(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明に係る眼科観察装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。なお、以下においてはこの発明が適用された細隙灯顕微鏡について詳しく説明するが、他の眼科観察装置(手術用顕微鏡等)についても同様の構成を適用することが可能である。
【0016】
まず方向を定義しておく。装置光学系において最も被検者側に位置するレンズ(対物レンズ)から被検者に向かう方向を前方向とし、その逆方向を後方向とする。また、前方向に直交する水平方向を左右方向をとする。更に、前後方向と左右方向の双方に直交する方向を上下方向とする。
【0017】
[外観構成]
この実施形態に係る眼科観察装置(細隙灯顕微鏡)の外観構成について、
図1を参照しながら説明する。細隙灯顕微鏡1には、コンピュータ100が接続されている。コンピュータ100は、各種の制御処理や演算処理を行う。なお、顕微鏡本体(光学系等を格納する筐体)とは別にコンピュータ100を設ける代わりに、顕微鏡本体に同様のコンピュータを搭載した構成を適用することも可能である。
【0018】
細隙灯顕微鏡1はテーブル2上に載置される。なお、コンピュータ100は他のテーブル上又はその他の場所に設置されていてもよい。基台4は、移動機構部3を介して水平方向に移動可能に構成されている。基台4は、操作ハンドル5を傾倒操作することにより移動される。
【0019】
基台4の上面には、観察系6及び照明系8を支持する支持部15が設けられている。支持部15には、観察系6を支持する支持アーム16が左右方向に回動可能に取り付けられている。支持アーム16の上部には、照明系8を支持する支持アーム17が左右方向に回動可能に取り付けられている。支持アーム16、17は、それぞれ独立に同軸で回動可能とされている。
【0020】
観察系6は、支持アーム16を手動で回動させることで移動される。照明系8は、支持アーム17を手動で回動させることで移動される。なお、各支持アーム16、17は、電気的な機構によって回動されるように構成されていてもよい。その場合、各支持アーム16、17を回動させるための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、たとえばステッピングモータ(パルスモータ)により構成される。伝達機構は、たとえば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。
【0021】
照明系8は、被検眼Eに照明光を照射する。照明系8は、前述のように、上下方向に延びる回動軸を中心に左右方向に振ることができる。それにより被検眼Eに対する照明光の照射方向が変更される。照明系8は上下方向にも振れるように構成されていてもよい。つまり、照明光の仰角や俯角を変更できるように構成されていてもよい。
【0022】
観察系6は、被検眼Eによる照明光の反射光を案内する左右一対の光学系を有する。この光学系は鏡筒本体9内に収納されている。鏡筒本体9の終端は接眼部9aである。検者は接眼部9aをのぞき込むことで被検眼Eを肉眼で観察する。前述のように、支持アーム16を回動させることにより鏡筒本体9を左右方向に回動させることができる。それにより被検眼Eに対する観察系6の向きを変更することができる。なお、照明光の反射光には、たとえば散乱光のように被検眼Eを経由した各種の光が含まれるが、これら各種の光を含めて「反射光」と呼ぶことにする。
【0023】
鏡筒本体9に対峙する位置には顎受け台10が配置されている。顎受け台10には、被検者の顔を安定配置させるための顎受部10aと額当て10bが設けられている。
【0024】
