特許第6054758号(P6054758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054758
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】免疫測定方法および免疫測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   G01N33/543 581F
   G01N33/543 587
【請求項の数】20
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-17871(P2013-17871)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-149216(P2014-149216A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(72)【発明者】
【氏名】越村 直人
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−075446(JP,A)
【文献】 特開2005−195473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫測定装置において実行される免疫測定方法であって、
検体と、測定対象物質に対する抗体または抗原が感作された担体粒子とを混和して得られた測定用試料を測定して、当該測定用試料に含まれる担体粒子の結合数に関する情報を検出する検出工程と、
前記結合数に関する情報に基づき、測定用試料に含まれる各粒子を前記結合数ごとに分類する分類工程と、
分類された区分ごとに、担体粒子とは異なる測定対象外物質を処理対象から取り除く第1の除去処理、および、前記第1の除去処理とは異なる処理により測定対象外物質を処理対象から取り除く第2の除去処理のうちの何れか一方を、測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択し、選択した除去処理を実行して得られた担体粒子のデータに基づき、担体粒子の凝集度に関する情報を取得する凝集情報取得工程と、を含む、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の免疫測定方法において、
前記検出工程では、前記測定用試料に光を照射して、前記測定用試料に含まれる各粒子からの光学情報を取得し、取得した光学情報に基づいて、前記結合数に関する情報として前方散乱光情報を検出する、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の免疫測定方法において、
前記検出工程ではさらに、取得した光学情報に基づいて側方散乱光情報を検出し、
前記第1の除去処理では、検出した側方散乱光情報に基づいて、測定対象外物質を処理対象から取り除く、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の免疫測定方法において、
前記第2の除去処理では、検出した前方散乱光情報に基づいて、測定対象外物質を処理対象から取り除く、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項5】
請求項1ないし4何れか一項に記載の免疫測定方法において、
前記凝集情報取得工程は、分類された区分に対して、前記結合数の大小に基づいて、前記第1の除去処理および第2の除去処理のうちの何れか一方を、測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択する、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の免疫測定方法において、
前記第1の除去処理は、分類された区分に対して前記第1の除去処理が適正であるとして選択された場合にのみ、実行される、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項7】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の免疫測定方法において、
前記凝集情報取得工程では、分類された区分ごとに、前記第1の除去処理と前記第2の除去処理の両方が実行され、測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択された方の除去処理を実行して得られた担体粒子のデータに基づき、担体粒子の凝集度に関する情報が取得される、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項8】
請求項1ないしの何れか一項に記載の免疫測定方法において、
前記凝集情報取得工程では、分類された区分のうち所定の区分について、前記第1の除去処理と前記第2の除去処理のうち何れか一方が、予め、測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択されている、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項9】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の免疫測定方法において、
前記凝集情報取得工程は、分類された区分のうち所定の区分について、前記第1の除去処理および前記第2の除去処理のうち何れが測定対象外物質の除去に適するかを判定する処理を含み、判定結果に基づいて、前記第1の除去処理と前記第2の除去処理のうちの何れか一方を測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択する、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項10】
請求項に記載の免疫測定方法において、
前記凝集情報取得工程は、
前記第1の除去処理が測定対象外物質の除去に適するか否かを判定する判定条件を含み、
前記判定条件を満たす区分に対して前記第1の除去処理を選択し、前記判定条件を満たさない区分に対して前記第2の除去処理を選択する、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の免疫測定方法において、
前記第1の除去処理では、分類された区分ごとに、担体粒子と測定対象外物質とを分ける境界を粒子の特徴量を表す所定の特徴情報に基づいて設定し、
前記凝集情報取得工程では、前記境界を含む所定の範囲における、前記特徴情報を含む粒子の数に基づいて、分類された区分ごとに、前記第1の除去処理が測定対象外物質の除去に適するか否かを判定する、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項12】
請求項11に記載の免疫測定方法において、
前記凝集情報取得工程は、分類された区分に含まれる粒子の数に対する前記所定の範囲における前記特徴情報を含む粒子の数の割合が所定の閾値以下の場合に、前記第1の除去処理が測定対象外物質の除去に適すると判定する処理を含む、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の免疫測定方法において、
前記凝集情報取得工程では、前記所定の範囲における前記特徴情報を含む粒子の数が所定の閾値以下の場合に、前記第1の除去処理が測定対象外物質の除去に適すると判定する処理を含む、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項14】
請求項11ないし13の何れか一項に記載の免疫測定方法において、
前記検出工程では、前記測定用試料に光を照射して、前記測定用試料に含まれる各粒子からの光学情報を取得し、取得した光学情報に基づいて、前記特徴情報として側方散乱光情報を取得する、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項15】
請求項1ないし14の何れか一項に記載の免疫測定方法において、
前記第2の除去処理は、測定対象外物質の分布状況を推定する処理と、分類された各区分に含まれる粒子の分布から推定された測定対象物質の分布を差し引く処理とを含む、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項16】
請求項に記載の免疫測定方法において、
前記凝集情報取得工程では、分類された区分のうち所定の区分について、前記結合数が所定の結合数を超える場合に、前記第1の除去処理が選択され、前記結合数が所定の結合数以下である場合に、前記第2の除去処理が選択されている、
ことを特徴とする免疫測定方法。
【請求項17】
検体と、測定対象物質に対する抗体または抗原が感作された担体粒子と、を混和して得られた測定用試料を測定して、当該測定用試料に含まれる担体粒子の結合数に関する情報を検出する検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記結合数に関する情報に基づき、測定用試料に含まれる各粒子を前記結合数ごとに分類し、
分類された区分ごとに、担体粒子とは異なる測定対象外物質を処理対象から取り除く第1の除去処理、および、前記第1の除去処理とは異なる処理により測定対象外物質を処理対象から取り除く第2の除去処理のうちの何れか一方を、測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択し、選択した除去処理を実行し、
