【実施例1】
【0036】
a)まず、本実施例1の固体酸化物形燃料電池の概略構成について説明する。
図1に示す様に、固体酸化物形燃料電池201は、燃料ガス(例えば水素)と酸化剤ガス(例えば空気:詳しくは空気中の酸素)との供給を受けて発電を行う装置である。以下「固体酸化物形」は省略することもある。
【0037】
この燃料電池201は、発電単位(発電セル)である平板形の燃料電池セル203が、複数個(例えば24段)積層された燃料電池スタック205と、燃料電池スタック205を積層方向(
図1(b)の上下方向)貫く複数のボルト211〜218と、各ボルト211〜218の端部(ここでは上部)に螺合する各ナット219(総称)とを備えている。
【0038】
なお、前記燃料電池スタック205は、複数個の燃料電池セル203が電気的に直列に接続されたものである。
また、
図1(a)、(b)に示す様に、各ボルト211〜218のうち、第2ボルト212に螺合するナット219には、燃料ガスを燃料電池201に供給する燃料ガス導入管221が設けられ、第4ボルト214に螺合するナット219には、空気を燃料電池201に供給する空気導入管223が設けられ、第6ボルト216に螺合するナット219には、発電後の燃料ガスを燃料電池201から排出する燃料ガス排出管225が設けられ、第8ボルト218に螺合するナット219には、発電後の酸化剤ガス(以下、単に空気と記すこともある)を燃料電池201から排出する空気排出管227が設けられている。
【0039】
以下、各構成について説明する。
・
図2に示す様に、前記燃料電池スタック205を構成する各燃料電池セル203は、いわゆる燃料極支持膜形タイプの板状の燃料電池セル203であり、この燃料電池セル203には、上下一対の(導電性を有する)インターコネクタ243、243の間に、燃料ガスが流れる燃料流路231と空気が流れる空気流路233とが分離して設けられている。
【0040】
また、燃料電池セル203には、燃料流路231側に、板状の燃料極(アノード)235が配置されているとともに、燃料極235の表面(
図2上側)には、薄膜の固体電解質層である固体酸化物層237が形成されている。更に、固体酸化物層237の表面(
図2上側)には、薄膜の空気極(カソード)239が形成されている。なお、燃料極235と固体酸化物層237と空気極239とをセル本体(単セル)241と称する。
【0041】
更に、燃料電池セル203内には、燃料極235と
図2下側のインターコネクタ243との間に、(金属メッシュ等からなる通気性を有する)燃料極側集電体253が配置され、また、各インターコネクタ243の一方(
図2下方)の表面には、空気極側集電体255となるブロック状の多数の凸部が一体に形成されている。
【0042】
また、この燃料電池セル203は、セル本体(単セル)241を囲むように、空気極239側のシート状のガスシール部(内部ガスシール部)245と、セル本体(単セル)241の外縁部(詳しくは固体酸化物層237の外縁部)の上面に接合して空気流路233と燃料流路231との間を遮断するセパレータ247と、燃料流路231側に配置された燃料極フレーム249とを備えており、それらが積層されて一体に構成されている。
【0043】
なお、燃料電池201の積層方向の両端の(インターコネクタ243と同様な導電性を有する)板材を、エンドプレート251A、251Bと称する。
また、本実施例1では、後に詳述するように、前記燃料電池セル203内のガスシール部245に加え、一方のエンドプレート251Aと所定のナット219との間をガスシールする第1ガスシール部300と、他方のエンドプレート251Bと所定のボルト212、216との間をガスシールする第2ガスシール部310を備えている。
【0044】
ここで、固体酸化物層237としては、YSZ、ScSZ、SDC、GDC、ペロブスカイト系酸化物等の材料が使用できる。また、燃料極235としては、Ni及びNiとセラミックとのサーメットが使用でき、空気極239としては、ペロブスカイト系酸化物、各種貴金属及び貴金属とセラミックとのサーメットが使用できる。
【0045】
更に、インターコネクタ243、エンドプレート251A、251B、セパレータ247、燃料極フレーム249としては、例えばSUS430、SUS444等のフェライト系ステンレスからなる金属板が使用できる。また、各ボルト211〜218やナット219は、例えばインコネル(登録商標)からなる金属部材を採用できる。
【0046】
なお、各金属板の熱膨張係数としては、8〜14×10
−6/K(20〜300℃)の範囲を採用でき、ボルト211〜218やナット219の熱膨張係数としては、金属板より熱膨張係数が大きな例えば16×10
