【実施例】
【0070】
例を説明する。次の例は、請求する発明を例示するためのものであるものの、それを制限せずに提供する。
【0071】
シングル・ショット(単発、single-shot)またはプライム・ブーストの免疫化のどちらかとも関連する異なった利点があり、それは免疫レジメンを最適化するとき、即時型免疫対長期免疫のための必要性に依存し、考慮されなければならない。EBOVおよび他のフィロウイルスのアウトブレイクは、突然に起き、そして迅速に個体群間で広まり、そこでは、医療設備が不足する傾向がある。このようにして、これらの状況下では、ショートワクチンのレジメンは望ましいことがある。この理由から、EBOV糖タンパク質(GP)および核タンパク質(NP)遺伝子を含むrAd5ベクターによるシングル・ショットワクチン接種が、非ヒト霊長類において開発された(Sullivanら、2006)。そのようなワクチンは、おそらく挿入物の高い発現レベルおよび樹枝状細胞についてのAd5のトロピズムのために、1ヵ月以内に強い免疫反応を誘発することが示された(Sullivanら、2003)。他方、長期の保護免疫は、おそらく、耐久性T細胞メモリーを誘導することができる二つ以上の投与が含まれるプライム・ブーストワクチンのレジメンを必要とする。したがって、本発明者らは、rAd35およびrAd26ベクターを用いる単独接種およびプライム・ブーストの組合せの双方についての免疫原性および有効性を試験するために、一連の実験を設計し、そして、これらの研究の結果をここに提示する。
【0072】
材料および方法
【0073】
産生rAdエボラワクチン。EBOVのGPsを発現する低い血清流行型(Low seroprevalent)E1/E3欠失rAd26およびrAd35ワクチンベクターを構築し、増殖させ、そして前述したように精製した(Abbinkら、2007)。EBOV GPを発現しないAd5のベクターを構築し、増殖させ、そして同様の方法によって精製し、それぞれの実験で指示したように選定された動物においてAd5に対する免疫を誘導するために用いた。ザイール(配列番号1)およびスーダン/グル(配列番号2)の種の読み枠にわたるEBOV GP挿入物を、ヒトCMVプロモーターおよびSV-40ポリアデニル化配列の転写制御下に、左ITRおよびパッケージングシグナルを含め、Adゲノムの左側部分を含むプラスミド中にクローニングした。残りのAd配列(E3-欠失されたもの)を含むコスミドによるこのプラスミドのPER.C6(R)細胞へのコトランスフェクション(同時形質移入)は、E1/E3欠失した複製欠損組換えAd26またはAd35のワクチンベクターを産生した。PER.C6
(R)細胞上でのrAd26およびrAd35ベクターの複製を容易にするために、ネイティブ(自然な)E4 orf6領域を、Ad5 E4orf6配列によって置換えた(Havengaら、2006)。そのrAdウイルスを、プラーク精製し、そしてそれぞれの1つのプラークを、およそ2.4Lの生産規模まで拡大した。2つのステップの塩化セシウム勾配超遠心分離法を、rAd EBOVベクターを精製するために使用した。精製rAd EBOVワクチンを単独使用のアリコートとして-65℃未満で貯蔵した。ウイルス粒子の力価を260nmでの光学密度を測定して定めた〔Maizel(メンゼル)ら、1968、Virology(バイロロジー)36(1):115-25〕。感染性は911細胞を用いたTCID50により評価した〔Fallaux(ファラオー)ら、(1996)Hum Gene Ther(ヒューマン・ジーン・セラピー)7(2):215-22〕。アデノウイルス媒介EBOV GPの発現はA549細胞の感染に次いでウエスタンブロット上で培養溶解物の分析を続けることにより評価した。精製したベクターの同一性はPCRによって確認し、そしてフランキング配列を含めて、完全な導入遺伝子領域をDNAシークエンシングを用いてチェックした。
【0074】
系統発生解析。系統発生上のツリーは、完全長アデノウイルスヘキソンアミノ酸配列を用いて構築した。アミノ酸配列はクラスタルXプログラムを使用して配列決定し〔Larkinら、(2007)Bioinformatics、23(21):2947-8〕、そしてツリーを、Clustal X Neighbour-Joining method(クラスタルX近隣結合法)を使用して組み立て、そしてツリーは1000回ブートストラップされた。ツリーはフィリップ・フィロジェニー・インファレンス・パッケージ(Phylip Phylogeny Inference package)のバージョン3.68からのDrawtree programme(ドローツリー・プログラム)を使用して視覚化し、そしてプロットした。
【0075】
動物チャレンジ調査および安全性。動物実験は、関連するすべての連邦政府のガイドラインおよびNIHポリシーに十分に準拠して実施した。カニクイザル・マカク〔Macaca fascicularis(マカカ・ファシクラリス)〕は、齢3-5年および重さ2-3kgの間のものを、すべての研究のためにCovance(コバンス)から入手した。サルは個別に収容し、そして定期的にthe Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(実験動物のケアおよび使用のためのガイド)(DHEW番号NIH 86-23)が推奨するように、濃縮物(enrichment)を与えた。動物を、採血またはワクチン接種前にケタミンで麻酔した。本研究において各ワクチン群は3つのカニクイザル・マカクを含み、そして各コントロール群は単一のカニクイザル・マカクを含む。四週間のポストEBOVワクチン接種で、動物を、尾側の大腿部への筋肉内経路によって送達されるザイールEBOVの1,000 PFUの標的投与量での感染のために最大封じ込め研究所(Maximum Containment Laboratory)(BSL-4)に移した。ZEBOVチャレンジストック(保存株)を、以前のザイールでの1995年のアウトブレイクにおけるヒト死者から調製した。動物は調査が完了するまでそこに残した。BSL-4施設にいる間、サルは最低でも一日一回、給餌され、そしてチェックされた。
