特許第6054811号(P6054811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6054811導電性ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054811
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】導電性ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 59/00 20060101AFI20161219BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20161219BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20161219BHJP
   C08K 5/1515 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C08L59/00
   C08K3/04
   C08L63/00 Z
   C08K5/1515
【請求項の数】6
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-117295(P2013-117295)
(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公開番号】特開2014-234464(P2014-234464A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2015年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 希
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴章
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5890848(JP,B2)
【文献】 特開平03−296557(JP,A)
【文献】 特開2012−236905(JP,A)
【文献】 特開昭63−210161(JP,A)
【文献】 特開2009−155480(JP,A)
【文献】 特開2006−299154(JP,A)
【文献】 特開2010−285539(JP,A)
【文献】 特開2009−269996(JP,A)
【文献】 特開2006−348265(JP,A)
【文献】 特開2004−010803(JP,A)
【文献】 特開昭63−213549(JP,A)
【文献】 米国特許第02998409(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂(I)と、カーボンブラック(II)と、エポキシ化合物(III)と、を少なくとも含有し、
カーボンブラック(II)の含有量が、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し、5〜30質量部であり、
JIS K7194に準拠して測定した体積固有抵抗率が100〜102Ωcmであり、
ISO527−1に準拠して測定した引張破壊呼び歪が15%以上であり、
下記方法により測定したホルムアルデヒド発生量A1及びA2がいずれも100ppm/分以下であり、
該カーボンブラック(II)のDBP吸油量が190mL/100g以下であ
該ポリアセタール樹脂(I)の数平均分子量が50,000〜150,000である、ポリアセタール樹脂組成物。
(ホルムアルデヒド発生量の測定方法)
50NL/時間の窒素気流下において、ポリアセタール樹脂組成物を220℃で加熱溶融する。当該加熱溶融中に、発生するホルムアルデヒドを水に吸収させて水溶液を得る。得られた水溶液を亜硫酸ソーダ法で滴定することにより、ポリアセタール樹脂組成物からのホルムアルデヒド発生量を測定する。当該ホルムアルデヒド発生量の測定において、ポリアセタール樹脂組成物の加熱溶融開始10分後〜30分後の間の1分間あたりのホルムアルデヒド発生量をA1(ppm/分)とし、ポリアセタール樹脂組成物の加熱溶融開始50分後〜90分後の間の1分間あたりのホルムアルデヒド発生量をA2(ppm/分)とする。
【請求項2】
ホルムアルデヒド発生量A1及びA2がいずれも50ppm/分以下である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
ISO527−1に準拠して測定した引張破壊呼び歪が20%以上である、請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラック(II)の含有量が、前記ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し、10〜30質量部である、請求項1〜3いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し、さらに高分子系流動性改良剤(IV)を5〜25質量部含む、請求項1〜いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜いずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアセタール樹脂組成物及びその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的強度、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、かつその加工が容易であることから、代表的エンジニアリングプラスチックとして、電気機器、自動車部品及びその他精密機械を含めた機構部品を中心に広範囲に用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリアセタール樹脂は、他の樹脂と同様に電気絶縁体であるため、摺動の際に発生する静電気の除去性能や、導電性に劣り、高度な導電性を要求される用途には通常、使用されていない。
【0004】
従来より、カーボンブラックやその他の導電性フィラーによって導電性を付与させた樹脂組成物についての提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方において、上記のような方法で導電性を付与させたポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂が本来持つ靭性や熱安定性が大幅に低下し、応用範囲が限定されてしまうという問題を有している。
【0006】
上述した問題に対し、靭性を向上させた導電性ポリアセタール樹脂を得る技術としては、例えば、ポリアセタール樹脂に導電性カーボンブラックとポリウレタンエラストマーとを組み合わせる技術(例えば、特許文献1及び2参照)が開示されている。また、熱安定性を向上させた導電性ポリアセタール樹脂を得る技術としては、例えば、ポリアセタール樹脂と導電性カーボンブラックとからなる組成物に、特定の構造のアミド化合物を組み合わせる技術(例えば、特許文献3参照)や、ポリアセタール樹脂以外の熱可塑性樹脂を添加して、導電性カーボンブラックが選択的に該熱可塑性樹脂中に濃縮包含されたモルフォロジーを持たせる技術(例えば、特許文献4及び5参照)が開示されている。しかしながら、これらの技術では、靭性と熱安定性とを同時に満足するポリアセタール樹脂組成物を得ることは困難である。
【0007】
このような問題に対しては、例えば、ポリアセタール樹脂に導電性カーボンブラックと酸化防止剤等の安定剤とを添加して組成物を得、当該組成物にさらに他の熱可塑性樹脂を添加し、かつ組成物中での熱可塑性樹脂の分散状態を制御することによって、導電性、耐衝撃性、耐熱安定性、低ホルムアルデヒド臭気拡散性を持つポリアセタール樹脂組成物を得る技術が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6‐51822号公報
【特許文献2】特許第4170397号公報
【特許文献3】特公昭61−31736号公報
【特許文献4】特許第2866535号公報
【特許文献5】特許第3167297号公報
【特許文献6】特開2006−299154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、近年においては、軽量化及び低コスト化の目的で、自動車を始め、電気電子機器などのあらゆる分野においての金属部品の樹脂化が急速に進んでいる。これらの樹脂部品には大変形に対しても割れない靭性や金属並みの導電性が要求される。またこれらの樹脂部品を生産する場合、連続して長時間同じ成形品を生産することが多く、歩留まりを悪化させないといった観点から、長時間連続成形しても金型の汚染(モールドデポジット)が少ないことが重要である。また、特に生産ライン上に組み込まれた成形機により生産を行う場合、ラインのメンテナンスの関係で成形機をある程度の時間停止させておく必要が生じる場合がある。このような場合、その後の生産開始の際には可能な限り少量の樹脂でパージ作業を行うことが望ましい。そのため、成形機のシリンダー内に溶融状態である程度の時間放置されても、導電性に代表される性能の変化が実用上問題ないレベルの変化に抑えることができる導電性ポリアセタール樹脂組成物が望まれている。しかしながら、上述した従来提案されている技術においては、これらの要求を満たすような樹脂組成物は未だ得られていない。
【0010】
そこで本発明は、導電性及び靭性に優れ、長期連続成形時の金型汚染が少なく、溶融状態で長時間保持された後に射出成形を行っても、導電性の変化が少ないポリアセタール樹脂組成物、及び該ポリアセタール樹脂組成物を含む成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述した従来技術の問題点を解決するために鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂と、カーボンブラックと、エポキシ化合物と、を少なくとも含有する樹脂組成物であって、特定の方法で測定した体積固有抵抗と引張破壊呼び歪とが一定の範囲内であり、特定の方法で測定した、組成物からのホルムアルデヒド発生量が一定値以下であるポリアセタール樹脂組成物及びその成形体が、上記従来技術の問題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は下記の通りである。