除去処理を実行して得られた担体粒子のデータに基づき、担体粒子の凝集度に関する情報を取得する、
ことを特徴とする免疫測定装置。
【請求項18】
請求項17に記載の免疫測定装置において、
前記制御部は、分類された区分に対して、前記結合数の大小に基づいて、前記第1の除去処理および第2の除去処理のうちの何れか一方を、測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択する、
ことを特徴とする免疫測定装置。
【請求項19】
請求項17または18に記載の免疫測定装置において、
前記検出部は、前記測定用試料に光を照射する光源と、前記測定用試料に含まれる各粒子からの光を受光する受光部と、を備え、
前記受光部により受光された光の情報に基づいて、前記結合数に関する情報として前方散乱光情報を検出する、
ことを特徴とする免疫測定装置。
【請求項20】
請求項19に記載の免疫測定装置において、
前記検出部はさらに、前記受光部により受光された光の情報に基づいて、側方散乱光情報を検出する、
ことを特徴とする免疫測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子凝集を用いた免疫測定方法および免疫測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カウンティングイムノアッセイ(CIA)を用いた免疫測定方法が知られている。この免疫測定方法では、検体と、測定対象物質に対応する検体または抗体を感作した担体粒子とが混和されて測定用試料が調製され、調製された測定用試料を測定することにより、担体粒子の凝集度が取得される。この測定方法では、乳び粒子等の測定対象外物質が検体に含まれていると、測定結果に誤差が生じてしまう。この誤差を軽減させる技術として、たとえば、特許文献1、2に記載された技術が知られている。
【0003】
特許文献1に記載された技術では、粒子径を横軸、粒子数を縦軸とした粒度分布図において、担体粒子が出現しない領域のデータから測定対象外物質の粒度分布が推定される。そして、推定された測定対象外物質の粒度分布を全体の粒度分布から差し引いて得られた粒度分布に基づいて、凝集度が取得される。
【0004】
特許文献2に記載された技術では、前方散乱光強度を横軸、側方散乱光強度または高周波抵抗を縦軸としたスキャッタグラムにおいて、担体粒子が出現する領域と、測定対象外物質が出現する領域が設定され、担体粒子が出現する領域に出現した粒子に基づいて、凝集度が取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−279842号公報
【特許文献2】特開2005−195473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記2つの技術は、乳び粒子等の測定対象外物質による誤差の減少に効果的ではあるが、更なる誤差の軽減が求められている。
【0007】
本発明は、測定対象外物質による誤差をさらに軽減させることが可能な免疫測定方法および免疫測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、免疫測定装置において実行される免疫測定方法に関する。この態様に係る免疫測定方法は、検体と、測定対象物質に対する抗体または抗原が感作された担体粒子とを混和して得られた測定用試料を測定して、当該測定用試料に含まれる担体粒子の結合数に関する情報を検出する検出工程と、前記結合数に関する情報に基づき、測定用試料に含まれる各粒子を前記結合数ごとに分類する分類工程と、分類された区分ごとに、担体粒子とは異なる測定対象外物質を処理対象から取り除く第1の除去処理、および、前記第1の除去処理とは異なる処理により測定対象外物質を処理対象から取り除く第2の除去処理のうちの何れか一方を、測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択し、選択した除去処理を実行して得られた担体粒子のデータに基づき、担体粒子の凝集度に関する情報を取得する凝集情報取得工程と、を含む。
【0009】
本態様に係る免疫測定方法によれば、分類された区分ごとに、適切な測定対象外物質の除去処理が適用されるため、測定対象外物質による誤差の影響をさらに軽減することがで
きる。
【0010】
本態様に係る免疫測定方法は、前記検出工程において、前記測定用試料に光を照射して、前記測定用試料に含まれる各粒子からの光学情報を取得し、取得した光学情報に基づいて、前記結合数に関する情報として前方散乱光情報を検出するよう構成され得る。
【0011】
この場合、免疫測定方法は、前記検出工程において、さらに、取得した光学情報に基づいて側方散乱光情報を検出し、前記第1の除去処理において、検出した側方散乱光情報に基づいて、測定対象外物質を処理対象から取り除くよう構成され得る。
【0012】
さらに、この場合、免疫測定方法は、前記第2の除去処理において、検出した前方散乱光情報に基づいて、測定対象外物質を処理対象から取り除くよう構成され得る。
【0014】
この場合、前記凝集情報取得工程は、分類された区分に対して、前記結合数の大小に基づいて、前記第1の除去処理および第2の除去処理のうちの何れか一方を、測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択することが望ましい。
【0015】
また、本態様に係る免疫測定方法において、前記第1の除去処理は、分類された区分に対して前記第1の除去処理が測定対象外物質の除去に適するとして選択された場合にのみ、実行されることが望ましい。こうすると、第1の除去処理が不必要に実行されることが回避されるため、除去処理の効率化および迅速化を図ることができる。
【0016】
ただし、本態様に係る免疫測定方法では、前記凝集情報取得工程において、分類された区分ごとに、前記第1の除去処理と前記第2の除去処理の両方が実行されても良い。この場合、測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択された方の除去処理を実行して得られた担体粒子のデータに基づいて、担体粒子の凝集度に関する情報が取得される。この方法によれば、上記のように何れか一方の除去処理のみが実行される場合と比べて除去処理がやや不効率となるものの、測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択された方の除去処理により得られた担体粒子のデータに基づいて、担体粒子の凝集度に関する情報が取得されるため、上記の場合と同様、測定対象外物質による誤差の影響をさらに軽減できるとの効果が奏され得る。
【0017】
本態様に係る免疫測定方法は、前記凝集情報取得工程において、分類された区分のうち所定の区分について、前記第1の除去処理と前記第2の除去処理のうち何れか一方が、予め、測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択されるよう構成され得る。この場合、前記結合数が所定の結合数を超える場合に、前記第1の除去処理が選択され、前記結合数が所定の結合数以下である場合に、前記第2の除去処理が選択されていることが望ましい。こうすると、所定の区分については、第1の除去処理と第2の除去処理の何れが測定対象外物質の除去に適するかを判定する処理が不要となるため、処理の簡素化を図ることができる。なお、この方法は、以下の実施の形態においても言及するように、所定の区分については、第1の除去処理と第2の除去処理のうち何れか一方が他方に比べて測定対象外物質の除去に適することが明らかである場合に、用いて望ましいものである。
【0018】
本態様に係る免疫測定方法において、前記凝集情報取得工程は、分類された区分のうち所定の区分について、前記第1の除去処理および前記第2の除去処理のうち何れが測定対象外物質の除去に適するかを判定する処理を含み、判定結果に基づいて、前記第1の除去
処理と前記第2の除去処理のうちの何れか一方を測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択するよう構成され得る。こうすると、当該所定の区分に対して、より適切な除去処理が、測定用試料に応じて動的に選択されるため、測定対象外物質をより適切に取り除くことができる。なお、この方法は、以下の実施の形態においても言及するように、所定の区分については、第1の除去処理と第2の除去処理のうち何れが測定対象外物質の除去に適するかが明らかではないような場合に、用いて望ましいものである。
【0019】
このように第1の除去処理および第2の除去処理のうち何れが測定対象外物質の除去に適するかを判定する場合、前記凝集情報取得工程は、前記第1の除去処理が測定対象外物質の除去に適するか否かを判定する判定条件を含み、前記判定条件を満たす区分に対して前記第1の除去処理を選択し、前記判定条件を満たさない区分に対して前記第2の除去処理を選択するよう構成され得る。
【0020】
また、前記第1の除去処理において、分類された区分ごとに、担体粒子と測定対象外物質とを分ける境界が粒子の特徴量を表す所定の特徴情報に基づいて設定される場合、前記凝集情報取得工程は、前記境界を含む所定の範囲における、前記特徴情報を含む粒子の数に基づいて、分類された区分ごとに、前記第1の除去処理が測定対象外物質の除去に適するか否かを判定するよう構成され得る。