【0076】
USAMRIID(アメリカ軍伝染病研究機関)でのBSL-4の生命に有害な物質の封じ込めで行われた動物調査は、USAMRIIDの施設内動物のケアおよび使用のための委員会(USAMRIID Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認された。動物研究は、アメリカ動物保護法(Animal Welfare Act)および他のアメリカ連邦法規(Federal statutes)、および動物および動物を伴う実験に関連し(relating to animals and experiments involving animals)、および実験動物のケアおよび使用に関する指針、アメリカ研究評議会(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals, National Research Council)、1996年に記載された原則に支持される規則(regulations)を遵守して実行した。使用した施設は実験動物ケアインターナショナルの評価および認定のための協会によって十分に認定されている。
【0077】
動物の免疫化。対象は各実験において指示された用量およびベクターを用いてニードルおよびシリンジによって両側の三角筋に筋肉内接種を受けた。選定した動物は、各実験で示されたように、Ad5の免疫を誘導するために、エンプティー(空)のAd5ベクターの10
11PFUでプレ(予備)免疫化した。Ad5のELISA抗体力価は、EBOVワクチン接種前に、これらの動物において確立された。
【0078】
アンチEBOV GP IgG LISA。ポリ塩化ビニルELISAプレート〔Dynatech(ダイナテック)、Vienna(ウィーン)、VA(ヴァージニア州)、またはNunc(ヌンク)、Rochester(ロチェスター)、NY(ニューヨーク州)を、ウェルあたり100μlの抗原によってコーティング(被覆)し、そして4℃で一晩中インキュベートした。その後のインキュベーションは室温で行った。293T細胞のリン酸カルシウム媒介一過性トランスフェクションによって生成した貫膜欠失EBOV GP(EBOV GPΔTM)は抗原として役立った。プレートを抗原コーティングした後、PBS含有Tween(ツイーン)20を用いて6回洗浄した。試験血清は1:50から1:50,000に至るまでの7つの濃度に連続的に希釈し、そして60分間抗原でコーティングされたウェルに添加した。プレートを、6回洗浄し、次いで検出抗体、ホースラディッシュペルオキシドに結合したヤギ抗ヒトIgG〔H+L;Chemicon(ケミコン)/Millipore(ミリポア社)、Billerica(ビレリカ)、MA(マサチューセッツ州)〕とのインキュベーションを続けた。Sigma Fast o-Phenylenediamine Dihydrochloride(シグマファストo-フェニレンジアミン二塩酸塩)〔Sigma(シグマ社)、St. Louis(セントルイス)、MO(ミズーリ州)〕基質をウェルに添加し、そして光学密度を測定した(450 nm)。各動物についてのワクチン接種前血清サンプル(試料)を、アッセイを行うたびごとにテストを行った。既知ザイールEBOV GP IgG応答を有する単一動物からの陽性コントロール血清サンプルは、アッセイを行うたびごとにテストを行った。バックグラウンド減算ELISA力価は、EC90、逆数光学密度値として表わされ、それは、抗原結合において90%減少が存在する希釈を表す。
【0079】
細胞内サイトカイン染色。カニクイザル・マカクからの全血サンプルを、末梢血単核細胞(PBMC)を単離するためにFicoll(フィコール)上での密度勾配遠心分離にかけた。およそ1×10
6細胞を、37℃で6時間、10%熱不活性化ウシ胎仔血清を含む100μlのRPMI培地において、抗CD28(クローンCD28.2)および-CD49d(クローンL25)抗体〔BD Biosciences(BDバイオサイエンシーズ社)〕、Brefeldin(ブレフェルジン)-A〔Sigma-Aldrich(シグマ・アルドリッチ社)、St. Louis、MO〕、およびDMSOまたは全体のザイールEBOV GP読み枠にわたるペプチドのプールのいずれかで刺激した。ペプチドは、新鮮な無菌のDMSOにおいて、各ペプチドについて2.5μg/mlの終濃度で再構成した11個のアミノ酸によって重複した15量体であった。各サンプルについて、同等のアリコートを陽性コントロールとしてSEBで刺激した。6時間の刺激後、PBMCを、系統マーカー(lineage markers)(CD3-Cy7-APC、クローンSP34-2(BD Biosciences)、CD4-QD605クローンM-T477(BD Biosciences)、CD8-TRPEクローンRPA-T8、CD95 Cy5-PE、クローンDX2(BD Biosciences)、CD45RA QD655、クローン5H3に対する抗体の混合物を用いて20分間室温で染色した。CD45RA QD655およびCD8-TRPE抗体を、前述したように標準化されたプロトコルに従って共役させた〔Koupら、2010 Priming Immunization with DNA Augments Immunogenicity of Recombinant Adenoviral Vectors for Both HIV-1 Specific Antibody and T-Cell Responses.