(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0023】
図1に示す部品実装システム10は、二つの一組の第1、第2実装ユニットUA、UBを備えたデュアルレーン方式のものである。第1、第2実装ユニットUA、UB(
図2参照)は、矩形の基台11の上に2本のレーン1、2(第1、第2レーン)ごとに設けられている。以下の説明では、レーン1、2と平行な水平方向をX軸方向、このX軸方向と直交する水平方向をY軸方向、垂直方向をZ軸方向とする。また、X軸方向の一端(
図1(A)の右側)から他端側(
図1(A)の左側)を仮に基板搬送方向とし、Y軸方向の一端側(
図1(A)の下側)を仮に前方とする。
【0024】
各レーン1、2は、第1、第2基板搬送装置12、14によって具体化されている。第1、第2基板搬送装置12、14は、互いに平行な一対のベルト式コンベア12a、14a、12b、14bと、図外の搬送用モータと、搬送用モータの動力を伝達する伝動機構等とを備えている。両コンベア12a、14a、12b、14bを同期させて駆動することにより、第1、第2基板搬送装置12、14は、プリント基板Pの両側辺部を支持しつつ、このプリント基板Pを基板搬送方向に搬送する。また、図略の基板停止装置は、搬送されたプリント基板Pを
図1(A)に示す実装エリアMA、MBに一時停止させる。電子部品の実装作業は、この実装エリアMA、MBで行われる。第1、第2基板搬送装置12、14により搬送されたプリント基板Pを実装エリアMA、MBに停止させるため、両コンベア12a、14a、12b、14bの内側の所定箇所には、上記基板停止装置として図略のストッパが設けられている。このストッパは、両コンベア12a、14a、12b、14b上に突出する状態と両コンベア12a、14a、12b、14bの下方に没入する状態とに変位することができる。また、このストッパは、シリンダ等からなるストッパ駆動部16(
図2参照)により駆動されるようになっている。さらに実装エリアMA、MBには、ストッパにより停止させられたプリント基板Pを第1、第2基板搬送装置12、14から浮かせて保持するためのプッシュアップピン等からなる基板保持装置(図示せず)が配設され、上記ストッパと基板保持装置とで基板位置決め装置が構成されている。
【0025】
基台11は、平面視矩形の構造体である。基台11の中央部には、実装エリアMA、MBが、第1、第2実装ユニットUA、UBごとに設定される。実装エリアMA、MBは、後述する第1、第2部品実装ヘッド30、40が電子部品を実装する領域(範囲)である。また、両実装エリアMA、MBが前後に隣接するY軸方向中央部分には、X軸方向に沿う中心線を軸にして対称に設定される重複エリアOAが設定される。重複エリアOAは、後述する第1、第2部品実装ヘッド30、40が何れも進入可能なエリアである。
【0026】
基台11には、第1、第2実装ユニットUA、UBごとに、対応する第1、第2基板搬送装置12、14の両側方に配置された図略の部品供給部が設けられている。部品供給部は、多数列のテープフィーダを備えている。各テープフィーダは、IC、トランジスタ、コンデンサ等の電子部品を所定間隔おきに収納、保持したテープと、テープを担持したリールと、リールを繰り出すラチェット式の繰出し機構とを備えている。テープは、リールから部品取出し部へ繰り出される。また、繰り出されたテープの部品は、後述する第1、第2部品実装ヘッド30、40の吸着動作により、ピックアップされる。繰り出し機構は、電子部品がピップアップされるにつれて、テープを間欠的に繰り出すようになっている。
【0027】
基台11には、X軸方向に沿って対向する一対の構造体20が設けられている。構造体20は、基台11の四隅に立設される脚部21と、脚部21をY軸方向に沿って繋ぐ梁部22とを備えたゲート型に形成されている。各梁部22の上面には、Y軸レール21aが敷設されている。両Y軸レール21aは、Y軸方向に沿って前後に横架されている。両Y軸レール21aは、第1、第2実装ユニットUA、UBごとに設けられた一対のXビーム23、24の端部をそれぞれガイドしている。Xビーム23、24は、X軸方向に沿って延びている。また、Xビーム23、24は、レーン1、2ごとに1つずつ設けられている。それぞれのXビーム23、24は、スライダ23a、24aを介してY軸レール21aに連結されている。また、一方のXビーム23のスライダ23aには、他方のXビーム24のスライダ24aに対向するダンパ23bが設けられている。ダンパ23bは、両Xビーム23、24が近接したときに、両スライダ23a、24a間に介在し、両Xビーム23、24が当接するのを規制する。
【0028】
第1、第2実装ユニットUA、UBには、対応するXビーム23、24を駆動するY軸サーボモータ25(
図2参照)を備えている。Y軸サーボモータ25(
図2参照)は、各梁部22に1つずつ設けられている。各Y軸サーボモータ25(
図2参照)は、対応するXビーム23、24を前後に往復駆動できるようになっている。
【0029】
各Xビーム23、24が前後に対向する面には、それぞれ図略のX軸レールが設けられている。各X軸レールには、第1、第2実装ユニットUA、UBごとに第1、第2部品実装ヘッド30、40が取り付けられている。また、各Xビーム23、24には、対応する第1、第2部品実装ヘッド30、40をX軸方向に沿って駆動するX軸サーボモータ26(
図2参照)が設けられている。
【0030】
上述したサーボモータ25、26等は、本実施形態において、次に説明する第1、第2部品実装ヘッド30、40を駆動する駆動機構を構成している。この駆動機構により、第1、第2部品実装ヘッド30、40は、X軸方向、Y軸方向に沿って基台11の略中央部分に設定される平面上を移動し、図略の部品供給部から電子部品をピックアップして上記実装エリアMA、MBにあるプリント基板Pに装着することができるようになっている。
【0031】
第1、第2部品実装ヘッド30、40には、1又は複数の吸着ノズル31、41が昇降及び回転可能に設けられる。また、
図2に示すように、第1、第2部品実装ヘッド30、40には、吸着ノズル31、41を昇降させるZ軸サーボモータ27及び吸着ノズル31、41を回転させるR軸サーボモータ28がそれぞれ装備されている。第1、第2部品実装ヘッド30、40は、部品供給部から電子部品をピックアップし、ピックアップした電子部品を対応する実装エリアMA、MBにてプリント基板Pに実装する。このとき、第1、第2部品実装ヘッド30、40は、複数の電子部品を一度にピックアップする。ピックアップされた複数の電子部品は、一緒に搬送され、順次、プリント基板Pに実装される。このピックアップから実装までを実装ターンという。一回の実装ターンでは、複数の電子部品がピックアップされ、実装される。本明細書では、電子部品ごとの処理単位をタスクという。
【0032】
