特許第6054876号(P6054876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6054876アデノウイルス血清型26および血清型35のフィロウイルスワクチン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054876
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】アデノウイルス血清型26および血清型35のフィロウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161219BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20161219BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20161219BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20161219BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20161219BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20161219BHJP
   C07K 14/08 20060101ALN20161219BHJP
   A61K 39/12 20060101ALN20161219BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   A61K37/02
   A61K48/00
   A61K31/7088
   A61K35/76
   A61P31/14
   !C07K14/08
   !A61K39/12
【請求項の数】12
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-544747(P2013-544747)
(86)(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公表番号】特表2014-503206(P2014-503206A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】US2011064944
(87)【国際公開番号】WO2012082918
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年12月8日
(31)【優先権主張番号】61/422,954
(32)【優先日】2010年12月14日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513150018
【氏名又は名称】ザ ガヴァメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプレゼンティッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシズ
【氏名又は名称原語表記】THE GOVERMENT OF THE UNITED STATES OF AMERICA as represented by THE SECRETARY OF THE DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES
(73)【特許権者】
【識別番号】301055549
【氏名又は名称】クルセル ホランド ベー ヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー ジェー サリバン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ジェー ネーブル
(72)【発明者】
【氏名】クレモン アシドゥ
(72)【発明者】
【氏名】チェン チェン
(72)【発明者】
【氏名】マリア グラッツィア パウ
(72)【発明者】
【氏名】ヤープ ハウトスミット
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/104792(WO,A1)
【文献】 特表2005−508916(JP,A)
【文献】 特表2008−514203(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/037294(WO,A1)
【文献】 特表2009−523007(JP,A)
【文献】 特表2008−516926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−15/90
C07K 1/00−19/00
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一および第二の組換えアデノウイルスベクターであり、各々はフィロウイルス抗原タンパク質がコードされる核酸を含み、第一のアデノウイルスベクターには、アデノウイルス26カプシドタンパク質が含まれ、および第二のアデノウイルスベクターには、アデノウイルス35カプシドタンパク質が含まれ、対象に、プライミングワクチン投与として、前記第一の組換えアデノウイルスベクターの免疫学的に効果的な量が施されること;次いで、対象に、ブースティングワクチン投与として、前記第二の組換えアデノウイルスベクターの免疫学的に効果的な量を施すことが続けられることによる、対象での前記フィロウイルス抗原に対する免疫反応の誘導における使用のためのものである、アデノウイルスベクターであり、ブースティングワクチン投与が、プライミングワクチン投与の2週後から2年後の間に行われる、アデノウイルスベクター
【請求項2】
アデノウイルスベクターは筋肉内に施されるものである、請求項1に記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項3】
アデノウイルス26カプシドタンパク質を含むアデノウイルスベクターはrAd26ベクターであり、およびアデノウイルス35カプシドタンパク質を含むアデノウイルスベクターはrAd35ベクターである、請求項1または2に記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項4】
フィロウイルス抗原タンパク質は糖タンパク質である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項5】
フィロウイルス抗原タンパク質はエボラウイルス由来である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項6】
エボラウイルスはザイール種である、請求項5に記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項7】
フィロウイルス抗原タンパク質は配列番号1に示されるようにポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項6に記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項8】
エボラウイルスはスーダン/グル種である、請求項5に記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項9】
フィロウイルス抗原タンパク質は配列番号2に示されるようにポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項8に記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項10】
フィロウイルス抗原タンパク質は配列番号3に示されるようにポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項8に記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項11】
フィロウイルス抗原タンパク質はマールブルグウイルス由来である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスベクター。
【請求項12】
フィロウイルス抗原タンパク質は配列番号4に示されるようにポリヌクレオチド配列によってコードされる、請求項11に記載の組換えアデノウイルスベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野を説明する。本発明は、フィロウイルス感染に対する防御免疫を誘発するためのアデノウイルス性ベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景を説明する。複製欠損アデノウイルスベクター(rAd)は、細胞性免疫応答の強力なインデューサー(誘導物質)であり、そのため、遺伝子ベースの(遺伝子に基づく)、特に、レンチウイルスおよびフィロウイルス、ならびに他の非ウイルス性病原体についてのワクチンのための有用なベクターとして機能するようになっている〔Shiver(シヴァー)ら、(2002)Nature(ネイチャー)415(6869):331-5;(Hill(ヒル)ら、Hum Vaccin(ヒューマン・ワクチンズ)6(1):78-83.;Sullivan(サリバン)ら、 (2000) Nature 408(6812):605-9;Sullivanら、(2003)Nature 424(6949):681-4;Sullivanら、(2006)PLoS Med(PLoS・メディシン)3(6):e177;Radosevic(ラドセヴィック)ら、(2007);Santra(サントラ)ら、(2009) Vaccine(ワクチン)27(42):5837-45〕。アデノウイルスベースのワクチンは、それらがGMP条件下で高力価に製造することができ、そして人間において安全で、かつ、免疫原性であることが証明されているので、ヒトのワクチンとしていくつかの利点を有する〔Asmuth(アスムス)ら、J Infect Dis(ザ・ジャーナル・オブ・インフェクシャス・ディジージズ)201(1):132-41;Kibuuka(キブッカ)ら、J Infect Dis、201(4):600-7;Koup(クルプ)ら、PLoS One(PloS・ワン)5(2):e9015.;Catanzaro(カタンツァーロ)ら、(2006)J Infect Dis、194(12):1638-49;Harro(ハロ)ら、(2009)Clin Vaccine Immunol(クリニカル・アンド・ワクチン・イムノロジー)16(9):1285-92〕。初期のワクチン研究のほとんどは、広域抗体およびCD8+のT細胞応答を誘発することにおいて、その重要な潜在能力のために、rAd5を使用して行なわれたが、ヒトにおいてrAd5に対して以前から存在する免疫は有効性を制限する可能性がある〔Catanzaro、(2006);Cheng(チェン)ら、(2007)PLoS Pathog(PLoS・パソジェンズ)3(2):e25.;McCoy(マッコイ)ら、(2007)J Virol(ジャーナル・オブ・バイロロジー)81(12):6594-604.;Buchbinder(ブクバインダー)ら、(2008)Lancet(ランセット)372(9653):1881-93〕。この特性は、エボラウイルス(EBOV)およびマールブルグウイルス(MARV)を含め、現在開発中である多くのワクチンのための臨床応用におけるrAd5の使用を制限するかもしれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2006/037038号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
rAd5に対する既存免疫の問題を回避するために、現在いくつかの代わりのベクターが調査中である。これらには、稀なヒト血清型から導き出されたアデノウイルス性ベクター、またチンパンジーのような他の動物に由来したベクターが含まれる〔Vogels(フォーゲルス)ら、(2003)J Virol、77(15):8263-71;Abbink(アビンク)ら、(2007)J Virol、81:4654-63;Santra(サントラ)(2009)〕。動物から派生したアデノウイルス性ベクターの使用における研究は、比較的発生期にあり、その一方、ヒトアデノウイルスはヒト細胞上でよく特徴付けられた生態およびトロピズム(親和性)ならびに文書化された製造可能性を有するという利点もつ〔Vogels(フォーゲルス)ら、(2007)J Gen Virol(ジャーナル・オブ・ジェネラル・バイロロジー)88(Pt 11):2915-24.〕。これらのベクターの免疫原性およびそれらのワクチンとしての可能性は、主として異種(非相同)ベクターとのプライム・ブーストの組合せとして、動物モデルにおいて示された〔Abbinkら、2007;Shott(ショット)ら、(2008)Vaccine、26:2818-23〕。
【0005】