(HIV-1特異的抗体およびT細胞応答の双方のための組換えアデノウイルスベクターのDNA増強免疫原性によるプライミング免疫化)。PLoS One 5(2):e9015.doi(ドイ):10.1371/journal.pone.(ジャーナル・ポン)0009015〕。2回洗浄した後、細胞を固定し、そしてCytofix(サイトフィックス)/Cytoperm(サイトパーマ)(BD Biosciences)で透過性にし、次いでサイトカインTNFα-APCに対する抗体、クローンMAb11(BD Biosciences)、およびIL-2 PE、クローンMQ17H12(BD Biosciences)を用いて染色を続けた。残存判別染料(viability dye)ViViD(ビビッド)(Invitrogen)は生細胞と死細胞との間の区別を可能にするために含ませた〔Perfetto(パーフェト)ら、(2006)J Immunol Methods(ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッズ)313(1-2):199-208〕。サンプルは、LSR IIサイトメーター(血球計算機)(BD Biosciences)にて取得し、最大で1,000,000の事象まで収集し、そしてFlowJo(フロージョ)9.1およびSPICE(スパイス)5.0ソフトウェア〔Tree Star(ツリースター)〕を用いて分析した。サイトカイン陽性細胞はCD4
+およびCD8
+T細胞メモリーサブセット内の割合として規定した。メモリーサブセットはCD45RA±/CD95+またはCD28±/CD95+として規定した。後者の場合、CD28 Alexa(アレクサ)488〔クローン28.2、BioLegend(バイオレジェンド)〕は、非共役CD28 mAbの代わりに刺激のために用いた。
【0080】
血清生化学。チャレンジ研究のために、血液を0、3、6、10、14および28日目のポストザイールEBOV感染でNHPから収集した。総白血球数、白血球差(white blood cell differentials)、赤血球数、血小板数、ヘマトクリット値、総ヘモグロビン、平均細胞容量、平均血球容量、および平均血球ヘモグロビン濃度は、EDTAを含むチューブに採取した血液サンプルから、レーザーベースの血液学的分析機(laser-based hematologic Analyzer)〔Coulter Electronics(クールターエレクトロニクス)、Hialeah(ハイアレア)、FL(フロリダ州)、USA(米国)〕を使用することによって決定された。血清サンプルは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の濃度について、Piccolo Point-Of-Care Blood Analyzer(ピッコロポイントオブケア血液アナライザー)〔Abaxis(アバクシス)、Sunnyvale(サニーベール)、CA(カリフォルニア州)、USA〕を用いて試験した。
【0081】
EBOVの検出。ウイルス滴定をVero(ベロー)細胞上でのプラークアッセイにより行った。簡単には、血しょうサンプルの10倍増加希釈物を、複製ウェルにおいてベロー単層に対して吸着させ(ウェルあたり0.2ml);このようにすることで、検出の制限は25pfu/mlであった。
【0082】
統計。抗GP ELISA IgG力価、およびT細胞のメモリーサブセットによる細胞内サイトカイン産生の比較を、GraphPad Prism(グラフパッドプリズム)ソフトウェアにおける両側T検定を用いて行った。
【0083】
結果
【0084】
アデノウイルス系統およびベクター構築。EBOVについてのrAd5遺伝子ワクチンはマカクにおいて強力な防御免疫を提供し、そしてヒトの臨床試験において安全性および免疫原性が証明された(Asmuthら;Kibuukaら;Harroら、2009;)。マカクおよびヒトにおける調査は、既存の指示免疫性のベクターがウイルス性ベクターベースのワクチンの効力を制限することがあることを示した(McCoyら、2007;Buchbinderら、2008)。血清学的陽性率データは、ヒト集団の大部分がAd5による自然感染を世界的に経験していることを示唆しているから、本発明者らは、ワクチンベクターとして使用するための他のアデノウイルス血清型を評価した(
図1A)。本発明者らは、Ad35、グループBおよびAd26、グループDのアデノウイルスが、rAd5、グループCから遺伝的に分離され、それでこれらの血清型由来のワクチンベクターは霊長類でAd5の免疫力に敏感になるという仮説を立てた。Ad35およびAd26ベクターがAd5での使用とは異なる受容体を用いるが、それにもかかわらず、それらは単球由来樹状細胞の効率的な形質導入を実証し、そしてマウスでのAd5の免疫を免れる。したがって、EBOVのザイールまたはスーダン/グル種からのGPインサート(GP挿入物)は、ヒトCMVプロモーターの転写制御下に、rAd35およびrAd26ベクターのE1領域中にクローニングされた(
図1B)。双方のベクターゲノムは、それらを複製欠損にし、そしてワクチン接種した対象における組換えのための可能性を低減させるために、E1遺伝子において欠失されている。
【0085】
マカクにおけるrAd35ワクチン接種および免疫応答の誘導。rAd35ベクターの能力を試験し、Ad5ナイーブマカクにおける免疫応答を誘導するために、およびまたAd5に対する既存の免疫の関連内でのベクター能力を評価するために、初期の調査は、ザイールエボラウイルス(ZEBOV)、GP(Z)からのGPをコードする単一のEBOV種ワクチンを用いて行った。六匹のカニクイザル・マカク、三匹のAd5ナイーブおよび三匹のAd5免疫を、各々針注入によってrAd35-GP(Z)(Ad35BSU.Ebo.GP(Z)FL.wt)の10
