特許第6054405号(P6054405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054405
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】培養期間を用いた磁性粒子の検出
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/552 20140101AFI20161219BHJP
【FI】
   G01N21/552
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-536360(P2014-536360)
(86)(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公表番号】特表2014-531029(P2014-531029A)
(43)【公表日】2014年11月20日
(86)【国際出願番号】IB2012055355
(87)【国際公開番号】WO2013057616
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】61/549,428
(32)【優先日】2011年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】フォッペン シッケ
(72)【発明者】
【氏名】ベールリンフ ベルナルドス ヨセフ マリア
(72)【発明者】
【氏名】フイネン クール ウィレミナ マリア
(72)【発明者】
【氏名】デ フラーフ ヘンドリク ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ケムペール ファン デ ウィール ダニーレ ワルテラ マリア
(72)【発明者】
【氏名】スミッツ ローランド アントニウス ヨハネス ヘラルドス
(72)【発明者】
【氏名】イミンク アルベルト ヘンドリク ヤン
(72)【発明者】
【氏名】デ ティエ フェムケ カリナ
(72)【発明者】
【氏名】メールテンス ウエンデラ
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−534321(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/142492(WO,A1)
【文献】 特表2009−544033(JP,A)
【文献】 特開平10−206427(JP,A)
【文献】 特表2011−508199(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/013683(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02017618(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0297780(US,A1)
【文献】 国際公開第2008/010110(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02044416(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0251136(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/74
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料室の検出面において磁性粒子を検出するステップを有する方法において、
−前記試料室に試料を投入するステップ、
−磁性粒子を有する試薬を用いて培養期間中に前記試料を培養するステップ、
−前記培養期間中に前記試料室内に前記磁性粒子を保有する一方、変調した磁場により前記磁性粒子を前記検出面から離しておくステップ、
−前記培養期間の0%の後、前記培養期間中に前記検出面において基準測定を行うステップ
をさらに有する方法。
【請求項2】
試料室の検出面において磁性粒子を検出するステップを有する方法において、
−前記試料室に試料を投入するステップ、
−磁性粒子を有する試薬を用いて培養期間中に前記試料を培養するステップ、
−前記培養期間中に前記試料室内に前記磁性粒子を保有する一方、磁場により前記磁性粒子を前記検出面から離しておくステップ
をさらに有し、
基準測定が、前記培養期間中に前記検出面において行われる、方法。
【請求項3】
試料室の検出面において磁性粒子を検出するためのセンサ装置において、
−前記試料室に磁場を発生させるための磁場発生器、
−培養期間中に前記試料室に磁性粒子を保有する一方、前記磁性粒子を前記検出面から離しておくように前記磁場を制御するための制御ユニット
を有し、
基準測定が、前記培養期間中に前記検出面において行われる、センサ装置。
【請求項4】
