特許第6054580号(P6054580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6054580高電圧コンバータにおけるキャパシタ短絡
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054580
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】高電圧コンバータにおけるキャパシタ短絡
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20161219BHJP
   H02M 7/00 20060101ALI20161219BHJP
   H02B 1/16 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   H02M7/12 Z
   H02M7/00 Z
   H02B1/16 Z
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-518854(P2016-518854)
(86)(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公表番号】特表2016-521956(P2016-521956A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2013062493
(87)【国際公開番号】WO2014202109
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2016年4月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508254509
【氏名又は名称】エービービー テクノロジー エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フェーバリ, クリステル
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0059245(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/013245(WO,A1)
【文献】 特開平09−092570(JP,A)
【文献】 特開平08−205401(JP,A)
【文献】 特開平10−304673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00
H02M 7/12
H02B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧コンバータ(20)のキャパシタ(C)のための短絡装置であって、前記キャパシタの各々が2つの接続端子(44、46)を備え、前記装置は、
前記キャパシタの前記接続端子(44、46)に沿って摺動接触状態で移動されるように構成された短絡ワイヤ(30a)であって、
接地電位に接続された導電性材料(45)を含む短絡部(SCS)、及び
導電性材料を含むプローブ部(PS)
を備える、短絡ワイヤ(30a)と、
前記短絡部(SCS)及び前記プローブ部(PS)に電気的に接続された電圧評価ユニット(50)であって、更に
前記プローブ部(PS)及び前記短絡部(SCS)がキャパシタ(C)の各接続端子(44、46)に接続されると、前記キャパシタにおける電圧(Ucell)を検知し、
前記電圧を放電閾値(Uth)と比較し、
前記検知された電圧に基づいて前記短絡ワイヤ(30a)の停止又は移動を可能にするように構成された、電圧評価ユニット(50)と
を備える、短絡装置。
【請求項2】
前記電圧評価ユニット(50)は、前記検知された電圧に基づいて前記短絡ワイヤ(30a)の停止又は移動を可能にするように構成されている場合、前記放電閾値(Uth)が超過される限り前記短絡ワイヤ(30a)の前記移動の停止を可能にし、前記電圧が前記放電閾値を下回る場合、前記短絡部(SCS)が前記キャパシタ(C)の両方の接続端子(44、46)に接続されるよう前記短絡ワイヤ(30a)の移動を可能にするように構成されている、請求項1に記載の短絡装置。
【請求項3】
前記電圧評価ユニット(50)は、前記放電閾値が超過されている場合に前記短絡ワイヤ(30a)の移動を停止するように構成されている、請求項2に記載の短絡装置。
【請求項4】
前記電圧評価ユニット(50)は、前記短絡ワイヤ(30a)の移動を停止するように構成されている場合、前記キャパシタの電圧が前記放電閾値を下回るまで受動的に待機するように更に構成されている、請求項3に記載の短絡装置。