アデノウイルスの血清学的陽性率(血清学上の有病率)出現頻度(度数)はコホート依存性である〔Mast(マスト)ら、(2010)Vaccine、28(4):950-7〕が、テストした51のヒトアデノウイルスの大きなグループの間では、Ad35およびAd11は、ほとんどが、6つの地理学上の位置からの血清によっては稀にしか中和されなかった(Vogelsら、2003)。rAd35ワクチンは、マウス、非ヒト霊長類、およびヒトにおいて免疫原性であり、そしてAd5免疫を迂回することができることが示されている〔Barouch(バルーシュ)ら、(2004)J Immunol(ジャーナル・オブ・イムノロジー)172(10):6290-7;Nanda(ナンダ)ら、(2005)J Virol、79(22):14161-8;Ophorst(オホルスト)ら、(2006)Infect Immun(インフェクション・アンド・イミュニティ)74(1):313-20;Thorner(ソーナー)ら、(2006)、J Virol、80(24):12009-16;Rodriguez(ロドリゲス)ら、(2009)Vaccine、27(44):6226-33〕。rAd35ベクターは、臨床グレードのワクチンの製造に適した細胞系で高力価にまで増殖し〔Havenga(ハベンガ)ら、(2006)J Gen Virol、87(Pt 8):2135-43〕、および注射ならびに安定した吸入可能な粉末用に処方されている〔Jin(ジン)ら、Vaccine、28(27):4369-75〕。これらのベクターは、ヒト樹状細胞の効率的な伝達を示し〔de Gruijl(デ・グルイジル)ら、(2006)J Immunol、177(4)2208-15;Lore(ロア)ら、(2007)J Immunol、179(3):1721-9〕、そしてそのようにして、高レベルの抗原送達および提示を媒介する能力を有する。Ad26は、サブグループDから、Ad5既存免疫を回避するその能力について選定された別のアデノウイルスである。Ad26の血清学的陽性率は、一定の場合、成体集団において重要でありえるが、Ad26中和抗体力価はAd5の中和抗体力価よりも著しく低いままである(Abbinkら、2007;Mastら、2010)。研究は、rAd26が、大規模で、かつ、臨床グレードでのこれらのベクターの製造に適したAd5のE1-補完細胞系において、高力価にまで増殖しうることを示し、そしてこのベクターが、体液性の、および細胞性の免疫応答を、プライム・ブーストワクチン戦略において誘導することが示されている〔Abbinkら、2007;Liu(リュー)ら、(2009)Nature、457(7225):87-91〕。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の概要を説明する。本発明は、少なくとも一部分において、rAd35およびrAd26ベクターの単独接種の際、ならびに異種プライム・ブーストの組合せが、フィロウイルス感染に対する防御免疫反応を生成するという発見に基づく。
【0007】
このようにして、本発明は、フィロウイルス抗原をコード(コード化)する核酸を含む分離した組換えアデノウイルスベクターを提供し、そこではアデノウイルスベクターには、アデノウイルス26カプシド(キャプシド)タンパク質が含まれる(例として、rAd26ベクター)か、またはアデノウイルス35カプシドタンパク質が含まれる(例として、rAd35ベクター)。アデノウイルスベクターは典型的に複製欠損(replication-defective)である。
【0008】
フィロウイルス抗原タンパク質は、通常、エボラウイルスまたはマールブルグウイルスからの糖タンパク質である。エボラウイルスは、任意の種、たとえば、ザイールまたはスーダン/グル(Gulu)種であることができる。適切なフィロウイルス抗原をコードする模範的な核酸は、配列番号1および配列番号2に示される。
【0009】
本発明は、また、本発明の組換えアデノウイルスベクターをコードする分離した核酸分子を提供する。核酸は、典型的に、フィロウイルス抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に操作可能に連結されたCMVプロモーターが含まれる発現カセットを含む。フィロウイルス抗原性タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号1または配列番号2であってよい。
【0010】
本発明は、さらに、本発明の分離されたアデノウイルスベクターを含む免疫原性組成物を提供する。免疫原性組成物は、さらに、アジュバントを含むことができる。
【0011】
受動体(ペイシェント)においてフィロウイルス抗原に対して免疫反応を誘発する方法もまた提供される。これらの方法には、本発明のアデノウイルスベクターの免疫学的に効果的な量を患者に対して施すことが含まれる。通常、アデノウイルスベクターは筋肉内に施される。
【0012】
若干の具体化において、ベクターは、プライミングワクチン投与(priming vaccination)、次いでブースティングワクチン投与(boosting vaccination)が続くように施される。たとえば、プライムはアデノウイルス26カプシドタンパク質を含むアデノウイルスベクターの投与であってよく、そしてブーストはアデノウイルス35カプシドタンパク質を含むアデノウイルスベクターの投与であってよい。
【0013】
定義
【0014】
「アデノウイルスカプシドタンパク質」は、特定のアデノウイルスの血清型および/またはトロピズム(親和性)の決定に関与するアデノウイルスのカプシド上のタンパク質に言及する(例は、Ad26またはAd35)。アデノウイルスカプシドタンパク質には、典型的に、繊維、ペントンおよび/またはヘキソン(hexon)タンパク質が含まれる。ここで用いるように、「Ad26カプシドタンパク質」または「Ad35カプシドタンパク質」は、たとえば、Ad26またはAd35のカプシドタンパク質の少なくとも一部分を含むキメラカプシドタンパク質でありうる。一定の具体化では、カプシドタンパク質は、Ad26またはAd35の全体のカプシドタンパク質である。一定の具体化において、ヘキソン、ペントンおよび繊維は、Ad26のものか、またはAd35のものである。
【0015】
ここでは、用語「アジュバント」および「免疫刺激物質」は交換可能に用い、免疫系の刺激を引き起こす一またはそれよりも多く(一つ以上)の物質として規定される。このような関係においては、アジュバントは本発明のアデノウイルスベクターに対する免疫反応を高めるために用いられる。
【0016】
用語「に対応する」は、配列中のアミノ酸残基の位置に適用するとき、複数の配列においてそれらの配列が最適に配列比較されるときの対応する位置を意味する。
【0017】
用語「同じ」またはパーセント「同一性」は、二またはそれよりも多く(二つ以上)の核酸またはポリペプチド配列との関連、(例は、本発明でのアデノウイルスカプシドタンパク質およびそれらをコードするポリヌクレオチド)で、二つ以上の配列またはサブシーケンス(部分配列)に言及し、それらは、同じであるか、または最大の対応について比較および配列比較するとき、次に続く配列比較アルゴリズムの一つを用いて、または外観(目視)検査によって測定されるように、同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドの指定した割合を有する。
【0018】
「分離された」核酸分子またはアデノウイルスベクターは、その自然環境から取り出された核酸分子(例は、DNAまたはRNA)またはウイルスである。たとえば、ベクターに含まれる組換えDNA分子は、本発明の目的のために単離されたと考えられる。分離されたDNA分子のさらなる例には、異種宿主細胞において維持される組換えDNA分子または溶液において(部分的にまたは十分に)精製されたDNA分子が含まれる。分離されたRNA分子には、本発明のDNA分子の、インビボでの、またはインビトロでのRNA転写物が含まれる。本発明に従う分離された核酸分子には、さらに、合成により生成されるそのような分子が含まれる。
【0019】
「操作可能に連結された」は、二つ以上のDNAセグメントについて、それらがそれらの意図された目的のために協調して機能するように、互いに接合されていることを指す。たとえば、コード配列は、転写がプロモーターにおいて開始され、およびコードセグメント(または複数)中をターミネーターまで進むように正しい読み枠においてプロモーターに操作可能に連結される。
【0020】
「ポリヌクレオチド」は、典型的に5′から3′端に読まれるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーである。ポリヌクレオチドには、RNAおよびDNAが含まれ、そして自然源から分離され、インビトロで合成され、または自然および合成の分子の組合せから調製することができる。この用語が二本鎖分子に適用されるとき、それは全体の長さを示すために用いられ、そして用語「塩基対」と等価であると理解されるであろう。
【0021】
「ポリペプチド」は、自然または合成的に製造されるかどうかにかかわらず、ペプチド結合によって接合されるアミノ酸残基のポリマーである。約50個未満のアミノ酸残基のポリペプチドは、普通に「オリゴペプチド」と称される。
【0022】
用語「プロモーター」は、ここでは、RNAポリメラーゼの結合および操作可能に連結されたコード配列の転写の開始が提供されるDNA配列を含む遺伝子の一部分を表わすために、その技術分野で認識される意味として用いる。プロモーター配列は、典型的には、遺伝子の5′非コード領域において見出される。
【0023】
「タンパク質」は一つ以上のポリペプチド鎖を含む高分子である。また、タンパク質は、炭水化物(糖質)基のような非ペプチド性成分を含んでもよい。糖質および他の非ペプチド性置換基は、タンパク質が産生される細胞によってタンパク質に加えられてよく、そしてそれは細胞の種類によって変化する。タンパク質は、ここでは、それらのアミノ酸骨格構造に関して規定され、糖質基のような置換基は、大抵は指定されないが、それでも存在してもよい。
【0024】
語句「実質同一」は、本発明の2つの核酸またはポリペプチド(例は、アデノウイルスカプシドタンパク質またはフィロウイルス抗原)との関連で、最大の対応について比較し、および配列比較するとき、次に続く配列比較アルゴリズムの一つを用いて測定されるように、または外観検査によって少なくとも60%、より一層好ましくは65%、さらにより一層好ましくは70%、またより一層好ましくは75%、さらにより一層好ましくは80%、および最も好ましくは90-95%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性を有する二つ以上の配列またはサブシーケンスに言及する。好適には、実質同一性は、長さが少なくとも約50残基である配列の領域にわたり、より一層好ましくは少なくとも約100残基の領域にわたって存在し、および最も好ましくは、配列は少なくとも約150残基にわたって実質同一である。最も好ましい具体化(実施形態)では、配列は、コード領域の全長にわたって実質同一である。
【0025】
配列比較のために、典型的には、1つの配列は、テスト配列を比較するために、参照配列としてはたらく。配列比較アルゴリズムを用いて、テスト配列および参照配列をコンピュータに入力するとき、サブシーケンスコーディネート(部分列座標)が指定され、そして必要に応じて、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次に、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対するテスト配列(群)の配列同一性パーセントを算出する。
【0026】
比較のための配列の最適アラインメントは、例としては、Smith & Waterman(スミス&ウォーターマン)、Adv. Appl. Math.(アドバンシーズ・イン・アプライド・マセマティックス)2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch(ニードルマン&ブンシュ)、J. Mol. Biol.(ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー)48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman(ピアソン&リップマン)、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA(プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ)85:2444(1988)の類似法のための研究によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された履行〔Wisconsin Genetics Software Package(ウィスコンシン・ジェネティックス・ソフトウェア・パッケージ)におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Genetics Computer Group(ジェネティックス・コンピューター・グループ)、575 Science(サイエンス)Dr., Madison(マディソン)、WI(ウィスコンシン州)〕によって、または外観検査〔大抵は、Current Protocols in Molecular Biology(分子生物学におけるカレント・プロトコールズ)、FM Ausubel(オーセベル)ら編、Current Protocols(カレント・プロトコールズ)、a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc.(グリーンパブリッシングアソシエイツ社とジョンワイリー&サンズ社との間の合弁事業)(1995サプレメント)(Ausubel)参照〕によって実行することができる。
【0027】