【0021】
この場合、前記凝集情報取得工程は、分類された区分に含まれる粒子の数に対する前記所定の範囲における前記特徴情報を含む粒子の数の割合が所定の閾値以下の場合に、前記第1の除去処理が測定対象外物質の除去に適すると判定する処理を含み得る。こうすると、担体粒子と測定対象物質との間の境界が明瞭である場合に第1の除去処理が選択されるため、測定対象外物質を適切に処理対象から取り除くことができる。
【0022】
また、前記凝集情報取得工程は、前記所定の範囲における前記特徴情報を含む粒子の数が所定の閾値以下の場合に、前記第1の除去処理が測定対象外物質の除去に適すると判定する処理を含み得る。この場合も、担体粒子と測定対象物質との間の境界が明瞭である場合に第1の除去処理が選択されるため、測定対象外物質を適切に処理対象から取り除くことができる。
【0023】
なお、このように、前記第1の除去処理において、担体粒子と測定対象外物質とを分ける境界が粒子の特徴量を表す所定の特徴情報に基づいて設定される場合、前記検出工程は、前記測定用試料に光を照射して、前記測定用試料に含まれる各粒子からの光学情報を取得し、取得した光学情報に基づいて、前記特徴情報として側方散乱光情報を取得するよう構成され得る。なお、特徴情報として、側方散乱光情報の他、上記特許文献2と同様、高周波抵抗を用いることもできる。
【0024】
本態様に係る免疫測定方法において、前記第2の除去処理は、測定対象外物質の分布状況を推定する処理と、分類された各区分に含まれる粒子の分布から推定された測定対象物質の分布を差し引く処理とを含むものとされ得る。
【0025】
本発明の第2の態様は、免疫測定装置に関する。この態様に係る免疫測定装置は、検体と、測定対象物質に対する抗体または抗原が感作された担体粒子と、を混和して得られた測定用試料を測定して、当該測定用試料に含まれる担体粒子の結合数に関する情報を検出する検出部と、制御部と、を備える。ここで、前記制御部は、前記結合数に関する情報に基づき、測定用試料に含まれる各粒子を前記結合数ごとに分類し、分類された区分ごとに、担体粒子とは異なる測定対象外物質を処理対象から取り除く第1の除去処理、および、前記第1の除去処理とは異なる処理により測定対象外物質を処理対象から取り除く第2の除去処理のうちの何れか一方を、測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択し、選択した除去処理を実行し、除去処理を実行して得られた担体粒子のデータに基づき、担体粒子の凝集度に関する情報を取得する。
【0026】
本態様に係る免疫測定装置によれば、上記第1の態様に係る免疫測定方法と同様、担体粒子の結合数に応じて分類された区分ごとに、適切な測定対象外物質の除去処理が適用されるため、測定対象外物質による誤差の影響をさらに軽減することができる。
【0028】
この場合、前記制御部は、分類された区分に対して、前記結合数の大小に基づいて、前記第1の除去処理および第2の除去処理のうちの何れか一方を、測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択することが望ましい。
【0029】
本態様に係る免疫測定装置において、前記検出部は、前記測定用試料に光を照射する光源と、前記測定用試料に含まれる各粒子からの光を受光する受光部と、を備え、前記受光部により受光された光の情報に基づいて、前記結合数に関する情報として前方散乱光情報を検出するよう構成され得る。
【0030】
この場合、前記検出部はさらに、前記受光部により受光された光の情報に基づいて、側方散乱光情報を検出するよう構成され得る。
【発明の効果】
【0031】
以上のとおり、本発明によれば、測定対象外物質による誤差をさらに軽減させることが可能な免疫測定方法および免疫測定装置を提供することができる。
【0032】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施の形態に係る免疫測定装置の外観構成および内部構成を示す図である。
図2】実施の形態に係る試料調製部、測定部およびシースフローセルの構成を模式的に示す図である。
図3】実施の形態に係る免疫測定装置の構成を示す図である。
図4】実施の形態に係る制御部による処理を示すフローチャートである。
図5】実施の形態に係るスキャッタグラムを例示する図である。
図6】実施の形態に係るヒストグラムを例示する図および分画線の設定に用いられる値を示すフローチャートである。
図7】実施の形態に係るカウント処理を示すフローチャートである。
図8】実施の形態に係るカウント処理および判定処理を示すフローチャートである。
図9】実施の形態に係るスキャッタグラムおよびヒストグラムを例示する図である。
図10】実施の形態に係るヒストグラムを例示する図である。
図11】実施の形態に係る免疫測定装置により実際に行われた測定対象物質の濃度の算出結果について説明する図である。
図12】変更例1に係るカウント処理を示すフローチャートである。
図13】変更例2に係るカウント処理を示すフローチャートおよびテーブルである。
図14】変更例3に係るカウント処理を示すフローチャートおよびテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本実施の形態は、粒子凝集法を用いて、測定対象物質と担体粒子とが混和されることにより生じた凝集を検出し、検出した結果に基づいて、測定対象物質を定量するための免疫測定方法および免疫測定装置に本発明を適用したものである。
【0035】
粒子凝集法では、測定対象物質を含む検体と、測定対象物質に対応する抗体または抗原が感作された担体粒子とが混和される。検体中に測定対象物質が存在すると、抗原抗体反応により担体粒子が凝集する。担体粒子に感作する抗体または抗原には、測定対象物質が抗体であれば、その抗体と特異的に抗原抗体反応する抗原が用いられ、測定対象物質が抗原であれば、その抗体と特異的に抗原抗体反応する抗体が用いられる。たとえば、測定項目が癌胎児性抗原(CEA抗原)であれば、担体粒子には抗CEA抗体が感作される。担体粒子としては、粒子凝集法で一般的に用いられているもの、たとえば、ラテックス粒子、金属粒子、デンドリマーなどが挙げられる。
【0036】
以下、本実施の形態に係る免疫測定装置1について、図面を参照して説明する。
【0037】
以下に示す実施の形態において、測定部4は、請求項に記載の「検出部」に相当する。レーザ光源42は、請求項に記載の「光源」に相当する。フォトダイオード48とフォトマルチプライヤーチューブ49は、請求項に記載の「受光部」に相当する。区分線L21は、請求項に記載の「境界」に相当する。領域A23、A24は、請求項に記載の「範囲」に相当する。S12、S13は、請求項に記載の「検出工程」に相当する。S14〜S16は、請求項に記載の「分類工程」に相当する。S17、S18は、請求項に記載の「凝集情報取得工程」に相当する。S102、S103、S108は、請求項に記載の「第1の除去処理」に相当する。S112、S113、S114は、請求項に記載の「第2の除去処理」に相当する。ただし、上記請求項と本実施の形態との対応の記載はあくまで一例であって、請求項に係る発明を本実施の形態に限定するものではない。
【0038】
図1(a)は、免疫測定装置1の外観構成を示す図であり、図1(b)は、免疫測定装置1の内部構成を示す図である。
【0039】
免疫測定装置1の前面には、カバー1aと、スタートスイッチ1bと、タッチパネルからなる表示入力部2が配置されている。免疫測定装置1内の右側のスペースには、各部を制御するための制御部3が配置されており、免疫測定装置1内の左下のスペースには、測定試料から信号を検出するための測定部4が配置されている。また、免疫測定装置1内の残りのスペースには、測定試料を調製するための試料調製部5が配置されている。
【0040】
図2(a)は、試料調製部5の構成を模式的に示す図である。
【0041】
試料調製部5は、検体セット部51と、試薬セット部52と、反応部53と、分注装置54と、送液装置55を備えている。ユーザは、カバー1aを開けることにより、検体セット部51と試薬セット部52に、各種容器をセットすることができる。検体セット部51には、測定対象物質を含む血液または尿などの検体を収容する容器がセットされる。試薬セット部52には、担体粒子懸濁液を収容する容器と、反応緩衝液を収容する容器がセットされる。担体粒子懸濁液は、担体粒子を水や緩衝液など適当な液体に懸濁させたものである。反応緩衝液は、担体粒子懸濁液と共に検体に添加し、抗原抗体反応を生じさせる環境を整えるためのものである。反応部53には、空のキュベットがセットされる。
【0042】
分注装置54は、その先端から所定量の液体を吸引および吐出し、駆動装置(図示せず)によって上下左右前後方向に移動することが可能に構成されている。分注装置54により、検体と、担体粒子懸濁液と、反応緩衝液が、適宜、反応部53のキュベットに分注される。反応部53は、キュベット内の溶液を一定の温度に保つための温度調節機構(図示せず)と、キュベット内の溶液を攪拌するための攪拌機構(図示せず)を備えている。反応部53にセットされたキュベット内で、検体と、担体粒子懸濁液と、反応緩衝液が混合され、測定試料が調製される。
【0043】