次に、プリント基板Pが実装エリアMA、MBに停止したときにそのプリント基板Pの特定部位を上方から撮像する定置式撮像手段として、第1基板カメラ61(第1のカメラ)及び第2基板カメラ62(第2のカメラ)が、第1、第2実装ユニットUA、UBごとに基台11の定位置から吊り下げられている。第1基板カメラ61は、プリント基板Pが実装エリアMAに停止したときにその下流コーナー部を撮像し得る位置に、また、第2基板カメラ62は、プリント基板Pが実装エリアMAに停止したときにその一側辺の中間部を撮像し得る位置に、それぞれ配置されている。
【0033】
第1、第2実装ユニットUA、UBには、それぞれ基台11上に部品認識用のカメラ63が装備されている。カメラ63は、第1、第2部品実装ヘッド30、40による部品実装後に当該吸着部品を撮像する。このカメラ63の撮像した画像に基づいて、部品実装システム10は、部品実装位置のずれ等が調べられるようになっている。
【0034】
また、第1、第2部品実装ヘッド30、40には、それぞれプリント基板Pに付されているフィデューシャルマーク(基板認識用のマーク)を撮像する移動カメラ64が装備されている。移動カメラ64は、対応する第1、第2部品実装ヘッド30、40の側部で下向きに配置されたCCD等で構成されており、第1、第2部品実装ヘッド30、40と一体に移動するようになっている。
【0035】
なお、周知の実装機と同様に、両第1、第2実装ユニットUA、UBには、各部の所要パラメータを検出するセンサ類(
図2に包括的にSNと表記)が設けられている。
【0036】
次に、両第1、第2実装ユニットUA、UBを統括的に制御する制御ユニット100について説明する。
【0037】
図2を参照して、制御ユニット100は、CPU等で構成され、外部の表示ユニット110と接続される演算処理部101と、基板搬送、部品搭載等のための各種データを記憶するデータ記憶手段102と、搭載プログラムを記憶する搭載プログラム記憶手段103と、各モータを制御するモータ制御部104と、外部入出力部105と、サーバ通信部106、画像処理部107とを有している。
【0038】
演算処理部101は、電子部品をプリント基板Pに搭載するために必要な搭載プログラムを実行するための演算処理を司るものである。
【0039】
データ記憶手段102は、搭載プログラムを実行するために必要なデータや、データの集合体(テーブルという)等を記憶するものである。
【0040】
搭載プログラム記憶手段103は、演算処理部101が実行する搭載プログラムを記憶するものである。
【0041】
モータ制御部104は、各モータ25〜28に設けられたエンコーダからの信号と演算処理部101から与えられる目標値とに基づいて、モータ25〜28を制御するものである。
【0042】
外部入出力部105には、入力要素としてプリント基板Pの搬入、搬出を検出するセンサ等の各種センサ類SNが接続される一方、出力要素としてストッパ駆動部16が接続されている。なお、このほかに、図外の搬送用駆動機構やコンベア間隔調整用駆動機構等も外部入出力部105に接続されている。
【0043】
サーバ通信部106は、複数の部品実装システム10を制御するサーバとの通信やデータの更新等を実行するものである。
【0044】
画像処理部107は、第1基板カメラ61、第2基板カメラ62、部品カメラ63、及び移動カメラ64と接続され、これらのカメラ61〜64からの画像を示す信号を取込んで、所定の画像処理を施し、その画像データを演算処理部101に送るものである。
【0045】
表示ユニット110は、ディスプレイや、キーボード等のポインティングディバイスを備えており、第1、第2実装ユニットUA、UBのプログラムの実行状況や、或いは、表示された情報に基づき、オペレータが制御ユニット100に対して各種データや指令などの情報を入力するために操作することのできる機能を備えている。
【0046】
次に、
図3を参照して、データ記憶手段102に記憶されているデータの詳細について説明する。
【0047】
図3を参照して、データ記憶手段102には、記憶領域としてのデータベース120が記憶されている。このデータベース120のデータは、データベースマネジメントシステム(DBMS)によって、制御ユニット100の制御に供されるようになっている。
【0048】
データベース120は、種々のデータを保存している。以下、これらのデータについて、ER表記に基づき、説明する。データベース120は、第1、第2部品実装ヘッド30、40に関する情報を記憶する部品実装ヘッドテーブル121と、プリント基板Pに関する情報を記憶する基板テーブル122と、レーン1に搬送されるプリント基板Pとレーン2に搬送されるプリント基板Pの組み合わせ(以下、「レーンセット」という)に関する情報を管理するレーンセットテーブル123と、レーンセットテーブル123に設定されたレーンセットごとに実装シーケンスを管理するためのシーケンスセットテーブル124と、シーケンスセットごとに設定されるタスクに関する情報を管理するためのタスクテーブル125とを含んでいる。テーブル121〜125は、一般にアトリビュートと呼称される列(以下、アトリビュートは{}でくくって示す)と、タプルと呼称される行(以下、タプルの値は「」でくくって示す)とで構成されるマトリックス状に論理的に構成される。アトリビュートとは、テーブル121〜125に設定される項目(例えば、{ヘッド番号}{基板品番}{重複エリア}等)のことをいう(
図5(A)(B)参照)。また、タプルとは、行ごとの情報(インスタンス)の集まりのことをいう。また、図において、(PK)は主キーを、(FK)は外部キーを、それぞれ表わしている。主キーは、テーブル121〜125内において、行を一意に識別する属性である。外部キーは、主キーと同じ値を持つことによって、当該主キーを有するテーブルのデータを参照するためのものである。さらに、図中の矢印は、テーブル間の関係(リレーションシップ)を表わしており、矢印の終点側のテーブルにある外部キーが矢印の起点側のテーブルにある主キーを参照していることを示している。
【0049】
部品実装ヘッドテーブル121は、第1、第2部品実装ヘッド30、40に関する情報を保存するテーブルである。この部品実装ヘッドテーブル121は、主キーとして、第1、第2部品実装ヘッド30、40を一意に識別する{ヘッド番号}を備えている。{ヘッド番号}には、第1、第2部品実装ヘッド30、40の型番(例えば、
図5(A)に示す「HD001」「HD002」等)が登録されている。部品実装ヘッドテーブル121は、その型番ごとに第1、第2部品実装ヘッド30、40の制御に必要な種々のパラメータを記憶する項目が設定されている。
【0050】
基板テーブル122は、プリント基板Pに関する情報を保存するテーブルである。基板テーブル122は、主キーとして、プリント基板Pを一意に識別する{基板品番}を備えている。{基板品番}には、プリント基板Pの品番(例えば
図4、
