(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フェース角の回帰係数は−1以上0以下であり、前記シャフト軸まわりの慣性モーメントの回帰係数は−1以上0以下であり、前記重心角の回帰係数は0以上1以下である、請求項1または2に記載のゴルフクラブ選択方法。
前記フェース角の回帰係数、前記シャフト軸まわりの慣性モーメントの回帰係数、および前記重心角の回帰係数は、前記被験者のインパクトフェース角、トゥヒール方向の打点、およびスイングパスに応じて変更され、
前記インパクトフェース角、前記打点、および前記スイングパスは、インパクト直前でのハイスピードでの連続画像を解析することにより求められる、または、
前記インパクトフェース角および前記スイングパスは、3軸加速度センサと3軸ジャイロセンサとを含むモーションセンサにより計測され、前記打点はフェースシールにおける打痕から計測される、請求項3に記載のゴルフクラブ選択方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0025】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。
【0026】
<システムの構成および処理手順>
図1は、本実施の形態に従うゴルフクラブ選択システムの全体構成を示す図である。
【0027】
以下の説明では、実施の形態1に従うゴルフクラブ選択装置10がノートPC(Personal Computer)である場合について説明する。ゴルフクラブ選択装置10は、種類を問わず任意の装置として実現可能である。例えば、ゴルフクラブ選択装置10は、デスクトップPC、タブレット端末装置、PDA(Personal Digital Assistance)、スマートフォンなどとして実現することもできる。なお、ゴルフクラブ選択装置10は、計測装置20での計測結果を用いて被験者に適したゴルフクラブを選択するための処理を実行する処理装置として機能する。
【0028】
計測装置20は、ヘッドスピード、および打球の各種データを計測可能な装置である。各種データは、打球のサイドスピン量、飛距離、バックスピン量、ボール初速度を含む。具体的には、計測装置20は、ドップラーレーダーを使用してボールの弾道を追跡して、これらのデータを測定可能な弾道測定器である。たとえば、弾道測定器は、Interactive Sports Games社製弾道測定器トラックマン、またはForesite社製の弾道測定器GC2である。なお、計測精度が保たれていれば他の弾道測定器であってもよい。
【0029】
ゴルフクラブ選択装置10と計測装置20とは、互いに通信可能に構成されている。たとえば、ゴルフクラブ選択装置10は、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)、赤外線通信などを利用して計測装置20と通信する。なお、ゴルフクラブ選択装置10は、USB(Universal Serial Bus)などを利用した有線通信が可能に構成されていてもよい。
【0030】
ゴルフクラブ選択装置10は、計測装置20で計測された計測結果の入力を受け付けて、被験者に適したゴルフクラブを選択するための処理を実行する。概略として、以下のような処理手順により被験者に適したゴルフクラブが選択される。
【0031】
ここで、上記ゴルフクラブ選択システムを用いて行なわれるゴルフクラブ選択方法について説明する。
【0032】
図2は、本実施の形態に従うゴルフクラブ選択方法の一例を示すフローチャートである。
図2に示すように、本実施の形態に従うゴルフクラブ選択方法は、被験者(ゴルファー)の打球のサイドスピン量を計測または演算するステップS100を含む。ステップS100は、被験者(ゴルファー)がゴルフボールに対してゴルフクラブをスイングすると行なわれる。典型的には、ステップS100は、計測装置20(または後述のセンサ装置)を用いて行なわれる。
【0033】
なお、被験者がスイングするゴルフクラブは、予め店側で用意された標準スペックのゴルフクラブであるとする。標準スペックのゴルフクラブとは、たとえば、フックスピンおよびスライススピンが出にくい傾向があるゴルフクラブである。
【0034】
当該ゴルフクラブ選択方法は、打球のサイドスピン量に影響を与えるゴルフクラブのスペック情報に基づいて、予め用意された複数のゴルフクラブの各々についての打球の左右方向への飛翔特性の指標となる捕まり係数を算出するステップS110をさらに含む。
【0035】
ここで、本実施の形態において、「捕まり係数」とは、打球の左右方向(スライスまたはフック方向)への飛翔特性の指標となる指標値であり、過去に複数のゴルファー(評価者)によって複数のゴルフクラブに対して与えられた官能評価から求められる。詳細は後述するが、「捕まり係数」は、打球のサイドスピン量に影響を与えるゴルフクラブのスペック情報を説明変数とし、当該複数のゴルフクラブのそれぞれに対してゴルファにより付与された評価値を目的変数とする予測式から導出される。
【0036】
本願発明者が鋭意検討した結果、ゴルフクラブの各種スペック情報のうちサイドスピン量に影響を与えるものは、ゴルフクラブのフェース角FAと、シャフト軸まわりの慣性モーメントIsと、重心角GAとを含むことが判明した。ステップS110は、フェース角FA、シャフト軸まわりの慣性モーメントIs、および重心角GAを説明変数とし、ゴルフクラブに対してゴルファにより付与された評価値を目的変数として回帰分析を行なうことにより得られる回帰式を用いて捕まり係数を算出することを含む。
【0037】
図3および
図4を参照して、フェース角FA、シャフト軸まわりの慣性モーメントIs、および重心角GAについて説明する。
図3は、フェース角FAおよびシャフト軸まわりの慣性モーメントIsを示す図である。
図4は、重心角GAを示す図である。
【0038】
シャフト軸まわりの慣性モーメントIsは
図3に示すとおりであり、フェース角FAは、ゴルフクラブをソールした状態で、シャフトをライ角通りにセットしたときに、ソールした平面に対してフェース面高さの中央部分を含む平行な平面と、フェース面との交線がシャフト軸線に対してなす上方から見た角度である。一般的にバルジを有する場合には交線は曲線となるが、ヘッドのトゥとヒールを除いた中央領域での接線がシャフト軸線に対して上方から見た角度を計測値とする。また、
図4に示されるように、重心角GAは、ゴルフクラブのシャフト部分を机の上などの水平に場所においたときに、フェース面と垂線とのなす角度である。一般的にバルジを有する場合はフェース面の中心が接するように計測される。
【0039】
再び、
図2を参照して、当該ゴルフクラブ選択方法は、予め用意された複数のゴルフクラブの各々について、当該ゴルフクラブの捕まり係数に基づいて被験者に適するゴルフクラブの選択基準となる適正サイドスピン量を算出するステップS120をさらに含む。詳細は後述するが、「適正サイドスピン量」とは、ゴルフクラブの捕まり係数を後述する式(4)に適用することで求められる。計測された被験者の打球のサイドスピン量が、適正サイドスピン量に近いほど被験者に適したゴルフクラブである。すなわち、「適正サイドスピン量」とは、被験者の打球のサイドスピン量から、被験者に適するゴルフクラブを選択する際に基準となるものである。
【0040】