送液装置55は、測定試料を吸引するための吸引管55aと、吸引管55aから吸引した測定試料を測定部4へ送液する送液管55bと、測定試料を吸引して測定部4へ送液するためのポンプ55cからなる。また、送液装置55は、駆動装置(図示せず)によって上下左右前後方向に移動することが可能に構成されている。送液装置55により、反応部53にセットされたキュベット内の測定試料が、測定部4へ送液される。
【0044】
図2(b)は、測定部4の構成を模式的に示す図であり、図2(c)は、シースフローセル41の構成を模式的に示す図である。
【0045】
測定部4は、フローセル41と、レーザ光源42と、コンデンサレンズ43と、集光レンズ44、45と、ピンホール46、47と、フォトダイオード48と、フォトマルチプライヤーチューブ49を備えている。フローセル41は、試料調製部5で調製された測定試料を、シース液に包まれた状態で流すためのものであり、図2(c)に示すように、測定試料を細孔部41dに向かって上方へ噴射する試料ノズル41aと、シース液供給口41bと、廃液口41cを備える。
【0046】
レーザ光源42から出射されたレーザ光は、コンデンサレンズ43を通り、フローセル41の細孔部41dに照射される。これにより、細孔部41d内を通過する測定試料にレーザ光が照射される。集光レンズ44、45は、それぞれ、レーザ光が照射された測定試料中の粒子一個一個から得られる前方散乱光と側方散乱光を集光する。フォトダイオード48は、ピンホール46を通った前方散乱光を受光し、受光した前方散乱光を光電変換し、前方散乱光信号を生成する。フォトマルチプライヤーチューブ49は、ピンホール47を通った側方散乱光を受光し、受光した側方散乱光を光電変換し、側方散乱光信号を生成する。前方散乱光信号と側方散乱光信号は、測定試料中の粒子ごとに生成され、生成された前方散乱光信号と側方散乱光信号は、制御部3へ送られる。
【0047】
制御部3は、受信した前方散乱光信号と側方散乱光信号に基づいて、それぞれ、前方散乱光強度と側方散乱光強度を算出し、これら強度を記憶部31(図3参照)に記憶する。
【0048】
ここで、フローセル41の細孔部41dを通った個々の粒子に含まれる担体粒子の数を「結合数」と称する。また、未凝集の担体粒子、すなわち、結合数が1の粒子を「未凝集粒子」と称し、測定対象物質と担体粒子とが抗原抗体反応を起こすことにより生じた凝集塊、すなわち、結合数が2以上の粒子を「凝集粒子」と称する。また、凝集粒子のうち、結合数が2、3、4の粒子を、それぞれ、「2個凝集粒子」、「3個凝集粒子」、「4個凝集粒子」と称し、結合数が5以上の粒子を、合わせて「結合数が5の粒子」または「5個凝集粒子」と称する。結合数が1〜5の粒子、すなわち、未凝集粒子、2個凝集粒子、3個凝集粒子、4個凝集粒子、および5個凝集粒子は、この順に大きくなる。このように結合数に応じて粒子の大きさが変わるため、制御部3は、前方散乱光強度の大きさに基づいて、フローセル41の細孔部41dを通った粒子が、上記5つの分類の粒子のうちの何れであるか判断することができる。また、制御部3は、未凝集粒子と凝集粒子とを区別して計数することができるため、凝集度を求めることができる。本実施の形態の凝集度としては、未凝集粒子数(M)、凝集粒子数(P)、および、MとPの合計である総粒子数(
T)に基づいて算出されるP/Tの値が用いられる。
【0049】
図3は、免疫測定装置1の構成を示す図である。
【0050】
制御部3は、CPUと、ROMおよびRAM等の記憶装置を有するマイクロコンピュータと、各種信号を処理する回路等を備える。これにより、制御部3は、記憶部31、分析部32、および動作制御部33の機能を有する。
【0051】
記憶部31は、測定部4から受信した前方散乱光信号と側方散乱光信号とに基づいて前方散乱光強度と側方散乱光強度を算出するプログラムと、前方散乱光強度と側方散乱光強度に基づいて測定試料の分析を行う分析プログラムと、装置各部の動作を制御する制御プログラムと、を記憶している。また、記憶部31は、算出された前方散乱光強度および側方散乱光強度のデータと、分析プログラムによる分析結果とを記憶し、さらに、各種の設定内容を記憶する。分析部32は、分析プログラムに基づいて測定試料を分析し、測定試料に関する分析結果を生成する。分析部32で生成された分析結果は、表示入力部2に出力される。動作制御部33は、記憶部31に記憶されている制御プログラムに基づき装置各部の動作を制御する。
【0052】
図4は、制御部3による処理を示すフローチャートである。
【0053】
図4に示す処理の前に、まず、ユーザは、カバー1aを開けて、検体セット部51と試薬セット部52とに、それぞれ、検体を収容する容器と試薬を収容する容器とをセットする。そして、ユーザは、スタートスイッチ1bを押下し、処理を開始させる。
【0054】
制御部3は、スタートスイッチ1bが押下されると(S11:YES)、測定試料の調製を行う(S12)。具体的には、分注装置54が、検体セット部51にセットされた容器に収容されている検体を、反応部53にセットされたキュベットに所定量(たとえば、10μL)分注する。続いて、分注装置54が、試薬セット部52にセットされた容器に収容されている反応緩衝液を、反応部53にセットされたキュベットに所定量(たとえば80μL)分注し、試薬セット部52にセットされた容器に収容されている担体粒子懸濁液を、反応部53にセットされたキュベットに所定量(たとえば10μL)分注する。そして、制御部3は、反応部53によりキュベットを所定温度(たとえば、45℃)に保ちながら所定時間(たとえば、5分)攪拌する。これにより、キュベットにおいて測定試料が調製される。そして、送液装置55により、反応部53のキュベット内の所定量の測定試料が、測定部4のフローセル41へ送液される。
【0055】
続いて、制御部3は、測定部4により測定を行う(S13)。具体的には、測定部4により、測定試料中の各粒子から得られる前方散乱光と側方散乱光とに基づいて、前方散乱光信号と側方散乱光信号が生成される。制御部3は、前方散乱光信号と側方散乱光信号に基づいて、それぞれ、前方散乱光強度と側方散乱光強度とを算出し、これらの強度を記憶部31に記憶する。続いて、制御部3は、記憶部31に記憶した前方散乱光強度と側方散乱光強度を読み出して(S14)、測定試料の分析を開始する。
【0056】
なお、以下では、説明の便宜上、適宜、スキャッタグラムとヒストグラムとが参照されるが、これらのスキャッタグラムとヒストグラムは、必ずしも図形またはグラフとして作成される必要はなく、データ処理によって同様の結果が得られれば良い。また、これらスキャッタグラムとヒストグラムを作成する工程は、必ずしも、2軸を用いたグラフが作成される必要はなく、これらスキャッタグラムとヒストグラムが作成されたと同等のデータ構造が、記憶部31に記憶された前方散乱光強度および側方散乱光強度のデータに適用されれば良い。
【0057】
図5(a)は、図4のS14で読み出した各粒子の、前方散乱光強度(以下、「FSC」という)と側方散乱光強度(以下、「SSC」という)とをパラメータとしたスキャッタグラムSG1を例示する図である。横軸はFSCを示し、縦軸はSSCを示している。FSCは粒子の大きさを反映する情報であり、粒子の大きさは、スキャッタグラムSG1の右方向に進むにつれて大きくなる。SSCは粒子の内部情報(密度)を反映する情報であり、粒子の内部情報(密度)は、スキャッタグラムSG1の上方向に進むにつれて大きくなる。
【0058】
スキャッタグラムSG1において、結合数が1〜5の粒子、すなわち、未凝集粒子、2個凝集粒子、3個凝集粒子、4個凝集粒子、および、5個凝集粒子は、この順に、左下から右上へと分布している。このように、未凝集粒子と凝集粒子は、結合数に応じてスキャッタグラムSG1での分布が異なるため、各粒子が分布する領域を設定すれば、各粒子を区分して計数することができる。
【0059】
図4に戻り、制御部3は、図5(b)に示すように、スキャッタグラムSG1に対して、未凝集粒子と2個〜5個凝集粒子がそれぞれ分布する領域A11〜A15に分画するための分画線L11〜L14を設定する(S15)。分画線L11〜L14は、以下のように、ヒストグラムHG1に基づいて設定される。
【0060】
図6(a)は、図4のS14で読み出した各粒子の、FSCと粒子数とをパラメータとしたヒストグラムHG1を例示する図である。横軸はFSCを示し、縦軸は粒子数を示している。ヒストグラムHG1の曲線G1に示すように、結合数が1〜5の粒子、すなわち、未凝集粒子と、2個凝集粒子、3個凝集粒子、4個凝集粒子、および、5個凝集粒子は、それぞれ、粒子数がピークとなるときのFSCの値(ピーク値P1〜P5)の近傍に分布する。したがって、図5(b)に示す領域A11〜A15に分画するための分画線L11〜L14は、それぞれ、隣り合うピーク値の間に設定される。
【0061】
ここで、分画線L11〜L14は、経験的および統計的に適正とされる位置に固定されても良い。しかしながら、分画線L11〜L14は、同一種類の検体においても測定試料間でややずれるため、領域A11〜A15の分画精度を高めるためには、測定試料ごとに分画線L11〜L14を微調整することが望ましい。そこで、本実施の形態では、予め、経験的および統計的に適正とされる分画線L11〜L14の固定値v11〜v14が保持され、これら固定値v11〜v14を、それぞれ、測定試料における未凝集粒子のピークの位置(ピーク値P1)に応じて調整することで、分角線L11〜L14を規定する値V11〜V14が求められる。
