2−ブロモビフェニル、1,2−ジクロロエタン0.8ml、1,2−ジメトキシエタン50ml、THF400mlおよびトルエン200mlの混合物から調製する。マグネシウムが完全に反応したら、混合物を室温に冷却し、次に、50.6g(100mmol)の9,9−ビス(6−ブロモピリジン−2−イル)アントラセン−9−オン、S16のTHF300ml溶液を滴下添加し、混合物を室温でさらに12時間撹拌する。水100mlを添加し、次に混合物を手短に撹拌し、有機相を分離し、溶媒を真空中で除去する。残渣を、40℃に温めた氷酢酸500mlに懸濁させ、濃硫酸0.2mlをその懸濁液に添加し、その後混合物を100℃でさらに2時間撹拌する。次に、溶媒を真空中で除去し、残渣をジクロロメタン1000mlに溶解し、2NのNaOH500mlで1回洗浄し、水300mlで1回洗浄し、飽和塩化ナトリウム溶液300mlで1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。ジクロロメタンを真空中で除去した後、残渣をジオキサンから再結晶させる。収率:48.8g(76mmol)、76%;
1H−NMRによる純度約98%。
【0103】
リガンドの合成
例19:L1
【化24】
【0104】
526mg(2.6mmol)のトリ−tert−ブチルホスフィンおよび449mg(2mmol)の酢酸パラジウム(II)を、激しく撹拌した49.2g(100mmol)の9,9−ビス(6−ブロモピリジン−2−イル)−9,10−ジヒドロアントラセン、48.8g(400mmol)のフェニルボロン酸[98−80−6]S3、35.0g(600mmol)の無水フッ化カリウムおよびTHF700mlの混合物に添加し、次に、混合物を還流下で8時間加熱する。冷却後、溶媒を真空中で除去する。残渣をジクロロメタン500mlに溶解し、毎回水300mlで3回洗浄し、次に硫酸マグネシウムで乾燥させる。ジクロロメタンを真空中で除去した後、残渣を酢酸エチル/シクロヘキサンから再結晶させ、その後、固体は、揮発性の構成成分および不揮発性の構成成分から、分別昇華(pは約10
-5mbar、Tは約260〜280℃)によって容易に除去される。収率:40.4g(83mmol)、83%;純度:
1H−NMRによる純度約99.0%。
【0105】
以下の誘導体を、同様に調製する。
【化25-1】
【化25-2】
【化25-3】
【化25-4】
【化25-5】
【化25-6】
【化25-7】
【化25-8】
【0106】
例46:9,9−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−10,10−ジメチル−9,10−ジヒドロアントラセン、L28
【化26】
【0107】
a)ビスベンゾ[h]キノリン−2−イルメタノン
【化27】
【0108】
80.0ml(200mmol)のn−ブチルリチウム(n−ヘキサン中2.5M)を、−78℃に冷却した51.6g(200mmol)の2−ブロモ−ベンゾ[h]キノリン[1097204−18−6]のTHF1000ml溶液に滴下添加し、混合物をさらに1時間撹拌する。次に、9.2g(100mmol)のN,N−ジメチルカルバモイル塩化物[79−44−7]およびTHF30mlの混合物を、激しく撹拌しながら一度に添加する。反応混合物を室温にゆっくり温め、酢酸8mlおよび水200mlの混合物を添加し、混合物を室温でさらに5時間撹拌し、水相を分離し、有機相を蒸発乾固させる。残渣を煮沸DMF約300mlに溶解し、水10mlおよび酢酸1mlをその溶液に滴下添加し、混合物を還流下でさらに2時間撹拌する。混合物を80℃に冷却し、EtOH300mlを滴下添加し、混合物を撹拌しながら室温に冷却し、沈着結晶を吸引により濾別し、EtOH約50mlで2回洗浄し、真空中で乾燥させる。収率:26.2g(68mmol)、68%;
1H−NMRによる純度約97%。
【0109】
b)L28
2−ブロモフェニルフェニルメタンの代わりに30.3g(110mmol)の1−ブロモ−2−(1−メチル−1−フェニルエチル)ベンゼン[796966−97−7]を使用し、ビス(6−ブロモピリジン−2−イル)メタノンの代わりに38.4g(100mmol)のビスベンゾ[h]キノリン−2−イル−メタノンを使用して、例3、S3に類似の手順を行う。その後、固体は、揮発性の構成成分および不揮発性の構成成分から、分別昇華(pは約10
-5mbar、Tは約260〜280℃)によって容易に除去される。収率:23.1g(41mmol)、41%;
1H−NMRによる純度約99.0%。
【0110】
以下の誘導体を、同様に調製する。
【化28】
【0112】
52.0g(100mmol)のS4、31.0g(250mmol)の3−tert−ブチル−1H−ピラゾール[15802−80−9]、3.8g(20mmol)のヨウ化銅(I)、ガラスビーズ(直径3mm)200gおよびニトロベンゼン200mlの混合物を200℃で2時間加熱する。冷却後、混合物をジクロロメタン1000mlで希釈し、ガラスビーズおよび塩を濾別し、混合物を真空中で蒸発乾固させる。残渣をTHF500mlに溶解し、暗色構成成分を除去するために、シリカゲルを介して濾過し、次に約100mlまで蒸発させ、結晶化が始まるまで、メタノール(約200ml)を温めた混合物に添加し、混合物を撹拌下で冷却し、固体を吸引により濾別し、毎回メタノール約50mlで3回洗浄し、真空中で乾燥させる。その後、固体は、揮発性の構成成分および不揮発性の構成成分から、分別昇華(pは約10