当該ゴルフクラブ選択方法は、予め用意された複数のゴルフクラブの各々の適正サイドスピン量と、計測または演算されたサイドスピン量とに基づいて、予め用意された複数のゴルフクラブから被験者に適したゴルフクラブを選択するステップS130をさらに含む。典型的には、ステップS110,S120,S130は、ゴルフクラブ選択装置10を用いて行なわれる。
【0041】
図5は、本実施の形態に従うゴルフクラブ選択方法の他の例を示すフローチャートである。本実施の形態の変形例に従うゴルフクラブ選択方法は、被験者の打球のサイドスピン量を計測または演算するステップS200と、打球のサイドスピン量に影響を与えるゴルフクラブのスペック情報に基づいて、予め用意された複数のゴルフクラブの各々についての打球の左右方向への飛翔特性の指標となる捕まり係数を算出するステップS210とを含む。ステップS200,S210は、それぞれ上述したステップS100,S110と同じである。
【0042】
当該ゴルフクラブ選択方法は、計測または演算されたサイドスピン量に基づいて、被験者に推奨する捕まり係数(推奨捕まり係数)を算出するステップS220をさらに含む。詳細は後述するが、「推奨捕まり係数」は、ステップS200で計測または演算されたサイドスピン量を後述する式(2)に適用して求められる。すなわち、「推奨捕まり係数」は、被験者に適するゴルフクラブを選択する際に被験者に対して推奨される捕まり係数である。
【0043】
当該ゴルフクラブ選択方法は、予め用意された複数のゴルフクラブの各々の指標値と、被験者に推奨する指標値とに基づいて、予め用意された複数のゴルフクラブから被験者に適したゴルフクラブを選択するステップS230をさらに含む。典型的には、ステップS220,S230は、ゴルフクラブ選択装置10を用いて行なわれる。
【0044】
<ハードウェア構成>
図6は、本実施の形態に従うゴルフクラブ選択装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0045】
図6を参照して、ゴルフクラブ選択装置10は、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)100と、メモリ110と、入力装置120と、ディスプレイ130と、通信インターフェイス(I/F)140と、メモリインターフェイス(I/F)150とを含む。
【0046】
CPU100は、メモリ110に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、ゴルフクラブ選択装置10の各部の動作を制御する。より詳細には、CPU100は、当該プログラムを実行することによって、後述するゴルフクラブ選択装置10の処理(ステップ)の各々を実現する。CPU100は、例えば、マイクロプロセッサである。
【0047】
メモリ110は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、ハードディスクなどによって実現される。メモリ110は、CPU100によって実行されるプログラム、またはCPU100によって用いられるデータなどを記憶する。
【0048】
入力装置120は、ゴルフクラブ選択装置10に対する操作入力を受け付ける。入力装置120は、例えば、キーボード、ボタン、マウスなどによって実現される。また、入力装置120は、タッチパネルとして実現されていてもよい。
【0049】
ディスプレイ130は、CPU100からの信号に基づいて、表示画面に画像、テキスト、その他の情報を表示する。例えば、CPU100は、被験者に適するゴルフクラブに関する情報をディスプレイ130に表示する。
【0050】
通信インターフェイス(I/F)140は、ゴルフクラブ選択装置10と計測装置20との間で各種データをやり取りするごとが可能である。なお、通信方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)、無線LANなどによる無線通信であってもよいし、USBなどを利用した有線通信であってもよい。
【0051】
メモリインターフェイス(I/F)150は、外部の記憶媒体152からデータを読み出す。より具体的には、CPU100は、メモリインターフェイス150を介して外部の記憶媒体152に格納されているデータを読み出して、当該データをメモリ110に格納する。CPU100は、メモリ110からデータを読み出して、メモリインターフェイス150を介して当該データを外部の記憶媒体152に格納する。
【0052】
なお、記憶媒体152としては、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカード、FD(Flexible Disk)、ハードディスク、磁気テープ、カセットテープ、MO(Magnetic Optical Disc)、MD(Mini Disc)、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを除く)、光カード、EPROM、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの、不揮発的にプログラムを格納する媒体が挙げられる。
【0053】
<ゴルフクラブの選択>
次に、被験者に適するゴルフクラブが選択されるまでの流れについて説明する。
【0054】
(サイドスピン量と飛距離との関係)
まず、サイドスピン量と飛距離との関係について説明する。
図7は、6名のゴルファA〜Fが複数のゴルフクラブを使用したときの打球のサイドスピン量と飛距離(キャリー)との関係を示す図である。ここでは、各々のゴルファに表1に示すゴルフクラブA1〜A9のうち複数のゴルフクラブ(最大で9本)を試打させている。
【0056】
図7を参照して、ゴルファA〜Cはどのゴルフクラブを使用してもフックスピン(サイドスピン量がマイナス)が出やすい傾向があり、ゴルファD〜Fはどのゴルフクラブを使用してもスライススピン(サイドスピン量がプラス)が出やすい傾向があることがわかる。また、最大飛距離と最小飛距離との差は、ゴルファごとに違いはあるものの、概して、打球のサイドスピン量がゼロに近づくほど飛距離が大きくなっていることがわかる。
【0057】
サイドスピン量の絶対値が大きい場合に飛距離が低下しているのは、インパクト時のエネルギーロスと、飛翔中のゴルフボールでのエネルギーロスとに起因している。具体的には、この場合、サイドスピンの回転エネルギーが大きくなるため、インパクト時のエネルギーロスが生じている。そして、フェース面と平行な成分の力が働くことで、ヘッドの進行方向とは異なる方向にボールが飛び出して、ボール初速度の飛距離方向の成分が減少するため飛距離が低下する。また、サイドスピン量が大きい場合には、左右方向にボールの軌道が曲がることから飛距離が低下する。
【0058】
図7で示したように、フックスピンの傾向があるのか、スライススピンの傾向があるのかはゴルファごとに異なるものであり、さらにそのスピン量の大きさもゴルファごとに異なる。そのため、ゴルファの打球のサイドスピン量を計測し、計測されたサイドスピン量の絶対値が小さくなるようなゴルフクラブを選択することで、迅速かつ精度よくゴルファに適したゴルフクラブを提供することができる。
【0059】
(捕まり係数について)