配列同一性パーセントおよび配列類似性の決定に適したアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、それらは、Altschul(アルチュール)ら、(1990)J. Mol. Biol.、215:403-410およびAltschuelら(1977)Nucleic Acids Res.(ヌクレイック・アシッズ・リサーチ)25:3389-3402のそれぞれに記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(全米バイオテクノロジー情報センター)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムには、高スコアリング配列ペア(high scoring sequence pairs、HSPs)を、クエリーシーケンス(問い合わせ配列)において、長さWの短いワードを識別することによって最初に識別することが含まれ、それらは、データベース配列において同じ長さの一ワードに合わせたときに、若干の正の値のしきい値スコアTと一致するか、またはそれを満たすかのどちらかである。Tは隣接ワードスコア閾値と称される(Altschulら、前出)。これらの初期の隣接ワードヒットは、それらを含むより一層長いHSPsを見出すために検索の開始用のシードとして機能を果たす。次に、ワードヒットは、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿って両方向に延長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメータM(マッチング残基のペアのためのリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基のためのペナルティスコア;常に<0)を用いて算出される。アミノ酸配列については、スコアリングマトリクスが累積スコアを計算するために使用される。各方向におけるワードヒットの延長は停止され、それは:累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ低下し;累積スコアがゼロまたはそれより下に進み、一つ以上の負のスコアの残基アラインメントの蓄積に起因し;または、いずれかの配列の末端に達したときである。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルト値として、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、および両方の鎖の比較を用いる。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、デフォルト値として、3のワード長(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62のスコアリングマトリクスを用いる〔Henikoff & Henikoff(ヘニコフ&ヘニコフ)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:10915(1989)を参照〕。
【0028】
配列同一性パーセントの計算に加え、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的分析を行う〔例は、Karlin(カーリン)&Altschul、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA、90:5873-5787(1993)参照〕。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率〔P(N)〕であり、それは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供する。たとえば、核酸は、参照核酸に対するテスト核酸の比較として、最小合計確率が、約0.1未満、より一層好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満であれば、参照配列と類似すると考えられる。
【0029】
本発明の2つの核酸配列またはポリペプチドが実質同一であるということのさらなる指標は、後述するように、第一の核酸によりコードされるポリペプチドが、第二の核酸によりコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性なことである。したがって、あるポリペプチドは、典型的に、たとえば、2つのペプチドが保存的置換によってだけで異なる場合、第二のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質同一であるという別の指標は、後述するように、2つの分子がストリンジェントな条件下に互いにハイブリダイズすることである。
【0030】
用語「実質類似」は、本発明でのカプシドタンパク質またはフィロウイルス抗原との関連において、あるポリペプチドが、10-20個のアミノ酸の比較ウインドウ(comparison window)上の参照配列と少なくとも90%、好適には、少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むことを示す。配列同一性のパーセンテージは、比較ウインドウ上の2つの最適に整列された配列を比較することにより決定され、そこでは、比較ウインドウにおけるポリヌクレオチド配列の一部分が、2つの配列の最適なアラインメントについて、付加または欠失(すなわちギャップ)を、参照配列(付加または欠失を含むないもの)と比較して含んでいてもよい。パーセンテージは、位置の番号を決定することによって計算され、そこでは同じ核酸塩基またはアミノ酸残基が一致した位置の番号をもたらすように、双方の配列において生じ、比較のウインドウにおける位置の総数により一致した位置の数が割られ、そしてその結果が、配列同一性のパーセンテージをもたらすように、100を掛けられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】アデノウイルス遺伝子グルーピングおよびベクター組織体。(A)アデノウイルスヘキソン配列の関係を示す系統発生上のツリー(系統樹)である。異なるサブグループAからFまで示し、そしてヒトアデノウイルス血清型26および35を強調表示する。ツリーを、Clustal X(クラスタルX)パッケージ〔Larkin(ラーキン)ら、2007〕の近隣結合法を用いて構築し、そしてPhylip Phylogeny Inference package(フィリップ・フィロジェニー・インファレンス・パッケージ)のバージョン3.68を用いて描いた。信頼値は1000回のブートストラップのパーセントとして内枝で表示する。(B)組換えAd26および組換えAd35ベクターのゲノムの図式的概観である。双方のベクターは、E1の十分な欠失を有し、そしてそれにはCMVプロモーターの制御下にEBOV糖タンパク質遺伝子を含む発現カセットが含まれる。さらに欠失を、E3領域において行い、そしてそれぞれのE4 orf6配列は、PER.C6(R)(商標)細胞のようなAd5 E1補完細胞系上でのこれらのワクチンベクターの複製を容易にするため、Ad5のE4orf6配列によって置き換えた。
図2】rAd35-GP(Ad35BSU.Ebo.GP(Z)FL.wtを使用する)ワクチン誘導した免疫反応およびEBOVチャレンジ(免疫試験)。(A)Ad5ナイーブ(Ad5未経験)(灰色バー)およびAd5免疫(黒色バー)、rAd35-GPワクチン接種されたカニクイザル・マカク(cynomolgus macaques)からのワクチン接種後3週間に得られた血しょうサンプルにおけるELISAによって定めた抗EBOV GP IgGの量。EC90抗体力価を方法において記載したように測定した。(B、C)メモリー細胞サブセットにおいてIL-2(CD4)またはTNF-α(CD8)についてICSにより列挙された抗原特異的CD4 +およびCD8 +Tリンパ球応答の出現頻度(出現率)、および週3のポストワクチンPBMCの刺激後のフローサイトメトリーによる分析。(D)rAd35-GPワクチン接種された(青色、Ad5ナイーブ;赤色、Ad5免疫)およびコントロール(黒色)のマカクにおける1000PFUのZEBOVでの感染によるチャレンジ後の血しょうAST肝酵素レベル。
図3】マカクにおける免疫反応のrAd35-GP誘導のための用量反応(Ad35BSU.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd35BSU.Ebo.GP(S/G)FLを使用する)。(A)rAd35-GPベクター(Ad35BSU.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd35BSU.Ebo.GP(S/G)FL)のそれぞれの1010または1011ウイルス粒子でのワクチン接種後3週間のマカクから得られた血しょうにおけるGP-特異的ELISA IgG抗体力価(EC90)。(B、C)図2でのようにICSによって評価された抗原特異的CD4+およびCD8+T細胞の出現頻度。灰色バー、1010ウイルス粒子rAd35-GP;黒色バー、1011ウイルス粒子rAd35-GP。(D、E)1000PFUのZEBOVでのチャレンジ後の血しょうAST肝酵素レベル。青色、rAd35-GPの1010ウイルス粒子;赤色、1011ウイルス粒子rAd35-GPおよび黒色、コントロール。
図4】カニクイザル・マカクにおける抗原特異的抗体およびTリンパ球反応を誘導するためのrAd26-GPベクターの能力(Ad26.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd26.Ebo.GP(S/G)FL.wtを使用する)。(A)ELISAのIgG抗体力価(EC90)、および(B、C)GP-特異的CD4+およびCD8+T細胞の出現頻度、(D)血しょうAST肝酵素は、2つの別々の研究において個々のカニクイザル・マカクのために示される。調査1の対象体はrAd26-GPベクター(Ad26.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd26.Ebo.GP(S/G)FL.wt)のそれぞれの1010または1011のrAd26ウイルス粒子のどちらかのワクチン投与量を受け、および調査2の対象体はrAd26-GPベクター(Ad26.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd26.Ebo.GP(S/G)FL.wt)のそれぞれの1012ウイルス粒子の投与量を受けた。
図5】rAd26-GPワクチン接種マカク(Ad26.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd26.Ebo.GP(S/G)FL.wtを使用する)のためのKaplan-Meier(カプラン・マイヤー)残存曲線である。ワクチン未接種コントロールおよびrAd26-GPをワクチン接種した動物を、図4に示すように、2つの別々のチャレンジ実験において1000PFUのZEBOVでのワクチン接種後に四週間感染させた。パネルA:黒色ラインは、ワクチン未接種の対象体を示し、および濃青色ラインは指示された用量でのAd26ワクチン接種対象体を示す。パネルB:rAd35ワクチン接種対象体(淡青色)の一つのグループは、各rAd26-GPベクター(Ad26.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd26 Ebo.GP(S/G)FL.wt)の1011ウイルス粒子の用量でのAd26による効力比較のために示される。パネルC:rAd26-GPベクター(Ad26.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd26.Ebo.GP(S/G)FL.wt)のそれぞれの1012ウイルス粒子をワクチン接種した対象体に比べた歴史的なAd5ワクチン接種マカク残存(赤色) 。
図6】rAd26-GP/rAd35-GPワクチン接種後プライムおよびブースト免疫反応の比較(Ad26.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd26.Ebo.GP(S/G)FL.wt次いでAd35BSU.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd35BSU.Ebo.GP(S/G)FLを続けて使用する)。(A)Ad5ナイーブ(灰色バー)およびAd5免疫(黒色バー)、rAd35-GPワクチン接種されたカニクイザル・マカクからのワクチン接種後3週間に得られた血しょうサンプルにおけるELISAによって定めた抗EBOV GP IgGの量。EC90抗体力価を方法において記載するように測定した。(B、C)IL-2(CD4)またはTNF-α(CD8)についてICSによってメモリー細胞サブセットに列挙された抗原特異的CD4 +およびCD8 +Tリンパ球反応の出現頻度、および週3のポストワクチンPBMCの刺激後のフローサイトメトリーによる分析。(D、E)EBOVチャレンジの結果。血しょうAST肝酵素レベル(D)、および1000PFUのZEBOV(青色、rAd26-GP/rAd35-GP;赤色、Ad5-GPおよび黒色、ワクチン未接種コントロール)での感染によるチャレンジ後にrAd26-GP/rAd35-GPワクチン接種したマカクについてのカプランマイヤー残存曲線(E)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明を行う。本発明は、少なくとも一部分で、単独接種ならびに異種プライム・ブーストの組合せによるrAd35およびrAd26ベクターがフィロウイルス感染に対する防御免疫反応を生じさせるという発見に基づく。特に、本発明は、異種プライム・ブーストの組合せ(特に、Ad26プライム次いでAd35ブーストが続くこと)が防御免疫反応を生成する際に驚くほど効果的であるという証拠を提供する。これらのプライム・ブーストの組合せの意外な効果は、本発明の時点で予測されたことはなかった。したがって、本発明は、フィロウイルス抗原を発現する組換えアデノウイルスベクター(rAd35またはrAd26)を提供する。アデノウイルスベクターはワクチンとして調剤することができ、およびフィロウイルス感染に対して、単独での、またはプライム・ブーストの組合せのいずれでも、保護免疫を誘導するために使用することができる。
