【実施例】
【0049】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
各実施例において得られた化合物は、核磁気共鳴分析法(NMR:
1H−NMR、
13C−NMR)、赤外線吸収分析法(IR)、質量分析法(MS)、高分解能質量分析法(電子イオン化)(HRMS(EI))、元素分析法(Anal.)により分析した。なお、
1H−NMRにおける多重度は、s=singlet(一重線)、d=doublet(二重線)、t=triplet(三重線)、q=quintet(四重線)、m=multiplet(多重線)、dd=double doublet(ダブルダブレット)、br s=broad singlet(ブロードシングレット)を示す。また、Jは結合定数を示す。なお、各NMRにおいては、CDCl
3を溶媒として用いた。
【0051】
(実施例1)
<3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(3−Me−4−Oxa−5−Azahomoadamantane)の合成>
【0052】
【化5】
【0053】
前記式に示す反応経路のとおり、3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタンを合成した。なお、出発原料の7−メチレビシクロ[3.3.1]ノナン−3−オンオキシムは澁谷正俊らが報告している方法で合成した(澁谷正俊ら、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー、2006年、128巻、26号、p.8412−8413(非特許文献3))。
【0054】
(1−1)7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−オンオキシムの合成
【0055】
【化6】
【0056】
前記式に示す反応経路のとおり、7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−オンオキシムを合成した。すなわち、先ず、7−メチレビシクロ[3.3.1]ノナン−3−オンオキシム(2.90g、17.6mmol)のメタノール(MeOH、59mL)溶液に、10%パラジウム炭素(290mg)加え、水素雰囲気下にて室温で4時間攪拌した。次いで、反応溶液をセライトろ過し、減圧下で溶媒を除去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−オンオキシム(2.89mg、収率99%)を白色結晶として得た。
【0057】
以下に得られた7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−オンオキシムについての
1H−NMR、
13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)の結果を示す。
【0058】
1H−NMR(400MHz):δ 8.26(br s、 1H)、5.42 and 5.36(each d、J=5.4Hz、total 1H)、3.24−3.17(m、1H)、2.49(br s、1H)、2.41−2.15(m、4H)、2.05−1.70(m、 4H)、 1.61(s、 3H);
13C−NMR(100MHz):δ 159.1、158.9、133.91、133.89、124.12、124.05、39.4、37.5、36.80、36.76、31.5、31.1、30.2、29.8、29.4、29.1、28.1、23.3、23.2;
IR(neat[cm
−1]):3235、2910、1664、1454、1432;
MS[m/z]:165(M
+)、165(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C
10H
15NO:165.1154、found:165.1144。
【0059】
(1−2)N−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンの合成
【0060】
【化7】
【0061】
前記式に示す反応経路のとおり、N−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンを合成した。すなわち、先ず、上記(1−1)で得られた7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−オンオキシム(500mg、3.03mmol)の1:1エタノール−テトラヒドロフラン(EtOH−THF、1:1、15mL)溶液に、室温下、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
3CN、571mg、9.09mmol)及びトリフルオロ酢酸(TFA、450μL、6.06mmol)を加えた。この溶液を3時間攪拌した後、室温下、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
3CN、381mg、6.06mmol)及びトリフルオロ酢酸(TFA、225μL、3.03mmol)を更に加え、3時間攪拌した。反応液に飽和重曹水を加え、クロロホルムで水層を抽出して除き、有機層を更に飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下において濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンのエンド体及びエキソ体の混合物(エンド体:エキソ体=2.5:1、507mg、3.03mmol、収率100%)の無色液体を得た。N−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンのエンド体及びエキソ体の混合物は、一部、分離することができた。
【0062】
以下に得られたN−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンのエンド体についての
1H−NMR、
13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)の結果を示す。
【0063】
