(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054455
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】ビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法及び設置構造
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20161219BHJP
H02S 20/20 20140101ALI20161219BHJP
A01G 9/26 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
A01G9/14 Z
H02S20/20 200
A01G9/26 Z
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-79273(P2015-79273)
(22)【出願日】2015年4月8日
(65)【公開番号】特開2016-198015(P2016-198015A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2015年10月9日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度〜平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 太陽光発電多用途化実証プロジェクト、太陽光発電多用途化実証事業、太陽電池屋根設置型ビニールハウス植物工場化プロジェクト、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】597008773
【氏名又は名称】ユニバーサリー電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(74)【代理人】
【識別番号】100136928
【弁理士】
【氏名又は名称】高宮 章
(72)【発明者】
【氏名】中川 博文
【審査官】
門 良成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−017489(JP,A)
【文献】
特開2011−015676(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3170970(JP,U)
【文献】
特開2011−119414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14
A01G 9/26
H02S 10/00−40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台と架台に取り付けた太陽電池パネルとを含む太陽電池パネル装置を太陽電池パネル面を上側にしてハウス躯体上に設置する工程と、
太陽電池パネル装置の上からハウス躯体を覆うようにビニルフィルムを張設する工程と、
太陽電池パネルの外周外側部分で架台とビニルフィルムとを接続手段により接続させる工程と、
架台とビニルフィルムとの接続後にビニルフィルムの太陽電池パネルに当たる部分を切除する工程と、を有することを特徴とするビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法。
【請求項2】
架台とビニルフィルムとの接続は、フィルムの外面側からフィルムの一部を着脱自在に架台に取り付けてなされることを特徴とする請求項1記載のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法。
【請求項3】
太陽電池パネルの外周に沿った外側部分とハウス躯体との間でビニルフィルムを張った状態で架台とビニルフィルムとを線状に接続させることを特徴とする請求項1記載のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法。
【請求項4】
ハウス躯体上に設置された架台と架台に取り付けた太陽電池パネルとを含む太陽電池パネル装置と、
太陽電池パネルに対応する部分を切り欠いたビニルフィルムであって、太陽電池パネル装置の上からハウス躯体を被覆し一部をハウス躯体側に固定されたビニルフィルムと、
ビニルフィルムの切り欠き孔縁部分を架台に着脱可能に固定するビニル孔縁部固定手段と、を備えたことを特徴とするビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造。
【請求項5】
架台は、平面視で太陽電池パネルよりも大きな略矩形状に設けられ、
架台の略矩形状の四辺のそれぞれに沿うようにビニル孔縁部固定手段が設けられたことを特徴とする請求項4記載のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造。
【請求項6】