【0033】
フィロウイルス抗原
【0034】
エボラウイルス、および遺伝的に関連したマールブルグウイルスは、北アメリカ、ヨーロッパ、およびアフリカで人間および霊長目の動物において致死率が高い出血熱のアウトブレイク(大流行)と関連したフィロウイルスである〔Peters(ピータース), C.J.らの:Fields Virology(フィールズ・バイロロジー)、Fields, B.N.ら編、1161-1176、Philadelphia(フィラデルフィア)、Lippincott-Raven(リッピンコット・ラブン)、1996;Peters(ピータース), C.J.ら、1994、Semin Virol(セミナーズ・イン・バイロロジー)5:147-154において〕。いくつかのサブタイプが規定されたが、これらのウイルスの遺伝子組織体は類似しており、各々が7つの線形にアレイされた遺伝子を含む。ウイルスタンパク質の間で、エンベロープ糖タンパク質は、ウイルスの侵入を媒介するRNA編集によって発生する2つの代替形態、50-70キロダルトン(kDa)の分泌されたタンパク質(sGP)および130kDaの貫膜糖タンパク質(GP)において存在する〔Peters, C.J.らのin:Fields Virology、Fields, B.N.ら編、1161-1176、Philadelphia、Lippincott-Raven、1996;Sanchez(サンチェス), A.らの1996 PNAS USA(プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ)93:3602-3607〕。他の構造遺伝子産物には、核タンパク質(NP)、マトリクスタンパク質(基質タンパク質)のVP24およびVP40、推定された非構造タンパク質のVP30およびVP35、およびウイルスポリメラーゼが含まれる(Peters, C.J.らのin:Fields Virology、Fields, B.N.ら編、1161-1176、Philadelphia、Lippincott-Raven、1996)。
【0035】
核酸分子は、任意のフィロウイルス種の構造遺伝子産物をコードしうる。エボラウイルス、ザイール〔基準種(模式種)、またここではZEBOVと称する〕、スーダン(またここではSEBOVと称する)、Reston(レストン)、Bundibugyo(ブンディブギョ)およびIvory Coast(アイボリー・コースト、象牙海岸)の5つの種がある。マールブルグウイルス(またここではMARVと称する)の一種類がある。
【0036】
本発明のベクターにおいて発現する特定の抗原は、本発明の重要な局面(態様)ではない。本発明のアデノウイルスベクターは、フィロウイルス抗原の多種多様な抗原決定基を含むタンパク質を発現するために使用することができる。典型的かつ好ましい実施形態では、本発明のベクターには、ウイルス糖タンパク質(GP)の貫膜形態をコードする核酸が含まれる。他の実施形態では、本発明のベクターは、ウイルス糖タンパク質(SGP)、またはウイルス核タンパク質(NP)の分泌形態をコードしうる。
【0037】
熟練者は、フィロウイルス抗原タンパク質をコードする核酸分子を修飾しうること、例は、ここに記載の核酸分子が、修飾発現されたタンパク質が病原体または病気に対する免疫反応を引き出す限りにおいて、変異されうることを認識するであろう。したがって、ここで用いるように、用語「フィロウイルス抗原タンパク質」は、上述したフィロウイルスタンパク質の少なくとも一つの抗原決定基を含むタンパク質に言及する。この用語には、フィロウイルス抗原(すなわち、フィロウイルスの遺伝子産物)、ならびに1以上のフィロウイルスの抗原決定基を含む組換えタンパク質を包含する。
【0038】
いくつかの実施形態では、タンパク質は、それが細胞への毒性が低いように変異することもできる(例は、国際公開第2006/037038号参照)。本発明にはまた、核酸分子の組合せを含むワクチンが含まれる。たとえば、そしてこれには限定されないが、ザイール、スーダンおよびアイボリー・コーストのエボラ株のGP、SGPおよびNPをコードする核酸分子は、一のワクチン組成物において、任意の組合せにおいて組み合わせることができる。
【0039】
アデノウイルスベクター
【0040】
上記のように、一定のアデノウイルスへの曝露は、アデノウイルスワクチンの有効性に影響をおよぼすことがある一定のアデノウイルス血清型に対する免疫応答をもたらした。本発明は、2つの珍しい血清型:Ad26およびAd35からのカプシドタンパク質を含むアデノウイルスベクターを提供する。典型的な実施形態では、ベクターはrAd26またはrAd35ウイルスである。
【0041】
このように、本発明のベクターは、Ad26またはAd35のキャプシドタンパク質〔例は、ファイバー(繊維)、ペントンまたはヘキソンタンパク質〕を含む。熟練者は、全体のAd26またはAd35のカプシドタンパク質が、本発明のベクターにおいて使用される必要のないことを認識するであろう。したがって、Ad26またはAd35のカプシドタンパク質の少なくとも一部を含むキメラカプシドタンパク質は、本発明のベクターにおいて使用することができる。また、本発明のベクターには、カプシドタンパク質を含むことができ、そこでは、そのファイバー、ペントン、およびヘキソンタンパク質は、少なくとも一つのカプシドタンパク質がAd26またはAd35から由来する限り、異なる血清型にそれぞれ由来する。好ましい実施形態では、ファイバー、ペントンおよびヘキソンタンパク質はAd26から、またはAd35からそれぞれ由来する。
【0042】
熟練者は、複数の血清型から由来する要素を、単一の組換えアデノウイルスベクターにおいて組み合わせることができることを認識するであろう。したがって、異なる血清型からの望ましい特性を組み合わせたキメラアデノウイルスを生産することができる。このようにして、いくつかの実施形態において、本発明のキメラアデノウイルスは、温度安定性、アセンブリー(組立)、アンカリング(固着)、生産収率、リダイレクトされた(向け直された)か、またあ改良された感染、標的細胞でのDNAの安定性などのような特徴を有するAd26およびAd35の血清型の既存の免疫の不存在を組み合わせることができた。
【0043】
一定の実施形態において、本発明の組換えアデノウイルスベクターは、主としてか、または完全に、Ad35からか、またはAd26から由来する(つまり、ベクターはrAd35またはrAd26である)。若干の実施形態では、アデノウイルスは複製欠損であり、例は、それがゲノムのE1領域において欠失を含むからである。本発明のアデノウイルスで、Ad26またはAd35に由来するもののために、Ad5のような、ヒトサブグループCのアデノウイルスのE4-orf6を有するアデノウイルスのE4-orf6コード配列を交換することが一般的である。このことは、Ad5のE1遺伝子を発現するよく知られた補完細胞系、たとえば、293細胞、PER.C6細胞、その他のようなものにおいて、そのようなアデノウイルスの繁殖を可能にする〔例は、Havenga (ハベンガ)ら、2006、J Gen Virol、87:2135-43;WO 03/104467)参照〕。一定の実施形態では、アデノウイルスは血清型35のヒトアデノウイルスであり、そのアデノウイルスは抗原をコードする核酸がその中にクローニングされているE1領域において欠失を有し、かつ、Ad5のE4 orf6領域を有する。一定の実施形態では、アデノウイルスは血清型26のヒトアデノウイルスであり、そのアデノウイルスは抗原をコードする核酸がその中にれにクローニングされているE1領域における欠失を有し、かつ、Ad5のE4 orf6領域を有する。Ad35アデノウイルスのためには、アデノウイルスにおいてE1B 55K読み枠の3′末端、例としては、pIX読み枠から直接上流の166塩基対、またはこれを含む、pIX開始コドンの直接上流の243 bpフラグメント(断片)、およびBsu36I制限部位による5′末端にマークされたようなフラグメントを保持することが典型的であり、それは、これがアデノウイルスの安定性を高め、なぜならpIX遺伝子のプロモーターがこのエリアに部分的に備わっているからである(例は、Havengaら、2006、上記;WO 2004/001032参照)。
【0044】
組換えアデノウイルスベクターの調製はこの技術においてよく知られている。rAd26ベクターの調製は、たとえば、WO2007/104792において、およびAbbink(アビンク)ら(2007)Virol(ジャーナル・オブ・バイロロジー)81(9):4654-63において記載されている。Ad26の模範的なゲノム配列は、GenBank(ジェンバンク)アクセッション(受入番号)EF 153474に、およびWO2007/104792での配列番号1に見出せる。rAd35ベクターの調製は、たとえば、米国特許第7270811号明細書およびVogelsら(2003)J Virol、77(15):8263-71において記載されている。Ad35の模範的ゲノム配列はジェンバンクアクセッションAC_000019において見出される。
【0045】
典型的には、本発明のベクターは、全体の組換えアデノウイルスゲノムが含まれる核酸を用いて生産される(例は、プラスミド、コスミド、またはバキュロウイルスベクター)。したがって、本発明はまた、本発明のアデノウイルスベクターをコードする分離された核酸分子を提供する。本発明の核酸分子は、RNAの形態において、またはクローニングによって得られたか、または合成的に生産されたDNAの形態でありうる。DNAは二本鎖または一本鎖であってよい。
【0046】
本発明のアデノウイルスベクターは、典型的に、複製欠損である。これらの実施形態では、ウイルスは、E1領域のような、ウイルスの複製に重要な領域の欠失または不活性化によって複製欠損にされる。これらの領域は、実質的に、たとえば、目的の遺伝子を挿入する(通常、プロモーターに連結される)などして、欠失または不活化することができる。若干の実施形態では、本発明のベクターは、E2、E3またはE4領域またはプロモーターに連結された異種遺伝子の挿入などのような、他の領域における欠失を含んでいてもよい。E2-および/またはE4変異アデノウイルスのために、大抵は、E2-および/またはE4-補完細胞系が、組換えアデノウイルスを生成するために使用される。アデノウイルスのE3領域での変異は、E3が複製のために必要とされないので、その細胞系によって補完される必要はない。
【0047】
パッケージング細胞系は、典型的には、本発明のアデノウイルスベクターの十分な量を生産するために使用される。パッケージング細胞は、複製欠損ベクターにおいて欠失または不活化されたそのような遺伝子を含む細胞であり、このようにして、ウイルスが細胞内で複製することができる。好適な細胞系には、たとえば、PER.C6、911、293、およびE1 A549が含まれる。
【0048】
上述したように、多種多様なフィロウイルス抗原タンパク質は、本発明のベクターにおいて発現させることができる。必要に応じて、フィロウイルス抗原タンパク質をコードする異種遺伝子が、処置された宿主(例は、人間)における適切な発現を確実にするために、コドン最適化をすることができる。コドン最適化は、この技術分野で広く適用されている技術である。典型的には、異種遺伝子はアデノウイルスゲノムのE1および/またはE3領域中にクローニングされる。
【0049】
異種フィロウイルス遺伝子は、アデノウイルス由来プロモーター〔例は、Major Late Promoter(メジャー後期プロモーター)の制御の下にあって(すなわち、操作可能に連結されて)よく、または異種プロモーターの制御の下にあってもよい。好適な異種プロモーターの例には、CMVプロモーターおよびRSVプロモーターが含まれる。好ましくは、プロモーターは発現カセット内で興味ある異種遺伝子の上流に位置する。
【0050】
上述したように、本発明のアデノウイルスベクターは、この技術での熟練者に知られた多種多様のフィロウイルス抗原を含むことができる。表1には、本発明の模範的ベクターの概要を提供する。
【0051】
【表1】
【0052】
免疫原性組成物
【0053】
本発明の精製されたか、または部分的に精製されたアデノウイルスベクターは、この技術においてよく知られた方法に従ってワクチン(また「免疫原性組成物」とも称される)として調剤することができる。このような組成物には、免疫反応を高めるためにアジュバントが含まれうる。調剤物において各成分の最適な比率は、この技術で熟練した者によく知られた技術によって決定することができる。
【0054】
免疫原性組成物の調製および使用は、この技術の熟練者によく知られている。液剤組成物には、大抵は、たとえば、水、石油、動物または植物の油、鉱油または合成油などのような液状キャリヤ(液状担体)が含まれる。生理的塩類溶液、デキストロース(ブドウ糖)または他の糖類溶液、またはエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのようなグリコールが含まれていてもよい。
【0055】