【0062】
すなわち、記憶部31には、図6(b)に示すように、未凝集粒子のピークが経験的および統計的に位置付けられるFSCの固定値p1が記憶され、さらに、未凝集と2個凝集、2個凝集と3個凝集、3個凝集と4個凝集、4個凝集と5個凝集の分布の境界が、それぞれ、経験的および統計的に位置付けられるFSCの固定値v11〜v14が記憶されている。
【0063】
制御部3は、ヒストグラムHG1が図6(a)のような状態のとき、この場合のピーク値P1を固定値p1で除算した値(P1/p1)を、固定値v11〜v14に乗算することにより、値V11〜V14を算出する。すなわち、値V11〜V14は、それぞれ、v11×(P1/p1)、v12×(P1/p1)、v13×(P1/p1)、v14×(P1/p1)となる。そして、制御部3は、算出した値V11〜V14に従って、図5(b)に示すように、上下方向に延びる分画線L11〜L14を設定する。
【0064】
なお、記憶部31には、未凝集粒子のピークが経験的および統計的に位置付けられるFSCの固定値p1だけでなく、2個〜5個凝集粒子のピークが、それぞれ、経験的および統計的に位置付けられるFSCの固定値p2〜p5が記憶されても良い。この場合、たとえば、値V11〜V14は、それぞれ、v11×(P1/p1)、v12×(P2/p2)、v13×(P3/p3)、v14×(P4/p4)と求められ得る。
【0065】
図4に戻り、続いて、制御部3は、図5(b)に示すように、分画線L11〜L14によりスキャッタグラムSG1全体の領域を分画し、結合数が1〜5の粒子がそれぞれ分布する領域A11〜A15を設定する(S16)。そして、制御部3は、領域A11〜A15にそれぞれ含まれる未凝集粒子と2〜5個凝集粒子の数を計数するカウント処理を実行する(S17)。
【0066】
ここで、スキャッタグラムSG1の下部には、たとえば図5(a)の領域A0に示すように、乳び粒子等の測定対象外物質が分布する場合がある。この場合、図5(b)の領域A11〜A15には、測定対象外物質が、未凝集粒子または凝集粒子とともに含まれることとなる。このため、単に結合数に応じた領域A11〜A15を設定して、これら領域A11〜A15に含まれる粒子を計数したのでは、領域A11〜A15に含まれる未凝集粒子と凝集粒子を精度良く計数することができない。
【0067】
そこで、本実施の形態では、図4に示すカウント処理(S17)により、領域A11〜A15に含まれる測定対象外物質が計数対象から除外され、結合数が1〜5の各粒子が精度良く計数される。カウント処理(S17)については、追って図7図8(a)を参照して説明する。
【0068】
図4に戻り、次に、制御部3は、カウントされた各粒子の数に基づいて凝集度と濃度を算出する(S18)。具体的には、制御部3は、カウント処理により得られた2〜5個凝集粒子の計数値を合計して合計粒子数(P)を求め、さらに、未凝集粒子の粒子数(M)と合計粒子数(P)とを加算して総粒子数(T)求める。そして、制御部3は、求めた合計粒子数(P)と総粒子数(T)から、凝集度(P/T)を算出し、さらに、算出した凝集度と、あらかじめ作成してある検量線とに基づいて、この検体に含まれる測定対象物質の濃度を算出する。
【0069】
続いて、制御部3は、S18で算出した結果を記憶部31に記憶する(S19)。なお、算出された測定対象物質の濃度は、適宜、免疫測定装置1の表示入力部2(図1(a)参照)に表示される。こうして、制御部3による処理が終了する。
【0070】
図7は、カウント処理(S17)を示すフローチャートである。
【0071】
制御部3は、まず、記憶部31に記憶している変数iに1をセットする(S101)。次に、制御部3は、図5(b)の領域A1i(ここでは、変数iが1のため領域A11)に対して、S102〜S109の処理を実行する。すなわち、制御部3は、領域A11に対して、測定対象外物質を計数対象から取り除く第1の除去処理(S102、S103、S108)と、測定対象外物質が取り除かれた残りの粒子を計数して第1のカウント値C11を取得する処理(S109)を実行する。また、このとき、制御部3はさらに、第1の除去処理が測定対象外物質の除去に適するか否かを判定し、その適否に対応する値をフラグF1に設定する処理(S104〜S107)を実行する。
【0072】
こうして、領域A11に対する処理が終了すると、制御部3は、変数iに1を加算し(S110)、1を加算した後の変数iの値が5を超えているか否かを判定する(S111)。変数iが5を超えていなければ(S111:NO)、S102に戻って、領域A1i
に対して、S102〜S109の処理を実行する。ここでは、変数iの値が2となっているため、図5(b)の領域A12に対して、S102〜S109の処理が実行され、第1のカウント値C12と、フラグF2が取得される。
【0073】
その後、制御部3は、変数iの値が5を超えるまで、S102〜S109の処理を繰り返し実行する。これにより、図5(b)の領域A13、A14、A15に対して、それぞれ、第1のカウント値C13、C14、C15と、フラグF3、F4、F5が取得される。
【0074】
以下、S102〜S109における具体的処理について、図5(b)の領域A13(変数i=3)に対する処理を例に挙げながら説明する。なお、図5(b)の領域A11(変数i=1)、A12(変数i=2)、A14(変数i=4)、A15(変数i=5)に対する処理も、以下と同様の工程により行われる。
【0075】
図9(a)〜(d)は、領域A13に対する処理の過程を模式的に示す図である。
【0076】
制御部3は、スキャッタグラムSG1の領域A13に含まれる粒子に対して、SSCと粒子数をパラメータとしたヒストグラムHG2を作成する(S102)。次に、制御部3は、ヒストグラムHG2に対して、領域A13に含まれる対象粒子(この場合、3個凝集粒子)と測定対象外物質とを区分するための分画線L21を設定する(S103)。
【0077】
図9(b)は、ヒストグラムHG2の波形を示す図である。ヒストグラムHG2において、左側の山状部分が測定対象外物質に対応する部分であり、右側の山状部分が3個凝集粒子に対応する部分である。図7のS102において、制御部3は、まず、ヒストグラムHG2の波形に対してスムージング処理を実行し、ヒストグラムHG2の波形を平滑化する。その上で、制御部3は、左側の山状部分のピークと右側の山状部分のピークとの間において、最も粒子数が少なくなるときのSSCの値V21を取得する。そして、制御部3は、取得した値V21に従って、上下方向に延びる分画線L21を設定する。なお、この分画線L21は、図9(c)に示すように、スキャッタグラムSG1上では分画線L22に相当する。
【0078】
続いて、制御部3は、分画線L21による対象粒子と測定対象外物質との分画が適正であるか否かを判定するために、分画線L21を含む所定幅の領域A23を設定する(S104)。すなわち、制御部3は、図9(d)に示すように、分画線L21に対して、SSCが小さくなる方向と大きくなる方向にそれぞれ所定の範囲を持つ領域A23を設定する。なお、この領域A23は、図9(c)に示すように、スキャッタグラムSG1上では領域A24に相当する。
【0079】
ここで、領域A23に含まれる粒子の数が少なければ、分画線L21の近傍において、対象粒子と測定対象外物質が余り存在しないこととなるため、領域A13において、対象粒子に対応する領域と測定対象外物質の領域との分離が良好であると判定される。この場合、分画線L21による対象粒子と測定対象外物質との分画が適正であると判定される。一方、領域A23に含まれる粒子の数が多ければ、分画線L21の近傍において、対象粒子と測定対象外物質が混在することとなるため、領域A13において、対象粒子に対応する領域と測定対象外物質の領域との分離が良好でないと判定される。この場合、分画線L21による対象粒子と測定対象外物質との分画は適正ではないと判定される。
【0080】
制御部3は、このように、分画線L21を含む所定幅の領域A23に含まれる粒子の数に基づいて、分画線L21による対象粒子と測定対象外物質との分画が適正であるか否かを判定する(S105)。そして、制御部3は、分画線L21による分画が適正である場
合(S105:YES)、フラグF3に1を設定し(S106)、分画線L21による分画が適正でない場合(S105:No)、フラグF3に2を設定する(S107)。
【0081】
図8(b)は、S105の具体的処理を示す図である。制御部3は、領域A23に含まれる粒子の数Caを計数し(S105a)、さらに、領域A13(変数i=3)に含まれる粒子の数Cbを計数する(105b)。そして、制御部3は、粒子数Cbに対する粒子数Caの割合Ca/Cbが所定の閾値Csh1以下であるかを判定し(S105c)、割合Ca/Cbが閾値Csh1以下である場合には(S105c:YES)、分画線L21による分画が適正であると判定して、図7のS106において、フラグFiに1を設定する。一方、割合Ca/Cbが閾値Csh1以下でない場合(S105c:NO)、制御部3は、さらに、領域A23に含まれる粒子の数Caが所定の閾値Csh2以下であるかを判定する(S105d)。ここで、制御部3は、粒子数Caが閾値Csh2以下である場合に(S105d:YES)、分画線L21による分画が適正であると判定して、図7のS106において、フラグFiに1を設定し、粒子数Caが閾値Csh2以下でない場合は(S105d:NO)、分画線L21による分画が適正でないと判定して、図7のS107において、フラグFiに2を設定する。