−6/K(20〜300℃)を採用できる。
【0047】
・以下に、燃料電池セル203を構成する各部材について、更に詳細に説明する。
なお、燃料電池セル203の平面形状は正方形であるので、燃料電池セル203を構成する各部材の平面形状も正方形である。
【0048】
図3に分解して示す様に、燃料極側集電体253が載置されたインターコネクタ243と、燃料極フレーム249と、セル本体(単セル)241に接合されたセパレータ247とは、同図の上下方向に積層されて、(後述するレーザー溶接によって)一体となって、燃料電池のカセット257として構成されている。
【0049】
このうち、インターコネクタ243は、正方形の板材であり、その外縁部には、前記ボルト211〜218が貫挿される挿通孔(第1〜第8挿通孔)261〜268が、ほぼ等間隔に形成されている。つまり、インターコネクタ243の四隅と各辺の中点に対応する位置に、8箇所に挿通孔261〜268(なお、各部材における挿通孔には同じ番号を付す)が形成されている。
【0050】
前記挿通孔261〜268のうち、四隅の第1、第3、第5、第7挿通孔261、263、265、267は、燃料ガスや空気のガス流路として用いられない丸孔である。
また、対向する辺に設けられた第2、第6挿通孔262、266は、辺に沿った寸法が長い長円形である、このうち、第2挿通孔262が、燃料ガスを燃料電池セル203内の燃料流路231に導入する燃料ガスの導入路(燃料ガスの導入側の燃料マニホールド)である。一方、第6挿通孔266が、燃料ガスを燃料電池セル203内の燃料流路231から排出する燃料ガスの排出路(燃料ガスの排出側の燃料マニホールド)である。
【0051】
更に、他の対向する辺に設けられた第4、第8挿通孔264、268は丸孔であり、このうち、第4挿通孔264が、空気を燃料電池セル203内の空気流路233に導入する空気の導入路(空気の導入側の空気マニホールド)である。一方、第8挿通孔268が、空気を燃料電池セル203内の空気流路233から排出する空気の排出路(空気の排出側の空気マニホールド)である。
【0052】
なお、エンドプレート251A、251Bについては、全ての挿通孔は、前記四隅の第1、第3、第5、第7挿通孔261、263、265、267と同様な(平面視の形状及び寸法)丸孔である。
【0053】
なお、各燃料マニホールドや空気マニホールドと、各燃料マニホールドや空気マニホールドに挿通される各ボルト211〜218とは、それぞれ同軸に配置されている。
前記燃料極フレーム249は、正方形の枠状の板材であり、その外縁部には、前記ボルト211〜218が貫挿される前記第1〜第8挿通孔261〜268が形成されている。
【0054】
このうち、第2、第6挿通孔262、266には、長手方向に(貫通孔である)スリット271、273が形成されており、燃料極フレーム249のインターコネクタ243側(同図下側)には、各スリット271、273と枠内の開口部275とを連通するように、複数の(燃料ガスの流路となる)溝277、279が形成されている。
【0055】
前記セパレータ247は、正方形の枠状の板材であり、その外縁部には、前記ボルト211〜218が貫挿される前記第1〜第8挿通孔261〜268が形成されている。
そして、上述した構成の燃料電池のカセット257は、
図4に示すように、間にシート状のガスシール部245を介して積層されている。
【0056】
前記ガスシール部245は、
図5に示すように、マイカからなるシート状のコンプレッションシール材291と、ガラスからなるガラスシール材293とから構成されている。なお、コンプレッションシール材291及びガラスシール材293は、電気絶縁性を有している。
【0057】
具体的には、燃料電池セル203の積層方向(
図5の紙面の厚み方向)に延びる燃料マニホールドの周囲には、燃料電池スタック205を構成するインターコネクタ243(又はエンドプレート251A、251B)やセパレータ247によって積層方向から挟まれるとともに、燃料マニホールドを外側(外周側)から囲むように、燃料電池セル203が広がる平面(紙面の広がる平面)に沿って、コンプレッションシール材291とガラスシール材293とが順番に並列に配置されている。
【0058】
つまり、ボルト212、216、従って燃料マニホールドである第2、第6挿通孔262、266の軸方向から見て(平面視にて)、燃料マニホールドの周囲を軸方向と垂直の径方向から囲むように、ガラスシール材263とコンプレッションシール材291とが、同心状に配置されている。すなわち、内側に環状のガラスシール材293が配置され、その外周側を全て囲むように、コンプレッションシール材291が配置されている。