前記基準測定の少なくとも一部は、前記培養期間の0%の後に行われることを特徴とする請求項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記基準測定の少なくとも一部は、前記培養期間の70%の後に行われることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記培養期間は、0秒から00秒の間、継続することを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項7】
標的測定は、前記培養期間の後、前記検出面において行われることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記検出面において光検出を行うため、特に前記検出面において光ビームの漏れ全反射を検出するためのセンサユニットが設けられることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記磁性粒子は、前記培養期間の後、前記検出面に向けて動かされることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記磁性粒子は、前記培養期間中に前記検出面から少なくとも0μmの距離だけ離されていることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項11】
前記磁性粒子は、前記培養期間中に前記検出面から少なくとも100μmの距離だけ離されていることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項12】
前記磁場は前記培養期間中に調整されることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項13】
前記磁場及び/又は前記磁場の勾配は、前記培養期間中に繰り返し向きを変えることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項14】
前記試料室は、カートリッジ内に設けられることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項15】
前記試料室は、試料が投入される前に試薬を備えていることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料室の検出面において粒子を検出するための方法及びセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願公開第2010/044007号は、反応室の上下にある磁石を用いて、反応室にある磁性粒子を検出面に移動させる交番磁場を発生させるのに使用される手順を開示している。非定常状態が培養期間中の正確及び再現可能な測定をできなくするので、分析の始めに試料が試薬に触れなければならないとき、この及び同様の手法において問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、試薬を用いた試料の培養を必要とする分析中に、この試料にある磁性粒子の検出を改善するための手段を提供することである。
【0004】
この目的は、請求項1及び2に記載の方法並びに請求項3に記載のセンサ装置により達成される。好ましい実施例は、従属請求項に開示される。
【0005】
本発明による方法は、試料室の検出面における磁性粒子の検出を有する。
【0006】
この文脈において、"磁性粒子"という用語は、例えば超常磁性ビーズのような磁化可能粒子だけでなく永久磁性粒子も共に含んでいる。磁性粒子の大きさは一般に3nmから50μmにわたる。その上、磁性粒子は、実際にその1つに興味がある結合される標的成分を有する。"試料室"は一般に開キャビティ、閉キャビティ又は流体連結チャンネルにより他のキャビティに接続されるキャビティである。試料室の"検出面"は、適切な方法により磁性粒子又は他のエンティティの検出が行われる単なるこのチャンバの1つの専用の内面(の一部)である。この検出面は、磁性粒子が特異的に結合することができる結合部位をしばしば備えている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記方法は以下のステップを有する。
−試料を試料室に投入するステップ、試料は一般に流体、例えば血液又は唾液のような体液である。このような流体を試料室に投入するステップは、例えば何らかのポンプ機構を用いて能動的に又は毛細管力を介して受動的に行われる。
−磁性粒子を有する試薬を用いて、培養期間に上述した試料を培養するステップ、この培養期間は一般に試料を試料室に投入した後すぐに始まる。それは試料と試薬とが十分に混合する及び(該当する場合)反応するのに十分な長さ続くべきである。
−上述した培養期間中、磁性粒子を試料室に保有する一方、同時にこれら磁性粒子を磁場により検出面から離しておくステップ。
【0008】
当然のことながら、上述した"保有する"及び"離しておく"は通常、微小スケールにおいて必ずしも完全に達成されることはできない。故に、述べていることは、磁性粒子の90%よりも多く、好ましくは99%よりも多くが培養期間中に試料室に保有される及び/又は検出面から離しておくという意味で理解されるべきである。
【0009】
