特許第6054690号(P6054690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6054690オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒及びオレフィン類重合体の製造方法
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  • 特許6054690-オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒及びオレフィン類重合体の製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054690
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】オレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒及びオレフィン類重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20161219BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C08F4/654
   C08F10/00 510
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-211923(P2012-211923)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-65816(P2014-65816A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098682
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】100071663
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 保夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131255
【弁理士】
【氏名又は名称】阪田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100125324
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 健
(72)【発明者】
【氏名】魚住 俊也
(72)【発明者】
【氏名】中村 紀明
(72)【発明者】
【氏名】久野 浩一郎
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−199738(JP,A)
【文献】 特開平03−294302(JP,A)
【文献】 特開平06−293804(JP,A)
【文献】 特開2010−132904(JP,A)
【文献】 特表2012−524829(JP,A)
【文献】 特表2014−500346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08F 4/654
C08F 10/00
・DB
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン、マグネシウム、ハロゲンおよび下記一般式(1);
【化1】
(式中、およびRは、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基または分岐アルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基、または炭素数6〜24の芳香族炭化水素基を示し、同一でも異なっていてもよく、3〜Rは、水素原子をす。)で表される化合物を含有することを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分。
【請求項2】
前記RおよびRが、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基または分岐アルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であり、R〜Rが水素原子であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
【請求項3】
(I)請求項1または2に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、
(II)下記一般式(2); RAlQ3−p (2)
( 式中、Rは炭素数1〜6のヒドロカルビル基を示し、複数個ある場合は、同一でも異なってもよく、Qは水素原子、炭素数1〜6のヒドロカルビルオキシ基、あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および
(III)外部電子供与性化合物から形成されることを特徴とするオレフィン類重合触媒。
【請求項4】
前記(III)外部電子供与性化合物が、下記一般式(3);
Si(OR104−q (3)
(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基あるいはシクロアルケニル基、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基あるいは置換基を有する芳香族炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。R10は炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基あるいは置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよく、qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物および一般式(4);
(R1112N)SiR134−s (4)
(式中、R11とR12は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基あるいはシクロアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基を示し、R11とR12は同一でも異なってもよく、また互いに結合して環を形成してもよい。R13は炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ビニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルオキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基あるいはシクロアルキルオキシ基、または炭素数6〜20のアリール基あるいはアリールオキシ基を示し、R13が複数ある場合、複数のR13は同一でも異なってもよい。sは1から3の整数である。)で表されるアミノシラン化合物から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項記載のオレフィン類重合用触媒。
【請求項5】
前記(III)外部電子供与性化合物が、フェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ジシクロヘキシルビス(エチルアミノ)シラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシランまたはジエチルアミノトリエトキシシランであることを特徴とする請求項記載のオレフィン類重合用触媒。
【請求項6】
前記(III)外部電子供与性化合物が、下記一般式(5);
14OCHCR1516CHOR17 (5)
(式中、R15およびR16は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基あるいはシクロアルケニル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基あるいはハロゲン置換芳香族炭化水素基、置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基または炭素数2〜12のジアルキルアミノ基を示し、同一または異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。R14およびR17は炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基あるいはハロゲン置換芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。)で表されるジエーテル化合物であることを特徴とする請求項記載のオレフィン類重合用触媒。
【請求項7】
前記ジエーテル化合物が、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンまたは9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンであることを特徴とする請求項記載のオレフィン類重合用触媒。
【請求項8】
請求項〜請求項のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行なうことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合活性および立体規則性を高度に維持しながら、適度な分子量分布を有するオレフィン類重合体を高収率で得ることのできるオレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒及びオレフィン類重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プロピレンなどのオレフィン類の重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物およびハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分が知られている。また該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および有機ケイ素化合物から成るオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類を重合もしくは共重合させる方法が数多く提案されている。
【0003】
例えば、特開昭57−63310号公報(特許文献1)には、特定の電子供与体が担持された固体状チタン触媒成分と、助触媒成分として有機アルミニウム化合物と、少なくとも一つのSi−OR(式中、Rは炭化水素基である)を有するケイ素化合物を用いた場合に優れた重合活性と立体特異性を発現することが記載されている。
【0004】
上記特定の電子供与性成分として、特開昭58−83006号公報(特許文献2)にはフタル酸エステルが開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの電子供与体を担持させた固体触媒成分は、重合活性および立体規則性の両面において、改良の余地を有していた。一方、別の試みとして、特表2005−539108号公報(特許文献3)にはコハク酸エステルを使用した固体触媒成分、国際公開2006/077945号公報(特許文献4)、国際公開2011/071237号公報(特許文献5)にはコハク酸エステルと類似の構造を有する環状エステルを用いた固体触媒成分がそれぞれ開示され、これらの固体触媒成分からは分子量分布が広いオレフィン類重合体が得られることが示されている。
【0006】
また、特開2005−187550号公報(特許文献6)には1,3−ジエーテルを内部電子供与体あるいは外部電子供与体として用いる技術が開示され、このような触媒系からは分子量分布が狭いオレフィン類重合体が得られることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−63310号公報
【特許文献2】特開昭58−83006号公報
【特許文献3】特表2005−539108号公報
【特許文献4】国際公開2006/077945号公報
【特許文献5】国際公開2011/071237号公報
【特許文献6】特開2005−187550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