【請求項5】
前記放電閾値を下回る電圧を放電させるために前記短絡ワイヤ(30a)の前記プローブ部(PS)と前記短絡部(SCS)との間に接続された抵抗器(R2)を更に備える、請求項2又は3に記載の短絡装置。
【請求項6】
前記電圧評価ユニット(50)は、前記キャパシタの放電を制御するために、前記短絡ワイヤの移動が停止された後、前記プローブ部と前記短絡部(SCS)との間の前記抵抗器(R2)に接続するように更に構成されている、請求項5に記載の短絡装置。
【請求項7】
前記短絡装置が、キャパシタのグループに沿って前記短絡ワイヤ(30a)を移動させるように構成されたモータ(54)を更に備え、前記モータは、前記電圧評価ユニットに接続されて制御される、請求項1から6の何れか一項に記載の短絡装置。
【請求項8】
前記キャパシタはコンバータセル(48)中のキャパシタであり、前記コンバータセルが更に、給電端子(80)を有するセル制御ユニット(78)を備え、前記装置が更に、給電電圧を供給する給電ワイヤ(82)を備え、前記給電ワイヤ(82)が、前記セルのキャパシタンス測定端子(44、46)に沿って引かれる前記短絡ワイヤ(30a)と同期して、前記給電端子(80)に沿って摺動接触状態で移動されるように構成されている、請求項1から7の何れか一項に記載の短絡装置。
【請求項9】
前記プローブ部(PS)を前記短絡部(SCS)から分離している絶縁部(IS2)を更に備える、請求項1から8の何れか一項に記載の短絡装置。
【請求項10】
前記電圧評価ユニット(50)が、前記短絡ワイヤ(30a)を通って長手方向に伸びる内部導体(43)を介して前記プローブ部(PS)に接続され、前記短絡部(SCS)の前記導電性材料は、前記内部導体から電気的に分離されて前記短絡部(SCS)の表面を伸びる外側導体(45)として設けられている、請求項1から9の何れか一項に記載の短絡装置。
【請求項11】
前記内部導体(43)が前記短絡部(SCS)の内部に設けられている、請求項10に記載の短絡装置。
【請求項12】
高電圧コンバータ(20)のキャパシタ(C)を短絡させる方法であって、前記キャパシタの各々が2つの接続端子(44、46)を備え、前記方法が、
前記コンバータ(20)の前記キャパシタ(C)の前記接続端子(44、46)に沿って摺動接触状態で短絡ワイヤ(30a)を移動させるステップ(58)であって、前記短絡ワイヤ(30a)は接地電位に接続された導電性材料を含む短絡部(SCS)と、導電性材料を含むプローブ部とを備える、移動させるステップ(58)、
前記プローブ部(PS)及び前記短絡部(SCS)が前記キャパシタの各接続端子(44、46)に接続されると、前記キャパシタ(C)における電圧(Ucell)を測定するステップ(60)、
前記電圧(Ucell)を放電閾値(Uth)と比較するステップ(62)、並びに
検知された前記電圧に基づいて、前記短絡ワイヤ(30a)の停止又は移動を可能にするステップ
を含む、方法。
【請求項13】
前記検知された電圧に基づいて前記短絡ワイヤ(30a)の停止又は移動を可能にするステップが、前記放電閾値が超過される限り前記移動の停止(66)を可能にすることと、前記電圧が前記放電閾値を下回る場合に前記短絡部が前記キャパシタの両端子に接続されるよう、前記短絡ワイヤ(30a)の移動(69)を可能にすることとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記キャパシタの電圧が前記放電閾値を下回るまで受動的に待機するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プローブ部と前記短絡部との間に接続された抵抗器(R2)を用いて前記キャパシタを放電させること(68)を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記キャパシタの電圧が前記放電閾値を下回る場合に前記キャパシタを短絡させること(70)を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記キャパシタはコンバータセル(48)中のキャパシタであり、前記セルは更に、給電端子(80)を有するセル制御ユニット(78)を備え、給電電圧を供給する給電ワイヤ(82)が前記給電端子(80)を通って伸びており、前記方法は更に、前記短絡ワイヤ(30a)が前記セルのキャパシタの前記接続端子に沿って移動することと同期して、前記給電ワイヤを前記セルの前記給電端子に沿って摺動接触状態で移動させることを含む、請求項12から16の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、高電圧コンバータ中のキャパシタの短絡に関する。より詳細には、本発明は、高電圧コンバータのキャパシタの短絡装置、及びそのような高電圧コンバータ中のキャパシタを放電させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電圧源コンバータ又は電流源コンバータなどの高電圧コンバータは、高電圧レベルまで充電されるキャパシタを装備している。