その上、磁性粒子を試料室内に保有することは通例、これら磁性粒子が検出面に隣接する領域を除く全試料室中に分散していることを含む。通例、この"禁止"領域は、検出面から垂直に延在している試料室容積の50%の大きさを持つ、好ましくは検出面から垂直に延在している試料室容積の10%の大きさ、又は最も好ましくは検出面に垂直な試料室全体の大きさの約2%の大きさを持つ。しかしながら、本発明はさらに、例えば試料室の培養範囲のような、培養期間中の磁性粒子の場所を一定の容積に制限する磁場の印加も有する。
【0010】
他の態様によれば、本発明は、試料室の検出面において磁性粒子を検出するためのセンサ装置に関する。このセンサ装置は以下の構成要素を有する。
−試料室に磁場を発生させるための磁場発生器、この磁場発生器は例えば、1つ以上の永久磁石及び/又は電磁石を有する。
−前記発生した磁場が磁性粒子を試料室に保有する一方、これら磁性粒子を前記検出面から離しておくように前記磁場発生器を制御するための制御ユニット、この制御は特に試料が磁性粒子を有する試薬を用いて培養される培養期間中に行われる。この制御ユニットは、専用の電子ハードウェア、関連するソフトウェアを備えるデジタルデータ処理ハードウェア、又はそれら両方を合わせたものにより実現されてもよい。
【0011】
前記方法及びセンサ装置は、同じ発明概念、すなわち培養期間中に検出面から離して磁性粒子を保有することからなる別々の具現化である。故に、これら具現化の1つに与えられる説明及び定義は他の具現化にも当てはまる。これら方法及びセンサ装置は、培養期間が終わるまで、検出面が磁性粒子により"汚されない"という利点を持ち、これは結果的に、測定結果の精度を向上させることができる。その上、磁性粒子を試料室内に保有することは、その場合では磁性粒子が失われてしまう制御されない流体運動により、これら磁性粒子が洗い流されないことを保証する。
【0012】
以下には、上述した方法及びセンサ装置に関する本発明の様々な好ましい実施例が開示されている。
【0013】
第1の好ましい実施例によれば、培養期間中に検出面において測定が行われる。この測定は、試料(及び磁性粒子を含んでいない考えられる試薬)は既に検出面と接触しているのに対し、磁性粒子は検出面と接触していないという状況に関連しているので、この測定は、以下において "基準測定"と呼ばれ、これはその間に磁性粒子が検出面と接触する若しくは結合する(後の)測定に対する基準として役立つ。本発明の特定の利点は、このような基準測定が行われる一方、検出面に磁性粒子が存在しないことが保証されることである。
【0014】
上述した基準測定は好ましくは、試料室内の状態がより安定であり、再現可能であるので、培養期間の始めよりも培養期間の終わりの近くで行われる。特に、少なくとも基準測定の一部は好ましくは、培養期間の約70%後、最も好ましくは培養期間の約90%後に行われる。
【0015】
培養期間の期間中の一般的な値は、約10秒から900秒まで、好ましくは10秒から200秒までに及ぶ。
【0016】
多くの場合、培養期間が終了した後に検出面において測定が行われることは既に示されている。このような測定は、実際にその1つに興味がある信号、例えば試料内のある標的物質の存在及び/又は量に関する信号を通例は生じさせるので、このような測定は以下において"標的測定"と呼ばれる。この標的測定の評価は好ましくは、上述した基準測定を利用する。
【0017】
前記基準測定及び/又は前記標的測定は一般に如何なる適した検出モダリティを用いて行われてもよい。好ましくは、検出面において光検出を行うため、特に検出面において光ビームの漏れ全反射(FTIR)から生じる光を検出するための光センサユニットが設けられる。FTIRは、表面に固有であり、故に本発明に関連して特に適切である検出技術である。
【0018】
培養期間中、磁性粒子は検出面から離されているのに対し、培養が達成された後、これら磁性粒子は通常そこには望まれていない。磁性粒子の検出面への移動を早めるために、これら磁性粒子は好ましくは、前記培養期間の後、検出面に向けて動かされる。この動きは特に、磁性粒子に磁力を及ぼさせる(非零勾配を持つ)適切な磁場を利用して行われる。
【0019】
培養期間中、磁性粒子は好ましくは、検出面から少なくとも約4μm、より好ましくは少なくとも約10μm、最も好ましくは少なくとも約100μmの距離だけ離れている。故に、これら磁性粒子は、一般的な表面に固有の検出技術(例えばFTIR)と干渉しないことが保証される。
【0020】
培養期間中に加えられる磁場は好ましくは調整されてもよい。特に、磁場及び/又はこの磁場の勾配は繰り返し向きを変えてもよい。この場合、磁性粒子の機械的な動きはそれに従って調整され、例えば改善される試料との混合を可能にする。
【0021】
検出面を備える試料室は、センサ装置の一体化した構成要素でもよい。しかしながら、好ましい実施例によれば、試料室は(センサ装置とは異なる)この試料室自身の構成要素であるカートリッジに設けられる。このようなカートリッジは通例、これを使用した後に捨てることができる使い捨ての装置である。
【0022】
