(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
連係手段を、駆動軸及び回転軸に取付けられたプーリと、両プーリに掛け回されたベルトとからなるものとしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の歯科用印象材の練和装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に記載されている練和装置においては、いずれも、トロコイドポンプ(登録商標)等よりなる第1ポンプと第2ポンプの駆動軸を、それぞれ、第1モータの回転軸と第2モータの回転軸に同軸をなすように直結し、それぞれのモータによりポンプを直接駆動するようにしているため、次のような問題が発生することがある。
【0005】
(1) モータ作動時の熱が、その回転軸に直結されているポンプの駆動軸を介して、ポンプの内部に伝達され、ポンプ内部の温度が上昇することにより、ポンプにより吐出されるペーストの温度が上昇する。このようになると、練和によって生成される印象材の温度も上昇するので、その粘度や硬化時間及び操作余裕時間等が変動するなど、性状の安定した印象材が得られなくなる恐れがある。また、印象材の硬化時間や操作余裕時間が変化すると、印象材を口腔内に最適なタイミングでセットするのが難しくなる。
(2) 歯科用印象材は、アルギン酸塩を主成分とする基材ペーストと、石膏を主成分とする硬化剤ペーストとを練和して生成されるのが一般的であるが、これらのペーストは粘性があって流動性に乏しいため、ポンプに加わる負荷が変動し易い。そのため、ポンプの駆動軸をモータの回転軸に直結してあると、ポンプに加わる負荷変動が、その駆動軸を介して第1、第2モータの回転軸に直接伝達され、それらの回転数が変動することにより、第1、第2ポンプにより吐出される基材ペースト及び硬化剤ペーストが脈動し、両ペーストの吐出量が変動することがある。特に、練和装置を一定期間使用せずに放置すると、ポンプ内に滞留しているペーストの粘度が高まるので、上記のような現象が起こり易い。
このように、両ペーストの吐出量が変動すると、それらの混合比が変動して、生成された印象材の粘性や硬化時間などにばらつきが生じる恐れがある。
また、ポンプに加わる負荷が変動すると、ポンプの駆動軸やモータの回転軸、及びそれらの軸受が摩耗して軸振れを起こし、ポンプやモータの耐久性を低下させる恐れがある。
【0006】
(3) ポンプとモータは、ユニット化されて一体的に設けられているので、ポンプやモータの交換等、メンテナンスが必要となった際には、それらを分離または分解しなければならず、交換や再組立作業が面倒である。
【0007】
(4) ポンプとモータとを同一軸線上に配置しなければならないので、それらの軸線方向の配置スペースが大きくなり、練和装置が大型化する。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、モータの熱がポンプに伝達されるのを防止するとともに、ポンプによるペースト吐出時の脈動及び吐出量が変動するのを防止して、性状の安定した印象材が生成されるようにし、また、モータやポンプの耐久性を向上させうるとともに、それらのメンテナンスを容易に行いうるようにし、さらには、装置全体の小型化が図れるようにした、歯科用印象材の練和装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、上記課題は、次の各項のようにして解決される。
(1)駆動軸を回転させることにより、硬化剤ペーストを吸引して吐出する第1ポンプと、この第1ポンプの駆動軸を駆動する回転軸を有する第1モータと、
駆動軸を回転させることにより、基材ペーストを吸引して吐出する第2ポンプと、この第2ポンプの駆動軸を駆動する回転軸を有する第2モータと、前記硬化剤ペーストと基材ペーストとを混練する撹拌部と、前記第1及び第2ポンプより吐出されたぺーストを前記撹拌部に送給するペースト送給手段とを備える歯科用印象材の練和装置において、
前記第1ポンプの駆動軸と第1モータの回転軸、及び前記第2ポンプの駆動軸と第2モータの回転軸を互いに
