特許第6054429号(P6054429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054429
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】光量調整装置及び光学装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 11/00 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   G03B11/00
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-559563(P2014-559563)
(86)(22)【出願日】2014年1月27日
(86)【国際出願番号】JP2014000398
(87)【国際公開番号】WO2014119277
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】特願2013-16121(P2013-16121)
(32)【優先日】2013年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 修
(72)【発明者】
【氏名】宮下 恭輔
【審査官】 井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−126416(JP,A)
【文献】 特開2010−049135(JP,A)
【文献】 特開2002−176573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路を形成する開口部を有する光路形成部材と、
前記開口部を通過する光の光量を調整する、複数の光量調整部材と、
前記光量調整部材を前記開口部上に直線的に進退させる、複数の移動手段と、を備え、
前記複数の光量調整部材は、前記光路形成部材の一方面上に配置された前記複数の移動手段により、前記開口部に対して前記光路の光軸方向の異なる位置に対して進退され、
前記複数の移動手段は、それぞれ、移動機構を備え、
各々の前記移動機構は、他の一の前記移動機構と、前記光路形成部材の一方面と平行な面方向において、少なくとも一部が相互に重なるように配置され
前記移動機構は、前記光量調整部材を保持した保持部材が有する係合部と係合し、
前記係合部は、前記光量調整部材の進退方向で見て前記保持部材の側部に配置され、
前記複数の光量調整部材は、第一の光量調整部材と、該第一の光量調整部材と光軸方向に隣り合う第二の光量調整部材と、を少なくとも含み、
前記第一の光量調整部材を保持した前記保持部材の前記係合部と、前記第二の光量調整部材を保持した前記保持部材の前記係合部とが、前記光路形成部材の一方面と平行な同一面上に配置されている、
ことを特徴とする光量調整装置。
【請求項2】
前記移動機構は、モータの出力を直線運動に変換して前記光量調整部材を直線的に移動させる変換部を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の光量調整装置。
【請求項3】
各々の前記光量調整部材の移動を案内する、複数の案内部材を備え
前記案内部材は、前記保持部材が有する他の係合部と係合し、
前記他の係合部は、前記光量調整部材の進退方向で見て前記保持部材の側部に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の光量調整装置。
【請求項4】
光路を形成する開口部を有する光路形成部材と、
前記開口部を通過する光の光量を調整する、複数の光量調整部材と、
前記光量調整部材を前記開口部上に直線的に進退させる、複数の移動手段と、を備え、
前記複数の光量調整部材は、前記光路形成部材の一方面上に配置された前記複数の移動手段により、前記開口部に対して前記光路の光軸方向の異なる位置に対して進退され、
前記複数の移動手段は、それぞれ、移動機構を備え、
各々の前記移動機構は、他の一の前記移動機構と、前記光路形成部材の一方面と平行な面方向において、少なくとも一部が相互に重なるように配置され、
複数の駆動ユニットを備え、
前記駆動ユニットは、
少なくとも2つの前記移動手段と、
前記少なくとも2つの前記移動手段を支持する共通の支持体と、を備える、
ことを特徴とする光量調整装置。
【請求項5】
前記複数の駆動ユニットは、
前記開口部を挟んで対向配置される一対の前記駆動ユニットを少なくとも含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の光量調整装置。
