(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054518
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】ステッピングモータを制御する方法
(51)【国際特許分類】
H02P 8/12 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
H02P8/12
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-510843(P2015-510843)
(86)(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公表番号】特表2015-516140(P2015-516140A)
(43)【公表日】2015年6月4日
(86)【国際出願番号】EP2013063721
(87)【国際公開番号】WO2014001545
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2014年11月6日
(31)【優先権主張番号】102012105740.0
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511104679
【氏名又は名称】ベーデーテー メディア オートマチオン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】BDT MEDIA AUTOMATION GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ギュンデル
【審査官】
上野 力
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−236796(JP,A)
【文献】
特開平06−113596(JP,A)
【文献】
米国特許第05959426(US,A)
【文献】
特開平2−211100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモータを制御する方法であって、前記ステッピングモータのステータコイルは制御エレクトロニクスによって回転する電磁場が発生するようにシーケンシャルに通電され、所与のスタータコイルの通電時にその巻線を通る電流(I)は前記制御エレクトロニクスによってまず定義された電流目標値(Imax)まで引き上げられ、次いで、前記目標値(Imax)に到達した後に電流(I)がチョッパされ、それは、前記制御エレクトロニクスから提供される巻線を通る電流が一定のタイムスパンの間ターンオフされ、引き続いてチョッパパルスが発生し、その間に、前記電流目標値(Imax)に再び到達するまで、前記制御エレクトロニクスから提供される電流がターンオンされるという前記ターンオフから前記ターンオンまでの動作を繰り返すことによっており、前記制御エレクトロニクスは、電流の再ターンオンの後に前記電流目標値まで再び到達するために必要となる時間によって定義される各々のチョッパパルスの幅を設定可能な基準時間と比較し、チョッパパルスの幅が初めて前記基準時間を下回ったときただちに、次に通電されるべきステータコイルの通電を開始する方法において、
前記ステッピングモータの制御中に前記基準時間が前記ステッピングモータの動作状態に合わせて適合化されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステッピングモータの制御中における前記ステッピングモータの動作状態に合わせた前記基準時間の適合化はチョッパパルスの最新の幅の測定に依拠していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
チョッパパルスの最新の基準パルス幅の測定は停止している前記ステッピングモータにおいて行われることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステッピングモータの制御中に前記基準時間を適合化するために、停止していて通電されている前記ステッピングモータにおけるチョッパパルスの測定された幅が、ルックアップテーブルを通じて、回転していて通電されている前記ステッピングモータにおけるチョッパパルスの対応する幅と相関的に関係づけられ、前記ルックアップテーブルに含まれる相関的に関係づけられた値が最新の基準時間として利用されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ルックアップテーブルは、所与のステッピングモータ型式の代表例について、停止していて通電されている前記ステッピングモータにおけるチョッパパルスの幅と、回転していて通電されている前記ステッピングモータにおける対応するチョッパパルスの幅とが、抵抗、インダクタンス、電圧、および電流からなる異なる組み合わせについてそれぞれ判定されて、前記ルックアップテーブルへ記録されることによって作成されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