ビニル孔縁部固定手段は、太陽電池パネルの外周に沿った外側部分とハウス躯体との間でビニルフィルムを張った状態で架台に対してビニルフィルムを着脱固定することを特徴とする請求項4又は5記載のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造。
【請求項7】
ビニル孔縁部固定手段は、ビニルフィルムの一部を受けて保持する保持器と、
保持器と協働して保持器に保持されるビニルフィルムの一部を弾発付勢により挟持する弾発部材と、を含むことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造。
【請求項8】
ビニルフィルムの太陽電池パネルに対応する切り欠き孔縁部分からビニルハウス内部へ水が侵入するのを防止する止水手段が設けられたことを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造。
【請求項9】
止水手段は、太陽電池パネルの周囲の架台に設けられたパッキン部材と、
架台のパッキン部材が設けられる部分を被覆するように該架台に対して着脱可能に装着され、該パッキン部材に密着して止水するカバー体と、を有することを特徴とする請求項8記載のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造。
【請求項10】
パッキン部材は、ビニル孔縁部固定手段によるビニル孔縁の固定位置を挟むように、太陽電池パネルに近接する側と離隔する側に対向して配置されたことを特徴とする請求項9記載のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造。
【請求項11】
ビニルハウスの躯体は、少なくとも天井側が円弧状に曲折したアーチ状パイプを有し、
架台は、太陽電池パネルを受ける平面部が形成されるとともに、側面視でアーチ状パイプに対応して湾曲形成されたことを特徴とする請求項4ないし10のいずれかに記載のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニルハウスへ太陽電池パネルを取り付けるためのビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法及び設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油燃料の枯渇や温室効果ガスの排出による環境問題、電力供給の不安定の問題から自然エネルギーを利用した発電が勧められている。特に、太陽光を利用した太陽光発電は社会的にも関心が高く、例えば、一般住宅やビル、工場等の建物の屋根や屋上、又は空き地等に太陽電池パネル装置が設置され、利用者も年々増加している。さらに、農作物を栽培するビニルハウスに太陽電池パネルを取り付けて、ビニルハウス内の温冷房設備やファン等の空調設備の電力供給を補助する技術も開発されている。ビニルハウスに太陽電池パネルを設置する場合には、例えば、ビニルハウスの屋根の内側又は外側に配置され、ハウスのパイプ等の躯体部分やビニルフィルム、又は索条やその他の支持部材を利用して取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3167115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1の太陽エネルギー温室の構造は、ビニルハウスの骨組みとなる複数のブラケットにより支持されるビニルフィルムの屋根の裏面側に隣接するように太陽電池パネルを配置したものであった。しかしながら、特許文献1のようにビニルハウスの内部に太陽エネルギーパネルが設置される構成では、太陽光はビニルフィルムを通って太陽電池パネルに当たるので、発電効率が悪く実用性が低い問題があった。一方、太陽電池パネルをビニルハウスの外部に設置する場合には、ビニルハウスのビニルフィルムはその素材の耐久性による経年劣化に伴い数年毎に定期的に交換する必要があることから、ビニル交換作業の際に太陽電池パネルをいちいち取り外すために電気工事の専門業者が必要になり、作業が極めて煩雑で、時間及びコストもかかる問題があった。また、太陽電池パネルをビニルハウスのパイプ等の躯体に固定する際に、ビニルフィルムを貫通して支持させると、雨水等がビニルハウス内に入りやすく、栽培環境が悪化し植物の病気等を招くことから、確実な防水構造が望まれていた。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、ビニルハウスに太陽電池パネルを設置した状態でビニルフィルムの交換を簡便に行なえるビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法及び設置構造を提供することにある。また、他の目的は、太陽電池パネル装置の設置箇所周辺からビニルハウス内に水が浸入するのを防止できるビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、架台26と架台26に取り付けた太陽電池パネル28とを含む太陽電池パネル装置12を太陽電池パネル面を上側にしてハウス躯体20上に設置する工程S12と、太陽電池パネル装置12の上からハウス躯体20を覆うようにビニルフィルム14を張設する工程S14と、太陽電池パネル28の外周外側部分で架台26とビニルフィルム14とを接続手段(16)により接続させる工程S16と、架台26とビニルフィルム14との接続後にビニルフィルム14の太陽電池パネル28に当たる部分を切除する工程S18と、を有するビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法から構成される。