鏡筒本体9の側面には、観察倍率を変更するための観察倍率操作ノブ11が配置されている。更に、鏡筒本体9には、被検眼Eを撮影するための撮像装置13が接続されている。撮像装置13は撮像素子を含んで構成されている。撮像素子は、光を検出して電気信号(画像信号)を出力する光電変換素子である。画像信号はコンピュータ100に入力される。撮像素子としては、たとえばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。照明系8の下方位置には、照明系8から出力される照明光束を被検眼Eに向けて反射するミラー12が配置されている。
【0025】
[光学系の構成]
細隙灯顕微鏡1の光学系の構成について、
図2を参照しながら説明する。細隙灯顕微鏡1は観察系6と照明系8を有する。
【0026】
〔観察系〕
観察系6は左右一対の光学系を備えている。左右の光学系は、ほぼ同様の構成を有する。検者は、この左右の光学系により被検眼Eを双眼で観察することができる。なお、
図2には、観察系6の左右の光学系の一方のみが示されている。符号O1は観察系6の光軸(観察光軸)である。
【0027】
観察系6の左右の各光学系は、対物レンズ31、変倍光学系32、絞り33、リレーレンズ35、プリズム36及び接眼レンズ37を有する。ビームスプリッタ34は、左右の光学系の一方のみに又は双方に設けられる。接眼レンズ37は接眼部9a内に設けられている。符号Pは、接眼レンズ37に導かれる光の結像位置を示している。符号Ecは被検眼Eの角膜を、符号Epは虹彩を、符号Erは眼底をそれぞれ示している。符号Eoは検者眼を示している。
【0028】
変倍光学系32は、複数(たとえば2枚)の変倍レンズ32a、32bを含んで構成される。各変倍レンズ32a、32bは観察光軸O1に沿って移動可能とされている。それにより、被検眼Eの肉眼観察像や撮影画像の倍率(画角)を変更できる。倍率の変更は、観察倍率操作ノブ11を操作することにより行われる。また、図示しないスイッチ等を用いて電動で倍率を変更するように構成してもよい。
【0029】
ビームスプリッタ34は、観察光軸O1に沿って進む光を二分割する。ビームスプリッタ34を透過した光は、リレーレンズ35、プリズム36及び接眼レンズ37を介して検者眼Eoに導かれる。プリズム36は、2つの光学素子36a、36bを含み、光の進行方向を上方に平行移動させる。
【0030】
他方、ビームスプリッタ34により反射された光は、リレーレンズ41及びミラー42を介して、撮像装置13の撮像素子43に導かれる。撮像素子43は、この反射光を検出して画像信号を生成する。
【0031】
変倍光学系32とビームスプリッタ34との間にはバリアフィルタ83が配置される。バリアフィルタ83は、観察系6の光路(観察光路)に対して挿脱可能に設けられている。バリアフィルタ83は、蛍光観察を行うときに観察光路に挿入される。バリアフィルタ83は、蛍光観察において被検眼Eに投与される蛍光剤が発する蛍光に相当する波長成分を透過させる光学フィルタ(バンドパスフィルタ)である。バリアフィルタ83を移動させるための機構については後述する。
【0032】
〔照明系〕
照明系8は、白色光源51、リレーレンズ52、照明絞り56、集光レンズ53、視野絞り57、細隙(スリット)形成部54及び集光レンズ55を有する。また、細隙形成部54と集光レンズ55との間には後述の光学フィルタが配置される。この光学フィルタは、照明系8の光路(照明光路)に対して挿脱可能に設けられている。符号O2は、照明系8の光軸(照明光軸)を示す。
【0033】
白色光源51は照明光を出力する。白色光源51は、発光素子(発光ダイオード)を有するものである。このような白色光源51として白色LEDがある。また、白色有機EL光源のように発光素子をバックライトとして用いるものもある。一般に白色光源とは、可視領域のほぼ全域にわたるスペクトル分布の光を出力する光源や、所定の波長を中心波長とする所定の波長帯域の光を出力する光源であって、その出力光が実質的に白色として視認されるものである。また、この実施形態において、白色光源51は寒色系白色光源であるとする。寒色系白色光源とは、白色光源のうち比較的色温度が低い光を出力するものをいう。寒色系白色光源は、特に、後述の色温度変換フィルタが用いられる場合に適用される。