組成物は単一の投与または一連の投与のために適する。一連のシリーズとして与えられるとき、初期(プライミング)投与後の接種は、免疫応答をブーストする(高める)ために与えられ、そして典型的にブースター接種と称される。本発明の組成物は、任意の多様な異なるプライミング組成物を用い、抗原によってプライミングされたブースティング組成物として、またはプライミング組成物として使用することができる。このようにして、本発明の一態様は、個体における抗原に対する免疫応答をプライミングおよび/またはブースティングする方法を提供する。たとえば、若干の好適実施形態では、本発明の一つのアデノウイルスベクター(例は、rAd26)のプライミング投与には、第2のアデノウイルスベクターのブースター接種(例は、rAd35)が続く。
【0056】
ブースティング組成物の投与のタイミングは、この技術での熟練者の十分に対応できる範囲内である。ブースティング組成物は、プライミング組成物の投与後に、大抵は数週間または数ヶ月投与され、たとえば、約2-3週間または4週間、または8週間、16週間、または20週間、または24週間、または28週間、または32週間または1乃至2年である。
【0057】
本発明の組成物は他のフィロウイルス抗原を含むことができ、またはプライミングまたはブースティング接種は他の抗原を含みうる。本発明のアデノウイルスベクターと組み合わせて使用される他の抗原は、本発明にとって絶対的でないが、また、たとえば、フィロウイルス抗原、それらを発現する核酸、ウイルス様粒子(VLPs)、または先行技術ウイルスベクターであってよい。そのようなウイルスベクターには、たとえば、他のアデノウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、鶏痘またはカナリアポックスなどのようなアビポックスベクター、ヘルペスウイルスベクター、水疱性口内炎ウイルスベクター、またはアルファウイルスベクターが含まれる。熟練者は、本発明の免疫原性組成物が複数の抗原およびベクターを含みうることを認識するであろう。
【0058】
それぞれのプライミングおよびブースティング組成物における抗原(ただし、多く採用されるのはブースティング組成物)は、同一である必要はないが、抗原決定基を共有すべきである。
【0059】
上述したように、本発明の免疫原性組成物はアジュバントを含んでもよい。本発明に係る同時投与に適したアジュバントは、QS-21、Detox(デトックス)-PC、MPL-SE、MoGM-CSF、TiterMax(タイターマックス)-G、CRL-1005、GERBU、TERamide(テラミド)、PSC97B、Adjumer(アジュマー)、PG-026、GSK-I、GcMAF、B-alethine(アレザイン)、MPC-026、Adjuvax(アジュバックス)、CpG ODN、Betafectin(ベータフェクティン)、Alum(ミョウバン)、およびMF59が含まれ、人々にいおて潜在的に安全で、耐容性および効果的であるものでなければならない。
【0060】
投与されうる他のアジュバントには、レクチン、増殖因子、サイトカインおよびリンホカインで、たとえば、アルファ-インターフェロン、ガンマーインターフェロン、血小板由来増殖因子(PDGF)、顆粒球コロニー刺激因子(gCSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(gMCSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、上皮増殖因子(EGF)、IL-I、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-IO、およびIL-12または従って核酸をコードするものが含まれる。
【0061】
上述したように、本発明の組成物は、この技術において熟練者によく知られた薬学的に許容可能な賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤または他の材料を含んでもよい。このような材料は、非毒性であるべきで、しかも、活性成分の有効性を妨害してはならない。担体または他の物質の正確な性質は、投与の経路、例は、経口、静脈内、皮膚または皮下、粘膜内(例は、腸)、鼻腔内、筋肉内、または腹腔内の経路に依存しうる。投与(Adiminstration)は典型的に筋肉内である。
【0062】
免疫原性組成物の筋肉内投与は、アデノウイルスベクターの懸濁物を注入するためにニードルを使用することによって達することができる。別の方法としては、組成物〔例は、Biojector(TM、商品名)(バイオジェクター)を使用し)を投与するために、ニードルレス(needless、不必要な)注射器具、またはワクチンを含有する凍結乾燥粉体の使用がある。
【0063】
静脈内、皮膚または皮下注射、または罹患の部位での注射のためには、アデノウイルスベクターは、パイロジェンフリー(発熱物質を含有しないもの)であり、そして適切なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容可能な水溶液の形態である。この技術での熟練者は、たとえば、Sodium Chloride Injection(塩化ナトリウム注射液)、Ringer's Injection(リンゲル注射液)、Lactated Ringer's Injection(乳酸リンゲル注射液)のような等張ビヒクルを用いて適切な溶液をうまく調製することができる。必要に応じて、保存剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または他の添加剤が含まれうる。徐放性製剤をもまた、採用してもよい。
【0064】
典型的に、投与は、感染または症状の発現前に、フィロウイルス抗原に対する免疫反応を生じさせるために、予防的目的を有する。本発明に従って処置または防止することができる疾患および障害には、免疫反応が保護的または治療的な役割を果たしうるものが含まれる。他の実施形態では、アデノウイルスベクターは、ポスト曝露予防薬のために投与することができる。
【0065】
アデノウイルスベクターを含む免疫原性組成物は、対象に投与され、対象において抗フィロウイルス免疫反応を生じさせる。検出可能な免疫応答を誘導するのに十分な組成物の量は、「免疫学的に有効な用量」であると規定される。以下に示すように、本発明の免疫原性組成物は、体液性ならびに細胞媒介性免疫応答を誘導する。典型的な実施形態において、免疫反応は防御免疫応答である。
【0066】
投与される実際の量、および投与の速度および時間経過は、処置されるものの性質および重症度しだいである。処置の処方は、例は、投与量等の決定は、一般開業医および他の医師、または獣医学との関連で獣医の責任の範囲内であり、そして典型的には、処置すべき疾患、個々の受動体(患者)の状態、受渡しの部位、投与の方法および開業者に知られる他の要因を考慮する。上述の技術およびプロトコルの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences(レミントンのファーマシューティカル・サイエンス)、第16版、Osol(オソル), A.編、1980年に見出すことができる。
【0067】
アデノウイルスベクターおよびこのような粒子の随意の製剤の組成物中への生産に続いて、アデノウイルスベクターは、個体、特に、ヒトまたは他の霊長類に対して投与されうる。投与は、ヒト、または他の哺乳動物、例は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ラビット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ウシ、ロバ、サル、イヌまたはネコであってよい。非ヒト哺乳動物への受渡しは治療目的のためである必要はないが、実験的な関連で、例として、アデノウイルスベクターに対する免疫応答のメカニズムの研究での使用のためのものでありうる。
【0068】
一例の模範的レジメン(模範的養生法)では、アデノウイルスベクターは、104から1012までのウイルス粒子/mlの濃度を含む塩類溶液の約100μlから約10mlまでの範囲内で投与される(例は、筋肉内)。典型的には、アデノウイルスベクターは、一投与中に、ヒト被験体に、約109から約1012までのウイルス粒子(vp、viral particles)、より一層典型的には約1010から約1012vpまでの量で投与される。初期のワクチン接種は、上述のようにブーストによって続けることができる。組成物は、所望であれば、キット、パックまたはディスペンサーに存在してよく、それは活性成分が含まれる1つ以上の単位剤形を含んでいてもよい。キットは、たとえば、ブリスターパックなどの、金属またはプラスチックホイルを伴うことができる。キット、パック、またはディスペンサーには、投与のための説明書が添付されてもよい。
【0069】
本発明の組成物は、同時に、または連続して、処置すべき状態に依存して、単独でか、または他の処置との組合せのいずれかでも投与することができる。
【実施例】
【0070】
例を説明する。次の例は、請求する発明を例示するためのものであるものの、それを制限せずに提供する。
【0071】
シングル・ショット(単発、single-shot)またはプライム・ブーストの免疫化のどちらかとも関連する異なった利点があり、それは免疫レジメンを最適化するとき、即時型免疫対長期免疫のための必要性に依存し、考慮されなければならない。EBOVおよび他のフィロウイルスのアウトブレイクは、突然に起き、そして迅速に個体群間で広まり、そこでは、医療設備が不足する傾向がある。このようにして、これらの状況下では、ショートワクチンのレジメンは望ましいことがある。この理由から、EBOV糖タンパク質(GP)および核タンパク質(NP)遺伝子を含むrAd5ベクターによるシングル・ショットワクチン接種が、非ヒト霊長類において開発された(Sullivanら、2006)。そのようなワクチンは、おそらく挿入物の高い発現レベルおよび樹枝状細胞についてのAd5のトロピズムのために、1ヵ月以内に強い免疫反応を誘発することが示された(Sullivanら、2003)。他方、長期の保護免疫は、おそらく、耐久性T細胞メモリーを誘導することができる二つ以上の投与が含まれるプライム・ブーストワクチンのレジメンを必要とする。したがって、本発明者らは、rAd35およびrAd26ベクターを用いる単独接種およびプライム・ブーストの組合せの双方についての免疫原性および有効性を試験するために、一連の実験を設計し、そして、これらの研究の結果をここに提示する。
【0072】
材料および方法
【0073】
産生rAdエボラワクチン。EBOVのGPsを発現する低い血清流行型(Low seroprevalent)E1/E3欠失rAd26およびrAd35ワクチンベクターを構築し、増殖させ、そして前述したように精製した(Abbinkら、2007)。EBOV GPを発現しないAd5のベクターを構築し、増殖させ、そして同様の方法によって精製し、それぞれの実験で指示したように選定された動物においてAd5に対する免疫を誘導するために用いた。ザイール(配列番号1)およびスーダン/グル(配列番号2)の種の読み枠にわたるEBOV GP挿入物を、ヒトCMVプロモーターおよびSV-40ポリアデニル化配列の転写制御下に、左ITRおよびパッケージングシグナルを含め、Adゲノムの左側部分を含むプラスミド中にクローニングした。残りのAd配列(E3-欠失されたもの)を含むコスミドによるこのプラスミドのPER.C6(R)細胞へのコトランスフェクション(同時形質移入)は、E1/E3欠失した複製欠損組換えAd26またはAd35のワクチンベクターを産生した。PER.C6(R)細胞上でのrAd26およびrAd35ベクターの複製を容易にするために、ネイティブ(自然な)E4 orf6領域を、Ad5 E4orf6配列によって置換えた(Havengaら、2006)。そのrAdウイルスを、プラーク精製し、そしてそれぞれの1つのプラークを、およそ2.4Lの生産規模まで拡大した。2つのステップの塩化セシウム勾配超遠心分離法を、rAd EBOVベクターを精製するために使用した。精製rAd EBOVワクチンを単独使用のアリコートとして-65℃未満で貯蔵した。ウイルス粒子の力価を260nmでの光学密度を測定して定めた〔Maizel(メンゼル)ら、1968、Virology(バイロロジー)36(1):115-25〕。感染性は911細胞を用いたTCID50により評価した〔Fallaux(ファラオー)ら、(1996)Hum Gene Ther(ヒューマン・ジーン・セラピー)7(2):215-22〕。アデノウイルス媒介EBOV GPの発現はA549細胞の感染に次いでウエスタンブロット上で培養溶解物の分析を続けることにより評価した。精製したベクターの同一性はPCRによって確認し、そしてフランキング配列を含めて、完全な導入遺伝子領域をDNAシークエンシングを用いてチェックした。
【0074】
系統発生解析。系統発生上のツリーは、完全長アデノウイルスヘキソンアミノ酸配列を用いて構築した。アミノ酸配列はクラスタルXプログラムを使用して配列決定し〔Larkinら、(2007)Bioinformatics、23(21):2947-8〕、そしてツリーを、Clustal X Neighbour-Joining method(クラスタルX近隣結合法)を使用して組み立て、そしてツリーは1000回ブートストラップされた。ツリーはフィリップ・フィロジェニー・インファレンス・パッケージ(Phylip Phylogeny Inference package)のバージョン3.68からのDrawtree programme(ドローツリー・プログラム)を使用して視覚化し、そしてプロットした。
【0075】
