特許第6054956号(P6054956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6054956フルオロカーボン電解質添加剤を含むリチウムイオン電気化学電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054956
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】フルオロカーボン電解質添加剤を含むリチウムイオン電気化学電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20161219BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20161219BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20161219BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20161219BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M4/58
   H01M10/0565
   H01M10/052
【請求項の数】2
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-514493(P2014-514493)
(86)(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公表番号】特表2014-516201(P2014-516201A)
(43)【公表日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】US2012039908
(87)【国際公開番号】WO2012170240
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年3月18日
(31)【優先権主張番号】61/494,094
(32)【優先日】2011年6月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】ラマンナ, ウィリアム エム.
(72)【発明者】
【氏名】シァオ, アン
(72)【発明者】
【氏名】トリーマート, マシュー ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ファム, ファット ティー.
【審査官】 立木 林
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−512714(JP,A)
【文献】 特開平08−268998(JP,A)
【文献】 特開2002−305023(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0127475(US,A1)
【文献】 特開2005−203341(JP,A)
【文献】 特開2007−294397(JP,A)
【文献】 米国特許第05514493(US,A)
【文献】 特表2002−543178(JP,A)
【文献】 特表2002−508576(JP,A)
【文献】 国際公開第01/052341(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属酸化物又はリチウム金属リン酸塩を含む正極と、
リチウムをインターカレートする又はリチウムと合金化することが可能な負極と、
添加剤を含む液体又はゲル電解質と、を含み、
前記添加剤が、化学式:
X−SO−R’−SO−Y、を有する多官能性アニオンを含み、
化学式中、X及びYのいずれもOである、又はX及びYのいずれもRSOであり、
は、1〜6個の炭素原子を有し、窒素、酸素、又はこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の鎖内へテロ原子を含有してもよい直鎖又は分枝鎖フルオロアルキル部分であり、
’は、1〜10個の炭素原子を有し、1つ又は複数の鎖内酸素原子を含有してもよい直鎖若しくは分枝鎖又は環式フルオロアルキレンであり、
及びR’の双方が、最大で20%の、水素である非フッ素置換基を有し、
(i)前記X及びYがOである場合、前記多官能性アニオンは、前記電解質の総重量の0.01〜3.0重量パーセントの量で前記電解質中に存在し、(ii)前記X及びYがRSOである場合、前記多官能性アニオンは、前記電解質の総重量の0.01〜5.0重量パーセントの量で前記電解質中に存在する、リチウムイオン電気化学電池。
【請求項2】
リチウムイオン電気化学電池を安定化させる方法であって、
リチウム金属酸化物正極又はリチウム金属リン酸塩正極と、リチウムをインターカレートする又はリチウムと合金化することが可能な負極と、液体電解質と、を有する、リチウムイオン電気化学電池を準備する工程と、
化学式:
X−SO−R’−SO−Y、を有する多官能性アニオンを添加する工程と、を含み、
化学式中、X及びYのいずれもOである、又はX及びYのいずれもRSOであり、
は、1〜6個の炭素原子を有し、窒素、酸素、又はこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の鎖内へテロ原子を含有してもよい直鎖又は分枝鎖フルオロアルキル部分であり、
’は、1〜10個の炭素原子を有し、1つ又は複数の鎖内酸素原子を含有してもよい直鎖若しくは分枝鎖又は環式フルオロアルキレンであり、