【0034】
なお、このような白色光源51とは別の光源を追加的に設けることが可能である。たとえば、定常光を出力する光源と、フラッシュ光を出力する光源とを別々に設けることが可能である。また、角膜観察用の光源と眼底観察用の光源とを別々に設けることもできる。
【0035】
細隙形成部54は、スリット光(細隙光)を生成するために用いられる。細隙形成部54は、一対のスリット刃を有する。これらスリット刃の間隔(スリット幅)を変更することによりスリット光の幅が変更される。
【0036】
照明絞り56は、その透光部のサイズを変更可能に構成され、白色光源51により出力された光の被検眼Eに対する照射光量を制限するように作用する。つまり、照明絞り56は、被検眼Eに照射される照明光の明るさを変更するための光学部材である。また、照明絞り56には、角膜Ecや水晶体による照明光の反射を低減させたり、照明光の明るさを調整したりといった機能もある。
【0037】
視野絞り57は、その透光部のサイズを変更可能に構成され、白色光源51により出力された光の被検眼Eに対する照射野を制限するように作用する。視野絞り57の透光部は、たとえば円形状に形成される。
【0038】
細隙形成部54と集光レンズ55との間に配置される光学フィルタについて説明する。この光学フィルタには、少なくとも演色性変換フィルタが含まれる。また、色温度変換フィルタや蛍光フィルタが含まれていてもよい。2つ以上の光学フィルタが設けられる場合、各光学フィルタが照明光路に対して挿脱可能とされる。
【0039】
演色性変換フィルタは、白色光源51により出力された光の演色性を高める光学フィルタである。「演色性を高める」とは、演色性変換フィルタが白色光源51の出力光をより自然光に近いスペクトル分布の光に変換することを示す。
【0040】
色温度変換フィルタは、白色光源51により出力された光の色温度を低下させる光学フィルタである。上記のように、色温度変換フィルタが用いられる場合には、白色光源51として寒色系白色光源が用いられる。色温度変換フィルタは、寒色系白色光源から出力された寒色系の光をより暖色系の光に変換するよう作用する。
【0041】
蛍光フィルタは、被検眼Eに投与される蛍光剤を励起して蛍光を発生させる波長成分(励起波長成分)を透過させる光学フィルタ(バンドパスフィルタ)であり、エキサイタフィルタとも呼ばれる。
【0042】
この実施形態では、演色性変換フィルタ、色温度変換フィルタ及び蛍光フィルタが設けられるものとする。更に、この実施形態では、演色性変換フィルタと色温度変換フィルタを単一の光学フィルタとして構成するものとする。当該2つの機能を有する光学フィルタを色変換フィルタと呼ぶことがある。したがって、この実施形態では、演色性変換機能及び色温度変換機能を有する光学フィルタ(色変換フィルタ)と、蛍光観察で用いられる光学フィルタ(蛍光フィルタ)の2つが、照明系8に設けられる。詳細は後述するが、色変換フィルタと蛍光フィルタは互いに排他的に照明光路に配置される。
【0043】
図2において、色変換フィルタを符号81で示し、蛍光フィルタを符号82で示す。色変換フィルタ81は、照明光軸O2に対して傾斜配置されている。つまり、色変換フィルタ81は、その光入射面(及び光出射面)の法線方向が照明光軸O2に対して所定の角度を成すように配置されている。この傾斜角度はたとえば10度とされる。このような傾斜配置によって、色変換フィルタ81による反射光が照明光に混入して照明光の色特性に影響を与えることを防止できる。
【0044】
[制御系の構成]
細隙灯顕微鏡1の制御系について、
図3を参照しながら説明する。細隙灯顕微鏡1の制御系は、制御部101を中心に構成されている。なお、
