(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054706
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】積層剥離容器
(51)【国際特許分類】
B65D 77/04 20060101AFI20161219BHJP
B65D 77/06 20060101ALI20161219BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
B65D77/04 B
B65D77/06 A
B65D77/06 F
B65D1/02 111
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-241340(P2012-241340)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-91537(P2014-91537A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年4月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓太
(72)【発明者】
【氏名】沓澤 慎太郎
【審査官】
吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−192031(JP,A)
【文献】
特開2007−091291(JP,A)
【文献】
特開平9−2529(JP,A)
【文献】
特開平6−345069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/04
B65D 77/06
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部、胴部及び口部を有するボトル形状を外層体と内層体とから形成してなり、外層体の口部に外気導入孔を有する積層剥離容器において、
前記外層体及び前記内層体のそれぞれの胴部に、上下方向に形成された少なくとも1本の縦リブを設け、該縦リブが前記外気導入孔から下方に中心角90°で広がる領域に配置されていることを特徴とする積層剥離容器。
【請求項2】
前記外気導入孔から下方に中心角90°で広がる領域から、前記中心角が60°未満の領域を除いてなる左右2つの領域にそれぞれ、前記縦リブが配置されている、請求項1に記載の積層剥離容器。
【請求項3】
前記縦リブを少なくとも4本設け、
前記外気導入孔から下方に中心角90°で広がる領域から、前記中心角が60°未満の領域を除いてなる左右2つの領域にそれぞれ、対になる2本の縦リブの間の領域を連通させてなる、請求項1に記載の積層剥離容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外層体の口部に外気導入孔を有する積層剥離容器に関し、特に、使用時の外気導入を円滑化し、内層体と外層体の剥離を容易ならしめようとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボトル形状を外層体と内層体とから形成してなる積層剥離容器において、予め、外層体の口部に形成された外気導入孔から空気を吹き込み、内層体を外層体から剥離させた後に、容器口部より空気を圧入して内層体を元に戻す初期剥離処理を施すことで、使用時、すなわち容器の内容物を内層体内から排出する際に、内層体が外層体からスムーズに剥離するようにしたものが知られている。
【0003】
しかしながら、単に初期剥離処理を施すだけでは、使用時に内層体と外層体の剥離が常にスムーズに行われるとは限らなかった。このような内層体と外層体の剥離が行われないと、外気の導入路が内層体と外層体との間に形成されないので、容器の内容物を注出する際に、内容物の注出ができなかったり、内容物が注出できたとしても容器の外表面が負圧によって陥没変形してしまうといった問題が生じるおそれがある。このため、特許文献1では、外層体をくり抜いた外気導入孔に対して、内層体の対応する部分を内方に反転膨出させて、外気導入孔の内側周縁に外気導入路を形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−36250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1の技術では、ボトル形状によっては必ずしも、内層体と外層体の剥離がスムーズに行われるとは限らなかった。
【0006】
本発明は、前記の現状に鑑み開発されたもので、使用時の外気導入を円滑化し、内層体と外層体の剥離を容易ならしめるとともに、ボトル形状の選択自由度が大きい積層剥離容器を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は以下のとおりである。
1.底部、胴部及び口部を有するボトル形状を外層体と内層体とから形成してなり、外層体の口部に外気導入孔を有する積層剥離容器において、
前記外層体及び前記内層体のそれぞれの胴部に、上下方向に形成された少なくとも1本の縦リブを設け、該縦リブが前記外気導入孔から下方に中心角90°で広がる領域に配置されていることを特徴とする積層剥離容器。
【0008】
2.前記外気導入孔から下方に中心角90°で広がる領域から、前記中心角が60°未満の領域を除いてなる左右2つの領域にそれぞれ、前記縦リブが配置されている、上記1の積層剥離容器。
【0009】
3.前記縦リブを少なくとも4本設け、