10粒子により筋肉内にワクチン接種した。三週間のポストワクチン接種では、抗原特異的抗体およびT細胞応答を、個々の対象から得た末梢血サンプルで評価した。ELISAによって評価したEBOV-GP(Z)に対する抗体は、すべての対象において誘導され、rAd35-GP(Z)ベクターが標的細胞のインビボ形質導入および効率的な抗原提示を好首尾に媒介することを示した(
図2A)。AD5ナイーブおよびAd5免疫の対象は、およそ1:700から1:3000までにおよぶ血清抗体価を生成した。これらの抗体レベルは、GP(Z)インサートを含むAd5ベースのワクチンについて観察され、そしてこのマカクAdワクチンモデルにおいてEBOV感染に対する免疫防御と関連付けられた最小値(1:500)を超えた範囲内である(Sullivan、2009)。有意な抗体力価は、すべてのワクチンで誘導されたが、いずれの対象も、マカクにおいてAd5-GPワクチンベクターの投与後100%の保護を予測する閾値力価(約1:3500)を超えない。しかしながら、Ad5ナイーブ対Ad免疫の対象における抗体力価の比較において、これらのグループのうち誘発された平均力価において有意差がなかったことを示した(それぞれ1:1600対1:1800)ことは注目すべきであり、rAd35ベクターが、Ad5に対し以前さらされた対象において有効なワクチンであることを示唆した。
【0086】
細胞性免疫応答は、EBOV GP(Z)読み枠にわたる重複ペプチドでの対象PBMCの刺激後、TNF-α(CD8
+)またはIL-2(CD4
+)のいずれかについて細胞内サイトカイン染色(ICS)により評価した。CD45RAおよびCD95を用いるリンパ球の表面染色は、CD4
+およびCD8
+T細胞(
図2 B-C)のメモリーサブポピュレーション(メモリー部分母集団)における抗原特異的免疫応答を評価するために実行した。抗体反応について観察されたように、rAd35ベクターによりワクチン接種されたマカクはEBOV-GPに対する細胞性免疫を生成し、そして抗原特異的T細胞の出現頻度はAd5免疫状態によって影響を受けなかった。対象の全体にわたって双方のCD4
+およびCD8
+リンパ球における細胞応答の順位の重要性(大きさ)は、抗体反応に類似していたが、ある対象V3についての抗原特異的T細胞の出現頻度は検出可能なレベルよりも低かった。マカクにおける以前の調査では、rAd5ベースのワクチンベクターは、CD4
+応答より優位であるCD8
+T細胞の出現頻度を誘導することが示された。本調査では、rAd35ワクチン接種した対象体は、同様の出現頻度でGP-特異的CD4
+およびCD8
+リンパ球を生成した。しかしながら、対象体の比較的少数を試験した場合、差異が、存在しても、明らかにできない可能性がある。全体的に見て、これらの結果は、rAd35-GPがカニクイザル・マカクにおいて免疫原性であること、および抗原特異的体液性および細胞性免疫応答の誘導についてのベクター能力がAd5に対する既存の免疫性を有する対象体において低減されないことを示す。
【0087】
rAd35ワクチン接種したマカクのZEBOVでのチャレンジ。次に、本発明者らは、rAd35-GPでのワクチン接種がZEBOVの高用量での感染によるチャレンジに対する保護を提供するかどうかを試験した。上記免疫応答の査定後一週間に、六匹のrAd35-GPをワクチン接種したカニクイザル・マカクおよび一匹のナイーブのカニクイザル・マカクを、ZEBOVの1995 Kikwi(キクウィト)株の1000PFUに対し筋肉内注入により曝した。肝酵素を、感染によるチャレンジ後定期的に測定し、それはこれらのマーカーにおける上昇はマカクでの増殖性(productive)EBOV感染の特徴だからである。アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の循環レベルを、日10-14を通して(
図2D)、およびその後28日間のフォローアップ期間(図示せず)の最後の日に、急性感染期間中に3-4日毎に評価した。血しょうASTは、すべての対象体において感染後3日を通してベースラインレベルにとどまり、感染EBOVチャレンジ直後に正常な肝機能が示された。EBOV暴露後6日目まで、ワクチン未接種コントロール対象体は、酵素レベルの10倍の増加を示し、この対象体での活動性感染が指し示された。Ad5ナイーブ/rAd35ワクチン接種グループにおける二体の対象(V1、V3)からの血液サンプルはまた、ASTでの劇的な増加を示し、その一方、このグループV2での第三の対象体は、ベースラインレベルに戻る分解前の単一の時点で、わずかな増加のみを示した。同様に、Ad5免疫/rAd35ワクチン接種のグループ(V4、V5)における三体のうち二体の対象は、ワクチン未接種のコントロールよりもはるかに低いものの、ASTでの上昇を示し、その一方、一体の対象V6は、感染のこのパラメータについて通常にとどまった。全体として、ASTレベルは、Ad5免疫のワクチン接種対象におけるよりもAd5ナイーブにおいて高かった。この臨床観察について正常にとどまった各対象が、そのそれぞれのワクチングループ内での最も高いプレチャレンジ、抗原特異的CD8
+および抗体応答を示したことは注目に値する言及である。血しょうのウイルス血症レベル(
図2E)は、高められたASTを示したすべての動物でのEBOV感染を確認した。
【0088】
この実験の結果は、対象体あたり10
10粒子の用量で投与したとき、rAd35が免疫原性であることを示す。ワクチンは防御免疫反応を生じさせるが、この用量およびレジメンはすべての対象体の均一な保護のためには最善に次ぐものであった。ワクチングループ内で、防御免疫は最も重要な抗原特異的抗体およびCD8