及びR’の双方が、最大で20%の、水素である非フッ素置換基を有し、
(i)前記X及びYがOである場合、前記多官能性アニオンは、前記電解質の総重量の0.01〜3.0重量パーセントの量で前記電解質中に存在し、(ii)前記X及びYがRSOである場合、前記多官能性アニオンは、前記電解質の総重量の0.01〜5.0重量パーセントの量で前記電解質中に存在する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン電気化学電池、及び電解質の性能を改善する添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
商用のリチウムイオンバッテリ(LIB)が、多くのホームエレクトロニクス用途に対して十分に機能する一方で、現在利用可能なLIB技術は、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEF)、又は純粋な電気自動車(EV)に対する、より要求の厳しい性能目標のいくつかを満たしていない。具体的には、現在利用可能なLIB技術は、次世代自動車計画(PNGV)によって定められた10〜15年のカレンダー製品寿命の要求設定を満たさない。最も広く使用されているLIB電解質は、限定された熱安定性及び高電圧安定性を有する。電解質の熱及び電気化学的劣化は、時間経過に伴って低減するリチウムイオンバッテリ性能の主要な原因と考えられる。高度なリチウムイオンバッテリと関連付けられる性能及び安全性の問題の多くは、電解質と反応性の高い正極又は負極との間に生じる望ましくない反応の直接的又は間接的な結果である。かかる反応は、低減されたサイクル寿命、容量低下、ガス発生(電池のガス放出をもたらし得る)、インピーダンス増加、及び低減されたレート能力(rate capability)をもたらす。典型的には、より高い電圧極値へ電極を駆動すること、又は電池をより高温に曝露することは、これらの望ましくない反応を促進し、関連する問題を拡大する。極度の悪利用条件下では、無制御な反応発熱は、電池の熱暴走及び破局的な崩壊をもたらすことがある。
【0003】
電極/電解質界面を安定化させることは、これらの望ましくない反応を制御及び最小化し、及び、Liイオンバッテリのサイクル寿命、並びに電圧及び温度性能の限界を改善するのに重要である。界面を不動態化する方法で、選択的に電極表面と反応する、電極表面に結合する、又は電極表面にて自己組織化するように設計される電解質添加剤は、この目的を達成するための最も単純で費用効果のある方法の1つを代表する。一般的な電解質溶剤及び添加剤、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)、2−フルオロエチレンカーボネート(FEC)、及びリチウムビスオキサラートボレート(LiBOB)などの、負極SEI(固体電解質界面)層の安定性に及ぼす効果は、十分に実証されている。例えば、ビニレンカーボネート(VC)及びリチウムビスオキサラートボレート(LiBOB)は、アノードの界面上で反応して、より安定性の固体電解質界面(SEI)を生成することが立証されている。SEIを安定化させること、及び電極界面(カソード及びアノードの双方)における電解質劣化を引き起こし得る有害な熱及びレドックス反応を抑制することは、LIBの延長されたカレンダー及びサイクル寿命、並びに強化された熱安定性につながるであろう。
【0004】
典型的には、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(HQ−115としてSt.Paul,MNの3Mから入手可能)が、市販のリチウムイオン電気化学電池における電解質添加剤として性能を強化するために使用される。リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドは、高温でのグラファイト/LiCoO電池におけるサイクル寿命を改善する。同様の結果が、グラファイト/Li混合金属酸化物電池においても確認されている。リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを添加することによって達成されるサイクル寿命の改善は、低減された電池インピーダンスと関連する。リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドはまた、負極におけるガス発生を低減し、単一層ポリエチレンセパレータを有する高温浮遊試験条件下での短絡を防止し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、リチウムイオン電気化学電池に対する標準的な電解質においてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを添加剤として使用することで、電池寿命及び安全性が改善される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかしながら現在、リチウムイオン電池の高い温度性能及び安定性(例えば、>55℃)を改善することができ、増大されたエネルギー密度に対して高電圧(例えば、>4.2V)にて電解質の安定性を提供し、また高電圧電極の使用を可能にする、電解質添加剤への必要性が存在する。リチウムイオン電気化学電池の電解質に対する添加剤として作用し得る、新規の種類のフッ素化化合物が提供される。これらの化合物は、より従来的な添加剤と比較して、電解質中で相対的に低充填にて使用されるときに、リチウムイオン電池における性能利益を提供する。新規のフッ素化添加剤は、2つ又は3つ以上のペンダントスルホン酸基又はスルホニルイミド基を含有し、低充填下でのそれらの独自の有効性は、一電池あたりの全体の添加剤コストを低減することが期待される。材料費の低減は、電子工学用途におけるリチウムイオンバッテリの発展に重要であり、また自動車部門におけるこの技術の成功に不可欠である。