離間させてあり、それらの駆動軸と回転軸と
が連係手段により
連係されており、前記ペースト送給手段を、内部にペースト送給路を有する金属製の配管ブロックとしたことを特徴とする歯科用印象材の練和装置とする。
【0010】
このような構成とすると、第1ポンプの駆動軸と第1モータの回転軸、及び第2ポンプの駆動軸と第2モータの回転軸を互いに離間させて配設し、それらの駆動軸と回転軸とを連係手段により連係したことにより、第1、第2モータを作動させた際の熱が、それらの回転軸及び第1、第2ポンプの駆動軸を介して、ポンプ内部に伝達されるのが防止されるか、極めて小さくなるので、両ポンプにより吐出される硬化剤ペーストと基材ペーストの温度及び練和によって生成される印象材の温度上昇が抑えられ、性状の安定した印象材が生成される。その結果、印象材の硬化時間や口腔内にセットするまでの操作余裕時間が変動したりする恐れがなくなる。
また、 ペースト吐出時に、ポンプに負荷変動が生じたとしても、それが、両ポンプの駆動軸を介して直接両モータの回転軸に伝達されることがなくなるので、モータの回転数が変動して、両ポンプにより吐出される硬化剤ペーストと基材ペーストが脈動するということもなくなる。従って、硬化剤ペーストと基材ペーストとの吐出量にばらつきが生じて、それらの混合比が変化するという恐れがなくなるとともに、負荷変動が発生しても、ポンプの駆動軸やモータの回転軸が軸振れする恐れはなく、ポンプ及びモータの耐久性を向上させることができる。
さらに、 第1ポンプと第1モータ及び第2ポンプと第2モータを、それぞれ同一軸線上に配置しなくてもよいので、それらの軸方向の配置スペースが小さくなり、練和装置の小型化が図れる。
第1、第2ポンプの駆動軸と、第1、第2モータの回転軸とを離間させてあるので、それらの交換やメンテナンス作業等を容易に行うことができる。
【0011】
また、
ペースト送給手段を、内部にペースト送給路を有する金属製の配管ブロックとしたことにより、両ポンプから撹拌部に送給されるペーストの放熱効果が大となるので、ペーストの温度上昇を抑えることができる。
その結果、生成される印象材の温度上昇がさらに効果的に抑えられるので、より性状の安定した印象材を生成することができる。
【0012】
(2)上記(1)項において、第1ポンプと第1モータ及び第2ポンプと第2モータと
が、それぞれ平面視において互いに前後に並列をなすように
配置されているとともに、第1、第2ポンプ及び第1、第2モータ
が、それぞれ左右方向の軸線上に並ぶようにして、左右対称的に
配置されているものとする。
【0013】
このような構成とすると、第1、第2ポンプと第1、第2モータの配置スペースがさらに小さくなるので、練和装置もさらに小型化する。
【0014】
(3)上記(1)または(2)項において、 第1、第2ポンプの駆動軸と第1、第2モータの回転軸とを、外側方に
突出させてあり、それらの駆動軸と回転軸と
が連係手段により
連係されているものとする。
【0015】
このような構成とすると、連係手段の着脱作業やメンテナンス作業等を、練和装置の外側方より容易に行うことができる。
【0016】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、連係手段を、駆動軸及び回転軸に取付けられたプーリと、両プーリに掛け回されたベルトとからなるものとする。
【0017】
このような構成とすると、モータの熱がポンプに伝わりにくくなるので、性状のより安定した印象材が生成される。また、ペースト吐出時のポンプの負荷変動やモータの作動音がベルトにより吸収されるので、練和装置の低騒音化が図れる。
【0018】
(5)上記(4)項において、プーリ及びベルトを、歯付きのものとする。
【0019】
このような構成とすると、プーリとベルトとのスリップが防止されるので、モータの駆動力をポンプに確実に伝達することができる。
【0020】
(6)上記(1)項において、配管ブロックをステンレス鋼により形成する。
【0021】