【0003】
電圧源コンバータは、例えば、コンバータの2つのDC出力部の間にキャパシタバンクが設けられたいわゆる2レベルコンバータであり得る。コンバータはまた、幾つかのセルからなるカスケード接続されたマルチレベルコンバータであり得、この場合は各セルがキャパシタを備え得る。
【0004】
動作していないとき、これらのキャパシタが放電されることが重要である。
【0005】
更に、非動作時、コンバータが位置する環境において保守がなされる必要があり得、そのような環境はいわゆるバルブホール(valve hall)と称され得る。作業員がこの環境に入ることを許容される前にキャパシタが完全に放電されているという要件が存在することがある。これが完了していることを確実にするために、キャパシタを短絡させることが必要となり得る。このことは、作業員がバルブホールに入ることを許容される前にコンバータのキャパシタを短絡するという要件が存在し得るということを意味する。
【0006】
本発明は、そのような短絡を安全、高信頼、且つ高効率な方式で提供することを意図している。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的の1つは、高電圧コンバータ中のキャパシタに、安全、高信頼、且つ高効率な短絡を提供することである。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、高電圧コンバータのキャパシタのための短絡装置によってこの目的が達成され、各キャパシタは2つの接続端子を有し、当該装置は、
キャパシタの接続端子に沿って摺動接触状態で移動されるように構成された短絡ワイヤであって、
接地電位に接続された導電性材料を含む短絡部と、
導電性材料を含むプローブ部とを備えた、短絡ワイヤ、並びに
短絡部及びプローブ部に電気的に接続された電圧評価ユニットであって、プローブ部及び短絡部がキャパシタの各接続端子に接続されると、キャパシタにおける電圧を検知し、当該電圧を放電閾値と比較し、検知された電圧に基づいて短絡ワイヤの停止又は移動を可能にするように構成された、電圧評価ユニット
を備える。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、この目的は、高電圧コンバータのキャパシタを短絡させる方法によっても達成され、各キャパシタは2つの接続端子を備え、本方法は、
短絡ワイヤを、コンバータのキャパシタの接続端子に沿って摺動接触状態で移動させることであって、短絡ワイヤは、接地電位に接続された導電性材料を含む短絡部と導電性材料を含むプローブ部とを有する、移動させること、
プローブ部と短絡部とがキャパシタの各接続端子に接続されると、キャパシタの電圧を測定すること、
電圧を放電閾値と比較すること、並びに
検知された電圧に基づいて、短絡ワイヤの停止又は移動を可能にすること
を含む。
【0010】
本発明の実施形態は幾つかの利点を有する。本開示の実施形態は、高電圧コンバータ中のキャパシタに安全、高信頼、且つ高効率な短絡を提供する。これにより、高電圧キャパシタが位置するエリアへ作業員が安全に入ることが可能となる。
【0011】
添付の図面を参照し、本発明の実施形態を下記で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ACシステムとDCシステムとの間に接続されたコンバータの単線結線図を概略的に示す。
図2】カスケード接続されたマルチレベル即ちセルベースの電圧源コンバータのフェーズレグを概略的に示す。
図3】キャパシタを短絡させるために短絡部がコンバータのキャパシタを通って引かれている短絡ワイヤを概略的に示す。
図4】高すぎる電圧を有するキャパシタが短絡された場合の結果を示す。
図5】第1の実施形態で用いられる短絡ワイヤを示す。
図6】第2の実施形態による短絡で用いられる短絡ワイヤ及び抵抗器を示す。
図7】第2の実施形態による短絡装置を幾つかのキャパシタと共に概略的に示す。
図8】第2の実施形態による短絡装置で実施される、コンバータ中のキャパシタを短絡させる方法の幾つかの方法ステップのフロー図を示す。
図9】第3の実施形態による短絡装置で用いられる2本のワイヤ及び抵抗器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