次に、官能評価結果に基づく回帰分析により求められる捕まり係数について説明する。ここでは、6名のゴルファに、17本(B1〜B17)について試打させて、各々官能評価(捕まり具合の評価)をさせた。ここで、ゴルファは打球の左右方向のサイドスピンにてフックスピンで左曲がりになる弾道を、「捕まる」と表現することから、捕まり具合の官能評価とは、左曲がりの傾向が強くなるほど点数が高くなるよう、複数段階で評価したものである。以後、この評価点のことを捕まり評価値と呼ぶ。捕まり具合の評価は、各々のゴルファが、各々のゴルフクラブに対して、7点満点で1点、2点、3点・・・と点数を付けることによって行なった。ここで、7点が最も評価が高く、1点が最も評価が低い。また、7点から1点までの点数間隔はいずれも同じ尺度である。なお、各々のゴルフクラブの捕まり評価値は、6名のゴルファの当該ゴルフクラブに対する捕まり評価値の平均とした。
【0060】
本願発明者は、この官能評価から鋭意検討したところ、ゴルフクラブの各種スペックのうち、フェース角FAと、シャフト軸まわりの慣性モーメントIsと、重心角GAとが、上記「捕まり評価値」に対して特に相関が高いことを見出した。
【0061】
そこで、本願発明者は、上記知見に基づき、フェース角FA、シャフト軸まわりの慣性モーメントIs/100および重心角GAを各々説明変数とし、「捕まり評価値」を目的変数として重回帰分析を行なった。この結果算出された回帰式を次式(1)に示す。
【0063】
式(1)を用いることにより、各々のゴルフクラブのフェース角FAと、シャフト軸まわりの慣性モーメントIsと、重心角GAとに基づいて、予測された「捕まり評価値」である「捕まり係数」を簡単に算出することができる。この算出結果を表2に示す。
【0065】
また、式(1)に示す重回帰式の妥当性は、
図8に示されるとおりである。すなわち、式(1)に示す重回帰式の決定係数R
2は0.62であることから、高い決定係数が得られており、本願発明者が鋭意検討の結果得られた上述の知見の妥当性が示されている。
【0066】
(捕まり係数およびサイドスピン量について)
次に、官能評価結果に基づく回帰分析により求められた捕まり係数とサイドスピン量との関係について説明する。ここでは、31名のゴルファに、8本のゴルフクラブC1〜C8で試打させて、各々のゴルフクラブを試打した場合の打球のサイドスピン量を計測した。各々のゴルフクラブの捕まり係数およびサイドスピン量(実測値)を表3に示す。なお、表3に示すサイドスピン量は、31名のゴルファの打球のサイドスピン量の平均値である。また、捕まり係数は、式(1)を用いて算出されている。
【0068】
図9は、ゴルファに適するゴルフクラブの捕まり係数(推奨捕まり係数)を算出するための算出方式を説明するための図である。まず、
図9を参照して、グラフ800は、表3における捕まり係数とサイドスピン量との相関関係を示している。具体的には、グラフ800は、表3における捕まり係数およびサイドスピン量を線形近似した直線である。
【0069】
グラフ810は、この相関関係から求められる推奨捕まり係数とサイドスピン量との関係を例示したものである。以下、推奨捕まり係数の算出方式について具体的に説明する。
【0070】
まず、グラフ800からわかるように、ゴルフクラブの捕まり係数が大きいほどフックスピン(サイドスピン量がマイナス値)が出やすく、逆に当該捕まり係数が小さいほどスライススピン(サイドスピン量がプラス値)が出やすい傾向がある。
【0071】
このことから、ゴルフクラブによらずフックスピンが出やすいゴルファ(たとえば、
図7中のゴルファA〜C)に対しては、捕まり係数が小さいゴルフクラブを推奨し、スライススピンが出やすいゴルファ(たとえば、
図7中のゴルファD〜F)に対しては、捕まり係数が大きいゴルフクラブを推奨すればよいことがわかる。すなわち、フックスピンが出やすいゴルファには、スライススピンが出やすいゴルフクラブが推奨され、スライススピンが出やすいゴルファには、フックスピンが出やすいゴルフクラブが推奨されることになるため、結果としてゴルファのサイドスピン量を抑える(サイドスピン量の絶対値を小さくする)ことができる。
【0072】
より具体的には、推奨捕まり係数は以下のような式(2)を用いて求められる。
【0074】
グラフ810は、上記の式(2)で表わされている。この式(2)によると、たとえば、計測されたサイドスピン量(の平均値)が−500rpmであるフックスピンが出やすい傾向のあるゴルファに対しては、ゴルフクラブの推奨捕まり係数は3.5となる。また、計測されたサイドスピン量が0rpmであるサイドスピン傾向のないゴルファに対しては、ゴルフクラブの推奨捕まり係数は4.5となる。また、計測されたサイドスピン量が500rpmであるスライススピンが出やすい傾向のあるゴルファに対しては、ゴルフクラブの捕まり係数は5.5となる。
【0075】
式(2)は、以下のような(A)〜(C)の分析および知見に基づいて導出されたものである。
【0076】
まず、上述したように、(A)推奨捕まり係数とサイドスピン量との相関関係は、表3における捕まり係数とサイドスピン量との相関関係とは逆である(すなわち、傾きの正負が逆である)必要がある。
【0077】
次に、(B)本願発明者が鋭意検討した結果、一般的な多数のゴルフクラブの捕まり係数の平均値が4.5程度であり、かつそれらのゴルフクラブの捕まり係数が、3.5〜5.5に分布していることが判明している。
【0078】
さらに、(C)一般的にフックスピンが出やすいとされるゴルファのサイドスピン量(の平均値)は−500rpm程度であり、一般的にスライススピンが出やすいとされるゴルファのサイドスピン量(の平均値)は500rpm程度である。
【0079】
式(2)は、上記(A)〜(C)を条件として導出されているが、例示であって推奨捕まり係数とサイドスピンとの相関関係を示す関係式はこれに限られない。少なくとも(A)は満たす必要があるが、(B)、(C)は適宜変更することが可能である。たとえば、(B)において、捕まり係数の平均値を4.5とした上で、より特殊な(スライス、フックスピンの傾向が強い)ゴルフクラブまでをも取り込むため、捕まり係数の分布を3.0〜6.0としてもよい。また、(C)において、より特殊な(フック、スライススピンの傾向が強い)ゴルファをも取り込むため、フックスピンが出やすいゴルファのサイドスピン量を−1000rpmとし、スライススピンが出やすいゴルファのサイドスピン量を1000rpmまで拡大してもよい。
【0080】
この場合には、推奨捕まり係数は以下のような式(3)で求められる。
【0082】
すなわち、条件(A)を満たしつつ、(B)の捕まり係数の分布範囲、および(C)のサイドスピン量の分布範囲を決定すれば推奨捕まり係数とサイドスピン量との関係が定まることになる。
【0083】
(ゴルフクラブの選択および結果表示)
次に、被験者に適したゴルフクラブの選択および結果の表示について説明する。ここでは、たとえば、複数の予め用意された6本のゴルフクラブD1〜D6の中から被験者に適したゴルフクラブを選択する場合について説明する。
【0084】
以下の表4に6本のゴルフクラブD1〜D6に関する情報を示す。各々のゴルフクラブの適正サイドスピン量は、各々の捕まり係数を以下の式(4)に適用することで求められる。
【0086】
たとえば、捕まり係数が4.1の場合には、適正サイドスピン量は−200rpmとなる。すなわち、計測された被験者の打球のサイドスピン量が、適正サイドスピン量に近いほど被験者に適したゴルフクラブといえる。なお、適正サイドスピン量は、ゴルフクラブの捕まり係数を上記の式(2)において推奨捕まり係数として適用して求められるサイドスピン量ともいえる。
【0087】
