(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の故障診断システムを構成する故障診断装置及び計測装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、本発明をディスク型スチームトラップの故障診断に適用した場合を例示して説明する。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0010】
[1.第1の実施形態]
[1−1.故障診断システムの概要]
図1は、故障診断システム1の機能ブロック図の一例を示す図である。故障診断システム1は、例えば稼働中の蒸気配管設備に設置されたディスク型スチームトラップ4(以下、単にスチームトラップ4と称することがある。)の動作を計測する計測装置2と、動作を計測したスチームトラップ4が故障しているか否かについての故障診断を行う故障診断装置3とを含む。
【0011】
計測装置2は、診断対象のスチームトラップ4についての環境条件を取得する環境条件取得部21と、スチームトラップ4の動作を計測する計測部24と、スチームトラップ4を計測してその動作状態を決定する動作状態決定部22と、上記取得した環境条件や上記決定した動作状態等を出力表示する表示部23とを備える。
【0012】
環境条件取得部21は、例えば温度センサを用いて計測したスチームトラップ4の周囲温度を、環境条件として取得することができる。また、環境条件取得部21は、例えばスチームトラップ4の設置場所の天候に関する情報を、環境条件として取得することができる。なお、天候に関する情報は、故障診断の作業者が計測装置2に直接入力した情報に基づいて取得してもよいし、外部装置(図示しない)からネットワーク等を介して取得してもよいし、計測装置2に備えられた気圧計(図示しない)の情報に基づいて取得してもよい。
【0013】
計測部24は、例えば圧電素子を用いた振動センサにより、スチームトラップ4の動作を計測することができる。動作状態決定部22は、計測部24が計測した情報に基づいて、スチームトラップ4の動作状態を決定することができる。なお、スチームトラップ4の動作状態を決定する方法については後述する。
【0014】
故障診断装置3は、計測装置2から診断対象のスチームトラップ4の環境条件(例えばスチームトラップ4の用途、取付位置、設置年月、天候、外気温又は、累計動作回数等。)を受け取る環境条件受取部31と、計測装置2から診断対象のスチームトラップ4の動作状態(例えばディスク式スチームトラップの場合は単位時間当たりにおけるディスク動作音の個数)を受け取る動作状態受取部32と、診断対象のスチームトラップ4について計測装置2から受け取った環境条件および動作状態と、比較対象のスチームトラップ4について予め記録されている環境条件および動作状態との相違に基づいて、診断対象のスチームトラップ4が故障しているか否か判断する故障判断部33と、上記故障判断時等において例えば故障の有無を示す情報を出力表示する表示部34とを備える。
【0015】
[1−2.故障診断システムの装置の構成]
図2は、故障診断システム1のシステム構成の模式図の一例を示す図である。故障診断システム1は計測装置2と故障診断装置3とを含む。
【0016】
計測装置2は、本体部8とプローブ9とを含む。本体部8は、例えば組み込み型機器を用いて構成することができる。
【0017】
計測装置2の本体部8はプローブ9に接続されており、このプローブ9の先端にはスチームトラップ4の外表面に押し当てた状態でトラップ外表面における超音波振動を検出するセンサ及び、プローブ9の先端の温度を検出するセンサを含むセンサ群10が設けられている。つまり、センサ群10は、超音波振動を検出する振動センサと、スチームトラップ4の表面温度又はその周囲温度を検出する温度センサとを含む。センサ群10により検出された各検出信号は、接続コード11(ないしは、赤外線通信手段などの無線通信手段)を通じて本体部8に入力される。
【0018】
本体部8は、環境条件取得部21と、動作状態決定部22と、表示部23とを構成し、プローブ9は計測部24を構成する。
【0019】
故障診断装置3は、例えばノート型のパーソナルコンピュータを用いて構成することができる。故障診断装置3は接続コード18(ないしは赤外線通信手段などの無線通信手段)を介して計測装置2の本体部8と双方向通信が可能である。故障診断装置3は、本体部8から、センサ10による振動及び温度の検出信号の出力を受けて、故障診断処理を行いその結果を出力表示する。