試料室は好ましくは、それを使用する前、すなわち試料が投入され、培養が始まる前に試料を備えている。これら試薬は特に乾燥状態で与えられ、任意で何らかの保護層(例えばショ糖)により覆われている。このような調製された試料室において分析を開始するのに行われるべきことは、調査されるべき試料の投入である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明によるセンサ装置の概略的な側面図を示す。
図2図1のセンサ装置における検出信号の例示的な経過を示す。
図3】能動的又は受動的に夫々動かされた試料に対し得られる測定データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に開示される実施例から明らかであり、これら実施例を参照して説明される。
【0025】
図1は、本発明によるバイオセンサ装置100を概略的な側面図で示す。このセンサ装置100は、関心のある標的成分を備える試料が提供される使い捨てのカートリッジ110において光学測定を行うように設計される。このカートリッジ110は、例えばガラス又はポリスチレンのような透明なプラスチックから作られてよい。カートリッジ110は、検出されるべき標的成分(例えば薬剤、抗体、DNA、副甲状腺ホルモンPTH等)を備える試料流体が与えられる試料室112を有する。試料はさらに、磁性粒子1、例えば(典型的な直径は500nmである)超常磁性ビーズを有し、これら粒子1は通常、上述した標的成分にラベルとして結合されている(明瞭性のために、磁性粒子1のみを図示する)。
【0026】
カートリッジ110は、試料室112の(部分的な)境界をなす"検出面"111を備える透明な底部を持つ。複数の"検出点"は通例、前記検出面111に置かれる。これら検出点は、標的成分と特異的に結合することができる結合部位、例えば抗体を有する。
【0027】
センサ装置100は、"入力光ビーム"L1を出すための光源120、"出力光ビーム"L2を検出及び測定するための光検出器130、並びに前記光検出器の信号Sを評価するための評価ユニット140を有する。光源120により生成される入力光ビームL1は、全反射(TIR)の臨界角よりも大きな角度で前記検出面11に到達し、それ故に出力光ビームL2として全反射される。この出力光ビームL2は、カートリッジ110を離れ、光検出器、例えばカメラ130の光感受性ピクセルにより検出される。従って、光検出器130は検出面の画像を生成し、この画像はさらに評価ユニット140において処理される。
【0028】
センサ装置100はさらに磁場発生器を有し、この磁場発生器は例えば試料室112に制御可能な磁場Bを発生させるために、カートリッジ110の底部(図示せず)及び/又は頂部に置かれるコイル及びコアを備える電磁石150により実現される。この磁場を用いて、磁性粒子1は操作される、すなわち磁化される及び(勾配を持つ磁場が用いられる場合)特に移動される。故に、例えば関連する標的成分と検出面111との結合を早めるために、磁性粒子1を検出面111に引き付けることが可能である。
【0029】
開示されるセンサ装置100は、検出面111において磁性粒子1を検出するための光学手段を利用する。(例えば唾液、血液等のような試料流体)のバックグラウンドの影響を除去する又は少なくとも最小限にするために、前記検出技術は、表面に固有であるべきである。上述したように、これは、漏れ全反射の原理を使用することにより達成される。この原理は、入射光ビームL1が全反射されるとき、エバネセント波(evanescent wave)が試料室112内に(指数的関数的に減衰して)伝搬するという技術に基づいている。このエバネセント波が磁性粒子1のような、水とは異なる屈折率を持つ他の媒体と相互作用するとき、この入力光の一部は、試料流体に結合(すなわち"漏れ全反射")され、反射強度は減少する(一方、清浄界面である及び相互作用が無い場合、反射される強度は100%である)。この手順のさらなる詳細は、国際特許公開番号2008/155723号に見られ、これは参照することにより本文に含まれるものとする。
【0030】
磁性粒子1及び分析に必要な任意の他の試薬は好ましくは、カートリッジ110の試料室112において事前に乾燥状態で格納されている。開示されるセンサ装置110及びカートリッジ110を用いた分析は、試料流体を試料室112に投入することから始まる。乾燥した試薬を備える試料室112を湿らした後、これら試薬は溶解を始め、前記試薬が反応室から離れるように移動する制御不能な流体の流れ及び拡散が存在する。さらに、磁性ビーズ1は、検出面111に早く到達しすぎて、既に検出面に結合している、すなわち検出面の良好な基準測定が行われる前に到達している。
【0031】
上述した問題に対処するために、これら磁性ビーズ1を試料室112に保管する一方、これら磁性ビーズ1を検出面から離しておくことが提案される。このようにして、磁性ビーズの干渉を受けることなく前記検出面において適切な基準測定が行われることができる。磁性ビーズを試料室の適切な位置に保つことは、この試料室の近くにある磁石の磁力を使用することにより達成されることができる。故に、検出面111に隣接する厚さdの層は、磁性粒子1の無い状態が(微視的に)保たれる。ここでdは一般に約1μmから1000μmまで及んでいる。