【0007】
一態様では、リチウム金属酸化物又はリチウム金属リン酸塩を含む正極と、リチウムをインターカレートする、又はリチウムと合金化することが可能な負極と、添加剤を含む電解質と、を含み、前記添加剤が、化学式:
X−SO−R’−SO−Y、を有する多官能性アニオンを含み、
化学式中、X及びYは、独立して、O又はRSOのいずれかであり、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖フルオロアルキル部分であり、所望により、窒素、酸素、及びこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の鎖内へテロ原子を含有することができ、R’は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖又は環式フルオロアルキレン部分であり、所望により、1つ又は複数の鎖内酸素原子を含有することができ、R及びR’の双方が、最大で20%の非フッ素置換基を有する、リチウムイオン電気化学電池が提供される。いくつかの実施形態では、多官能性アニオンは、ジスルホネート又はジスルホニルイミドなどのジアニオンである。いくつかの実施形態では、多官能性アニオンは全フッ素化されている。
【0008】
別の態様では、リチウムイオン電気化学電池安定化させる方法であって、リチウム金属酸化物正極又はリチウム金属リン酸塩正極と、リチウムをインターカレートする、又はリチウムと合金化することが可能な負極と、電解質と、を有する、リチウムイオン電気化学電池を準備工程と、化学式、X−SO−R’−SO−Y、を有する多官能性アニオン添加する工程と、を含み、化学式中、X及びYは、独立して、O又はRSOのいずれかであり、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖フルオロアルキル部分であり、また所望により、窒素、酸素、又はこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の鎖内へテロ原子を含有することができ、R’は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖又は環式フルオロアルキレンであり、また所望により、1つ又は複数の鎖内酸素原子を含有することができ、R及びR’の双方が、最大で20%の非フッ素置換基を有する、方法が提供される。
【0009】
また別の態様では、リチウム金属酸化物又はリチウム金属リン酸塩を含む正極と、リチウムをインターカレート又は合金化することが可能な負極と添加剤を含む固体ポリマー電解質と、を含み、前記添加剤が、化学式、RSO−N−SO−(CF−SO−N−SO、を有する多官能性アニオンを含み、化学式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖フルオロアルキル部分であり、また所望により、窒素、酸素、又はこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の鎖内へテロ原子を含有することができ、R’は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖又は環式フルオロアルキレンであり、また所望により、1つ又は複数の鎖内酸素原子を含有することができ、R及びR’の双方が、最大で20%の非フッ素置換基を有する、リチウムイオン電気化学電池が提供される。
【0010】
本開示において、用語:
「活物質」又は「電気化学的活物質」は、互換的に使用され、リチウムと可逆的に反応し得る材料を意味する。
「リチウムをインターカレートすることが可能な」とは、リチウムと可逆的に反応し得る電気化学的活物質を意味する。
「鎖内ヘテロ原子」とは、炭素−ヘテロ原子−炭素鎖を形成するように、炭素鎖内で炭素原子に結合している炭素以外の原子(例えば、酸素及び窒素)を意味する。
負極」とは、そこで電気化学的酸化及び脱リチウム化が放電プロセス中に発生する、電極を意味する(アノードと称されることも多い)。
正極」とは、そこで電気化学的還元及びリチウム化が放電プロセス中に発生する、電極を意味する(カソードと称されることも多い)。
【0011】
上記の概要は、本発明の全ての実施のそれぞれの開示される実施形態を説明することを目的としたものではない。後続の図面の簡単な説明及び発明を実施するための形態は、代表的な実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】室温にて1分間攪拌した後、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)(容積比3:7)電解質中の1.0MのLiPFを、調製例1からの0.5重量%のジスルホネート塩と組み合わせることによって得られた上澄液の19F NMRスペクトル。
図2a】それぞれ、室温及び60℃における、C3DS添加剤を含有する実施例及び比較実施のコイン電池に関する、比放電容量(mAh/g)のサイクル数に対するグラフ。