【0082】
図7に戻り、こうして分画線L21による対象粒子と測定対象外物質との分画が適正であるか否かを判定した後、制御部3は、図9(b)に示すように、分画線L21によりヒストグラムHG2を分画して、測定対象外物質が分布する領域A21が除去された領域A22、すなわち、対象粒子が分布する領域A22を設定する(S108)。そして、制御部3は、領域A22に含まれる粒子の数を計数し、その計数値を領域A13に対する第1のカウント値C13として取得する(S109)。
【0083】
なお、本実施の形態では、図7のフローチャートで示されるように、S105において、分画線L21による分画が適正であると判定された場合(S105:YES)の他、分画線L21による分画が適正でないと判定された場合(S105:NO)にも、S108、S109において、領域A22が設定され、第1のカウント値C13が取得される。
【0084】
こうして、領域A13に対して第1のカウント値C13が取得され、フラグF3が設定される。他の領域A11、A12、A14、A15についても、S102〜S109の処理が実行されることにより、上記と同様にして、分画線L21が設定され、第1のカウント値C11、C12、C14、C15が取得され、さらに、フラグF1、F2、F4、F5が設定される。
【0085】
図7のS102〜S109の処理においては、S108における処理により、測定対象外物質が分布する領域A21が処理対象から除かれるため、S109において取得される第1のカウント値C1iは、測定対象外物質の影響が抑制された値となる。しかしながら、図5(a)、(b)に示すように、4個凝集や5個凝集に対応する領域A14、A15等、結合数が大きい領域では、測定対象外物質が対象粒子から明確に分離されるものの、結合数が小さくなるにつれて、測定対象外物質と対象粒子との間の境界が次第に不明瞭となる。このため、結合数の大きい領域(領域A14、A15、等)については、図7の第1の除去処理(S102、S103、S108)により、測定対象外物質を精度良く除去できるが、結合数の小さい領域(領域A1、A2、等)については、第1の除去処理による測定対象外物質の除去精度は低くなる。
【0086】
図7のフローチャートでは、第1の除去処理(S102、S103、S108)が領域A1iに対する測定対象外物質の除去に適する否かが、S106、S107において設定されるフラグFiの値によって示される。すなわち、S105において分画線L21による分画が適正であると判定されると(S105:YES)、第1の除去処理が適するとし
て、フラグFiに1が設定される。一方、S105において分画線L21による分画が適正でないと判定されると(S105:NO)、第1の除去処理が適しないとして、フラグFiに2が設定される。このように設定されたフラグFiは、第1のカウント値C1iと、S112〜S118により取得される第2のカウント値C2iのうちの何れを、領域A1iに対する対象粒子のカウント値として選択するかにおいて参照される。
【0087】
以上の処理が完了すると、次に、制御部3は、測定対象外物質を計数対象から取り除く第2の除去処理(S112〜S114)と、測定対象外物質が取り除かれた残りの粒子をカウントして、結合数1〜5の粒子の計数値である第2のカウント値C21〜C25を取得する処理(S115〜S118)を実行する。
【0088】
すなわち、制御部3は、図10(a)に示すヒストグラムHG1に基づいて、測定対象外物質の分布を示す曲線G2を推定する(S112)。なお、図10(a)に示すヒストグラムHG1は、図6(a)に示すヒストグラムHG1と同じものである。具体的には、制御部3は、図10(a)に示す曲線G1に基づいて、測定対象外物質に対応する曲線G2をスプライン関数により推定する。続いて、制御部3は、曲線G1から曲線G2を差し引くことにより、図10(b)に示すヒストグラムHG3を作成し、対象粒子(未凝集粒子および凝集粒子)の分布を示す曲線G3を設定する(S113)。このような曲線G3の設定方法は、上記特許文献1として示した特開平3−279842号公報(対応米国特許No.US5527714)に詳細に記載されている。
【0089】
続いて、制御部3は、図10(b)に示すように、曲線G3が設定されたヒストグラムHG3を、図4のS15で算出した値V11〜V14(図6(b)参照)に基づいて分画し、領域A31〜A35を設定する(S114)。
【0090】
次に、制御部3は、変数iに1をセットする(S115)。続いて、制御部3は、領域A3iに含まれる粒子(結合数がiの粒子)をカウントし、そのカウント値を第2のカウント値C2iとして取得する(S116)。ここでは、変数iの値が1であるため、領域A31に含まれる粒子のカウント値が第2のカウント値C21として取得される。そして、制御部3は、変数iに1を加算し(S117)、変数iの値が5以下である場合(S118:NO)、処理をS116に戻して、領域A3iに対する第2のカウント値C2iの取得処理を実行する。ここでは、S117の処理により、変数iの値が2となっているため、領域A32に対する第2のカウント値C22の取得処理が実行される。かかる第2のカウント値C2iの取得処理は、変数iの値が5を超えるまで(S118:YES)、繰り返される。こうして、S116〜S117の処理が領域A31〜A35に対して順に行われ、結合数1〜5の粒子に関して、それぞれ、第2のカウント値C21〜C25が取得される。
【0091】
図7のS112〜S116の処理では、S113において、ヒストグラムHG1上の曲線G1から、測定対象外物質の分布を示す曲線G2が差し引かれて、ヒストグラムHG3が作成されるため、ヒストグラムHG3に設定された領域A31〜A35に含まれる粒子を計数して得られる第2のカウント値C2iは、測定対象外物質の影響が抑制された値となる。この場合、図10(a)に示すように、FSCが小さい領域においては、測定対象外物質の数が多いため、測定対象外物質の分布を高い精度で推定できる。このため、第2の除去処理(S112〜S114)による測定対象外物質の除去精度は、FSCが低い領域では高くなる。
【0092】
しかしながら、図10(a)に示すように、FSCが大きくなるにつれて、測定対象外物質の数が次第にゼロに近づくため、FSCが大きい領域においては、測定対象外物質の分布を高い精度で推定することが困難となる。このため、第2の除去処理(S112〜S
114)による測定対象外物質の除去精度は、FSCが大きくなるにつれて、次第に低下する。
【0093】
したがって、第2の除去処理(S112〜S114)による測定対象外物質の除去精度は、結合数の小さい領域(領域A31、A32等)については高いが、結合数の大きい領域(領域A34、A35等)については低くなる。
【0094】
これに対し、上記のように、第1の除去処理(S102、103、S108)による測定対象外物質の除去精度は、第2の除去処理(S112〜S114)とは逆に、結合数の大きい領域(領域A34、A35等)において高く、結合数の小さい領域(領域A31、A32等)において低い。このため、第1の除去処理の精度が高い領域、すなわち、フラグFiが1である領域は、第1の除去処理を採用し、第1の除去処理の精度が低い領域、すなわち、フラグFiが2である領域は、第2の除去処理を採用することが望ましい。
【0095】
そこで、本実施の形態では、第1の除去処理(S102、103、S108)を実行して得られた第1のカウント値C1iと、第2の除去処理(S112〜S114)を実行して得られた第2のカウント値C2iのうちの何れか一方が、フラグFiの値に基づいて、結合数iの粒子に対するカウント値として選択される。
【0096】
図8(a)は、かかる選択処理を示すフローチャートである。図8(a)のフローチャートは、図7のS118に続くものである。
【0097】
すなわち、制御部3は、変数iに1をセットし(S119)、S106またはS107でセットしたフラグFiの値が、1であるか否かを判定する(S120)。制御部3は、フラグFiの値が1であると(S120:YES)、結合数がiの粒子の数として、第1のカウント値C1iを採用し(S121)、フラグFiの値が2であると(S120:NO)、結合数がiの粒子の数として、第2のカウント値C2iを採用する(S122)。こうして、S120〜S123の処理は、変数iが5を超えるまで繰り返される(S124)。これにより、結合数1〜5の粒子の数として、それぞれ、第1のカウント値C1iと第2のカウント値C2iのうちの何れか一方が採用される。こうして、カウント処理が終了する。
【0098】
このように、結合数が1〜5の粒子の数として、それぞれ、フラグF1〜F5の値に基づいて、第1のカウント値と第2のカウント値のうちの何れか一方が採用されると、結合数が1〜5の粒子の数として、第1のカウント値C1iのみが採用される場合、および、第2のカウント値C2iのみが採用される場合に比べて、精度の高いカウント値が採用されることになる。すなわち、上述したように、結合数の大きい粒子については、第1の除去処理の精度が高いため、第1のカウント値C1iの精度が高くなり、結合数の小さい粒子については、第2の除去処理の精度が高いため、第2のカウント値C2iの精度が高くなる傾向がある。このため、結合数の大きい粒子については第1のカウント値が採用されることが望ましく、結合数の小さい粒子については第2のカウント値が採用されることが望ましい。本実施の形態では、S105において第1のカウント値を採用すべきか否かが判定され、かかる判定結果に基づいて第1および第2のカウント値のうちの何れかが採用されるため、結合数が1〜5の粒子の数を、精度よく取得することができる。これにより、図4のS18において、精度の高い凝集度と濃度を算出することができる。