【0032】
図2は、センサ信号Sが図1のセンサ装置100を用いて生成されるときのセンサ信号Sの例示的な経過を概略的に示す。時間tにおいて、試料室112に試料が投入される。検出面111を湿らせ、試料を乾燥した試薬と混合することは、一般には最初は不規則である検出信号Sの増大を引き起こす。第2の時間tにおいて、試薬を用いた試料の培養が完了する。時間間隔T=(t−t)は故に、必要とされる分析の"培養期間"に対応する。
【0033】
本発明が用いられるとき、検出面にあるビーズの低い(あるいは零の)バックグラウンド信号レベルは、全ての培養期間において観測される。この培養期間中、バルク培養が行われるが、磁性粒子が検出面にほんの少しだけ結合している又は全く結合していないことが起こる。(ビーズとの干渉を避けるために基準測定が培養期間の前又は培養期間の始めに行われる従来の状況とは対照的に)前記検出面における基準測定の時点は、全培養期間Tの間にとられる。
【0034】
特に、薬剤(ショ糖及びタンパク質)の溶解することで、湿らしてから数秒後にカートリッジに暗点(dark spot)が現れることがしばしば観測される。これら暗点は、基準測定が行われるときには邪魔である。
【0035】
培養期間の始めではなく、培養期間の終わり(暗点が消えた後)に好ましくは基準測定が行われる。これは、試料室の状態が培養期間Tの終わりの方がより安定しているために有利である。これは図2において時点tにより示され、この時点において、基準信号Sは検出面において測定される。t=85秒の基準の時点は、例えば培養がt=0で始まり、(その時点で光検出が完了しなければならない)t=95秒で終了するときに選択され、光検出のための基準の期間は4.8秒(毎秒25フィート)である。この遅い基準は、より多くの時間、オペレータが規定したワークフローを辿ることを可能にする。
【0036】
培養期間が終わった後、磁性ビーズ1は、検出面に移動することが可能になる、若しくは検出面に向けて能動的に移動する。後者は例えば、検出面111の下に適切に置かれた(図1には示さない)磁石を用いて達成される。時点tにおいて、前記検出面において1つ以上の"標的"測定が行われ、これはこの検出面に特異的に結合された磁性粒子1の量を示す。この測定値は次いで、基準値Sを(例えばオフセット、正規化因子等として)考慮することにより評価されることができる。
【0037】
培養期間中(及び期間後)の磁場は好ましくは、試料流体を磁性ビーズと混ぜ合わせて、培養を増進する(すなわち"能動的な培養"を行う)ために、パルス形式で加えられる。磁石をパルス形式で使用するとき、標的分子を備える磁性ビーズの培養は、能動的な混合により増進することができる。従って、試料室により多くのビーズを保有すること及びビーズと流体との混合により、最終的な信号の変化は大きくなり、カートリッジ毎のばらつきは小さくなる。このような"能動的な培養"は、磁性ビーズを利用する如何なる免疫測定にも使用されることができる。
【0038】
図3は、(文字"A"で示される)提案される"能動的な培養"及び(文字"P"で示される)従来の"受動的な培養"に対し得られる測定結果を示す。これらの結果において、"能動的な培養"は、反応容量に保有されるビーズの量が多い、基準測定の信号が低い及びビーズの保持による再現性により、信号及び標準偏差の両方に良い影響を及ぼす。
【0039】
要約すると、本発明は、培養段階中、すなわち試料室に試料を投入し、乾燥した試薬と接触するとき、試料室の近く(例えば上)に置かれる磁石を使用することを提案している。これは、磁性ビーズを、1)試料室から漏らさない、及び2)この試料室の検出面から離しておく。
【0040】
前記磁性ビーズを試料室から漏らさないことにより、信号の変化の明らかな増大が確認され、カートリッジ毎のばらつきは大幅に減る。前記磁性ビーズをこの試料室の検出面から離すことにより、磁性ビーズの干渉を受けることなく、検出面において適切な基準測定が行われることができる。
【0041】
本発明の重要な要素は、基準測定が行わることができるように、磁性ビーズを反応室の正しい位置に保つためにこの反応室の近くに磁石を用いることである。付加的な使用は、脈動される磁石を使用することにより、培養が能動的な混合(すなわち能動的な培養)により増進することである。
【0042】
本発明は、図面及び上述した説明において詳細に説明及び開示されている一方、このような説明及び開示は、説明的又は例示的であると考え、限定的であるとは考えるべきではない。つまり、本発明は開示した実施例に限定されない。開示した実施例以外の変形例は、図面、明細書及び特許請求の範囲を学ぶことにより、請求する本発明を実施する当業者により理解及びもたらされることができる。請求項において、"有する"という言葉は、他の要素又はステップを排除するものではなく、複数あることを述べないことが、それらが複数あることを排除するものでもない。ある方法が互いに異なる従属請求項に挙げられているという単なる事実は、これらの方法の組み合わせは有利に使用されることができないことを示しているのではない。請求項における如何なる参照符号もその範囲を限定するとは考えるべきではない。
図1
図2
図3