動物チャレンジ調査および安全性。動物実験は、関連するすべての連邦政府のガイドラインおよびNIHポリシーに十分に準拠して実施した。カニクイザル・マカク〔Macaca fascicularis(マカカ・ファシクラリス)〕は、齢3-5年および重さ2-3kgの間のものを、すべての研究のためにCovance(コバンス)から入手した。サルは個別に収容し、そして定期的にthe Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(実験動物のケアおよび使用のためのガイド)(DHEW番号NIH 86-23)が推奨するように、濃縮物(enrichment)を与えた。動物を、採血またはワクチン接種前にケタミンで麻酔した。本研究において各ワクチン群は3つのカニクイザル・マカクを含み、そして各コントロール群は単一のカニクイザル・マカクを含む。四週間のポストEBOVワクチン接種で、動物を、尾側の大腿部への筋肉内経路によって送達されるザイールEBOVの1,000 PFUの標的投与量での感染のために最大封じ込め研究所(Maximum Containment Laboratory)(BSL-4)に移した。ZEBOVチャレンジストック(保存株)を、以前のザイールでの1995年のアウトブレイクにおけるヒト死者から調製した。動物は調査が完了するまでそこに残した。BSL-4施設にいる間、サルは最低でも一日一回、給餌され、そしてチェックされた。
【0076】
USAMRIID(アメリカ軍伝染病研究機関)でのBSL-4の生命に有害な物質の封じ込めで行われた動物調査は、USAMRIIDの施設内動物のケアおよび使用のための委員会(USAMRIID Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認された。動物研究は、アメリカ動物保護法(Animal Welfare Act)および他のアメリカ連邦法規(Federal statutes)、および動物および動物を伴う実験に関連し(relating to animals and experiments involving animals)、および実験動物のケアおよび使用に関する指針、アメリカ研究評議会(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals, National Research Council)、1996年に記載された原則に支持される規則(regulations)を遵守して実行した。使用した施設は実験動物ケアインターナショナルの評価および認定のための協会によって十分に認定されている。
【0077】
動物の免疫化。対象は各実験において指示された用量およびベクターを用いてニードルおよびシリンジによって両側の三角筋に筋肉内接種を受けた。選定した動物は、各実験で示されたように、Ad5の免疫を誘導するために、エンプティー(空)のAd5ベクターの1011PFUでプレ(予備)免疫化した。Ad5のELISA抗体力価は、EBOVワクチン接種前に、これらの動物において確立された。
【0078】
アンチEBOV GP IgG LISA。ポリ塩化ビニルELISAプレート〔Dynatech(ダイナテック)、Vienna(ウィーン)、VA(ヴァージニア州)、またはNunc(ヌンク)、Rochester(ロチェスター)、NY(ニューヨーク州)を、ウェルあたり100μlの抗原によってコーティング(被覆)し、そして4℃で一晩中インキュベートした。その後のインキュベーションは室温で行った。293T細胞のリン酸カルシウム媒介一過性トランスフェクションによって生成した貫膜欠失EBOV GP(EBOV GPΔTM)は抗原として役立った。プレートを抗原コーティングした後、PBS含有Tween(ツイーン)20を用いて6回洗浄した。試験血清は1:50から1:50,000に至るまでの7つの濃度に連続的に希釈し、そして60分間抗原でコーティングされたウェルに添加した。プレートを、6回洗浄し、次いで検出抗体、ホースラディッシュペルオキシドに結合したヤギ抗ヒトIgG〔H+L;Chemicon(ケミコン)/Millipore(ミリポア社)、Billerica(ビレリカ)、MA(マサチューセッツ州)〕とのインキュベーションを続けた。Sigma Fast o-Phenylenediamine Dihydrochloride(シグマファストo-フェニレンジアミン二塩酸塩)〔Sigma(シグマ社)、St. Louis(セントルイス)、MO(ミズーリ州)〕基質をウェルに添加し、そして光学密度を測定した(450 nm)。各動物についてのワクチン接種前血清サンプル(試料)を、アッセイを行うたびごとにテストを行った。既知ザイールEBOV GP IgG応答を有する単一動物からの陽性コントロール血清サンプルは、アッセイを行うたびごとにテストを行った。バックグラウンド減算ELISA力価は、EC90、逆数光学密度値として表わされ、それは、抗原結合において90%減少が存在する希釈を表す。
【0079】
細胞内サイトカイン染色。カニクイザル・マカクからの全血サンプルを、末梢血単核細胞(PBMC)を単離するためにFicoll(フィコール)上での密度勾配遠心分離にかけた。およそ1×106細胞を、37℃で6時間、10%熱不活性化ウシ胎仔血清を含む100μlのRPMI培地において、抗CD28(クローンCD28.2)および-CD49d(クローンL25)抗体〔BD Biosciences(BDバイオサイエンシーズ社)〕、Brefeldin(ブレフェルジン)-A〔Sigma-Aldrich(シグマ・アルドリッチ社)、St. Louis、MO〕、およびDMSOまたは全体のザイールEBOV GP読み枠にわたるペプチドのプールのいずれかで刺激した。ペプチドは、新鮮な無菌のDMSOにおいて、各ペプチドについて2.5μg/mlの終濃度で再構成した11個のアミノ酸によって重複した15量体であった。各サンプルについて、同等のアリコートを陽性コントロールとしてSEBで刺激した。6時間の刺激後、PBMCを、系統マーカー(lineage markers)(CD3-Cy7-APC、クローンSP34-2(BD Biosciences)、CD4-QD605クローンM-T477(BD Biosciences)、CD8-TRPEクローンRPA-T8、CD95 Cy5-PE、クローンDX2(BD Biosciences)、CD45RA QD655、クローン5H3に対する抗体の混合物を用いて20分間室温で染色した。CD45RA QD655およびCD8-TRPE抗体を、前述したように標準化されたプロトコルに従って共役させた〔Koupら、2010 Priming Immunization with DNA Augments Immunogenicity of Recombinant Adenoviral Vectors for Both HIV-1 Specific Antibody and T-Cell Responses.(HIV-1特異的抗体およびT細胞応答の双方のための組換えアデノウイルスベクターのDNA増強免疫原性によるプライミング免疫化)。PLoS One 5(2):e9015.doi(ドイ):10.1371/journal.pone.(ジャーナル・ポン)0009015〕。2回洗浄した後、細胞を固定し、そしてCytofix(サイトフィックス)/Cytoperm(サイトパーマ)(BD Biosciences)で透過性にし、次いでサイトカインTNFα-APCに対する抗体、クローンMAb11(BD Biosciences)、およびIL-2 PE、クローンMQ17H12(BD Biosciences)を用いて染色を続けた。残存判別染料(viability dye)ViViD(ビビッド)(Invitrogen)は生細胞と死細胞との間の区別を可能にするために含ませた〔Perfetto(パーフェト)ら、(2006)J Immunol Methods(ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッズ)313(1-2):199-208〕。サンプルは、LSR IIサイトメーター(血球計算機)(BD Biosciences)にて取得し、最大で1,000,000の事象まで収集し、そしてFlowJo(フロージョ)9.1およびSPICE(スパイス)5.0ソフトウェア〔Tree Star(ツリースター)〕を用いて分析した。サイトカイン陽性細胞はCD4+およびCD8+T細胞メモリーサブセット内の割合として規定した。メモリーサブセットはCD45RA±/CD95+またはCD28±/CD95+として規定した。後者の場合、CD28 Alexa(アレクサ)488〔クローン28.2、BioLegend(バイオレジェンド)〕は、非共役CD28 mAbの代わりに刺激のために用いた。
【0080】
血清生化学。チャレンジ研究のために、血液を0、3、6、10、14および28日目のポストザイールEBOV感染でNHPから収集した。総白血球数、白血球差(white blood cell differentials)、赤血球数、血小板数、ヘマトクリット値、総ヘモグロビン、平均細胞容量、平均血球容量、および平均血球ヘモグロビン濃度は、EDTAを含むチューブに採取した血液サンプルから、レーザーベースの血液学的分析機(laser-based hematologic Analyzer)〔Coulter Electronics(クールターエレクトロニクス)、Hialeah(ハイアレア)、FL(フロリダ州)、USA(米国)〕を使用することによって決定された。血清サンプルは、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の濃度について、Piccolo Point-Of-Care Blood Analyzer(ピッコロポイントオブケア血液アナライザー)〔Abaxis(アバクシス)、Sunnyvale(サニーベール)、CA(カリフォルニア州)、USA〕を用いて試験した。
【0081】
EBOVの検出。ウイルス滴定をVero(ベロー)細胞上でのプラークアッセイにより行った。簡単には、血しょうサンプルの10倍増加希釈物を、複製ウェルにおいてベロー単層に対して吸着させ(ウェルあたり0.2ml);このようにすることで、検出の制限は25pfu/mlであった。
【0082】
統計。抗GP ELISA IgG力価、およびT細胞のメモリーサブセットによる細胞内サイトカイン産生の比較を、GraphPad Prism(グラフパッドプリズム)ソフトウェアにおける両側T検定を用いて行った。
【0083】
結果
【0084】
アデノウイルス系統およびベクター構築。EBOVについてのrAd5遺伝子ワクチンはマカクにおいて強力な防御免疫を提供し、そしてヒトの臨床試験において安全性および免疫原性が証明された(Asmuthら;Kibuukaら;Harroら、2009;)。マカクおよびヒトにおける調査は、既存の指示免疫性のベクターがウイルス性ベクターベースのワクチンの効力を制限することがあることを示した(McCoyら、2007;Buchbinderら、2008)。血清学的陽性率データは、ヒト集団の大部分がAd5による自然感染を世界的に経験していることを示唆しているから、本発明者らは、ワクチンベクターとして使用するための他のアデノウイルス血清型を評価した(図1A)。本発明者らは、Ad35、グループBおよびAd26、グループDのアデノウイルスが、rAd5、グループCから遺伝的に分離され、それでこれらの血清型由来のワクチンベクターは霊長類でAd5の免疫力に敏感になるという仮説を立てた。Ad35およびAd26ベクターがAd5での使用とは異なる受容体を用いるが、それにもかかわらず、それらは単球由来樹状細胞の効率的な形質導入を実証し、そしてマウスでのAd5の免疫を免れる。したがって、EBOVのザイールまたはスーダン/グル種からのGPインサート(GP挿入物)は、ヒトCMVプロモーターの転写制御下に、rAd35およびrAd26ベクターのE1領域中にクローニングされた(図1B)。双方のベクターゲノムは、それらを複製欠損にし、そしてワクチン接種した対象における組換えのための可能性を低減させるために、E1遺伝子において欠失されている。
【0085】
マカクにおけるrAd35ワクチン接種および免疫応答の誘導。rAd35ベクターの能力を試験し、Ad5ナイーブマカクにおける免疫応答を誘導するために、およびまたAd5に対する既存の免疫の関連内でのベクター能力を評価するために、初期の調査は、ザイールエボラウイルス(ZEBOV)、GP(Z)からのGPをコードする単一のEBOV種ワクチンを用いて行った。六匹のカニクイザル・マカク、三匹のAd5ナイーブおよび三匹のAd5免疫を、各々針注入によってrAd35-GP(Z)(Ad35BSU.Ebo.GP(Z)FL.wt)の1010粒子により筋肉内にワクチン接種した。三週間のポストワクチン接種では、抗原特異的抗体およびT細胞応答を、個々の対象から得た末梢血サンプルで評価した。ELISAによって評価したEBOV-GP(Z)に対する抗体は、すべての対象において誘導され、rAd35-GP(Z)ベクターが標的細胞のインビボ形質導入および効率的な抗原提示を好首尾に媒介することを示した(図2A)。AD5ナイーブおよびAd5免疫の対象は、およそ1:700から1:3000までにおよぶ血清抗体価を生成した。これらの抗体レベルは、GP(Z)インサートを含むAd5ベースのワクチンについて観察され、そしてこのマカクAdワクチンモデルにおいてEBOV感染に対する免疫防御と関連付けられた最小値(1:500)を超えた範囲内である(Sullivan、2009)。有意な抗体力価は、すべてのワクチンで誘導されたが、いずれの対象も、マカクにおいてAd5-GPワクチンベクターの投与後100%の保護を予測する閾値力価(約1:3500)を超えない。しかしながら、Ad5ナイーブ対Ad免疫の対象における抗体力価の比較において、これらのグループのうち誘発された平均力価において有意差がなかったことを示した(それぞれ1:1600対1:1800)ことは注目すべきであり、rAd35ベクターが、Ad5に対し以前さらされた対象において有効なワクチンであることを示唆した。