【0099】
次に、図4図7および図8(a)のフローチャートに従って免疫測定装置1により実際に行われた測定対象物質の濃度の算出結果について説明する。
【0100】
図11は、7つの測定試料C0〜C6を用いて、図4図7および図8(a)に示す処
理(実施の形態)と、第1のカウント値のみを取得する場合の処理(比較例1)と、第2のカウント値のみを取得する場合の処理(比較例2)と、によって得られた結果を示す図である。
【0101】
本測定では、測定試料C0〜C6として、シスメックス株式会社製「ランリームHBsAg」が用いられた。これは、HBs抗原測定用の試薬キットであり、HBsAgラテックス試薬、HBsAg緩衝液、HBsAg検体希釈液、HBsAgキャリブレータから構成される。本測定では、検体としてHBsAgキャリブレータが用いられ、反応緩衝液としてHBsAg緩衝液が用いられた。担体粒子懸濁液は、本測定用に別途生成されたものである。また、本測定では、乳び試料としてシスメックス株式会社製「干渉チェック・Aプラス」が用いられた。また、本測定では、反応部53のキュベットで混合された検体と、反応緩衝液と、担体粒子懸濁液とが、45℃に保たれながら5分間攪拌された。検体の分注量は10μL、反応緩衝液の分注量は80μL、担体粒子懸濁液の分注量は10μLとした。
【0102】
なお、HBsAgラテックス試薬は、抗HBs抗体を感作したラテックス粒子の懸濁液である。HBs抗原は、B型肝炎ウイルス(HBV)の表面抗原であり、HBs抗原測定用の試薬を用いた測定によりHBV感染状態かどうかを調べることができる。
【0103】
図11において、測定試料ごとに設けられた6つの「項目」には、凝集度(P/T)と、結合数が1〜5の粒子(未凝集〜5個凝集粒子)に関する情報が個別に示されている。「実施の形態」、「比較例1」、「比較例2」には、乳び試料が混合された測定試料に対する結果が示されており、「真値」には、乳び試料が混合されていない測定試料に対する結果が示されている。実施の形態と比較例1、2において、「取得値」には、取得された凝集度と、取得された粒子の数が示されており、「乖離度」には、「真値」の値との乖離度が示されている。実施の形態の「選択」には、図7図8(a)に示すカウント処理に従って、比較例1(第1のカウント値)と比較例2(第2のカウント値)の何れが採用されたかが示されている。
【0104】
実施の形態では、結合数が1〜5の粒子の数について、比較例1、2のうち乖離度の絶対値が小さい方のカウント値が採用されている。たとえば、測定試料C2の未凝集粒子について、比較例1の乖離度は3.82%であり、比較例2の乖離度は−0.40%である。そして、実施の形態の乖離度は、乖離度の絶対値が小さい方、すなわち比較例2のカウント値(78985)となっている。また、測定試料C2の3個凝集粒子について、比較例1の乖離度は16.32%であり、比較例2の乖離度は−37.89%である。そして、実施の形態の乖離度は、乖離度の絶対値が小さい方、すなわち比較例1のカウント値(221)となっている。このように、実施の形態では、比較例1、2のうち乖離度の絶対値が小さい方のカウント値、すなわち、より真値に近いカウント値が採用されている。
【0105】
また、実施の形態では、結合数が1〜5の粒子について、それぞれ、比較例1、2のうち真値に近いカウント値が採用されるため、結合数が1〜5の粒子の数から算出される凝集度の乖離度の絶対値は、比較例1、2以下となる。たとえば、測定試料C1について、比較例1の凝集度は1.96%で真値との乖離度は17.76%であり、比較例2の凝集度は1.68%で真値との乖離度は0.52%である。そして、実施の形態の凝集度は1.68%であり比較例2と同様の値となっている。また、測定試料C3について、比較例1の凝集度は8.56%で真値との乖離度は3.34%であり、比較例2の凝集度は8.50%で真値との乖離度は2.63%である。そして、実施の形態の凝集度は8.18%であり真値との乖離度は−1.28%となっている。このように、実施の形態では、凝集度の乖離度の絶対値が比較例1、2以下、すなわち、凝集度の精度が比較例1、2以上に高められる。
【0106】
なお、実施の形態の「選択」の値に示されるように、各測定試料において、結合数が小さい粒子については比較例2(第2のカウント値)が採用されており、結合数が大きい粒子については比較例1(第1のカウント値)が採用されていることが分かる。結合数が中程度の粒子については、比較例1(第1のカウント値)と比較例2(第2のカウント値)のうちの何れか一方が、選択され、採用されていることが分かる。
【0107】
以上、本実施の形態によれば、スキャッタグラムSG1の領域A11〜A15ごとに、分画線L21により適正な分画が可能か否かが判定される。適正な分画が可能と判定されると、第1の除去処理を実行して得られた第1のカウント値が選択され、適正な分画が不可能と判定されると、第2の除去処理を実行して得られた第2のカウント値が選択される。これにより、凝集度および濃度に対する測定対象外物質による誤差の影響をより効果的に軽減することができる。
【0108】
また、本実施の形態によれば、S105の判定において、図9(d)に示す領域A23に含まれる粒子の数、および、ヒストグラムHG2全体に含まれる粒子数に対する領域A23に含まれる粒子の数の比率が、それぞれ、所定の閾値Csh2、Csh1以下であるかが判定される。これら判定により、ヒストグラムHG2において、測定対象外物質に対応する左側の山状部分と、対象粒子に対応する右側の山状部分との境界が明瞭であるか否かを適正に判定することができる。よって、S105の判定により、第1の除去処理の適否を適正に判定することができ、第1のカウント値と第2のカウント値の選択を適正に行うことができる。
【0109】
なお、上記実施の形態では、図4図7および図8(a)に示す処理を、スキャッタグラムSG1とヒストグラムHG1〜HG3を用いて説明し、これらの図において分画線と領域を図示した。しかしながら、上述のように、これらの図と、分画線および領域は、実際に描画され、たとえば表示入力部2に表示される必要はなく、制御部3の分析部32により処理として設定されれば良いものである。具体的には、たとえば、記憶部31に記憶されている全ての粒子の情報に、結合数が1〜5の粒子と測定対象外物質の粒子の何れに分類されたかを示す情報が付加され、分画線と領域は、座標を示す数値によって設定される。
【0110】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0111】
たとえば、上記実施の形態では、全ての結合数の粒子について、第1および第2の除去処理を実行して第1および第2のカウント値の両方を取得し、その後、何れか一方のカウント値が選択された。しかしながら、これに限らず、第1および第2のカウント値のうち、適正なカウント値のみが取得されるようにしても良い。
【0112】
図12は、この場合のカウント処理を示すフローチャート(変更例1)である。図12に示すカウント処理では、図7図8(a)に示すカウント処理のS109、S116が、それぞれ、S131、S133に変更され、S115の後にS132が追加されている。また、S107の処理の後、処理がS110へと進むように変更されている。さらに、図12に示すカウント処理では、図8(a)のS119〜S124が省略される。
【0113】
この場合、結合数がiの粒子について、分画線L21により分画が適正でなれば(S105:NO)、制御部3は、フラグFiに2を設定し(S107)、処理をS110に進める。すなわち、本変更例では、分画線L21により分画が適正でない場合(S105:NO)、第1の除去処理(S108)と、粒子数のカウント値の取得処理(S131)が
スキップされる。他方、結合数がiの粒子について、分画線L21により分画が適正である場合(S105:YES)、制御部3は、フラグFiに1を設定し(S106)、分画線L21によって分画されたヒストグラムHG2に含まれる粒子の数をカウントし、そのカウント値を、結合数iの粒子の数として取得する(S131)。
【0114】
また、制御部3は、S113において変数iを1に設定した後、フラグFiの値が2であるかを判定する(S132)。フラグFiの値が2ではない場合(S132:NO)、制御部3は、粒子数のカウント値の取得処理(S133)をスキップする。他方、フラグFiの値が2である場合(S132:YES)、制御部3は、領域A3iに含まれる粒子の数をカウントし、そのカウント値を、結合数iの粒子の数として取得する(S133)。
【0115】
図12に示すカウント処理によれば、上記実施の形態と同様、結合数が1〜5の粒子の数を、精度良く取得することができる。また、第1の除去処理が適切でない場合には(S105:NO)、第1の除去処理(S108)が実行されないため、処理の効率化および迅速化を図ることができる。さらに、第1の除去処理が適正でない場合には(S105:NO)、S131のカウント値の取得処理がスキップされ、第2の除去処理が適正でない場合には(S132:NO)、S133のカウント値の取得処理がスキップされるため、上記実施の形態に比べて、カウント処理の効率化および迅速化を図ることができる。
