(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る非接触給電システムの全体構成図である。この図に示す非接触給電システムは、電磁誘導の相互作用を利用して電気自動車等の移動体40に無線で電力を供給するものであり、地上側の充電施設(充電スタンド)50に設置された給電器51と、移動体40に搭載された受電器41を備えている。なお、給電器51と受電器41を併せて非接触給電装置と称することがある。また、ここでは、移動体40が大型の電気自動車の場合について説明するが、中型・小型の自動車、油圧ショベル及びホイールローダ等の建設機械、フォークリフト等の産業機械等、充電可能な蓄電装置を備えるものであればその他のものでも良い。
【0014】
給電器51は、地面60に対して相対移動不能に固定されており、インバータ装置(制御装置)52を介して電源23に接続されている。インバータ装置52及び電源23は充電施設50に設置されている。電源23としては例えば交流電源が利用可能である。給電器51には、電気伝導性を有する線材(電線)を環状に巻いて形成した1次コイル11(
図2等参照)が収納されており、電源23からインバータ装置52を介して供給される交流電流によって当該1次コイルの周囲に磁界が発生される。なお、
図1のインバータ装置52及び電源23は地中に埋設されているが、これらは地上に設置しても良い。
【0015】
受電器41は、インバータ装置(制御装置)43を介して蓄電装置42に接続されている。インバータ装置43及び蓄電装置42は移動体40に搭載されている。蓄電装置42としては例えばリチウムイオン電池等の二次電池やキャパシタが利用可能である。受電器41には、電気伝導性を有する線材(電線)を環状に巻いて形成した2次コイル(図示せず)が備えられている。
【0016】
移動体40を適切な位置に移動させ、受電器41の2次コイルを給電器51の1次コイル11に対向配置させた状態で1次コイル11に流す電流を変化させると、1次コイル(給電器51)が発生する磁界が変化して2次コイルに電流(誘導電流)が流れ、蓄電装置42が充電される。蓄電装置42に蓄えられた電力は、インバータ装置43に接続されたモータ44等の電機に供給されて利用される。ここでは、移動体40の車輪を駆動するためのモータ44に蓄電装置42から電力を供給する場合について説明するが、蓄電装置42の電力供給対象は移動体40に設置された他の電機としても良い。
【0017】
なお、
図1に示した受電器41は、移動体40の底面に設置されているが、移動体40に設置するのであれば他の場所(例えば、移動体40の側面や上面)に設置しても良い。その場合には、充電施設50での給電器51の設置場所が受電器41の設置場所に合わせて変更されることは言うまでもない。なお、
図1中の給電器51は、その上面の高さが地表面以下になるように地面60に固定されている。
【0018】
図2は本発明の第1の実施の形態に係るモールドコイル21の断面図であり、
図3はその斜視図である。先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略することがある(後の図も同様とする)。
【0019】
図2,3に示したモールドコイル21は、耐候性に優れた樹脂12によって成形(モールド)されたものであり、給電器51に備えられている。モールドコイル21は、樹脂12内に封入された1次コイル11と、1次コイル11とともに樹脂12内に封入された第1伝導体25と、樹脂12内から外部に露出した第2伝導体14と、第2伝導体14における外側の端部に接続された放熱体15を備えている。
【0020】
1次コイル11は、中心軸31の周りに電線を略円形に巻き回して形成した扁平状のコイルである。1次コイル11の電線又は全体は、絶縁体によって被覆することが好ましい(例えば、後述する
図10,11参照)。なお、本実施の形態に係る1次コイル11は、円形状に形成されているが、矩形状、正方形状、又は楕円形状等に形成しても良い。また、1次コイル11に係る電線の材質としては、表皮効果による渦電流損を低減するため、リッツ線が好適である。
【0021】
モールドコイル21に用いる樹脂12としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンがある。なお、モールドコイルを他の材料で成形し、その表面に、フッ素系塗料、アクリル、アクリルウレタン等の耐候性に優れた塗料を塗布しても良い。もちろん、これらの塗料を耐候性に優れた樹脂に塗布しても良い。
【0022】
第1伝導体25は、熱及び電気の良伝導体であり、1次コイル11の中心軸31と同一の中心軸を有する円盤状に形成されている。
図2に示した例では排熱効果を促進する観点に基づいて、第1伝導体25は絶縁体で被覆された1次コイル11に接触させているが、両者は離しても良い。また、第1伝導体25としては、樹脂12よりも熱伝導率の大きい伝導体が利用されており、例えば、銅、アルミニウムなどの金属を利用することが好ましい。さらに、第1伝導体25は、誘導電流に起因した渦電流の発生を抑制する観点から非磁性体であることが好ましく、当該観点からはアルミニウムが特に好適となる。
【0023】