【0086】
細胞性免疫応答は、EBOV GP(Z)読み枠にわたる重複ペプチドでの対象PBMCの刺激後、TNF-α(CD8+)またはIL-2(CD4+)のいずれかについて細胞内サイトカイン染色(ICS)により評価した。CD45RAおよびCD95を用いるリンパ球の表面染色は、CD4+およびCD8+T細胞(図2 B-C)のメモリーサブポピュレーション(メモリー部分母集団)における抗原特異的免疫応答を評価するために実行した。抗体反応について観察されたように、rAd35ベクターによりワクチン接種されたマカクはEBOV-GPに対する細胞性免疫を生成し、そして抗原特異的T細胞の出現頻度はAd5免疫状態によって影響を受けなかった。対象の全体にわたって双方のCD4+およびCD8+リンパ球における細胞応答の順位の重要性(大きさ)は、抗体反応に類似していたが、ある対象V3についての抗原特異的T細胞の出現頻度は検出可能なレベルよりも低かった。マカクにおける以前の調査では、rAd5ベースのワクチンベクターは、CD4+応答より優位であるCD8+T細胞の出現頻度を誘導することが示された。本調査では、rAd35ワクチン接種した対象体は、同様の出現頻度でGP-特異的CD4+およびCD8+リンパ球を生成した。しかしながら、対象体の比較的少数を試験した場合、差異が、存在しても、明らかにできない可能性がある。全体的に見て、これらの結果は、rAd35-GPがカニクイザル・マカクにおいて免疫原性であること、および抗原特異的体液性および細胞性免疫応答の誘導についてのベクター能力がAd5に対する既存の免疫性を有する対象体において低減されないことを示す。
【0087】
rAd35ワクチン接種したマカクのZEBOVでのチャレンジ。次に、本発明者らは、rAd35-GPでのワクチン接種がZEBOVの高用量での感染によるチャレンジに対する保護を提供するかどうかを試験した。上記免疫応答の査定後一週間に、六匹のrAd35-GPをワクチン接種したカニクイザル・マカクおよび一匹のナイーブのカニクイザル・マカクを、ZEBOVの1995 Kikwi(キクウィト)株の1000PFUに対し筋肉内注入により曝した。肝酵素を、感染によるチャレンジ後定期的に測定し、それはこれらのマーカーにおける上昇はマカクでの増殖性(productive)EBOV感染の特徴だからである。アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の循環レベルを、日10-14を通して(図2D)、およびその後28日間のフォローアップ期間(図示せず)の最後の日に、急性感染期間中に3-4日毎に評価した。血しょうASTは、すべての対象体において感染後3日を通してベースラインレベルにとどまり、感染EBOVチャレンジ直後に正常な肝機能が示された。EBOV暴露後6日目まで、ワクチン未接種コントロール対象体は、酵素レベルの10倍の増加を示し、この対象体での活動性感染が指し示された。Ad5ナイーブ/rAd35ワクチン接種グループにおける二体の対象(V1、V3)からの血液サンプルはまた、ASTでの劇的な増加を示し、その一方、このグループV2での第三の対象体は、ベースラインレベルに戻る分解前の単一の時点で、わずかな増加のみを示した。同様に、Ad5免疫/rAd35ワクチン接種のグループ(V4、V5)における三体のうち二体の対象は、ワクチン未接種のコントロールよりもはるかに低いものの、ASTでの上昇を示し、その一方、一体の対象V6は、感染のこのパラメータについて通常にとどまった。全体として、ASTレベルは、Ad5免疫のワクチン接種対象におけるよりもAd5ナイーブにおいて高かった。この臨床観察について正常にとどまった各対象が、そのそれぞれのワクチングループ内での最も高いプレチャレンジ、抗原特異的CD8+および抗体応答を示したことは注目に値する言及である。血しょうのウイルス血症レベル(図2E)は、高められたASTを示したすべての動物でのEBOV感染を確認した。
【0088】
この実験の結果は、対象体あたり1010粒子の用量で投与したとき、rAd35が免疫原性であることを示す。ワクチンは防御免疫反応を生じさせるが、この用量およびレジメンはすべての対象体の均一な保護のためには最善に次ぐものであった。ワクチングループ内で、防御免疫は最も重要な抗原特異的抗体およびCD8+T細胞応答と関連した。
【0089】
防御免疫の誘導におけるrAd35-GPの用量反応の影響。rAdベースのベクターは普通には、1010から1012の粒子までにおよぶ範囲の用量でマカクに投与される。rAd5-GPでの以前の結果は、EBOV感染に対するカニクイザル・マカクの100%の保護を達成するための最小限の用量として1010ウイルス粒子が実証された(Sullivan、2006)。前述の調査がこの用量範囲の下限で行われ、そして均一な保護がもたらされなかったので、rAd5ベクターのそれと比較したときに、rAd35ベクターを用いて達成されたわずかに低いインビボ抗原発現さえも、最善に次ぐ免疫応答をもたらすことが可能である。したがって、本発明者らは、より一層高いワクチン用量の投与が、免疫防御のより一層大きな程度を誘発できるかどうかを問うた。この実験ではワクチンはまた、スーダンおよびザイール種の双方からGPを構成するrAd5ワクチンでの歴史上データに対する有効性を比較するために、スーダンEBOV種(S/G)からGPを発現するrAd35を含んだ。本調査では、カニクイザル・マカク(群あたりn=3)を、各々のAd35BSU.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd35BSU.Ebo.GP(S/G)FLの1010または1011ウイルス粒子でワクチン接種し、そして免疫応答を以前の実験においてワクチン接種した後に三週間測定した。
【0090】
GP特異的抗体はすべての対象体において、期待した結果が生成され(図3A)、それはワクチン用量が以前の実験のものと同じか、またはそれより高かったからである。しかしながら、この実験で1010粒子を用いてワクチン接種した2体の対象(V8、V9)における力価は、それぞれ1:340および1:500であり、Ad5-GPワクチン接種した対象での保護を予測するために以前に観察された最小カットオフに近いか、またはそれよりも低いレベルであった(Sullivanら、2009)。観察された最大抗体力価は、図2に示すようにrAd35対象体において観察された最大力価と同じである1:2,900であった(対象体V10)。平均抗体力価は1011投与量グループにおいてより一層高かった(1:1500対1:700)が、その差は統計的有意性には達しなかった(P=0.02)。低用量グループで観察されたように、その力価が免疫保護のためのrAd5-GPワクチンカットオフ(対象体V11、1:540)の近くにあったある種の対象体が存在した。
【0091】
CD4+およびCD8+T細胞応答は、3週間のポストワクチン接種での双方の用量グループに存在した。CD4+またはCD8+T細胞応答のいずれかでも明確な用量反応は存在しなかった。細胞性免疫応答の動態は、対象体間で、特に非近交系動物において変動し、そして応答の測定は、それが抗体レベルを有するように、経時的に累積的ではないので、グループの傾向は時として単一の時点で捕らえることが困難である。各個体内で、抗原特異的T細胞の出現頻度は、CD8+細胞についてのものよりもCD4+についてものが高かったが、第一の実験からの結果と組み合わせたとき、これらの実験においてrAd35-GPベクターによって誘導されるCD4+またはCD8+細胞の優性(dominance)へのいずれの傾向もなかった。
【0092】
免疫応答の評価後一週間、すべての六匹のワクチン接種したマカクおよびある種のワクチン未接種の対象体を、筋肉内注入により1000PFUのZEBOVに曝露し、そして増殖性感染の兆候が観察された。EBOV感染の出血症状は日常的に、感染したマカクの顔または四肢に斑点状丘疹(maculopapular rash)の出現をもたらし;対象体はまた典型的には、食物摂取量を減らし、そして脱水状態になる。2体のワクチン接種した対象についての症状の最も初期の外観は、EBOV暴露後6日目に発生し;そしてそれぞれが7日目までに症状の十分な一群(full constellation)を示す(データは図示せず)。表2は、感染によるチャレンジの成果および双方のrAd35調査についての非生存体における死の日を示す。ワクチン未接種対象体は、日9および8(それぞれ実験1および2)に感染の致死効果に屈した。死んだワクチン接種対象体は、それらがコントロールよりも長く平均2日まで生き残ったことを除いて、コントロール、ワクチン未接種対象体に類似していたが、死んだことが最終的に観察されたにもかかわらず、ワクチン接種の潜在的な部分的免疫の利益が示唆された。生存体の数は、ワクチン用量にかかわらず、GP(Z)プラスGP(S/G)を受けているものに比べ、rAd35-GP(Z)だけを受けとる対象体においてより一層大きかったが、残存率での差は、2つのチャレンジ実験における任意のワクチングループの全体にわたって有意ではなかった。
【0093】
【表2】
【0094】
全体的に見て、GP(Z)単独またはGP(S/G)との組合せで用いるワクチンベクターとしてrAd35を用いる調査は、抗原の受渡および提示が抗原特異的免疫応答を生成するのに十分であるが、絶対的な免疫防御のために必要とされるよりも低いレベルであったことを示した。より一層低い防御免疫は、保護のための限界であることがrAd5ベクターを用いて示されているものと一致する若干の動物において検出された抗体レベルと関連した。
【0095】
rAd26-GPワクチンの免疫原性およびEBOV感染に対する保護のための効力。本発明者らは次に、EBOV感染に対する防御免疫を生成する能力について、組換えAd26ベースのワクチン、グループDのアデノウイルスを評価した。この血清型はAd35と同じ細胞受容体(CD46)を使用するが、プライミングワクチンベクターとして使用したときには、わずかに高い免疫応答を生成することが示された(Liuら、2009)。これらの調査では、用量増大は、2つの別々の感染によるチャレンジ実験において3桁の規模(three orders of magnitude)に渡って導かれた。最初の調査では、本発明者らは、各ベクター、Ad26.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd26.Ebo.GP(S/G)FL.wtについて1010または1011粒子の用量にてワクチンをテストし、および第二の調査において本発明者らはそれぞれ、1012粒子の用量を用いた。最初の調査は、rAd26が、rAd35ように、Ad5に対する既存の免疫の存在下で抗原特異的免疫応答を引き出すことができるかどうかを評価するために、Ad5免疫のカニクイザル・マカクにおいてワクチンを試験した。グループ毎に四匹のAd5免疫のカニクイザル・マカクを筋肉内注入によりワクチン接種し、および血液サンプルをEBOV GPに対して、循環性の体液性および細胞性免疫応答を評価するために、3週間後に取得した(図4A)。平均循環抗GP抗体力価は、投与グループ全体にわたり用量反応を示し;1010被ワクチン接種体について1:700および1011粒子を受ける対象体について1:4500であった(P=0.06)。1010用量グループにおいて4分の3の対象体についての平均力価は、rAd5ワクチン接種対象体における免疫保護のための最小閾値をちょうど超えた(1:500)が、対象体V16はごくわずかの抗体応答、1:100だけを生成し、それはAd5-GPワクチンのための予測された保護カットオフよりも十分に低かった。対照的に、rAd26ワクチンの1011粒子でワクチン接種された対象体V19は、非常に高い抗体力価、1:10,500を生成し、完全な免疫防御に関連したレベル(1:3,500)がほぼ3倍だけ超えられ、その一方でこのワクチングループでの他のものは限定的に生存転帰(survival outcome)を予測しないで、中間の力価を示した。調査2では、4体の対象は、各rAd26ベクターの1012粒子を受け、そして1011の用量グループにおけるものと非常に似た抗体応答を生成し、その大部分は1:1000-1:4000の間の対象体の力価を有する。このグループの平均抗GP抗体力価は1:3000であった。
【0096】
T細胞免疫応答(図4B、C)を、rAd35調査でのようにICSによって測定し、そしてまた、調査1における用量反応への傾向を示したが、1010および1011用量グループ間での差は有意ではなかった(CD4+およびCD8+、それぞれ、p=0.12および0.26)。平均抗原特異的CD4+T細胞出現頻度は、1010粒子のrAd26-GPを受けるワクチン接種について0.14%であり、それに対してより一層高いワクチン用量では0.24%であり、そしてより一層低い用量グループの一つのワクチン接種、対象体V14は、検出不可能なCD4+応答を有した(図4B)。rAd26ワクチンはCD4+またはCD8+の優性のどちらへも細胞性免疫応答を歪めず(not skew);CD8+出現頻度、0.13%および0.25%(それぞれ、1010および1011のワクチン用量)は、本質的にCD4+応答の重要性を反映した。CD8+T細胞の場合、低用量グループにおいて2体の対象、V13およびV14が存在し、検出不可能な抗原特異的応答を有した(図4B、C)。rAd26調査2では、平均抗原特異的CD8+出現頻度(0.34%)はCD4+応答(0.08%)よりも高いが、CD8+応答へのこの明らかな歪み(skewing)は、主に単一の対象、V24によって導かれ、そのものは非常に高いCD8+出現頻度および低いCD4+応答を有する。さもなければ、全体的な細胞性免疫応答は、rAd26調査の一つで観察されたものと同様であった。