〔1〕
ポリアセタール樹脂(I)と、カーボンブラック(II)と、エポキシ化合物(III)と、を少なくとも含有し、
カーボンブラック(II)の含有量が、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し、5〜30質量部であり、
JIS K7194に準拠して測定した体積固有抵抗率が100〜102Ωcmであり、
ISO527−1に準拠して測定した引張破壊呼び歪が15%以上であり、
下記方法により測定したホルムアルデヒド発生量A1及びA2がいずれも100ppm/分以下であり、
該カーボンブラック(II)のDBP吸油量が190mL/100g以下であ
該ポリアセタール樹脂(I)の数平均分子量が50,000〜150,000である、ポリアセタール樹脂組成物。
(ホルムアルデヒド発生量の測定方法)
50NL/時間の窒素気流下において、ポリアセタール樹脂組成物を220℃で加熱溶融する。当該加熱溶融中に、発生するホルムアルデヒドを水に吸収させて水溶液を得る。得られた水溶液を亜硫酸ソーダ法で滴定することにより、ポリアセタール樹脂組成物からのホルムアルデヒド発生量を測定する。当該ホルムアルデヒド発生量の測定において、ポリアセタール樹脂組成物の加熱溶融開始10分後〜30分後の間の1分間あたりのホルムアルデヒド発生量をA1(ppm/分)とし、ポリアセタール樹脂組成物の加熱溶融開始50分後〜90分後の間の1分間あたりのホルムアルデヒド発生量をA2(ppm/分)とする。
〔2〕
ホルムアルデヒド発生量A1及びA2がいずれも50ppm/分以下である、前記〔1〕に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔3〕
ISO527−1に準拠して測定した引張破壊呼び歪が20%以上である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔4〕
前記カーボンブラック(II)の含有量が、前記ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し、10〜30質量部である、〔1〕〜〔3〕いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。

ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し、さらに高分子系流動性改良剤(IV)を5〜25質量部含む、前記〔1〕〜〔〕いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物。

前記〔1〕〜〔〕いずれかに記載のポリアセタール樹脂組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0013】
導電性及び靭性に優れ、長期連続成形時の金型汚染が少なく、溶融状態で長時間保持された後に射出成形を行っても、導電性の変化が少ないポリアセタール樹脂組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、2軸押出機の概略構成図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0016】
〔ポリアセタール樹脂組成物〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、
ポリアセタール樹脂(I)と、カーボンブラック(II)と、エポキシ化合物(III)と、を少なくとも含有し、
カーボンブラック(II)の含有量が、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し、5〜30質量部であり、
JIS K7194に準拠して測定した体積固有抵抗率が100〜102Ωcmであり、
ISO527−1に準拠して測定した引張破壊呼び歪が15%以上であり、
下記方法により測定したホルムアルデヒド発生量A1及びA2がいずれも100ppm/分以下である。
(ホルムアルデヒド発生量の測定方法)
50NL/時間の窒素気流下において、ポリアセタール樹脂組成物を220℃で加熱溶融する。当該加熱溶融中に、発生するホルムアルデヒドを水に吸収させて水溶液を得る。得られた水溶液を亜硫酸ソーダ法で滴定することにより、ポリアセタール樹脂組成物からのホルムアルデヒド発生量を測定する。当該ホルムアルデヒド発生量の測定において、ポリアセタール樹脂組成物の加熱溶融開始10分後〜30分後の間の1分間あたりのホルムアルデヒド発生量をA1(ppm/分)とし、ポリアセタール樹脂組成物の加熱溶融開始50分後〜90分後の間の1分間あたりのホルムアルデヒド発生量をA2(ppm/分)とする。
【0017】
(ポリアセタール樹脂(I))
ポリアセタール樹脂(I)としては、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーが挙げられる。
【0018】
ポリアセタールホモポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる重合体である。したがって、ポリアセタールホモポリマーは、実質的にオキシメチレン単位からなる。
【0019】
ポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール等のグリコール、ジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、又は環状ホルマールとを、共重合させて得られる共重合体である。
【0020】
また、ポリアセタールコポリマーとして、ホルムアルデヒドの単量体及び/又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、単官能グリシジルエーテルと、を、共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー、並びに、多官能グリシジルエーテルとを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマーを用いることもできる。
【0021】
また、ポリアセタール樹脂(I)は、両末端又は片末端に、水酸基等の官能基を有する化合物であってもよい。このような官能基を有する化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアルキレングリコールの存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はホルムアルデヒドの環状オリゴマーを重合して得られるブロック成分を有するポリアセタールホモポリマーが挙げられる。
【0022】
さらに、ポリアセタール樹脂(I)は、上述した両末端又は片末端に水酸基等の官能基を有する化合物、例えば水素添加ポリブタジエングリコールの存在下、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと環状エーテルや環状ホルマールとを共重合させて得られるブロック成分を有するポリアセタールコポリマーであってもよい。
【0023】
上述したように、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に含まれるポリアセタール樹脂(I)としては、ポリアセタールホモポリマー及びポリアセタールコポリマーのいずれも用いられ得る。
【0024】
また、本実施形態に用いられるポリアセタール樹脂(I)の数平均分子量は、引張破壊呼び歪を高く保ち、ホルムアルデヒド発生量A1及びA2の値を低く抑えるといった観点から、50,000〜150,000が好ましく、55,000〜120,000がより好ましい。なお、ポリアセタール樹脂(I)の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0025】
数平均分子量が前記範囲内のポリアセタール樹脂(I)を得る方法としては、例えば、ポリアセタール樹脂(I)の製造において、メチラール等に代表されるような連鎖移動剤の添加量を調節することなどが挙げられる。
【0026】
また、ポリアセタール樹脂(I)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
なお、ポリアセタール樹脂(I)は、長期連続成形時の金型汚染が少なく、溶融状態で長時間保持された後に射出成形を行っても、導電性の変化が少ないポリアセタール樹脂組成物を得るといった観点から、好ましくはポリアセタールコポリマーを含む。
【0028】
前記ポリアセタールコポリマーをホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)を用いて得る場合、上記1,3−ジオキソラン等、すなわち上述したエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,4−ブタンジオールホルマール等のグリコール、ジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、環状ホルマール等のコモノマーの添加量は、一般的には、トリオキサン100mol%に対して0.1〜60mol%とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜20mol%、さらに好ましくは0.13〜10mol%とする。また、前記ポリアセタールコポリマーをホルムアルデヒドの4量体(テトラオキサン)を用いて得る場合、前記コモノマーの添加量としては、テトラオキサン100mol%に対して0.13〜90mol%とすることが好ましく、より好ましくは0.13〜30mol%、さらに好ましくは0.16〜13mol%である。
【0029】
本実施形態において、ポリアセタールコポリマーの好適な融点は、長期連続成形時の金型汚染が少なく、溶融状態で長時間保持された後に射出成形を行っても、導電性の変化が少ないポリアセタール樹脂組成物を得るといった観点から162℃〜173℃であり、より好ましくは162℃〜167℃である。
【0030】