【0116】
また、上記実施の形態では、結合数が1〜5の5種類の粒子全てについて、それぞれ、S105において、第1の除去処理が適正であるか否かが判定された。しかしながら、かかる判定を行わずに、予め、結合数ごとに、第1の除去処理と第2の除去処理の何れか一方が、測定対象外物質の除去に適する処理として選択されていても良い。
【0117】
図13(a)は、この場合のカウント処理を示すフローチャートである(変更例2)。図13(a)のカウント処理では、図12のカウント処理に対して、S201が追加され、S103〜S106が削除されている。また、記憶部31に、図13(b)に示すテーブルが保持され、第1の除去処理と第2の除去処理の何れが選択されるかを示すフラグF1〜F5とその値とが関連付けられている。フラグFiの値が1であれば、第1の除去処理(S102、S103、S108)が適正な除去処理として選択され、フラグFiの値が2であれば、第2の除去処理(S112〜S114)が適正な除去処理として選択される。
【0118】
制御部3は、変数iに1を設定し(S101)、記憶部31に記憶されたフラグFiの値が1であるか否かを判定する(S201)。ここで、フラグFiの値が1でなければ(S201:NO)、制御部3は、第1の除去処理(S102、S103、S108)と、粒子数のカウント値の取得処理(S131)をスキップし、変数iに1を加算する(S110)。一方、フラグFiの値が1であると(S201:YES)、制御部3は、第1の除去処理(S102、S103、S108)を実行して領域A22を設定し、さらに、設定した領域A22に含まれる粒子の数をカウントして、そのカウント値を、結合数iの粒子の数として取得する(S131)。
【0119】
以上の処理が、変数iの値が5を超えるまで繰り返される。これにより、フラグFiの値が1である結合数の粒子についてのみ、粒子数が取得される。図13(b)のようにフラグFiが設定されている場合、結合数が3、4、5の粒子についてのみ、S102、S103、S108、S131の処理により粒子数が取得され、結合数が1、2の粒子については粒子数が取得されない。結合数が1、2の粒子については、S132、S133の処理により、粒子数が取得される。
【0120】
図13(a)に示すカウント処理によれば、上記実施の形態と同様、結合数が1〜5の粒子の数を、精度良く取得することができる。また、第1の除去処理(S102、S103、S108)が測定対象外物質の除去に適正であるか否かが判定されないため、処理の簡素化および迅速化を図ることができる。
【0121】
なお、上述したように、結合数の大きい粒子については第1の除去処理の精度が高く、結合数の小さい粒子については第2の除去処理の精度が高い。したがって、この傾向に基づいて、予め、第1の除去処理と第2の除去処理のうちの何れか一方を測定対象外物質の除去に適する除去処理として選択しておくことも可能である。図13(b)に示すフラグFiの設定内容は、この傾向を反映したものである。すなわち、結合数が大きい粒子に対応するフラグF4、F5は、第1の除去処理の精度が高いため、第1の除去処理を選択することを示す値1が設定され、結合数が小さい粒子に対応するフラグF1、F2は、第2の除去処理の精度が高いため、第2の除去処理を選択することを示す値2が設定されている。図11に示す検証結果からも、結合数が4、5の粒子に対して第1の除去処理の精度が高く、結合数が1、2の粒子に対して第2の除去処理の精度が高いことが分かる。
【0122】
このように、第1の除去処理と第2の除去処理のうちの何れか一方を予め選択および設定しておく手法は、特に、その結合数の粒子に対して何れの除去処理が適正であるかが統計的および経験的に明らかである場合に用いて望ましいものである。
【0123】
なお、図11に示す検証結果からすると、結合数が3の粒子については、第1の除去処理と第2の除去処理の何れが測定対象外物質の除去に適するかが、測定対象試料ごとに異なる傾向がある。これに対し、図13(b)によるフラグFiの設定では、結合数が3の粒子については、第1の除去処理が選択される。このため、測定対象試料によっては、結合数が3の粒子について取得された粒子数に、測定対象外物質による誤差が含まれることが起こり得るものと想定され得る。
【0124】
しかしながら、このように結合数が3の粒子について取得された粒子数の精度がやや低下する可能性はあるものの、その他の結合数の粒子について取得された粒子数の精度は高く維持される。したがって、本変更例によっても、図4のS18によって算出される凝集度と濃度の精度を高めることができる。
【0125】
なお、図13(a)のカウント処理において、第1の除去処理と第2の除去処理の何れが測定対象外物質の除去に適するかが不明瞭な結合数の粒子(ここでは、結合数が3の粒子)についてのみ、第1の除去処理と第2の除去処理の何れが測定対象外物質の除去に適するかを判定するようにしても良い。
【0126】
図14(a)は、この場合のカウント処理を示すフローチャート(変更例3)である。なお、図14(a)に示すフローチャートにおいて、S111以降の処理ステップは、図13(a)に示すフローチャートと同じである。図14(a)のカウント処理では、図13のカウント処理に対して、S211〜S216が追加されている。また、記憶部31に、図14(b)に示すテーブルが保持され、第1の除去処理と第2の除去処理の何れが選択されるか、あるいは、判定処理が行われることを示すフラグF1〜F5とその値とが関連付けられている。フラグFiの値が1であれば、第1の除去処理(S102、S103、S108)が適正な除去処理として選択され、フラグFiの値が2であれば、第2の除去処理(S112〜S114、図13(a)参照)が適正な除去処理として選択され、フラグFiの値が3であれば、第1の除去処理と第2の除去処理の何れが測定対象外物質の除去に適正であるかの判定処理が選択される。
【0127】
S201において、フラグFiの値が1で無いと判定した場合(S201:NO)、制
御部3は、さらに、フラグFiの値が2であるか否かを判定する(S211)。ここで、フラグFiの値が2であれば(S211:YES)、制御部3は、処理をS110に処理を進める。他方、フラグFiの値が2ではない場合、すなわち、フラグFiの値が3である場合(S211:NO)、制御部3は、領域A1iに対して、S212〜S215の判定処理を実行する。ここで、S212〜S215における処理は、それぞれ、図7のS102〜S105の処理と同じである。
【0128】
S215において、分画線L21による分画が適正であると判定すると、すなわち、第1の除去処理が測定対象外物質の除去に適すると判定すると(S215:YES)、制御部3は、処理をS108に進めて、領域A1i(ここでは、領域A13)に対する粒子数のカウント値の取得処理を実行する(S108、S131)。他方、分画線L21による分画が適正でないと判定すると、すなわち、第1の除去処理が測定対象外物質の除去に適しないと判定すると(S215:NO)、制御部3は、一時的にフラグFiを2に書き換えて(S216)、処理をS110に進める。この場合、結合数がiの粒子(ここでは、結合数が3の粒子)に対しては、図13(a)のS132の判定がYESとなり、S133のカウント値の取得処理が実行され、第2の除去処理に基づく粒子数が取得される。
【0129】
図14(a)に示すカウント処理によれば、上記実施の形態と同様、結合数が1〜5の粒子の数を、精度良く取得することができる。また、第1の除去処理と第2の除去処理のうちの何れかが測定対象外物質の除去に適するかが不明である結合数の粒子についてのみ判定処理が行われるため、粒子数の計数精度を高めながら、処理の簡素化および迅速化を図ることができる。
【0130】
このように、第1の除去処理と第2の除去処理のうちの何れが測定対象外物質の除去に適するかを判定する処理は、特に、その結合数の粒子に対して何れの除去処理が適正であるかが統計的および経験的に明らかではない場合に用いて望ましいものである。
【0131】
また、図14(a)に示すようにカウント処理が行われる場合、図14(b)に示すテーブル(フラグF1〜F5の値)が、記憶部31に複数記憶され、測定対象物質および測定条件等に応じて、適宜、差し替え可能となるよう免疫分析装置1が構成されても良い。こうすると、測定対象物質や測定条件等が変化しても、精度良く粒子の数を取得することができる。
【0132】
また、上記実施の形態では、スキャッタグラムSG1の横軸とヒストグラムHG1、HG3の横軸にFSCが用いられたが、FSCに替えて、直流電流を流した電極間に粒子を通過させた際に得られる直流抵抗といった電気的情報が用いられても良い。また、スキャッタグラムSG1の縦軸とヒストグラムHG2の横軸にSSCが用いられたが、SSCに替えて、高周波電流を流した電極間に粒子を通過させた際に得られる高周波抵抗といった電気的情報が用いられても良い。
【0133】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 … 免疫測定装置
3 … 制御部
4 … 測定部(検出部)
42 … レーザ光源(光源)
48 … フォトダイオード(受光部)
49 … フォトマルチプライヤーチューブ(受光部)
図1
図2
図3
図4
図6
図7
図8
図10
図11
図12
図13
図14
図5
図9