図5(A)(B)に示す「BD00123」「BD00456」等)が登録されている。基板テーブル122には、その品番ごとに電子部品の実装に必要な基板に関する情報を記憶する項目(図示の例では、{幅、長さ}等)が設定されている。また、基板テーブル122には、{
再実装タイプ識別子}という項目が設定されている。{
再実装タイプ識別子}は、実装処理に失敗した場合に、再実装するときの方式の別を識別する情報を保存するための項目である。再実装の方式については、後述する。
【0051】
次に、レーンセットテーブル123は、レーンセットに関する情報を保存するテーブルである。後述するように、本実施形態では、タスクという単位で実装順序を管理する。タスクとは、第1、第2部品実装ヘッド30、40が電子部品をピックアップしてから対応するレーン上のプリント基板Pにピックアップされた電子部品を実装するまでの動作を一単位とする第1、第2部品実装ヘッド30、40の作業をいう。本実施形態におけるタスクは、第1部品実装ヘッド30と第2部品実装ヘッド40の両方にわたって、一意の番号で管理される。そのため、本実施形態では、レーンセットごとにタスクを管理することとしている。このレーンセットに関する情報を保存するため、レーンセットテーブル123を設けているのである。
【0052】
レーンセットテーブル123は、{レーン1ヘッド番号、レーン2ヘッド番号、レーン1基板品番、レーン2基板品番、重複エリア}等を含んでいる。{レーン1ヘッド番号}には、レーン1に設定される第1部品実装ヘッド30のヘッド番号が保存される。また、レーン2ヘッド番号には、レーン2に設定される第2部品実装ヘッド40のヘッド番号が保存される。さらに、レーン1基板品番には、レーン1に搬送されるプリント基板Pの基板品番が保存される。また、レーン2基板品番には、レーン2に搬送されるプリント基板Pの基板品番が保存される。このテーブル構成から明らかなように、本実施形態において、レーンセットテーブル123には、種々のレーンセットを登録して、レーンセットごとに制御パラメータを設定することができる。
【0053】
図4は、レーンセットの一例を示している。同図のレーン1には、基板品番が「BD00123」のプリント基板Pが設定され、
レーン2には、基板品番が「BD00456」のプリント基板Pが設定されている。タスクは、プリント基板Pの外側に表記された白丸から最初の黒丸までの経路、または、プリント基板Pの外側に表記された黒丸から次の黒丸までの経路を一単位として表記されている。上記白丸は、運転状況を判定するときのタスクごとのタイミング(後述する
図7のステップS41を判定するときのタイミング)を示している。図示の例では、プリント基板Pごとに4個のタスクが設定されている。無論、これは、説明の便宜上、単純化された数値であり、実際には、二桁以上の数のタスクが設定される。そして、レーン1には、ヘッド番号が「HD001」の第1部品実装ヘッド30が設定される。また、レーン2には、ヘッド番号が「HD002」の第2部品実装ヘッド40が設定される。このように、{レーン1基板品番、レーン2基板品番}で決定されるレーンセットごとに、第1、第2部品実装ヘッド30、40の別を特定することが可能となる。
【0054】
次に、レーンセットテーブル123の{重複エリア}は、第1、第2部品実装ヘッド30、40が何れも進入可能な重複エリアOAを保存する項目である。図では簡略化されているが、実際は、複数の項目を設定し、重複エリアAの始点座標(X,Y)と、終点座標(X,Y)をそれぞれ二次元座標で登録することができるようになっている。なお、後述する{干渉エリア}も同様である。
【0055】
図1(A)に示したように、第1、第2部品実装ヘッド30、40が移動することのできる実装エリアMA、MBには、重複エリアOAが設定されている。この重複エリアOAでは、第1、第2部品実装ヘッド30、40が衝突することを避ける必要がある。一方、第1、第2部品実装ヘッド30、40が重複エリアOAに移動する必要性は、電子部品が実装されるプリント基板Pの種類によって異なる。従って、本実施形態に係るレーンセットテーブル123では、レーン1で電子部品が実装されるプリント基板Pの情報と、レーン2で電子部品が実装されるプリント基板Pの情報とをそれぞれ基板テーブル122から参照し、両プリント基板Pの組み合わせ、すなわち、レーンセットに応じて、実装シーケンスを設定できるように構成されている。この{重複エリア}をレーンセットテーブル123に設けることにより、レーンセットに応じて、個別に重複エリアOAの範囲を設定することができる。{重複エリア}に記憶される値の設定方法としては、所定のデフォルト値を重複エリアOAの範囲として決定しておき、全てのプリント基板Pの組み合わせについて、共通のデフォルト値を{重複エリア}に保存するようにしてもよい。
【0056】
次に、シーケンスセットテーブル124は、レーンセットごとに設定されるシーケンス番号と、このシーケンス番号に設定されるセット番号とを保存するテーブルである。ここで、シーケンス番号とは、一回の実装ターンを一単位として決定された処理順序である。シーケンス番号は、レーンセットごとに、通常は、複数設定される。シーケンス番号は、レーン1のプリント基板Pと、レーン2のプリント基板Pを1つのプリント基板として、全体の実装ターンの順番を早い順にナンバリングした値に設定されている。
【0057】
図4を参照して、シーケンス番号は、丸付の数字で示すように、1番から8番まで連番で設定される。
図4に示す例では、第1部品実装ヘッド30が実行するタスクには、偶数番号のシーケンス番号が割り当てられている。また、第2部品実装ヘッド40が実行するタスクには、奇数番号のシーケンス番号が割り当てられている。本実施形態では、シーケンスセットテーブル124の主キーとして{現レーン1基板品番、現レーン2基板品番、現シーケンス番号}を設定している。この主キーの一部である{現シーケンス番号}には、レーンセットごとに設定されるシーケンス番号の値が全て保存される。
【0058】
次に、セット番号は、シーケンス番号に関連づけられるシーケンス番号のことをいう。セット番号は、関連先のシーケンス番号に係るタスクが第1部品実装ヘッド30と第2部品実装ヘッド40の何れか一方によって実行されているときに、他方の部品実装ヘッドが、重複エリアOAで一方の部品実装ヘッドと干渉することなく、並行して実行可能なタスクに係るシーケンス番号に設定されている。シーケンス番号ごとにセット番号を設定するために、シーケンスセットテーブル124には、{次レーン1基板品番、次レーン2基板品番、次シーケンス番号、干渉エリア}が設けられている。{次シーケンス番号}に保存されたシーケンス番号は、{現シーケンス番号}に保存されたシーケンス番号に対し、1対1の関係で関連づけられている。この{次シーケンス番号}に設定されたシーケンス番号が本実施例において、セット番号の一例になる。
【0059】