融点が162℃〜167℃であるポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)100mol%に対して3.0〜6.0mol%程度のコモノマーを用いることにより得ることができる。
【0031】
なお、本実施形態において、ポリアセタール樹脂(I)の融点は、例えば、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
【0032】
ポリアセタールコポリマーは、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、上述した各種コモノマーとを、所定の重合触媒を用いて共重合することにより製造できる。
【0033】
ポリアセタールコポリマーの重合に用いられる重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸及びそのエステル又は無水物等のカチオン活性触媒が好ましい。
【0034】
ルイス酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、より具体的には、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモン及びその錯化合物又は塩が挙げられる。
【0035】
また、プロトン酸、及びそのエステル又は無水物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。
【0036】
上述した重合触媒の中でも、重合反応制御の観点から、三フッ化ホウ素;三フッ化ホウ素水和物;、及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルが好適な例として挙げられる。
【0037】
ポリアセタールコポリマーは、従来公知の方法、例えば、米国特許第3027352号明細書、同第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、同第1495228号明細書、同第1720358号明細書、同第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報及び特開平7−70267号公報に記載の方法によって重合することができる。
【0038】
上述のように、ホルムアルデヒドの単量体又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、上述した各種コモノマーとを、所定の重合触媒を用いて共重合することにより得られたポリアセタールコポリマーは、熱的に不安定な末端部が存在するため、そのままでは実用に供することは困難である。前記熱的に不安定な末端部としては、例えば、〔−(OCH2n−OH基〕が挙げられる。
【0039】
そこで、不安定な末端部の分解除去処理を実施することが好ましく、具体的には、以下に示す特定の不安定末端部の分解除去処理を行うことが好適である。
【0040】
当該特定の不安定末端部の分解処理方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(1)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下で、ポリアセタールコポリマーの融点以上260℃以下の温度とし、ポリアセタールコポリマーを溶融状態として加熱処理を施す方法が挙げられる。
【0041】
[R1234+n-n ・・・ (1)
【0042】
ここで、式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基における少なくとも1個の水素原子が炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;、又は炭素数6〜20のアリール基における少なくとも1個の水素原子が炭素数1〜30の置換又は非置換のアルキル基で置換されたアルキルアリール基を示す。前記置換又は非置換のアルキル基は直鎖状、分岐状、若しくは環状である。
【0043】
前記置換アルキル基における置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、前記非置換のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基において水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0044】
nは1〜3の整数を示す。
【0045】
Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を示す。
【0046】
上述したポリアセタールコポリマーの不安定な末端部の分解除去処理に用いる第4級アンモニウム化合物は、上記一般式(1)で表わされる化合物であれば特に限定されないが、本実施形態による上記効果をより有効かつ確実に奏する観点から、一般式(1)におけるR1、R2、R3、及びR4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、R1、R2、R3、及びR4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であることがより好ましい。
【0047】
前記一般式(1)で表される第4級アンモニウム化合物の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等や、これらの水酸化物;これらの塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;これらの硫酸等のチオ酸塩;これらの蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩が挙げられる。
【0048】
これらの中でも、不安定末端部の分解除去反応の効率の観点から、水酸化物(OH-)、硫酸(HSO4-、SO42-)、炭酸(HCO3-、CO32-)、ホウ酸(B(OH)4-)、及びカルボン酸の塩が好ましい。
【0049】
カルボン酸の中では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が特に好ましい。
【0050】
第4級アンモニウム化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類を併用してもよい。
【0052】
前記第4級アンモニウム化合物の好適な使用量は、ポリアセタールコポリマーと第4級アンモニウム化合物との合計質量に対する下記式(2)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素量に換算することにより求められる。第4級アンモニウム化合物の使用量は、好ましくは0.05〜50質量ppm、より好ましくは1〜30質量ppmである。
【0053】
P×14/Q ・・・ (2)
【0054】
ここで、式(2)中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタールコポリマーに対する濃度(質量ppm)を示し、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を示す。
【0055】
第4級アンモニウム化合物の使用量が前記範囲内であると、不安定末端部の分解除去速度が向上し、また、不安定末端部の分解除去後のポリアセタールコポリマーの色調が良好となる傾向にある。
【0056】
上述したように、ポリアセタールコポリマーの不安定末端部は、融点以上260℃以下の温度でポリアセタールコポリマーを溶融させた状態で熱処理すると、分解除去される。
【0057】
この分解除去処理に用いる装置としては、以下に限定されるものではないが、例えば、押出機、ニーダー等が好適である。分解により発生したホルムアルデヒドは通常、減圧下で除去される。
【0058】
ポリアセタールコポリマーの不安定末端部を分解除去処理する際、第4級アンモニウム化合物をポリアセタールコポリマー中に存在させる方法については、以下に限定されるものではないが、例えば、重合触媒を失活する工程において水溶液として添加する方法、重合により生成したポリアセタールコポリマーパウダーに吹きかける方法が挙げられる。いずれの方法を用いても、ポリアセタールコポリマーを加熱処理する工程において、そのコポリマー中に第4級アンモニウム化合物が存在していればよい。
【0059】
例えば、ポリアセタールコポリマーが溶融混練及び押し出される押出機の中に第4級アンモニウム化合物を注入してもよい。あるいは、その押出機等を用いて、ポリアセタールコポリマーにフィラーやピグメントを配合する場合、ポリアセタールコポリマーの樹脂ペレットに第4級アンモニウム化合物をまず添着し、その後のフィラーやピグメントの配合時に不安定末端部の分解除去処理を行ってもよい。
【0060】
ポリアセタールコポリマーの不安定末端部の分解除去処理は、重合により得られたポリアセタールコポリマーと共存する重合触媒を失活させた後に行うことも可能であり、また、重合触媒を失活させずに行うことも可能である。
【0061】
重合触媒の失活処理としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アミン類等の塩基性の水溶液中で重合触媒を中和失活する方法が挙げられる。
【0062】
重合触媒の失活を行わない場合、ポリアセタールコポリマーの融点以下の温度で不活性ガス雰囲気下にてそのコポリマーを加熱し、重合触媒を揮発により減少させた後、不安定末端部の分解除去操作を行うことも有効な方法である。
【0063】
上述のような不安定末端部の分解除去処理により、不安定末端部がほとんど存在しない非常に熱安定性に優れたポリアセタールコポリマーを得ることができる。
【0064】
ポリアセタール樹脂(I)のメルトフローレイト(以下「MFR」とも記す)は、0.1〜100g/10分であることが好ましく、1〜50g/10分であることがより好ましく、3〜30g/10分であることがさらに好ましい。
【0065】
MFRが前記範囲内のポリアセタール樹脂(I)を得る方法としては、例えば、ポリアセタール樹脂(I)の製造において、メチラール等に代表されるような連鎖移動剤の添加量を調節することなどが挙げられる。
【0066】
なお、本実施形態において、MFRは、JIS K7210に準じて、190℃、2.16kg条件で測定した値である。