【0020】
故障診断装置3は、環境条件受取部31と、動作状態受取部32と、故障判断部33と、表示部34とを構成する。
【0021】
[1−3.故障診断システムのハードウェア構成例]
図3は、計測装置2を、CPU等を用いて実現したハードウェア構成の一例を示す図である。計測装置2は、ディスプレイ41、CPU42、メモリ43、操作キー44、通信ポート45及び、プローブ9を備える。
【0022】
ディスプレイ41は、入力内容や計測結果等を出力表示することができる。CPU42は、メモリ43に記憶されている計測プログラム431を実行することができる。メモリ43は、計測プログラム431及び計測結果データ432等を記憶することができるとともに、CPU42にアドレス空間を提供することができる。操作キー44は、作業者からスチームトラップ4の環境条件等の入力操作等を受け付けることができる。通信ポート45は、故障診断装置3と通信することができる。プローブ9は、超音波振動を検出する振動センサ46と、スチームトラップ4の表面温度又はその周囲温度を検出する温度センサ47とを含む。
【0023】
図1に示した計測装置2を構成する環境条件取得部21は、例えば操作キー44、振動センサ46又は温度センサ47が該当する。動作状態決定部22は、例えばCPU42上において計測プログラム431を実行することによって実現される(例えば
図5のステップS101〜S105。)。計測部24はプローブ9が該当する。表示部23はディスプレイ41が該当する。
【0024】
図4は、故障診断装置3を、CPU等を用いて実現したハードウェア構成の一例を示す図である。故障診断装置3は、ディスプレイ51、CPU52、メモリ53、ハードディスク54、キーボード/マウス55及び、通信ポート56を備える。
【0025】
ディスプレイ51は、キーボード/マウス55からの入力内容や故障診断結果等を表示することができる。CPU52は、メモリ53に記憶されている故障診断プログラム542を実行することができる。メモリ53は、CPU52にアドレス空間を提供することができる。ハードディスク54は、OS(オペレーティング・システム)541、故障診断プログラム542、比較対象データ543等を記憶することができる。キーボード/マウス55は、作業者からスチームトラップ4の故障診断処理にかかる入力操作を受け付けることができる。通信ポート56は、計測装置2と通信することができる。
【0026】
比較対象データ543には、診断対象となるトラップ毎に、過去に診断又は診断テストを行った際における環境条件や診断結果等の情報が複数記録されている。故障診断プログラム542を実行するCPU52は、比較対象のスチームトラップについての環境条件および動作状態を比較対象データ543から読み出すことによって、診断対象のスチームトラップについての故障を判断することができる。なお、比較対象データ543の各レコードに記録されている診断結果には、故障診断を行ったスチームトラップを実際に分解・解析等して得られたものを用いることができる。
【0027】
図1に示した故障診断装置3を構成する、環境条件受取部31、動作状態受取部32及び、故障判断部33はCPU42上において故障診断プログラム542を実行することによって実現される。環境条件受取部31及び動作状態受取部32は、例えば
図8のステップS201の処理に該当する。故障判断部33は、例えば
図8のステップS202(
図9のS301〜S305)の処理に該当する。表示部34はディスプレイ51が該当する。
【0028】
[1−4.計測装置2における処理]
図5は、計測プログラム431による計測処理のフローチャートの一例を示す図である。なお、計測時においては、計測装置2の本体部8と故障診断装置3は、必ずしも接続コード18等を介して接続されている必要はない。
【0029】
プローブ9の先端がスチームトラップ4の外表面に押し当てられると、計測装置2のCPU42はタイマーカウントを開始する(ステップS101)。なお、タイマーカウントを開始するのは、後述するように1回で15秒間の計測を継続して行うためである。
【0030】
続いてCPU42は、振動センサ46を用いてスチームトラップ4の内部音を計測する(ステップS102)。内部音は、例えばスチームトラップ4に設けられた弁ディスクが動作した場合に発生する動作音や、スチームトラップ4の内部通路を蒸気が勢いよく流れた場合に発生する超音波が該当する。また、振動センサ46には、例えば内部音による振動を電圧に変換することのできる圧電素子を用いることができる。
【0031】
図6は、ディスク式スチームトラップ4の断面図の一例を示す図である。
図6を用いて、蒸気配管系に発生する復水(ドレン)を自動的に排出するディスク式スチームトラップ4の動作原理について簡単に説明する。
【0032】
本体71には、同一軸上に入口75と出口80とが形成される。入口75及び出口80と連通する変圧室73が、蓋部材72と本体71との間に形成される。入口75と出口80の変圧室73側開口端に内輪弁座77と外輪弁座78とが、同心円状で同一平面に形成され、その間に環状溝76が形成される。内外輪弁座77、78に離着座する円板状の弁ディスク81が、変圧室73内に配置される。入口75と変圧室73は、内輪弁座77に形成した入口通路74を介して連通する。変圧室73と出口80は、環状溝76の一部から形成した出口通路79を介して連通する。
【0033】
上記ディスク式スチームトラップの作動を説明する。入口通路74を介して弁ディスク81に作用する入口75側の流体圧力により、弁ディスク81は内外輪弁座77、78から離座開弁し、復水を環状溝76、出口通路79を通して出口80に排出する。
【0034】
復水が排出されて蒸気が内外輪弁座77、78と弁ディスク81の間を高速に通過することによって内外輪弁座77、78と弁ディスク81の間の圧力が低下し、また蒸気が変圧室73に流れ込み変圧室73の圧力が上昇することによって、弁ディスク81が内外輪弁座77、78に着座閉弁する。そして、変圧室73内の蒸気が放熱等により凝縮しその蒸気圧力が低下してくると、弁ディスク81は内外輪弁座77、78から離座開弁する。ディスク式スチームトラップは、このような開閉弁のサイクルを繰り返す動作を行うものである。
【0035】
上述した内部音は、例えばディスク式スチームトラップ4に設けられた弁ディスク81が開弁動作した場合に発生する動作音や、弁ディスク81が内外輪弁座77、78に着座閉弁する際に、出口通路79を蒸気が勢いよく流れた場合に発生する超音波が該当する。
【0036】
CPU42は、計測結果をメモリ43に記録する(ステップS103)。具体的には、CPU42は、振動センサ46から信号出力を受けたAD変換器(図示しない)によりAD変換された振動レベルを、スチームトラップ4の計測結果としてメモリ43に逐次記録する。
【0037】
続いてCPU42は、タイマーカウントが15秒を経過しているか否かを判断する(ステップS104)。タイマーカウントが15秒未満であれば、CPU42は、上記ステップS101に戻って処理を繰り返す(ステップS104におけるNo判断)。タイマーカウントが15秒以上であれば(ステップS104におけるYes判断)、CPU42は、メモリ43に記録した計測結果に基づいて、スチームトラップ4の動作状態を決定する(ステップS105)。
【0038】
図7は、スチームトラップの計測結果のグラフの一例を示す図である。CPU42は、例えば、計測時間である15秒間において、一定の振動レベルUを超えた信号データの個数をカウントし、そのカウント数をスチームトラップ4に内蔵されたディスクの単位時間当たりの動作回数として決定する。具体的には、例えば
図7に示す振動レベルU以上の振動レベルのピークA、B及びCの個数である「3」を単位時間当たりの動作回数として決定する。なお振動レベルのピークDは、上記計測時間から外れた計測時間における振動レベルであるので、上記においては動作回数としてカウントしていない。
【0039】
また、振動レベルU以下において0より大きい振動レベルが連続して発生している箇所(例えば領域Eで示された振動レベル群)は、スチームトラップ4の内部通路を蒸気が勢いよく流れた場合に発生する超音波による振動レベルを示している。別の実施形態として、この領域Eで示された振動レベル群の変動に基づいて、スチームトラップ4の動作状態を決定するようにしてもよい。
【0040】
[1−5.故障診断装置3における処理]
図8は、故障診断プログラムによる故障診断処理のフローチャートの一例を示す図である。
図9は、この故障診断処理のサブルーチンのフローチャートの一例を示す図である。なお、故障診断時においては、計測装置2の本体部8と故障診断装置3は、接続コード18等を介して接続されている必要がある。
【0041】
故障診断装置3のCPU52は、計測装置2から診断対象のスチームトラップ4の環境条件及び動作状態を示すデータを取得する(ステップS201)。
図10は、環境条件及び動作状態を示すデータの一例を示す図である。
図10に示すレコード901のデータのうち、メーカー91のデータ「A社」及び型式92のデータ「AAA」は、診断対象のスチームトラップ特定するためのデータである。また、用途93のデータ「主管」、取付位置94のデータ「屋外低所」、外気温95のデータ「8℃」及び、天候96のデータ「雨」は、診断対象のスチームトラップの環境条件を示すデータである。さらに、単位時間当たりの動作回数97のデータ「3回」は、診断対象のスチームトラップの動作状態を示すデータである。
【0042】
上記において、用途93のデータ「主管」、取付位置94のデータ「屋外低所」、外気温95のデータ「8℃」及び、天候96のデータ「雨」は、例えば作業者が計測装置2の操作キー44を用いて入力操作したデータである。なお、これらのデータは計測装置2による計測時において自動的に取得するように構成することもできる。例えば、計測前または計測後の所定タイミングにおいて温度センサ46で検出した温度を外気温95のデータとすることができる。また例えば、予め設定されているデータに基づいて、用途93のデータ、取付位置94のデータを取得することができる。
【0043】
続いてCPU52は、故障判断処理を実行する(ステップS202)。故障判断処理は、一例として
図9に示すフローチャートにて示される。CPU52は、比較対象データ543から、診断対象のスチームトラップ4と環境条件が共通するトラップのデータを取得する(ステップS301)。
図11は、比較対象データの一例を示す図である。
【0044】
例えば、CPU52は、
図10のレコード901に示したデータに基づいて比較対象データ543を検索し、
図11のレコード603を抽出することができる。具体的には、メーカー91のデータ「A社」及び型式92のデータ「AAA」に基づいて、比較対象のスチームトラップを特定し、用途93のデータ「主管」、取付位置94のデータ「屋外低所」、外気温95のデータ「8℃」及び、天候96のデータ「雨」に基づいて環境条件が共通する比較対象のスチームトラップを特定する。
【0045】
CPU52は、診断対象のスチームトラップ4の動作状態と、上記ステップS301にて抽出した比較対象のスチームトラップの動作状態のデータとを比較し(ステップS302)、比較したそれぞれの動作状態が共通する場合(ステップS303におけるYes判断)には比較対象のスチームトラップの判定結果を、診断対象のスチームトラップ4の診断結果として採用する。
【0046】
具体的には、
図10のレコード901において、診断対象のスチームトラップ4の動作状態を示す単位時間当たりの動作回数97のデータ「3回」と、
図11のレコード603において、比較対象のスチームトラップ4の動作状態を示す単位時間当たりの動作回数67のデータ「3回」とが共通しているため、
図11のレコード603において、比較対象のスチームトラップの判定結果を示す故障有無68のデータ「無」を、診断対象のスチームトラップ4の診断結果とする(ステップS305)。
【0047】
一方、CPU52は、診断対象のスチームトラップ4の動作状態を示すデータと、上記ステップS301にて抽出した比較対象のスチームトラップの動作状態を示すデータとが共通しない場合(ステップS303におけるNo判断)には、所定条件に基づいて、比較対象のスチームトラップの故障を判断する(ステップS304)。具体的には、CPU52は、診断対象のスチームトラップ4の動作状態を示す単位時間当たりの動作回数97のデータが「3回」以上であれば故障であり、「3回」未満であれば故障でないとする所定条件に基づいて、スチームトラップの故障を判断することができる。
【0048】
図8のフローチャートに戻り、CPU52は、上記において求めた診断結果をディスプレイ51に表示させる(ステップS203)。
図12は、故障診断処理の処理結果を含むデータを、ディスプレイ51に表示した画面の一例を示す図である。
図12に示すように、診断結果121のデータとして「正常」が表示される。つまり、上記において計測したスチームトラップ4は故障していないと判断される。
【0049】
[1−6.まとめ]
このように、スチームトラップの故障判断を行う際に、外気温や天候等を含む環境条件を考慮することで、単純に動作状態のみを所定値に基づいて故障判断する場合に比べて、診断精度を容易に向上させることができる。
【0050】
例えばディスク式スチームトラップの場合、上述した通り、流れ込んだ蒸気で変圧室73の圧力が上昇することにより弁ディスク81が閉弁し、変圧室73内の蒸気が放熱等で凝縮して圧力が低下することにより弁ディスク81が開弁する。