図2b】それぞれ、室温及び60℃における、C3DS添加剤を含有する実施例及び比較実施のコイン電池に関する、比放電容量(mAh/g)のサイクル数に対するグラフ。
図3】60℃にてC4DI添加剤を含有する実施例及び比較実施例のコイン電池に関する、正規化された容量維持率のサイクル数に対するグラフ。
図4】C4DI添加剤及び高電圧LiMn1.5Ni0.5スピネルカソードを有する実施例及び比較実施例のコイン電池に関する、比放電容量(mAh/g)のサイクル数に対するグラフ。
図5】完全な電池において、高温での熱保管のデータから何パーセントの不可逆容量損失が算出されたかを示す、概略図。
図6】保管後の実施例及び比較実施例のコイン電池の不可逆容量損失の棒グラフ。
図7】0.1重量パーセントの水添加を有する提供された電気化学電池及び比較実施例の電気化学電池の比放電容量(mAh/g)のサイクル数に対するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、本明細書の説明の一部を形成する添付されている図面の組が参照されるが、これらはいくつかの具体的な実施形態の例示により示されている。本発明の範囲又は趣旨を逸脱せずに、その他の実施形態が考えられ、実施され得ることを理解すべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0014】
特に断りがない限り、本明細書及び添付の「特許請求の範囲」で使用される構造のサイズ、量、及び物理的特性を表わす数字は全て、いずれの場合においても「約」なる語によって修飾されているものとして理解されるべきである。それ故に、そうでないことが示されない限り、前述の明細書及び添付の「特許請求の範囲」で示される数値パラメーターは、当業者が本明細書で開示される教示内容を用いて、目標対象とする所望の特性に応じて、変化し得る近似値である。終点による数の範囲の使用は、その範囲内(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)の全ての数及びその範囲内の任意の範囲を含む。
【0015】
少なくとも1つの正極と、少なくとも1つの負極と、電解質とを含むリチウムイオン電気化学電池が提供される。提供される電気化学電池はまた、少なくとも1つのセパレータを含み得る。正極及び負極は、集電器、活物質、導電性希釈剤、及び結合剤を含み得る。
提供されるリチウムイオン電気化学電池は、化学式:
X−SO−R’−SO−Y、
(I)
を有する多官能性アニオンを含む電解質中の添加剤を含み、化学式中、X及びYは、独立して、O又はRSOのいずれかであり、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖フルオロアルキル部分であり、R’は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖又は環式フルオロアルキレン部分である。Rは、所望により、窒素、酸素、又はこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の鎖内へテロ原子を含有することができ、またR’は、所望により、1つ又は複数の鎖内酸素原子を含有することができる。R及びR’の双方は所望により、最大で20%の水素である非フッ素置換基を有する、部分的フッ素化物であり得る。電解質はまた、後述するように、他の添加剤を含み得る。いくつかの実施形態では、多官能性アニオンはジアニオンである。いくつかの実施形態では、多官能性アニオンは全フッ素化されている。
【0016】
提供されるリチウムイオン電気化学電池は、リチウム金属酸化物又はリチウム金属リン酸塩を含む正極を含む。正極は、複合体の形式であり得る。提供される複合体正極は、リチウム金属酸化物又はリチウム金属リン酸塩の活物質を含む。金属は、例えば、マンガン、モリブデン、ニオビウム、タングステン、タンタル、鉄、銅、チタン、バナジウム、クロム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、イットリウム、又はこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の金属を含み得る、1つ又は複数の遷移金属であり得る。正極に有用な材料の例には、LiV、LiV、LiCo0.2Ni0.8、LiNi0.33Mn0.33Co0.33、LiNi0.5Mn0.3Co0.2、LiNiO、LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiMn及びLiCo;例えば、米国特許第6,964,828号、同第7,078,128号(どちらもLuら)、及び同第6,660,432号(Paulsenら)に開示されるもののような、コバルト、マンガン、及びニッケルの混合金属酸化物を含む正極材料;並びに、例えば、米国特許第6,680,145号(Obrovacら)に開示されるもののような、ナノ複合体正極材料が挙げられる。
【0017】