【0067】
(カーボンブラック(II))
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、カーボンブラック(II)を含有する。
【0068】
本実施形態において用いるカーボンブラック(II)は、ポリアセタール樹脂組成物への含有量を制御することによって、ポリアセタール樹脂組成物に100〜102Ωcmの体積固有抵抗率を付与できるものであれば、物理的性状(フタル酸ジブチル吸油量、窒素吸着法によるBET比表面積等)が特定の範囲にあるものでなくても構わない。また、カーボンブラック(II)の製法も、特に制限されず、オイルファーネス法、ランプブラック法、チャンネル法、ガスファーネス法、アセチレン分解法、サーマル法等のいずれでも構わない。
【0069】
また、カーボンブラック(II)の含有量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して5〜30質量部である。
【0070】
カーボンブラック(II)の含有量を5質量部以上とすることにより高い導電性を有するポリアセタール樹脂組成物が得られ、30質量部以下とすることにより耐久性と寸法精度に優れたポリアセタール樹脂組成物が得られる。
【0071】
カーボンブラック(II)の含有量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して10〜30質量部が好ましく、10〜25質量部がより好ましい。
【0072】
(エポキシ化合物(III))
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、エポキシ化合物(III)を含有している。
【0073】
エポキシ化合物(III)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノ又は多官能グリシジル誘導体、或いは不飽和結合をもつ化合物を酸化してエポキシ基を生じさせた化合物を適用できる。
【0074】
また、エポキシ化合物(III)に加え、さらにエポキシ化合物硬化性添加剤も用いることができる。
【0075】
前記エポキシ硬化性添加剤としては、例えば、塩基性窒素化合物及び塩基性リン化合物が通常用いられるが、特に限定されず、その他のエポキシ硬化作用(効果促進作用を含む)を持つ化合物もすべて使用できる。
【0076】
モノ又は多官能グリシジル誘導体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、ベヘニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(エチレンオキシドのユニット;2〜30)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(プロピレンオキシドのユニット;2〜30)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0077】
また、他のモノ又は多官能グリシジル誘導体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルジグリシジルエーテル、ソルビタンモノエステルトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとの縮合物(エポキシ等量;100〜400、軟化点;20〜150℃)、グリシジルメタクリレート、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、大豆脂肪酸グリシジルエステル等が挙げられる。
【0078】
また、不飽和結合をもつ化合物を酸化してエポキシ基を生じさせた化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、1,2−エポキシ−4‐(2−メチルオキシラニル)−1−メチルシクロヘキサン、リモネンオキサイド等が挙げられる。
【0079】
前記エポキシ硬化性添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、イミダゾール;1−ヒドロキシエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ビニル−2−フェニルイミダゾール等の置換イミダゾール;オクチルメチルアミン、ラウリルメチルアミン等の脂肪族2級アミン;ジフェニルアミン、ジトリルアミン等の芳香族2級アミン;トリラウリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルステアリルアミン、トリステアリルアミン等の脂肪族3級アミン;トリトリルアミン、トリフェニルアミン等の芳香族3級アミン;セチルモルホリン、オクチルモルホリン、P−メチルベンジルモルホリン等のモルホリン化合物;ジシアンジアミド、メラミン、尿素等へのアルキレンオキシド付加物(付加モル数1〜20モル)、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。
【0080】
これらのエポキシ化合物、エポキシ化合物硬化性添加剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
また、エポキシ化合物(III)の含有量、及びエポキシ化合物硬化性添加剤の含有量は、長期連続成形時の金型汚染が少なく、溶融状態で長時間保持された後に射出成形を行っても、導電性の変化が少ないポリアセタール樹脂組成物を得るといった観点から、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し、各々独立して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。
【0082】
(高分子系流動性改良剤(IV))
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、さらに高分子系流動性改良剤(IV)を含むことが好ましい。
【0083】
本実施形態に用いられる高分子系流動性改良剤(IV)は、ポリアセタール樹脂組成物に用いられるポリアセタール樹脂(I)よりも同条件測定におけるメルトフローレート(MFR)が高い高分子材料を指す。高分子系流動性改良剤(IV)としては、その構造や分子量は特には限定されないが、オレフィン系樹脂及び/又はスチレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0084】
オレフィン系樹脂としては、下記一般式(3)により表されるオレフィン系化合物のホモ重合体、下記一般式(3)で表されるオレフィン系化合物を主たるモノマーとする共重合体、及びそれらの変性体からなる群より選ばれる1種以上のオレフィン樹脂であることが好ましい。
【0085】
【化1】
【0086】
前記式(3)中、R11は水素原子又はメチル基を表し、R12は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、カルボキシル基、2〜5個の炭素原子を含むアルキル化カルボキシ基、2〜5個の炭素原子を有するアシルオキシ基、又はビニル基を表す。
【0087】
前記オレフィン系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリプロピレン−ブテン共重合体、ポリブテン、ポリブタジエンの水添物、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0088】
前記オレフィン系樹脂としては変性されたもの(変性体)も適用できる。当該変性体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、オレフィン樹脂を形成している重合体とは異なる他のビニル化合物の一種以上をグラフトさせたグラフト共重合体;α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸等)又はその酸無水物で(必要により過酸化物を併用して)変性したもの;オレフィン系化合物と酸無水物を共重合したものが挙げられる。
【0089】
スチレン系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0090】
A−B−A、(A−B)n、(B−A)n、B−(A−B)n、A−(B−A)n
(A−B)n−A、(B−A)n−B、(B−A)m−X、(A−B)m−X
(E−D)k 、E−(D−E)k、D−(E−D)k、[(E−D)kj−Y、
[(D−E)k−D]j−Y、[(E−D)k−D]j−Y、
E−(D−C)k 、E−(C−D)k 、E−(C−D−C)k、E−(D−C−D)k
C−E−(D−C)k、C−E−(C−D)k、C−E−(D−C)k−D、
[(C−D−E)kj−Y、[C−(D−E)kj−Y、
[(C−D)k−E]j−Y、[(C−D−C)k−E]j−Y、
[(D−C−D)k−E]j−Y、[(E−D−C)kj−Y、
[E−(D−C)kj−Y、[E−(C−D−C)kj−Y、
[E−(D−C−D)kj−Y、(C−D)k+1、C−(D−C)k
D−(C−D)k+1、[(C−D)kj−Y、[(D−C)k−D]j−Y、
[(C−D)k−C]j−Y
【0091】
上記式中、Aはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエン単量体単位、又はその水素添加物を主体とする重合体ブロックであり、Cはビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロックであり、Dは共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量単位とからなる非水素添ランダム共重合体を水添して得られる水添共重合体ブロックであり、Eは共役ジエン単量体単位からなるビニル結合量が30%未満である非水添重合体ブロックを水添して得られる水添重合体ブロックを表す。
【0092】
各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別されていなくてもよい。
【0093】
非水添ランダム共重合体を水添して得られる水添共重合体ブロックB中のビニル芳香族単量体単位は、均一に分布していてもよいし、テーパー状に分布していてもよい。