第2伝導体14は、熱及び電気の良伝導体であり、第1伝導体25と樹脂12の内部で接触しており、樹脂12の外部に露出している。本実施の形態の第2伝導体14は、線状の伝導体であり、その一端は樹脂12の内部で第1伝導体25の底面と結合しており、その他端は樹脂12の外部で放熱体15に接続されている。第2伝導体14としては、樹脂12よりも熱伝導率の大きい伝導体を利用するものとし、例えば、金属が好ましい。また、その利用の性質上、電導性よりも伝熱性が重要となる。さらに、第2伝導体14の他端が外部に露出する関係上、過酷な環境下での使用が想定されるので、ステンレス等の耐候性に優れた金属を用いることが好ましい。
【0024】
放熱体15は、第1伝導体25から第2伝導14を介して伝達してくる熱の放出を促進するためのものである。図に示した放熱体15は、直方体における左右の側面に所定の間隔で配列された複数のフィンを備えることで表面積を増加させ、これにより放熱効果の向上を図っている。放熱体15の材料は、熱伝導率が高く耐候性に優れたものが好ましく、例えば、耐食性に優れたアルミニウム合金で形成しても良い。放熱体15は、大気中に固定しても良いし、地中に埋設する等しても良く、後者の場合には前者の場合よりも放熱効果が向上する。
【0025】
なお、放熱体15は、図示した形状に限らず、放熱に適したものであれば他の形状でも良い。また、放熱体15の内部に冷却水流路を形成する等して、放熱体15を水冷式の冷却装置としても良い。さらに、本実施の形態では、第2伝導体14に放熱体15を取り付けた例について説明したが、第2伝導体14が外部に露出していればある程度の放熱機能は担保されるので、放熱体15は省略しても良い。
【0026】
上記のように構成される本実施の形態に係る給電器51によれば、1次コイル11への通電時間が長期化して顕著な発熱があった場合にも、1次コイル11で発生した熱を第1伝導体25から第2伝導体14を介してモールドコイル21の外部に放出することができる。これにより樹脂12の加熱が抑制されるので、連続した通電、すなわち受電器41に対して継続した給電を実施することができる。
【0027】
また、第1伝導体25は、モールドコイル21の剛性向上に寄与するとともに、1次コイル11の取り付け位置の基準となるので製造工程が容易になる。
【0028】
図4は本発明の第2の実施の形態に係るモールドコイル21Aの断面図である。この図に示すモールドコイル21Aは、その内部に磁性材料で形成されたコア16を有する点で先の実施の形態のものと異なる。
【0029】
コア(磁性体)16は、1次コイル11ともに樹脂12の内部に封入されており、本実施の形態では板状に形成されている。コア16は、1次コイル11における一方の端面側(受電器41から遠い方の端面側)に配置されている。なお、コア16の材質としては、渦電流を抑制するために電気抵抗の高いフェライトが好適である。
【0030】
このようにモールドコイル21Aを構成しても、第1の実施の形態と同様に受電器41に対して継続した給電を実施することができる。
【0031】
図5は本発明の第3の実施の形態に係るモールドコイル21Bの断面図である。この図に示すモールドコイル21Bは、円筒状の側面を有する第1伝導体25Bを備える点で先の実施の形態と異なる。第1伝導体25Bの材料は、第1の実施の形態と同様にアルミニウムが特に好ましい。
【0032】
このようにモールドコイル21Bを構成しても、第1の実施の形態と同様に受電器41に対して継続した給電を実施することができる。特に、本実施の形態のように、第1伝導体25Bとして、1次コイル11を外周から取り囲む側面を有するものを利用すると、第1伝導体25Bが高周波シールドとして機能し易くなるので、漏洩磁束を低減することができる。
【0033】
図6は本発明の第4の実施の形態に係るモールドコイル21Cの断面図である。この図に示すモールドコイル21Cは、第2伝導体14Cを備える点で先の実施の形態と異なる。
【0034】
第2伝導体14Cにおける第1伝導体25側の端部44は、当該第1伝導体25の底面において1次コイル11の中心軸31が通過する位置に接続されている。本実施の形態では、円盤状の第1伝導体25の中心は、1次コイル11の中心軸31が通過しているため、第2伝導体14Cの端部44は、1次コイル11と第1伝導体25の双方の中心に位置することになる。
【0035】
このようにモールドコイル21Cを構成しても、第1の実施の形態と同様に受電器41に対して継続した給電を実施することができる。特に、第2伝導体14Cの端部44の位置が1次コイル11と第1伝導体25の中心に位置しているので、1次コイル11を均等に冷却することができる。
【0036】
図7は本発明の第5の実施の形態に係るモールドコイル21Dの断面図である。この図に示すモールドコイル21Dは、放熱体15d1,15d2が取り付けられた複数の第2伝導体14d1,14d1を備える点で先の実施の形態と異なる。
【0037】
第2伝導体14d1には放熱体15d1が接続されており、第2伝導体14d2には放熱体15d2が接続されている。第2伝導体14d1,14d2及び放熱体15d1,d2に関する他の構成については、第1の実施の形態で説明したものと同じとする。このようにモールドコイル21Dを構成すると、第1の実施の形態よりも第1コイル11の排熱効果を向上させることができる。