【0007】
また、架台26とビニルフィルム14との接続は、フィルム14の外面側からフィルムの一部を着脱自在に架台26に取り付けてなされることとしてもよい。
【0008】
また、太陽電池パネル28の外周に沿った外側部分
とハウス躯体20の間で張った状態で
架台26とビニルフィルム14とを線状に接続さ
せることとしてもよい。
【0009】
さらに、本発明は、ハウス躯体20上に設置された架台26と架台26に取り付けた太陽電池パネル28とを含む太陽電池パネル装置12と、太陽電池パネル28に対応する部分を切り欠いたビニルフィルム14であって、太陽電池パネル装置12の上からハウス躯体を被覆し一部をハウス躯体20側に固定されたビニルフィルム14と、ビニルフィルム14の切り欠き孔縁部分14Eを架台26に着脱可能に固定するビニル孔縁部固定手段16と、を備えたビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造10から構成される。
【0010】
また、架台26は、平面視で太陽電池パネル28よりも大きな略矩形状に設けられ、架台26の略矩形状の四辺のそれぞれに沿うようにビニル孔縁部固定手段16が設けられたこととしてもよい。
【0011】
また、ビニル孔縁部固定手段16は、太陽電池パネルの外周に沿った外側部分
とハウス躯体20との間で
ビニルフィルム14を張った状態で架台26に対して
ビニルフィルム14を着脱固定することとしてもよい。
【0012】
また、ビニル孔縁部固定手段16は、ビニルフィルム14の一部を受けて保持する保持器42と、保持器42と協働して保持器42に保持されるビニルフィルム14の一部を弾発付勢により挟持する弾発部材44と、を含むこととしてもよい。
【0013】
また、ビニルフィルム14の太陽電池パネル28に対応する切り欠き孔縁部分14Eからビニルハウス内部へ水が侵入するのを防止する止水手段46が設けられたこととしてもよい。
【0014】
また、止水手段46は、太陽電池パネル28の周囲の架台26に設けられたパッキン部材48と、架台26のパッキン部材48が設けられる部分を被覆するように該架台26に対して着脱可能に装着され、該パッキン部材48に密着して止水するカバー体50と、を有することとしてもよい。
【0015】
また、パッキン部材48は、ビニル孔縁部固定手段16によるビニル孔縁14Eの固定位置を挟むように、太陽電池パネル28に近接する側と離隔する側に対向して配置されたこととしてもよい。
【0016】
また、ビニルハウスの躯体20は、少なくとも天井側が円弧状に曲折したアーチ状パイプ(22)を有し、架台26は、太陽電池パネル28を受ける平面部30が形成されるとともに、側面視でアーチ状パイプに対応して湾曲形成されたこととしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法によれば、架台と架台に取り付けた太陽電池パネルとを含む太陽電池パネル装置を太陽電池パネル面を上側にしてハウス躯体上に設置する工程と、太陽電池パネル装置の上からハウス躯体を覆うようにビニルフィルムを張設する工程と、太陽電池パネルの外周外側部分で架台とビニルフィルムとを接続手段により接続させる工程と、架台とビニルフィルムとの接続後にビニルフィルムの太陽電池パネルに当たる部分を切除する工程と、を有することから、太陽光を直接太陽電池パネルに当てて効率よく発電できるとともに、ビニルフィルムの交換が必要な際には太陽電池パネル装置を設置した状態のままでビニルフィルムを交換することができ、低労力で簡単に作業を行うことができる。
【0018】
また、架台とビニルフィルムとの接続は、フィルムの外面側からフィルムの一部を着脱自在に架台に取り付けてなされる構成とすることにより、フィルムの外面側の着脱操作により簡単にビニルフィルムを架台に接続できるとともに、雨水等がビニルハウスに浸入しにくい。
【0019】
また、架台とビニルフィルムとの接続は、太陽電池パネルの外周に沿った外側部分がハウス躯体に固定された他端側との間で張った状態で線状に接続される構成とすることにより、ビニルフィルムを適切に張った状態で確実に接続でき、例えば、風やハウス内の空調送風等でばたついたりすることを防止できるとともに、雨水等がビニルハウスに浸入しにくい。
【0020】