チョッパパルスの最新の幅の測定は前記ステッピングモータの定常状態のときに行われることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
チョッパパルスの幅の測定は停止していて通電されている前記ステッピングモータにおいて予備通電段階で行われることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項の構成要件を有する、ステッピングモータを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータの好まれている1つのジャンルがステッピングモータである。ステッピングモータでは、ステータコイルへの通電が制御エレクトロニクスによって制御され、それによって磁場が段階的に回転し、ロータがこれに追随するようになっている。
【0003】
制御エレクトロニクスのモータドライバ段が、生後信号の印加後に、それぞれ制御されるコイルの巻線を通る電流をまず設定された目標値に合わせて上昇させ、電流制限のための一定のオフ時間の原理に依拠するモータドライバ最終段が、一定のオフ時間によって電流制限された信号を評価することを可能にする。通電の開始から電流目標値の初回の到達までの時間は、「電流立上り時間」と呼ばれる。念のためにここで付言しておくと、モータのそれぞれ異なる個所に配置されて一緒に制御される複数のコイルのことを、本明細書ではステータコイルと呼ぶ。
【0004】
目標値に到達した後、制御エレクトロニクスによって、厳密に言えばモータドライバ段によって提供される巻線を通る電流が、一定のタイムスパンの間、繰り返しオフにされ、引き続いて、電流目標値に再び達するまで再びオンにされる。巻線を通る電流がオフになっている間、電流はフリーホイールダイオードを通じて運び出される。
【0005】
このように、電流の遮断とこれに続く目標値に合わせた電流の上昇とからなるサイクルが何度も繰り返されるこのような方式は「チョッパ」と呼ばれる。電流制限により一定のオフ時間に基づいて電流が低下した後に、電流を再び目標値まで上昇させるために必要となる時間は、「チョッパパルス」とも呼ばれる;換言すると、チョッパの幅とは、その時間的な長さであると解される。
【0006】
ここでステッピングモータの適正な機能形態のために重要なのは、ロータがその直近の目標位置にまだ到達していない時点で、すでに電磁場が次のステータコイルへの通電によってさらに回転しないことである。たとえばモータが予期しない高い負荷を動かさなければならないために、そのような状況になってしまうと、モータのブロッキングが生じないまでも、少なくともステップ損失が生じることになる。しかしながら、最大の場の重なり合いを明らかに超えた後で初めて電磁場を次に切り換えるのも欠点となる。このことは、一方では非効率性につながるとともに、他方では振動の危険をもたらすためである。
【0007】
従来技術より、この問題を可能な限り回避するために、モータ制御をするためのさまざまな一連の方式が知られている。おそらくもっとも単純な種類の制御は、ステップ時間が規定されている固定的なステップ周波数の利用である。このような種類の制御でブロックを回避するためには、考えられる最大の負荷のとき、ロータが次のステップの開始前に制御エレクトロニクスによって目標位置に到達していることが保証されていなくてはならない。しかし、それと同時にこのことは、これよりも低い負荷で負荷されるロータを、本来可能であるよりも低いステップ周波数でしか作動させることができないという帰結につながり、そのために、利用することができるトルクが最善に活用されず、このことは、駆動の低い効率をもたらすことになる。
【0008】
改善された効率の実現のためには、モータステップの実行を伝える信号が、制御エレクトロニクスへとループバックされることが前提条件となる。そのための1つの選択肢は、モータのステップ角に対して同期化されたエンコーダを設けることにある。このことは効率を最適化することができるものの、高価な解決法であり、そのうえ追加の所要スペースをもたらすことになる。
【0009】