このような構成とすると、配管ブロックの耐食性、耐酸化性が向上するので、その交換やメンテナンスが不要となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1、第2モータを作動させた際の熱が、それらの回転軸及び第1、第2ポンプの駆動軸を介して、ポンプ内部に伝達されるのが防止されるか、極めて小さくなる
とともに、ペースト送給手段を、内部にペースト送給路を有する金属製の配管ブロックとしたことにより、両ポンプから撹拌部に送給されるペーストの放熱効果が大となるため、両ポンプにより吐出される硬化剤ペーストと基材ペーストの温度及び練和によって生成される印象材の温度上昇が抑えられ、性状の安定した印象材が生成される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1〜
図4に示すように、本発明の歯科用印象材の練和装置は、上面が前上向きに傾斜する側面視概ね三角形をなす基台1と、この基台1の上面の中央部に、斜め後上方を向くように傾斜させて立設され、硬化剤ペーストを封入した硬化剤パック2と、基材ペーストを封入した基材パック3とが前面に装着されるパック装着部4とを備え、基台1の上面を除いた外周面は、着脱可能なカバー5により覆われている。
【0025】
図2の正面図、
図3の側面図(パックとカバーは図示略)、及び
図4の模式図に示すように、前面が開口する基台1の内部には、硬化剤ペースト吐出用の第1ポンプ6と、この第1ポンプ6を駆動する第1モータ7と、基材ペースト吐出用の第2ポンプ8と、この第2ポンプ8を駆動する第2モータ9と、第1及び第2ポンプ6、8により送給された基材ペーストと硬化剤ペーストとを混練する撹拌部10と、この撹拌部10内に収容された羽根付き撹拌棒(図示略)を駆動する撹拌モータ11とが設けられている。
【0026】
第1ポンプ6と第2ポンプ8は、例えばトロコイドポンプ(登録商標)等のギヤポンプよりなり、両ポンプ6、8は、基台1における左右の側板1a、1aの内側面の前上部に、互いに左右方向の軸線上に並ぶように、かつ撹拌部10を挟んで対向するようにして取付けられている。両ポンプ6、8におけるインナーロータ(図示略)の左右方向を向く駆動軸12は、側板1aを貫通して外側方に突出し、両駆動軸12の軸端部には、歯付きの従動プーリ13、13が取り付けられている。
【0027】
第1ポンプ6と第2ポンプ8に形成されている吸入孔14、14(
図4参照)は、基台1の上面の前部に取付けられた、硬化剤パック2と基材パック3の下端の注出口15、15(
図1参照)が差し込まれるペースト注入管16、16の下端にそれぞれ接続されている。
【0028】
第1、第2ポンプ6、8と撹拌部10との対向面には、耐食性、耐酸化性に優れるとともに、比較的熱伝導性のよいステンレス鋼等により形成された金属製の配管ブロック17、17が取付けられ、両配管ブロック17の内部に形成された左右方向のペースト送給路18、18の一端は、第1、第2ポンプ6、8の吐出孔19、19に、同じく他端は、撹拌部10内の撹拌室20に連通している(
図4参照)。このような金属製の配管ブロック17を使用すると、その表面積が大となるので、内部のペースト送給路18を流通するペーストの放熱性がよくなる。
なお、配管ブロック17に代えて、ステンレス鋼等の金属パイプよりなるペースト送給管を使用することもできる。また、このような配管ブロック17やペースト送給管の外周面に、放熱性を高めるための放熱フィンを突設してもよい。
【0029】
第1モータ7と第2モータ9は、左右の側板1a、1aにおける後下部の内側面に、第1、第2ポンプ6、8に対して平面視において前後に並列をなすように、かつ互いに左右方向の軸線上に並ぶようにして、左右対称的に取り付けられている。第1、第2モータ7、9における左右方向を向く回転軸21は、第1、第2ポンプ6、8の駆動軸12の後下方に離間するとともに、側板1aを貫通して外側方に突出し、両回転軸21の軸端部には、歯付きの駆動プーリ22、22が、第1、第2ポンプ6、8の従動プーリ13と対向するようにして取り付けられている。なお、第1、第2モータ7、9は、従動プーリ13と駆動プーリ22への後記するベルト23の掛け回しや脱着を容易とするために、第1、第2ポンプ6、8側に向かって移動させうるように、側板1aに取り付けられている。