図3には、この実施形態で特に注目する構成部位のみが記載されており、それ以外の構成部位は省略されている。
【0045】
〔駆動系〕
細隙灯顕微鏡1の制御系には、各種部材を駆動させる駆動系が含まれている。この駆動系には、照明系8に関するスリット駆動部54A、照明絞り駆動部56A、視野絞り駆動部57A及びフィルタ駆動部80Aと、観察系6に関するフィルタ駆動部83Aとが含まれている。各駆動部は、パルスモータやソレノイド等のアクチュエータを含んで構成される。また、駆動部は、アクチュエータにより発生された駆動力を伝達する伝達機構を含んでいてもよい。
【0046】
スリット駆動部54Aは、細隙形成部54の一対のスリット刃を移動させてスリット刃幅を変更するよう機能する。スリット駆動部54Aは「第4駆動部」の一例である。
【0047】
照明絞り駆動部56Aは、照明絞り56を動作させて被検眼Eに対する照明光の照射光量を変更するよう機能する。照明絞り駆動部56Aは「第5駆動部」の一例である。
【0048】
視野絞り駆動部57Aは、視野絞り57を動作させて被検眼Eに対する照明光の照射光野を変更するよう機能する。視野絞り駆動部57Aは「第6駆動部」の一例である。
【0049】
フィルタ駆動部80Aは、色変換フィルタ81及び蛍光フィルタ82を保持するフィルタ保持部材80を駆動させることで、これら光学フィルタを照明光路に対して挿脱するよう機能する。フィルタ駆動部80Aは「第1駆動部」、「第2駆動部」及び「第3駆動部」の一例である。なお、フィルタ保持部材80は、たとえば、上記各光学フィルタが円周方向に沿った配列で嵌め込まれた円板状の部材であり、その中心軸周りに回転可能に構成されたターレット(フィルタディスク)である。その場合、フィルタ駆動部80Aは、たとえば、ターレットを中心軸周りに回転させる駆動力を発生するパルスモータである。
【0050】
観察系6に関するフィルタ駆動部83Aは、観察光軸O1に対してバリアフィルタ83を挿脱するよう機能する。フィルタ駆動部83Aは、たとえば、直線的な駆動力を発生するソレノイドを含んで構成される。なお、バリアフィルタ83以外にも光学フィルタを設ける場合には、上記と同様のターレットとパルスモータを含む構成を適用することができる。
【0051】
〔制御部〕
制御部101は、細隙灯顕微鏡1の各部を制御する。たとえば、制御部101は、観察系6の制御や照明系8の制御を行う。観察系6の制御としては、変倍光学系32による観察倍率の制御、絞り33の開口サイズの制御、撮像素子43の電荷蓄積時間、感度、フレームレート等の制御、バリアフィルタ83の挿脱の制御などがある。バリアフィルタ83の挿脱の制御は、フィルタ駆動部83Aを制御することにより行われる。
【0052】
また、照明系8の制御としては、白色光源51による光の出力強度の制御(調光制御)、照明絞り56の開口サイズ(照射光量)の制御、視野絞り57の開口サイズ(照射野)の制御、細隙形成部54によるスリット幅の制御、光学フィルタ(色変換フィルタ81及び蛍光フィルタ82)の挿脱の制御などがある。白色光源51の調光制御には、振幅制御やパルス幅制御がある。振幅制御は、LEDに対する印加電流値を制御することで出力光の強度を変化させるものである。パルス幅制御は、LEDに対する印加電流を一定の周波数でオン/オフし、そのオン時間の比率を変更することで出力光の強度を変化させるものである。照明絞り56の開口サイズの制御は、照明絞り駆動部56Aを制御することにより行われる。視野絞り57の開口サイズの制御は、視野絞り駆動部57Aを制御することにより行われる。細隙形成部54によるスリット幅の制御は、スリット駆動部54Aを制御することにより行われる。光学フィルタの挿脱の制御は、フィルタ駆動部80Aを制御することにより行われる。
【0053】
制御部101には記憶部102が設けられている。記憶部102には各種の情報が記憶される。制御部101は、記憶部102に記憶されたデータの読み出し処理や、記憶部102に対するデータの書き込み処理を行う。