【0059】
詳しくは、コンプレッションシール材291は、正方形の枠状の部材であり、その外縁部には、前記ボルト211〜218が貫挿される前記第1〜第8挿通孔261〜268が形成されている。なお、コンプレッションシール材291の厚みは、組み付ける前は0.40mmであり、組み付け後(圧縮後)は0.36mmである。
【0060】
このうち、第1、第3、第5、第7挿通孔261、263、265、267は丸孔であり、第4、第8挿通孔264、268は、それより直径が大きな丸孔であり、第2、第6挿通孔262、266は、長円形の長孔である。
【0061】
また、コンプレッションシール材291には、空気の流路として、各第4、第8挿通孔264、268と枠内の開口部299と連通するように、それぞれ連通路295、297が設けられている。
【0062】
また、第2、第6挿通孔262、266の内周側には、積層方向(
図5の紙面と垂直方向)から見て、セパレータ247の第2、第6挿通孔262、266の周囲を囲むように、厚み0.3mm×幅3.0mmの環状のガラスシール材293が配置されている。
【0063】
このガラスシール材293は、ガラスを含む(例えばガラスを主成分とする)ガス封止材である。ここでは、例えば、市販の結晶化ガラスのプリフォーム(仮焼結体)を用いることができ、その軟化点は例えば770℃である。
【0064】
また、このガラスシール材293としては、熱膨張係数が周囲の金属板(例えばフェライト系ステンレス製)の熱膨張係数に近いもの、例えば熱膨張係数が8〜14×10
−6/K(20〜300℃)が望ましく(例えば11×10
−6/K(20〜300℃))、例えばSCHOTT社製のG018−311を用いることができる。
【0065】
なお、燃料電池201の運転温度は、例えば700℃であるが、ガスシール部245近傍では、650℃程度であるので、ガラスシール材293として、運転時のガスシール部245の温度より軟化点の高いものが用いられる。
【0066】
b)次に、本実施例1の要部である第1ガスシール部300及び第2ガスシール部310について説明する。
前記
図2に示す様に、本実施例1の燃料電池201では、燃料マニホールドを構成する第2挿通孔262及び第6挿通孔266の一方(同図上方)の開口端(開口部)267aをガスシールするために、第1ガスシール部300が設けられ、他方(同図下方)の開口端(開口部)267bをガスシールするために、第2ガスシール部310が設けられている。
【0067】
詳しくは、第1ガスシール部300は、
図2の上方の一方のエンドプレート251Aと(燃料マニホールドである第2、第6挿通孔262、266の一方の開口部267a側に配置された)各ナット219との間、つまり、一方のエンドプレート251Aの上面252aと各ナット219の下面219aとの間をガスシールするように設けられている。
【0068】
なお、ナット219は、
図2の上方から見て、燃料マニホールドの一方(
図2上方)の開口部267aを覆うように設けられている。
同様に、第2ガスシール部310は、
図2の下方の他方のエンドプレート251Bと(燃料マニホールドである第2、第6挿通孔262、266の他方の開口部267b側に配置された)各ボルト212、216の頭部210の間、つまり、他方のエンドプレート251Bの下面252bと各ボルト212、216の頭部210の上面210bとの間をガスシールするように設けられている。
【0069】
なお、ボルト212、216の頭部2109は、
図2の下方から見て、燃料マニホールドの他方(
図2下方)の開口部267bを覆うように設けられている。
このうち、第1ガスシール部300は、
図6に示すように、同一平面上にて、各ボルト212、216の軸部220(及び各挿通孔262、266)の周囲を囲むように配置された環状のコンプレッションシール材347と、コンプレッションシール材347の外側の周囲を囲むように配置された(ナット219やエンドプレート251Aに接合した)環状のガラスシール材349とから構成されている。
【0070】
具体的には、ボルト212、216のうち、燃料電池スタック205から(
図2の上方に)突出する部分の径方向における周囲には、その周囲を外側(外周側)から囲むように、エンドプレート251A及びナット219によって、燃料電池セル203の積層方向(
図6の紙面の厚み方向)から挟まれるとともに、燃料電池セル203が広がる平面(紙面の広がる平面)に沿って、コンプレッションシール材347とガラスシール材349とが順番に並列に配置されている。