回路技術上の具体化手段を含めて、たとえば特許文献1および特許文献2に開示されている別案の選択肢の要諦は、チョッパ動作中に電流の時間的推移を分析し、モータによってステップが実行されたかどうかに関する推測を得ることにある:巻線における電流の立上り速度は、印加される電圧と、抵抗と、コイルのインダクタンスとに依存して決まる。しかし、所与のステータコイルのインダクタンスは、さらにロータとステータコイルとの相対位置に依存して決まり、この相対位置が最大になるのは、最大のステータ・ロータの重なり合いが生じているときであり、すなわち、ステータとロータがお互いのすぐ前で位置決めされているときである。したがって結果的には、ロータが回転すると、ステータコイルのインダクタンスが変調される。このようなインダクタンスの変調は、ロータが隣接するステータコイルにもっとも接近する位置を通過した後、チョッパパルスの幅が明瞭に短くなるという帰結につながる。
【0010】
それに応じて、特許文献1および特許文献2に詳細に開示されているように、チョッパパルスについて基準パルス幅を定義し、チョッパパルスの幅を監視して、チョッパパルスによる基準パルス幅の最初の下回りを、ロータ回転が行われたこと、およびそれに伴って次のステータコイルへの通電によって次のステップを開始できることを示す指標として利用することができる。このような方式は「チョッパコントロール」という概念でも知られている。
【0011】
しかしながら実際問題として、このような形式のループバックは駆動の効率を改善するものの、改善の余地をなおも残していることが示されている。すなわちステッピングモータは、特に出力密度の高いコンパクトな設計形式のステッピングモータは、そのステータコイルの巻線の内部抵抗が高いために、作動中に高温になることが問題であることが判明している。このような温度上昇は、ひいては内部抵抗の増大をもたらす。具体的には、銅からなるコイルの巻線の抵抗は、たとえば60℃の温度上昇の場合であればおよそ23%だけ高くなる。巻線の高くなった抵抗は、電圧が一定のとき、チョッパパルスの幅の増大につながる。
【0012】
このことは、たとえば20°のモータ温度については制御されるべき次のステータコイルへの移行がほぼ最善の時点で行われることを保証し、それによってこの温度のときには駆動の高い効率を実現可能であるような基準パルス幅の選択は、80℃のモータ温度のときには、これよりも後のチョッパパルスで初めて下回ることになり、そのために、このモータ温度では駆動の効率が明らかに悪くなり、モータが本来可能であるよりも低いステップ周波数で作動することを意味している。しかし、その逆に低い基準パルス幅の適用は、たとえばモータの初回の使用開始のときに休止後に生じることになる低いモータ温度のときには可能でない。
【0013】
特許文献3より、ターンオンの瞬間の電流立上り時間と監視と電圧測定とに基づいて、モータの考えられるブロッキングが推定される方法が公知である。
【0014】
特許文献4より、ターンオン時点での電流立上り時間を判定することで、最新のモータ温度の推定を引き出して、モータ温度が高すぎるときに電流目標値を引き下げることで、モータの過熱を回避することが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第4121617A1号明細書
【特許文献2】ドイツ特許第19609803C1号明細書
【特許文献3】ドイツ特許出願公開第102006021418A1号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2012/0014732A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって本発明の課題は、ステッピングモータを高い効率で、特に高いステップ周波数で作動させることができる、ステッピングモータを制御する方法を提供することにある。この課題は、請求項1の構成要件を備える方法によって解決される。本方法の好ましい発展例は従属請求項の対象となっている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
ステッピングモータを制御する本発明の方法では、ステッピングモータのステータコイルは制御エレクトロニクスによって回転する電磁場が発生するようにシーケンシャルに通電される。このとき所与のスタータコイルの通電時に、その巻線を通る電流は制御エレクトロニクスによってまず定義された電流目標値まで引き上げられ、次いで、目標値に到達した後に電流がチョッパされ、それは、制御エレクトロニクスから提供される巻線を通る電流が繰り返し一定のタイムスパンの間ターンオフされ、引き続いてチョッパパルスが行われ、その間に、電流目標値に再び到達するまで、制御エレクトロニクスから提供される電流が再びターンオンされることによる。
【0018】