【0054】
制御部101は、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等を含んで構成される。このハードディスクドライブには、制御プログラムが予め記憶されている。制御部101の動作は、この制御プログラムと上記ハードウェアとが協働することによって実現される。
【0055】
制御部101は、細隙灯顕微鏡1の装置本体(たとえば基台4内)やコンピュータ100に配置される。
【0056】
〔表示部〕
表示部103は、制御部101の制御を受けて各種の情報を表示する。表示部103は、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRTディスプレイなどの任意の表示デバイスを含んで構成される。表示部103は、細隙灯顕微鏡1の装置本体に設けられていてもよいし、コンピュータ100に設けられていてもよい。
【0057】
〔操作部〕
操作部104は、操作デバイスや入力デバイスを含んで構成される。操作部104には、装置本体に設けられたボタンやスイッチ(たとえば操作ハンドル5等)や、コンピュータ100のマウス、キーボードなどが含まれる。また、トラックボール、専用の操作パネル、スイッチ、ボタン、ダイアルなど、任意の操作デバイスや入力デバイスを用いることも可能である。
【0058】
図3では、表示部103と操作部104とを別々に表しているが、これらを一体的に構成することも可能である。その具体例として、タッチパネル式のLCDを用いることができる。
【0059】
[白色光源・光学フィルタの波長特性について]
ここで、白色光源51と色変換フィルタ81の波長特性について説明する。
図4AのグラフFは色変換フィルタ81の波長特性(フィルタ特性)の例を示す。色変換フィルタ81のフィルタ特性Fは、可視光の帯域である波長約400nm〜700nmの範囲において設定されている。色変換フィルタ81の透過率は、波長の増加に対して単調増加している。より詳しくは、波長400nm付近では透過率20%程度であり、波長500nm付近まで緩やかに透過率が増加している。波長500nm付近での透過率は30%程度である。更に、波長500nm付近から波長600nm付近までフィルタ特性Fは急峻に増加している。波長600nm付近での透過率は90%程度である。そして、波長600nm付近から波長700nmまで、透過率が緩やかに増加して最終的には100%に達している。
【0060】
図4Bは、波長に応じた相対強度を示している。一点鎖線のグラフLは、白色光源51による出力光の波長特性(スペクトル分布)を示す。実線のグラフTは、色変換フィルタ81を透過した当該出力光の波長特性(スペクトル分布)を示す。破線のグラフBは、ハロゲンランプによる出力光の波長特性(スペクトル分布)を示す。ハロゲンランプは演色性の高い白色光源である。
【0061】
白色光源51の波長特性Lは、波長約400nm〜700nmの範囲において設定されており、波長460nm付近において急峻なピークを有し、波長550nm付近において緩やかなピークを有する。なお、急峻なピークの近傍である波長約450nm〜500nmの光が、蛍光剤の励起波長成分に相当する。
【0062】
この実施形態では、ハロゲンランプの波長特性Bを、白色光源51と色変換フィルタ81との組み合わせで得られる照明光の波長特性のターゲットとしている。実際、白色光源51の波長特性Lと色変換フィルタ81のフィルタ特性(透過特性)Fとの組み合わせにより得られる照明光の波長特性Tは、ハロゲンランプの波長特性Bに近似している。
【0063】