前記外気導入孔から下方に中心角90°で広がる領域から、前記中心角が60°未満の領域を除いてなる左右2つの領域にそれぞれ、対になる2本の縦リブの間の領域を連通させてなる、上記1の積層剥離容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、初期剥離処理を施すことにより、容器胴部において、内層体の縦リブが、外層体の縦リブとの嵌合状態から脱し、それにより両縦リブ周辺に外気導入路を確保することができる。しかも、両リブは、外気導入孔から下方に中心角90°で広がる領域に配置されているので、容器胴部に確保される外気導入路を、容器口部において形成される外気導入路に連通させることができる。したがって、使用時の容器胴部への外気導入を円滑化し、内層体と外層体の剥離を容易ならしめるとともに、ボトル形状の選択自由度が大きい積層剥離容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層剥離容器を示す側面図である。
【
図2】(a)は、
図1のA−A断面図を初期剥離処理前の状態で示すものである。(b)は、
図1のB−B断面図を初期剥離処理前の状態で示すものである。
【
図3】(a)は、
図1のA−A断面図を初期剥離処理後の状態で示すものである。(b)は、
図1のB−B断面図を初期剥離処理後の状態で示すものである。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る積層剥離容器を示す側面図である。
【
図5】
図4のB−B断面図を初期剥離処理前の状態で示すものである。
【
図6】
図4のB−B断面図を初期剥離処理後の状態で示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1〜3を参照して、本発明の一実施形態に係る積層剥離容器について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る積層剥離容器を示す側面図である。
図2(a)は、
図1のA−A断面図を初期剥離処理前の状態で示すものである。
図2(b)は、
図1のB−B断面図を初期剥離処理前の状態で示すものである。
図3(a)は、
図1のA−A断面図を初期剥離処理後の状態で示すものである。
図3(b)は、
図1のB−B断面図を初期剥離処理後の状態で示すものである。
【0013】
本実施形態に係る積層剥離容器1(以下、容器1ともいう)は、可撓性を有するポリエチレン製樹脂の外層体2と可撓性を有するナイロン製樹脂の内層体3とからなり、逆止弁を有するキャップ(図示省略)を口部4に取り付けた状態で胴部5をスクイズ(圧搾)することによって内容物を注出できるものである。容器1は、外層体2及び内層体3を共押し出しにより押し出した積層円筒状のパリソンを金型に挟んでブロー成形することで形成されている。
【0014】
口部4は、軸線Oの周りに環状に成形されるとともに胴部5の上端部から縮径された環状段部6と、この環状段部6からさらに縮径された円筒部7と、この円筒部7からさらに縮径された口元部8とからなる。円筒部7の上部領域には、容器1に前述したキャップを取付けるためのねじ山10が形成されている。なお、ねじ山10に代えて、アンダーカットを設けることでキャップ部材を取り付けるようにしてもよい。ねじ山10と段部6との間には、軸線Oを挟んで対向する2箇所に外気導入孔11が形成されている。外気導入孔11は、軸線Oに向かって水平に外層体2を貫通し、円形をなしている。
【0015】
胴部5は、その上端部から下方に向かって徐々に拡径する上部領域と、略円筒状をなす下部領域とからなる。なお、この下部領域は底部12への移行部が、底部12に向かって徐々に縮径している。
【0016】
胴部5の上部領域には、対向面にそれぞれ、断面凹状の縦リブ13が4本、等間隔に設けられている。これら計8本の縦リブ13はそれぞれ、上下方向に(すなわち、胴部5を側面から見たときの外観形状を形作る稜線に沿って)延びている。また、これら縦リブ13の各上端13a及び各下端13bはそれぞれ、同一の高さに配置されている。なお、これら縦リブ13の断面形状は円弧形状とすることが好ましいが、これに限定されない。また、外側の2本の縦リブ13はそれぞれ、
図1において、上端13aと外気導入孔11の中心とを結ぶ線分が軸線Oとなす角が45°になっている。
【0017】
したがって、外気導入孔11から下方に中心角90°(
図1において軸線Oに対して片側45°)で広がる領域に少なくとも1本の縦リブ13が配置されている。すなわち、
図1において90°を示すライン上又はその延長線上に少なくとも1本の縦リブ13が配置され、又は、
図1において90°を示す左右のライン及びその延長線で挟まれる領域内に少なくとも1本の縦リブ13が配置されている。また、外気導入孔11から下方に中心角90°で広がる領域から、前記中心角が60°(
図1において軸線Oに対して片側30°)未満の領域を除いてなる左右2つの領域にそれぞれ、縦リブ13が配置されている。さらに、外気導入孔11から下方に中心角90°で広がる領域から、前記中心角が60°未満の領域を除いてなる左右2つの領域にそれぞれ、対になる2本の縦リブ13の間の領域が連通している。
【0018】
上述した形状になる容器1の口部4、胴部5及び底部12は、外気導入孔11の部分を除き、外層体2と内層体3とによって形成されており、これら外層体2と内層体3とはブロー成形直後において互いに密着した状態になっている。そして、この状態の容器1に、予め内層体3を外層体2から剥離させておくことで使用時の剥離をスムーズにする初期剥離処理を施す。具体的には、まず、筒状の空気吹き込み部材(図示省略)を外気導入孔11に差し込み、空気を吹き込むことで、内層体3と外層体2との間に空気を導入し、それによって内層体3を外層体2から剥離させる。次いで、口部4より空気を圧入して内層体3を膨らませる。その際、内層体3と外層体2との間に導入されていた空気は、外気導入孔11から排出される。
【0019】