1H−NMR(400MHz):δ5.69(d、J=6.0Hz、1H)、3.17(t、J=6.4Hz、1H)、2.36−2.26(m、2H)、2.16(br s、1H)、2.02−1.80(m、4H)、1.68−1.51(m、3H)、1.65(s、3H);
13C−NMR(100MHz):δ134.4、128.7、56.6、37.6、33.5、31.4、30.7、27.8、25.8、23.4;
IR(neat[cm
−1]):3289、2917、1434;
MS[m/z]:167(M
+)、150(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C
10H
17NO:167.1310、found:167.1301。
【0064】
以下に得られたN−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンのエキソ体についての
1H−NMR、
13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)の結果を示す。
【0065】
1H−NMR(400MHz):δ5.47(d、J=6.0 Hz、1H)、3.19−3.10(m、1H)、2.39−2.22(m、3H)、1.90−1.74 (m、3H)、1.62−1.51(m、3H)、1.65(s、3H)、1.33(dt、J=3.8、12.2Hz、1H)、1.20(dt、J=3.8、12.2Hz、1H);
13C−NMR(100MHz):δ135.8、125.3、54.6、38.1、37.2、34.0、31.6、29.4、27.6、23.1;
IR(neat[cm
−1]):3250、2921、1434;
MS[m/z]:167(M
+)、150(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C
10H
17NO:167.1310、found:167.1297。
【0066】
(1−3)3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタンの合成
【0067】
【化8】
【0068】
前記式に示す反応経路のとおり、3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタンを合成した。すなわち、先ず、上記(1−2)で得られたN−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンのエンド体及びエキソ体の混合物(507mg、3.03mmol)のジクロロメタン(CH
2Cl
2、30mL)溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH、1.35mL、15.2mmol)を0℃にてゆっくりと加え、その後、同温度で1時間攪拌した。その後、反応液に飽和重曹水を加え、クロロホルムで水層を抽出して除き、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下において濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(338mg、2.02mmol、収率67%)を白色個体として得た。その際に、N−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンのエキソ体(132mg、0.79mmol、26%)を分離した。
【0069】
以下に得られた3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタンの
1H−NMR、
13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)、Anal.の結果を示す。
【0070】
1H−NMR(400 MHz):δ4.68(br s、1H)、3.56(s、1H)、2.05−2.02(m、2H)、1.93−1.69(m、8H)、1.59−1.48(m、2H)、1.22(s、3H);
13C−NMR(100MHz):δ81.1、55.5、42.4、37.2、34.7、30.2、26.7;
IR(neat[cm
−1]):3243、2905;
MS[m/z〕:167(M
+)、150(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C
10H
17NO:167.1310、found:167.1302;
Anal.:Calcd. for C
10H
17NO:C、71.81;H、10.25.84;N、8.37、found:C、71.65;H、10.33;N、8.39。
【0071】
(実施例2)
<4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(4−Oxa−5−Azahomoadamantane)の合成>
【0072】
【化9】
【0073】
前記式に示す反応経路のとおり、4−オキサ−5−アザホモアダマンタンを合成した。なお、出発原料のビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イルアミンは澁谷正俊らが報告している方法で合成した(澁谷正俊ら、シンセシス、2011年、21号、p.3418−3425(非特許文献6))。
【0074】
(2−1)O−ベンゾイル−N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンの合成
【0075】
【化10】
【0076】
前記式に示す反応経路のとおり、O−ベンゾイル−N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンを合成した。すなわち、先ず、ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イルアミン(1.00g、7.29mmol)のジメチルホルムアミド(DMF、15mL)溶液に、氷冷下、過酸化ベンゾイル((PhCO
2)
2、1.94g、8.02mmol)及びリン酸水素二カリウム(K
2HPO