【0030】
第1、第2ポンプ6、8の従動プーリ13、13と第1、第2モータ7、9の駆動プーリ22、22には、歯付きのベルト23、23が掛け回され、第1、第2ポンプ6、8と第1、第2モータ7、9とは、ベルト23、23を介して間接的に連係されている。なお、このような歯付きのプーリ13、22及びベルト23を使用すると、摩擦音が小さくて低騒音となるとともに、プーリとベルトとのスリップが防止されて、モータ7、9の駆動力をポンプ6、8に確実に伝達しうる利点があるが、歯付きのベルト23の代わりに、通常のVベルトを使用することもできる。この際には、Vベルトとプーリとのスリップを防止するために、ベルトテンショナーを使用するのがよい。
【0031】
上記実施形態の練和装置により歯科用印象材を生成するには、まず、パック装着部4の前面に設けられた左右2個ずつの上部ホルダ24と下部ホルダ25とにより、硬化剤パック2と基材パック3とのそれぞれの上下の端部を保持してセットしたのち、各パック2、3の下端の注出口15を、基台1の上面前部に取付けたペースト注入管16、16に差し込む。
【0032】
ついで、図示しない起動スイッチを操作して練和装置の作動を開始させると、第1モータ7第2モータ9が作動するとともに、両モータ7、9にベルト23、23を介して連結されている第1ポンプ6と第2ポンプ8が同時に作動させられる。すると、硬化剤パック2と基材パック3とに封入された硬化剤ペーストと基材ペーストとが、それぞれ、第1ポンプ6と第2ポンプ8により吸引されるとともに、左右の配管ブロック19、19におけるペースト送給路18、18に吐出され、撹拌部10の撹拌室20に送給されて合流する。なお、硬化剤ペーストと基材ペーストの送給量、すなわちそれらの混合比は、第1モータ7と第2モータ9の回転数または作動時間を制御手段をもって電気的に制御することにより、予め適宜に設定されている。
【0033】
撹拌部10に送給された硬化剤ペーストと基材ペーストは、撹拌室20内において羽根付き撹拌棒を撹拌モータ11により回転させることにより混練される。この混練によって生成された印象材は、下方に押し出されて、撹拌部10の下部の吐出ノズル10aより吐出し、歯科用印象材として使用に供される。
【0034】
なお、上述した実施形態では、第1、第2ポンプ6、8と第1、第2モータ7、9とを連係する連係手段を、両ポンプ6、8の駆動軸12に取付けた従動プーリ13と、両モータ7、9の回転軸21に取付けた駆動プーリ22と、これら両プーリ13、22に掛け回したベルト23とからなるものとしたが、
図5及び
図6に略示する連係手段を使用することもできる。
すなわち、
図5に示す連係手段は、外側方に突出するポンプの駆動軸12に取付けた従動ギヤ26と、この従動ギヤ26と噛合するようにして、側板1aの外側面に枢着された第1中間ギヤ27と、同じく側板1aの外側面に枢着された、第1中間ギヤ27と噛合する第2中間ギヤ28と、この第2中間ギヤ28の外側面に同軸をなして固着された従動プーリ29と、モータの回転軸21に取付けた駆動プーリ30と、従動プーリ29と駆動プーリ30とに掛け回されたベルト31とからなり、両モータ7、9の駆動力が、ベルト31、第1、第2中間ギヤ27、28を介して、従動ギヤ26に伝達されて、第1、第2ポンプ6、8が駆動されるようにしてある。なお、両プーリ29、30とベルト31は、上記実施形態と同様、歯付きとするのが好ましい。
【0035】
図6に示す連係手段は、ポンプの駆動軸12に取付けた従動ギヤ32と、この従動ギヤ32と噛合するようにして、側板1aの外側面に枢着された第1中間ギヤ33と、同じく側板1aの外側面に枢着され、第1中間ギヤ33に噛合する第2中間ギヤ34と、モータの回転軸21に取付けられ、第2中間ギヤ34と噛合する駆動ギヤ35とからなり、両モータ7、9の駆動力が、駆動ギヤ35、第2、第1中間ギヤ34、33を介して従動ギヤ32に伝達されて、第1、第2ポンプ6、8が駆動されるようにしてある。
【0036】