【0071】
つまり、
図6に示すように、ボルト212、216の軸方向から見て(平面視にて)、ボルト212、216の軸部220の周囲を囲むように、即ち、軸部220を軸方向と垂直の径方向から囲むように、コンプレッションシール材347とガラスシール材349とが、同心円状に配置されている。すなわち、内側に環状のコンプレッションシール材347が配置され、その外周側を全て囲むように、環状のガラスシール材349が配置されている。
【0072】
同様に(
図2参照)、第2ガスシール部310は、同一平面上にて、各ボルト212、216の軸部220(及び各挿通孔262、266)の周囲を囲むように配置された環状のコンプレッションシール材351と、コンプレッションシール材351の外側の周囲を囲むように配置された(各ボルト212、216の頭部210やエンドプレート251Bに接合した)環状のガラスシール材353とから構成されている。
【0073】
具体的には、ボルト212、216のうち、燃料電池スタック205から(
図2の下方に)突出する部分の径方向における周囲には、その周囲を外側(外周側)から囲むように、エンドプレート251B及びボルト212、216の頭部210によって、燃料電池セル203の積層方向から挟まれるとともに、燃料電池セル203が広がる平面に沿って、コンプレッションシール材351とガラスシール材353とが順番に並列に配置されている。
【0074】
つまり、
図6に示すように、ボルト212、216の軸方向から見て(平面視にて)、ボルト212、216の軸部220の周囲を囲むように、即ち、軸部220を軸方向と垂直の径方向から囲むように、コンプレッションシール材351とガラスシール材353とが、同心円状に配置されている。すなわち、内側に環状のコンプレッションシール材351が配置され、その外周側を全て囲むように、環状のガラスシール材353が配置されている。
【0075】
前記第1、第2ガスシール部300、310では、各コンプレッションシール材347、351は、前記ガスシール部245と同様に、マイカからなるシート状の部材であり、各ガラスシール材349、353は、ガラスから構成されている。なお、両コンプレッションシール材347、351及び各ガラスシール材349、353も、電気絶縁性を有している。
【0076】
詳しくは、各コンプレッションシール材347、351は、外径17mm×内径11mm)の円環であり、組み付ける前の厚みは0.5mmであり、組み付け後(圧縮後)の厚みは0.4mmである。
【0077】
また、各ガラスシール材349、353は、ガラスを含む(例えばガラスを主成分とする)ガス封止材である。ここでは、前記ガスシール部245と同様に、例えば、市販の結晶化ガラスのプリフォーム(仮焼結体)を用いることができ、その軟化点は例えば770℃である。
【0078】
また、このガラスシール材349、353としては、前記ガスシール部241と同様に、熱膨張係数が周囲の金属板(例えばフェライト系ステンレス製)の熱膨張係数に近いもの、例えば熱膨張係数が8〜14×10
−6/K(20〜300℃)が望ましく(例えば11×10
−6/K(20〜300℃))、例えばSCHOTT社製のG018−311を用いることができる。
【0079】
なお、燃料電池201の運転温度は、例えば700℃であるが、第1、第2ガスシール部300、310近傍では、640℃程度であるので、ガラスシール材349、353として、運転時の第1、第2ガスシール部300、310の温度より軟化点の高いものが用いられる。また、ガスシール部245のガラスシール材293と、第1、第2ガスシール部300、310のガラスシール材349、353として、異なる材料(例えば軟化点が異なる材料)を用いてもよい。
【0080】
なお、第1、第3、第4、第5、第7、第8ボルト211、213、214、215、217、218及びそれらに螺合するナット219については、ガスシールする必要は無いので、単に、スペーサとして、第1、第2ガスシール部300、310で使用されたと同様な環状のマイカからなるコンプレッションシール材(図示せず)のみが使用されている。
【0081】
或いは、空気マニホールドに対応する第4、第8挿通孔264、268の開口部を、燃料マニホールドと同様にガスシールするように、第1、第2ガスシール部300、310と同様な構成のガスシール部(図示せず)を設けてもよい。
【0082】
又は、第1〜第8挿通孔261〜268の全ての開口部を全てガスシールするように、第1、第2ガスシール部300、310と同様な構成のガスシール部(図示せず)を設けてもよい。
【0083】
c)次に、本実施例1におけるガスの流路について簡単に説明する。
<燃料ガスの流路>
図7(a)に示すように、燃料ガス導入管221から燃料電池スタック205内に導入された燃料ガスは、第2ボルト212が挿通される(導入側の燃料マニホールドである)第2挿通孔262に導入される。
【0084】
なお、第2ボルト212の先端(同図上方)には、軸方向に溝(図示せず)が形成してあり、この溝を介して燃料ガス導入管221内の空間と第2挿通孔262内とが連通している(燃料ガスの排出側と、空気の導入側及び排出側も、同様な構造となっている)。
【0085】
この燃料ガスは、第2挿通孔262から、各燃料電池セル203の燃料極フレーム249の溝277を介して、燃料電池セル203の内部の燃料流路231内に導入される。
その後、燃料電池セル203内にて発電に寄与した残余の燃料ガスは、燃料極フレーム249の他の溝279を介して、第6ボルト216が挿通される(排出側の燃料マニホールドである)第6挿通孔266を介して、燃料ガス排出管225から燃料電池スタック205外に排出される。
【0086】
<空気の流路>
図7(b)に示すように、空気導入管223から燃料電池スタック205内に導入された空気は、第4ボルト214が挿通される(導入側の空気マニホールドである)第4挿通孔264に導入される。
【0087】
この空気は、第4挿通孔264から、各燃料電池セル203のコンプレッションシール材291の連通路295を介して、燃料電池セル203の内部の空気流路233内に導入される。
【0088】
その後、燃料電池セル203内にて発電に寄与した残余の空気は、コンプレッションシール材291の他の連通路297を介して、第8ボルト218が挿通される(排出側の空気マニホールドである)第8挿通孔268を介して、空気排出管227から燃料電池スタック205外に排出される。
【0089】
d)次に、燃料電池201の製造方法について説明する。
図8(a)に示すように、定法に従って、燃料極235と固体酸化物層237と空気極239とが一体となった(正方形の板状の)セル本体(単セル)241を作製し、このセル本体(単セル)241の外縁部に枠状のセパレータ247をろう付けする。
【0090】
次に、
図8(b)に示すように、燃料極フレーム249をセパレータ247とインターコネクタ243(又はエンドプレート251B)とで挟み、レーザー溶接によって、燃料極フレーム249とセパレータ247とインターコネクタ243(又はエンドプレート251B)とを一体に接合して燃料電池のカセット257を作製する。
【0091】
なお、レーザー溶接によって、燃料マニホールドである第2、第6挿通孔262、266と、空気マニホールドである第4、第8挿通孔264、268との周囲を、それぞれ環状に接合するとともに、セパレータ247とインターコネクタ243(又はエンドプレート251B)との外縁部を環状に接合する。
【0092】
従って、燃料電池のカセット257の内部の燃料流路231と燃料マニホールド(第2、第6挿通孔262、266)と空気マニホールド(第4、第8挿通孔264、268)との間のガスリークは完全に防止される。
【0093】
次に、
図8(c)に示すように、各燃料電池のカセット257の間に、コンプレッションシール材291及びガラスシール材293(となるガラス材料)からなるガスシール部245を配置する。
【0094】
詳しくは、前記
図5に示すように、各セパレータ247の表面の同一平面上において、燃料マニホールド(第2、第6挿通孔262、266)を完全に囲むように環状のガラスシール材293(となるガラス材料)を配置するとともに、ガラスシール材293(となるガラス材料)の周囲を完全に囲むようにコンプレッションシール材291を配置する。
【0095】
また、
図9に示すように、一方のエンドプレート251Aの表面の同一平面上において、燃料マニホールド(第2、第6挿通孔262、266)の上端側の開口部267aを完全に囲むように環状のコンプレッションシール材347を配置するとともに、コンプレッションシール材347の外側の周囲を完全に囲むように、コンプレッションシール材347の圧縮後の厚みよりより薄い(厚み0.3mm)環状のガラスシール材349(となるガラス材料)を配置する。
【0096】
ここで、コンプレッションシール材347としては、その外径がナット219の(最小の)外径よりも小さいものを用い、ガラスシール材349が、エンドプレート251Aとナット219とで挟まれるようにする。
【0097】
同様に、他方のエンドプレート251Bの表面の同一平面上において、燃料マニホールド(第2、第6挿通孔262、266)の下端側の開口部267bを完全に囲むように環状のコンプレッションシール材351を配置するとともに、コンプレッションシール材351の外側の周囲を完全に囲むように、コンプレッションシール材351の圧縮後の厚みよりより薄い(厚み0.3mm)環状のガラスシール材353(となるガラス材料)を配置する。
【0098】
ここで、コンプレッションシール材351としては、その外径がボルト212、216の頭部210の(最小の)外径よりも小さいものを用い、ガラスシール材353が、エンドプレート251Bと頭部210とで挟まれるようにする。
【0099】
なお、前記各コンプレッションシール材347、351及び各ガラスシール材349、353(となるガラス材料)の配置は、各挿通孔262、266に各ボルト212、216を挿通する際に同時に行う。また、同様に、燃料マニホールド以外の各挿通孔261、263、264、265、267、268の開口部に対し、(スペーサとして)コンプレッションシール材を配置する。
【0100】
その後、ボルト211〜218及びナット219を締め付けることによって、燃料電池スタック205を積層方向(
図9の上下方向)に押圧して、燃料電池スタック205を一体化する。
【0101】
この段階では、
図10(a)に示すように、コンプレッションシール材291の厚みは0.36mmであり、(軟化する前の)ガラスシール材293(となるガラス材料)の厚み0.30mmより大きいので、ガラスシール材293(となるガラス材料)とインターコネクタ243との間には、若干の隙間がある。
【0102】
同様に、この段階では、コンプレッションシール材347、351の厚みは0.4mmであり、(軟化する前の)ガラスシール材349、353(となるガラス材料)の厚み0.3mmより大きいので、ガラスシール材349、353(となるガラス材料)とナット219又はエンドプレート251B)との間には、若干の隙間がある。
【0103】
次に、燃料電池スタック205(詳しくはガラスシール材293、349、353となるガラス材料)を、ガラスの結晶化温度以上の例えば850℃に2時間加熱し、ガラスを結晶化させる。ガラスの軟化点(770℃)から結晶化温度の昇温過程で、ガラスシール材293、349、353は軟化する。
【0104】
従って、燃料電池スタック205中のガラスシール材293は、
図10(b)に示すように、自身の表面張力によって丸くなって、上方に凸の状態となり、最終的に上方のインターコネクタ243(又はエンドプレート251A)に接触する。さらに、850℃−2時間の加熱によってガラスは結晶化する。
【0105】
同様に、燃料電池スタック205外のガラスシール材349は、その周囲の部材であるエンドプレート251Aの表面及びナット219の表面に密着するとともに、ガラスシール材353は、その周囲の部材であるエンドプレート251B及びボルト212、216の頭部210の表面に密着する。
【0106】
その後、冷却することによって、
図10(c)に示すように、燃料電池スタック205内のガラスシール材293は、セパレータ247とインターコネクタ243(又はエンドプレート251A)とに強固に接合する。
【0107】
同様に、燃料電池スタック205外のガラスシール材349は、エンドプレート251A及びナット219に強固に接合するとともに、ガラスシール材353は、エンドプレート251B及びボルト212、216の頭部210に強固に接合する。
【0108】
なお、ガラスを加熱するとガラスシール材293、349、353が軟化するが、上述のように、ボルト211〜218の熱膨張係数は、セパレータ247、インターコネクタ243、燃料極フレーム249、エンドプレート251A、251B等のような積層方向に配置された金属板の熱膨張係数や、ガラスシール材293の熱膨張係数より大きいので、ガラスの加熱時には、燃料電池スタック205は全体が緩んだ状態となる(ボルト211〜218の押圧力は減るが、無くなっている訳ではない)。
【0109】
その後、冷却されると、ボルト211〜218等が積層方向に縮んで(元に戻って)圧縮場となっているので、ガラスシール材293、349、353が圧縮された状態で封止される(即ちガラスによって封止される)。
【0110】
このようにして、ガスシールの構成が実現されるとともに、燃料電池201が完成する。
d)本実施例1の効果について説明する。
【0111】
<第1、第2ガスシール部300、310による効果>