図5(A)を参照して、図示の例では、レーン2の第2部品実装ヘッド40が実行するタスクとして{現シーケンス番号}に設定されている1番のシーケンス番号に対し、レーン1の第1部品実装ヘッド30が実行する2番のシーケンス番号が{次シーケンス番号}に保存され、関連づけられている。このことは、1番のシーケンス番号に係るタスクをレーン2の第2部品実装ヘッド40が実行しているときに、2番のシーケンス番号に係るタスクをレーン1の第1部品実装ヘッド30が実行しても、重複エリアOAで干渉することなく、両部品実装ヘッド30、40が並行してタスクを実行することができることを示している。従って、図示の例では、1番のシーケンス番号に係るタスクの実行中に、2番のシーケンス番号に係るタスクを並行して実行してもよい、と設定されていることになる。以下、同様に、{現シーケンス番号}に保存されている2番、3番、4番、5番、6番、7番、8番のシーケンス番号に対し、それぞれ3番、4番、5番、6番、7番、8番、1番のシーケンス番号が{次シーケンス番号}に保存されている。これら{次シーケンス番号}に保存されたシーケンス番号が、対応する{現シーケンス番号}に保存されているシーケンス番号のセット番号として機能する。なお、{現レーン1基板品番、現レーン2基板品番、現シーケンス番号}は、主キーであり、{現シーケンス番号}は、Nullにはならない。これに対し、{次レーン1基板品番、次レーン2基板品番、次シーケンス番号}は、セット番号を保存するための外部キーであり、Nullの場合がある(図
11参照)。また、シーケンスセットテーブル124の構造から明らかなように、図示の実施形態では、セット番号は、1つのシーケンス番号に対し、1つだけ設定される。
【0060】
次に、
図4を参照して、{干渉エリア}は、現シーケンス番号に係る実装ターンと、次シーケンス番号に係る実装ターンを並行させた場合に、第1部品実装ヘッド30と、第2部品実装ヘッド40とが干渉する干渉エリアAを保存する項目である。干渉エリアAは、後述する重複エリア進入長さに基づいて決定される。なお、{干渉エリア}の値は、当該干渉エリアAが狭くなるように、1つの部品実装ヘッド30(または40)が1つのタスクを終了するたびに再計算して値を更新するようにしてもよい。本実施形態では、干渉エリアAが可及的に短くなるように現シーケンス番号と次シーケンス番号とが決定されている。これにより、第1部品実装ヘッド30と第2部品実装ヘッド40とが並行動作可能なエリアが広くなるので、相対的に干渉を回避するために待機する必要が少なくなる。また、第1部品実装ヘッド30と第2部品実装ヘッド40とを並行動作させる際に、干渉を回避するために待機する必要が生じた場合であっても、先行している部品実装ヘッド40(30)が干渉エリアAに滞在する時間が相対的に短くなるので、その待ち時間を短くすることができる。
【0061】
次に、タスクテーブル125は、シーケンスセットテーブル124に保存されているシーケンス番号を参照する{現レーン1基板品番、現レーン2基板品番、現シーケンス番号}とともに、{タスク番号}を主キーとしている。また、タスクテーブル125は、{部品品番、重複エリア進入長さ}を備えている。タスクテーブル125を設けることにより、
図5(B)に示すように、シーケンス番号に含まれるタスクごとに干渉領域進入長さを設定することが可能となる。
【0062】
{タスク番号}は、シーケンス番号に係る実装ターンの中で処理される電子部品(すなわちタスク)の処理順位を示す番号を保存する項目である。図示の実施形態では、{タスク番号}ごとに実装される電子部品の品番が{部品品番}に保存されるようになっている。
【0063】
次に、{重複エリア進入長さ}は、シーケンス番号ごとに当該シーケンス番号に係るタスクを実行する部品実装ヘッド30(40)が重複エリアOAに進入する長さ(距離)を保存するための項目である。この{重複エリア進入長さ}をタスクごとに設けておくことにより、制御ユニット100は、一方の部品実装ヘッド40(30)の稼働中に他方の部品実装ヘッド30(40)を稼動させた場合、重複エリアOAで両部品実装ヘッド30、40の干渉が生じるか否かをタスクごとに判定することが可能となる。
【0064】
なお、上述した各テーブル121〜125は、論理的な構造を示したものであり、物理的には、同一のデータファイルに複数のテーブルを実装してもよく、或いは、1つのデータテーブルを複数のデータファイルに実装してもよい。また、データ記憶手段102には、
図3に示した各テーブル121〜125とは別に、トランザクションを管理するためのテーブルが設けられる。トランザクション用のテーブルにおいては、タスクごとに処理実績が保存される。従って、制御ユニット100は、トランザクション用のテーブルを参照することにより、あるプリント基板Pにおいて、タスクが処理されたか否かを判別することができるようになっている。以下の説明では、未処理のタスクに係るシーケンス番号を「未実装シーケンス番号」ともいう。
【0065】
次に、上述したレーンセットテーブル123、並びにシーケンスセットテーブル124に保存される値を決定するための処理方法について説明する。
【0066】
図6を参照して、本実施形態においては、レーン1、2に搬入される両方のプリント基板P全体を一枚のプリント基板と見立てて、各プリント基板Pの組み合わせごとに部品の配置を決定する(ステップS1)。次いで、これらプリント基板Pに電子部品を実装する第1、第2部品実装ヘッド30、40の仕様に応じて、ヘッドのタスクごとにグループ化し、グループ化されたタスクごとに実装シーケンスを決定する(ステップS2)。次いで、ステップS2で決定された実装シーケンスに基づいて動作時間の演算(シミュレーション)を実行する(ステップS3)。このシミュレーションでは、次シーケンス番号は、現シーケンス番号に係るタスクが一方の部品実装ヘッド40(30)と他方の部品実装ヘッド40(30)の何れか一方によって実行されているときに、他方の部品実装ヘッド30(40)が並行して実行可能なタスクに係るシーケンス番号となるように設定される。ここで「並行」とは、各部品実装ヘッド30、40が同時に実装ターンを実行していればよく、各実装ターンの実行過程で、一方のタスクが実行されているときに、他方のタスクが待機することを排除するものではない。尤も、全てのタスクが同時に実行可能であることが理想であることはいうまでもない。また、このステップS3のシミュレーションでは、タスクごとの重複エリア進入長さに基づき、干渉エリアAが可及的に短くなるように現シーケンス番号と次シーケンス番号とが決定されている。これにより、可及的に全てのタスクを同時並行で実行することが可能となり、干渉を回避するために待機する必要が少なくなる。また、万一、干渉を回避するために待機する必要が生じた場合であっても、先行している部品実装ヘッド40(30)が干渉エリアAに滞在する時間が相対的に短くなるので、その待ち時間を短くすることができる。その後、シミュレーション結果を検証し、改善の余地がないか否かを判定する(ステップS4)。改善の余地がある場合、ステップS1に戻って上述した処理を繰り返す。そして、この段階で、改善の余地がないと考えられる実装シーケンスが決定されると、タスクごとにシーケンス番号を設定し、設定した値をシーケンスセットテーブル124の{レーン1基板品番、レーン2基板品番、現シーケンス番号}に保存する(ステップS5)。次に、シーケンス番号ごとに、セット番号を設定し、設定されたセット番号に関する値をシーケンスセットテーブル124の{レーン1基板品番、レーン2基板品番、次シーケンス番号}に保存する(ステップS6)。なお、以上の設定処理S1〜S6は、作業者の手作業によるものであるが、所定の引数をパラメータとして自動演算する方法を採用してもよい。