【0094】
また水添共重合体ブロックBには、ビニル芳香族単量体単位が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個存在していてもよい。
【0095】
また水添共重合体ブロックDには、ビニル芳香族単量体単位含有量が異なるセグメントが複数個存在していてもよい。
【0096】
nは2〜10の整数であり、Xはm個の重合体鎖が結合している多官能性化合物残基であり、mは2〜7の整数であり、Yはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基であり、kは1〜5の整数であり、jは2〜11の整数である。
【0097】
また、Xはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基を表す。
【0098】
前記カップリング剤としては、後述の2官能以上のカップリング剤を用いることができる。
【0099】
前記多官能開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムとの反応生成物、ジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等を用いることができる。
【0100】
なお、前記「主体とする」とは、重合体ブロック中、単量体単位を60質量%以上含有することを意味し、単量体単位を80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、95質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0101】
前記ビニル芳香族単量体の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
前記共役ジエン単量体の具体例としては、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであれば特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
前記のように、上記各式中、nは2〜10の整数であり、2〜9の整数であることが好ましく、2〜8の整数であることがより好ましい。
【0104】
また、前記のように、上記各式中、Xはm個の重合体鎖が結合している多官能性化合物残基であり、mは2〜7の整数であり、2〜6の整数であることが好ましく、2〜5の整数であることがより好ましい。
【0105】
なお、Xとなる、m個の重合体鎖が結合している多官能性化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエポキシド、ポリイソシアネート、ポリイミン、ポリアルデヒド、ポリ無水物、ポリエステル、ポリハライド等が挙げられる。
【0106】
また、Yはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基であり、kは1〜5の整数であり、1〜4の整数あることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましい。jは2〜11の整数であり、2〜10の整数であることが好ましく、2〜9の整数であることがより好ましい。
【0107】
高分子系流動性改良剤(IV)の含有量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し、長期連続成形時の金型汚染が少なく、溶融状態で長時間保持された後に射出成形を行っても、導電性の変化が少ないポリアセタール樹脂組成物を得るといった観点から、好ましくは5〜25質量部であり、より好ましくは5〜20質量部であり、さらに好ましくは7〜15質量部である。
【0108】
また、本実施形態においては、高分子系流動性改良剤(IV)は、長期連続成形時の金型汚染が少なく、溶融状態で長時間保持された後に射出成形を行っても、導電性の変化が少ないポリアセタール樹脂組成物を得るといった観点から、オレフィン系樹脂であることが好ましく、上記に加え、高導電性発現の観点から、酸変性されていないオレフィン系樹脂であるとさらに好ましい。
【0109】
ここで「酸変性されていない」とは、オレフィン系樹脂が、α,β−不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸)及び/又はその酸無水物等で(必要により過酸化物を併用して)変性されておらず、またオレフィン系樹脂が、各種のオレフィン類と酸無水物を共重合したものでもないことを指す。
【0110】
また、高分子系流動性改良剤(IV)の含有量は、組成物に十分な導電性を付与させ、金型汚染(モールドデポジット)性を抑えるといった観点から、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、5〜25質量部であることが好ましく、5〜20質量部であるとより好ましい。
【0111】
(安定剤)
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている各種安定剤を含有することができる。安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記の酸化防止剤、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤が挙げられる。
【0112】
これらは1種のみを単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0113】
<酸化防止剤>
前記酸化防止剤としては、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0114】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)が挙げられる。
【0115】
また、他のヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレンビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N,N’−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミドも挙げられる。
【0116】
上述したヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、トリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好ましい。
【0117】
<ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤>
前記ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩が挙げられる。
【0118】
前記ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及びその重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジシアンジアミド、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12、ナイロン6/6−6、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12等のポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン、ポリアクリルアミドが挙げられる。これらの中では、メラミンとホルムアルデヒドとの共縮合物、ポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン及びポリアクリルアミドが好ましく、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、ポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンがより好ましい。
【0119】
前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、及びカルボン酸塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウム等の水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、硼酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、具体的にはカルシウム塩が好ましい。当該カルシウム塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、硼酸カルシウム、及び脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)が挙げられ、これら脂肪酸は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。これらの中では、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、脂肪酸カルシウム塩(ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム等)がより好ましい。
【0120】
上述した各種安定剤の好ましい組み合せは、ポリアセタール樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、特にトリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)又はテトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンに代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤と、特にポリアミド樹脂及びポリ−β−アラニンに代表されるホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体と、特に脂肪酸カルシウム塩に代表されるアルカリ土類金属の脂肪酸塩との組合せである。