+T細胞応答と関連した。
【0089】
防御免疫の誘導におけるrAd35-GPの用量反応の影響。rAdベースのベクターは普通には、10
10から10
12の粒子までにおよぶ範囲の用量でマカクに投与される。rAd5-GPでの以前の結果は、EBOV感染に対するカニクイザル・マカクの100%の保護を達成するための最小限の用量として10
10ウイルス粒子が実証された(Sullivan、2006)。前述の調査がこの用量範囲の下限で行われ、そして均一な保護がもたらされなかったので、rAd5ベクターのそれと比較したときに、rAd35ベクターを用いて達成されたわずかに低いインビボ抗原発現さえも、最善に次ぐ免疫応答をもたらすことが可能である。したがって、本発明者らは、より一層高いワクチン用量の投与が、免疫防御のより一層大きな程度を誘発できるかどうかを問うた。この実験ではワクチンはまた、スーダンおよびザイール種の双方からGPを構成するrAd5ワクチンでの歴史上データに対する有効性を比較するために、スーダンEBOV種(S/G)からGPを発現するrAd35を含んだ。本調査では、カニクイザル・マカク(群あたりn=3)を、各々のAd35BSU.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd35BSU.Ebo.GP(S/G)FLの10
10または10
11ウイルス粒子でワクチン接種し、そして免疫応答を以前の実験においてワクチン接種した後に三週間測定した。
【0090】
GP特異的抗体はすべての対象体において、期待した結果が生成され(
図3A)、それはワクチン用量が以前の実験のものと同じか、またはそれより高かったからである。しかしながら、この実験で10
10粒子を用いてワクチン接種した2体の対象(V8、V9)における力価は、それぞれ1:340および1:500であり、Ad5-GPワクチン接種した対象での保護を予測するために以前に観察された最小カットオフに近いか、またはそれよりも低いレベルであった(Sullivanら、2009)。観察された最大抗体力価は、
図2に示すようにrAd35対象体において観察された最大力価と同じである1:2,900であった(対象体V10)。平均抗体力価は10
11投与量グループにおいてより一層高かった(1:1500対1:700)が、その差は統計的有意性には達しなかった(P=0.02)。低用量グループで観察されたように、その力価が免疫保護のためのrAd5-GPワクチンカットオフ(対象体V11、1:540)の近くにあったある種の対象体が存在した。
【0091】
CD4
+およびCD8
+T細胞応答は、3週間のポストワクチン接種での双方の用量グループに存在した。CD4
+またはCD8
+T細胞応答のいずれかでも明確な用量反応は存在しなかった。細胞性免疫応答の動態は、対象体間で、特に非近交系動物において変動し、そして応答の測定は、それが抗体レベルを有するように、経時的に累積的ではないので、グループの傾向は時として単一の時点で捕らえることが困難である。各個体内で、抗原特異的T細胞の出現頻度は、CD8
+細胞についてのものよりもCD4
+についてものが高かったが、第一の実験からの結果と組み合わせたとき、これらの実験においてrAd35-GPベクターによって誘導されるCD4
+またはCD8
+細胞の優性(dominance)へのいずれの傾向もなかった。
【0092】
免疫応答の評価後一週間、すべての六匹のワクチン接種したマカクおよびある種のワクチン未接種の対象体を、筋肉内注入により1000PFUのZEBOVに曝露し、そして増殖性感染の兆候が観察された。EBOV感染の出血症状は日常的に、感染したマカクの顔または四肢に斑点状丘疹(maculopapular rash)の出現をもたらし;対象体はまた典型的には、食物摂取量を減らし、そして脱水状態になる。2体のワクチン接種した対象についての症状の最も初期の外観は、EBOV暴露後6日目に発生し;そしてそれぞれが7日目までに症状の十分な一群(full constellation)を示す(データは図示せず)。表2は、感染によるチャレンジの成果および双方のrAd35調査についての非生存体における死の日を示す。ワクチン未接種対象体は、日9および8(それぞれ実験1および2)に感染の致死効果に屈した。死んだワクチン接種対象体は、それらがコントロールよりも長く平均2日まで生き残ったことを除いて、コントロール、ワクチン未接種対象体に類似していたが、死んだことが最終的に観察されたにもかかわらず、ワクチン接種の潜在的な部分的免疫の利益が示唆された。生存体の数は、ワクチン用量にかかわらず、GP(Z)プラスGP(S/G)を受けているものに比べ、rAd35-GP(Z)だけを受けとる対象体においてより一層大きかったが、残存率での差は、2つのチャレンジ実験における任意のワクチングループの全体にわたって有意ではなかった。
【0093】
【表2】
【0094】
全体的に見て、GP(Z)単独またはGP(S/G)との組合せで用いるワクチンベクターとしてrAd35を用いる調査は、抗原の受渡および提示が抗原特異的免疫応答を生成するのに十分であるが、絶対的な免疫防御のために必要とされるよりも低いレベルであったことを示した。より一層低い防御免疫は、保護のための限界であることがrAd5ベクターを用いて示されているものと一致する若干の動物において検出された抗体レベルと関連した。
【0095】