【0067】
次に、本実施形態で部品実装を行う場合の具体例について、
図7及び
図8を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、
図7及び
図8に示す制御に基づいて、第1部品実装ヘッド30を仮に自機とも称し、第2部品実装ヘッド40を相手方ともいう。自機と相手方の関係は、第1部品実装ヘッド30が相手方であり、第2部品実装ヘッド40が自機の場合も全く同様である。
【0068】
まず、
図1、
図3、
図7を参照して、制御ユニット100は、何れかの実装ユニットUAまたはUBの実装エリアMAまたはMBにプリント基板Pが搬入された時点で、シーケンスセットテーブル124等の値を参照し、当該プリント基板Pに実装が必要な部品があるか否かを判定する(ステップS40)。ここで、仮に全ての電子部品の実装が終了している場合には、
図7に示す実装プログラムを終了し、当該プリント基板Pの搬出作業を開始する。
【0069】
一方、ステップS40において、プリント基板Pに実装されるべき電子部品がある(或いは、残っている)場合、制御ユニット100は、例えば、自機(第1部品実装ヘッド30)の実装シーケンスを決定する際に、相手方(第2部品実装ヘッド40)が稼動中であるか否かを判定する(ステップS41)。
【0070】
ステップS41の判定において、相手方(第2部品実装ヘッド40)が稼働中である場合(ステップS41において、YESの場合)、制御ユニット100は、相手方(第2部品実装ヘッド40)のタスクに係るシーケンス番号を現シーケンス番号として取得する(ステップS42)。次いで、制御ユニット100は、シーケンスセットテーブル124から、取得した現シーケンス番号のセット番号(すなわち、{次シーケンス番号}に設定されている値)を検索する(ステップS43)。そして、セット番号が検索されたか否かを判定する(ステップS44)。この判定において、セット番号が検索された場合、制御ユニット100は、自機(第1部品実装ヘッド30)が当該セット番号に対応するタスクを実行しているか否かを判定する(ステップS45)。
【0071】
仮に、セット番号に対応するタスクが未実行である場合、制御ユニット100は、そのセット番号({次シーケンス番号}に設定されているシーケンス番号)に係るタスクを実行する動作、すなわち実装処理に移行する(ステップS50)。
【0072】
具体的には、
図8に示すように、制御ユニット100は、自機(部品実装ヘッド30)に、部品吸着処理を実行させる(ステップS501)。次いで制御ユニット100は、部品認識用のカメラ63によって、部品の吸着位置を認識し(ステップS502)、実装時の位置ずれ補正の処理に認識結果を供する。その後、制御ユニット100は、当該シーケンス番号に係る電子部品の実装回数Ncを取得する(ステップS503)。次いで、制御ユニット100は、カウンタ変数nを1に初期化する(ステップS504)。さらに、制御ユニット100は、n番目のタスク番号の重複エリア進入深さをタスクテーブル125の{重複エリア進入長さ}から読み取る(ステップS505)。その後、制御ユニット100は、当該タスクを実行する際、干渉が発生するか否かを判定する(ステップS506)。この判定方法は、種々の方法が考えられる。例えば、現シーケンス番号に係る干渉エリアAの値をシーケンスセットテーブル124の{干渉エリア}から読み取り、タスクテーブル125の{重複エリア進入長さ}に基づいて、該当する部品実装ヘッド30(40)が干渉エリア内に進入するか否かを判定することにより、実現可能となる。
【0073】
仮に干渉が生じる場合、当該タスクにおいては、相手方の部品実装ヘッド40(30)が現タスクを終了するのを待機する(ステップS507、S508)。上述したように、本実施形態では、タスクごとの重複エリア進入長さに基づき、干渉エリアAが可及的に短くなるように現シーケンス番号と次シーケンス番号とが決定されている。従って、干渉を回避するために待機する必要は、極めて少なくなる。また、干渉を回避するために待機する必要が生じた場合であっても、先行している部品実装ヘッド40(30)が干渉エリアAに滞在する時間が相対的に短くなるので、その待ち時間は、極めて短いものとなる。
【0074】
相手方の部品実装ヘッド40(30)が現タスクを終了した場合(ステップS508において、YESの場合)、或いは、ステップS506において、干渉が生じないと判定した場合、制御ユニット100は、自機(部品実装ヘッド30)は、その後、部品実装処理に移行する(ステップS509)。
【0075】
次いで、制御ユニット100は、カウンタ変数nをインクリメントする(ステップS510)。その後、制御ユニット100は、カウンタ変数nと実装回数Ncとを比較し、インクリメントされたカウンタ変数nに係るタスク番号の電子部品が残っているか否かを判定する(ステップS511)。仮に、未処理のタスク番号に係る電子部品が残っている場合(Nc≧nの場合)、制御ユニット100は、ステップS505に移行し、上述した処理を繰り返す。また、未処理の電子部品がない場合(Nc<nの場合)、制御ユニット100は、メインルーチンに復帰する。
【0076】
図7を参照して、ステップS50の実装処理サブルーチンを実行した後、制御ユニット100は、実装処理の良否、すなわち、再実装の要否を判定する(ステップS60)。そして、実装処理が良好であった場合、すなわち、再実装が不要であると判断された場合には、ステップS40に移行し、上述した処理を繰り返す。一方、実装処理が不適であった場合、制御ユニット100は、再実装処理を実行する(ステップS70)。詳しくは後述するように、再実装処理には、逐次処理タイプ(
図13参照)と一括処理タイプ(
図14参照)の二つがある。逐次処理タイプと一括処理タイプとは、本実施形態では、基板テーブル122の{
再実装タイプ識別子}の設定値に基づいて識別される。制御ユニット100は、基板テーブル122の{
再実装タイプ識別子}の設定値に基づき、基板ごとに予め設定された処理タイプで再実装処理を実行する。
【0077】
ステップS70の再実装処理が終了した場合、制御ユニット100は、ステップS40に移行し、上述した処理を繰り返す。
【0078】