【0121】
上述したそれぞれの安定剤の含有量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、酸化防止剤、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が0.1〜2質量部、ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤、例えばホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体が0.1〜3質量部、アルカリ土類金属の脂肪酸塩が0.1〜1質量部の範囲であると好ましい。
【0122】
(添加剤)
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、かつ所望の特性に応じて、従来ポリアセタール樹脂組成物に使用されている各種添加剤を含有することができる。添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、下記の無機充填剤、結晶核剤、導電剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び顔料が挙げられる。
【0123】
これらは1種のみを単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0124】
<無機充填剤>
無機充填剤は、以下に限定されるものではないが、例えば、繊維状、粉粒子状、板状及び中空状の充填剤が用いられる。
【0125】
繊維状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維が挙げられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も含まれる。なお、芳香族ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機繊維状物質も使用することができる。
【0126】
粉粒子状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイトのような珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、アルミナのような金属酸化物、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような金属硫酸塩、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
【0127】
板状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マイカ、フレーク状ガラス、各種金属箔が挙げられる。
【0128】
中空状の充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等が挙げられる。
【0129】
これらの充填剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0130】
これらの充填剤は表面処理されたもの、未表面処理のもの、何れも使用可能であるが、成形体の表面の平滑性、機械的特性の観点から、表面処理の施されたものが好ましい場合がある。
【0131】
表面処理剤としては従来公知のものが使用可能であり、以下に限定されるものではないが、例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤が挙げられる。カップリング処理剤の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネート等が挙げられる。
【0132】
無機充填剤の含有量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、0.1〜200質量部であることが好ましく、0.5〜100質量部であることがより好ましく、1〜50質量部であることがさらに好ましい。
【0133】
<結晶核剤>
結晶核剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、窒化ホウ素等が挙げられる。
【0134】
結晶核剤の含有量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、0.001〜10質量部であることが好ましく、0.003〜7質量部であることがより好ましく、0.005〜5質量部であることがさらに好ましい。
【0135】
<導電剤>
導電剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、上記(II)成分として挙げたもの以外のカーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末又は金属繊維が挙げられる。
【0136】
導電剤の含有量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、0.1〜100質量部であることが好ましく、0.3〜70質量部であることがより好ましく、0.5〜50質量部であることがさらに好ましい。
【0137】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、上記(IV)成分として挙げたもの以外のオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂等が挙げられる。また、これらの変性物も含まれる。
【0138】
熱可塑性樹脂の含有量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、0.1〜200質量部であることが好ましく、0.3〜150質量部であることがより好ましく、0.5〜100質量部であることがさらに好ましい。
【0139】
<熱可塑性エラストマー>
熱可塑性エラストマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが挙げられる。
【0140】
熱可塑性エラストマーの含有量は、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対して、0.1〜200質量部であることが好ましく、0.3〜150質量部であることがより好ましく、0.5〜100質量部であることがさらに好ましい。
【0141】
<顔料>
顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無機系顔料、有機系顔料、メタリック系顔料、蛍光顔料等が挙げられる。
【0142】
無機系顔料とは、樹脂の着色用として一般的に使用されているものを言い、以下に限定されるものではないが、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩やカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。
【0143】
有機系顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の顔料が挙げられる。
【0144】
顔料の含有量は、所望の色調に応じて選択できるが、一般的には、ポリアセタール樹脂(I)100質量部に対し、0.05〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0145】
〔ポリアセタール樹脂組成物の特性〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ISO294−1に準拠して成形された多目的試験片を用いて、JIS K7194に準拠して測定された体積固有抵抗率が100〜102Ωcmであり、100〜7×101Ωcmであることが好ましく、100〜5×101Ωcmであることがより好ましい。当該体積固有抵抗率が100〜102Ωcmであることによって、溶融状態で長時間さらされても導電性の変化の少ないポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0146】
体積固有抵抗率が前記範囲内のポリアセタール樹脂組成物を得る方法としては、例えば、カーボンブラック(II)の添加量を調節する方法などが挙げられる。
【0147】
また、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ISO527−1に準拠して測定した引張破壊呼び歪が15%以上であり、好ましくは20%以上である。引張破壊呼び歪が15%以上であるポリアセタール樹脂組成物は、機械的特性に優れる。また、当該引張破壊呼び歪の上限は、特に限定されないが、例えば、200%以下である。
【0148】
引張破壊呼び歪が前記範囲内のポリアセタール樹脂組成物を得る方法としては、例えば、ポリアセタール樹脂(I)の分子量を調節する方法などが挙げられる。
【0149】
さらに、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、下記方法により測定したホルムアルデヒド発生量A1及びA2がいずれも100ppm/分以下であり、A1及びA2がいずれも50ppm/分以下であると好ましい。また、当該ホルムアルデヒド発生量A1及びA2の下限は、特に限定されないが、例えば、0.1ppm/分以上である。
【0150】
(ホルムアルデヒド発生量の測定方法)
50NL/時間の窒素気流下において、ポリアセタール樹脂組成物を220℃で加熱溶融する。当該加熱溶融中に、発生するホルムアルデヒドを水に吸収させて水溶液を得る。得られた水溶液を亜硫酸ソーダ法で滴定することにより、ポリアセタール樹脂組成物からのホルムアルデヒド発生量を測定する。当該ホルムアルデヒド発生量の測定において、ポリアセタール樹脂組成物の加熱溶融開始10分後〜30分後の間の1分間あたりのホルムアルデヒド発生量をA1(ppm/分)とし、ポリアセタール樹脂組成物の加熱溶融開始50分後〜90分後の間の1分間あたりのホルムアルデヒド発生量をA2(ppm/分)とする。
【0151】