rAd26-GPワクチンの免疫原性およびEBOV感染に対する保護のための効力。本発明者らは次に、EBOV感染に対する防御免疫を生成する能力について、組換えAd26ベースのワクチン、グループDのアデノウイルスを評価した。この血清型はAd35と同じ細胞受容体(CD46)を使用するが、プライミングワクチンベクターとして使用したときには、わずかに高い免疫応答を生成することが示された(Liuら、2009)。これらの調査では、用量増大は、2つの別々の感染によるチャレンジ実験において3桁の規模(three orders of magnitude)に渡って導かれた。最初の調査では、本発明者らは、各ベクター、Ad26.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd26.Ebo.GP(S/G)FL.wtについて10
10または10
11粒子の用量にてワクチンをテストし、および第二の調査において本発明者らはそれぞれ、10
12粒子の用量を用いた。最初の調査は、rAd26が、rAd35ように、Ad5に対する既存の免疫の存在下で抗原特異的免疫応答を引き出すことができるかどうかを評価するために、Ad5免疫のカニクイザル・マカクにおいてワクチンを試験した。グループ毎に四匹のAd5免疫のカニクイザル・マカクを筋肉内注入によりワクチン接種し、および血液サンプルをEBOV GPに対して、循環性の体液性および細胞性免疫応答を評価するために、3週間後に取得した(
図4A)。平均循環抗GP抗体力価は、投与グループ全体にわたり用量反応を示し;10
10被ワクチン接種体について1:700および10
11粒子を受ける対象体について1:4500であった(P=0.06)。10
10用量グループにおいて4分の3の対象体についての平均力価は、rAd5ワクチン接種対象体における免疫保護のための最小閾値をちょうど超えた(1:500)が、対象体V16はごくわずかの抗体応答、1:100だけを生成し、それはAd5-GPワクチンのための予測された保護カットオフよりも十分に低かった。対照的に、rAd26ワクチンの10
11粒子でワクチン接種された対象体V19は、非常に高い抗体力価、1:10,500を生成し、完全な免疫防御に関連したレベル(1:3,500)がほぼ3倍だけ超えられ、その一方でこのワクチングループでの他のものは限定的に生存転帰(survival outcome)を予測しないで、中間の力価を示した。調査2では、4体の対象は、各rAd26ベクターの10
12粒子を受け、そして10
11の用量グループにおけるものと非常に似た抗体応答を生成し、その大部分は1:1000-1:4000の間の対象体の力価を有する。このグループの平均抗GP抗体力価は1:3000であった。
【0096】
T細胞免疫応答(
図4B、C)を、rAd35調査でのようにICSによって測定し、そしてまた、調査1における用量反応への傾向を示したが、10
10および10
11用量グループ間での差は有意ではなかった(CD4
+およびCD8
+、それぞれ、p=0.12および0.26)。平均抗原特異的CD4
+T細胞出現頻度は、10
10粒子のrAd26-GPを受けるワクチン接種について0.14%であり、それに対してより一層高いワクチン用量では0.24%であり、そしてより一層低い用量グループの一つのワクチン接種、対象体V14は、検出不可能なCD4
+応答を有した(
図4B)。rAd26ワクチンはCD4
+またはCD8
+の優性のどちらへも細胞性免疫応答を歪めず(not skew);CD8
+出現頻度、0.13%および0.25%(それぞれ、10
10および10
11のワクチン用量)は、本質的にCD4
+応答の重要性を反映した。CD8
+T細胞の場合、低用量グループにおいて2体の対象、V13およびV14が存在し、検出不可能な抗原特異的応答を有した(
図4B、C)。rAd26調査2では、平均抗原特異的CD8
+出現頻度(0.34%)はCD4
+応答(0.08%)よりも高いが、CD8
+応答へのこの明らかな歪み(skewing)は、主に単一の対象、V24によって導かれ、そのものは非常に高いCD8
+出現頻度および低いCD4
+応答を有する。さもなければ、全体的な細胞性免疫応答は、rAd26調査の一つで観察されたものと同様であった。
【0097】
感染EBOVチャレンジは、rAd26ワクチン調査のそれぞれのためのワクチン接種後4週間で1000PFUのZEBOVのIM注入によって行い、そして肝酵素レベルを疾患を監視するために測定した(
図4D)。ワクチン未接種対象は注入の日3および6の間に肝損傷の発現を見せた。最低用量rAd26ワクチン、10
10粒子を受け取るすべての対象体は、同じような症状の病気を示したが、ASTレベルはより一層遅い速度で増加した。本臨床指標から予測されるように、このグループにおけるすべての対象体は、日8のポストZEBOVチャレンジによる感染の致死効果に屈した(
図5A)。抗体およびT細胞応答は、このグループにおける若干の対象体では低いか、または検出されなかった。Ad26研究1における用量グループ(10
10および10
11)間での免疫応答の重要性における違いは、rAd26-GPの10
11粒子によりワクチン接種された対象体において、生存率での、概してより一層高い生存転帰を有し、保護された4のうち2体に反映された(p=0.01)。 10
11粒子でのAd26は、より一層低い用量に対して優れていただけではなく、投与量が一致したときにもrAd35-GPよりも大きい保護を提供した(
図5B)。最後に、10
12粒子の用量で与えるrAd26は、これらの研究でテストされた任意のワクチンレジメン(ワクチン療法)について生存体の最大数をもたらし(4のうち3体)、そして免疫防御のレベルはrAd5ベクターで以前に観察されているものとは有意差はなく(p=0.32、
図5C);しかしながら、この生存率はrAd26について用量がrAd5についてのものよりも高いもの、それぞれ、10
12対10
10粒子を用いて得られ、この動物モデルにおけるこれらのベクター間の潜在的な能力の差が示唆される。
【0098】
rAd26およびrAd35ベクターでの異種プライム・ブースト。rAd26-GP媒介免疫保護のための用量反応特徴および10