オレフィンの立体規則性重合に供される触媒としては、活性、立体規則性、分子量分布、活性の持続性、MFR制御性(水素応答性)、嵩密度等様々な重合性能のバランスが必要であり、その用途により必要な性能には違いがあるため、特徴の異なる様々な固体触媒成分、ならびに触媒が必要とされている。上記先行技術のような固体触媒成分を用いた場合、活性または立体規則性が不十分であったり、一部の固体触媒成分は分子量分布が狭いポリマーのみ、あるいは分子量分布が広いポリマーのみしか製造できず、得られるオレフィン類重合体の分子量分布を適度な範囲においてコントロールし難いといった問題を有していた。汎用的に用いられる重合体の分子量分布は、例えばMw/Mn値で4から6程度の間で制御できることが求められ、その範囲において他の性能が優れていること、すなわちある程度以上の結晶性と、ある程度以上の高い重合活性を示す固体触媒成分であることがもっとも実用性が高いとされている。
【0009】
従って、本発明の目的は、上記のニーズに応えるべく、成形性を損なわない適度なMw/Mn値の分子量分布および高立体規則性のオレフィン類重合体を得ることができる高い重合活性を有する新規のオレフィン類重合用固体触媒成分、オレフィン類重合用触媒およびこれを用いたオレフィン類重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる実情において、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、チタン、マグネシウム、ハロゲンおよび特定の芳香族環を含有する環状シクロアルケンジカルボン酸ジエステル類を含有する固体状チタン触媒成分(I)を必須の構成要素とするオレフィン類重合触媒が、高立体規則性、ならびに高い重合活性を有し、また分子量分布についても、上記化合物の置換基を含めた立体構造によりMw/Mn値で4から6程度の間で制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、チタン、マグネシウム、ハロゲンおよび下記一般式(1);
【化1】

(式中、R〜Rは、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基または分岐アルケニル基、炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数2〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニル基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基、炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の窒素原子含有炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の酸素原子含有炭化水素基、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24のリン含有炭化水素基、または炭素数1〜24のケイ素含有炭化水素基を示し、同一でも異なっていてもよく、但し、RおよびRが水素原子であるもの、該炭素数2〜24の窒素原子含有炭化水素基は、結合末端がC=N基であるもの、該炭素数2〜24の酸素原子含有炭化水素基は、結合末端がカルボニル基であるもの、該炭素数2〜24のリン含有炭化水素基は、結合末端がC=P基であるものをそれぞれ除く。R〜Rは、隣接するものと環を形成してもよい。)で表される化合物を含有することを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、(I)前記固体触媒成分、(II)下記一般式(2);
AlQ3−p (2)
( 式中、Rは炭素数1〜6のヒドロカルビル基を示し、複数個ある場合は、同一でも異なってもよく、Qは水素原子、炭素数1〜6のヒドロカルビルオキシ基、あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、および(III)外部電子供与性化合物から形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒を提供するものである。
【0013】
さらに、本発明は、前記オレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類の重合を行うことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分およびオレフィン類重合用触媒を用いれば、高い立体規則性と、広くも狭くもない適度な分子量分布を有したオレフィン類重合体を、高い収率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の重合触媒を調製する工程を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(オレフィン類重合用固体触媒成分の説明)
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分(以下、単に「成分(I)」と言うことがある。)は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび、電子供与性化合物として上記一般式(1)で表される電子供与性化合物(以下、単に「成分(A)」ということがある。)を必須成分として含有する。
【0017】
ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の各原子が挙げられ、中でも好ましくは塩素、臭素またはヨウ素であり、特に好ましくは塩素またはヨウ素である。
【0018】
上記一般式(1)中におけるR〜Rの炭素数1〜20の直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ペンチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。好ましくは炭素数1〜12の直鎖状アルキル基である。
【0019】
また、前記R〜Rにおける炭素数3〜20の分岐アルキル基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの2級炭素または3級炭素を有するアルキル基が挙げられる。好ましくは炭素数3〜12の分岐アルキル基である。
【0020】
また、前記R〜Rにおける炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基としては、アリル基、3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、10−ドデセニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基である。炭素数3〜20の分岐アルケニル基としては、イソプロペニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、2-エチル,3−ヘキセニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数3〜12の分岐アルケニル基である。
【0021】
また、前記R〜Rにおける炭素数1〜20の直鎖状ハロゲン置換アルキル基としては、例えばハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ハロゲン化n−プロピル基、、ハロゲン化n−ブチル基、ハロゲン化n−ペンチル基、ハロゲン化n−ヘキシル基、ハロゲン化n−ペンチル基、ハロゲン化n−オクチル基、ハロゲン化ノニル基、ハロゲン化デシル基、ハロゲン置換ウンデシル基、ハロゲン置換ドデシル基等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基である。また、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルキル基としては、ハロゲン化イソプロピル基、ハロゲン化イソブチル基、ハロゲン化2−エチルヘキシル基、ハロゲン化ネオペンチル基等が挙げられる。好ましくは、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基である。
【0022】
また、前記R〜Rにおける炭素数2〜20の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基としては、2−ハロゲン化ビニル基,3−ハロゲン化アリル基、3−ハロゲン化−2−ブテニル基、4−ハロゲン化−3−ブテニル基、パーハロゲン化−2−ブテニル基、6−ハロゲン化−4−ヘキセニル基、3−トリハロゲン化メチル−2−プロペニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数2〜12のハロゲン置換アルケニル基である。また、炭素数3〜20の分岐ハロゲン置換アルケニル基としては、3−トリハロゲン化−2−ブテニル基、2−ペンタハロゲン化エチル−3−ヘキセニル基、6−ハロゲン化−3−エチル−4−ヘキセニル基、3−ハロゲン化イソブテニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルケニル基である。
【0023】
また、前記R〜Rにおける炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、テトラメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ブチルシクロペンチル基等が挙げられる。好ましくは炭素数3〜12のシクロアルキル基である。また、炭素数3〜20のシクロアルケニル基としては、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、ノルボルネン基、等が挙げられる。好ましくは炭素数3〜12のシクロアルケニル基である。
【0024】
また、前記R〜Rにおける炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルキル基としては、ハロゲン置換シクロプロピル基、ハロゲン置換シクロブチル基、ハロゲン置換シクロペンチル基、ハロゲン置換トリメチルシクロペンチル基、ハロゲン置換シクロヘキシル基、ハロゲン置換メチルシクロヘキシル基、ハロゲン置換シクロヘプチル基、ハロゲン置換シクロオクチル基、ハロゲン置換シクロノニル基、ハロゲン置換シクロデシル基、ハロゲン置換ブチルシクロペンチル等が挙げられる。好ましくは炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルキル基である。
【0025】
また、前記R〜Rにおける炭素数3〜20のハロゲン置換シクロアルケニル基としては、ハロゲン置換シクロプロペニル基、ハロゲン置換シクロブテニル基、ハロゲン置換シクロペンテニル基、ハロゲン置換トリメチルシクロペンテニル基、ハロゲン置換シクロヘキデニル基、ハロゲン置換メチルシクロヘキセニル基、ハロゲン置換シクロヘプテニル基、ハロゲン置換シクロオクテニル基、ハロゲン置換シクロノネニル基、ハロゲン置換シクロデセニル基、ハロゲン置換ブチルシクロペンテニル等が挙げられる。好ましくは炭素数3〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基である。
【0026】
また、前記R〜Rにおける炭素数6〜24の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、1−フェニルブチル基、4−フェニルブチル基、2−フェニルヘプチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、1,8−ジメチルナフチル基等が挙げられる。好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。
【0027】
また、前記R〜Rにおける炭素数6〜24のハロゲン置換芳香族炭化水素基としては、ハロゲン化フェニル基、ハロゲン化メチルフェニル基、トリハロゲン化メチルフェニル基、パーハロゲン化ベンジル基、パーハロゲン化フェニル基、2−フェニル,2−ハロゲン化エチル基、パーハロゲン化ナフチル基、4−フェニル,2,3−ジハロゲン化ブチル基等が挙げられる。好ましくは炭素数6〜12のハロゲン置換芳香族炭化水素基である。
【0028】
なお、前記R〜Rにおけるハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アルケニル基、ハロゲン置換シクロアルキル基、ハロゲン置換シクロアルケニル基、およびハロゲン置換芳香族炭化水素基において、ハロゲン種としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素が挙げられ、好ましくはフッ素、塩素または臭素である。
【0029】