【請求項6】
前記光量調整部材を挟んで対向配置される複数の駆動ユニットを備え、
1つの前記駆動ユニットは、
少なくとも1つの前記移動手段と、
前記少なくとも1つの前記移動手段を支持する支持体と、を備え、
前記移動手段は、モータの出力を直線運動に変換して前記光量調整部材を直線的に移動させる変換部を含み、
前記変換部は、前記複数の駆動ユニット間で少なくとも一部が重なり合うように対向配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の光量調整装置。
【請求項7】
前記複数の移動手段は、隣接する前記移動手段の少なくとも一部が互いに光軸方向に重なり合うように配置される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の光量調整装置。
【請求項8】
前記複数の移動手段は、それぞれ、1つの前記光量調整部材を前記開口部上に直線的に進退させる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の光量調整装置。
【請求項9】
前記光路形成部材は、前記光量調整部材が前記開口部外に退避するための退避スペースを形成することを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の光量調整装置。
【請求項10】
前記複数の移動手段は、少なくとも1つの前記光量調整部材を前記開口部上に直線的に進退させることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の光量調整装置。
【請求項11】
複数の前記光量調整部材はそれぞれ透過率が異なり、反射光色が実質的に同等であることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の光量調整装置。
【請求項12】
請求項1又は請求項4に記載の光量調整装置を備えたことを特徴とする光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光量の調整技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラや交換レンズ等の光学装置には、光量を調整するためにNDフィルタ、IRカットフィルタ或いは偏向フィルタに代表される光量調整部材が設けられる場合がある。特許文献1には、複数枚のフィルタを一体的に保持するフィルタホルダを直線的に移動させることで、光量の調整に用いるフィルタを切り替えられる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−176573
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、複数のフィルタをフィルタホルダに一方向に並べて搭載し、単一の移動機構によって全フィルタを一括した移動させる構成である。このため、フィルタの数を多くしようとすると、その数に比例してフィルタホルダが長くなり、装置の小型化が困難である。
【0005】
本発明の目的は、小型化が可能な光量調整装置及び光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
光路を形成する開口部を有する光路形成部材と、
前記開口部を通過する光の光量を調整する、複数の光量調整部材と、
前記光量調整部材を前記開口部上に直線的に進退させる、複数の移動手段と、を備え、
前記複数の光量調整部材は、前記光路形成部材の一方面上に配置された前記複数の移動手段により、前記開口部に対して前記光路の光軸方向の異なる位置に対して進退され、
前記複数の移動手段は、それぞれ、移動機構を備え、
各々の前記移動機構は、他の一の前記移動機構と、前記光路形成部材の一方面と平行な面方向において、少なくとも一部が相互に重なるように配置され
前記移動機構は、前記光量調整部材を保持した保持部材が有する係合部と係合し、
前記係合部は、前記光量調整部材の進退方向で見て前記保持部材の側部に配置され、
前記複数の光量調整部材は、第一の光量調整部材と、該第一の光量調整部材と光軸方向に隣り合う第二の光量調整部材と、を少なくとも含み、
前記第一の光量調整部材を保持した前記保持部材の前記係合部と、前記第二の光量調整部材を保持した前記保持部材の前記係合部とが、前記光路形成部材の一方面と平行な同一面上に配置されている、
ことを特徴とする光量調整装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型化が可能な光量調整装置及び光学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る光量調整装置の分解斜視図。