12ベクター粒子を用いる高い生存転帰は、このベクターがGP抗原の発現を効率的に誘導することを示唆した。非ヒトおよびヒト対象体の双方において、EBOVおよび他の病原体について、その異種プライム・ブーストワクチン接種がシングルショットのワクチン接種よりも強力な免疫性を引き出すことができることが示された〔SullivanのNature、2000;Sampra(サンプラ)ら、Vaccine、27(2009)5837-5845;Koupら、PLoS One 2010;Geisbert(ガイスバート)ら、(2010)Virol 84(19):10386-94〕ので、本発明者らはrAd26-GP免疫応答がEBOV感染に対する保護を改善するために異種のベクターでブーストすることができるかどうか問うた。四匹のカニクイザル・マカクを、Ad26.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd26.Ebo.GP(S/G)FL.wtの各々の10
11粒子を接種した。1ヶ月後、すべての対象体はAd35BSU.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd35BSU.Ebo.GP(S/G)FLの同じ用量でのブーストワクチン接種を受けた。免疫応答は、ブーストの直前、およびその後三週間評価した。
図6AはEBOV-GP(Z)に対する抗体応答がプライミングワクチン接種により効率的に誘導されたことを示す。個々の対象体は1:2700から1:7100までのGPに対するEC90抗体力価を生成し、そしてそのグループについての平均力価は1:4000であり、単独接種ワクチンとしての10
11のrAd26をテストする以前の調査において観察された応答(1:4500 )と一致した。本調査には、比較のために、10
10粒子のrAd5-GP(Z)およびrAd5-GP(S/G)のそれぞれを用いて接種した単一の対象体が含まれ、そのもののポストワクチン抗体力価は1:6800であった。rAd35-GPベクターの10
11粒子を用いたrAd26-GP-プライミング対象体のその後の接種は、抗原特異的抗体レベルをほとんどの被ワクチン接種体についておよそ1桁の大きさで1:32,000の平均力価にブーストしたが、それには対象体V27が除かれ、そのポストプライム抗体力価は非常に高かった。興味深いことに、ブーストワクチン接種は、対象体の全体にわたってより一層均一な力価を生成し、54%の標準偏差を見せたポストプライム力価に比べて、対象体にの全体にわたり弱10%の標準偏差を有した。
【0099】
細胞性免疫応答はまた、rAd26ワクチン接種マカクに対するrAd35-GP投与によって顕著にブーストされた(
図6B、C)。CD4
+T細胞は、一つの対象体、V25を除いてすべてにおいてブーストされ;rAd35-GP投与後の平均増加は、すべての対象体にわたって2倍であり、そしてブースティングは、応答がブースティング前には検出されなかった対象体V27において測定可能な応答を明らかにした。最終的に、ポスト・ブーストCD4
+T細胞出現頻度は、rAd5-GPワクチン接種によって生成されたものに匹敵した。ブースト効果は、CD8
+T細胞について最も大きく、そしてすべての対象体はこの細胞内コンパートメントでブースト効果を見せ、2つの対象体(V27およびV28)において、rAd5-GPワクチン接種によって生成されたものを超える応答が産生された。ICSによって測定された平均GP特異的CD8+T細胞出現頻度は、一次免疫後0.09%であり、そしてrAd35-GP二次ワクチン接種後3週間0.41%まで、4.7倍に増加した。
【0100】
全体的に見て、上記の免疫原性の結果は、rAd35-GPベクターがrAd26-GPプライミングしたマカクをブースティングするために有力であることを示した。ポストブーストGP指向性(directed)抗体は、rAd5-GPワクチン接種された霊長類で100%の免疫防御のための予測レベルよりもほとんど高いログの(nearly a log higher than)平均レベルに誘導された(Sullivanら、2009)。重要なことに、rAd35-GPブーストは、CD8
+T細胞の出現頻度の著しい増大を提供し、またEBOV感染に対する免疫防御に関連付けられることを示した。したがって、免疫応答の評価後一週間(ポストブースト4週間)、すべてのワクチン接種対象体および一つのワクチン未接種コントロールのマカクを、筋肉内注入によりZEBOV 1000 PFUにさらした。コントロール対象体はEBOV感染の臨床症状の特徴を見せ、そしてチャレンジ後日6での致死効果に屈した(
図6C、D)。対照的に、すべてのワクチン接種対象体は、循環性ASTレベルについて正常にとどまり(
図6C)、そして研究終了での全体の病理評価において出血性疾患の証拠を見せなかった(図示せず)。すべての4体のワクチン接種対象は、感染によるチャレンジを生き延び、そして研究終了までの28日間のフォローアップ期間中に症状のないままであった。これらの結果は、異種プライム・ブーストワクチンレジメンとして投与されたrAd26/rAd35ベクターがZEBOV感染に対する一様な免疫防御を提供し、そして混合ワクチンでの添加または相乗的結果を達成するためのこのアプローチの潜在的な有用性が実証されることを示した。
【0101】
考察
【0102】