以上のように、白色光源51は、蛍光剤の励起波長成分において高い強度の光を出力する。加えて、白色光源51と色変換フィルタ81とのを組み合わせることにより、ハロゲンランプに近い高演色性の光が生成される。具体的には、色変換フィルタ81を用いることで、平均演色評価数が約70から80以上に向上し、かつ色温度が6500K程度から3500K程度に低下される。また、ハロゲンランプと蛍光フィルタによる蛍光量を100%とすると、暖色系LEDと蛍光フィルタとの組み合わせでは蛍光量が41%程度であるのに対し、白色光源51と蛍光フィルタ82との組み合わせ(色変換フィルタ81は照明光路から退避されている)では179%となる。
【0064】
[制御]
細隙灯顕微鏡1が実行する制御について説明する。なお、以下に説明する制御例のうちの2つ以上を任意に組み合わせることが可能である。
【0065】
(第1の制御例)
制御部101は、色変換フィルタ81と蛍光フィルタを排他的に照明光路に挿入させる。具体的には、たとえば操作部104を用いて蛍光観察の開始指示がなされると、制御部101は、フィルタ駆動部80Aを制御して、色変換フィルタ81を照明光路から退避させるとともに、蛍光フィルタ82を照明光路へ挿入させる。この制御に加え、制御部101は、フィルタ駆動部83Aを制御して、バリアフィルタ83を観察光路に挿入させることが可能である。
【0066】
また、蛍光観察の終了指示(通常の観察の開始指示)がなされると、制御部101は、フィルタ駆動部80Aを制御して、蛍光フィルタ82を照明光路から退避させるとともに、色変換フィルタ81を照明光路へ挿入させる。この制御に加え、制御部101は、フィルタ駆動部83Aを制御して、バリアフィルタ83を観察光路から退避させることが可能である。
【0067】
この制御例によれば、観察モードの切り替えに対応して使用するフィルタを自動的に切り替えることができる。なお、蛍光観察においては、色変換フィルタ81ではなく、蛍光剤の励起波長成分を透過させる蛍光フィルタ82が用いられるので、
図4Bに示す白色光源51の波長特性Lのうち励起波長成分に相当する約450nm〜500nmの光が被検眼Eに照射される。この光は、上記のように高強度(大光量)である。一方、蛍光観察以外の観察モードにおいては、蛍光フィルタ82ではなく、色変換フィルタ81が用いられるので、
図4Bに示す照明光の波長特性Tの光が被検眼Eに照射される。この光は、上記のようにハロゲンランプに近い高演色性の光である。
【0068】
(第2の制御例)
蛍光観察の開始指示を受けて、制御部101は、フィルタ駆動部80Aを制御して蛍光フィルタ82を照明光路に挿入させるとともに、スリット駆動部54Aを制御して細隙形成部54の一対のスリット刃の間隔を拡大させる。このとき、スリット幅を最大にすることができる。
【0069】
この制御例によれば、蛍光観察への移行に連動してスリット幅が自動的に拡大される。したがって、蛍光観察において被検眼Eに照射される光(励起光)の強度(光量)を自動で高めることができ、十分な蛍光量を得ることが可能である。
【0070】
(第3の制御例)
蛍光観察の開始指示を受けて、制御部101は、フィルタ駆動部80Aを制御して蛍光フィルタ82を照明光路に挿入させるとともに、照明絞り駆動部56Aを制御して照明絞り56の開口サイズを拡大することで被検眼Eに対する照明光の照射光量を増大させる。このとき、照明絞り56の開口サイズを最大にすることができる。
【0071】
この制御例によれば、蛍光観察への移行に連動して照射光量が自動的に増大される。したがって、蛍光観察において被検眼Eに照射される光(励起光)の光量を自動で高めることができる。
【0072】
(第4の制御例)
蛍光観察の開始指示を受けて、制御部101は、フィルタ駆動部80Aを制御して蛍光フィルタ82を照明光路に挿入させるとともに、視野絞り駆動部57Aを制御して視野絞り57の開口サイズを拡大することで被検眼Eに対する照明光の照射野を拡大させる。このとき、視野絞り57の開口サイズを最大にすることができる。
【0073】
この制御例によれば、蛍光観察への移行に連動して照射野が自動的に拡大される。したがって、蛍光観察における観察範囲を自動で拡大することができる。