また、ヘッドスピードの速い被験者にはクラブ質量が重いゴルフクラブが適しており、ヘッドスピードの
遅い被験者にはクラブ質量が軽いゴルフクラブが適している。
【0088】
図10は、ヘッドスピードと推奨クラブ質量との関係を示す図である。
図10中の直線は、以下の式(5)のとおりであり、この式(5)から被験者に推奨されるクラブ質量(推奨クラブ質量)が定まる。
【0090】
また、各々のゴルフクラブの適正ヘッドスピードは、各々のクラブ質量を以下の式(6)に適用することで求められる。
【0092】
たとえば、クラブ質量が317gの場合には、適正ヘッドスピードは44.3m/sとなる。計測された被験者の打球のヘッドスピードが、適正ヘッドスピードに近いほど被験者に適したゴルフクラブといえる。なお、適正ヘッドスピードは、ゴルフクラブのクラブ質量を推奨クラブ質量として上記の式(5)に適用することで求められるヘッドスピードともいえる。
【0094】
たとえば、計測装置20により被験者の打球のサイドスピン量が−200rpmと計測された場合には、ゴルフクラブ選択装置10は、表4を参照して、6本のゴルフクラブの適正サイドスピン量と、この計測結果(−200rpm)とを比較し、この計測結果に最も近い(この場合は、同じ)適正サイドスピン量(−200rpm)を有するゴルフクラブD1を被験者に適したゴルフクラブとして選択する。
【0095】
あるいは、この計測結果から求められる推奨捕まり係数は、式(2)により4.01となる。そのため、ゴルフクラブ選択装置10は、表4を参照して、6本のゴルフクラブの捕まり係数と、求められた推奨捕まり係数とを比較し、推奨捕まり係数4.01に最も近い捕まり係数(4.1)を有するゴルフクラブD1を被験者に適したゴルフクラブとして選択する。これにより、被験者の打球のサイドスピン量をよりゼロに近づけるようなゴルフクラブが選択されるため、結果として被験者の打球の飛距離を伸ばすことができる。
【0096】
さらに、計測装置20により被験者のヘッドスピードが46m/sと計測された場合には、たとえば、ゴルフクラブ選択装置10は、表4を参照して、6本のゴルフクラブの適正ヘッドスピードと、この計測結果(46m/s)とを比較し、この計測結果に最も近い適正ヘッドスピード(44.3m/s)を有するゴルフクラブD1を被験者に適したゴルフクラブとして選択する。
【0097】
あるいは、この計測結果からから求められる推奨クラブ質量は、式(5)により323gとなる。そのため、たとえば、ゴルフクラブ選択装置10は、表4を参照して、6本のゴルフクラブのクラブ質量と、求められた推奨クラブ質量とを比較し、推奨クラブ質量(323g)に最も近いクラブ質量(317g)を有するゴルフクラブD1を被験者に適したゴルフクラブとして選択する。これにより、被験者がより振りやすいゴルフクラブが選択されるため、結果として被験者のスイングを安定させることができる。なお、ゴルフクラブD2も推奨クラブ質量が323gであるが、捕まり係数が4.8であり、求められた推奨捕まり係数(4.1)との差が大きいため、ゴルフクラブD1が被験者に最も適したゴルフクラブとして選択される。
【0098】
ここで、ゴルフクラブ選択装置10は、被験者に推奨するゴルフクラブとして、複数のゴルフクラブを選択する場合であってもよいし、被験者に推奨する順にゴルフクラブに優先順位を付けて選択する場合であってもよい。たとえば、上記被験者の例では、ゴルフクラブ選択装置10は、ゴルフクラブD1を最適なゴルフクラブとして選択し、ゴルフクラブD2を二番目に適するゴルフクラブとして選択する。
【0099】
図11は、ゴルフクラブ選択装置10の表示画面の一例を示す図である。より具体的には、
図11(a)は、表4に示す複数のゴルフクラブの適正サイドスピン量および適正ヘッドスピードと、サイドスピン量およびヘッドスピードの実測値とを示す図である。
図11(b)は、表4に示す複数のゴルフクラブの捕まり係数およびクラブ質量と、推奨捕まり係数および推奨クラブ質量とを示す図である。
【0100】
図11(a)に示すように、ゴルフクラブ選択装置10は、6本のゴルフクラブの各々について、捕まり係数から求められる適正サイドスピン量と、クラブ質量から求められる適正ヘッドスピードとをディスプレイ130に表示する。また、ゴルフクラブ選択装置10は、被験者のサイドスピン量およびヘッドスピードの実測値900を表示する。さらに、ゴルフクラブ選択装置10は、6本のゴルフクラブの各々について、適正サイドスピン量に応じて設定された上限閾値および下限閾値と、適正ヘッドスピードに応じて設定された上限閾値および下限閾値とからなる所定の範囲を表示する。枠910〜枠940は、ゴルフクラブD1〜D4に対応する当該所定の範囲を示す枠であり、枠950は、ゴルフクラブD5,D6に対応する当該所定の範囲を示す枠である。これにより、被験者は、どのゴルフクラブが自身に合ったゴルフクラブなのかを容易に知ることができる。なお、ゴルフクラブ選択装置10は、実測値900が収まる枠に対応するゴルフクラブ(
図11(a)の場合、ゴルフクラブD1,D2)を被験者に適したゴルフクラブとして選択してもよい。
【0101】
また、
図11(b)に示すように、ゴルフクラブ選択装置10は、6本のゴルフクラブの各々についての捕まり係数およびクラブ質量を表示する。また、ゴルフクラブ選択装置10は、実測サイドスピン量から求められる推奨捕まり係数と、実測ヘッドスピードから求められる推奨クラブ質量とを表わす点1000を表示する。さらに、ゴルフクラブ選択装置10は、6本のゴルフクラブの各々について、捕まり係数に応じて設定された上限閾値および下限閾値と、クラブ質量に応じて設定された上限閾値および下限閾値とからなる所定の範囲を表示する。枠1010〜枠1040は、ゴルフクラブD1〜D4に対応する当該所定の範囲を示す枠であり、枠1050は、ゴルフクラブD5,D6に対応する当該所定の範囲を示す枠である。
図11(b)に示す画面によっても、被験者は、どのゴルフクラブが自身に合ったゴルフクラブなのかを容易に知ることができる。なお、この場合でも、ゴルフクラブ選択装置10は、点1000が収まる枠に対応するゴルフクラブ(
図11(b)の場合、ゴルフクラブD1,D2)を被験者に適したゴルフクラブとして選択してもよい。
【0102】
<ゴルフクラブの選択方式の変形例>
上記では、被験者の打球のサイドスピン量をよりゼロに近づけるようなゴルフクラブを選択する場合について説明した。ここでは、さらにゴルファのバックスピン量、およびゴルフクラブのシャフト情報を考慮した場合のゴルフクラブ選択方式について説明する。
【0103】
(推奨捕まり係数の補正)
ここでは、サイドスピン量およびバックスピン量を用いた推奨捕まり係数の補正方式について説明する。
【0104】
まず、サイドスピン量およびバックスピン量と飛距離との関係について説明する。
図12〜
図14は、6名のゴルファO〜Tの打球のバックスピン量とサイドスピン量との関係、およびサイドスピン量と飛距離(キャリー)との関係を示す図である。なお、各々のゴルファには、1本のゴルフクラブで50球程度試打させている。
【0105】
図12を参照して、ゴルファO,Pは、サイドスピン量がゼロのときにバックスピン量は3000rpm程度である。そして、ゴルファO,Pは、サイドスピン量がゼロのときに、飛距離(キャリー)が最大となっている。すなわち、ゴルファO,Pは、上述した
図7のゴルファA〜Fと同様の傾向がある。
【0106】
次に、