図2図1の光量調整装置の視線を逆にした分解斜視図。
図3A】一部の部品を取り外した状態での図1の光量調整装置の組立図。
図3B図1の光量調整装置の断面図。
図4A図1の光量調整装置の一部の部品の斜視図。
図4B図1の光量調整装置の一部の部品の斜視図。
図5図1の光量調整装置の一部の部品の分解斜視図。
図6図1の光量調整装置の一部の部品の分解斜視図。
図7図1の光量調整装置の分解斜視図。
図8図1の光量調整装置を備えた光学装置の模式図。
図9A】第3実施形態に係る光量調整装置の斜視図。
図9B】第4実施形態に係る光量調整装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1乃至図3Bを参照して本発明の一実施形態に係る光量調整装置Aの構成について概説する。図1及び図2は視線を互いに逆にした光量調整装置Aの分解斜視図である。光量調整装置Aは、ベース板1、カバー2、複数のフィルタユニット3A〜3D(総称するときはフィルタユニット3という。)、駆動ユニットDU1及びDU2、及び、案内ユニット7を備える。図3Aはカバー2を外した状態での光量調整装置Aの組立図を示しており、図3Bは光量調整装置Aの断面図である。
【0010】
ベース板1は平板状をなし、光路を形成する開口部1aを有する。開口部1aの下方には、フィルタユニット3A〜3Dが開口部1a外に退避するための退避スペースを形成する退避スペース形成部1bが設けられている。開口部1aの中心線方向(図3Bの矢印d1)を光軸方向と呼ぶ場合がある。ベース板1には、駆動ユニットDU1及びDU2、及び、案内ユニット7が固定される。
【0011】
カバー2は、背部が開放した箱状をなしており、その正面には光路を形成する開口部2aを有する。開口部2aは光軸方向で開口部1aと重なる位置に形成されている。開口部2aの下方には、フィルタユニット3A〜3Dが開口部2a外に退避するための退避スペースを形成する退避スペース形成部2bが設けられている。
【0012】
カバー2の背面にはベース板1が装着されて、全体として箱状の中空体を形成する。開口部2aは開口部1aより小さく設定されており、本実施形態では入射光が開口部2a→開口部1aの順に通過する場合を想定している。こうして、ベース板1及びカバー2は、それぞれ、光路形成部材を構成している。また、退避スペース形成部1bと退避スペース形成部2bとの間の空間はフィルタユニット3A〜3Dの退避スペースとなる。
【0013】
フィルタユニット3A〜3Dは、それぞれ、板状の光量調整部材31A〜31D(総称するときは光量調整部材31という)を有する。光量調整部材31A〜31Dは、例えば、NDフィルタ、IRカットフィルタ、偏向フィルタ等の光学部材である。光量調整部材31A〜31Dは互いに異なる種類の光学部材であってもよいし、同じ種類の光学部材であってもよい。また、同じ種類の光学部材と、異なる種類の光学部材とが混在していてもよい。同じ種類の光学部材を用いる場合の例として、例えば、減光フィルタを用いた場合には、開口部1a及び2a上に進出させるフィルタユニット3の数によって減光量を異ならせることが可能である。
【0014】
フィルタユニット3A〜3Dは光軸方向に配列されている。より具体的には、光量調整部材31A〜31Dの法線方向が光軸方向と平行となるようにこれらが配列されており、4層の積層構造となっている。
【0015】
フィルタユニット3A〜3Dは、一対の駆動ユニットDU1及びDU2(総称するときは駆動ユニットDUという)によって移動される。本実施形態の場合、駆動ユニットDU1及びDU2は、開口部1a、2aを挟んで対向配置されている。本実施形態では駆動ユニットDUを2つとしたが1つでもよいし3以上でもよく、フィルタユニット3の数に合わせて適宜選択される。
【0016】
フィルタユニット3は駆動ユニットDUによって、開口部1a及び2a上の位置と、退避スペース内の位置とで、光軸方向と直交する方向に直線的に移動される。フィルタユニット3が開口部1a及び2a上の位置に移動すると、その光量調整部材31を入射光が通過することとなり、光量を調整することができる。案内ユニット7はフィルタユニット3の移動を案内する。
【0017】
本実施形態では、以下に述べるように、フィルタユニット3A〜3Dを独立して個別に移動することができる。この結果、光量調整部材31A〜31Dを開口部1a、2a上に個別に、直線的に進退させることができる。図4A及び図4B並びに図5を参照して駆動ユニットDU1及びDU2並びに案内ユニット7について説明する。