【0074】
(第5の制御例)
蛍光観察の開始指示を受けて、制御部101は、フィルタ駆動部80Aを制御して蛍光フィルタ82を照明光路に挿入させるとともに、白色光源51(つまり電源から白色光源51に対する印加電流)を制御して光の出力強度を増大させる。
【0075】
この制御例によれば、蛍光観察への移行に連動して白色光源51により出力される光の強度が自動的に増大される。したがって、蛍光観察において被検眼Eに照射される光(励起光)の強度(光量)を自動で高めることができる。
【0076】
なお、第2〜第5の動作例を組み合わせることで、蛍光観察で得られる蛍光量を大きく増加させたり、観察範囲を拡大させたりすることが可能である。また、蛍光観察から他の観察モードへの移行に対応し、第2〜第5の動作例と逆の制御を行うことができる。つまり、蛍光観察から他の観察モードへの移行に対応し、スリット幅を縮小させ、照射光量を減少させ、照射野を縮小させ、白色光源51の出力強度を低減させることが可能である。
【0077】
[作用・効果]
細隙灯顕微鏡1の作用及び効果について説明する。
【0078】
細隙灯顕微鏡1は、照明系8と観察系6を有する。照明系8は、白色光源51と演色性変換フィルタ(色変換フィルタ81)を含み、演色性変換フィルタを透過した光で被検眼Eを照明する。白色光源51は、発光素子を有するものであり、たとえば白色LEDや白色有機EL光源である。演色性変換フィルタ(色変換フィルタ81)は、白色光源51により出力された光の演色性を高めるよう作用する。観察系6は、このような照明系8により照明された被検眼Eを観察するための光学系を有する。
【0079】
このような細隙灯顕微鏡1によれば、白色光源51と演色性変換フィルタ(色変換フィルタ81)との組み合わせにより、自然光に近い視認特性の照明光を用いて被検眼Eを観察することが可能である。
【0080】
細隙灯顕微鏡1は、照明系8の光路に対して演色性変換フィルタ(色変換フィルタ81)を挿脱する第1駆動部(フィルタ駆動部80A)を有している。
【0081】
白色光源51として寒色系白色光源を適用し、かつ、照明系8は、この寒色系白色光源により出力された光の色温度を低下させる色温度変換フィルタ(色変換フィルタ81)を含んでいてもよい。それにより、上記のように好適な色特性の照明光を用いることが可能となる。また、細隙灯顕微鏡1は、照明系の光路に対して色温度変換フィルタを挿脱する第2駆動部(フィルタ駆動部80A)を有している。
【0082】
なお、この実施形態では演色性変換フィルタと色温度変換フィルタとを単一の光学フィルタとして構成しているが、これらを別々の光学フィルタとして構成することも可能である。その場合、これら2つの光学フィルタの照明光路への挿脱を独立に行わせるように構成することができる。
【0083】
照明系8は、被検眼Eに投与される蛍光剤の励起波長成分を透過させる蛍光フィルタ82を含んでいてもよい。それにより、蛍光観察が可能となる。また、細隙灯顕微鏡1は、照明系の光路に対して蛍光フィルタ82を挿脱する第3駆動部(フィルタ駆動部80A)を有している。
【0084】
細隙灯顕微鏡1は、演色性変換フィルタ(色変換フィルタ81)の照明光路への挿入と蛍光フィルタ82の照明光路からの退避とを連動させ、かつ、蛍光フィルタ82の照明光路への挿入と演色性変換フィルタ(色変換フィルタ81)の照明光路からの退避とを連動させるように、第1駆動部及び第3駆動部(ともにフィルタ駆動部80A)を制御する第1制御部(制御部101)を有していてもよい。それにより、蛍光観察と他の観察モードとの間の切り替えを容易に行うことが可能となる。
【0085】