さらに、本発明のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造によれば、ハウス躯体上に設置された架台と架台に取り付けた太陽電池パネルとを含む太陽電池パネル装置と、太陽電池パネルに対応する部分を切り欠いたビニルフィルムであって、太陽電池パネル装置の上からハウス躯体を被覆し一部をハウス躯体側に固定されたビニルフィルムと、ビニルフィルムの切り欠き孔縁部分を架台に着脱可能に固定するビニル孔縁部固定手段と、を備えたことから、太陽光を直接太陽電池パネルに当てて効率よく発電できるとともに、ビニルフィルムの交換が必要な際には太陽電池パネル装置を設置した状態のままでビニルフィルムを交換することができ、低労力で簡単に作業を行うことができ、実用性が高い。
【0021】
また、架台は、平面視で太陽電池パネルよりも大きな略矩形状に設けられ、架台の略矩形状の四辺のそれぞれに沿うようにビニル孔縁部固定手段が設けられた構成とすることにより、太陽電池パネルの形状にあわせてビニルフィルムを簡単に切除でき施工作業を行ないやすいとともに、ビニルフィルムを適切に張った状態で確実に接続でき、例えば、風やハウス内の空調送風等でばたついたりすることを防止できる。
【0022】
また、ビニル孔縁部固定手段は、太陽電池パネルの外周に沿った外側部分がハウス躯体に固定された他端側との間で張った状態で線状に架台に対して着脱固定する構成とすることにより、ビニルフィルムを適切に張った状態で確実に接続でき、例えば、風やハウス内の空調送風等でばたついたりすることを防止できる。
【0023】
また、ビニル孔縁部固定手段は、ビニルフィルムの一部を受けて保持する保持器と、保持器と協働して保持器に保持されるビニルフィルムの一部を弾発付勢により挟持する弾発部材と、を含む構成とすることにより、簡単な作業で確実にビニルフィルムを接続することができるとともに、ビニルフィルム交換の際には簡単に取り外すことができる。
【0024】
また、ビニルフィルムの太陽電池パネルに対応する切り欠き孔縁部分からビニルハウス内部へ水が侵入するのを防止する止水手段が設けられた構成とすることにより、太陽電池パネル装置の設置部分周辺より雨水等がハウス内部に浸入するのを確実に防止して、植物の病害等を防止できる。
【0025】
また、止水手段は、太陽電池パネルの周囲の架台に設けられたパッキン部材と、架台のパッキン部材が設けられる部分を被覆するように該架台に対して着脱可能に装着され、該パッキン部材に密着して止水するカバー体と、を有する構成とすることにより、止水手段を簡単な構造で具体的に実現できるともに、意匠感を向上できる。
【0026】
また、パッキン部材は、ビニル孔縁部固定手段によるビニル孔縁の固定位置を挟むように、太陽電池パネルに近接する側と離隔する側に対向して配置された構成とすることにより、より確実にハウス内部への水の浸入を防止できる。
【0027】
また、ビニルハウスの躯体は、少なくとも天井側が円弧状に曲折したアーチ状パイプを有し、架台は、太陽電池パネルを受ける平面部が形成されるとともに、側面視でアーチ状パイプに対応して湾曲形成された構成とすることにより、普及している屋根がアーチ状のビニルハウスへ安定した状態で太陽電池パネル装置及び架台を設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係るビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法のフローチャートである。
【
図2】
図1のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法の説明図である。
【
図3】
図1のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法の説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造の斜視概略図である。
【
図5】
図4のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造のカバー体を分離した斜視拡大図である。
【
図6】
図4のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造のカバー体を外した状態の平面説明図である。
【
図7】
図6のA−A線断面の一部拡大説明図である。
【
図8】
図6のB−B線断面の一部拡大説明図である。
【
図10】
図4のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造の太陽電池パネル装置を裏面側から見た概略図である。
【
図11】ビニルハウスのビニルフィルムを交換方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下添付図面を参照しつつ本発明のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法及び設置構造の実施形態について説明する。本発明に係るビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法及び設置構造は、農作物等の温室栽培に利用されるビニルハウスに太陽電池パネル装置を取り付けるための取付手段であり、太陽電池パネルを取り付けた状態でビニルフィルム等の張替え交換を簡便に行なえるものである。