-5mbar、Tは約260〜280℃)によって容易に除去される。収率:27.3g(45mmol)、45%;
1H−NMRによる純度約99.0%。
【0113】
以下の誘導体を、同様に調製する。
【化30】
【0114】
金属錯体の合成
例51:白金錯体の合成
変形体A
激しく撹拌した10mmolのテトラクロロ白金酸カリウム、10mmolのリガンドL、ガラスビーズ(直径3mm)150gおよび氷酢酸300mlの混合物を、o−メタル化が完了するまで還流下で48〜60時間加熱する。水300mlおよびエタノール300mlの混合物を冷却した反応混合物に滴下添加した後、固体を吸引により濾別し、毎回エタノール25mlで5回洗浄し、真空中で乾燥させる。固体を氷酢酸100mlに懸濁させ、ピリジン20mlおよび亜鉛末2.0gをその懸濁液に添加し、混合物を60℃で12時間撹拌する。冷却後、固体を吸引により濾別し、毎回エタノール25mlで3回洗浄し、真空中で乾燥させる。こうして得られた固体を、加熱抽出器中、3cmの厚さのセライト床上に置き、トルエンで抽出する(初期導入量は約200ml)。抽出剤に非常に良好な可溶性を有する金属錯体を、エタノール200mlを滴下添加することによって結晶化させる。こうして得られた懸濁液の固体を、吸引により濾別し、エタノール約50mlで1回洗浄し、乾燥させる。乾燥後、金属錯体の純度を、NMRおよび/またはHPLCを用いて求める。純度が99.5%未満である場合、加熱抽出ステップを反復する。99.5〜99.9%の純度に達したら、Pt錯体を昇華する。約320〜約380℃の温度範囲で、高真空下で昇華する(pは約10
-6mbar)。昇華は、好ましくは分別昇華の形態で実施される。
【0115】
変形体B
10mmolのビス(ベンゾニトリル)白金(II)二塩化物および10mmolのリガンドLのベンゾニトリル100ml混合物を、o−メタル化が完了するまで還流下で6〜48時間加熱する。エタノール100mlを、冷却した反応混合物に滴下添加した後、固体を吸引により濾別し、毎回エタノール25mlで5回洗浄し、真空中で乾燥させる。さらに、変形体Aに記載の通りにして手順を行う。
【0116】
以下の誘導体を、同様に調製する。
【化31-1】
【化31-2】
【化31-3】
【0117】
例84:OLEDの製造
本発明のOLEDおよび従来技術によるOLEDを、ここに記載する状況(層厚変化、使用材料)に適応する国際公開第2004/058911号の一般的方法によって製造する。
【0118】
様々なOLEDについての結果を、以下の例で示す(表1および2参照)。構造化ITO(インジウム錫酸化物)が150nmの厚さで塗布されたガラス板に、処理の改善のために、20nmのPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン)、H.C.Starck、Goslar、ドイツから購入し、水から回転塗布によって塗布する)を塗布する。これらの塗布されたガラス板は、OLEDが適用される基材を形成する。OLEDは、基本的に以下の層構造を有する。
【0119】
基材
正孔注入層1:HIL1、10nm
正孔注入層2:HIL2、10nm
正孔注入層3:HIL1、200nm
正孔注入層4:HIL2、10nm
正孔輸送層1:HTL1、20nm
電子阻止層1:EBL1、任意、表1を参照、10nm
発光層:表1を参照
正孔阻止層1:M1、10nm
電子輸送層:ETM1+LiQ、50%:50%、30nm
カソード:アルミニウム、100nm
真空処理OLEDについては、すべての材料を真空チャンバにおいて熱蒸着によって適用する。ここで発光層は、常に少なくとも1つのマトリックス材料(ホスト材料)と、同時蒸発によってある特定の体積比でマトリックス材料(単数または複数)と混合される発光ドーパント(エミッタ)から成る。ここで、M1:M2:PtL(55%:35%:10%)などの表現は、材料M1が55%の体積比で層に存在し、M2が35%の割合で層に存在し、エミッタPtLが10%の割合で層に存在することを意味する。同様に、電子輸送層も2つの材料の混合物から成るものであってよい。発光層の正確な構造を表1に示す。OLEDの製造に使用された材料を表3に示す。
【0120】
OLEDは、標準的な方法によって特徴づけられる。この目的では、エレクトロルミネセンススペクトル、電流効率(cd/Aで測定)および電圧(V単位の1000cd/m
2で測定)を電流/電圧/輝度特性直線(IUL特性直線)から求める。選択した実験では、寿命を求める。寿命は、光束密度が、一定の初期光束密度から一定の割合に低下するまでの時間と定義される。LT50という表現は、所与の寿命が、光束密度が初期光束密度の50%に低下するまで、すなわちたとえば4000cd/m
2から2000cd/m
2に低下するまでの時間であることを意味する。発光色に応じて、様々な初期輝度を選択した。寿命の値は、当業者に公知の換算式を用いて他の初期光束密度の数値に換算することができる。ここでは、1000cd/m
2の初期光束密度の寿命が通常値である。
【0121】
リン光OLEDにおけるエミッタ材料としての本発明の化合物の使用
本発明の化合物は、中でもOLEDの発光層中のリン光エミッタ材料として用いることができる。OLEDの場合、本発明の材料によって、効率的な青色、緑色または赤色発光OLEDが得られることが明らかである。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表2-1】
【表2-2】
【表3-1】
【表3-2】