高電圧コンバータのキャパシタのための短絡装置及び短絡方法の実施形態を下記に提供する。
【0014】
高電圧コンバータは、直流(DC)システムと交流(AC)システムとの間に接続されたコンバータであり得、これらシステムの両方が送電システムであり得る。DCシステムは例えば高電圧直流(HVDC)送電システムであり得、ACシステムはフレキシブル交流伝送システム(FACTS)であり得る。しかしながら、これらのタイプのシステムはそのようなシステムの例示に過ぎない。コンバータは、例えば、DCバックトゥバック(back−to−back)システム及び配電システムにも応用可能である。
【0015】
図1は、ACシステムS1とDCシステムS2との間に接続されたコンバータ20の単線結線図を概略的に示す。この実施例で、ACシステムS1は三相ACシステムであり、通常、3つの導体を含む。図では1つの導体10のみを示す。一方、DCシステムS2は、コンバータ20を経由してACシステムに結合された2つの極を含む。この実施例では2つの極が存在するので、このDCシステムは双極システムであり得る。本発明は単極システムにも用いられ得、単極システムは非対称又は対称の単極システムであってよいことを理解されたい。更に、DCシステム及びACシステムの双方が、図示されている極及び導体よりも多くの要素を含み得ることを理解されたい。しかしながら、それらは本発明の理解において中心的なものでないので省略されている。
【0016】
コンバータ20は、整流器及び/又はインバータとして機能し得る。本発明の実施例で、コンバータ20は、後述するセルベースの電圧源コンバータ即ちカスケード接続されたマルチレベルコンバータである。しかしながら、本発明はこのタイプの電圧源コンバータに限定されないことを理解されたい。コンバータは、例えば、2レベルコンバータ又は中性点クランプ型3レベルコンバータであってもよい。実際、用いられるコンバータのタイプは電圧源コンバータに限定されず、電流源コンバータであってもよい。
【0017】
高電圧コンバータ20は、DCシステムS2への(より詳細にはDCシステムの少なくとも一方の極への)接続のためのDC側と、ACシステムに結合されるAC側とを有する。コンバータ20は、各フェーズに1つ、幾つかのAC端子をAC側で有する。コンバータ20は、各極に1つ、幾つかのDC端子12及び14をDC側で有し、第1のDC端子12が第1の極に接続され、第2のDC端子14が第2の極に接続される。図は単線結線図であるので、1つのAC端子22のみが2つのDC端子12及び14と共に示されている。
【0018】
コンバータ20は変圧器18を介してAC網に結合され、変圧器18は、ACシステムS1に結合され且つプライマリ巻線を含むプライマリ側と、コンバータ20のAC側に結合され且つセカンダリ巻線を含むセカンダリ側とを有する。ここで、変圧器18が省略される場合もあることを理解されたい。
【0019】
図1で、各極に設けられた接地への選択可能なDC接続(即ち、対応するDC端子からグラウンドへと繋がる接続)が存在する。図1で、共通の放電抵抗器R1に直列の第1のDC接地スイッチ26、及び、共通の放電抵抗器R1に直列の第2のDC接地スイッチ28が存在する。従って、放電抵抗器R1は両方の極に共通である。コンバータ20の平常動作時、接地スイッチはオープンである。
【0020】
図2は、カスケード接続されたマルチレベルコンバータと称されることも多いセルベースの電圧源コンバータ20の一実施例を示す概略ブロック図である。
【0021】
コンバータは対称単極コンバータの形態であり、幾つかのフェーズレグを含み、各フェーズに1本のフェーズレグが存在する。従って、コンバータは、少なくとも2本、この場合には3本のフェーズレグを含む。しかしながら、図2ではそのようなフェーズレグが1本のみ示されている。
【0022】
図2で見て取れるように、このコンバータ20のフェーズレグPLは、カスケード接続された幾つかのセルを含み、各セルは、スイッチング素子の少なくとも1つの分岐に並列のキャパシタを含み、本実施例で各分岐は2つのスイッチング素子を備える。各スイッチング素子は、逆並列ダイオードを有するトランジスタの形態で設けられる。フェーズレグPLの中点に、AC端子22が設けられる。更に、図2のコンバータで、AC端子22の対向する側に設けられた第1のフェーズリアクトル及び第2のフェーズリアクトルが存在する。更に、フェーズレグは2つのフェーズアームに分割される。AC端子22と第1のDC端子12との間の1つのフェーズアーム(本実施例で正のフェーズアームPAとして表す)、及び、AC端子22と第2のDC端子14との間のもう1つのフェーズアーム(本実施例で負のフェーズアームNAとして表す)が存在する。従って、フェーズアームは、フェーズレグのセルの半分と1つのフェーズリアクトルとを含み得る。この実施例で、キャパシタバンク(本実施例では2つのキャパシタを含む)がフェーズレグPLに並列に存在する。ここではこのキャパシタバンクの中点が接地されている。