このとき、一般にチョッパコントロール法から知られている通り、制御エレクトロニクスは、電流の再ターンオンの後に電流目標値まで再び到達するために必要となる時間によって定義される各々のチョッパパルスの幅を、設定可能な基準時間と比較して、チョッパパルスの幅が初めて基準時間を下回ったときただちに、次に通電されるべきステータコイルの通電を開始する。
【0019】
本発明の要部は、ステッピングモータの制御中に基準時間がステッピングモータの最新の
動作状態に合わせて適合化されることにある。このような方策により、ステッピングモータが常にその最善の
動作点の近傍で作動することが実現され、それにより、改善された効率が達成される。
【0020】
本発明の特別に好ましい実施形態では、ステッピングモータの制御中におけるステッピングモータの
動作状態に合わせた基準時間の適合化は、ステッピングモータが通電されて停止しているときの、いわゆる予備通電段階での、チョッパ動作における電流立上り時間の複数回のサイクルにわたる基準パルス幅の測定に依拠している。予備通電段階は、ステータ・ロータの重なり合いに関してモータを定義された初期状態にするという背景を有している。通電されていない状態では、ロータが2つの極の間にある可能性があるからである。このことは、ひいては不都合な始動挙動につながりかねないので、始動前にモータ巻線が相応に予備通電される。ここで提案される方法は、最初の電流印加から最初の最大値までの間の電流立上り時間の1つのサイクル中にのみ評価が行われる特許文献4に記載されている方法に比べて、運動時に発生する妨害現象が確実に回避され、このような複数の時間インターバルの測定によって、統計的な測定誤差の小さい測定値が得られるという利点を有している。
【0021】
ステッピングモータの制御中に基準時間を適合化するために、停止していて通電されているステッピングモータでチョッパパルスの最新の幅を測定を利用する特別に好適な方式として判明しているのは、停止していて通電されているステッピングモータにおけるチョッパパルスの測定された幅を、ルックアップテーブルを通じて、回転していて通電されているステッピングモータにおけるチョッパパルスの対応する幅と相関的に関係づけて、ルックアップテーブルに含まれる相関関係にある値を最新の基準時間として適用することである。
【0022】
この実施形態の特別に好ましい発展例では、所与のステッピングモータ型式の代表例について、停止していて通電されているステッピングモータにおけるチョッパパルスの幅と、回転していて通電されているステッピングモータにおける対応するチョッパパルスの幅とが、抵抗(温度変化に対応)、インダクタンス、電圧、および電流からなる異なる組み合わせについてそれぞれ判定され、ルックアップテーブルへ記録されることによって、ルックアップテーブルが作成される。このとき、それぞれ1つの組み合わせについて、抵抗、インダクタンス、電圧、および電流の値が物理的に可能な関係になっている。抵抗とインダクタンスはたとえば温度依存性のような固有の特性によって、また電圧もたとえば不安定な発生源によって、電流と電流立上り時間に関わる変化を引き起こすことがあるが、どのパラメータが変化を引き起こすかは立上り時間の考察にとって重要でないので、予備通電段階で判定された時間値から、整流された/回転している通電されたステッピングモータについての時間値を推定するのが有意義である。このようにして判定されたテーブルを利用することは、たとえば製造ロットの公差、異なる回線長、または一般に異なる接続ケーブルや接触部などによって引き起こされることがある統計的な抵抗変化だけでなく、たとえば温度変化によって引き起こされる動的な抵抗変化も補正するという可能性を提供する。
【0023】
補足として付言しておくと、このような表を用いて、モータの動作温度の温度測定をすることも可能である。電流と電圧は簡単に測定することができ、これに基づいて最新のコイル抵抗を算出することができ、次いで、コイル巻線の既知である温度依存性から、モータ温度を判定可能だからである。
【0024】
チョッパパルスの最新の幅の測定がステッピングモータの定常状態のときに行われると、すなわち、少なくとも1つのロータ極とステータ極が互いに最善に向き合っているとき、つまり重なり合っているときに行われると、特別に好ましいことが判明している。この状態では、モータの電動モータ力(EMK)に基づいて誘導される逆電圧から引き起こされることになる、定義されないロータ位置の妨害的な影響が回避されることが保証されるからである。
【0025】
停止していて通電されているステッピングモータにおけるチョッパパルスの幅の測定が予備通電段階で行われると、特別に好ましい。それにより、モータの回転が行われるべき時点で、追加の所要時間が一貫して回避されるからである。
【0026】