【0038】
なお、1次コイル11を均等に冷却する観点からは、2つの第2伝導体14d1,14d2が第1伝導体25に接続する位置は、中心軸31を基準として互いに点対称の位置になるように設定することが好ましい。また、
図7に示した例では、第1伝導体25に2つの第2伝導体14d1,14d2を接続したが3つ以上としても良い。この場合、第2伝導体14の数が増えるほど排熱効果が向上することが言うまでもない。
【0039】
図8は本発明の第6の実施の形態に係るモールドコイル21Eの断面図である。この図に示すモールドコイル21Eは、1次コイル11の口出し線20が第2伝導体14Eに接触しながら電源23に接続されている点で先の実施の形態と異なる。
【0040】
口出し線20は絶縁体で被膜されている。口出し線20は、樹脂12の内部において、第1伝導体25に設けた孔34を介して第1伝導体25における一方の面側(受電器41側の面)から他方の面側に導かれ、当該他方の面に接続されている第2伝導体14Eに接触している。そして、口出し線20は、第2伝導体14Eとの接触を保持した状態でモールドコイル21(樹脂12)の内部から外部に露出されている。モールドコイル21の外部に導かれた後も口出し線20は第2伝導体14Eと接触したまま電源23に接続されている。
【0041】
このようにモールドコイル21Eを構成すると、口出し線20を介した排熱が促進されるので、第1の実施の形態よりも1次コイル11の排熱効果を向上させることができる。
【0042】
なお、口出し線20は、第2伝導体14に加えて又は代えて第1伝導体25に接触させても良い。また、図の例では、モールドコイル21の外部で口出し線20が電源23に到達するまで、口出し線20と第2伝導体14Eを接触させたが、電源23に達する途中で両者20,14Eの接触をやめても良い。すなわち第2伝導体14と電源23は必ずしも接続する必要はない。また、第1伝導体25に孔34を設けない場合には、口出し線20を第1伝導体25の表面に沿って這わせ、第2伝導体14Eまで導くなどしても良い。
【0043】
図9は本発明の第7の実施の形態に係るモールドコイル21Fの断面図である。この図に示すモールドコイル21Fは、1次コイル11の口出し線20が第2伝導体14F及び放熱体15Fに接触した後に電源23に接続されている点で先の実施の形態と異なる。
【0044】
口出し線20は、第6の実施の形態と同様に第2伝導体14Fに接触した状態のままでモールドコイル21(樹脂12)の内部から外部に導かれている。第2伝導体14Fはモールドコイル21の外部で放熱体15Fに接続されており、放熱体15Fの内部には口出し線20を通すための貫通孔35が設けられている。口出し線20は、モールドコイル21の外部に導かれた後、第2伝導体14Fと接触したまま貫通孔35の内部を通過して、電源23に接続されている。
【0045】
このようにモールドコイル21Fを構成しても、口出し線20を介した排熱が促進されるので、第1の実施の形態よりも1次コイル11の排熱効果を向上させることができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、放熱体15Fに設けた貫通孔35に口出し線20を導入する場合について説明したが、貫通孔35を設けることなく口出し線20を放熱体15Fと接触するように配設しても良い。
【0047】
ところで、上記の各実施の形態に係る1次コイル11について
図10,11を用いて説明する。
図10は、本発明の実施の形態に係る1次コイル11の一例の断面図であり、
図3における矢印Xの方向から1次コイル11の断面を見たものに相当する。この図に示す1次コイル11は、略直方体の断面を有するコイル導体17を中心軸31の周りに1回巻いたものであり、コイル導体17の外周には絶縁体(コイル絶縁)18が被覆されている。これにより1次コイル11と、第1伝導体25又はコア16を絶縁することができる。
【0048】
図11は、本発明の実施の形態に係る1次コイル11の他の例の断面図であり、
図10と同じ方向から1次コイル11を見たものである。この図に示す1次コイルは、略円形の断面を有するコイル導体(導線)17Aを中心軸31の周りに10回巻いたものであり、コイル導体17Aの外周には絶縁体(コイル絶縁)18Aが被覆されている。コイル導体17Aは絶縁体18Aの外周で樹脂19によってモールドされている。このように1次コイル11を構成しても
図10の場合と同様に絶縁できる。
【0049】
なお、ここでは1本の導線17Aを10回巻いて1次コイル11を形成する場合について説明したが、1本の導線を5回巻いたものを2つ重ね合わせて1次コイル11を形成する等しても良く、導線の本数及び巻数に特に限定は無い。
【0050】
ところで、上記の各実施の形態では、給電器51のモールドコイル21(1次コイル)を前提に説明したが、受電器41側の2次コイルについても上記各実施の形態のように構成しても良く、その場合には上記と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0051】
また、本発明は、上記で説明した各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。