【0023】
ここで、コンバータ20の幾つかの変形例では、キャパシタバンクが除去され得ることを理解されたい。フェーズリアクトルの配置も変化し得る。
【0024】
図2に示されたセルはハーフブリッジセルである。しかしながら、セルベースのコンバータは、フルブリッジセル及び様々なタイプの二重電圧寄与セル(double voltage contribution cell)など、任意の数のセルベースのタイプであり得ることを理解されたい。しかしながら、これについては更に詳細には述べない。
【0025】
様々な状況で、コンバータ20がシャットダウンされる必要が生じ得る。サービス及び/又は保守によりシャットダウンが必要となることがある。このシャットダウンの一部として、セルのスイッチング素子がブロックされ、これはスイッチング素子のトランジスタのターンオフを含む。しかしながら、キャパシタも放電される必要がある。セルがブロックされる場合、セルキャパシタは実際には互いに直列に接続される。
【0026】
放電は、DC接地スイッチ26及び28と、共通の放電用抵抗器R1とを用いて実施され得る。
【0027】
共通の放電用抵抗器R1の使用により、セルキャパシタを素早く放電することが可能である。しかしながら、コンバータが位置する(バルブホールなどの建物であり得る)環境に作業員が入ることを許容される前に、キャパシタが完全に放電されたことを確実にする必要がある。これは、すべてのキャパシタを短絡させることによって行われ得る。従って、キャパシタを短絡させることにより、残留電荷が存在せず作業員が安全に建物内に入れる。
【0028】
キャパシタを安全に短絡させる1つの方法は、接地電位に接続されたワイヤを使用することによる。これは図3に示されており、2つの接続端子を各々が備え且つカスケード接続されたn個のセルキャパシタC1、C2、C3、及びCnが存在している。図中、2つのプーリ32及び34に設けられ、且つキャパシタC1、C2、C3、及びCnの接続端子を通って(例えば、引かれることによって)動かされる、ワイヤ30も示されている。ワイヤ30は短絡ワイヤであり且つ絶縁部IS1と短絡部SCSとを有し、短絡部SCSは接地電位に接続された導電性材料で形成され、絶縁部IS1は電気絶縁材料で形成されている。本実施例で、絶縁部IS1は、ワイヤが引かれるとキャパシタC1、C2、C3、及びCnをはじめに通過するワイヤ30の第1の部分に設けられ得、短絡部SCSは、絶縁部IS1の後にキャパシタC1、C2、C3、及びCnを通過するワイヤの第2の部分に設けられ得る。キャパシタC1、C2、C3、及びCnの接続端子又は接続点に沿って短絡ワイヤ30を引くか又は動かすことにより、キャパシタが次々に放電されることが見て取れよう。コンバータ中のすべてのキャパシタについてこれが実施された後に、安全にバルブホールに入ることができる。
【0029】
しかしながら、はじめに述べた放電中にキャパシタのうちの一又は複数が十分に放電されておらず、従って高い残存電荷が存在し得るという問題が存在する。そのようなキャパシタが短絡又は接地されると、キャパシタの全エネルギーが導電ワイヤを通じて放電される。これにより、ワイヤとキャパシタの接続端子とが互いに溶接されることになり得る。これが図4に概略的に示されている。これが発生するとワイヤ30は行き詰まり、未だ短絡していない後続のキャパシタの短絡がごく困難となる。従って、作業員はバルブホールへ入ることを阻止される。
【0030】
本発明の実施形態は、この状況を改善することを目的とする。
【0031】
短絡装置の実施形態では、専用の短絡ワイヤ30aが用いられる。第1の実施形態によるこの短絡ワイヤ30aの一部が、図5の単純化されたセル48と共に示されている。図示されている要素が、電圧Ucellを有するキャパシタCのみであるので、セル48は単純化されている。セルは、第1の接続端子44及び第2の接続端子46も備え、第1の接続端子44がキャパシタCの第1の端部に接続され、第2の接続端子46がキャパシタCの第2の端部に接続されている。第1の端部における電位は第2の端部における電位よりも高く、従って、第1の端部が正の端部と称され第2の端部が負の端部と称されてもよい。本実施例で、接続端子44及び46はリング形状であり得、リング中に短絡ワイヤ30aが摺動接触して設けられ得る。
【0032】