また、前記R〜Rにおいて、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の窒素原子含有炭化水素基(ただし、RおよびRについては、結合末端がC=N基であるものを除く。)としては、例えば、メチルアミノメチル基、ジメチルアミノメチル基、エチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、プロピルアミノメチル基、ジプロピルアミノメチル基、メチルアミノエチル基、ジメチルアミノエチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、プロピルアミノエチル基、ジプロピルアミノエチル基、ブチルアミノエチル基、ジブチルアミノエチル基、ペンチルアミノエチル基、ジペンチルアミノエチル基、ヘキシルアミノエチル基、ヘキシルメチルアミノエチル基、ヘプチルメチルアミノエチル基、ジヘプチルアミノメチル基、オクチルメチルアミノメチル基、ジオクチルアミノエチル基、ノニルアミノメチル基、ジノニルアミノメチル基、デシルアミノメチル基、ジデシルアミノ基、シクロヘキシルアミノメチル基、ジシクロヘキシルアミノメチル基などのアルキルアミノアルキル基;フェニルアミノメチル基、ジフェニルアミノメチル基、ジトリルアミノメチル基、ジナフチルアミノメチル基、メチルフェニルアミノエチル基などのアリールアミノアルキル基またはアルキルアリールアミノアルキル基;多環状アミノアルキル基;アニリノ基、ジメチルアミノフェニル基、ビスジメチルアミノフェニル基等のアミノ基含有芳香族炭化水素基;メチルイミノメチル、エチルイミノエチル、プロピルイミノ、ブチルイミノ、フェニルイミノなどのイミノアルキル基等が挙げられる。好ましくは炭素数2〜12の窒素原子含有炭化水素基である。なお、結合末端とは、R、RにおいてはR、Rが結合する酸素原子側、R〜RにおいてはR〜Rが結合する炭素原子側の原子又は基を言う。
【0030】
また、前記R〜Rにおいて、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24の酸素原子含有炭化水素基(ただし、RおよびRについては、結合末端がカルボニル基であるものを除く。)としては、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、イソブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、イソプロポキシエチル基、イソブトキシエチル基などのエーテル基含有炭化水素基;フェノキシメチル基、メチルフェノキシメチル基、ジメチルフェノキメチル基、ナフトキシメチル基などのアリーロキシアルキル基;メトキシフェニル基、エトキスフェニル基などのアルコキシアリール基;アセトキシメチル基などが挙げられる。好ましくは炭素数2〜12の酸素原子含有炭化水素基である。なお、結合末端とは、R、RにおいてはR、Rが結合する酸素原子側、R〜RにおいてはR〜Rが結合する炭素原子側の原子又は基を言う。
【0031】
また、前記R〜Rにおいて、結合末端が炭素原子である炭素数2〜24のリン含有炭化水素基(ただし、RおよびRについては、結合末端がC=P基であるものを除く。)としては、例えば、ジメチルホスフィンメチル基、ジブチルホスフィノメチル基、ジシクロヘキシルホスフィノメチル基、ジメチルホスフィンエチル基、ジブチルホスフィノエチル基、ジシクロヘキシルホスフィノエチル基などのジアルキルホスフィノアルキル基;ジフェニルホスフィノメチル基、ジトリルホスフィノメチル基などのジアリールホスフィノアルキル基;ジメチルホスフフィノフェニル基、ジエチルホスフフィノフェニル基等のフォスフィノ基置換アリール基などが挙げられる。好ましくは炭素数2〜12のリン含有炭化水素基である。なお、結合末端とは、R、RにおいてはR、Rが結合する酸素原子側、R〜RにおいてはR〜Rが結合する炭素原子側の原子又は基を言う。
【0032】
また、前記R〜Rにおいて、炭素数1〜24のケイ素含有炭化水素基としては、例えば炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシアルキル基、炭化水素置換シリルアルキル基、炭化水素置換シリルアリール基などが挙げられ、具体的には、フェニルシリル、ジフェニルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、トリフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、トリトリルシリル、トリナフチルシリルなどの炭化水素置換シリル基;トリメチルシロキシメチル基、トリメチルシロキシエチル基、トリメチルシロキシフェニル基等のシロキシ炭化水素基、トリメチルシリルエーテルなどの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチルなどのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニルなどのケイ素置換アリール基等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜12のケイ素含有炭化水素基である。
【0033】
前記R〜Rの特に好ましい基は、水素原子、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニル基、炭素数3〜12の分岐アルケニル基、炭素数1〜12の直鎖状ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルキル基、炭素数3〜12の直鎖状ハロゲン置換アルケニル基、炭素数3〜12の分岐ハロゲン置換アルケニル基、炭素数4〜12のシクロアルキル基、炭素数4〜12のシクロアルケニル基、炭素数4〜12のハロゲン置換シクロアルキル基、炭素数4〜12のハロゲン置換シクロアルケニル基、または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。但し、RおよびRについては、水素原子を除く。
【0034】
前記R及びRの更に好ましい基は、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐アルキル基であり、R〜Rの更に好ましい基は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、炭素数3〜6の分岐アルキル基、炭素数4〜6のシクロアルキル基、炭素数4〜6のシクロアルケニル基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基である。
【0035】
一般式(1)で表される成分(A)の、好ましい具体例としては、インデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジ−t−ブチル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ペンチル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ヘキシル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−オクチル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−デシル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジシクロヘキシル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジフェニル、
【0036】
3−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、3−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、3−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、3−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、3−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−t−ブチル、
【0037】
4−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、4−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、4−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、4−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、4−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−t−ブチル、
【0038】
5−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、5−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、5−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、5−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、5−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、5−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、5−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−t−ブチル、
【0039】
6−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、6−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、6−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、6−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、6−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、6−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、6−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−t−ブチル、
【0040】
7−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、7−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、7−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、7−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソプロピル、7−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、7−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、7−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−t−ブチル、
【0041】
4−エチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−n−プロピルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−イソプロピルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−n−ブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−イソブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−t−ブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−フェニルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−シクロヘキシルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、
【0042】