以上説明したように、上記実施形態の練和装置においては、いずれも、従来直結していた第1、第2ポンプ6、8の駆動軸12と、第1、第2モータ7、9の回転軸21とを離間させ、それらを、ベルト23、または複数の中間ギヤ27、28、33、34等を介して間接的に連係したことにより、次のような作用効果を奏することができる。
【0037】
(1) 第1、第2モータ7、9を作動させた際の熱が、それらの回転軸21及び第1、第2ポンプ6、8の駆動軸12を介して、ポンプの内部に伝達されるのが防止されるか、極めて小さくなる。その結果、両ポンプ6、8により吐出される硬化剤ペーストと基材ペーストの温度及び練和によって生成される印象材の温度上昇が抑えられ、性状の安定した印象材が生成されることにより、印象材の硬化時間や口腔内にセットするまでの操作余裕時間が変動したりする恐れがなくなる。
【0038】
(2) ペースト吐出時に、ポンプに負荷変動が生じたとしても、それが、両ポンプ6、8の駆動軸12を介して直接両モータ7、9の回転軸21に伝達されることがなくなるので、モータの回転数が変動して、両ポンプ6、8により吐出される硬化剤ペーストと基材ペーストが脈動するということもなくなる。従って、硬化剤ペーストと基材ペーストとの吐出量にばらつきが生じて、それらの混合比が変化したり、生成された印象材の性状が変化したりする恐れがなくなる。
また、第1、第2ポンプ6、8の駆動軸12と、第1、第2モータ7、9の回転軸21とを離間させてあるので、ポンプに負荷変動が発生しても、駆動軸12や回転軸21が軸振れする恐れは小さく、両ポンプ6、8及びモータ7、9の耐久性が向上する。
【0039】
(3) 第1ポンプ6と第1モータ7及び第2ポンプ8と第2モータ9を、それぞれ同一軸線上に配置しなくてもよいので、それらの軸方向の寸法、すなわち左右方向の配置スペースが小さくなり、練和装置の左右寸法も小さくなることにより、その小型化が図れる。特に、上記実施形態では、第1ポンプ6と第1モータ7及び第2ポンプ8と第2モータ9を、それぞれ並列をなすように配置してあるので、練和装置の左右寸法はさらに小さくなる。
【0040】
(4) 第1、第2ポンプ6、8の駆動軸12と、第1、第2モータ7、9の回転軸21とを離間させ、ベルト23により間接的に連係すると、ペースト吐出時のポンプ6、8の負荷変動やモータ7、9の作動音がベルト23により吸収されるので、練和装置の低騒音化が図れるとともに、ポンプ6、8、モータ7、9及びベルト23の交換作業やメンテナンス作業等を容易に行うことができる。特に、駆動軸12と回転軸21を側板1aの外側方に突出させているので、それらに取付けたプーリ13、22へのベルト23の掛け回しや交換作業等を、カバー5を取外して外側から容易に行うことができる。
【0041】
上記の効果に加えて、上記実施形態においては、第1、第2ポンプ6、8より吐出されるペーストを撹拌部10に送給するのに、内部にペースト送給路18が形成された、比較的熱伝導性のよいステンレス等の金属製の配管ブロック17を使用しているので、一般に軟質合成樹脂製のペースト送給チューブを使用している従来の練和装置に比して、両ポンプ6、8から撹拌部10に送給されるペーストの放熱効果が大となり、その温度上昇を抑えることができる。
その結果、生成される印象材の温度上昇がさらに効果的に抑えられるので、より性状の安定した印象材を生成することができる。
【0042】
また、配管ブロック17を使用すると、軟質合成樹脂製のペースト送給チューブを使用したときのように、印象材の吐出終了時の漏れを防止することができる。すなわち、軟質合成樹脂製のペースト送給チューブを使用すると、ペースト吐出時の圧力によりチューブが膨張し、印象材の吐出終了時にチューブが収縮して、徐々に印象材が押し出されるからである。
【0043】
次に、表1を参照して、本発明の練和装置(
実施例1、2)と、
本発明の構成要件を充足しない練和装置(比較例1〜3)との実験結果について説明する。
【0044】
【表1】
〔実験に使用した硬化剤ペーストと基材ペースト〕
実験には、アルギン酸塩を主成分とし、これに、ケイソウ土と水を添加した基材ペーストと、硫酸カルシウム(石膏)に流動パラフィンを添加した硬化剤ペースト(いずれも株式会社トクヤマデンタル社製の「AP-1」(商品名))を使用した。