図1ないし
図3は、本発明のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置方法の一実施形態を示している。
図1、
図2、
図3に示すように、本実施形態では、太陽電池パネル装置の設置方法は、太陽電池パネル装置12をハウス躯体上に設置する工程S12と、ビニルフィルム14を張設する工程S14と、ビニルフィルム14と太陽電池パネル装置12を接続する工程S16と、ビニルフィルム14の太陽電池パネルに当たる部分を切除する工程S18と、を有する。
図4ないし
図10は、ビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造の一実施形態を示している。
図4、
図5、
図6に示すように、ビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造10は、太陽電池パネル装置12と、太陽電池パネルに対応する部分を切り欠いたビニルフィルム14と、ビニル孔縁
部固定手段16と、を備える。
【0030】
図4に示すように、本実施形態では、ビニルハウス18は、例えば、従来周知の農業用のビニルハウスであり、金属製パイプを組み付けて構成されたハウス躯体20の外壁に合成樹脂製のビニルフィルム14を被覆して形成されている。ビニルハウス18は、例えば、平面視で一方に長い矩形状に形成されており、長手方向に沿って一定間隔で屋根部分がアーチ状となるように湾曲した複数の湾曲パイプ22を並設するとともに、複数のパイプ22と交差するように該長手方向に沿って長い直線パイプ24が配置され、複数の湾曲パイプ22と直線パイプ24とを組み付けてハウス躯体20が構築される。ビニルフィルム14は、ハウス躯体20の形状に沿ってハウス躯体20を覆うように張設され、従来周知の金属製又はプラスチック製のビニルフィルム固定部材(図示せず)で湾曲パイプ22又は直線パイプ
24に固定される。なお、ハウス躯体20は、パイプの組み合わせに限らず、木製や鉄骨等を組付けたものや、その他任意のもので構成されていてもよい。
【0031】
図5、
図6に示すように、太陽電池パネル装置12は、架台26と、架台26に取り付けられる太陽電池パネル28と、を有する。太陽電池パネル28は、従来周知の太陽電池パネルであり、例えば、単結晶又は多結晶型モジュールの太陽電池を集積し平面視横長矩形状に形成されおり、四辺をアルミニウム等の金属製のフレームで囲んで固定されている。
【0032】
図5、
図6、
図7に示すよう、架台26は、太陽電池パネル28が取り付けられる基台であり、ハウス躯体20上に設置される。架台26は、例えば、プラスチック等の硬質合成樹脂で形成されており、平面視で太陽電池パネル28の外形輪郭よりも大きな略矩形状に設けられている。架台26は、中央に太陽電池パネル28を受ける平面部30が形成されており、該平面部30上にパネル表面(受光面)を上側に向けた状態でボルト・ナット等の固定部材31で固定している。なお、架台26と太陽電池パネル28との接続部分にコーキング等を施して防水すると好適である。架台26は、平面視で太陽電池パネル28の周囲を囲むような外縁部32を有している。外縁部32は、架台の各辺と略平行方向に沿って長い複数の凹溝部35a、35b、35cが形成されるとともに、後述のビニル
孔縁
部固定手段16や止水手段46が設けられる。さらに架台26の外縁部32の隅部と各辺の中間位置には、外縁部32を覆うカバー体50と連結するためのボルト穴部33が設けられている。架台の外縁部32は、太陽電池パネルの周囲から断面直線状となる平板状の外側に張り出した部分から溝部35aを挟んで断面円弧状に湾曲状に曲成される部分が形成され、さらにその外側に断面直線状に張り出した平板部分が連続的に形成されている。外縁部32の太陽電池パネル側の断面直線部分に1つの凹溝35bが形成され、断面円弧状の湾曲部分に他の凹溝35cが形成されている。架台26は、長辺方向は直線状に設けられているが、短辺側が上に凸状に湾曲形成されており、短辺側からの側面視でアーチ状パイプに対応して湾曲形成されている。架台26の裏面側には、架台26をハウス躯体20の湾曲パイプ22のアーチ状の屋根部分に取り付けるため支持装置34が設けられている。
【0033】
図7、
図9、
図10に示すように、支持装置34は、太陽電池パネル装置12をハウス躯体20上に支持するための支持手段である。支持装置34は、例えば、ハウス躯体20のアーチ状の湾曲パイプ上に載置状に当着する受部36と、該パイプ22を把持した状態で受部36に係止する把持具38と、を含む。受部36は、例えば、架台26の裏面側の4箇所に配置され、一方に長く形成され下面側を開口した断面略コ字状のチャネル部材からなり、開口部分の縁部に内側に略ハ字状に対向した係止片36aを有している。受部36は、架台26と太陽電池パネル28とを固定しているボルト・ナット等の固定部材31を利用して架台26に一体的に固定されている。受部36は、側面視湾曲した架台26と湾曲パイプ22に応じて平面部30に対して所定の角度で傾斜して固定されている。それぞれ