4−エチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−n−プロピルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−イソプロピルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−n−ブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−イソブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−t−ブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−フェニルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロヘキシルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、
【0043】
3−エチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3−n−プロピルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3−イソプロピルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3−n−ブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3−イソブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3−t−ブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3−フェニルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3−シクロヘキシルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、
【0044】
3−エチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−n−プロピルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−イソプロピルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−n−ブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−イソブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−t−ブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−フェニルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−シクロヘキシルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、
【0045】
3,4−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3,5−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3,6−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3,7−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4,5−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4,6−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4,7−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、5,6−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、5,7−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、6,7−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、
【0046】
3,4,5−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3,4,6−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3,4,7−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3,5,6−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3,5,7−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3,6,7−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、
【0047】
4,5,6−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4,5,7−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4,6,7−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、5,6,7−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、
【0048】
3,4,5,6−テトラメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3,4,5,7−テトラメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4,5,6,7−テトラメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3,4,5,6,7−ペンタメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、
【0049】
3,4−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,5−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,6−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,7−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4,5−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4,6−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4,7−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、5,6−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、5,7−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、6,7−ジメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、
【0050】
3,4,5−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,4,6−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,4,7−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,5,6−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,5,7−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,6,7−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、
【0051】
4,5,6−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4,5,7−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4,6,7−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、5,6,7−トリメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、
【0052】
3,4,5,6−テトラメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,4,5,7−テトラメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4,5,6,7−テトラメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3,4,5,6,7−ペンタメチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、等が例示される。なお、一般式(1)で表わされる化合物は単独または2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0053】
一般式(1)の化合物のうち特に好ましいものとしては、インデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、インデン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、4−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、4−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、4−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、5−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、5−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、5−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、5−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、5−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、6−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、6−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、6−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、6−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、6−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、7−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、7−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、7−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−プロピル、7−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチル、7−メチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル、4−エチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−n−プロピルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−イソプロピルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−n−ブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−イソブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−t−ブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−フェニルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−シクロヘキシルインデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、4−エチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−n−プロピルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−イソプロピルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−n−ブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−イソブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−t−ブチルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−フェニルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、4−シクロヘキシルインデン−1,2−ジカルボン酸ジエチルなどが挙げられる。