4、1.91g、10.94mmol)を加えた後、室温にて5時間攪拌した。次いで、ピペリジン(2mL、1.5mmol)と水とを加え、30分間攪拌した。その後、ジエチルエーテルで水層を抽出して除き、有機層を更に飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下において濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、O−ベンゾイル−N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミン(970mg、3.77mmol、収率52%)を白色個体として得た。その際に、N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ベンズアミド(427mg、1.77mmol、収率24%)も得られた。
【0077】
以下に得られたビシクロO−ベンゾイル−N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンについての
1H−NMR、
13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)の結果を示す。
【0078】
1H−NMR(400MHz):δ8.46(br s、1H)、8.05−7.98(m、2H)、7.59−7.55(m、1H)、7.55−7.36(m、2H)、6.15−6.10(m、1H)、5.95−5.85(m、1H)、3.59(s、1H)、2.48−2.37(m、1H)、2.34(s、1H)、2.21−2.07(m、2H)、2.05−1.92(m、3H)、1.88−1.78(m、1H)、1.73(d、J=12.0、1H)、1.59(d、J=12.0、1H);
13C−NMR(100MHz):δ166.1、134.4、132.9、129.1、128.7、128.4、128.0、54.4、33.5、32.7、31.8、31.0、27.4、25.2;
IR(neat[cm
−1]):3246、2922、1715、1271;
MS[m/z]:257(M
+)、136(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C
10H
19NO
2:257.1416,found:257.1418。
【0079】
以下に得られたN−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ベンズアミドについての
1H−NMR、
13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)の結果を示す。
【0080】
1H−NMR(400MHz):δ7.80−7.60(m、2H)、7.60−7.30(m、3H)、7.53(br s、1H)、6.28−6.16(m、1H)、6.02−5.92(m、1H)、4.58−4.46(m、1H)、2.57−2.45(m、1H)、2.44(s、1H)、2.26(s,1H)、2.16−2.03(m、2H)、2.00−1.90(m、2H)、1.88−1.73(m、2H)、1.67−1.59(m、1H);
13C−NMR(100MHz):δ165.4、135.3、135.2、131.0、128.9、128.5、126.6、43.1、37.4、34.1、32.7、31.1、27.9、25.6;
IR(neat[cm
−1]):3344、2916、1629;
MS[m/z]:241(M
+)、241(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C
16H
19NO:241.1467、found:241.1445。
【0081】
(2−2)N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンの合成
【0082】
【化11】
【0083】
前記式に示す反応経路のとおり、N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンを合成した。すなわち、先ず、上記(2−1)で得られたO−ベンゾイル−N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミン(268mg、1.04mmol)のエタノール(EtOH)溶液(10mL)に三ヒドラジン一水和物(1.5mL、31.2mmol)を加えて室温下で3時間攪拌した。その後、減圧下において溶媒を留去し、残渣を水及びクロロホルムで薄め、クロロホルムで水層を抽出して除き、有機層を炭酸カリウムで乾燥させ、減圧下において濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミン(140mg、0.91mmol、収率88%)を白色個体として得た。
【0084】
以下に得られたN−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンについての
1H−NMR、
13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)の結果を示す。
【0085】
1H−NMR(400MHz):δ6.11−5.95(m、1H)、5.75−5.65(m、1H)、3.28−3.15(m、1H)、2.48−2.35(m、1H)、2.29(s、1H)、2.16(s,1H)、2.05−1.85(m、4H)、1.75−1.60(m、2H)、1.59−1.50(m、1H);
13C−NMR(100MHz):δ135.0、127.7、56.5、33.5、32.9、31.1、30.5、27.6、25.4;
IR(neat[cm
−1]):3235、2905、1432;
MS[m/z]:153(M
+)、136(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C
9H
15NO:153.1154、found:153.1144。
【0086】
(2−3)4−オキサ−5−アザホモアダマンタンの合成
【0087】
【化12】
【0088】
前記式に示す反応経路のとおり、4−オキサ−5−アザホモアダマンタンを合成した。すなわち、先ず、上記(2−2)で得られたN−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミン(220mg、1.38mmol)のジクロロメタン(CH
2Cl