図13を参照して、ゴルファQ、R,Sは、サイドスピン量がゼロのときにバックスピン量は3500rpm程度である。ゴルファQ,R,Sは、比較的バックスピン量が多いタイプのゴルファであるといえる。そして、ゴルファQ,R,Sは、サイドスピン量が−500rpm程度のときに飛距離が最大となっている。
【0107】
次に、
図14を参照して、ゴルファTについては、サイドスピン量がゼロのときにバックスピン量は3200rpm程度である。そして、ゴルファTの場合、サイドスピン量が−250rpm程度のときに、飛距離(キャリー)が最大となっている。すなわち、ゴルファTは、
図12に示すゴルファO,Pのタイプと、
図13に示すゴルファQ,R,Sのタイプとの中間に属するタイプのゴルファである。
【0108】
このように、ゴルファのバックスピン量の大きさにより、サイドスピン量がゼロのときに飛距離が最大になるのか、それともサイドスピン量が小さい(フックスピン量が大きい)ときに飛距離が最大になるのかが異なることがわかる。
【0109】
そこで、バックスピン量に応じて、上記の式(2)で求められた推奨捕まり係数を補正することで被験者により適したゴルフクラブを選択することが可能となる。上述したように、
図7で示したゴルファA〜Fと同様の傾向がある
図12で示したゴルファO,Pは、サイドスピン量がゼロのときに飛距離が最大となっており、バックスピン量は3000rpm程度である。そのため、式(2)で求められる推奨捕まり係数は、以下の式(7)のように補正される。
【0111】
すなわち、C0が3000rpmのときには、式(7)と式(2)とは同じ式となる。
ただし、C0を求めるためには、被験者に対して少なくとも20球以上の試打をさせて弾道のバラツキを計測し、その上でサイドスピン量がゼロのときのバックスピン量を特定することが望ましい。しかしながら、この計測には、多大な時間を要するとともに被験者に対する負担も多い。そこで、C0を推定する方式について説明する。
【0112】
図12〜
図14を参照して、複数のゴルファO〜Tにおけるサイドスピン量とバックスピン量とを線形近似した直線の傾きは、それぞれ比較的互いに近い値となっている。すなわち、ゴルファによらずサイドスピン量に対するバックスピン量の変化の割合(傾き)は、ほぼ同じである。そのため、ゴルファO〜Tにおける当該傾きの平均値である0.82を利用して以下の式(8)に基づいてC0を推定する。
【0114】
たとえば、被験者に5球程度試打してもらい、計測されたバックスピン量の平均値が4000rpm、サイドスピン量の平均値が500rpmであれば、C0は3590rpmと求めることができる。
【0115】
以上から、本実施の形態に従うゴルフクラブ選択装置10は、計測装置20によって計測された被験者の打球のサイドスピン量およびバックスピン量と、上記傾きとからC0を求める。ゴルフクラブ選択装置10は、求められたC0を式(7)に適用することで推奨捕まり係数を補正する。そして、ゴルフクラブ選択装置10は、補正された推奨捕まり係数に基づいて、被験者に適するゴルフクラブを選択する。
【0116】
(捕まり係数の補正)
次に、ゴルフクラブのシャフト情報を用いた捕まり係数の補正方式について説明する。一般的に、フレックスが柔らかく、先調子のシャフトでスライススピンが減少し、つかまりが良くなる傾向があると言われている。また、フレックスが硬く、手元調子のシャフトでフックスピンが減少する傾向があると言われている。
【0117】
そこで、シャフト情報に基づいて、上記の式(1)で求められた捕まり係数を補正することで被験者により適したゴルフクラブを選択することが可能となる。
【0118】
ここでは、6名のゴルファに、10本のゴルフクラブE1〜E10について5球ずつ試打させて、各々官能評価(捕まり具合の評価)をさせた。ゴルフクラブE1〜E10は、それぞれシャフトの硬さを表すEIの分布が異なり、捕まり係数は4.5程度に揃えてある。官能評価は、各々のゴルファが、各々のゴルフクラブに対して、7点満点で1点、2点、3点・・・と点数を付けることによって行なった。ここで、7点が最も評価が高く、1点が最も評価が低い。なお、各々のゴルフクラブの捕まり評価値は、6名のゴルファの当該ゴルフクラブに対する捕まり評価値の平均とした。各々のゴルフクラブの評価結果を以下の表5に示す。
【0119】
なお、EI200は、シャフト先端Tipから200mm地点での曲げ剛性であり、EI940は、シャフト先端Tipから940mm地点での曲げ剛性である。EI400−700は、20mmピッチで計測された曲げ剛性において、シャフト先端Tipから400mm〜700mmまでの曲げ剛性の平均値であり、この値が大きければフレックスは硬いといえる。EI200/940とは、シャフト先端Tipから200mm地点での曲げ剛性を、940mm地点での曲げ剛性で除した値であり、この値が小さければ先調子であり、この値が大きければ手元調子といえる。
【0121】
図15は、捕まり評価値とEI200/EI940との関係を示す図である。
図15を参照して、シャフトが先調子の方が捕まり評価値が高く、手元調子の方が捕まり評価値が低いことがわかる。そこで、捕まり評価値とシャフト情報であるEI200/EI940とを線形近似した直線を用いて捕まり係数を補正する。
【0122】
上述したように、本願発明者が鋭意検討した結果、一般的な多数のゴルフクラブの捕まり係数の平均値が4.5程度である。そのため、線形近似した直線の式を用いたときのEI200/EI940の値に対する捕まり評価値(計算値)と、捕まり係数の平均値4.5との差分を、捕まり係数に加算することで捕まり係数を補正する。たとえば、EI200/EI940の値が0.15であるゴルフクラブの場合には、当該直線の式を用いた捕まり評価値の計算値は4.83となるため、これと4.5との差分である0.33を捕まり係数に加算することで補正する。たとえば、捕まり係数が4.7のゴルフクラブの場合には、補正された捕まり係数は、5.03となる。
【0123】
以上から、本実施の形態に従うゴルフクラブ選択装置10は、ゴルフクラブのスペック情報に含まれるシャフト情報と、捕まり評価値とシャフト情報との相関関係を示す近似式とから捕まり評価値の計算値を求める。そして、ゴルフクラブ選択装置10は、この計算値と所定の基準値(4.5)との差分を捕まり係数に加算することで捕まり係数を補正する。そして、ゴルフクラブ選択装置10は、補正された捕まり係数を式(4)に適用して求められる適正サイドスピン量と、計測されたサイドスピン量とに基づいて、被験者に適するゴルフクラブを選択する。また、ゴルフクラブ選択装置10は、推奨捕まり係数と、補正された捕まり係数とに基づいて、被験者に適するゴルフクラブを選択してもよい。
【0124】
<機能構成>
次に、
図16を参照して、本実施の形態に従うゴルフクラブ選択装置10を実現するための機能構成について説明する。
図16は、本実施の形態に従うゴルフクラブ選択装置10の機能ブロック図である。
【0125】
図16に示されるように、ゴルフクラブ選択装置10は、計測情報入力部200と、算出部210と、選択部220と、表示制御部230とを含む。これらは、基本的には、ゴルフクラブ選択装置10のCPU100がメモリ110に格納されたプログラムを実行し、ゴルフクラブ選択装置10の構成要素へ指令を与えることなどによって実現される。すなわち、CPU100はゴルフクラブ選択装置10の動作全体を制御する制御部として機能する。なお、これらの機能構成の一部または全部は、ハードウェアで実現されていてもよい。