【0054】
一般式(1)の化合物の特徴は、芳香族環がシクロアルケン構造を通して一つのカルボニル基と共役構造を取っていることであり、この特徴により従来のコハク酸エステル類やシクロアルカンジカルボン酸エステル類の用いて得られるポリマーの分子量分布とは異なる挙動が発現されていると推察される。
【0055】
上記ジエステル構造を持つ化合物には、シス、トランス等の異性体が存在するが、どの構造であっても本発明の目的に合致する効果を有することが多い。
【0056】
本発明における固体触媒成分(I)中には、前記一般式(1)で示される成分(A)以外の電子供与性化合物(以下、成分(D)とも言う。)が含まれていてもよい。このような電子供与性化合物(D)としては、酸ハライド類、酸アミド類、ニトリル類、酸無水物、ジエーテル化合物類、ジカーボネート化合物、エーテル基を含有するカーボネート化合物および成分(A)以外の有機酸エステルなどが挙げられる。このような電子供与性化合物(D)は、2種以上併用することもできる。
【0057】
本発明における固体触媒成分(I)中には、ポリシロキサン(以下、単に「成分(E)」とも言う。)が含まれていてもよい。ポリシロキサンを用いることにより生成ポリマーの立体規則性あるいは結晶性を向上させることができ、さらには生成ポリマーの微粉を低減することが可能となる。ポリシロキサンは、主鎖にシロキサン結合(−Si−O−結合)を有する重合体であるが、シリコーンオイルとも総称され、25℃における粘度が0.02〜100cm2/s(2〜10000センチストークス)、より好ましくは0.03〜5cm2/s(3〜500センチストークス)を有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0058】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0059】
また、本発明における固体触媒成分(I)中のチタン、マグネシウム、ハロゲン原子、エステル化合物(A)の含有量は特に規定されないが、好ましくは、チタンが0.1〜10重量%、好ましくは0.5 〜8.0重量%、より好ましくは1.0〜8.0重量%であり、マグネシウムが10〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、特に好ましくは13〜25重量%、ハロゲン原子が20〜89重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは40〜75重量%、またエステル化合物(A)が合計0.5〜40重量%、より好ましくは合計1〜30重量%、特に好ましくは合計2〜25重量%である。
【0060】
(オレフィン類重合用固体触媒成分(I)の製造方法の説明)
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分(I)は、下記のようなマグネシウム化合物、チタン化合物、必要に応じて前記チタン化合物以外のハロゲン化合物および前記一般式(1)のエステル化合物(A)を、相互に接触させることで調製される。
【0061】
本発明の固体触媒成分の製造方法において使用されるマグネシウム化合物(B)(以下、単に「成分(B)」とも言う。)としては、ジハロゲン化マグネシウム、ジアルキルマグネシウム、ハロゲン化アルキルマグネシウム、ジアルコキシマグネシウム、ジアリールオキシマグネシウム、ハロゲン化アルコキシマグネシウムあるいは脂肪酸マグネシウム等から選ばれる一種以上が挙げられる。これらのマグネシウム化合物の中、ジハロゲン化マグネシウム、ジハロゲン化マグネシウムとジアルコキシマグネシウムの混合物、ジアルコキシマグネシウムが好ましく、特にジアルコキシマグネシウムが好ましい。
【0062】
ジアルコキシマグネシウムとしては、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられる。また、これらのジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させてなるものでもよい。また、上記のジアルコキシマグネシウムは、一種以上併用することもできる。
【0063】
更に、本発明の固体触媒成分において、ジアルコキシマグネシウムは、顆粒状または粉末状であることが好ましく、その形状は不定形あるいは球状のものを使用し得る。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、重合時により良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の問題が解消される。
【0064】
上記の球状のジアルコキシマグネシウムは、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が3以下であり、好ましくは1から2であり、より好ましくは1から1.5である。
【0065】
また、上記ジアルコキシマグネシウムの平均粒径は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、平均粒子径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径)で1〜200μmのものが好ましく、5〜150μmのものがより好ましい。球状のジアルコキシマグネシウムの場合、その平均粒径は1〜100μmが好ましく、5〜50μmがより好ましく、10〜40μmがさらに好ましい。また、その粒度については、微粉および粗粉の少ない、粒度分布の狭いものが望ましい。具体的には、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときに、5μm以下の粒子が20%以下であるものが好ましく、10%以下であるものがより好ましい。一方、100μm以上の粒子が10%以下であるものが好ましく、5%以下であるものがより好ましい。
【0066】
更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は体積積算粒度分布における積算粒度で90%の粒径、D10は体積積算粒度分布における積算粒度で10%の粒径である。)で表すと3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。上記の如き球状のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、例えば特開昭58−41832号公報、同62−51633号公報、特開平3−74341号公報、同4−368391号公報、同8−73388号公報などに例示されている。
【0067】
本発明では、マグネシウム化合物(B)は、溶液状のマグネシウム化合物、またはマグネシウム化合物懸濁液のいずれも用いることができる。マグネシウム化合物(B)が固体である場合には、マグネシウム化合物(B)の可溶化能を有する溶媒に溶解して溶液状のマグネシウム化合物とするか、マグネシウム化合物(B)の可溶化能を有さない溶媒に懸濁してマグネシウム化合物懸濁液として用いる。マグネシウム化合物(B)が液体である場合には、そのまま溶液状のマグネシウム化合物として用いることができ、マグネシウム化合物の可溶化能を有する溶媒にこれを溶解して溶液状のマグネシウム化合物として用いることもできる。
【0068】
固体のマグネシウム化合物(B)を可溶化しうる化合物としては、アルコール、エーテルおよびエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルアルコール、イソプロピルベンジルアルコール、エチレングリコールなどの炭素原子数が1〜18のアルコール;トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどの炭素原子数が1〜18のハロゲン含有アルコール;メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルベンジルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテルなどの炭素原子数が2〜20のエーテル;テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラヘキソキシチタン、テトラブトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウムなどの金属酸エステルなどが挙げられ、中でも、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノールなどのアルコールが好ましく、2−エチルヘキサノールが特に好ましい。
【0069】
一方、マグネシウム化合物(B)の可溶化能を有さない媒体としては、マグネシウム化合物を溶解することがない、飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒が用いられる。飽和炭化水素溶媒または不飽和炭化水素溶媒は、安全性や工業的汎用性が高いことから、具体的にはヘキサン、ヘプタン、デカン、メチルヘプタンなどの沸点50〜200℃の直鎖状または分岐鎖状脂肪族炭化水素化合物、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの沸点50〜200℃の脂環式炭化水素化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの沸点50〜200℃の芳香族炭化水素化合物が挙げられ、中でも、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの沸点50〜200℃の直鎖状脂肪族炭化水素化合物や、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの沸点50〜200℃の芳香族炭化水素化合物が、好ましく用いられる。また、これらは単独で用いても、2種以上混合して使用してもよい。
【0070】
本発明における成分(I)の調製に用いられるチタン化合物(C)(以下「成分(C)」ということがある。)としては、例えば、一般式(6);
Ti(OR184−j (6)
(R18は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、OR18基が複数存在する場合、複数のR18は同一であっても異なっていてもよく、Xはハロゲン基であり、Xが複数存在する場合、各Xは同一であっても異なっていてもよく、jは0または1〜4の整数である。)で表わされる4価のチタン化合物を挙げることができる。
【0071】
前記一般式(6)で表わされる4価のチタン化合物は、アルコキシチタン、チタンハライドもしくはアルコキシチタンハライド群から選択される化合物の1種あるいは2種以上である。具体的には、チタンテトラフルオライド、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、アルコキシチタンハライドとしてメトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド等のアルコキシチタントリハライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、等のジアルコキシチタンジハライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等のトリアルコキシチタンハライドが挙げられる。これらの中ではハロゲン含有チタン化合物が好ましく用いられ、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライドである。これらのチタン化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。さらに、これら一般式(6)で表わされる4価のチタン化合物は、炭化水素化合物あるいはハロゲン化炭化水素化合物等に希釈して使用してもよい。