次に、図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。図面は次のものを示している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】回転しているステッピングモータにおいてステータコイルで測定された相電流の時間的推移である。
【
図2】停止しているステッピングモータと、最大のロータ・ステータの重なり合いのときにステータコイルで測定された相電流の時間的推移である。
【
図3】電流の印加前に最大のロータ・ステータの重なり合いが生じていないとき、停止しているステッピングモータにおいてステータコイルで測定された相電流の時間的推移である。
【
図4】チョッパ中における
図1の信号の拡大部分図、およびこれに対応するチョッパ信号である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、時間tに依存して、回転しているステッピングモータにおいてステータコイルで測定された相電流I(t)の推移を示している。時点t(I
0)で、制御エレクトロニクスの制御信号がセットされる。スタータ巻線の通電が始まり、所定の最大の電流強さI
maxに時点t(I
max1)で到達するまで継続される。このとき相電流は、ステータコイルの巻線にインダクタンスがあるため、即座に追随するのではなく、ゆっくりと上昇していく。これは、特許文献3ないし特許文献4で分析されている時間である。
【0029】
引き続いて電流供給がチョッパ式に作動し、その様子は
図4の拡大図から良く見て取ることができる。
図4に示す両方の曲線のうち下側の曲線は、制御エレクトロニクスのターンオンされた電流に相当する状態「ハイ」と、制御エレクトロニクスのターンオフされた電流に相当する「ロー」との間で、時間に依存して往復するように切り換えられるチョッパ信号を表している。この曲線から見て取れるように、I
maxに到達しているときには常に、チョッパ信号は一定のタイムスパンの間、状態「ロー」へと移行する。このタイムスパンの間に相電流I(t)は低下していくが、低下の程度はステータコイルのインダクタンスに依存して決まり、着目するステータコイルに制御信号が印加された後にはロータがこれに向かって動くので、時間とともに常に減少していく。
【0030】
その帰結として、チョッパ信号が状態「ハイ」になっている時間帯は次第に短くなっていき、最終的に基準時間を下回り、次のステータコイルへの通電が作動化される。
【0031】
さらに
図1と
図4には、本発明による基準時間の更新のために分析が利用される時間も、一例として開始時間t(I
chopper n)と終了時間t(I
max n+1)によってそれぞれマーキングされている。
【0032】
停止しているステッピングモータと、最大のロータ・ステータの重なり合いのときにスタータコイルで測定された相電流の時間的推移の
図2のグラフから見て取れるように、この状況ではチョッパパルスの幅は実質的に一定である。ステータコイルのインダクタンスが変化しなくなっているからである。ただしそれが該当するのは、
動作状態および特にステータコイルの巻線の温度が一定に保たれている間に限られる;それが変化すると、ステータコイルの抵抗が変化し、それに伴って電流も変化する。さらに、
図1に示されている回転するモータにおける状況と比較してみると、全体として、電流tI
maxに到達するまでの立上り時間がそれぞれ短くなっていることがわかる。
【0033】
したがって基本的には、ステッピングモータが静止状態にあるときでも、たとえば予備通電段階中にも、チョッパパルスの幅を判定することが可能であり、それにより、結果の反復式の測定と平均化も可能となる。ただしこのケースでは、停止しているステッピングモータと回転しているステッピングモータにおけるチョッパパルスの幅の間の相関関係は、抵抗(温度に呼応)、インダクタンス、電圧、電流強さなどの所与の周辺条件のもとで見出して、表に作成しなければならない。
【0034】
電流の印加前に最大のロータ・ステータの重なり合いが生じていないときに、停止しているステッピングモータにおいてステータコイルで測定された相電流の時間的推移を別の時間尺度で示す
図3を参照すると、ステッピングモータの定常状態で測定を実行するのがなぜ好ましいのかが明らかとなる。縦軸の左側領域には、チョッパにより引き起こされる電流の変化に重なり合う、ロータの過渡挙動およびその際に生じるEMKにより惹起される曲線I(t)の包絡線の波状の推移が見られる。それに応じて、この状態での測定は比較的大きな誤差と結びついており、信頼度が低い。
【符号の説明】
【0035】
I 相電流
t 開始時間
t 終了時間
I
max 最大の電流強さ