また、ステップS41の判定において、相手方(第2部品実装ヘッド40)が稼動していなかった場合(ステップS41において、NOの場合)、ステップS44の判定において、セット番号が設定されていなかった場合(ステップS44において、NOの場合)、或いは、ステップS45の判定において、検索されたセット番号に係るタスクが実行済であった場合、制御ユニット100は、自機(部品実装ヘッド30)の未実行のタスクに係るシーケンス番号(「未実装シーケンス番号」)のうち、最も番号が若いシーケンス番号を候補となる未実装シーケンス番号として選択する(ステップS46)。次いで、制御ユニット100は、選択した未実装シーケンス番号に基づき、上述した
図8の実装処理サブルーチンS50を実行する。これにより、未実装シーケンス番号が存在する場合には、例えば昇順(ステップS46の処理は、降順であってもよい)に並行処理の可否を判定し、並行処理が可能なタスクについては、セット番号の設定に拘わらず、並行処理を実現し、全体のタクトタイムを向上させることが可能となる。
【0079】
図9は、
図4及び
図5(A)(B)に示したレーンセットで
図7及び
図8のフローチャートに基づく並行処理を実行した場合の実行処理を示している。同図に示すように、最初に1番のシーケンス番号に係るタスクがレーン2で実行される。このタスクと並行して、レーン2のシーケンス番号のセット番号である2番のシーケンス番号に係るタスクが、レーン1で実行される。そして、順繰りに、レーン2では、シーケンス番号が3番、5番、7番のシーケンス番号に係るタスクが順次、実行される。これらのタスクと並行して、レーン1では、シーケンス番号が4番、6番、8番に係るタスクが順次、実行される。
【0080】
ところで、レーン1のプリント基板Pに必要なタスク数は、レーン2のプリント基板Pに必要なタスク数と必ずしも同じではない。
【0081】
図10を参照して、図示の例では、レーン1でのタスク数が4個であるのに対し、レーン2でのタスク数は、6個になっている。そのため、
図11に示すように、シーケンス番号が9番と11番のものについては、セット番号となる次シーケンス番号が欠番(Null)になっている。
図10のような態様において、
図7及び
図8のフローチャートを実行した場合、
図12に示すように、レーン1において、最初のプリント基板Pの8番のシーケンス番号に係るタスクが実行された後、次のプリント基板Pにおいては、2番のシーケンス番号に係るタスクを実行することになる。このとき、レーン2において、まだ、1枚目のプリント基板Pの9番のシーケンス番号に係るタスクが実行されている場合であっても、レーン1では、この最初のプリント基板Pが終了するまで、待機するのではなく、
図7のステップS46の処理に基づいて、並行処理可能なシーケンス番号に係るタスクを選択し、可能な限り、並行処理を実行するようにしている。例えば、
図12の例では、9番のシーケンス番号に係るタスクと並行して、2枚目のプリント基板Pの2番のシーケンス番号に係るタスクが並行して実行される。同様に、11番のシーケンス番号に係るタスクと並行して、2枚目のプリント基板Pの4番のシーケンス番号に係るタスクが並行して実行される。一方、レーン2において、1枚目のプリント基板Pの処理が終了し、2枚目のプリント基板Pの処理を開始する際には、レーン1での実装処理に対し、好適な組み合わせのシーケンス番号が選択される。すなわち、
図12の例では、4番のシーケンス番号に係るタスクが実行されているので、最初に実行されるタスクのシーケンス番号は、1番ではなく、5番となる。以下のシーケンス番号の選択においても、未実装シーケンス番号に係るセット番号がある場合には、当該セット番号に係るシーケンス番号のタスクが実行され、未実装シーケンス番号に係るセット番号がない場合には、組み合わせ可能なシーケンス番号に係るタスクが実行される。このように本実施形態では、
図12に示したように、タスクごとに干渉を回避しつつ、レーン1とレーン2の部品実装作業を並行処理することができる。
【0082】
さらに、現実的な問題として、再実装処理(
図7のステップS60)が発生した場合の問題がある。既に言及したように、再実装処理には、逐次処理タイプと一括処理タイプの二つがある。
【0083】
図13を参照して、逐次処理タイプとは、実装不良が発生した場合、当該実装不良が発生したタスクの終了後、直ちに再実装を実行する方式である。
【0084】
また、
図14を参照して、一括処理タイプとは、実装不良が発生した場合、全てのタスクが終了してから、実装不良に係る電子部品についてまとめて再実装を実行する方式である。
【0085】
図13の逐次処理タイプでは、再実装を待機してからレーン1とレーン2の実装シーケンスを維持した方がシーケンス番号とセット番号の関係を維持し、効率化を図る上で合理的である。そこで、図示の実施形態では、
図7のステップS42を実行する際、逐次処理タイプにおいては、相手方(第2部品実装ヘッド40)が再実装を実行中の場合であっても、当該再実装に係るタスクを実行しているものと見なして、現シーケンス番号を取得する。すなわち、
図13に示す例の場合、相手方(第2部品実装ヘッド40)は、1番のシーケンス番号に係るタスクにおいて、再実装をしている。従って、この場合には、1番のシーケンス番号に係るタスクが実行されているものとみなし、1番のセット番号である2番のシーケンス番号をセット番号として選択し、上述した処理を実行する。これにより、
図13に示したように、リトライが発生しても、シーケンス番号とセット番号の関係が概ね維持されたまま、並行処理が実行される。
【0086】
一方、
図14の一括処理タイプの場合、再実装が開始されると終了するまでの時間が長くなる可能性が高まるため、その場合には、ペアを解消した方が合理的である場合が多い。そこで、本実施形態では、
図7のステップS42を実行する際、一括処理タイプにおいては、相手方(第2部品実装ヘッド40)が再実装を実行中の場合、Nullを返すこととしている。この結果、ステップS43のセット番号検索では、セット番号が特定されないので、ステップS44の判定で、ステップS70以下が実行されることとなる。従って、相手方(第2部品実装ヘッド40)が再実装を実行中の場合、ステップS70により、自機(第1部品実装ヘッド30)においては、未実装シーケンス番号のうち、最も若い番号が選択される。これにより、
図14に示したように、リトライが発生した場合には、シーケンス番号とセット番号の関係が解消され、干渉が生じない範囲で、並行処理が実行されることになる。
【0087】