【0097】
感染EBOVチャレンジは、rAd26ワクチン調査のそれぞれのためのワクチン接種後4週間で1000PFUのZEBOVのIM注入によって行い、そして肝酵素レベルを疾患を監視するために測定した(図4D)。ワクチン未接種対象は注入の日3および6の間に肝損傷の発現を見せた。最低用量rAd26ワクチン、1010粒子を受け取るすべての対象体は、同じような症状の病気を示したが、ASTレベルはより一層遅い速度で増加した。本臨床指標から予測されるように、このグループにおけるすべての対象体は、日8のポストZEBOVチャレンジによる感染の致死効果に屈した(図5A)。抗体およびT細胞応答は、このグループにおける若干の対象体では低いか、または検出されなかった。Ad26研究1における用量グループ(1010および1011)間での免疫応答の重要性における違いは、rAd26-GPの1011粒子によりワクチン接種された対象体において、生存率での、概してより一層高い生存転帰を有し、保護された4のうち2体に反映された(p=0.01)。 1011粒子でのAd26は、より一層低い用量に対して優れていただけではなく、投与量が一致したときにもrAd35-GPよりも大きい保護を提供した(図5B)。最後に、1012粒子の用量で与えるrAd26は、これらの研究でテストされた任意のワクチンレジメン(ワクチン療法)について生存体の最大数をもたらし(4のうち3体)、そして免疫防御のレベルはrAd5ベクターで以前に観察されているものとは有意差はなく(p=0.32、図5C);しかしながら、この生存率はrAd26について用量がrAd5についてのものよりも高いもの、それぞれ、1012対1010粒子を用いて得られ、この動物モデルにおけるこれらのベクター間の潜在的な能力の差が示唆される。
【0098】
rAd26およびrAd35ベクターでの異種プライム・ブースト。rAd26-GP媒介免疫保護のための用量反応特徴および1012ベクター粒子を用いる高い生存転帰は、このベクターがGP抗原の発現を効率的に誘導することを示唆した。非ヒトおよびヒト対象体の双方において、EBOVおよび他の病原体について、その異種プライム・ブーストワクチン接種がシングルショットのワクチン接種よりも強力な免疫性を引き出すことができることが示された〔SullivanのNature、2000;Sampra(サンプラ)ら、Vaccine、27(2009)5837-5845;Koupら、PLoS One 2010;Geisbert(ガイスバート)ら、(2010)Virol 84(19):10386-94〕ので、本発明者らはrAd26-GP免疫応答がEBOV感染に対する保護を改善するために異種のベクターでブーストすることができるかどうか問うた。四匹のカニクイザル・マカクを、Ad26.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd26.Ebo.GP(S/G)FL.wtの各々の1011粒子を接種した。1ヶ月後、すべての対象体はAd35BSU.Ebo.GP(Z)FL.wtおよびAd35BSU.Ebo.GP(S/G)FLの同じ用量でのブーストワクチン接種を受けた。免疫応答は、ブーストの直前、およびその後三週間評価した。図6AはEBOV-GP(Z)に対する抗体応答がプライミングワクチン接種により効率的に誘導されたことを示す。個々の対象体は1:2700から1:7100までのGPに対するEC90抗体力価を生成し、そしてそのグループについての平均力価は1:4000であり、単独接種ワクチンとしての1011のrAd26をテストする以前の調査において観察された応答(1:4500 )と一致した。本調査には、比較のために、1010粒子のrAd5-GP(Z)およびrAd5-GP(S/G)のそれぞれを用いて接種した単一の対象体が含まれ、そのもののポストワクチン抗体力価は1:6800であった。rAd35-GPベクターの1011粒子を用いたrAd26-GP-プライミング対象体のその後の接種は、抗原特異的抗体レベルをほとんどの被ワクチン接種体についておよそ1桁の大きさで1:32,000の平均力価にブーストしたが、それには対象体V27が除かれ、そのポストプライム抗体力価は非常に高かった。興味深いことに、ブーストワクチン接種は、対象体の全体にわたってより一層均一な力価を生成し、54%の標準偏差を見せたポストプライム力価に比べて、対象体にの全体にわたり弱10%の標準偏差を有した。
【0099】
細胞性免疫応答はまた、rAd26ワクチン接種マカクに対するrAd35-GP投与によって顕著にブーストされた(図6B、C)。CD4+T細胞は、一つの対象体、V25を除いてすべてにおいてブーストされ;rAd35-GP投与後の平均増加は、すべての対象体にわたって2倍であり、そしてブースティングは、応答がブースティング前には検出されなかった対象体V27において測定可能な応答を明らかにした。最終的に、ポスト・ブーストCD4+T細胞出現頻度は、rAd5-GPワクチン接種によって生成されたものに匹敵した。ブースト効果は、CD8+T細胞について最も大きく、そしてすべての対象体はこの細胞内コンパートメントでブースト効果を見せ、2つの対象体(V27およびV28)において、rAd5-GPワクチン接種によって生成されたものを超える応答が産生された。ICSによって測定された平均GP特異的CD8+T細胞出現頻度は、一次免疫後0.09%であり、そしてrAd35-GP二次ワクチン接種後3週間0.41%まで、4.7倍に増加した。
【0100】
全体的に見て、上記の免疫原性の結果は、rAd35-GPベクターがrAd26-GPプライミングしたマカクをブースティングするために有力であることを示した。ポストブーストGP指向性(directed)抗体は、rAd5-GPワクチン接種された霊長類で100%の免疫防御のための予測レベルよりもほとんど高いログの(nearly a log higher than)平均レベルに誘導された(Sullivanら、2009)。重要なことに、rAd35-GPブーストは、CD8+T細胞の出現頻度の著しい増大を提供し、またEBOV感染に対する免疫防御に関連付けられることを示した。したがって、免疫応答の評価後一週間(ポストブースト4週間)、すべてのワクチン接種対象体および一つのワクチン未接種コントロールのマカクを、筋肉内注入によりZEBOV 1000 PFUにさらした。コントロール対象体はEBOV感染の臨床症状の特徴を見せ、そしてチャレンジ後日6での致死効果に屈した(図6C、D)。対照的に、すべてのワクチン接種対象体は、循環性ASTレベルについて正常にとどまり(図6C)、そして研究終了での全体の病理評価において出血性疾患の証拠を見せなかった(図示せず)。すべての4体のワクチン接種対象は、感染によるチャレンジを生き延び、そして研究終了までの28日間のフォローアップ期間中に症状のないままであった。これらの結果は、異種プライム・ブーストワクチンレジメンとして投与されたrAd26/rAd35ベクターがZEBOV感染に対する一様な免疫防御を提供し、そして混合ワクチンでの添加または相乗的結果を達成するためのこのアプローチの潜在的な有用性が実証されることを示した。
【0101】
考察
【0102】
アデノウイルスは、様々なウイルス性、細菌性および寄生虫性の抗原の送達のためのワクチンベクターとしてよく機能する〔Lasaro(ラサロ)ら、(2009)Mol Ther(モレキュラー・セラピー)17(8):1333-9〕。特に、rAd5ベクターは、マウス、非ヒト霊長類、およびヒトにおいて、EBOV-GPが標的抗原であるときに本発明者らが観察したように、有力な抗原特異的免疫応答を生成する。しかしながら、症状発現前およびヒト臨床研究は、rAd5ベースのベクターの効力が、Ad5に対しあらかじめ曝露されている個体において危うくされる可能性があることを示唆し、それはそれらのものがベクターに対する免疫の高いレベルを有する場合である。ここでは、研究の目的は、ナイーブおよびAd5免疫の双方の対象体においてEBOV GP抗原を送達することができるrAdベクターを識別することであった。任意のウイルス性ベクターに対する既存の免疫がその有効性を制限する可能性があるので、本発明者らは、本発明者の注意力を、血清反応陽性の対象体の有病率および/または中和抗体の低レベルによって示されるような、比較的稀にしかヒトに感染しないウイルスに着目した。珍しいヒトアデノウイルス血清型、Ad35およびAd26を、今回の作業においてワクチン開発のために選定した。
【0103】
マカクのrAd35-GPワクチン接種は、個々の対象体において、rAd5が送達ベクターとして使用されたときにあらかじめ観察された範囲内の抗原特異的抗体およびT細胞応答を生成した。すべてのrAd35ワクチン接種体についての平均抗GP抗体力価(用量にかかわらないもの)、1:1400は、1010のrAd5-GPでワクチン接種したすべての歴史的な対象体の平均(1:11,000、n=17)よりも低く、rAd35について抗体力価がrAd5のEBOVワクチンについてのものと同じ相関があるならば、ベクターの効力が2つの血清型間で異なる場合があるという初期の徴候を提供する。CD4+およびCD8+のT細胞応答は、感染によるチャレンジの前に、ほとんどの対象体において検出可能であったが、絶対等級は、アッセイブリッジコントロール(assay bridging controls)のためのPBMCサンプルの不存在下にこれらの研究において含まれないrAd5ワクチンと比較することはできない。
【0104】
いずれのrAd5ナイーブまたはrAd5免疫の対象体において、rAd35ベクターでのワクチン接種は、効果的に抗原特異的抗体およびTリンパ球の免疫応答を誘導し、稀な血清型のベクターゲノムが異種ベクター指向性免疫に抵抗するために、共通の血清型から十分に離れていることを示唆された。ベクター性能のこの特色は、天然のウイルス感染からだけでなく、プライミングワクチン接種または他の病原体に対するワクチン接種における異種ベクターの使用から生じる既存の免疫を迂回するのに重要である。実際に、rAd35-GP接種は、rAd26-GPによってプライミングしたマカクにおいて、細胞媒介性の、および抗体の応答の双方の強力なブースティングを提供した。この結果は興味深いことであったが、それはそれが一次免疫応答に対する二次応答の誘導のためのベクター潜在力において明らかな違いを示すからであり;免疫応答をブースティングするためのrAd35-GPの能力はプライミングワクチン接種後に観察された応答の大きさによって予測されなかった。これらのデータは、rAd35およびその他のrAdベクターが、Lindsay(リンジー)ら、J Immunol、185(3):1513-21によって最近示唆されたように、標的樹状細胞の一定の集団または活性化状態において高い形質導入効率を有することを示すことができ、それは、この場合には、二次免疫応答の間に、より一層豊富であるか、またはアクセス可能でありうる。
【0105】
rAd26は、EBOV感染に対するシングルショットワクチンとして、rAd35よりも強力であることが判明し、試験した最高用量でワクチン接種されたマカクの75%までにおいて生存が媒介された。rAd26-GPワクチンは、防御免疫を誘導するための明確な用量反応を示し、抗原発現におけるわずかな改善が、EBOVチャレンジの高用量に対して、ここで用いるもののような均一な保護を生成するためにrAd26ベースのワクチンの効力を高めることができることを示唆した。興味深いことに、一致した用量(1011粒子)にてrAd35-GPと比べてrAd26-GPベクターが提供する保護のより一層高い程度は、より一層高いELISA抗GP力価、1:4500対1:1400にそれぞれ関連付けられた。これらのデータは、プレチャレンジ抗体力価がrAd5-GPワクチンについて観察されたように、ベクターグループ内に加えrAd血清型の全体にわたるZEBOV感染に対する保護の免疫相関として役割を果たしうるという可能性を強調する。抗体応答の誘導についての効力の序列は、ベクターグループ全体にわたる保護のための順位を予測した。
【0106】
これらの研究はここでは、単独および組合せで比較したワクチンベクターをテストし、そして霊長類においてワクチンベクターとして使用するための代替血清型rAdsの有用性を実証した。その結果は、これらのワクチンがプライム・ブーストの組合せにおいて最も有用でありうることを示唆する。
【0107】
異種プライム・ブーストによって達成された抗原特異的応答の高い等級のため、長期的な免疫性がDNAでのプライミングrAdによって最適に達成されうることが提案された〔Santraら、(2005)。J Virol、79(10):6516-22〕。DNAが、複数のプライマーを必要とし、そしてrAdベクターがするように迅速な保護を誘導しないので、異種rAdプライム・ブーストは、迅速な、および長期にわたる防御免疫の誘導の間のバランスを生成するのに最適な機会を提供することができる。
【0108】
ここに記載した例および実施形態が例示目的のためだけのものであり、それらを考慮して当業者に様々な修飾または変化が示唆され、そしてこの出願の精神および視野ならびに添付の請求の範囲内に含まれるべきであろうことが理解される。ここで引用したすべての刊行物、特許、および特許出願は、参照することにより、あらゆる目的のために本明細書にそっくりそのまま組み込まれる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]