本実施例1では、燃料マニホールドである第2、第6挿通孔262、266の積層方向における両開口部267a、267bの周囲には、第1、第2ガスシール部300、310が設けられている。即ち、一方のエンドプレート251Aとナット219との間には、第1ガスシール部300が設けられ、他方のエンドプレート251Bとボルト262、266の頭部210との間には、第2ガスシール部310が設けられている。
【0112】
詳しくは、第1ガスシール部300では、第2、第6挿通孔262、266の一方の開口部267aを囲むように、エンドプレート251Aが広がる平面に沿って、環状のコンプレッションシール材347が配置され、更にそのコンプレッションシール材347を同一平面上にて径方向外側から囲むように、ガラスシール材349が並列に配置されている。
【0113】
同様に、第2ガスシール部310では、第2、第6挿通孔262、266の他方の開口部267bを囲むように、エンドプレート251Bが広がる平面に沿って、環状のコンプレッションシール材351が配置され、更にそのコンプレッションシール材351を同一平面上にて径方向外側から囲むように、ガラスシール材353が並列に配置されている。
【0114】
従って、コンプレッションシール材347、351及びガラスシール材349、353によって(特に周囲に密着するガラスシール材349、353によって)、各エンドプレート251A、251Bとボルト262、266の頭部210やナット219との間におけるガス漏れを好適に防止することができる。
【0115】
また、積層方向から大きな力が加わった場合でも、コンプレッションシール材347、351によって、過大な力がガラスシール材349、353に加わることを抑制できるので、ガラスシール材349、353が割れることを防止でき、この点からも好適にガス漏れを防止することができる。
【0116】
更に、高温環境下で使用されてガラスが軟化した場合でも、コンプレッションシール材347、351によって、ガラスシール材349、353の過度の変形が抑制される。
また、コンプレッションシール材345、351及びガラスシール材345、353によって、エンドプレート251A、251Bとボルト262、266やナット219との間の電気的絶縁を確実に行うことができる。
【0117】
<燃料電池スタック205内のガスシール部245による効果>
本実施例1では、燃料マニホールドである第2、第6挿通孔262、266と、空気マニホールドである第4、第8挿通孔264、268との周囲には、セパレータ247やインターコネクタ243(又はエンドプレート251B)によって積層方向から挟まれるとともに、各マニホールドを囲むように、ガスシール部245が配置されている。
【0118】
詳しくは、各マニホールドを囲むように、燃料電池セル203が広がる平面(即ち各マニホールドの径方向)に沿って、環状のガラスシール材293が配置され、更にそのガラスシール材293を同一平面上にて径方向から囲むように、コンプレッションシール材291が並列に配置されている。
【0119】
従って、コンプレッションシール材291及びガラスシール材293によって(特に周囲に密着するガラスシール材293によって)、各マニホールドとセパレータ247やインターコネクタ243等との間におけるガス漏れを好適に防止することができる。
【0120】
また、積層方向から大きな力が加わった場合でも、コンプレッションシール材291によって、過大な力がガラスシール材293に加わることを抑制できるので、ガラスシール材293が割れることを防止でき、この点からも好適にガス漏れを防止することができる。
【0121】
更に、高温環境下で使用されてガラスが軟化した場合でも、コンプレッションシール材291によって、ガラスシール材293の過度の変形が抑制されるので、ガラスが周囲に広がって電気接続性が低下することを防止できる。
【0122】
<総合的な効果>
このように、本実施例1では、燃料ガスのガス漏れの発生を好適に防止できるので、発電効率が高く、漏れたガスの後処理の必要が無い(又は後処理が容易である)という顕著な効果を奏する。
【0123】
また、本実施例1では、ボルト211〜218とナット219とによって、燃料電池スタック205を締め付け押圧して固定するので、固定が容易であるとともに、確実に固定できるという利点がある。
【0124】
更に、燃料電池201の運転の実施(ON)及び停止(OFF)に応じて、燃料電池201の温度が変動するが、本実施例1では、上述した構成(各部の熱膨張係数の関係)によって、温度が変動しても、ガラスシール材349、353等を常に押圧できるので、その点からも、ガス漏れを防止できるという利点がある。