提供されるリチウムイオン電気化学電池は、リチウムをインターカレートする、又はリチウムと合金化することが可能な負極を含む。上述のリチウム金属酸化物正極は、アノード及び電解質と組み合わされて、リチウムイオン電気化学電池、又は2つ又は3つ以上の電気化学電池のバッテリパックを形成し得る。好適なアノードの例は、リチウムを含む組成物、炭素質材料、ケイ素合金組成物、錫合金組成物、及びリチウム合金組成物から作製され得る。代表的な炭素質材料には、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)(Osaka Gas Co.,日本から入手可能)などの合成グラファイト、SLP30(TimCal Ltd.,Bodio、スイスから入手可能)、天然グラファイト、及び硬質炭素が挙げられ得る。また、有用なアノード材料は、合金粉末又は薄膜を含むことができる。このような合金は、ケイ素、スズ、アルミニウム、ガリウム、インジウム、鉛、ビスマス、及び亜鉛のような電気化学的に活性のある成分を含んでもよく、鉄、コバルト、遷移金属ケイ化物及び遷移金属アルミナイドのような電気化学的に不活性な成分を含んでもよい。有用な合金アノード組成物は、Sn−Co−C合金、Si60Al14FeTiSnMm10及びSi70Fe10Ti1010(化学式中、Mmはミッシュメタル(希土類元素の合金)である)のような、スズ又はケイ素の合金を含むことができる。アノードを生成するために用いられる金属合金組成物は、ナノ結晶又は非晶質ミクロ構造を有することができる。このような合金は、例えば、スパッタリング、ボールミリング、超急冷、又は他の手段により、製造することができる。有用なアノード材料にはまた、LiTi12、WO、及び酸化錫などの、金属酸化物が挙げられる。他の有用なアノード材料には、米国特許第7,771,876号(Mizutaniら)に開示されるものなどの、錫系非晶質アノード材料が挙げられる。
【0018】
好適なアノードを作製するために使用され得る代表的なケイ素合金には、約65〜約85mol%のSi、約5〜約12mol%のFe、約5〜約12mol%のTi、及び約5〜約12mol%のCを含む組成物が挙げられる。有用なケイ素合金の追加例には、例えば、米国特許出願公開第2006/0046144号(Obrovacら)に開示されるものなどの;ケイ素、銅、及び銀又は銀合金を含む組成物、例えば、米国特許第7,498,100号(Christensenら)に開示されるものなどの多重相ケイ素含有電極;例えば、米国特許第7,767,349号、同第7,851,085号、及び同第7,871,727号(全てObrovacら)で論じられるものなどの、錫、インジウム及びランタニド、アクチニド元素、又はイットリウムを含有するケイ素合金;例えば、米国特許第7,732,095号(Christensenら)で論じられるものなどの、高ケイ素含有量を有する非晶質合金;並びに、米国特許出願公開第2007/0269718号(Krauseら)及び米国特許第7,771,861号(Krauseら)で論じられるものなどの、負極に使用される他の粉末材料が挙げられる。アノードはまた、米国特許第6,203,944号及び同第6,436,578号(どちらもTurnerら)並びに米国特許第6,255,017号(Turner)に記載されている種類のものなどの、リチウム合金組成物から作製され得る。
【0019】
提供されるリチウムイオン電気化学電池は、電解質を含む。任意の好適な電解質が、リチウムイオンバッテリ内に含まれ得る。電解質は、固体ポリマー又は液体又はゲル(固体ポリマーと液体の組み合わせ)の形式であってよいが、典型的には液体又はゲル電解質である。代表的な固体電解質には、ポリエチレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素含有コポリマー、ポリアクリロニトリル、又はこれらの組み合わせなどの、乾燥ポリマー電解質が挙げられる。代表的な電解質ゲルには、米国特許第6,387,570号(Nakamuraら)及び同第6,780,544号(Noh)に記載されるものが挙げられる。代表的な液体電解質には、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ガンマ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキソラン、4−フルオロ−1,3−ジオキサラン−2−オン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。電解質はまた、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、置換ビニレンカーボネート、及び例えば、2−フルオロエチルカーボネートといった、ハロゲン化環式カーボネートを含み得る。
【0020】
電解質は、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラート)ボレート、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、LiAsF、LiC(SOCF、LiN(SOF)、LiN(SOF)(SOCF)、LiN(SOF)(SO)、及びこれらの組み合わせなどの、電荷輸送リチウム電解質塩を含み得る。
【0021】
提供されるリチウムイオン電気化学電池に対する電解質は、フッ素化多官能性アニオンを含む。一実施形態では、そのアニオンは、化学式、X−SO−SO−Y、を有し、化学式中、X及びYは、独立して、O又はRSOのいずれかである。典型的には、X及びYは同一である。X及びYが同一であるいくつかの実施形態では、多官能性アニオンは、X及びYがO−である場合は、ジスルホネート、トリスルホネート、テトラスルホネート、又は更にはヘキサスルホネートなどの、多官能性スルホネートであることができ、又はX及びYがRSOである場合は、ジスルホニルイミド、トリスルホニルイミド、テトラスルホニルイミド、又は更にはヘキサスルホニルイミドなどの、多官能性ジスルホニルイミドであることができ、−R−部分の分枝に依存する。