ポリアセタール樹脂組成物は、ホルムアルデヒド発生量A1及びA2がいずれも100ppm/分以下であることにより、溶融状態での樹脂の分解速度が小さく、これにより成形機滞留時の導電性の変化が小さく、かつ連続成形時の金型汚染を低いレベルに抑えることが可能となる。
【0152】
ホルムアルデヒド発生量A1及びA2が前記範囲内のポリアセタール樹脂組成物を得る方法としては、例えば、原料成分を溶融混練する際の温度を調節する方法などが挙げられる。
【0153】
〔ポリアセタール樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上述したポリアセタール樹脂(I)100質量部と、カーボンブラック(II)5〜30質量部と、エポキシ化合物(III)と、必要に応じてその他の成分とを、溶融混練することにより製造できる。
【0154】
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。当該混練機としては、以下に限定されるものではないが、例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等を用いればよい。中でも、減圧装置、及びサイドフィーダー設備を装備した2軸押出機が好ましい。
【0155】
溶融混練の方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、すべての成分のブレンド物を押出機トップのフィーダー(以下、トップフィーダーと呼ぶ)から連続的にフィードして溶融混練させる方法、(II)成分以外の成分のブレンド物を押出機トップフィーダーから連続的にフィードして溶融混練させた後、押出機のサイドに設けられたフィーダー(以下、サイドフィーダーと呼ぶ)から(II)成分を連続的にフィードしてさらに溶融混練させる方法、等が挙げられる。これらのうち、安定した性能発現の観点から、(II)成分以外のブレンド物を押出機トップフィーダーから供給して溶融混練させた後、サイドフィーダーから(II)成分を添加してさらに溶融混練させる方法が好ましい。
【0156】
押出機の減圧度に関しては、0〜0.07MPaが好ましい。
【0157】
溶融混練する際の押出機の設定温度は、用いるポリアセタール樹脂(I)のJIS K7121に準じた示差走査熱量計(DSC)の測定で求まる融点より1〜100℃高い温度が好ましい。より具体的には160℃〜240℃であるが、本発明の効果をより効果的に発現させるといった観点から、ポリアセタール樹脂組成物に用いるカーボンブラック(II)のフタル酸ジブチル吸油量(以下「DBP吸油量」とも記す。)が300mL/100g以上の場合には、押出機ダイに隣接した、全スクリュー長に対する少なくとも1/10の長さの領域を160℃以上、180℃以下に設定することが好ましい。
【0158】
混練機での剪断速度は100rpm以上であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は、30秒〜1分が好ましい。
【0159】
〔成形体〕
本実施形態の成形体は、上述のポリアセタール樹脂組成物を含む。
【0160】
本実施形態の成形体は、上述のポリアセタール樹脂組成物を成形することにより得られる。
【0161】
ポリアセタール樹脂組成物を成形する方法については特に制限されるものではなく、公知の成形方法を適用できる。当該成形方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法が挙げられる。
【0162】
〔成形体の用途〕
本実施形態の成形体の用途としては、靭性と高い導電性とが要求される用途が好適である。具体的には、本実施形態の成形体は、以下に限定されるものではないが、例えば、導電性歯車、導電性フランジ、導電性ドラムギア、導電性軸受用途等に特に好適に用いられる。
【0163】
また、一般的なポリアセタール樹脂の用途である、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、及びガイド等に代表される機構部品;アウトサート成形の樹脂部品、インサート成形の樹脂部品、シャーシ、トレー、側板、プリンター、及び複写機に代表されるオフィスオートメーション機器用部品;VTR(Video Tape Recorder)、ビデオムービー、デジタルビデオカメラ、カメラ、及びデジタルカメラに代表されるカメラ又はビデオ機器用部品;カセットプレイヤー、DAT、LD(Laser Disk)、MD(Mini Disk)、CD(Compact Disk)〔CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)を含む〕、DVD(Digital Video Disk)〔DVD−ROM、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−R DL、DVD+R DL、DVD−RAM(Random Access Memory)、DVD−Audioを含む〕、Blu−ray(登録商標) Disc、HD−DVD、その他光デイスクのドライブ;MFD、MO、ナビゲーションシステム及びモバイルパーソナルコンピュータに代表される音楽、映像又は情報機器、携帯電話及びファクシミリに代表される通信機器用部品;電気機器用部品;電子機器用部品等が挙げられる。また、本実施形態の成形体は、自動車用の部品として、ガソリンタンク、フュエルポンプモジュール、バルブ類、ガソリンタンクフランジ等に代表される燃料廻り部品;ドアロック、ドアハンドル、ウインドウレギュレータ、スピーカーグリル等に代表されるドア廻り部品;シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品;コンビスイッチ部品、スイッチ類、クリップ類等の部品;さらにシャープペンシルのペン先、シャープペンシルの芯を出し入れする機構部品;洗面台、排水口、及び排水栓開閉機構部品;自動販売機の開閉部ロック機構、商品排出機構部品;衣料用のコードストッパー、アジャスター、ボタン;散水用のノズル、散水ホース接続ジョイント;階段手すり部、及び床材の支持具である建築用品;使い捨てカメラ、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、自動販売機、家具、楽器、住宅設備機器に代表される工業部品としても好適に使用できる。
【実施例】
【0164】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。
【0165】
〔各種測定方法〕
実施例及び比較例のポリアセタール樹脂組成物及び成形体に対する各種測定方法を以下に示す。
【0166】
(体積固有抵抗率の測定方法)
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度設定を205℃、金型温度90℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、ISOダンベル(ISO294−1に準拠して成形された多目的試験片)を得た。このISOダンベルから30mm×20mm×4mmの平板を切り出し、この平板を体積固有抵抗率測定用のサンプルとした。
【0167】
体積固有抵抗率のレベルにより、以下の2種類の測定方法を使い分けた。
【0168】
<体積固有抵抗率が1.0×104Ωcm未満のサンプルの場合>
四探針ASPプローブ(ピン間5mm、ピン先0.37mmR×4、バネ圧210g/本、JIS K7194準拠)を、上記作製したサンプル(平板)に押し当て、三菱化学製ロレスタ−GPにより測定電圧90Vで、上記サンプルの体積固有抵抗率を測定した。
【0169】
<体積固有抵抗率が1.0×104Ωcm以上のサンプルの場合>
URS型リングプローブ(JIS K6911準拠)を、上記作製したサンプル(平板)に押し当て、三菱化学製ハイレスターUPにより測定電圧1,000Vで、上記サンプルの体積固有抵抗率を測定した。
【0170】
(引張破壊呼び歪の測定方法)
東芝機械(株)製EC−75NII成形機を用いて、シリンダー温度設定を205℃、金型温度90℃に設定し、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、ISOダンベルを得た。このISOダンベルを用いて、ISO 527−1に準拠した引張試験を行い、引張破壊呼び歪を測定した。
【0171】
(ホルムアルデヒド発生量の測定方法)
実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物をあらかじめ140℃で1時間乾燥処理を施した。乾燥処理を施したポリアセタール樹脂組成物のペレット3gを、窒素気流(50NL/時間)下、220℃に加熱溶融した。当該加熱溶融中にポリアセタール樹脂組成物から発生するホルムアルデヒドを水に吸収させて水溶液を得た。得られた水溶液を亜硫酸ソーダ法で滴定することにより、ポリアセタール樹脂組成物からのホルムアルデヒド発生量を測定した。当該ホルムアルデヒド発生量の測定において、ポリアセタール樹脂組成物の加熱溶融開始10分後〜30分後の間の1分間あたりのホルムアルデヒド発生量をA1(ppm/分)とし、ポリアセタール樹脂組成物の加熱溶融開始50分後〜90分後の間の1分間あたりのホルムアルデヒド発生量をA2(ppm/分)とした。なお、これらの測定値は、それぞれ、ポリアセタール樹脂組成物の末端分解によって生じるホルムアルデヒド起因の値、ポリアセタール樹脂組成物の主鎖分解によって生じるホルムアルデヒド起因の値であり、これらの値が小さいほど、ポリアセタール樹脂組成物は熱安定性に優れると評価した。
【0172】
(成形機滞留時の導電性の変化の評価方法)
東芝機械(株)製EC−75NII成形機のシリンダー温度を190℃、金型温度を90℃に設定した。この成形機のシリンダー内に、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を70分間滞留させた。その後、射出時間35秒、冷却時間15秒の射出条件で、ポリアセタール樹脂組成物を射出成形することにより、ISOダンベルを得た。得られたISOダンベルから30mm×20mm×4mmの平板を切り出し、この平板について上述の体積固有抵抗率の測定方法と同様にして体積固有抵抗率を測定した。また、当該測定値と、上述の体積固有抵抗率の測定方法で得られたサンプル(成形機のシリンダーに滞留させずに射出成形したISOダンベルから切り出した同サイズの平板)の体積固有抵抗率との比較を行った。両者の値の差が小さいほど、成形機内で滞留させた時の導電性の変化が小さいと評価した。