2、14mL)溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH、637μL、7.20mmol)を0℃にてゆっくりと加え、その後、同温度で30分間攪拌した。その後、反応液に飽和重曹水を加え、クロロホルムで水層を抽出して除き、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下において濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(212mg、1.38mmol、収率99%)を白色個体として得た。
【0089】
以下に得られた4−オキサ−5−アザホモアダマンタンについての
1H−NMR、
13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)、Anal.の結果を示す。
【0090】
1H−NMR(400 MHz):δ4.54(br s、1H)、4.45−4.40(m、1H)、3.61(s、1H)、2.08−2.00(m、2H)、C、1.88−1.80(m、4H)、1.73(br d、J=13.6、2H)、1.58(s、2H);
13C−NMR(100MHz):δ77.0、55.3、37.6、36.4、34.8、26.2;
IR(neat[cm
−1]):2901;
MS[m/z〕:153(M
+)、136(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C
9H
15NO:153.1154、found:153.1149;
Anal.:Calcd. for C
9H
15NO:C、70.55;H、9.87.;N、9.13、found:C、70.22;H、9.87;N、9.03。
【0091】
実施例1〜2の結果から、数工程で容易に本発明のアルコキシアミン化合物を製造できることが確認された。
【0092】
<活性評価1>
実施例1で得られた3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタンをそのまま触媒として用い、種々のアルコールに対する酸化触媒としての機能を調べた。
【0093】
【化13】
【0094】
前記式に示す反応経路のとおり、種々のアルコールに対する酸化反応を行った。すなわち、表1に示すアルコール(substrate、1.00mmol)、3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(1.67mg、10μmol)、臭化カリウム(KBr、11.9mg、0.100mmol)を、ジクロロメタン(CH
2Cl
2、2.7mL)及び飽和重曹水溶液(1mL)の混合溶液に溶かし氷冷下攪拌した。反応液に1.45mol/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液(1.00mL、1.50mmol)の飽和重曹水溶液(1.7mL)をゆっくりと滴下し、同温で20分間激しく攪拌した。その後、反応液に20%亜硫酸ナトリウム水溶液(3mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的化合物(product、収率84−100%)を得た。
【0095】
ただし、表1中、aは次亜塩素酸ナトリウムがアルコールのヒドロキシ基100モルに対して120モルとなるように添加したことを示し、bは次亜塩素酸ナトリウムがアルコールのヒドロキシ基100モルに対して250モルとなるように添加したことを示す。なお、表1中、Phはフェニル基を示し、Cbzはベンジルオキシカルボニル基を示す。
【0096】
【表1】
【0097】
表1に示した結果から明らかなように、本発明のアルコール酸化触媒(3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタン)は、種々の第1級及び第2級アルコールに対して酸化触媒として機能し、目的化合物として各アルコールに対応するアルデヒド又はケトンを高収率で得ることができることが確認された。また、立体的に嵩高く、かつ複雑な構造のアルコールにおいても高収率で目的化合物が得られており、単純なベンジルアルコールや脂肪族アルコールのみならず、ヘテロ原子を有するアルコールや糖アルコール等の幅広いアルコールも基質として酸化せしめることができることが確認された。
【0098】
<活性評価2>
実施例2で得られた4−オキサ−5−アザホモアダマンタンをそのまま触媒として用い、アルコールに対する酸化触媒としての機能を調べた。
【0099】
【化14】
【0100】
前記式に示す反応経路のとおり、l−メントールを基質として酸化反応を行った。すなわち、l−メントール(156mg、1.00mmol)、4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(1.53mg、10μmol)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3、167.7、2.00mmol)をジクロロメタン(CH
2Cl
2、5mL)に溶かし氷冷下攪拌した。反応液にトリクロロイソシアヌル酸(TCCA、122.1mg、0.50mmol)を加え、同温で反応させた。
【0101】
次いで、反応後の反応液を12.5μlとり、アセトン0.5mlで希釈したものをサンプルとし、このサンプルについてガスクロマトグラフィー(カラム:HP−5(30×0.32mm(i.d);Agilent technologies社製)、機器:Agilent 7890 GC system、製造社:Agilent technologies、水素炎イオン検出器(FID):270℃、インジェクション:250℃、キャリアーガス:ヘリウム、キャリアーガス速度:25mL/min、カラム温度:70℃ (2分間)、昇温条件:20℃/minで210℃まで昇温後210℃で1分間)を用いて得られたピークから残存基質エリア面積(残存基質量)、生成したケトン及び/又はアルデヒドのエリア面積(生成物量)を求め、変換率を次式:
変換率(%)=(生成物量/(残存基質量+生成物量))×100
により算出した。その結果、速やかに酸化反応が進行し、反応開始から1.5時間経過した時点で変換率が100%となった。
【0102】
以上の結果より、本発明に係るホモアダマンタン骨格を有するアルコキシアミン化合物はいずれも、アルコールを基質として酸化せしめることができ、十分に高いアルコール酸化触媒活性を発揮することが確認された。