【0018】
図4Aは駆動ユニットDU1及びDU2と案内ユニット7との斜視図である。図4Bは駆動ユニットDU1及びDU2の斜視図であり、図4Aとは視線を異ならせている。図5は駆動ユニットDU1及びDU2並びに案内ユニット7の分解斜視図である。
【0019】
駆動ユニットDU1は、移動手段の一部である移動機構4A及び4C、支持体5、及び、案内部材の一つである案内軸6A及び6Cを備える。駆動ユニットDU2は、移動機構4B及び4D、支持体5、及び、案内軸6B及び6Dを備える。移動機構4A〜4D(総称するときは移動機構4という)は、それぞれ、フィルタユニット3A〜3Dを移動する機構である。案内軸6A〜6D(総称するときは案内軸6という)は、それぞれ、フィルタユニット3A〜3Dの回り止めを目的として設けられており、その移動を案内する機能も有している。
【0020】
移動機構4Aは、モータ41Aと変換部42Aとを備える。モータ41Aは本実施形態の場合、ステッピングモータであるが他の種類のモータでもよい。変換部42Aはモータ41Aの出力を直線運動に変換してフィルタユニット3Aを変換部42Aの駆動軸の伸びる方向に沿って直線的に移動させる機構であり、本実施形態の場合は、リードスクリュである。案内軸6Aが、開口部1a及び2aの縁部に沿って、少なくとも開口部の一端から他端を跨いでいる場合、変換部42Aの駆動軸は、開口部の一端から他端を跨ぐ長さがあれば、開口部1a及び2aを跨いで設けられていなくともフィルタユニット3Aを安定的に移動させることができる。
【0021】
移動機構4B〜4Dも移動機構4Aと同様の構成である。つまり、移動機構4Bはモータ41Bと変換部42Bとを備え、移動機構4Cはモータ41Cと変換部42Cとを備える。そして、移動機構4Dはモータ41Dと変換部42Dとを備える。モータ41A〜41Dを総称するときはモータ41といい、変換部42A〜42Dを総称するときは変換部42という。
【0022】
なお、本実施形態では、移動機構4をモータ41と変換部42とから構成したが、他の構成を採用してもよいことはいうまでもない。例えば、圧電素子と、圧電素子に接続された駆動棒とから構成することも可能である。
【0023】
支持体5は複数の移動機構4に共通の支持体であり、本実施形態の場合、2つの移動機構4を支持する。無論、3つ以上の移動機構を支持する構成としてもよい。
【0024】
支持体5は、互いに離間して対向して配置される一対のモータ支持部51、52と、これらモータ支持部51、52間を接続すると共にベース板1に固定される取付部53と、を備える。支持体5はベース板1に一体的に形成されてもよい。
【0025】
モータ支持部51、52にはモータ41が固定される。変換部42はその一端がモータ41に接続され、他端がモータ支持部51又はモータ支持部52に回転自在に軸支されて、モータ支持部51、52間に配設される。案内軸6は変換部42と平行に、モータ支持部51、52間に架設される。
【0026】
本実施形態の場合、駆動ユニットDU1においては移動機構4A及び4Cが支持体5に支持されており、モータ41Aはモータ支持部51に、モータ41Cはモータ支持部52に支持されている。つまり、移動機構4Aと移動機構4Cとは互いに平行に上下を反転させて取り付けられている。同様に、駆動ユニットDU2においては移動機構4B及び4Dが支持体5に支持されており、モータ41Bはモータ支持部52に、モータ41Dはモータ支持部51に支持されている。つまり、移動機構4Bと移動機構4Dとは互いに平行に上下を反転させて取り付けられている。
【0027】
このように2組の移動機構4を互いに平行に共通の支持体5で支持することで、互いの変換部42や、各案内軸6を高精度に位置だしすることが容易になる。また、上下を反転して各モータ41を配置することで、モータ41を互いに隣接して並設する場合よりも、デッドスペースを有効活用して小型化を図れる。また、各フィルタユニット3を光軸方向で狭いスペースで互いに干渉することなく移動させることができる。
【0028】
更に、本実施形態の場合、移動機構4A及び4Cの一部(変換部42)が、光軸方向に相互に重なり合うように配置されるので、各駆動ユニットDU1及びDU2の小型化が図れる。なお、移動機構4B及び4Dについても同様である。また、各駆動ユニットDU1及びDU2の小型化によって、光量調整装置Aの小型化にも大きく寄与する。
【0029】
なお、本実施形態では、各駆動ユニットDU1及びDU2において2つの変換部42を光軸方向に重なり合うように並べた構造を例示したが、2つの変換部42は、光軸方向に重なることなく配置してもよい。これは、詳細は後述するが、各駆動ユニットDU1及びDU2の少なくとも一部が相互に重なり合うように配置することで、光量調整装置Aの小型化を十分に図ることができるからである。
【0030】
案内ユニット7は、一対の支持部72、73と、これらの間に架設された案内部材71A〜71D(総称するときは案内部材71という)と、を備える。支持部72、73はベース板1に固定される。支持部72、73はベース板1に一体的に形成されてもよい。案内部材71は、本実施形態の場合、円柱状の軸であり、案内軸6よりも大径としている。
案内部材71Aはフィルタユニット3Aの移動、つまり、光量調整部材3Aの移動を案
内し、案内部材71Bはフィルタユニット3Bの移動を案内する。同様に、案内部材71
Cはフィルタユニット3Cの移動を案内し、案内部材71Dはフィルタユニット3Dの移
動を案内する。
【0031】
図3Bに示すように、組立状態においては、案内軸6Bと案内部材71Aとは互いに平行に光軸方向(d1)と直交する同一平面上に位置する。変換部42Aは、この同一平面から光軸方向に少しずれた位置に位置する。移動機構4B〜4Dと案内部材71B〜71Dとの関係も同様である。なお、案内部材71を駆動ユニットDU1及びDU2側に設ける構成も採用可能であり、その場合は、モータ支持部51、52間に架設する構成とすることができる。
【0032】
次に、移動機構4による移動に関連する、フィルタユニット3側の構成について図6を参照して説明する。図6はフィルタユニット3A〜3Dの分解斜視図、図7は光量調整装置Aの分解斜視図であり、その各構成のビス止めの態様を示している。
【0033】
本実施形態の場合、図7に示すようにベース板1に対して、カバー2、複数のフィルタユニット3A〜3D、駆動ユニットDU1及びDU2、案内ユニット7がビスを介してそれぞれ装着される。ここで、フィルタユニット3は3部材構成とされているが構成部材数に制約はない。フィルタユニット3A〜3Dは、光透過率がそれぞれ異なる複数の光学フィルタ素子である光量調整部材31A〜31Dを保持部材32A〜32Dと押え板33A〜33Dとで挟み込んで保持する構成となっている。
【0034】
光量調整装置Aは、光透過率がそれぞれ異なる複数の光学フィルタ素子を備える。光路に挿入される光学フィルタ素子を切り替えることにより、撮像素子へ入射する光量を調整することができる。
【0035】
光学フィルタ素子とは、光の透過を調整する部材である。複数の光学フィルタ素子は、単一の基板に保持され、1つの光学フィルタとして濃度が異なる領域が構成されていてもよい。本実施形態において光量調整装置Aは、複数の光学フィルタを有している。複数の光学フィルタ素子のそれぞれが別々の光学フィルタに配置されていてもよい。また、光量調整装置は1つの光学フィルタを有していてもよく、複数の光学フィルタ素子が1つの光学フィルタに配置されていてもよい。本実施形態においては、複数の光学フィルタ素子である光量調整部材31A〜31Dのそれぞれが、別々の保持部材32A〜32Dに保持されている。
【0036】
本実施形態において光量調整装置Aは4つの光量調整部材31A〜31Dを有するが、光量調整装置Aが有する光学フィルタ素子の数はこれに限られず、2つ以上の光学フィルタ素子を有していればよい。光量調整部材31A〜31Dは互いに異なる光学濃度を持つ。すなわち、光量調整部材31A〜31Dの光透過率はそれぞれ異なる。このような光学フィルタ素子は、例えばNDフィルタのような減光フィルタでありうる。例えば、光量調整装置Aは光透過率がそれぞれ異なる3つ以上のNDフィルタ素子を有していてもよく、複数の光学フィルタ素子として、3つのNDフィルタと、1つのARフィルタとを備える。
【0037】
具体的には光量調整装置Aは、光学濃度が略0であるARフィルタ(ND_00と呼ぶ)と、光学濃度がそれぞれ0.5、1.0、1.5であるNDフィルタ(それぞれND_05、ND_10、ND_15と呼ぶ)とを有する。ND_00、ND_05、ND_10、ND_15は、光学フィルタの切り替え時に撮像結果からゴーストの変化が目立たないようにするために、異なる製造バッチで反射光色が緑となるように透明基板上に屈折率の異なる無機薄膜を複数積層することで作成した。ここで光学濃度(OD)は、フィルタの透過率をTとしたときにOD=Log(1/T)で表され、透過率が大きいほど光学濃度は小さくなる。このとき、光量調整部材31A〜31Dは、光軸方向に平行な方向に沿って被写体側に向かって光学濃度が高くなる順に並べられて、光軸に直交する方向から直線移動して光軸上に出入りする。光軸上には、被写体からの入射光を撮影する撮像素子から順に、光学フィルタの出入りするスペースと、入射光を撮像素子に結像するためのレンズと、が被写体側に向かって並んでいる。撮影時には、光量調整部材31A〜31Dは、光学フィルタの出入りするスペースに透過率が低くなる順、または、高くなる順に一つずつ駆動軸に沿って出入りし、撮像素子に入射する光量を簡単な構成で、安定して切り替えることができる。変換部42A〜42Dの駆動軸に沿って光学フィルタの姿勢を安定させて出入りさせることで、複数の光学フィルタの反射面の向きを精度よく揃えることができる。そして、光量調整部材31A〜31Dの撮像素子側の面の反射光色が実質的に同等である。すなわち、全ての光学フィルタの撮像素子側の面の反射光色が実質的に同等であるため、光学フィルタが切り替わってもゴーストの色味が変化せず、撮影者に違和感を与えることがなく優れた撮像結果を得ることができる。
【0038】
「反射光色が実質的に同等」とは、例えば、複数の光学フィルタ間の反射光色が後述する、マーキングペンの色差の範囲内で同等であることが好ましく、各種の識別条件で同系統の色と識別され、均等とされる領域の範囲内であって、マーキングペンの色差の範囲内で同等であることが好ましく、さらに、経時比較した場合にほぼ同一であると認められる範囲内で同等とすることがより好ましく、さらに、各種の誤差要素を考え許容誤差範囲内と識別される範囲内で同等であることがより好ましく、さらに、色の違いを測定において識別できない識別不能範囲内で同等であることがより好ましい。
【0039】
光量調整部材31A〜31Dは、複数枚の光量調整部材間での反射防止の観点からそれぞれ1枚を切り替えて撮像素子への光量調節を行うことが好ましい。複数の光学フィルタ素子のうち、互いに透過率が近い2つの光学フィルタ素子における反射光色が実質的に同等であることが好ましい。ここで、「互いに近い透過率を有する光学フィルタ素子」とは、複数の光学フィルタ素子を透過率の大きさの順に並べた場合に互いに隣り合う2つ(1組)の光学フィルタ素子のことを指す。本実施形態においては、光学フィルタ素子である光量調整部材31A〜31Dの透過率について、光量調整部材31A(ND_00)>光量調整部材31B(ND_05)>光量調整部材31C(ND_10)>光量調整部材31D(ND_15)の関係が存在するものとする。この場合、「互いに近い透過率を有する2つの光学フィルタ素子」は、光量調整部材31Aと光量調整部材31Bとの組、光学フィルタ素子光量調整部材31Bと光量調整部材31Cとの組、及び光量調整部材31Cと光量調整部材31Dとの組のことを示す。これらの光学フィルタ素子の組では、反射光色が実質的に同等であることが好ましい。この場合、互いに近い透過率を有する2つの光学フィルタ素子の間で切り替えを行った際の、撮影者に与える違和感を低減することができる。互いに隣り合う2つ(1組)の光学フィルタ素子の反射光色がマーキングペンの色差の範囲内でほぼ同一であると認められる範囲内で同等であれば、光量調整部材31Aと光量調整部材31Dは、有彩色の色名レベルの色の管理の範囲内で同等であればよい。つまり、光量調整部材31Aの反射光色が青緑、光量調整部材31Bの反射光色が青みがかった緑、光量調整部材31Cの反射光色が黄色みがかかった緑、光量調整部材31Dの反射光色が緑であってもよい。このとき、上記の光学フィルタ素子の組のうち全てについて光学フィルタ素子の反射光色が経時比較した場合にほぼ同一であると認められる範囲内で同等であることは、より好ましい。
【0040】
NDフィルタの透過率は、無機薄膜の不飽和物(TixOy)を用いることによって制御している。そのため、最初に透過率変化の少ない光量調整部材31Aから光量調整装置Aに組み込み、光量調整部材31B、光量調整部材31C、光量調整部材31Dと順に組み込み、環境変化で濃度変化が起き易い光量調整部材31Dを最後に組み込むとメンテナンス性をよくすることができる。
【0041】
保持部材32A〜32Dは、それぞれ、係合部34〜36を備える。係合部34及び35は保持部材32A〜32Dの一側部に、係合部36は保持部材32A〜32Dの他側部に、それぞれ位置している。
【0042】
係合部34は変換部42と係合する部分である。上記の通り本実施形態では変換部42はリードスクリュであり、係合部34はリードスクリュと螺合してその回転によって軸方向に移動するナットを構成している。係合部35は案内軸6が挿通する溝である。係合部36は案内部材71が挿通する溝である。
【0043】