【0126】
メモリ110は、複数の予め用意されたゴルフクラブのスペック情報(フェース角、シャフト軸まわり慣性モーメント、重心角、シャフト情報、ゴルフクラブの質量、長さなど)を記憶する。
【0127】
また、メモリ110は、算出部210での算出に用いられる各種データ(上述した式、グラフ、および表など)を記憶する。具体的には、メモリ110は、打球のサイドスピン量に影響を与えるゴルフクラブのスペック情報に基づいて、打球の左右方向への飛翔特性の指標となる捕まり係数を算出するための演算式(たとえば、式(1))を記憶する。より具体的には、当該演算式は、ゴルフクラブのフェース角と、シャフト軸まわりの慣性モーメントと、重心角とを説明変数とし、ゴルフクラブに対してゴルファにより付与された捕まり評価値を目的変数として回帰分析を行なうことにより得られる回帰式である。
【0128】
さらに、メモリ110は、第1の演算式を用いて求められた複数のゴルフクラブの捕まり係数と、当該複数のゴルフクラブをゴルファが使用した際に発生したサイドスピン量との相関関係(たとえば、
図9に示すグラフ800)を記憶する。メモリ110は、この相関関係に基づいて、被験者の打球のサイドスピン量(実測値)に適合する捕まり係数(推奨捕まり係数)を算出するための演算式(たとえば、式(2)または(3))を記憶する。また、メモリ110は、この相関関係に基づいて、被験者に適するゴルフクラブの選択基準となる適正サイドスピン量を算出するための演算式(たとえば、式(4))を記憶する。
【0129】
さらに、メモリ110は、ヘッドスピードと推奨クラブ質量との相関関係を示す関係式(たとえば、式(5))および適正ヘッドスピードとクラブ質量との相関関係を示す関係式(たとえば、式(6))を記憶する。
【0130】
さらに、メモリ110は、複数のゴルフクラブをゴルファが使用したときの打球のサイドスピン量およびバックスピン量の相関関係を示す演算式(たとえば、式(8))を記憶する。メモリ110は、この演算式(式(8))から定められる推奨捕まり係数の補正式(たとえば、式(7))を記憶する。メモリ110は、複数のゴルフクラブの各々に対してゴルファにより付与された捕まり評価値と、シャフト情報との相関関係を示す演算式(たとえば、
図15に示す直線の式)を記憶する。
【0131】
計測情報入力部200は、計測装置20での計測情報の入力を受け付ける。具体的には、計測情報入力部200は、通信インターフェイス140を介して、計測装置20から計測情報(サイドスピン量、バックスピン量、ヘッドスピードなど)を取得する。また、計測情報入力部200は、入力装置120を介して、計測装置20での計測情報の入力を受け付けてもよい。
【0132】
算出部210は、ゴルフクラブのスペック情報を式(1)に適用して、ゴルフクラブの捕まり係数を算出する。また、算出部210は、計測装置20により得られたサイドスピン量と式(2)(または式(3))とに基づいて、被験者に推奨する捕まり係数(推奨捕まり係数)を算出する。また、算出部210は、ゴルフクラブの捕まり係数を式(4)に適用してゴルフクラブの適正サイドスピン量を算出する。また、算出部210は、計測装置20により得られたヘッドスピードと式(5)とに基づいて、被験者に推奨するクラブ質量(推奨クラブ質量)を算出する。また、算出部210は、ゴルフクラブのクラブ質量を式(6)に適用して適正ヘッドスピードを算出する。
【0133】
別の局面では、算出部210は、被験者の打球のサイドスピン量およびバックスピン量と、式(8)とに基づいて、推奨捕まり係数を補正する。具体的には、算出部210は、式(8)から定められる補正式(7)により、推奨捕まり係数を補正する。
【0134】
さらに、別の局面では、算出部210は、メモリ110に記憶されたゴルフクラブのシャフト情報と演算式(
図15に示す直線の式)とに基づいて捕まり係数を補正する。具体的には、算出部210は、捕まり評価値とシャフト情報であるEI200/EI940とを線形近似した直線を用いて捕まり係数を補正する。
【0135】
選択部220は、算出部210の算出結果または計測情報と、メモリ110に記憶された情報(上述の数式など)とを用いて、被験者に適したゴルフクラブを選択する。具体的には、選択部220は、予め用意された複数のゴルフクラブの各々の適正サイドスピン量と、計測されたサイドスピン量とに基づいて、予め用意された複数のゴルフクラブから被験者に適したゴルフクラブを選択する。たとえば、選択部220は、計測されたサイドスピン量に最も近い適正サイドスピン量を有するゴルフクラブを選択する。
【0136】
また、選択部220は、複数の予め用意されたゴルフクラブの各々の捕まり係数と、推奨捕まり係数とに基づいて、複数の予め用意されたゴルフクラブから被験者に適したゴルフクラブを選択してもよい。この場合、選択部220は、推奨捕まり係数に最も近い捕まり係数を有するゴルフクラブを選択する。
【0137】
また、選択部220は、ゴルフクラブの適正サイドスピン量に応じて設定された上限閾値と下限閾値とからなる所定の範囲内に、計測されたサイドスピン量が含まれている場合、当該ゴルフクラブを被験者に適するゴルフクラブとして選択してもよい。また、選択部220は、ゴルフクラブの捕まり係数に応じて設定された上限閾値と下限閾値とからなる所定の範囲内に、計測されたサイドスピン量から求められた推奨捕まり係数が含まれている場合、当該ゴルフクラブを被験者に適するゴルフクラブとして選択してもよい。
【0138】
さらに、選択部220は、計測装置20により計測された被験者のヘッドスピードに適した質量のゴルフクラブを選択する。具体的には、選択部220は、計測されたヘッドスピードを式(5)に適用して求められる推奨クラブ質量と、複数の予め用意されたゴルフクラブのクラブ質量とを比較して、推奨クラブ質量に最も近いクラブ質量のゴルフクラブを被験者に適したゴルフクラブとして選択する。
【0139】
表示制御部230は、選択部220により選択されたゴルフクラブをディスプレイ130に表示させる。また、表示制御部230は、選択されたゴルフクラブのスペック情報をディスプレイ130に表示してもよい。さらに、表示制御部230は、
図11に示すような表示画面をディスプレイ130に表示してもよい。
【0140】
<処理手順>
次に、
図17を参照して、本実施の形態に従うゴルフクラブ選択装置10の処理手順について説明する。
【0141】
図17は、本実施の形態に従うゴルフクラブ選択装置10の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下の各ステップは、CPU100がメモリ110に格納されたプログラムを実行することによって実現される。
【0142】
図17を参照して、CPU100は、通信インターフェイス140を介して、計測装置20から計測結果の入力を受け付けた(計測結果を取得した)か否かを判断する(ステップS10)。計測結果は、サイドスピン量、バックスピン量、およびヘッドスピードを含む。計測結果を取得していない場合には(ステップS10においてNO)、CPU100は、ステップS10の処理を繰り返す。これに対して、計測結果を取得した場合には(ステップS10においてYES)、CPU100は、計測されたサイドスピン量を、式(2)に適用して推奨捕まり係数を算出する(ステップS11)。
【0143】