の受部36は、例えば、2本の湾曲パイプ22に跨るような長手長さとなっており、開口を湾曲パイプ側に臨ませて載置される。把持具38は、2個1対の金具を組付けて構成されており、上端に受部36の係止片の溝に係止する爪部が設けられているとともに、上下中間位置から下部にかけて湾曲パイプ22の径に略対応して湾曲している。把持具38の下端部はボルト・ナット等の固定部材により、2個1対の金具を着脱可能に固定される。支持装置34は、湾曲パイプ22上に架台26を載せるように受部36の開口側の下端を載せて当着させた状態で、把持具38を下方から係止させて固定させることにより、架台26を湾曲パイプに支持させることができる。
【0034】
図3、
図5、
図7に示すように、ビニルフィルム14は、前述のようにハウス躯体20を被覆し一部をハウス躯体側に固定されるものであるが、本実施形態では、ハウス躯体20上に設置した太陽電池パネル装置12の上からハウス躯体20を覆うように張設されるとともに、太陽電池パネル
28に対応する部分を切り欠いて切り欠き孔40が形成されている。すなわち、ビニルフィルム14は、太陽電池パネルに対応する略矩形状の切り欠き孔40を有しており、その切り欠き孔の孔縁部分が架台26の外縁部32上に配置され、ビニル
孔縁部固定手段16を介して、該ビニル孔縁部分14Eと架台26の外縁部32とが接続される。
【0035】
図5、
図7、
図9に示すように、ビニル孔縁部固定手段16は、ビニルフィルムの切り欠き孔縁部分14Eを架台26に着脱可能に固定するビニルフィルム固定手段である。さらに、ビニル孔縁部固定手段16は、後述のような施工手順により、切り欠き孔の形成前工程において、太陽電池パネルの外周外側部分で架台26とビニルフィルム14とを接続させる接続手段を構成する。本実施形態では、ビニル孔縁部固定手段16は、例えば、架台26の外縁部32にそれぞれに沿うように線状に設けられている。ビニル孔縁部固定手段16は、ビニル孔縁部分14Eの太陽電池パネル28の外周に沿った外側部分がハウス躯体20に固定された他端側との間で張った状態で線状に接続される。具体的には、ビニル孔縁部固定手段16は、ビニルフィルム14の一部(14E)を受けて保持する保持器42と、保持器42に保持されるビニルフィルムの一部(14E)を保持器42と協働して弾発付勢により挟持する弾発部材44と、を含む。保持器42は、例えば、金属製で一方に長く形成され、上面側を開口した略U字状の溝部材からなり、略U字状の対向部分が上端側の開口に向けて次第に狭く設けられている。保持器42は、架台26の外縁部32に設けられた溝部35a内に収容状に配置され、U字状の底部分と架台26の凹溝35aの底部とをビス等により固定されている。なお、本実施形態では、架台26の長辺方向には、3つの保持器42がボルト孔部33を挟んで直線状に並設されており、短辺方向には、2つの保持器42がボルト孔部33を挟んで直線状に並設されている。弾発部材44は、例えば、金属製で凹凸を繰り返すように曲折された線条部材からなる。保持器42の溝内部にビニルフィルムの一部14Eを挿入した状態で、該ビニルフィルムの外面側から弾発部材44を保持器42の溝内部に入れると、該弾発部材44がビニルフィルムを挟み込んだ状態で保持器42の内部に弾発付勢して該ビニルフィルムを固定する。すなわち、接続手段は、太陽電池パネルの外周外側部分で、切り欠き孔が形成される前のビニルフィルム14をフィルムを張った状態で架台26に保持ないしは把持させて太陽電池パネル装置と孔を開けないビニルフィルムとを繋いで接続させる繋留接続手段であり、この繋いでおく状態をフィルムの張り具合を調節可能とするように、着脱部材で着脱可能に接続させることによりフィルム面の中間に太陽電池パネルを配置させて適度の張り状態でフィルムを張設させることができる。本実施形態では、接続手段は、ビニルフィルムの一部を太陽電池パネルの外周外側部分で線状に挟み込んで架台26と固定させるビニルシート固定装置で形成されている。
【0036】
図7、
図9に示すように、架台26の外縁部32には、止水手段46が設けられている。止水手段46は、ビニルフィルム14の太陽電池パネル28に対応する切り欠き孔縁部分からビニルハウス内部へ水が侵入するのを防止する。これにより、ビニルフィルム14の屋根部分に切り欠き孔40を切除する構成であっても、好適に防止構造を維持でき、ビニルハウス内で良好に植物を栽培できる。止水手段46は、例えば、架台26のパッキン部材48が設けられる部分を被覆するように該架台26に対して着脱可能に装着されるカバー体50と、カバー体50と太陽電池パネル28の周囲の架台26の外縁部32との間に介在して止水するパッキン部材48と、を含む。パッキン部材48は、例えば、従来周知の防水加工等で用いられるゴム製で一方に長く設けられた筒状又は棒状の弾性部材からなり、架台26の外縁部32の各辺の溝部35b、35c内に嵌合状に収容されて太陽電池パネルの周囲を囲むように線状に設けられている。本実施形態では、パッキン部材48は、ビニル孔縁部固定手段16によるビニル孔縁部分14Eの固定位置を挟むように、太陽電池パネル28に近接する側と離隔する側に対向して配置されている。パッキン部材48は、下部側が架台26の外縁部32の凹溝35b、35c内に収容されるとともに、円弧状部分を外縁部の外面側より突出させている。カバー体50は、例えば、太陽電池パネル28に対応する部分に内孔を有し、外形輪郭形状が架台26の外形輪郭と略一致するような矩形枠状に設けられている。カバー体50は、架台26の外縁部32に設けられたパッキン部材48とビニル
孔縁
部固定手段16部分を同時に覆うようになっており、裏面側がパッキン部材48の円弧状の上部に密着して止水するようになっている。カバー体50の裏面側の隅部と各4辺の中間位置には、雌ネジ部52
が一体的に形成されている。カバー体50は、架台26の外縁部32を被覆した状態で、架台26のボルト孔部を貫通したボルト54を雌ねじ部52に螺合することにより、該架台26に着脱可能に固定される。
図8では、外側に配置されるパッキン部材48はビニルフィルムの一部に覆われておりカバー体50とパッキン部材48との間にビニルフィルムを挟んで係着しているが、内側に配置されるパッキン部材48にはビニルフィルムが覆われておらず直接カバー体50と当接している。ビニルフィルムの切り欠き孔40を形成する際にビニルフィルムを内側のパッキン部材48まで覆うように構成してもよい。なお、止水手段46は、上記した構成に限らず任意の構成としてもよい。例えば、パッキンの形状や個数等任意に設定してもよい。
【0037】
次に
図1ないし
図3を参照して、ビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造を施工する工程を設置方法とともに説明する。予め工場等で、架台26、太陽電池パネル28、支持装置36の保持器42、パッキン部材48等を組付けて太陽電池パネル装置12を組み立てておく(
図1、S10)。
図1のフローチャート及び
図2(a)、(b)
に示すように、工程S12では、ビニルハウスの設置現場にて、パイプを組付けたハウス躯体20にビニルフィルム14を張設する前に、太陽電池パネル装置12をハウス躯体20上に設置する。次に、
図2(c)に示すように、工程S14において、太陽電池パネル装置12の上からハウス躯体20を覆うようにビニルフィルム14を張設する。そして、
図3(d)に示すように、工程S16において、太陽電池パネル28の外周外側部分で架台26とビニルフィルム14とを接続手段(ビニル
孔縁部固定手段16)により接続させる。上述したように、架台とビニルフィルムとの接続は、フィルムの外面側からフィルムの一部を着脱自在に架台に取り付けてなされる。
図3(e)に示すように、工程S18において、架台26とビニルフィルム14との接続後にビニルフィルム14の太陽電池パネルに当たる部分を切除して、太陽電池パネルの受光面を外部に露出させる。最後に
図3(f)に示すように、工程S20にて、カバー体50を架台26に固定する。
【0038】
ビニルハウスのビニルフィルム14を経年劣化等により交換する際には、
図11に示すように、上記とは逆にカバー体50を架台26から取り外し(S30)、接続手段(ビニル
孔縁部固定手段16)の弾発部材44を離脱してビニルフィルムの接続を解除し(S32)、ビニルフィルム14をハウス躯体20から取り外す(S34)。次に、上記工程S12〜S20同様に、太陽電池パネル装置12の上からハウス躯体20を覆うようにビニルフィルム14を張設し(S36)、太陽電池パネル28の外周外側部分で架台26とビニルフィルム14とを接続手段(ビニル
孔縁部固定手段16)により接続させる(S36)。そして、架台26とビニルフィルム14との接続後にビニルフィルム14の太陽電池パネルに当たる部分を切除して(S40)、最後にカバー体50を架台26に固定して(S42)、ビニルフィルムの張替え交換を終了する。これにより、太陽光を直接太陽電池パネルの受光面に当てて効率よく発電できるとともに、ビニルハウスのビニルフィルム14の交換が必要な際には太陽電池パネル装置12を設置した状態のままでビニルフィルム14を交換することができ、低労力で簡単に、しかも低コストで作業を行うことができる。
【0039】
以上説明した本発明のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のビニルハウスへの太陽電池パネル装置の設置構造は、例えば、農作物の栽培等に利用されるビニルハウスで太陽光発電する場合に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
10 ビニルハウスへの太陽電池パネルの設置構造
12 太陽電池パネル装置
14 ビニルフィルム
16 ビニル孔縁
部固定手段
18 ビニルハウス
20 ハウス躯体
26 架台
28 太陽電池パネル
30 平面部
40 切り欠き孔
42 保持器
44 弾発部材
46 止水手段
48 パッキン部材
50 カバー体