係る構成からなる光量調整装置Aでは、移動機構4のモータ41を駆動して変換部42を回転させると、対応するフィルタユニット3に、係合部34を介して移動力が付勢される。つまり、フィルタユニット3は、係合部36と案内軸6との係合によって回り止めがされているため、変換部42を回転すると、変換部42の軸方向に係合部34を移動させる力が作用し、フィルタユニット3を直線的に移動させることができる。その際、係合部35が案内部材71に案内されてフィルタユニット3はスムーズに移動する。
【0044】
モータ41の回転方向によってフィルタユニット3の移動方向を切り替えることができる。フィルタユニット3の位置をより高精度で制御するために、その位置を検出するセンサを設けてもよい。センサは、変換部42上での係合部34の移動端への移動を検出するように設けることができる。本実施形態のように、モータ41としてステッピングモータを用いた場合、係合部34が移動端へ移動したときに、脱調するまでモータ41を駆動することで、センサレスで移動端への位置確認を行うことも可能である。
【0045】
フィルタユニット3A〜3Dには、それぞれ、移動機構4A〜4Dが割り当てられているので、フィルタユニット3A〜3Dを独立して個別に移動することができる。フィルタユニット3は、開口部1a、2a上の位置と、退避スペース形成部1b、2b間の退避スペースと、の間で直線的に移動され、開口部1a、2a上に位置させる光量調整部材31を選択的に切り替えることができる。開口部1a、2a上に位置させる光量調整部材31は複数であってもよい。
【0046】
本実施形態では、移動機構4を複数設けることで、光量調整部材31を1つずつ独立して移動する構成としたため、退避スペースは開口部1a、2aと略同じスペースで足りる。つまり、退避スペースは、光軸方向と直交する平面上については、1つのフィルタユニット3が退避できれば済むため、退避スペースを最小にすることができる。このように移動機構4を複数設けたことで、装置の小型化が図れる。
【0047】
本実施形態では、1つの移動機構4で、1つのフィルタユニット3(つまり1つの光量調整部材31)を移動する構成としたが、1つの移動機構4で、複数の光量調整部材313を移動する構成としてもよい。また、複数の光量調整部材313を移動する1つの移動機構4を2つとし、1つのフィルタユニット3に2つの光量調整部材31を併設してフィルタユニット3を2つとするようにしてもよい。いずれにしても、1つのフィルユニット3を移動すると2つの光量調整部材31が同時に移動する構成となり、効率的な光量調整が可能となる。
【0048】
この場合は、1つの移動機構4で移動する光量調整部材31の数に比例して退避スペースを大きくする必要がある。しかし、全光量調整部材31を同時(4つ全部)に移動させる場合と比較すると半分で済み、やはり小型化が図れる。
【0049】
次に、本実施形態では、駆動ユニットDU1及びDU2の少なくとも一部をフィルタユニット3A、3B、3C、3Dを挟んで対向して配置したことで、光軸方向の装置の厚みをより薄くできる。具体的には、図4に示すように、各駆動ユニットDU1及びDU2間における変換部42Aと42Bとが光軸方向と直交する方向において相互に重なり合うように配置されている。また、各駆動ユニットDU1及びDU2間における変換部42Cと42Dとが光軸方向と直交する方向において相互に重なり合うように配置されている。これにより、各フィルタユニット3A〜3Dの光軸方向における間隔を小さくできることから、光量調整装置Aの光軸方向における更なる小型化が図れる。
【0050】
また、各フィルタユニット3A〜3Dには、各変換部42A〜42Dに対して接続する接続部として係合部34が設けられている。そして、これら各係合部34は、隣り合う各フィルタユニット3A〜3D同士の干渉を防ぐために、ユニット端部をそれぞれ迂回して、各変換部42A〜42Dに対して光軸方向から接続されている。これにより、複数のフィルタユニット3A〜3D間の隙間を小さく密に配置することが可能となり、光量調整装置Aの小型化を図ることができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、各フィルタユニット3A〜3Dは、駆動ユニットDU1及びDU2に設けられた案内軸6A〜6Dに案内されるため、安定的なユニット移動を実現できる。なお、各案内軸6A〜6Dは、一方側の変換部42A及び42Cと、他方側の変換部42B及び42Dとの間に配置されていることから、光量調整装置Aの小型化を維持しつつ、安定的なユニット移動を実現している。
【0052】
また、本実施形態では、更に、案内ユニット7に設けられた各案内部材71A〜71Dは、上述した各案内軸6A〜6Dの内側に配置され、各フィルタユニット3A〜3Dの安定的なユニット移動を実現している。なお、これら各案内部材71A〜71Dについては設けず、構成を簡略化することも可能である。
【0053】
しかも、フィルタユニット3の光軸方向の配列順で1つ置きに、フィルタユニット3を移動させる駆動ユニットDUを割り当てた構成としている。具体的には、駆動ユニットDU1に移動機構4A、4Cを設けてフィルタユニット3A、3Cを移動するようにし、駆動ユニットDU2に移動機構4B、4Dを設けてフィルタユニット3B、3Dを移動するようにしている。これによって、4層のフィルタユニット3を光軸方向に密に配置したとしても、駆動ユニットDU毎で見た場合、フィルタユニット3間のスペースを確保し易くなる。よって、光軸方向の装置の厚みをより薄くしながら、フィルタユニット3間の干渉を回避して、移動機構4等の組み込みスペースを確保できる。
【0054】
<第2実施形態>
本発明の光量調整装置は、カメラ等の撮影装置や交換レンズといった各種の光学装置に適用することができる。図8は、一例として、光量調整装置Aを備えた光学装置100の模式図を示す。
【0055】
同図の光学装置100は撮影装置であって、被写体200からの入射光を撮影する撮像素子102と、入射光6を撮像素子102に結像するためのレンズ101と、光量調整装置Aとを備える。光量調整装置Aは撮像素子102とレンズ101との間に配置されており、入射光から特定の波長の光を通過させるように作用させることができる。
【0056】
同図の例では、フィルタユニット3Aが開口部1a、2a上に位置し、他のフィルタユニット3B〜3Dは退避スペースSに位置している。
【0057】
なお、同図に示すように、レンズ101と撮像素子102との間に光量調整装置Aを配置することで、レンズとレンズの間に設置した場合にくらべてレンズ性能の影響を受けない。また、レンズと被写体の間に設置するよりも小型化が可能になる。
【0058】
<第3実施形態>
上記第1実施形態では、光量調整部材31を4つとした構成であったが、2つでもよいし、3つでもよく、或いは、5つ以上でもよい。図9Aはその一例に係る光量調整装置Bを示している。光量調整装置Bの構成のうち、光量調整装置Aと同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。図9Aは、カバー2を外した状態での光量調整装置Bの斜視図である。
【0059】
同図の例では、フィルタユニット3として、3つのフィルタユニット3A〜3Cを備えている(フィルタユニット3Bは不図示)。駆動ユニットDUとして駆動ユニットDU11及びDU12を備える。駆動ユニットDU11は、移動機構41A、41Cを備えてフィルタユニット3A、3Cをそれぞれ駆動する。駆動ユニットDU12は移動機構41Bを備えてフィルタユニット3Bを駆動する。
【0060】
<第4実施形態>
上記第1実施形態では、移動機構4A及び4Cの一部(変換部42)が、光軸方向と平行な方向に重なり合うように配置し、移動機構4B及び4Dについても同様とした。しかし、移動機構4A及び4Cの全部、並びに、移動機構4B及び4Dの全部が光軸方向と平行な方向に重なり合うようにしてもよい。図9Bはその一例に係る光量調整装置Cを示している。光量調整装置Cの構成のうち、光量調整装置Aと同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。図9Bは、カバー2を外した状態での光量調整装置Cの斜視図である。
【0061】
同図の例では、駆動ユニットDUとして駆動ユニットDU21及びDU22を備える。駆動ユニットDU21は、移動機構41A、41Cを備える。移動機構4Aと移動機構4Cとは互いに平行ではあるものの、上下を反転させずに取り付けられている点で上記第1実施形態と異なる。同様に、駆動ユニットDU22は、移動機構41B、41Dを備え、これらは互いに平行ではあるものの、上下を反転させずに取り付けられている。
【0062】
この例の場合、光軸方向と直交する方向(変換部42の軸方向)について、装置の幅をより小さくすることができる。
【0063】
なお、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【0064】
なお、本願は、2013年1月30日提出の日本国特許出願である特願2013−016121号を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てをここに援用する。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B