【0173】
(連続成形時の金型汚染(モールドデポジット;MD)性の評価方法)
東芝機械(株)製IS−100GN射出成形機を用いて、シリンダー温度を180℃、金型温度を70℃に設定し、射出圧力70MPa、射出時間60秒、冷却時間15秒の射出条件で、実施例及び比較例で得られたポリアセタール樹脂組成物を成形することにより、厚さ2mm、幅80mm×80mmのシボ付平板の試験片を得た。本条件で連続成形した後の金型内の汚染状態(モールドデポジット;以下「MD」とも記す)を目視にて50ショット毎に観察し、MDが確認できるようになったショット数を記録した。さらにMDの除去容易性を確認するために、金型に付着した物質のふき取りを行い、以下の判定基準でMDの除去容易性の判定を行った。
【0174】
評価1:ティッシュで軽く乾拭きするだけで完全に除去できた
評価2:ティッシュで強く乾拭きすることで完全に除去できた
評価3:ティッシュで乾拭きするだけでは除去できなかったが、金型洗浄剤を使用すればすぐに除去できた
評価4:金型への固着性が強く、金型洗浄剤を使用してもすぐには除去できなかった
【0175】
〔原料成分〕
実施例及び比較例に用いたポリアセタール樹脂組成物及び成形体の原料成分を以下に説明する。
【0176】
(ポリアセタール樹脂(I))
<ポリアセタール樹脂(I−i)>
熱媒を通すことができるジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機(L/D=8(L:重合機の原料供給口から排出口までの距離(m)、D:重合機の内径(m)。以下、同じ。))を80℃に調整した。前記重合機に、トリオキサンを4kg/時間、コモノマーとして1,3−ジオキソランを128.3g/時間(トリオキサン1molに対して、3.9mol%)、連鎖移動剤としてメチラールを得られるポリアセタール樹脂の数平均分子量が30,000になるような量で添加した。
【0177】
さらに、前記重合機に、重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1molに対して1.5×10-5molで連続的に添加し重合を行った。
【0178】
重合機より排出されたポリアセタールコポリマーをトリエチルアミン0.1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を行った。
【0179】
重合触媒の失活を行ったポリアセタールコポリマーを、遠心分離機でろ過し、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、第4級アンモニウム化合物として水酸化コリン蟻酸塩(トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメート)を含有した水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後、120℃で乾燥した。ここで、水酸化コリン蟻酸塩の添加量は、窒素量に換算して20質量ppmとした。なお、水酸化コリン蟻酸塩の添加量の調整は、添加する水酸化コリン蟻酸塩を含有した水溶液中の水酸化コリン蟻酸塩の濃度を調整することにより行った。
【0180】
乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給した。押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で、ポリアセタールコポリマーの不安定末端部分の分解除去を行った。
【0181】
不安定末端部分が分解されたポリアセタールコポリマーに、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]0.3質量部を添加し、ベント付き押出機で真空度20Torrの条件下で脱揮しながら、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズした。
【0182】
このようにしてポリアセタール樹脂(I−i)を得た。また、ポリアセタール樹脂(I−i)のJIS K7210(190℃,2.16kg条件)に基づくMFRは30g/10分であった。
【0183】
<ポリアセタール樹脂(I−ii)>
ポリアセタール樹脂(I−i)の製造方法において、連鎖移動剤として添加するメチラールの量を、得られるポリアセタール樹脂の数平均分子量が60,000になるような量とした他は、ポリアセタール樹脂(I−i)と同様に操作を行い、ポリアセタール樹脂(I−ii)を得た。また、ポリアセタール樹脂(I−ii)のJIS K7210(190℃,2.16kg条件)に基づくMFRは10g/10分であった。
【0184】
<ポリアセタール樹脂(I−iii)>
ポリアセタール樹脂(I−i)の製造方法において、連鎖移動剤として添加するメチラールの量を、得られるポリアセタール樹脂の数平均分子量が90,000になるような量とした他は、ポリアセタール樹脂(I−i)と同様に操作を行い、ポリアセタール樹脂(I−iii)を得た。また、ポリアセタール樹脂(I−iii)のJIS K7210(190℃,2.16kg条件)に基づくMFRは3g/10分であった。
【0185】
<ポリアセタール樹脂(I−iv)>
ポリアセタール樹脂(I−i)の製造方法において、連鎖移動剤として添加するメチラールの量を、得られるポリアセタール樹脂の数平均分子量が160,000になるような量とした他は、ポリアセタール樹脂(I−i)と同様に操作を行い、ポリアセタール樹脂(I−iv)を得た。また、ポリアセタール樹脂(I−iv)のJIS K7210(190℃,2.16kg条件)に基づくMFRは2.7g/10分であった。
【0186】
(カーボンブラック(II))
<II−i>
DBP吸油量360mL/100g、BET比表面積800m2/gのカーボンブラック
【0187】
<II−ii>
DBP吸油量190mL/100g、BET比表面積65m2/gのカーボンブラック
【0188】
<II−iii>
DBP吸油量180mL/100g、BET比表面積51m2/gのカーボンブラック
【0189】
なお、上記のDBP吸油量及びBET比表面積は、それぞれ、ASTM D3037及びASTM D2414に基づいて測定した。
【0190】
(エポキシ化合物(III))
クレゾールノボラックとエピクロロヒドリンとの縮合物(エポキシ当量=350、軟化点=80℃)を用いた。
【0191】
また、エポキシ化合物硬化性添加剤として、トリフェニルホスフィン(北興化学工業製)を用いた。
【0192】
(高分子系流動性改良剤(IV))
<IV−i>
1−ブテン含有率90質量%、エチレン含有率10質量%のオレフィン共重合体
JIS K7210(190℃,2.16kg条件)に基づくMFRは40g/10分
【0193】
<IV−ii>
スチレン含有率20質量%、イソプレン含有率80質量%のスチレン−イソプレン共重合体
JIS K7210(190℃,2.16kg条件)に基づくMFRは5g/10分
【0194】
〔ポリアセタール樹脂組成物の製造〕
2軸押出機を用いてポリアセタール樹脂組成物を製造した。
【0195】
本実施例では、2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26SS押出機(L/D=48、ベント付き)を用いた。
【0196】
図1に2軸押出機の概略構成図を示す。
【0197】
2軸押出機は、個々に独立している押出機のバレルゾーン1〜14を具備し、当該バレルゾーンの終端部をダイヘッド15に連結した。
【0198】
バレルゾーンの始端部は押出機モーター16に連結され、モーターの駆動により原料がバレルゾーン1〜14を移動するように設定した。
【0199】
バレルゾーン1にはトップ部の定量フィーダー17、バレルゾーン8にはサイド部の定量フィーダー18を設けた。
【0200】
バレルゾーン13には脱気ベント19を設けた。
【0201】
(製造方法I)
全てのバレルゾーンの温度を200℃に設定し、(II)成分以外の成分のブレンド物を定量フィーダー17より、(II)成分を定量フィーダー18より、それぞれ供給して、押出量15kg/時間、スクリュー回転数150rpmの条件で押出を行い、ポリアセタール樹脂組成物を得た。
【0202】
(製造方法II)
バレルゾーン9〜14の設定温度を170℃とした他は、全て製造方法Iと同様にして、ポリアセタール樹脂組成物を得た。
【0203】
〔実施例1〜27〕
各成分を表1に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。
【0204】
押出されたポリアセタール樹脂組成物はストランドカッターでペレットとした。
【0205】
得られたペレットを用いて、上述の方法により体積固有抵抗率、引張破壊呼び歪、ホルムアルデヒド発生量、成形機滞留時の体積固有抵抗率、連続成形時の金型汚染(MD)性の評価を行った。測定及び評価結果を表3に示す。
【0206】
〔比較例1〜16〕
各成分を表2に示す割合で配合し、上述の製造方法により溶融混練を行った。
【0207】
押出されたポリアセタール樹脂組成物はストランドカッターでペレットとした。
【0208】
得られたペレットを用いて、上述の方法により体積固有抵抗率、引張破壊呼び歪、ホルムアルデヒド発生量、成形機滞留時の体積固有抵抗率、連続成形時の金型汚染(MD)性の評価を行った。測定及び評価結果を表4に示す。
【0209】
【表1】
【0210】
【表2】
【0211】
【表3】
【0212】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0213】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、導電性歯車、複写機ドラムギア、ドラムフランジの材料として、産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0214】
1〜14 押出機のバレルゾーン
15 ダイヘッド
16 押出機モーター
17 定量フィーダー(トップ)
18 定量フィーダー(サイド)
19 脱気ベント
図1