第1制御部(制御部101)は、演色性変換フィルタ及び色温度変換フィルタ(ともに色変換フィルタ81)の照明光路への挿入と蛍光フィルタ82の照明光路からの退避とを連動させ、かつ、蛍光フィルタ82の照明光路への挿入と演色性変換フィルタ及び色温度変換フィルタ(ともに色変換フィルタ81)の照明光路からの退避とを連動させるように、第1駆動部及び第3駆動部(ともにフィルタ駆動部80A)を制御することができる。それにより、蛍光観察と他の観察モードとの間の切り替えを容易に行うことが可能となる。
【0086】
演色性変換フィルタ及び色温度変換フィルタを単一の光学フィルタ(色変換フィルタ81)として構成し、かつ、第1駆動部及び第2駆動部を単一の駆動部(フィルタ駆動部80A)として構成することができる。それにより、装置構成(光学系の構成)の簡略化を図ることができる。
【0087】
更に、単一の光学フィルタ(色変換フィルタ81)と蛍光フィルタ82とを保持する保持部材(フィルタ保持部材80)を設け、かつ、第1駆動部、第2駆動部及び第3駆動部を、保持部材を移動させる単一の駆動部(フィルタ駆動部80A)として構成することができる。それにより、装置構成の簡略化を図ることができる。
【0088】
この発明の眼科観察装置を細隙灯顕微鏡として構成する場合、白色光源51により出力された光からスリット光を生成する一対のスリット刃(細隙形成部54)が照明系8に設けられる。更に、スリット刃の間隔(スリット幅)を変更する第4駆動部(スリット駆動部54A)と、照明光路に対する蛍光フィルタ82の挿入とスリット刃の間隔の拡大とを連動させるように、第3駆動部(フィルタ駆動部80A)及び第4駆動部(スリット駆動部54A)を制御する第2制御部(制御部101)とを設けることが可能である。それにより、蛍光観察への移行に際して、被検眼Eに照射される光(励起光)の強度(光量)を自動で高めることができる。
【0089】
白色光源51により出力された光の被検眼Eに対する照射光量を制限する照明絞り56を照明系8に設けることができる。更に、照明絞り56による照射光量を変更する第5駆動部(照明絞り駆動部56A)と、照明光路に対する蛍光フィルタ82の挿入と照射光量の増大とを連動させるように第3駆動部(フィルタ駆動部80A)及び第5駆動部(照明絞り駆動部56A)を制御する第3制御部(制御部101)とを設けることができる。それにより、蛍光観察への移行に際して、被検眼Eに照射される光(励起光)の光量を自動で高めることが可能となる。
【0090】
白色光源51により出力された光の被検眼Eに対する照射野を制限する視野絞り57を照明系8に設けることができる。更に、視野絞り57による照射野を変更する第6駆動部(視野絞り駆動部57A)と、照明光路に対する蛍光フィルタ82の挿入と照射野の拡大とを連動させるように第3駆動部(フィルタ駆動部80A)及び第6駆動部(視野絞り駆動部57A)を制御する第4制御部(制御部101)とを設けることができる。それにより、蛍光観察への移行に際して、被検眼Eに対する光(励起光)の照射野を自動で拡大することが可能となる。
【0091】
照明光路に対する蛍光フィルタ82の挿入と白色光源51による光の出力強度の増大とを連動させるように、第3駆動部(フィルタ駆動部80A)及び白色光源51を制御する第5制御部(制御部101)を設けることができる。それにより、蛍光観察への移行に際して、被検眼Eに照射される光(励起光)の強度(光量)を自動で高めることができる。
【0092】
演色性変換フィルタ(色変換フィルタ81)を、照明系8の光軸に対して傾斜配置させることができる。それにより、演色性変換フィルタ(色変換フィルタ81)による反射光が照明光に混入して照明光の色特性に影響を与えることを防止できる。
【0093】
この実施形態によれば、蛍光観察においては高輝度の照明光を用いることができ、他の観察モードにおいては自然光に近い視認特性の照明光を用いることが可能である。
【0094】
以上において説明した構成は、この発明を実施するための一具体例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内における任意の変形を適宜に施すことが可能である。