短絡ワイヤ30aは、第1の絶縁部IS1、短絡部SCS、及びプローブ部PSを備え、第1の絶縁部IS1は短絡ワイヤ30aの上端から長手方向に伸び、短絡部は短絡ワイヤ30aの下端から長手方向に伸び、プローブ部PSはそれらの間に設けられる。短絡部SCS及びプローブ部PSの両方が、銅などの導電性材料を用いて設けられ得る。第1の絶縁部IS1は、固体絶縁材料で作製され得る。本実施例で、プローブ部PSもまた固体の導電性材料の部であり得る。より詳細には、プローブ部42は、短絡ワイヤ30aの上端から最も遠い絶縁部IS1の端部に当接し、短絡ワイヤ30aの内部を短絡ワイヤ30aの下端まで中心的且つ長手方向に伸びる内部導体43に接続する。プローブ部PSと短絡部SCSとの間に、絶縁材料の第2の部分IS2が存在し、従って、絶縁材料は内部導体43を径方向に包囲する。その後、短絡部SCSが後続する。短絡部SCSは、短絡ワイヤ30aに沿って第2の絶縁部IS2から短絡ワイヤ30aの下端まで長手方向に伸びる又は延伸する。これにより、短絡部SCSは内部導体43と外側導体45とを備えるので、外側導体45は接地電位に接続される。従って、短絡部は、接地電位に接続された導電性材料を含む。外側導体45は、内部導体45に並列であり且つこれと電気的に分離された短絡ワイヤ30aの周縁又は表面に、配置されるか又は設けられる。この分離は、絶縁材料の層によってもたらされ得る。従って、外側導体は径方向に内部導体から絶縁される。
【0033】
動作時、短絡ワイヤ30aは(例えば、牽引によって)動かされ、これにより、はじめに第1の絶縁部Is1が第1の接続端子44及び第2の接続端子46の両方と接触する。その後、プローブ部PSが第2の接続端子46と接触するが、第1の接続端子44は依然として絶縁部IS1と接続している。短絡ワイヤ30aが更に少し動かされた後、プローブ部PSが第1の接続端子44に電気接続され、短絡部SCSの外側導体45が第2の接続端子46に電気接続される。この状態で、プローブ部と短絡部との間の電圧が検知可能である。この状態は図6に示されている。この時点で、短絡ワイヤ30aの牽引は停止され得、キャパシタCの電圧Ucellが測定され得る。
【0034】
従って、プローブ部42が第1の接続端子44に接続され、短絡部46の外側導体45が第2の接続端子46に接続されるように、短絡ワイヤ30aが引かれるか又は動かされるので、キャパシタCの電圧Ucellは短絡ワイヤ30aを用いて測定され、このとき、短絡ワイヤ30aの中心部の導体43がセル電位を有し、外側導体45が接地電位を有することが理解されよう。
【0035】
これがキャパシタCの電圧の検出に用いられ得、キャパシタ電圧のついての知見が、短絡ワイヤ30aの動きの停止に用いられ得る。例えば、移動は、キャパシタ電圧Ucellが放電閾値を下回るまで停止され得る。放電閾値は、キャパシタ電圧の放電が必要であることを示す閾値である。セル48は放電用抵抗器を含み得、このことは、キャパシタ電圧が放電閾値を下回るよう、セルがセル抵抗器を介して十分に放電されるまで移動を停止することが可能であることを意味する。このことは、セル内で実施される放電によってキャパシタ電圧が放電閾値を下回るまで受動的に待機することが可能であるということを意味する。本実施例で、放電閾値は、起こり得る短絡ワイヤ30aの破壊に関連して設定され得る。即ち、短絡ワイヤ30aが溶解せずに維持されるレベルに相当するように設定され得る。この方式で、検知された電圧に基づいて、短絡ワイヤ30aの停止又は移動が可能となる。
【0036】
電圧が放電閾値を下回る場合、移動は継続され、第1の接続端子44及び第2の接続端子46の双方が短絡部SCSの外側導体45に接続されることとなる。これにより、キャパシタCが短絡され、結果として、キャパシタC内に残存電荷が存在すればこれが除去される。この放電は、放電閾値を下回る電圧レベルから実施されるので、短絡ワイヤ30aの損傷が発生しない。
【0037】
ここで、図6、7、及び8を参照して第2の実施形態を説明する。図6は、図5と同じ短絡ワイヤ30a及びセル構造を示す。短絡ワイヤ30aの内部導体43と外側導体45との間に接続された第2の放電抵抗器R2が存在する点のみが異なる。従って、プローブ部PSとグラウンドとの間に接続された抵抗器R2が存在する。セルが放電抵抗器を含まない場合、又はセル放電抵抗器に不具合がある場合に、これは有益である。セル内に放電抵抗器が存在する場合は、第2の放電抵抗器は放電を加速させる。
【0038】
図7は、第1のプーリ32に接続されたモータ54による補助を通じ、第2のプーリ34から第1のプーリ32まで幾つかのキャパシタに沿って移動されるか又は引かれる短絡ワイヤ30aを含む装置を概略的に示す。図中、短絡ワイヤ30aのプローブ部PSにおいて測定された測定値を受信する電圧評価ユニット50も存在する。電圧評価ユニット50は、短絡部SCS及びプローブ部42に電気的に接続される。図中、電圧評価ユニット50はプローブ部PS及びグラウンドに直接的に接続されて示されている。しかしながら、実際には、内部導体43を介してプローブ部に接続される。電圧評価ユニット50が外側導体45を介して短絡部SCSに接続されてもよい。電圧評価ユニット50は、プローブ部PSを放電用抵抗器R2に接続するスイッチ52を選択的に制御する。
【0039】
図8は、電圧評価ユニット50によって実施される幾つかの方法ステップを示す。
【0040】
図7で見て取れるように、短絡ワイヤ30aが通過する幾つかのセルが存在し、その数はnであり得る。従って、電圧評価ユニット50によってセルカウンタXがまず1に設定される(ステップ56)。次いで、電圧評価ユニット50が、短絡ワイヤ30aが動くようにモータ54を制御し、この実施形態では、セルの1つめのキャパシタ電圧を測定するために短絡ワイヤ30aが引かれる(ステップ58)。このことは、プローブ部PSが第1のセル内のキャパシタCの第1の接続端子44に電気的に接続され、短絡部SCSの外側導体45が第2の接続端子46に電気的に接続されることを意味する。
【0041】
次いで、電圧評価ユニット50は、第1の接続端子44及び第2の接続端子46を介してキャパシタ電圧Ucellを測定するか又は検知し(ステップ60)、キャパシタ電圧Ucellを放電閾値Uthと比較する(ステップ62)。
【0042】
セル電圧Ucellが放電閾値Uthを上回る(ステップ62)場合、モータ54を停止することによって電圧評価ユニット50は移動を停止させ(ステップ64)、次いで、セルが放電されことが確実となる(ステップ68)。これは、プローブ部42を抵抗器R2と相互接続するためのスイッチ52を制御する電圧評価ユニット50によって行われ得る。これにより、放電用抵抗器R2がキャパシタCに並列のグラウンドに接続され、従って、キャパシタCが放電される。従って、短絡ワイヤ30aの移動が停止されたときにも放電が発生する。電圧が放電閾値を下回った(例えば、放電閾値を大幅に下回った)場合、短絡ワイヤ30aの移動は(例えば、移動を継続するようモータ50を制御する電圧評価ユニット50によって)継続される(ステップ69)、これにより、短絡ワイヤ30aの牽引が継続される。ある時間の経過後、キャパシタCの第1の接続端子44及び第2の接続端子46の双方が、短絡部SCSの外側導体45に電気的に接続され、これによりキャパシタCが短絡される(ステップ70)。これは、第1の接続端子44及び第2の接続端子46の双方が短絡ワイヤ30aの短絡部SCSの外側導体45に電気的に接続されるか又はガルバニック接続されるよう、短絡ワイヤ30aを引くようにモータ54を制御する電圧評価ユニット50によって行われ得る。
【0043】
電圧が放電閾値Uthを下回る場合(ステップ64)、移動を継続するようにモータ50を制御する電圧評価ユニット50によって移動は継続され(ステップ69)、これにより、短絡ワイヤ30aの牽引が継続される。従って、放電することなく移動が継続する。この移動により、キャパシタCの第1の接続端子44及び第2の接続端子46が、短絡部SCSの外側導体45に電気的に接続され、これによりキャパシタCが短絡されることとなる(ステップ70)。
【0044】
従って、電圧評価ユニット50により、放電閾値が超過される限り移動を停止することができ、電圧が放電閾値を下回ると、キャパシタの双方の接続端子に短絡部が接続されるよう、短絡ワイヤ30aを移動させることができることが理解されよう。
【0045】
これが完了した後、電圧評価ユニット50は、セルカウンタXを最大セル値(この場合はn)と比較し、Xが値nに到達している場合(ステップ72)、短絡が完了し動作は終了する(ステップ76)が、到達していない場合(ステップ72)、カウンタがインクリメントされ(ステップ74)、次いで、電圧評価ユニット50がモータ54を制御して短絡ワイヤ30aのプローブ部PSを次のセル中のキャパシタの第1の接続端子44まで移動させる(ステップ58)。
【0046】
この方式で、短絡ワイヤの破壊が防止でき、短絡操作が向上し且つ短絡ワイヤの破壊による遅延が避けられることが理解されよう。従って、より高信頼の短絡操作が得られる。これにより、作業員が安全にバルブホールに入ることができる。
【0047】
上述のように、キャパシタがセル中に設けられ得る。そのようなセルは、セル制御ユニット(即ち、トランジスタのオンオフなどのセルの動作を制御するために用いられる制御ロジック)を含み得る。セル制御ユニットは、例えば、ゲート信号をトランジスタに供給する一又は複数ゲート制御ユニットを含み得る。
【0048】
セル制御ユニットへの供給として用いられる電力がセルキャパシタを通じて供給されることは珍しくない。これは、セル制御ユニットに給電するための高効率な方式である。
【0049】
更に、保守中、セル制御ユニットで測定が必要とされ、且つそのような測定のためにセル制御ユニットが給電を必要とすることがある。しかしながら、本実施例で、セルは放電されているか又は放電されようとしているので、利用可能な電力が存在しない。本発明の第3の実施形態は、この状況に対処する。
【0050】
この状況を図9で概略的に示す。図9は、セル48のキャパシタCの第1の接続端子44及び第2の接続端子46に接続された短絡ワイヤ30aが存在する点で、図7に類似する。図中、これらの接続端子44及び46の双方が短絡部の外側導体45に接続されており、従って、キャパシタCは空(empty)である。しかしながら、セル48中、電力を受けるためにキャパシタCに接続されたセル制御ユニット78も存在する。このため、セル制御ユニット78は、第1のダイオードD1を介してキャパシタCの第1の端部に接続された正の給電入力部84を有し、この第1のダイオードD1は、キャパシタCの第1の端部から正の給電入力部84の方への電流導電方向を有する。セル制御ユニット78は、キャパシタCの第2の端部に接続された負の給電入力部86も有する。セル78は給電端子80も備え、これは、給電端子80から正の給電入力部84への電流導電方向を有する第2のダイオードD2を介して、正の給電入力部84に接続される。
【0051】
給電端子80はリング形状であってよく、この端子を通じて、給電端子と摺動接触にある給電ワイヤ82が引かれる。この給電ワイヤ82は、例えば、電圧評価ユニットの制御下で且つ短絡ワイヤ30aと同期して、短絡される幾つかのセルに沿って移動され得、これにより、セルが放電される一方、セル制御ユニット78は、様々なテストを行う機能を可能とするのに十分な電力を受ける。本実施例で、2つのダイオードD1及びD2は、セルキャパシタCのエネルギーが給電ワイヤ82に伝送されないこと、又は、給電ワイヤ82の電圧がセルキャパシタCを充電しないことを確実にするために用いられ得る。
【0052】
この実施形態は、セルキャパシタの安全、高信頼、且つ高効率な短絡を提供することに加え、セル制御ユニットに電力を供給し、これにより、セル制御ユニットの測定が単純な方式でなされ得る。
【0053】
本発明によってなされ得る幾つかの変形形態が、既に述べたもの以外に存在する。
【0054】
放電されるキャパシタはセルキャパシタに限定されず、他のキャパシタ(例えば、2レベルコンバータ中のキャパシタ)もまた同じ技術を用いて短絡され得ることをまず述べておく。短絡は、前の放電が存在する場合でもそれと組み合わされなくてもよいことにも留意されたい。行われる唯一のキャパシタ放電が、短絡ワイヤの運動に関連した放電であり得る。モータが省略されてもよい。例えば、本明細書に記載のワイヤが手動で引かれる。放電用抵抗器が用いられる場合はこれをスイッチなしに短絡ワイヤに接続してもよい。従って、スイッチが省略されてもよい。これにより、幾つかの変形形態において、放電用抵抗器は、プローブ部と短絡部との間に常に接続されている。電圧評価ユニットが、第1の実施形態及び第2の実施形態の双方に設けられてもよい。更に、電圧評価ユニットがごく単純な機能を有することも可能である。例えば、測定された電圧が放電閾値を上回るか又は下回るという事実がユーザに提示され、次いで、短絡ワイヤが引かれるか否かをユーザが決定する。更に、ワイヤは、フェーズアームのすべてのセルに設けられるか、フェーズレグのすべてのセルに設けられるか、又は、フェーズアームもしくはフェーズレグのセルの1つのグループに設けられ得る。そのようなセルのグループは、例えば列もしくは層などの形態で互いに整列して配置され得、これにより、ワイヤは、それらの間を基本的に屈曲せずに移動され得る。従って、この場合、幾つかのグループ用に幾つかのワイヤが存在し得、これらのワイヤが1つの電圧評価ユニットを用いて制御され得る。
【0055】
1つのグループは、例えば、アームのセルの25%、33%、又は50%を含み得る。従って、フェーズアーム中に2つ、3つ、又は4つのグループが存在し得、グループ中のセルが短絡ワイヤを用いて次々に短絡され得る。
【0056】
電圧評価ユニットは、プロセッサで実行されると所望の機能を実施するコンピュータプログラムコードを含むプログラムメモリを伴ったプロセッサの形態で実現され得る。
【0057】
本発明が多くの形式で変形可能であることは、上述の記載から明白である。従って、本発明は、下記の特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9