以上説明したように、本実施形態では、第1部品実装ヘッド30は、第1実装エリアMAに搬送されたプリント基板Pに対し、部品吸着動作でピックアップした電子部品を実装する。第2部品実装ヘッド40は、第2実装エリアMBに搬送されたプリント基板Pに対し、部品吸着動作でピックアップした電子部品を実装する。これら第1部品実装ヘッド30と第2部品実装ヘッド40の実装動作は、制御ユニット100によって制御される。制御ユニット100は、データ記憶手段102に記憶されている実装ターンに関する情報と、各実装ターンで実装される電子部品ごとの処理動作を一単位とするタスクに関する情報に基づいて、実装動作を制御する。実装ターンに関する情報と、各実装ターンで実装される電子部品ごとの処理動作を一単位とするタスクに関する情報には、第1部品実装ヘッド30及び第2部品実装ヘッド40ごとに設定される実装ターンの順位を示すシーケンス番号と、このシーケンス番号に関連づけられるセット番号とが含まれている。セット番号は、あるシーケンス番号に係るタスクが実行されているときに、当該タスクと並行して実行可能なタスクに係るシーケンス番号である。従って、第1部品実装ヘッド30があるシーケンス番号に係るタスクを実行している場合に、この第1部品実装ヘッド30と並行して第2部品実装ヘッド40が実行することのできるタスクがあるときは、制御ユニット100は、そのタスクに係るシーケンス番号をセット番号として参照することができる。セット番号がある場合、第2部品実装ヘッド40は、第1部品実装ヘッド30のタスクに係るシーケンス番号に関連づけられたセット番号に係るタスクを実行する。この結果、第2部品実装ヘッド40は、第1部品実装ヘッド30と干渉することなく、第1部品実装ヘッド30と並行して部品実装作業を実行することができる。同様に、第2部品実装ヘッド40があるシーケンス番号に係るタスクを実行している場合に、この第2部品実装ヘッド40と並行して第1部品実装ヘッド30が実行することのできるタスクがあるときは、制御ユニット100は、そのタスクに係るシーケンス番号をセット番号として参照することができる。セット番号がある場合、第1部品実装ヘッド30は、第2部品実装ヘッド40のタスクに係るシーケンス番号に関連づけられたセット番号に係るタスクを実行する。この結果、第1部品実装ヘッド30は、第2部品実装ヘッド40と干渉することなく、第2部品実装ヘッド40と並行して部品実装作業を実行することができる。
【0088】
また、本実施形態に係る実装システムにおいて、第1実装エリアMA及び第2実装エリアMBは、第1部品実装ヘッド30と第2部品実装ヘッド40とが何れも進入できるように一部が重複する重複エリアOAを含んでいる。セット番号は、当該セット番号に関連づけられるシーケンス番号を実行する部品実装ヘッド40(30)に対し、相手側の部品実装ヘッド30(40)が最も重複エリアOA側に近接可能なタスクを含むシーケンス番号に設定されている。このため本実施形態では、並行動作する第1、第2部品実装ヘッド30、40が重複エリアで干渉し得る範囲である干渉エリアAを可及的に狭く設定することができる。換言すれば、第1、第2部品実装ヘッド30、40が干渉することなく稼動できるエリアは、可及的に広くなる。従って、干渉を回避するために、一方の部品実装ヘッド30(40)が待機する必要性を可及的に低減することができる。また、待機する必要が生じた場合であっても、先行している部品実装ヘッド40(30)が干渉エリアAに滞在する時間が相対的に短くなるので、待機時間も短くなる。
【0089】
また本実施形態では、
図8に示したように、制御ユニット100は、タスクごとに、第1部品実装ヘッド30と第2部品実装ヘッド40を並行して稼動した場合に重複エリアOAでの干渉が生じないか否かを判定し、この判定に基づいて重複エリアOAでの両部品実装ヘッド30、40の干渉を回避するものである。このため本実施形態では、重複エリアOAでの干渉を回避しつつ、第1部品実装ヘッド30と第2部品実装ヘッド40の並行作業を実現することが可能となる。
【0090】
また、本実施形態では、データ記憶手段102は、シーケンス番号に係るタスクごとに、当該タスクを実行する部品実装ヘッド40(30)が重複エリアOAに向かって進入する重複エリア進入長さを記憶する記憶領域として、タスクテーブル125を含み、制御ユニット100は、タスクテーブル125の{重複エリア進入長さ}に保存されている値に基づいて、干渉に関する判定を実行するものである。このため本実施形態では、制御ユニット100は、タスクごとに重複エリア進入長さを参照しながら干渉を回避することができる。従って、重複エリアOAへの進入度合をタスクごとに検証することにより、干渉待ち時間が短くなるように設定したり、或いは、干渉が生じる領域(或いは距離)が短くなるように設定することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態では、制御ユニット100は、セット番号を参照することができない場合には、予め設定された順序で並行運転の候補となるシーケンス番号を選択するとともに、選択されたシーケンス番号に係るタスクごとに、第1部品実装ヘッド30と第2部品実装ヘッド40を並行して稼動した場合に重複エリアOAでの干渉が生じないか否かを判定し、重複エリアOAでの干渉が生じないと判断した場合には、そのタスクを実行させるものである。このため本実施形態では、未実装のタスクに関し、例えば、シーケンス番号の若い順に並行運転を動的に割り当て、重複エリアOAでの干渉を回避しつつ、並行運転を実行することができる。従って、セット番号が設定されていない場合、或いは、再実装が実行されている場合であっても、可及的に並行運転を実現することができる。
【0092】
また、本実施形態では、セット番号は、関連先のシーケンス番号に係るタスクが第1部品実装ヘッド30と第2部品実装ヘッド40の何れか一方(例えば、第2部品実装ヘッド40)によって実行されているときに、当該部品実装ヘッド40(30)に対し、他方の部品実装ヘッド30(40)が重複エリアOAで干渉することなく並行して実行可能なタスクを含むシーケンス番号に設定されている。このため本実施形態では、重複エリアOAでの干渉を確実に回避可能な組み合わせでシーケンス番号にセット番号が関連づけられることになる。従って、セット番号に基づくことにより、第1、第2部品実装ヘッドの並行運転を実現することができる。なお、「他方の部品実装ヘッドが重複エリアで干渉することなく並行して実行可能なタスクを含むシーケンス番号」は、先行している部品実装ヘッド40(30)に対して後行する部品実装ヘッド30(40)が並行動作する際に干渉を回避できるタスクが、一部である場合のみならず、全てである場合を含む。
【0093】