【0072】
本発明の固体触媒成分(I)の調製において、必要に応じて、上記チタン化合物(C)以外のハロゲン化合物を使用してもよい。ハロゲン化合物としては、四価のハロゲン含有ケイ素化合物が挙げられる。より具体的には、テトラクロロシラン(四塩化ケイ素)、テトラブロモシラン等のシランテトラハライド、メトキシトリクロロシラン、エトキシトリクロロシラン、プロポキシトリクロロシラン、n−ブトキシトリクロロシラン、ジメトキシジクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、ジプロポキシジクロロシラン、ジ−n−ブトキシジクロロシラン、トリメトキシクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、トリプロポキシクロロシラン、トリ−n−ブトキシクロロシラン等のアルコキシ基含有ハロゲン化シランが挙げられる。
【0073】
本発明の固体触媒成分(I)の調製で使用される成分(A)は、本発明の固体触媒成分(I)の成分(A)と同様であり、その説明を省略する。また、本発明の固体触媒成分(I)の調製で必要に応じて使用される上記成分(A)以外の電子供与性化合物(D)は、本発明の固体触媒成分(I)の電子供与性化合物(D)と同様であり、その説明を省略する。また、本発明の固体触媒成分(I)の調製で必要に応じて使用される成分(E)は、本発明の固体触媒成分(I)の成分(E)と同様であり、その説明を省略する。
【0074】
本発明において、好適な固体触媒成分(I)の調製方法としては、例えば、還元性を有しない固体マグネシウム化合物、成分(A)およびハロゲン化チタンを共粉砕する方法や、アルコール等の付加物を有するハロゲン化マグネシウム化合物、成分(A)およびハロゲン化チタンを不活性炭化水素溶媒の共存下、接触させる方法、ジアルコキシマグネシウム、成分(A)およびハロゲン化チタンを不活性炭化水素溶媒共存下で接触させる方法、還元性を有するマグネシウム化合物、成分(A)およびハロゲン化チタンを接触させて固体触媒を析出させる方法などが挙げられる。
【0075】
以下に、オレフィン類重合用固体触媒成分(I)の具体的な調製方法を例示する。なお、以下の(1)〜(16)の方法において、成分(A)に加え、成分(A)以外の電子供与性化合物(D)を併用してもよい。さらに、上記接触は、例えば、ケイ素、リン、アルミニウム等の他の反応試剤や界面活性剤の共存下に行ってもよい。
【0076】
(1)ハロゲン化マグネシウムをアルコキシチタン化合物に溶解させた後、有機ケイ素化合物を接触させて固体生成物を得、該固体生成物とハロゲン化チタンを反応させ、次いで成分(A)を接触反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。なおこの際、成分(I)に対し、さらに有機アルミニウム化合物、有機ケイ素化合物及びオレフィン類で予備的な重合処理を行なうこともできる。
(2)ハロゲン化マグネシウム及びアルコールを反応させて均一溶液とした後、該均一溶液にカルボン酸無水物を接触させ、次いでこの溶液に、ハロゲン化チタン及び成分(A)を接触反応させて固体物を得、該固体物に更にハロゲン化チタンを接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。
(3)金属マグネシウム、ブチルクロライド及びジアルキルエーテルを反応させることによって有機マグネシウム化合物を合成し、該有機マグネシウム化合物にアルコキシチタンを接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物に成分(A)及びハロゲン化チタンを接触反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。なおこの際、該固体成分に対し、有機アルミニウム化合物、有機ケイ素化合物及びオレフィンで予備的な重合処理を行ない、オレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製することもできる。
(4)ジアルキルマグネシウム等の有機マグネシウム化合物と、有機アルミニウム化合物を、炭化水素溶媒の存在下、アルコールと接触反応させて均一溶液とし、この溶液に四塩化ケイ素等のケイ素化合物を接触させて固体生成物を得、次いで芳香族炭化水素溶媒の存在下で該固体生成物に、ハロゲン化チタン及び成分(A)を接触反応させた後、更に四塩化チタンを接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法。
(5)塩化マグネシウム、テトラアルコキシチタン及び脂肪族アルコールを、炭化水素溶媒の存在下で接触反応させて均質溶液とし、その溶液とハロゲン化チタンを接触した後昇温して固体物を析出させ、該固体物に成分(A)を接触させ、更にハロゲン化チタンと反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法。
(6)金属マグネシウム粉末、アルキルモノハロゲン化合物及びヨウ素を接触反応させ、その後テトラアルコキシチタン、酸ハロゲン化物、及び脂肪族アルコールを、炭化水素溶媒の存在下で接触反応させて均質溶液とし、その溶液に四塩化チタンを加えた後昇温し、固体生成物を析出させ、該固体生成物に成分(A)を接触させ、更に四塩化チタンと反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。
(7)ジアルコキシマグネシウムを炭化水素溶媒に懸濁させた後、四塩化チタンと接触させた後に昇温し、成分(A)と接触させて固体生成物を得、該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄した後、炭化水素溶媒の存在下、再度四塩化チタンと接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。なおこの際、該固体成分を、炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で加熱処理することもできる。
(8)ジアルコキシマグネシウムを炭化水素溶媒に懸濁させた後、ハロゲン化チタン及び成分(A)と接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物を不活性有機溶媒で洗浄した後、炭化水素溶媒の存在下、再度ハロゲン化チタンと接触・反応させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法。なおこの際、該固体成分とハロゲン化チタンとを2回以上接触させることもできる。
(9)ジアルコキシマグネシウム、塩化カルシウム及びアルコキシ基含有ケイ素化合物を共粉砕し、得られた粉砕固体物を炭化水素溶媒に懸濁させた後、ハロゲン化チタン及び成分(A)と接触反応させ、次いで更にハロゲン化チタンを接触させることによりオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。
(10)ジアルコキシマグネシウム及び成分(A)を炭化水素溶媒に懸濁させ、その懸濁液をハロゲン化チタンと接触、反応させて固体生成物を得、該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄後、さらに炭化水素溶媒の存在下、ハロゲン化チタンを接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法。
(11)ステアリン酸マグネシウムのような脂肪族マグネシウムを、ハロゲン化チタン及び成分(A)と接触反応させ、その後更にハロゲン化チタンと接触させることによりオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。
(12)ジアルコキシマグネシウムを炭化水素溶媒に懸濁させ、ハロゲン化チタンと接触させた後昇温し、成分(A)と接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄した後、炭化水素溶媒の存在下、再度ハロゲン化チタンと接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法であって、上記懸濁・接触並びに接触反応のいずれかの段階において、塩化アルミニウムを接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。
(13)ジアルコキシマグネシウム、2−エチルヘキシルアルコール及び二酸化炭素を、炭化水素溶媒の存在下で接触反応させて均一溶液とし、この溶液にハロゲン化チタン及び成分(A)を接触反応させて固体物を得、更にこの固体物をテトラヒドロフランに溶解させ、その後更に固体生成物を析出させ、この固体生成物にハロゲン化チタンを接触反応させ、必要に応じハロゲン化チタンとの接触反応を繰り返し行い、オレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。なおこの際、上記接触・接触反応・溶解のいずれかの段階において、例えばテトラブトキシシラン等のケイ素化合物を使用することもできる。
(14)塩化マグネシウム、有機エポキシ化合物及びリン酸化合物を炭化水素溶媒中に懸濁させた後、加熱して均一溶液とし、この溶液に、カルボン酸無水物及びハロゲン化チタンを接触反応させて固体生成物を得、該固体生成物に成分(A)を接触させて反応させ、得られた反応生成物を炭化水素溶媒で洗浄した後、炭化水素溶媒の存在下、再度ハロゲン化チタンを接触させることによりオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法。
(15)ジアルコキシマグネシウム、チタン化合物及び成分(A)を炭化水素溶媒の存在下に接触反応させ、得られた反応生成物にポリシロキサン等のケイ素化合物を接触反応させ、更にハロゲン化チタンを接触反応させ、次いで有機酸の金属塩を接触反応させた後、再度ハロゲン化チタンを接触させることによりオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法。(16)ジアルコキシマグネシウムと成分(A)を炭化水素溶媒に懸濁させた後、昇温してハロゲン化ケイ素と接触させ、その後ハロゲン化チタンと接触させて固体生成物を得、該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄した後、炭化水素溶媒の存在下、再度ハロゲン化チタンと接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を調製する方法。なおこの際、該固体成分を、炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で加熱処理してもよい。
【0077】
なお、オレフィン重合時の重合活性、生成ポリマーの立体規則性をさらに向上させるため、これら(1)〜(16)の方法において、洗浄後の上記固体触媒成分(I)に、新たにハロゲン化チタンおよび炭化水素溶媒を20〜100℃で接触させ、昇温して、反応処理(第2次反応処理)を行った後、常温で液体の不活性有機溶媒で洗浄する操作を1〜10回繰り返してもよい。
【0078】
本発明における成分(I)の調製方法としては、上記のいずれの方法であっても好適に用いることができ、中でも(1)、(3)、(4)、(5)、(7)、(8)または(10)の方法が好ましく、(3)、(4)、(7)、(8)、(10)の方法が、高立体規則性を有するオレフィン類重合用固体触媒成分が得られる点で特に好ましい。最も好ましい調製方法は、ジアルコキシマグネシウムおよび成分(A)を、直鎖状炭化水素または分岐鎖状脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素および芳香族炭化水素から選ばれる炭化水素溶媒に懸濁させ、その懸濁液をハロゲン化チタン中に添加し、反応させて固体生成物を得、該固体生成物を炭化水素溶媒で洗浄後、さらに炭化水素溶媒の存在下、ハロゲン化チタンを接触させてオレフィン類重合用固体触媒成分(I)を得る方法である。
【0079】
前記固体触媒成分(I)を調製する際の各成分の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えばマグネシウム化合物(B)1モル当たり、4価のチタンハロゲン化合物(C)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、成分(A)(成分(I)が電子供与性化合物(D)を含有しない場合)体、または成分(A)と電子供与性化合物(D)の合計量(成分(I)が電子供与性化合物(D)を含有する場合)が0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルであり、溶媒が0.001〜500モル、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.005〜10モルであり、ポリシロキサン(E)が0.01〜100g、好ましくは0.05〜80g、より好ましくは1〜50gである。
【0080】
(オレフィン類重合用触媒の説明)
本発明のオレフィン類重合用触媒は、(I)固体触媒成分、(II)有機アルミニウム化合物(以下、単に「成分(F)」ということがある。)および(III)外部電子供与性化合物(以下、単に「成分(G)」ということがある。)を接触させることでオレフィン類重合用触媒を形成し、該触媒の存在下にオレフィン類の重合もしくは共重合を行うことができる。
【0081】
(II)上記一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物で表される化合物であれば、特に制限されないが、Rとしては、エチル基、イソブチル基が好ましく、Qとしては、水素原子、塩素原子、臭素原子、エトキシ基、フェノキシ基が好ましく、pは、2、2.5又は3が好ましく、3であることが特に好ましい。
【0082】
このような有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイドなどのハロゲン化アルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド等のアルキルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド等のアルキルアルミニウムアルコキシドが挙げられ、中でもジエチルアルミニウムクロライドなどのハロゲン化アルキルアルミニウム、またはトリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムが好ましく用いられ、特に好ましくはトリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムである。これらのアルミニウム化合物は、1種あるいは2種以上が使用できる。
【0083】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる(III)外部電子供与性化合物としては、酸素原子あるいは窒素原子を含有する有機化合物が挙げられ、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、有機ケイ素化合物、中でもSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物、またはSi−N−C結合を有するアミノシラン化合物などが挙げられる。
【0084】
上記のなかでも特に安息香酸エチル、p−メトキシ安息香酸エチル、p−エトキシ安息香酸エチル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のエステル類、ジエーテル類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物、Si−N−C結合を含むアミノシラン化合物、が好ましく、Si−O−C結合を有する有機ケイ素化合物、Si−N−C結合を有するアミノシラン化合物、2位に置換基を有する1,3−ジエーテル類が、特に好ましい。
【0085】
上記(III)の外部電子供与性化合物のうち、Si−O−C結合を有する有機ケイ素化合物としては、下記一般式(3);RSi(OR104−q (3)
(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基あるいはシクロアルケニル基、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基、あるいは置換基を有する芳香族炭化水素基のいずれかで、同一または異なっていてもよい。R10は炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、および置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)で表わされるアルコキシシラン化合物があげられる。
【0086】
上記(III)の外部電子供与性化合物のうち、Si−N−C結合を有するアミノシラン化合物としては、下記一般式(4);(R1112N)SiR134−s (4)
(式中、R11とR12は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基あるいはシクロアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基であり、R11とR12は同一でも異なってもよく、また互いに結合して環を形成してもよい。R13は炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ビニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルオキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基またはシクロアルキルオキシ基、および炭素数6〜20のアリール基またはアリールオキシ基を示し、R13が複数ある場合、複数のR13は同一でも異なってもよい。sは1から3の整数である。)で表わされるアミノシラン化合物が挙げられる。
【0087】
これらのような有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、アルキル(シクロアルキル)アルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、シクロアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、テトラキス(アルキルアミノ)シラン、アルキルトリス(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルビス(アルキルアミノ)シラン、トリアルキル(アルキルアミノ)シラン等を挙げることができ、具体的には、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ビス(エチルアミノ)メチルエチルシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(メチルアミノ)(メチルシクロペンチルアミノ)メチルシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、トリメチルシリルトリメトキシシラン、またはトリメチルシリルトリエトキシシラン等が挙げられ、中でも、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、またはジエチルアミノトリエトキシシラン等が好ましく用いられる。また、該有機ケイ素化合物は、一般式(3)で表わされる有機ケイ素化合物及び一般式(4)で表わされるアミノシラン化合物から選択される1種単独あるいは2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0088】
また、2位に置換基を有する1,3−ジエーテル化合物としては、下記一般式(5);
14OCHCR1516CHOR17 (5)
(式中、R15およびR16は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基あるいはシクロアルケニル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基あるいはハロゲン置換芳香族炭化水素基、置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基、炭素数1〜12のアルキルアミノ基または炭素数2〜12のジアルキルアミノ基を示し、同一または異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。R14およびR17は炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基あるいはハロゲン置換芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。)で表されるジエーテル化合物から選択される。
【0089】
具体的には、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン等が挙げられ、中でも、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン等が好ましく用いられ、これらの化合物を少なくとも1種または2種以上を用いることができる。
【0090】
(オレフィン類の重合方法)
本発明においては、前記オレフィン類重合触媒の存在下に、オレフィン類の重合もしくは共重合を行なう。オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられ、これらのオレフィン類は1種あるいは2種以上併用することができ、中でもエチレン、プロピレンおよび1−ブテンが好適に用いられる。特に好ましいものはプロピレンである。
【0091】
プロピレンの重合を行う場合、他のオレフィン類との共重合を行なうこともできる。共重合されるオレフィン類としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等であり、これらのオレフィン類は1種あるいは2 種以上併用することができる。とりわけ、エチレンおよび1−ブテンが好適に用いられる。
【0092】
各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常有機アルミニウム化合物(F)は固体触媒成分(I)中のチタン原子1モル当たり、1〜2000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲で用いられる。外部電子供与性化合物(G)は、成分(F)1モル当たり、0.002〜10モル、好ましくは0.01〜2モル、特に好ましくは0.01〜0.5モルの範囲で用いられる。
【0093】
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(F)を装入し、次いで外部電子供与性化合物(G)を接触させた後に成分(I)を接触させることが望ましい。本発明におけるオレフィンの重合は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行なうことができ、またプロピレン等のオレフィンモノマーは、気体および液体のいずれの状態でも用いることができる。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に、重合反応は1段で行なってもよいし、2段以上で行なってもよい。
【0094】
更に、本発明においてオレフィン類重合用固体触媒成分、有機アルミニウム化合物、および外部電子供与性化合物を含有する触媒を用いてオレフィンを重合するにあたり(本重合ともいう。)、触媒活性、立体規則性および生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行なうことが望ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
【0095】
予備重合を行なうに際して、各成分およびモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(F)を装入し、次いで固体触媒成分(I)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン、またはプロピレンと1種あるいは2種以上の他のオレフィン類の混合物を接触させる。
【0096】
なお、成分(G)を組み合わせて予備重合を行なう場合は、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず成分(F)を装入し、次いで成分(G)を接触させ、更に固体触媒成分(I)を接触させた後、プロピレン等のオレフィン、またはプロピレンと1種あるいは2種以上の他のオレフィン類の混合物を接触させる方法が望ましい。
【0097】
プロピレンブロック共重合体を製造する場合は、2段階以上の多段重合により行い、通常第1段目で重合用触媒の存在下にプロピレンを重合し、第2段目でエチレン及びプロピレンを共重合することにより得られる。第2段目あるいはこれ以降の重合時にプロピレン以外のα−オレフィンを共存あるいは単独で重合させることも可能である。α−オレフィンの例としては、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。具体的には、第1段目でポリプロピレン部の割合が20〜80重量%になるように重合温度および時間を調整して重合を行ない、次いで第2段目において、エチレンおよびプロピレンあるいは他のα−オレフィンを導入し、エチレン−プロピレンゴム(EPR)などのゴム部割合が20〜80重量%になるように重合する。第1段目及び第2段目における重合温度は共に、200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、各重合段階での重合時間あるいは連続重合の場合、滞留時間は通常1分〜5時間である。
【0098】
重合方法としては、シクロヘキサン、ヘプタン等の不活性炭化水素化合物の溶媒を使用するスラリー重合法、液化プロピレン等の溶媒を使用するバルク重合法、及び実質的に溶媒を使用しない気相重合法が挙げられる。好ましい重合方法としては、バルク重合法、気相重合法である。
【0099】
実施例
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0100】
(製造例1)
<インデンー1,2−ジカルボン酸ジメチルの合成>
100mlの無水トルエン中に分散した水素化ナトリウム(244ミリモル)に当モルのジメチルオキサレートを25℃で加え、次に3−フェニルプロピオン酸メチル(122ミリモル)を加えた。反応溶液は、60℃で1時間攪拌し、室温に戻した後、氷水中に投入し、酢酸エチルで有機層を抽出した。抽出液は、硫酸ナトリウムで脱水後、濃縮することで中間体の2−オキソ−3−フェニルメチル−ブタン二酸ジメチルが20g得られた。上記の操作をさらに4回行い、合計100gの中間体(2−オキソ−3−フェニルメチル−ブタン二酸ジメチル)を得た。次に1Lの濃硫酸に2−オキソ−3−フェニルメチル−ブタン二酸ジメチル100gを0℃で1時間かけて滴下した。滴下後、25℃で2時間攪拌し、室温に戻した後、氷水中に投入し、酢酸エチルで有機層を抽出した。抽出液は、塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。最後に残留物をシリカゲルカラムで精製することで目的物の化合物70gを得た。
【0101】
1H−NMRによる分析を行った結果、それぞれ1H−NMRケミカルシフト値が、3.64(s,3H),3.77(s,3H),4.83(s,1H),7.40〜7.45(m,2H),7.51〜7.55(m,1H),7.61〜7.65(m,1H) ,7.87(d,1H)であったことから、得られた生成物はインデンー1,2−ジカルボン酸ジメチルであることが確認された。なお、LCによる測定を行なった所、得られたインデンー1,2−ジカルボン酸ジメチルの純度は、98.0%であった。
【0102】
(製造例2)
<インデンー1,2−ジカルボン酸ジエチルの合成>
100mlの無水トルエン中に分散した水素化ナトリウム(244ミリモル)に当モルのジメチルオキサレートを25℃で加え、次に3−フェニルプロピオン酸エチル(122ミリモル)を加えた。反応溶液は、60℃で1時間攪拌し、室温に戻した後、氷水中に投入し、酢酸エチルで有機層を抽出した。抽出液は、硫酸ナトリウムで脱水後、濃縮することで中間体の2−オキソ−3−フェニルメチル−ブタン二酸ジエチルが22g得られた。上記の操作をさらに4回行い、合計110gの中間体(2−オキソ−3−フェニルメチル−ブタン二酸ジエチル)を得た。次に、1Lの濃硫酸に2−オキソ−3−フェニルメチル−ブタン二酸ジエチル100gを0℃で1時間かけて滴下した。滴下後、25℃で2時間攪拌し、室温に戻した後、氷水中に投入し、酢酸エチルで有機層を抽出した。抽出液は、塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。最後に残留物をシリカゲルカラムで精製することで目的物の化合物75gを得た。
【0103】
1H−NMRによる分析を行った結果、それぞれ1H−NMRケミカルシフト値が、1.17(t,3H),1.27(t,3H),4.02(m,2H),4.27(m,2H),4.83(s,1H),7.40〜7.45(m,2H),7.51〜7.55(m,1H),7.61〜7.65(m,1H) ,7.87(d,1H)であったことから、得られた生成物はインデンー1,2−ジカルボン酸ジエチルであることが確認された。なお、LCによる測定を行なった所、得られたインデンー1,2−ジカルボン酸ジエチルの純度は、98.2%であった。
【実施例1】
【0104】
<固体触媒成分Aの合成>
攪拌装置を備え、窒素ガスで充分に置換された内容積500mlのフラスコに、ジエトキシマグネシウム10g(87.4ミリモル)を分取し、トルエン55mlを加えて懸濁状態とし、次いで該懸濁液に四塩化チタン30ml、製造例1で得られたインデンー1,2−ジカルボン酸ジメチル15.3ミリモル(3.21g)を加え、さらに昇温して90℃とした。その後、90℃の温度を保持した状態で90分反応させた。反応終了後、上澄みを抜き出し四塩化チタンを20ml追加し、さらに100℃で2時間反応させた。反応終了後、反応生成物を100℃のトルエン75mlで4回洗浄した。ついで40℃のn−ヘプタン75mlで6回洗浄して固体触媒成分Aを得た。固液分離後、固体触媒成分A中のチタン含有量を測定したところ2.7重量%であった。
【0105】
<重合触媒の形成および重合評価>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの攪拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルおよび前記固体触媒成分Aをチタン原子として0.0026ミリモル装入し、重合用触媒を形成した。その後、水素ガス1.5リットル、液化プロピレン1.4リットルを装入し、20℃で5分間予備重合を行なった後に昇温し、70℃で1時間重合反応を行なった。この時の固体触媒成分1g当たりの重合活性、生成重合体中のp−キシレン可溶分の割合(XS)、生成重合体のメルトフローレイトの値を(MFR)、および生成重合体の分子量分布を表1に示した。
【0106】
<固体触媒成分1g当たりの重合活性>
固体触媒成分1g当たりの重合活性については、下記式により求めた。
重合活性(g−pp/g−触媒)= 重合体の質量(g)/固体触媒成分の質量(g)
【0107】
<重合体のキシレン可溶分(XS)の測定>
攪拌装置を具備したフラスコ内に、4.0gの重合体(ポリプロピレン)と、200mlのp−キシレンを装入し、外部温度をキシレンの沸点以上(約150℃)とすることにより、フラスコ内部のp-キシレンの温度を沸点下(137〜138℃)に維持しつつ、2時間かけて重合体を溶解した。その後1時間かけて液温を23℃まで冷却し、不溶解成分と溶解成分とを濾過分別した。上記溶解成分の溶液を採取し、加熱減圧乾燥によりp−キシレンを留去し、得られた残留物をキシレン可溶分(XS)とし、その重量を重合体(ポリプロピレン)に対する相対値(重量%)で求めた。
【0108】
<重合体の溶融流れ性(MFR)>
重合体の溶融流れ性を示すメルトフローレート(MFR)は、ASTM D 1238、JIS K 7210に準じて測定した。
【0109】
(重合体の分子量分布測定)
重合体の分子量分布は、ゲルパーミエションクロマトグラフィ(GPC)(Waters社製 Alliance GPC/V2000)にて以下の条件で測定して求めた重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの比Mw/Mnによって評価した。
溶媒:o−ジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度: 140℃
カラム: 昭和電工社製 UT-806×3本、HT−803×1本
サンプル濃度: 1mg/mL−ODCB (10mg/10ml−ODCB)
注入量: 0.5ml
流量: 1.0ml/min
【実施例2】
【0110】
ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルに代えて、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成および重合評価を行なった。重合結果を表1に示した。
【実施例3】
【0111】
<固体触媒成分Bの調製>
インデンー1,2−ジカルボン酸ジメチル15.3ミリモルに代えて、製造例2で得られたインデンー1,2−ジカルボン酸ジエチル15.3ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様にして固体触媒成分Bを得た。固体触媒成分B中のチタン含有量を測定したところ2.8重量%であった。
<重合触媒の形成及び重合評価>
固体触媒成分Aに代えて、固体触媒成分Bを使用した以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成および重合評価を行なった。重合結果を表1に示した。
【実施例4】
【0112】
ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルに代えて、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルを用いた以外は、実施例3と同様にして重合触媒の形成および重合評価を行なった。重合結果を表1に示した。
【0113】
比較例1
<固体触媒成分Cの調製>
インデンー1,2−ジカルボン酸ジメチル15.3ミリモルに代えて、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチル15.3ミリモルを用いた以外は、実施例2と同様にして、固体触媒成分Cを調製した。得られた固体触媒成分中のチタン含有量は3.0重量%であった。
<重合触媒の形成及び重合評価>
固体触媒成分Aに代えて、固体触媒成分Cを使用した以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成および重合評価を行なった。重合結果を表1に示した。
【0114】
比較例2
<固体触媒成分Dの調製>
インデンー1,2−ジカルボン酸ジメチル15.3ミリモルに代えて、ジイソプロピルコハク酸ジエチル15.3ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分Dを調製した。得られた固体触媒成分中のチタン含有量は3.6重量%であった。
<重合触媒の形成及び重合評価>
固体触媒成分Aに代えて、固体触媒成分Dを使用した以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成および重合評価を行なった。重合結果を表1に示した。
【0115】
比較例3
ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)0.13ミリモルに代えて、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CMDMS)0.13ミリモルを用いた以外は、比較例2と同様に重合触媒の形成および重合を行なった。重合結果を表1に示した。
【0116】
比較例4
<固体触媒成分Eの調製>
インデンー1,2−ジカルボン酸ジメチル15.3ミリモルに代えて、オクタヒドロインデンー1,2−ジカルボン酸ジエチル15.3ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分Eを調製した。得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.6重量%であった。
<重合触媒の形成及び重合評価>
固体触媒成分Aに代えて、固体触媒成分Eを使用した以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成および重合評価を行なった。重合結果を表1に示した。
【0117】
比較例5
<固体触媒成分Fの調製>
インデン−1,2−ジカルボン酸ジメチル15.3ミリモルに代えて、1,2−ジヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸ジエチル15.3ミリモルを用いた以外は、実施例1と同様にして、固体触媒成分Fを調製した。得られた固体触媒成分中のチタン含有量は2.8重量%であった。
<重合触媒の形成及び重合評価>
固体触媒成分Aに代えて、固体触媒成分Fを使用した以外は、実施例1と同様にして重合触媒の形成および重合評価を行なった。重合結果を表1に示した。
【0118】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、高い立体規則性を維持しながら、広くも狭くもない適度な分子量分布を有するオレフィン類重合体を高い収率で得ることができる。従って、既存の成型機を活用可能な汎用ポリオレフィンを、低コストで提供し得ると共に、高機能性を有するオレフィン類の共重合体の製造においても有用性が期待される。
図1