【0051】
つまり、天候等によりスチームトラップ4の周辺温度が低い場合、変圧室73内の蒸気放熱が短時間で行われ、弁ディスクが通常よりも早く開弁してしまう場合がある。弁ディスクが早く開弁した場合、弁ディスクの摩耗等により蒸気漏れが生じて弁ディスクが早く開弁した場合(スチームトラップの故障)と区別することが困難となる。
【0052】
例えば
図11のレコード601に示すように、メーカー61のデータ「A社」及び型式62のデータ「AAA」のスチームトラップは、単位時間当たりの動作回数67のデータが「3回」の場合、動作回数の所定条件により、故障と判断される。
【0053】
しかしながら、レコード603に示すように、上記スチームトラップは、外気温65のデータが「8℃」であり、天候66のデータが「雨」である場合、たとえ動作回数67のデータが「3回」であっても、スチームトラップ4に故障が認められないことがある。
【0054】
このように、環境条件として天候や周囲温度を考慮してスチームトラップの故障判断を行うことにより、周辺温度の低下による早期開弁を、故障動作であると誤判断することを回避できる。
【0055】
[2.他の実施形態]
[2−1.環境条件]
上記第1の実施形態においては、環境条件として、診断対象のスチームトラップにおける、用途、取付位置、外気温及び、天候の情報を用いて診断を行っているが、その他の情報を環境条件に含めてもよい。例えば、診断対象のスチームトラップにおける設置年月や累計動作回数などの情報を環境条件に含めてもよい。また、診断対象のスチームトラップの使用環境、使用地域使用工場などの情報を環境条件に含めてもよい。これにより、診断対象のスチームトラップの環境条件と、比較対象のスチームトラップの環境条件とをよりきめ細かくマッチングすることができ、故障判定精度をより一層向上させることが可能となる。
【0056】
[2−2.動作状態]
上記第1の実施形態においては、動作状態として、ディスク式スチームトラップの弁ディスクの動作回数を用いたが、その他の情報を動作状態としてもよい。例えば、スチームトラップ内の復水(ドレン)の排出回数を動作状態としてもよい。なお、復水の排出の判断には排出時に発生する超音波をプローブ9を用いてピックアップすることができる。この場合、例えばフリーフロート式スチームトラップ又はバケット式スチームトラップの動作状態を判断するための比較対象データを用いれば、スチームトラップの種類に関わらず故障診断を行うことができる。
【0057】
[2−3.複数計測]
上記第1の実施形態においては、1回の計測に対する故障診断を行う例を説明したが、実際には計測装置2を用いて複数のスチームトラップについて計測を行い、各スチームトラップについての環境条件及び動作状態のデータを故障診断装置にまとめて送信したのちに、複数のスチームトラップそれぞれについて故障診断を行い、その診断結果を一覧形式で表示するようにしてもよい。
【0058】
[2−4.計測装置2と故障診断装置3の一体化]
上記第1の実施形態においては、計測装置2と故障診断装置3とをそれぞれ別の装置を用いて構成したが、計測装置2の機能と故障診断装置3の機能とを一体化した装置を用いて故障診断処理を行う構成としてもよい。このような構成の採用により、スチームトラップの故障診断を迅速に行うことができる。また、計測装置2の機能と故障診断装置3の機能とを含む装置を小型の装置として一体化すれば、作業者の作業負担を軽減することが可能となる。
【0059】
[2−5.スチームトラップ4と計測装置2の一体化]
上記第1の実施形態においては、作業者が計測装置2を用いてスチームトラップ4にプローブ9を用いて測定作業を行う例を説明したが、プローブ9を含む計測装置2を、スチームトラップに常時固定しておき、環境条件及び/又は動作状態に関するデータを、故障診断装置3に定期的に送信する構成としてもよい。なお、計測装置2から故障診断装置3への通信には有線又は無線による通信媒体を用いることができる。このような構成の採用により、蒸気配管設備に設置された多数のスチームトラップの状態を一元管理することが可能となる。
【0060】
[3.その他]
上記各実施形態において説明した構成の一部または全部を、2以上組み合わせた構成としてもよい。例えば、計測装置2と故障診断装置3とスチームトラップ4とをすべて一体化した場合には、自己故障診断機能付きのスチームトラップとして構成することができる。このような構成の採用により、蒸気配管設備に設置された各スチームトラップに故障の有無を表示させたり、通知させたりすることが可能となる。