また、本実施形態に係る実装システムにおいて、レーン1でのタスクの処理回数が、レーン2でのタスクの処理回数と異なる場合には、セット番号は、処理回数が少ない方のレーンでの実装処理が終了する分だけ設定されている。このため本実施形態では、タスクの処理回数が、レーン1のプリント基板Pとレーン2のプリント基板Pとの間で異なる場合であっても、処理回数が共通する部分では、並行運転可能なタスクのセットを構成することができるので、全ての実装シーケンスに対して好適な並行作業を実現することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る実装システムにおいて、制御ユニット100は、前記第1部品実装ヘッド30及び第2部品実装ヘッド40の何れか一方の部品実装ヘッド40(30)が実行したタスクにおいて実装不良が発生し、実装不良に係る電子部品の再実装を当該タスクの終了後直ちに実行する場合において、他方の部品実装ヘッド30(40)が当該他方の部品実装ヘッド30(40)に割り当てられた次のタスクを実行するときは、前記第1部品実装ヘッド30及び第2部品実装ヘッド40の何れか一方の部品実装ヘッド40(30)が再実装している電子部品に係るタスクのシーケンス番号に関連づけられたセット番号に基づいて、他方の部品実装ヘッド30(40)の実装シーケンスを制御するものである。このため本実施形態では、第1部品実装ヘッド30が実行したタスクにおいて、実装不良が発生すると、第1部品実装ヘッド30は、実装不良に係る電子部品の再実装を当該タスクの終了後直ちに実行する。第2部品実装ヘッド40が実行したタスクにおいて、実装不良が発生した場合も同様である。第1部品実装ヘッド30が再実装を実行する場合に、第2部品実装ヘッド40が並行動作をする際には、再実装の発生したタスクに係るシーケンス番号に関連づけられたセット番号に基づいて、第2部品実装ヘッド40のタスクが決定される。第2部品実装ヘッド40が再実装を実行する場合に、第1部品実装ヘッド30が並行動作をする際には、再実装の発生したタスクに係るシーケンス番号に関連づけられたセット番号に基づいて、第1部品実装ヘッド30のタスクが決定される。従って、一方の部品実装ヘッド40(30)と他方の部品実装ヘッド30(40)とにそれぞれ関連づけられたシーケンス番号の順番を維持することが可能となる。その結果、一方の部品実装ヘッド40(30)のやり直し作業が終了した後の実装シーケンスは、予めデータ記憶手段102に記憶されている最適な順序の通り維持される。よって、やり直し作業が生じている場合であっても、トータルのタクトタイムが徒に長引くことを回避することができる。
【0095】
また、本実施形態に係る実装システムにおいて、制御ユニット100は、前記第1部品実装ヘッド30及び第2部品実装ヘッド40の何れか一方の部品実装ヘッド40(30)が実行したタスクで実装不良が発生し、当該実装不良に係る電子部品の再実装が、前記第1部品実装ヘッド30及び第2部品実装ヘッド40の何れか一方の部品実装ヘッド40(30)に対して割り当てられた全てのタスクの終了後に一括して実行されている場合において、他方の部品実装ヘッド30(40)が当該他方の部品実装ヘッド30(40)に割り当てられた次のタスクを実行するときは、データ記憶手段102に設定されたセット番号に拘わらず、当該他方の部品実装ヘッド30(40)の実装シーケンスを決定するものである。このため本実施形態では、いわゆる一括リトライ(実装不良が生じた場合、実装不良に係る電子部品の再実装を最後にまとめて実行すること)が実行される。従って、第1部品実装ヘッド30が実行したタスクにおいて、実装不良が発生すると、第1部品実装ヘッド30は、実装中のプリント基板Pに係る全てのタスクが終了してから、実装不良に係る電子部品の再実装を実行する。第2部品実装ヘッド40が実行したタスクにおいて、実装不良が発生した場合も同様である。このため、第1、第2実装エリアMA、MBの何れか一方で再実装が発生した場合、他方の実装エリアで実装シーケンスを維持するためには、他方の実装エリアでの待ち時間が長くなる可能性がある。そこで、本態様では、一括リトライが実行されている運転状況では、セット番号に拘わらず、当該他方の部品実装ヘッド30(40)の実装シーケンスを決定することとしているのである。
【0096】
以上説明したように、本実施形態によれば、デュアルレーン方式(レーン1とレーン2を平行に隣接させ、両レーン1、2にそれぞれ設定される第1、第2実装エリアMA、MBごとに第1、第2部品実装ヘッド40を設け、各実装エリアMA、MBの重複部分が第1、第2部品実装ヘッド40の重複エリアOAとなる設備において、部品実装ヘッド30、40同士の干渉を防止しつつ、全体のタクトタイムを向上させることのできる電子部品の実装システムを提供することができるという顕著な効果を奏する。
【0097】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。
【0098】
例えば、シーケンス番号とセット番号の関係は、1対1の場合に限らず、セット番号が1つのシーケンス番号に対して複数個設定される1対多の関係であってもよい。
【0099】
図15を参照して、同図に示すシーケンスセットテーブル124では、次シーケンス番号に関する項目{次レーン1基板品番、次レーン2基板品番、次シーケンス番号}も主キーに加え、セット番号が1つのシーケンス番号に対して複数個設定される1対多の関係を構築している。また、複数のセット番号(すなわち、次シーケンス番号)の順位を決定するため、{セット番号連番}を項目に含んでいる。
【0100】
図15のテーブル構造を採用した場合には、
図16及び
図17に示すように、例えば、現シーケンス番号が2番の場合、最初は、{セット番号連番}に従い、次シーケンス番号として3番のシーケンス番号がセット番号と設定される。一方、3番のシーケンス番号に係るタスクが既に実行済であった場合、次シーケンス番号として11番のシーケンス番号を選択することが可能となる。同様に、現シーケンス番号が最初の8番であるとき、レーン2では、まだ、9番のシーケンス番号に係るタスクが残っているので、{セット番号連番}に従い、9番のシーケンス番号が次シーケンス番号(セット番号)として選択される。一方、現シーケンス番号が2回目の8番であるとき、レーン2では、全てのタスクを終了しているので、今度は、{セット番号連番}に従い、1番のシーケンス番号を次シーケンス番号(セット番号)として選択することが可能となる。
【0101】
このように、
図15のテーブル構造を採用した場合には、タスクの処理回数が異なるプリント基板Pを組み合わせた場合(例えば、
図10に示した例の場合)でも、全てのシーケンス番号についてセット番号を設定することが可能となる。そのため、
図7のステップS43におけるヒット率が高くなる。従って、ステップS44によってステップS46が実行される頻度が小さくなる。よって、演算速度を速めることが可能となる。
【0102】
また、
図7のフローチャートにおいて、ステップS46を実行する際に、シーケンス番号に基づくのではなく、自機が最も重複エリアOAに向かって進入するタスクから順に未実装シーケンス番号を選択するようにしてもよい。その場合には、並行処理が困難なタスクから順に処理が進むので、実装作業が進むにつれて並行作業を行うことのできる確率を高めることができる。
【0103】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはいうまでもない。