(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054787
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】変速操作装置
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
B60K20/02 A
B60K20/02 D
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-59720(P2013-59720)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-184772(P2014-184772A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】391064005
【氏名又は名称】株式会社アツミテック
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】石津 陽通
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 信治
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−327002(JP,A)
【文献】
実開昭62−67831(JP,U)
【文献】
特開昭58−73445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/00−20/08
F16H 61/26−61/36
F16H 63/00−63/38
F16H 59/00−61/12
G05G 1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体から突出形成されるとともに、互いに異なる方向である一方向及び他方向に操作可能なシフトレバーと、
該シフトレバーの基端側に形成され、当該シフトレバーに対する操作に応じて前記本体に対して回転する基端部と、
前記シフトレバーに対する前記一方向への操作力が伝達されて作動する第1作動部材と、
前記シフトレバーに対する前記他方向への操作力が伝達されて連動し得る連動部材と、
該連動部材の動作が伝達されて作動する第2作動部材と、
前記第1作動部材の作動を検知することで、前記シフトレバーの前記一方向への操作を検知し得る第1検知手段と、
前記第2作動部材の作動を検知することで、前記シフトレバーの前記他方向への操作を検知し得る第2検知手段と、
を具備し、前記シフトレバーの操作を検知可能な変速操作装置において、
前記基端部には、前記シフトレバーが前記一方向へ操作される際の回転軸に沿って腕部が延設され、当該腕部に前記連動部材が連結され、前記連動部材は、前記他方向に対する前記シフトレバーの操作力が伝達されて連動するとともに、当該シフトレバーが前記一方向へ操作されたとき、前記腕部との連結部にて空回りして操作力が伝達されない構成とされたことを特徴とする変速操作装置。
【請求項2】
前記連動部材は、一端部に前記腕部を嵌合させる嵌合孔及び他端部に前記第2作動部材と連結される伝達部が形成されたリンク部材から成り、前記シフトレバーが前記一方向へ操作されたとき、前記嵌合孔内で前記腕部が空回りして操作力が伝達されず、且つ、前記シフトレバーが前記他方向へ操作されたとき、前記伝達部を中心に回動して前記第2作動部材を作動させることを特徴とする請求項1記載の変速操作装置。
【請求項3】
前記第1作動部材及び基端部の連結部には、長溝及び該長溝に嵌合した凸部がそれぞれ形成されるとともに、前記シフトレバーが前記一方向に操作される際、前記長溝と前記凸部とが係合して前記第1作動部材が作動し、且つ、前記シフトレバーが前記他方向に操作される際、前記長溝内を前記凸部が移動して前記第1作動部材が作動しない構成とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の変速操作装置。
【請求項4】
前記本体の一方側の所定部位に前記第1作動部材が連結され、他方側の所定部位に前記連動部材が連結されるとともに、当該連動部材を介して前記一方側の所定部位に前記第2作動部材が連結されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の変速操作装置。
【請求項5】
前記第1検知手段及び第2検知手段は、共通の基板上に形成されるとともに、当該第1検知手段及び第2検知手段に対して前記第1作動部材及び第2作動部材がそれぞれ対向して配設されたことを特徴とする請求項4記載の変速操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレバーの操作を検知可能な変速操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変速操作装置は、車両に設けられた自動変速機をシフト操作するためのものであり、通常、シフトレバーを具備しており、かかるシフトレバーを運転者が操作することにより、自動変速機を任意にシフト操作可能とされている。しかるに、近時においては、シフトレバーの操作をセンサ等で電気的に検知し、その検知信号を自動変速機に送信してシフト操作させるものが普及しつつある。
【0003】
さらに、従来より、車両の前後方向(一方向)及び左右方向(他方向)に対してそれぞれシフトレバーを操作可能な変速操作装置において、当該シフトレバーの操作を電気的に検知して自動変速機に送信し得るものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような変速操作装置は、シフトレバーの前後方向(一方向)の操作を検知するセンサと、左右方向(他方向)の操作を検知するセンサとをそれぞれ具備していた。
【0004】
より具体的には、上記従来の変速操作装置は、シフトレバーと、シフトレバーの一方向への操作により作動する第1作動部材(第1回動片)と、シフトレバーの他方向への操作に連動する連動部材(連動部48)と、連動部材が連動することで作動する第2作動部材(第2回動片)と、第1作動部材の作動を検知することでシフトレバーの一方向又は他方向への操作を検知する検知手段(MRE素子)とを具備していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−327002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の変速操作装置においては、シフトレバーを一方向に操作する過程で当該シフトレバーが連動部材を押圧する虞があるため、例えばシフトレバーを一方向に操作しつつ他方向に操作した場合、連動部材の位置が変化して第2作動部材の作動が変化してしまい、検知手段による他方向への操作の検知に誤差が生じてしまう虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、シフトレバーの一方向の操作及び他方向の操作をそれぞれ精度よく検知することができる変速操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、本体から突出形成されるとともに、互いに異なる方向である一方向及び他方向に操作可能なシフトレバーと、該シフトレバーの基端側に形成され、当該シフトレバーに対する操作に応じて前記本体に対して回転する基端部と、前記シフトレバーに対する前記一方向への操作力が伝達されて作動する第1作動部材と、前記シフトレバーに対する前記他方向への操作力が伝達されて連動し得る連動部材と、該連動部材の動作が伝達されて作動する第2作動部材と、前記第1作動部材の作動を検知することで、前記シフトレバーの前記一方向への操作を検知し得る第1検知手段と、前記第2作動部材の作動を検知することで、前記シフトレバーの前記他方向への操作を検知し得る第2検知手段とを具備し、前記シフトレバーの操作を検知可能な変速操作装置において、前記基端部には、前記シフトレバーが前記一方向へ操作される際の回転軸に沿って腕部が延設され、当該腕部に前記連動部材が連結され、前記連動部材は、前記他方向に対する前記シフトレバーの操作力が伝達されて連動するとともに、当該シフトレバーが前記一方向へ操作されたとき、前記腕部との連結部にて空回りして操作力が伝達されない構成とされたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の変速操作装置において、前記連動部材は、一端部に前記腕部を嵌合させる嵌合孔及び他端部に前記第2作動部材と連結される伝達部が形成されたリンク部材から成り、前記シフトレバーが前記一方向へ操作されたとき、前記嵌合孔内で前記腕部が空回りして操作力が伝達されず、且つ、前記シフトレバーが前記他方向へ操作されたとき、前記伝達部を中心に回動して前記第2作動部材を作動させることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の変速操作装置において、前記第1作動部材及び基端部の連結部には、長溝及び該長溝に嵌合した凸部がそれぞれ形成されるとともに、前記シフトレバーが前記一方向に操作される際、前記長溝と前記凸部とが係合して前記第1作動部材が作動し、且つ、前記シフトレバーが前記他方向に操作される際、前記長溝内を前記凸部が移動して前記第1作動部材が作動しない構成とされたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の変速操作装置において、前記本体の一方側の所定部位に前記第1作動部材が連結され、他方側の所定部位に前記連動部材が連結されるとともに、当該連動部材を介して前記一方側の所定部位に前記第2作動部材が連結されたことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の変速操作装置において、前記第1検知手段及び第2検知手段は、共通の基板上に形成されるとともに、当該第1検知手段及び第2検知手段に対して前記第1作動部材及び第2作動部材がそれぞれ対向して配設されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、連動部材は、他方向に対するシフトレバーの操作力が伝達されて連動するとともに、一方向に対するシフトレバーの操作力の伝達が遮断されるので、シフトレバーを一方向に操作した場合、連動部材を動作させることがなく、第2作動部材の非作動状態を維持することができることから、シフトレバーの一方向の操作及び他方向の操作をそれぞれ精度よく検知することができる。
【0014】
さらに、基端部には、シフトレバーが一方向へ操作される際の回転軸に沿って腕部が延設され、当該腕部に連動部材が連結されて成るとともに、連動部材は、シフトレバーが一方向へ操作されたとき、腕部との連結部にて空回りして操作力が伝達されない構成とされたので、一方向に対するシフトレバーの操作力の伝達をより確実に遮断することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、連動部材は、一端部に腕部を嵌合させる嵌合孔及び他端部に第2作動部材と連結される伝達部が形成されたリンク部材から成り、シフトレバーが一方向へ操作されたとき、嵌合孔内で腕部が空回りして操作力が伝達されず、且つ、シフトレバーが他方向へ操作されたとき、伝達部を中心に回動して第2作動部材を作動させるので、当該連動部材に対して、一方向に対するシフトレバーの操作力の伝達をより確実に遮断することができるとともに、他方向に対するシフトレバーの操作力の伝達をより確実に行わせることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、第1作動部及び基端部の連結部には、長溝及び該長溝に嵌合した凸部がそれぞれ形成されるとともに、シフトレバーが一方向に操作される際、長溝と凸部とが係合して第1作動部が作動し、且つ、シフトレバーが他方向に操作される際、長溝内を凸部が移動して第1作動部が作動しない構成とされたので、当該第1作動部材に対して、一方向に対するシフトレバーの操作力の伝達をより確実に行わせることができるとともに、他方向に対するシフトレバーの操作力の伝達をより確実に遮断することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、本体の一方側の所定部位に第1作動部材が連結され、他方側の所定部位に連動部材が連結されるとともに、当該連動部材を介して一方側の所定部位に第2作動部材が連結されたので、第1作動部材及び第2作動部材を本体の一方側に配設させることができ、装置の小型化及び装置構成の簡素化を図ることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、第1検知手段及び第2検知手段は、共通の基板上に形成されるとともに、当該第1検知手段及び第2検知手段に対して第1作動部材及び第2作動部材がそれぞれ対向して配設されたので、装置の小型化及び装置構成の簡素化を図ることができ、且つ、部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る変速操作装置を示す斜視図
【
図2】同変速操作装置(カバー体及びカバーを取り外した状態)を示す斜視図
【
図9】同変速操作装置におけるシフトレバー及び基端部を示す斜視図
【
図10】同変速操作装置における第1作動部材及び第2作動部材(基板の第1検知手段及び第2検知手段と対向させた状態)を示す斜視図
【
図11】同変速操作装置における連動部材及び本体等を示す斜視図
【
図12】同変速操作装置における連動部材の動作を示すための正面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る変速操作装置は、シフトレバーの操作を検知して車両に搭載された自動変速機を任意にシフト操作するためのもので、
図1〜12に示すように、シフトレバー1と、基端部5と、本体6と、第1作動部材7と、第2作動部材8と、連動部材としてのリンク部材12と、第1検知手段10と、第2検知手段11とを有して構成されている。
【0021】
シフトレバー1は、本体6から上方に向かって突出形成されるとともに、互いに異なる方向(本実施形態においては互いに直交する方向)である一方向a(本実施形態においては車両の前後方向)及び他方向b(本実施形態においては車両の幅方向)に操作可能な棒状部材から成り、突端に運転者が把持し得る操作ノブN(
図1参照)が取り付けられるよう構成されている。かかるシフトレバー1の基端側には、基端部5が一体的に形成されている。
【0022】
基端部5は、球状に形成された部材から成るとともに、本体6に取り付けられた支持部材4にて支持され、シフトレバー1に対する操作に応じて本体6に対して回転するよう構成されている。なお、
図9に示すように、基端部5の所定部位には収容穴5cが形成されており、当該収容穴5cにピン状部材16及びスプリング17が収容されるようになっている。かかるピン状部材16は、案内部材3の所定部位に対してスプリング17にて付勢されつつ押圧されて組み付けられ、シフトレバー1を一方向aにおける初期位置に付勢して戻すことができるよう構成されている。
【0023】
また、基端部5の所定部位(本体6に対する一方側)には、
図9(b)に示すように、上下方向(すなわち、シフトレバー1が他方向bへ操作された際に基端部5が回転する方向)に延びる長溝5bが形成されており、
図5に示すように、当該長溝5bに第1作動部材7の凸部7aが摺動可能に嵌合して組み付けられている。さらに、基端部5の所定部位(本体6に対する他方側)には、シフトレバー1が一方向aへ操作される際の回転軸A(
図6、12参照)に沿って腕部5aが延設されており、
図5に示すように、当該腕部5aの突端部がリンク部材12の嵌合孔12aaに回転可能に嵌合して組み付けられている。
【0024】
本体6は、車両の所定位置に固定されるもので、基端部5や支持部材4等を収容するための筐体から成り、その上部には、本体6を覆うカバー体2と、シフトレバー1を案内するための案内溝3aが形成された案内部材3とが取り付けられるよう構成されている。また、本体6の一方側の所定部位には、第1作動部材7及び第2作動部材8が取り付けられるとともに、他方側の所定部位には、リンク部材(連動部材12)が取り付けられるようになっている。
【0025】
第1作動部材7は、シフトレバー1に対する一方向aへの操作力が伝達されて作動するもので、
図10に示すように、板状に突出形成された凸部7aと、表面に所定形状(所定のパターンを有した形状)の金属製部材(不図示)が形成された円板部7bとを有して構成されている。そして、凸部7aが基端部5の長溝5bに摺動可能に嵌合しており、シフトレバーが一方向aに操作される際、長溝5bと凸部7aとが係合して第1作動部材7が作動(具体的には、操作方向に回転)し、且つ、シフトレバー1が他方向bに操作される際、長溝5b内を凸部7aが摺動(移動)して第1作動部材7が作動しない構成とされている。すなわち、基端部5と第1作動部材7とは、基端部5の一方向aの回転に対して係合するとともに、他方向bの回転に対して係合しない構成とされていることから、専らシフトレバーが一方向aに操作される際に第1作動部材7が作動するようになっているのである。
【0026】
リンク部材12(連動部材)は、シフトレバー1に対する他方向bへの操作力が伝達されて連動し得るもので、
図11、12に示すように、一端部の円環状部12aに基端部5の腕部5aを嵌合させる嵌合孔12aa及び他端部に第2作動部材8と連結される棒状の伝達部12bが形成されている。また、伝達部12bの突端には、第2作動部材8の凸部8aと嵌合し得る嵌合溝12baが形成されている。
【0027】
第2作動部材8は、リンク部材12(連動部材)の動作が伝達されて作動する(具体的には、シフトレバー1に対する他方向bへの操作力がリンク部材12を介して伝達されて作動する)もので、
図10に示すように、板状に突出形成された凸部8aと、表面に所定形状(所定のパターンを有した形状)の金属製部材(不図示)が形成された円板部8bとを有して構成されている。そして、凸部8aがリンク部材12の嵌合溝12baに嵌合しており、シフトレバーが他方向bに操作されて、リンク部材12が伝達部12bを中心に回動すると、第2作動部材8が作動(具体的には、伝達部12bと同方向に回転)する構成とされている。
【0028】
しかるに、本実施形態においては、
図5、7に示すように、リンク部材12が付勢手段13にて付勢されつつ本体6の他方側に取り付けられると、伝達部12bが本体6の一方側まで延設することとなり、その突端の嵌合溝12baに凸部8aが嵌合して第2作動部材8が伝達部12bと共に回転可能に組み付けられるようになっている。このような構成により、シフトレバー1が一方向aへ操作されたとき、嵌合孔12aa内で腕部5aが空回りして操作力が伝達されず、且つ、シフトレバー1が他方向bへ操作されたとき、伝達部12bを中心にリンク部材12が回動(すなわち、
図12に示すように、伝達部12bがc方向に回動)して第2作動部材8を作動させることができる。
【0029】
なお、リンク部材12は、カバー14にて覆われて取り付けられており、伝達部12bの軸方向への変位が規制されているため、専ら伝達部12bを中心とした回動が行われるようになっている。また、リンク部材12は、付勢手段13にて初期位置に付勢されており、付勢手段13の付勢力に抗して回動するよう構成されているので、シフトレバー1が他方向bに操作された状態で運転者が操作ノブNを離すと、初期位置(回動前の状態)に戻るようになっている。
【0030】
第1検知手段10は、第1作動部材7の作動(円板部7bの回転)を検知することで、シフトレバー1の一方向aへの操作を検知し得るもので、基板9(具体的には電気配線が印刷形成されたプリント基板)に形成されたセンサ(本実施形態においては、インダクティブセンサ)から成る。具体的には、第1検知手段10は、第1作動部材7と対向した部位に形成されるとともに、第1作動部材7の表面に対して所定周波数の信号(正弦波)を送信し、当該表面に形成された金属製部材で反射された信号と送信した信号とを比較することで、第1検知手段10の回転角度を検出可能とされたものである。
【0031】
同様に、第2検知手段11は、第2作動部材8の作動(円板部8bの回転)を検知することで、シフトレバー1の他方向bへの操作を検知し得るもので、第1検知手段7が対向するものと共通の基板9に形成されたセンサ(本実施形態においては、インダクティブセンサ)から成る。具体的には、第2検知手段11は、第2作動部材8と対向した部位に形成されるとともに、第2作動部材8の表面に対して所定周波数の信号(正弦波)を送信し、当該表面に形成された金属製部材で反射された信号と送信した信号とを比較することで、第2検知手段11の回転角度を検出可能とされたものである。なお、基板9(第1作動部材7及び第2作動部材8も同様)は、カバー15にて覆われて本体6の一方側に組み付けられている。
【0032】
次に、上記変速操作装置の作用について説明する。
シフトレバー1が一方向a(車両の前後方向)に揺動操作され、それに伴って基端部5が同方向に回転すると、長溝5bと凸部7aとが係合して第1作動部材7が作動(具体的には、操作方向に回転)するので、第1検知手段10にて第1作動部材7の回転角度(作動)を検知し、その信号を車両に搭載された自動変速機に送信してシフト操作させる。また、シフトレバー1が一方向aに揺動操作されて基端部5が同方向に回転し、それに伴って腕部5aが回転(軸周りに回転)すると、当該腕部5aが嵌合孔12aa内で空回りして操作力がリンク部材12に伝達されず、第2作動部材8は作動しない。
【0033】
一方、シフトレバー1が他方向b(車両の幅方向)に揺動操作され、それに伴って基端部5が同方向に回転すると、リンク部材12が伝達部12bを中心に回動し、それと連動して第2作動部材8が作動(具体的には、伝達部12bと同方向に回転)するので、第2検知手段11にて第2作動部材8の回転角度(作動)を検知し、その信号を車両に搭載された自動変速機に送信してシフト操作させる。また、シフトレバー1が他方向bに揺動操作され、それに伴って基端部5が同方向に回転すると、長溝5b内を凸部7aが摺動(移動)して係合されないので、第1作動部材7は作動しない。
【0034】
上記実施形態によれば、リンク部材12(連動部材)は、他方向bに対するシフトレバー1の操作力が伝達されて連動するとともに、一方向aに対するシフトレバー1の操作力の伝達が遮断された(すなわち、シフトレバー1の一方向aに対する操作と他方向bに対する操作との操作力の伝達が独立して成る)ので、シフトレバー1を一方向aに操作した場合、リンク部材12(連動部材)を動作させることがなく、第2作動部材8の非作動状態を維持することができることから、シフトレバー1の一方向aの操作及び他方向bの操作をそれぞれ精度よく検知することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る基端部5には、シフトレバー1が一方向aへ操作される際の回転軸Aに沿って腕部5aが延設され、当該腕部5aにリンク部材12(連動部材)が連結されて成るとともに、リンク部材5は、シフトレバー1が一方向aへ操作されたとき、腕部5aとの連結部(すなわち、嵌合孔12aa)にて空回りして操作力が伝達されない構成とされたので、一方向aに対するシフトレバー1の操作力の伝達をより確実に遮断することができる。
【0036】
さらに、本実施形態に係る連動部材は、一端部に腕部5aを嵌合させる嵌合孔12aa及び他端部に第2作動部材8と連結される伝達部12bが形成されたリンク部材12から成り、シフトレバー1が一方向aへ操作されたとき、嵌合孔12aa内で腕部5aが空回りして操作力が伝達されず、且つ、シフトレバー1が他方向bへ操作されたとき、伝達部12bを中心に回動して第2作動部材8を作動させるので、当該リンク部材12(連動部材)に対して、一方向aに対するシフトレバー1の操作力の伝達をより確実に遮断することができるとともに、他方向bに対するシフトレバー1の操作力の伝達をより確実に行わせることができる。
【0037】
またさらに、本実施形態に係る第1作動部材7及び基端部5の連結部には、長溝5b及び該長溝5bに嵌合した凸部7aがそれぞれ形成されるとともに、シフトレバー1が一方向aに操作される際、長溝5bと凸部7aとが係合して第1作動部材7が作動し、且つ、シフトレバー1が他方向bに操作される際、長溝5b内を凸部7aが移動して第1作動部材7が作動しない構成とされたので、当該第1作動部材7に対して、一方向aに対するシフトレバー1の操作力の伝達をより確実に行わせることができるとともに、他方向bに対するシフトレバー1の操作力の伝達をより確実に遮断することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、本体6の一方側の所定部位に第1作動部材7が連結され、他方側の所定部位にリンク部材12(連動部材)が連結されるとともに、当該リンク部材12を介して一方側の所定部位に第2作動部材8が連結されたので、第1作動部材7及び第2作動部材8を本体6の一方側に配設させることができ、装置の小型化及び装置構成の簡素化を図ることができる。
【0039】
さらに、第1検知手段10及び第2検知手段11は、共通の基板9上に形成されるとともに、当該第1検知手段10及び第2検知手段11に対して第1作動部材7及び第2作動部材8がそれぞれ対向して配設されたので、装置の小型化及び装置構成の簡素化を図ることができ、且つ、部品点数を削減することができる。なお、第1検知手段10及び第2検知手段11をそれぞれ別個の基板に形成し、第1作動部材7及び第2作動部材8と対抗して配設するようにしてもよい。
【0040】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば第1検知手段10及び第2検知手段11を他の形態のセンサ(例えば、ホール素子センサや接触式のセンサ等)としてもよい。また、本実施形態においては、基端部5が球状の部材から成るピボット構造(球状支持構造)とされているが、シフトレバー1の一方向a及び他方向bへの操作に伴って回転するものであれば、他の構成のものであってもよい。
【0041】
さらに、本実施形態においては、一方向aが車両の前後方向及び他方向bが車両の幅方向とされているが、一方向aが車両の幅方向及び他方向bが車両の前後方向とされたものであってもよい。なお、一方向aと他方向bとは、互いに異なる方向であれば足り、互いに直交する方向でなくてもよい。またさらに、本実施形態におけるリンク部材12(連動部材)は、一端部に腕部5aを嵌合させる嵌合孔12aa及び他端部に第2作動部材8と連結される伝達部12bが形成されたリンク部材から成るものとされているが、他方向bに対するシフトレバー1の操作力が伝達されて連動するとともに、一方向aに対するシフトレバー1の操作力の伝達が遮断されるものであれば、他の形態(リンク部材に限定されない)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
基端部には、シフトレバーが一方向へ操作される際の回転軸に沿って腕部が延設され、当該腕部に連動部材が連結され、連動部材は、他方向に対するシフトレバーの操作力が伝達されて連動するとともに、当該シフトレバーが一方向へ操作されたとき、腕部との連結部にて空回りして操作力が伝達されない構成とされた変速操作装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 シフトレバー
2 カバー体
3 案内部材
4 支持部材
5 基端部
6 本体
7 第1作動部材
8 第2作動部材
9 基板
10 第1検知手段
11 第2検知手段
12 リンク部材(連動部材)
13 付勢手段
14 カバー
15 カバー
16 ピン状部材
17 スプリング
a 一方向
b 他方向