【0045】
〔実験に使用した練和装置〕
実施例1は、上記
図1〜
図4に示す練和装置と同じもので、第1、第2ポンプ6、8と第1、第2モータ7、9との連係手段をベルト23とするとともに、両ポンプ6、8から撹拌部10にペーストを送給するのに、金属製の配管ブロック17を使用した練和装置である。
【0046】
実施例2は、第1、第2ポンプ6、8と第1、第2モータ7、9とを、
図5に示す連係手段とするとともに、両ポンプ6、8から撹拌部10にペーストを送給するのに、金属製の配管ブロック17を使用した練和装置である。
【0047】
比較例1は、第1、第2ポンプ6、8と第1、第2モータ7、9との連係手段を、上記
図1〜
図4に示すのと同じベルト23とするとともに、両ポンプ6、8から撹拌部10にペーストを送給するのに、合成樹脂製のペースト送給チューブを使用した練和装置である。
【0048】
比較例2は、第1、第2ポンプ6、8の駆動軸12と、第1、第2モータ7、9の回転軸21とを直結するとともに、両ポンプ6、8から撹拌部10にペーストを送給するのに、合成樹脂製のペースト送給チューブを使用した練和装置である。
【0049】
比較例3は、第1、第2ポンプ6、8の駆動軸12と、第1、第2モータ7、9の回転軸21とを直結するとともに、両ポンプ6、8から撹拌部10にペーストを送給するのに、金属製の配管ブロック17を使用した練和装置である。
【0050】
〔印象材の温度及びゲル化時間の評価方法〕
各練和装置に上記の硬化剤ペーストが封入された硬化剤パック2と、基材ペーストが封入された基材パック3とをセットし、25℃に設定された恒温室内に5時間放置したのち、第1、第2モータ7、9を作動させて、吐出ノズル10aより印象材を10秒間吐出させ、それに温度計を差し込んで印象材の温度を測定した。
【0051】
また、71mm四方のアクリル板の上面に、外径50mm、内径45mm、高さ8mmの円筒を接着して、この円筒内に印象材を吐出し、上面を擦り切った状態とした印象材に、直径6mm、長さ100mmのアクリル棒を挿入し、かつ引き上げる操作を繰り返し行い、印象材の硬化が一様に進んで弾性体となるまでの時間、すなわちアクリル棒に印象材が付着しなくなるまでの時間を計測し、これをゲル化時間とした。
上記の両操作を繰り返し、5回目及び10回目の印象材の温度とゲル化時間を測定し、初回と比較した。
【0052】
表1から明らかなように、第1、第2ポンプ6、8の駆動軸12と、第1、第2モータ7、9の回転軸21とを離間させてなる
実施例1、2の練和装置においては、いずれも、10回の吐出操作を繰り返した際の印象材の温度は、初回の温度とあまり変わらず、温度の上昇が極めて小さいことが分かる。
また、印象材のゲル化時間も
一定であり、性状の安定した印象材が生成されることが分かる。
【0053】
これに対して、第1、第2ポンプ6、8と第1、第2モータ7、9との連係手段を、上記図1〜図4に示すのと同じベルト23とするとともに、両ポンプ6、8から撹拌部10にペーストを送給するのに、合成樹脂製のペースト送給チューブを使用してなる比較例1の練和装置においては、10回の吐出操作を繰り返した際の印象材の温度は、実施例1,2に比較すると多少上昇するとともに、印象材のゲル化時間も多少変化している。
また、第1、第2ポンプ6、8の駆動軸12と、第1、第2モータ7、9の回転軸21とを直結した
比較例2及び比較例3の練和装置においては、いずれも、10回の吐出操作を繰り返した際の印象材の温度が、初回の温度よりも上昇し、かつそれに伴って、ゲル化時間も初回に比較して早くなることが分かる。 これは、第1、第2ポンプ6、8の駆動軸12と、第1、第2モータ7、9の回転軸21とが直結されていると、モータ作動時の熱が、その回転軸とポンプの駆動軸を介してポンプロータに伝達されて、ポンプにより吐出されるペースト及び印象材の温度が上昇するということを裏付けるものである。
印象材の温度が上昇してゲル化時間が早まると、印象材が早く硬化するようになるので、これを口腔内にセットするまでの操作余裕時間が短くなる。