このとき、内層体3は、胴部5に縦リブ13が設けられているため、完全に元の形状には戻らず、
図3(b)に示したように、内層体3と外層体2との間に隙間が残る。すなわち、内層体3が剥離してから元の形状に戻ろうとする際、内層体3と外層体2との間には周方向の位置ずれが若干生じるため、内層体3の縦リブ13’の周縁部が、外層体2の縦リブ13に乗り上げることになり、その結果、縦リブ13の周辺領域に隙間が確保されるのである。特に、隣接する縦リブ13の間の領域において隙間が最も大きくなるので、本例のように、外気導入孔11から下方に中心角90°で広がる領域から、前記中心角が60°未満の領域を除いてなる左右2つの領域にそれぞれ、対になる2本の縦リブ13の間の領域を連通させると最も好ましく、このようにすることで、初期剥離処理後に胴部5に形成される外気導入路(隙間)を口部4に形成される外気導入路に最も確実に連通させることができる。
【0020】
また、このような縦リブの配置としない場合でも、外気導入孔11から下方に中心角90°で広がる領域に少なくとも1本の縦リブ13を配置すれば、初期剥離処理後に胴部5の縦リブ13の周辺領域に形成される外気導入路を、口部4に形成される外気導入路に連通させることができる。この場合、外気導入孔11から下方に中心角90°で広がる領域から、前記中心角が60°未満の領域を除いてなる左右2つの領域にそれぞれ、縦リブ13を配置することが好ましく、このようにすることで、縦リブ13の周辺領域に形成される外気導入路を、口部4に形成される外気導入路に確実に連通させることができる。この場合、本実施形態のように、前記中心角が60°未満の領域にも別途縦リブ13を設けることがより好ましく、このようにすることで、外気導入路をより確実に連通させることができる。
【0021】
したがって、本実施形態に係る積層剥離容器1によれば、初期剥離処理を施すことにより、外気導入孔11から胴部5に至る外気導入路を確実に確保することができ、その結果、使用時の胴部5への外気導入を確実に円滑化し、内層体3と外層体2の剥離を容易ならしめることができ、しかも、種々のボトル形状を選択可能とすることができる。
【0022】
次に、
図4〜6を参照して、本発明の他の実施形態に係る積層剥離容器について詳細に説明する。
図4は、本実施形態に係る積層剥離容器を示す側面図である。
図5は、
図4のB−B断面図を初期剥離処理前の状態で示すものである。
図6は、
図4のB−B断面図を初期剥離処理後の状態で示すものである。
【0023】
本例に係る積層剥離容器は、縦リブ14の本数が異なる点を除いては、前述した実施形態の場合と同一の構成を有する。本例において、縦リブ14は、胴部の対向面のそれぞれに3本ずつ、計6本設けられている。外側の2本の縦リブ14はそれぞれ、
図4において、その上端14aと外気導入孔の中心とを結ぶ線分が軸線Oとなす角が30°になっている。
【0024】
したがって、外気導入孔から下方に中心角90°で広がる領域に少なくとも1本の縦リブ14が配置されている。また、外気導入孔から下方に中心角90°で広がる領域から、前記中心角が60°未満の領域を除いてなる左右2つの領域にそれぞれ、縦リブ14が配置されている。
【0025】
そして、本例の場合も、前述した実施形態の場合と同様に、縦リブ14を設けたことによって、初期剥離処理を施した際に、
図6に示したような隙間が縦リブ14の周辺領域に確保されることになる。
【0026】
したがって、本実施形態に係る積層剥離容器によれば、前述した実施形態の場合と同様に、初期剥離処理を施すことにより、外気導入孔から、胴部に至る外気導入路を確保することができ、その結果、使用時の胴部への外気導入を円滑化し、内層体と外層体の剥離を容易ならしめることができ、しかも、種々のボトル形状を選択可能とすることができる。
【0027】
上述したところは、本発明の一例を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、縦リブは、断面凹状とすることが好ましいが、断面凸状とすることも可能である。また、縦リブは上下方向に延びることが好ましいが、傾斜させたり、ジグザグ状に延びるものとすることも可能である。また、縦リブの長さは適宜調節することができる。なお、容器の内容物としては、化粧料、薬品、シャンプー、食品等の液体が適しているが、これらに限定されるものではない。また、前述した例では、容器の口部には、逆止弁を有するキャップを組み付けるものとして説明したが、これに限られず、例えばポンプなどを組み付けて使用してもよい。また、前述した例では、容器の内層体と外層体とをいずれも可撓性を有する材料で形成し、胴部をスクイズして使用するものとして説明したが、これに限られず、外層体は剛性を有する材料で形成し、内層体のみが内容物の注出に伴って収縮する使用形態とすることもできる。さらに、前述した例のように、容器は内層体と外層体とを共押し出しした一体成形物をブロー成形することで形成することが好ましいが、これに限られず、例えば、内層体と外層体とをそれぞれブロー成形したものを組み合わせることで形成することもでき、このようにした場合でも、容器の口部から縦リブの周辺領域に至る外気導入路を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、使用時の容器胴部への外気導入を円滑化し、内層体と外層体の剥離を容易ならしめるとともに、ボトル形状の選択自由度が大きい積層剥離容器を安定して供給することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 積層剥離容器
2 外層体
3 内層体
4 口部
5 胴部
6 環状段部
7 円筒部
8 口元部
10 ねじ山
11 外気導入孔
12 底部
13、14 縦リブ
13a、14a 上端(縦リブ)
13b、14b 下端(縦リブ)
O 軸線