次に、CPU100は、推奨捕まり係数を補正するか否かを判断する(ステップS12)。具体的には、CPU100は、入力装置120を介して、ユーザから補正の指示を受け付けた場合には、当該補正をすると判断する。あるいは、CPU100は、予め定められた設定条件により、補正するか否かを判断してもよい。
【0144】
当該補正をしない場合には(ステップS12においてNO)、CPU100は、後述するステップS14の処理を実行する。これに対して、当該補正をする場合には(ステップS12においてYES)、CPU100は、計測されたサイドスピン量およびバックスピン量と、補正式(式(7))とに基づいて、推奨捕まり係数を補正する(ステップS13)。
【0145】
次に、CPU100は、推奨捕まり係数(ステップS13にて補正している場合には、補正された推奨捕まり係数)と、予め用意されたゴルフクラブの各捕まり係数とに基づいて、被験者に適するゴルフクラブを選択する(ステップS14)。具体的には、CPU100は、予め用意された複数のゴルフクラブの各々について、当該ゴルフクラブの捕まり係数に応じて設定された上限閾値および下限閾値からなる所定の範囲内に推奨捕まり係数が含まれている場合、当該ゴルフクラブを被験者に適するゴルフクラブとして選択する。
【0146】
さらに、計測されたヘッドスピードも考慮してもよい。具体的には、CPU100は、計測されたヘッドスピードから式(5)を用いて推奨クラブ質量を算出する。そして、CPU100は、推奨捕まり係数および推奨クラブ質量を示す点が、予め用意された複数のゴルフクラブの各々について、当該ゴルフクラブの捕まり係数に応じて設定された上限閾値および下限閾値と、当該ゴルフクラブのクラブ質量に応じて設定された上限閾値および下限閾値とからなる所定の範囲に収まる場合には、当該ゴルフクラブを被験者に適するゴルフクラブとして選択する(
図11(b)参照)。
【0147】
なお、上述したステップS14において、予め用意された複数のゴルフクラブの捕まり係数は、シャフト情報を用いて補正された捕まり係数であってもよい。
【0148】
また、CPU100は、推奨捕まり係数を基準とした上限閾値と下限閾値とからなる所定の範囲内の捕まり係数を有するゴルフクラブ全てをディスプレイ130に表示してもよい。さらに、CPU100は、選択されたゴルフクラブに優先順位を付けてディスプレイ130に表示してもよい。たとえば、推奨捕まり係数に近い捕まり係数ほど優先順位が高いとする。
【0149】
<その他>
(捕まり係数と捕まり評価値との妥当性)
上記の(捕まり係数について)において、式(1)に示す重回帰式の妥当性について説明した。ここでは、この重回帰式についてさらに検証するため、表2に示した結果を収集するために試打させたゴルファとは異なる6名のゴルファに試打させて、表2に示した項目のデータを収集した。
【0150】
具体的には、この異なる6名のゴルファに、13本(F1〜F13)について試打させて、各々官能評価(捕まり具合の評価)をさせた。官能評価は、各々のゴルファが、各々のゴルフクラブに対して、7点満点で1点、2点、3点・・・と点数を付けることによって行なった。ここで、7点が最も評価が高く、1点が最も評価が低い。また、7点から1点までの点数間隔はいずれも同じ尺度である。なお、各々のゴルフクラブの捕まり評価値は、6名のゴルファの当該ゴルフクラブに対する捕まり評価値の平均値とした。
【0151】
本願発明者は、フェース角FA、シャフト軸まわりの慣性モーメントIs/100および重心角GAを各々説明変数とし、「捕まり評価値」を目的変数として重回帰分析を行なった。この結果算出された回帰式を次式(9)に示す。
【0153】
式(9)を用いることにより、各々のゴルフクラブのフェース角FAと、シャフト軸まわりの慣性モーメントIsと、重心角GAとに基づいて、予測された「捕まり評価値」である「捕まり係数」を算出できる。収集されたデータを表6に示す。
【0155】
式(9)に示す重回帰式の妥当性については、
図18に示されるとおりである。すなわち、式(9)の重回帰式の決定係数R
2は0.57である。式(9)の重回帰式でも、高い決定係数が得られていることがわかる。
【0156】
ここで、式(1)の重回帰式係数と式(9)の重回帰式係数とを比較すると、絶対値については若干の違いはあるものの、正負は同じである。すなわち、フェース角FAおよびシャフト軸まわりの慣性モーメントIsが大きいほど捕まり係数は小さくなり、重心角GAが大きいほど捕まり係数は大きくなる。
【0157】
式(1)の重回帰式係数と式(9)の重回帰式係数とが異なる値となったのは、データを収集するゴルファが異なることが主な原因と考えられる。換言すると、極端なスイングを行なうゴルファでデータを収集した場合には、重回帰係数が異なる可能性がある。
【0158】
スライススピンとなるスイングの主要素は、打点がフェース面のヒールより、インパクト時のフェース角がオープン、スイングパスがアウトサイドインであることの3つである。また、フックスピンとなるスイングの主要素は、打点がフェース面のトゥより、インパクト時のフェース角がクローズ、スイングパスがインサイドアウトであることの3つである。
【0159】
ここで、スライススピンが出やすいゴルファにおいて、打点がフェース面のヒールよりの傾向が強い場合にはIs/100の影響度を大きくするために係数a1の絶対値を大きく設定し、スイングパスがアウトサイドインの傾向が強い場合には重心角GAの影響度を大きくするために係数a2の絶対値を大きく設定し、インパクトフェースがオープンの傾向の強い場合にはフェース角FAの影響度を大きくするために、係数a3の絶対値を大きく設定することが考えられる。すなわち、係数a1,a2,a3は、被験者のインパクトフェース角、トゥヒール方向の打点、およびスイングパスに応じて変更されてもよい。
【0160】
同様に、フックスピンが出やすいゴルファにおいて、打点がフェース面のトゥよりの傾向が強い場合にはIs/100の影響度を大きくするために係数a1の絶対値を大きく設定し、スイングパスがインサイドアウトの傾向が強い場合には重心角GAの影響度を大きくするために係数a2の絶対値を大きく設定し、インパクトフェースがクローズの傾向の強い場合にはフェース角FAの影響度を大きくするために係数a3の絶対値を大きく設定することが考えられる。
【0161】
なお、重回帰式の妥当性を考慮すると、各々の説明変数の係数は正負が逆転しない範囲で、絶対値が0以上1以下であることが好ましいと考えられる。つまり、係数a1は−1以上0以下であり、係数a2は0以上1以下であり、係数a3は−1以上0以下であることが好ましい。また、各々の説明変数の係数を変更した場合、切片a0は、データベースの母集団の捕まり係数の平均が4.5になるように調整した値にするのが望ましい。
【0162】
上述したインパクトフェース、スイングパス、打点の計測は、インパクト直前でのハイスピードでの連続画像の解析からヘッドの運動を求めることで行なわれる。しかしながら、3軸加速度センサと3軸ジャイロセンサとを搭載したモーションセンサで計測する場合であってもよい。また、打点は、フェースシールで打痕から計測する場合でもよい。
【0163】
(説明変数について)
上記では、フェース角FA、シャフト軸まわりの慣性モーメントIsおよび重心角GAを各々説明変数とし、「捕まり評価値」を目的変数として重回帰分析を行なう場合について説明した。しかしながら、本願発明者は、フェース角FA、シャフト軸まわりの慣性モーメントIs/100、および重心角GAのうちの2つを説明変数とし、「捕まり評価値」を目的変数として重回帰分析を行ない、以下のような結果を得ている。