アデノウイルスは、様々なウイルス性、細菌性および寄生虫性の抗原の送達のためのワクチンベクターとしてよく機能する〔Lasaro(ラサロ)ら、(2009)Mol Ther(モレキュラー・セラピー)17(8):1333-9〕。特に、rAd5ベクターは、マウス、非ヒト霊長類、およびヒトにおいて、EBOV-GPが標的抗原であるときに本発明者らが観察したように、有力な抗原特異的免疫応答を生成する。しかしながら、症状発現前およびヒト臨床研究は、rAd5ベースのベクターの効力が、Ad5に対しあらかじめ曝露されている個体において危うくされる可能性があることを示唆し、それはそれらのものがベクターに対する免疫の高いレベルを有する場合である。ここでは、研究の目的は、ナイーブおよびAd5免疫の双方の対象体においてEBOV GP抗原を送達することができるrAdベクターを識別することであった。任意のウイルス性ベクターに対する既存の免疫がその有効性を制限する可能性があるので、本発明者らは、本発明者の注意力を、血清反応陽性の対象体の有病率および/または中和抗体の低レベルによって示されるような、比較的稀にしかヒトに感染しないウイルスに着目した。珍しいヒトアデノウイルス血清型、Ad35およびAd26を、今回の作業においてワクチン開発のために選定した。
【0103】
マカクのrAd35-GPワクチン接種は、個々の対象体において、rAd5が送達ベクターとして使用されたときにあらかじめ観察された範囲内の抗原特異的抗体およびT細胞応答を生成した。すべてのrAd35ワクチン接種体についての平均抗GP抗体力価(用量にかかわらないもの)、1:1400は、10
10のrAd5-GPでワクチン接種したすべての歴史的な対象体の平均(1:11,000、n=17)よりも低く、rAd35について抗体力価がrAd5のEBOVワクチンについてのものと同じ相関があるならば、ベクターの効力が2つの血清型間で異なる場合があるという初期の徴候を提供する。CD4
+およびCD8
+のT細胞応答は、感染によるチャレンジの前に、ほとんどの対象体において検出可能であったが、絶対等級は、アッセイブリッジコントロール(assay bridging controls)のためのPBMCサンプルの不存在下にこれらの研究において含まれないrAd5ワクチンと比較することはできない。
【0104】
いずれのrAd5ナイーブまたはrAd5免疫の対象体において、rAd35ベクターでのワクチン接種は、効果的に抗原特異的抗体およびTリンパ球の免疫応答を誘導し、稀な血清型のベクターゲノムが異種ベクター指向性免疫に抵抗するために、共通の血清型から十分に離れていることを示唆された。ベクター性能のこの特色は、天然のウイルス感染からだけでなく、プライミングワクチン接種または他の病原体に対するワクチン接種における異種ベクターの使用から生じる既存の免疫を迂回するのに重要である。実際に、rAd35-GP接種は、rAd26-GPによってプライミングしたマカクにおいて、細胞媒介性の、および抗体の応答の双方の強力なブースティングを提供した。この結果は興味深いことであったが、それはそれが一次免疫応答に対する二次応答の誘導のためのベクター潜在力において明らかな違いを示すからであり;免疫応答をブースティングするためのrAd35-GPの能力はプライミングワクチン接種後に観察された応答の大きさによって予測されなかった。これらのデータは、rAd35およびその他のrAdベクターが、Lindsay(リンジー)ら、J Immunol、185(3):1513-21によって最近示唆されたように、標的樹状細胞の一定の集団または活性化状態において高い形質導入効率を有することを示すことができ、それは、この場合には、二次免疫応答の間に、より一層豊富であるか、またはアクセス可能でありうる。
【0105】
rAd26は、EBOV感染に対するシングルショットワクチンとして、rAd35よりも強力であることが判明し、試験した最高用量でワクチン接種されたマカクの75%までにおいて生存が媒介された。rAd26-GPワクチンは、防御免疫を誘導するための明確な用量反応を示し、抗原発現におけるわずかな改善が、EBOVチャレンジの高用量に対して、ここで用いるもののような均一な保護を生成するためにrAd26ベースのワクチンの効力を高めることができることを示唆した。興味深いことに、一致した用量(10
11粒子)にてrAd35-GPと比べてrAd26-GPベクターが提供する保護のより一層高い程度は、より一層高いELISA抗GP力価、1:4500対1:1400にそれぞれ関連付けられた。これらのデータは、プレチャレンジ抗体力価がrAd5-GPワクチンについて観察されたように、ベクターグループ内に加えrAd血清型の全体にわたるZEBOV感染に対する保護の免疫相関として役割を果たしうるという可能性を強調する。抗体応答の誘導についての効力の序列は、ベクターグループ全体にわたる保護のための順位を予測した。
【0106】
これらの研究はここでは、単独および組合せで比較したワクチンベクターをテストし、そして霊長類においてワクチンベクターとして使用するための代替血清型rAdsの有用性を実証した。その結果は、これらのワクチンがプライム・ブーストの組合せにおいて最も有用でありうることを示唆する。
【0107】
異種プライム・ブーストによって達成された抗原特異的応答の高い等級のため、長期的な免疫性がDNAでのプライミングrAdによって最適に達成されうることが提案された〔Santraら、(2005)。J Virol、79(10):6516-22〕。DNAが、複数のプライマーを必要とし、そしてrAdベクターがするように迅速な保護を誘導しないので、異種rAdプライム・ブーストは、迅速な、および長期にわたる防御免疫の誘導の間のバランスを生成するのに最適な機会を提供することができる。
【0108】
ここに記載した例および実施形態が例示目的のためだけのものであり、それらを考慮して当業者に様々な修飾または変化が示唆され、そしてこの出願の精神および視野ならびに添付の請求の範囲内に含まれるべきであろうことが理解される。ここで引用したすべての刊行物、特許、および特許出願は、参照することにより、あらゆる目的のために本明細書にそっくりそのまま組み込まれる。