【0164】
まず、表2に示したフェース角FA、シャフト軸まわりの慣性モーメントIs/100とを各々説明変数とし、「捕まり評価値」を目的変数として重回帰分析を行なった結果、算出された回帰式を次式(10)に示す。
【0166】
式(10)に示す重回帰式の決定係数R
2は0.55である。
また、表2に示したフェース角FA、重心角GAとを各々説明変数とし、「捕まり評価値」を目的変数として重回帰分析を行なった結果、算出された回帰式を次式(11)に示す。
【0168】
式(11)に示す重回帰式の決定係数R
2は0.58である。
さらに、表2に示したシャフト軸まわりの慣性モーメントIs/100と、重心角GAとを各々説明変数とし、「捕まり評価値」を目的変数として重回帰分析を行なった結果、算出された回帰式を次式(12)に示す。
【0170】
式(12)に示す重回帰式の決定係数R
2は0.28である。
いずれの場合においても、高い決定係数が得られているといえる。この結果から、捕まり係数は、フェース角FA、シャフト軸まわりの慣性モーメントIs/100、および重心角GAのいずれか2つを説明変数とする重回帰式から求められる場合であってもよい。すなわち、サイドスピン量に影響を与えるゴルフクラブのスペック情報は、フェース角FAと、シャフト軸まわりの慣性モーメントおよび重心角のうち少なくとも2つを含む。
【0171】
ただし、説明変数にフェース角FAを含む重回帰式の決定係数R
2はかなり高いことから、式(12)よりも、フェース角FAと、シャフト軸まわりの慣性モーメントIs/100および重心角GAのいずれかを説明変数とする式(10)、式(11)の方がより有効な式であるといえる。
【0172】
(サイドスピン量の予測)
上記では、打球のサイドスピン量を弾道測定器を用いて計測する場合について説明したが、これに限られない。たとえば、ゴルフクラブと一体型の計測装置により得られた計測情報からサイドスピン量を演算(予測)する場合であってもよい。具体的には、この計測装置は、加速度センサ、歪みセンサ、各種データ演算処理を行う演算部、演算部で用いられるデータを記憶するメモリなどを含むセンサ装置である。より詳細には、これは、ミズノ株式会社製の計測装置「シャフトオプティマイザー」である。
【0173】
当該センサ装置は、ヘッドスピード、スイングテンポ、トゥダウン量(インパクト直前のトゥダウン方向のシャフトたわみ量)、前反り角(インパクト時にシャフト前方向に反る角度)、しなりスピード(インパクト直前のシャフトのしなり戻りの速度)、スイング半径(インパクト直前のクラブの回転中心からヘッドまでの距離)などの複数のスイングデータを計測(取得)することが可能である。
【0174】
35名のゴルファ(X1〜X35)に、8本のゴルフクラブで試打させて、各々のゴルフクラブを試打した場合の打球のサイドスピン量を弾道測定器により計測した。そして、各々のゴルファについて、センサ装置を使用して試打させて得られた上記の各計測情報から打球のサイドスピン量を予測した。具体的には、以下の式(13)に示す回帰式により予測した。つまり、ヘッドスピード、前反り角、しなりスピード、およびスイング半径を各々説明変数とし、「サイドスピン量」を目的変数として重回帰分析を行なった。
【0176】
以下の表7に、弾道測定器によるサイドスピン量の実測値と、式(13)によるサイドスピン量の予測値との比較結果を示す。
【0178】
式(13)の重回帰式の決定係数R
2は0.42である。そのため式(13)の重回帰式では、比較的良い決定係数が得られている。そのため、センサ装置は、取得した上記スイングデータに、式(13)を適用してサイドスピン量を予測することができる。なお、センサ装置のメモリには、スイングデータおよび式(13)が記憶されていてもよい。
【0179】
弾道測定器によりサイドスピン量を計測する場合には、被験者のレベルによっては打球のサイドスピン量はバラツキが大きくなる。そのため、多くの時間を要するとともに被験者に対する負担も多い。しかしながら、シャフトオプティマイザーによると、3球程度試打するだけで、上記の計測情報からサイドスピン量が予測できるため、短時間で計測が可能であるとともに被験者に対する負担を軽減することができる。
【0180】
(シャフト軸まわりの慣性モーメントの推定)
図19は、シャフト軸まわりの慣性モーメントと重心距離との関係を示す図である。
図19に示すように、ゴルフクラブのシャフト軸まわりの慣性モーメントIsは、重心距離CGとの相関が強い。なお、重心距離CGは、シャフト軸線からヘッド重心までの最短距離のことである。シャフト軸まわりの慣性モーメントIsおよび重心距離CGを線形近似した直線は以下の式(14)のとおりである。
【0182】
そのため、ゴルフクラブのシャフト軸まわりの慣性モーメントは実測値であってもよいが、式(14)を用いて重心距離CGから推定した値であってもよい。
【0183】
(捕まり係数の求め方)
上記では、ゴルフクラブのフェース角FAと、シャフト軸まわりの慣性モーメントIsと、重心角GAとを説明変数とし、捕まり評価値を目的変数として、捕まり係数を求める場合について説明したが、これに限られない。
【0184】
図9中のグラフ800に示したように、捕まり係数はサイドスピン量と相関関係が強いことがわかる。そのため、ゴルフクラブのフェース角FA、シャフト軸まわりの慣性モーメントIs、および重心角GA(または、これらの少なくとも2つを)を説明変数とし、付与された評価値の代わりにサイドスピン量を目的変数として、予測されたサイドスピン量である捕まり係数を求めてもよい。
【0185】
(プログラム)
なお、コンピュータを機能させて、上述のフローチャートで説明したような制御を実行させるプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、ROM、RAMおよびメモリカードなどの一時的でないコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0186】
プログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
【0187】
また、本実施の形態にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本実施の形態にかかるプログラムに含まれ得る。
【0188】
<実施の形態の効果>
本実施の形態によると、フックスピンが出やすい、またはスライススピンが出やすいなどのゴルファの傾向に合わせて、ゴルファに適したスペックをもつゴルフクラブを提供することができる。
【0189】
また、本実施の形態によると、ゴルフクラブのスペックからサイドスピン量に影響を与えるものとして、フェース角、シャフト軸まわり慣性モーメントおよび重心角の少なくとも1つとを抽出し、これらを総合的に考慮して被験者に適するゴルフクラブを選択することができる。
【0190】
また、本実施の形態によると、さらにバックスピン量を考慮して被験者に適するゴルフクラブを選択することが可能である。そのため、バックスピン量の大小のゴルファの傾向に合わせて、ゴルファに適するゴルフクラブをより精度良く提供することができる。
【0191】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。