【0022】
典型的には、リチウムイオンバッテリシステムでは、正のカチオンはLiであるが、所望により、他の金属カチオン及び非金属カチオンが、リチウムイオンバッテリ性能に悪影響を及ばさずに使用できる。本発明の多官能性フッ素化アニオンと共に使用されてもよい他のカチオンの例には、K、Na、Mg2+、Ca2+、Cu、Cu2+、Zn2+、Ag、Fe2+、Ni2+、Au、Pt2+、Co3+、Al3+、Mn3+、並びに米国特許第6,372,829号に記載される窒素オニウムカチオンなどの、N、P、S、及びOの種々の非プロトン性有機オニウムカチオンが挙げられるがこれらに限定されない。典型的な非プロトン性有機オニウムカチオンには、四級アンモニウム及び四級ホスホニウムカチオンが挙げられる。
【0023】
有用なジスルホネートは、1〜10個の炭素原子を伴うR部分を有する。いくつかの実施形態では、ジスルホネートアニオンは、化学構造、OSO(CFSO、を有し、化学式中、n=1〜10、又は更にはn=1〜4である。他の実施形態では、ジスルホネートアニオンは、OSO(CFSO及びOSO(CFSOであり得る。ジスルホネートアニオン添加剤は、電解質の総重量の約0.01重量パーセント〜約3.0重量パーセントの量で、提供されるリチウムイオン電気化学電池の電解質に添加され得る。いくつかの実施形態では、ジスルホネートアニオン添加剤は、約0.1重量パーセント〜約1.0重量パーセントの量で電解質に添加され得る。後述に例示されるものなどの、いくつかのシステムでは、ジスルホネート塩は、電解質の他の成分中に極僅かに可溶性であり得る。例えば、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート混合物(容積比3:7)中の1M LiPFの溶液では、前記溶液に0.5重量パーセントのLiOSO(CFSOOLiが添加される場合、ジアニオン塩の濃度は、初期には0.09重量パーセント、30分の攪拌後には0.10重量パーセント、また4時間の攪拌後には最大で0.23重量パーセントであることが見出されている。溶解した塩の量は、19F核磁気共鳴(NMR)分光法によって容易に決定され得る。提供されるリチウムイオン電池の電解質へのこのようなジスルホネート化ジアニオン塩の少量添加は、驚くべきことに、高温(>55℃)及び高電圧(>4.2V vs.Li/Li)における容量低下への耐性を提供し得る。この効果は、共添加剤として少量のビニレンカーボネートを電解質へ添加することによって強化され得る。典型的には、ビニレンカーボネートは、約0.5重量パーセント〜約5.0重量パーセントの量で添加され得る。より典型的には、ビニレンカーボネートは、約1.5重量パーセント〜約2.5重量パーセントの量で添加され得る。いくつかの実施形態では、ビニレンカーボネートは、約2.0重量パーセントの量で添加され得る。それに加えて、提供されるジスルホネートアニオン及びその塩の使用は、高温及び高電圧における電池抵抗の増進を減少させることができ、また高温保管条件下で容量維持率を改善することができる。
【0024】
X及びYが同一である別の実施形態では、多官能性アニオンは、化学式、RSON−SO−R−SO−N−SO、を有するスルホニルイミドアニオンであり得る。各Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖フルオロアルキル部分であり、Rは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖又は環式フルオロアルキレン部分である。Rは、所望により、窒素、酸素、又はこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の鎖内へテロ原子を含有することができ、R部分は、所望により、1つ又は複数の鎖内酸素原子を含有することができる。R及びRの双方は、所望により、最大で20%、最大で10%、又は更には最大で5%の水素である非フッ素置換基で部分的にフッ素化され得る。典型的な実施形態では、全てのR及びR部分は、全フッ素化されている。
【0025】
いくつかの有用なジスルホニルイミドアニオンは、化学構造、RSON−SO−(CF−SO−N−SO、を有し、化学式中、n=1〜10、又は更にはn=1〜4である。いくつかの実施形態では、ジスルホニルイミドアニオンは、化学構造、RSON−SO−(CF−SO−N−SOを有する。典型的には、リチウムイオンバッテリシステムでは、正のカチオンはLiであるが、所望により、他の金属カチオン及び非金属カチオンが上述の通り使用されてもよい。ジスルホニルイミドアニオン添加剤は、電解質の総重量の約0.01重量パーセント〜約5.0重量パーセントの量で、提供されるリチウムイオン電気化学電池の電解質に添加され得る。いくつかの実施形態では、ジスルホニルイミドアニオン添加剤は、約0.1重量パーセント〜約2.0重量パーセントの量で電解質に添加され得る。ジスルホニルイミドアニオン塩の、提供されるリチウムイオン電池の電解質へのこのような少量添加は、驚くべきことに、高温(>55℃)及び高電圧(>4.2V vs.Li/Li)における容量低下への耐性を提供し得る。この効果は、共添加剤として少量のビニレンカーボネートを電解質へ添加することによって強化され得る。典型的には、ビニレンカーボネートは、約0.5重量パーセント〜約5.0重量パーセントの量で添加され得る。より典型的には、ビニレンカーボネートは、約1.5重量パーセント〜約2.5重量パーセントの量で添加され得る。いくつかの実施形態では、ビニレンカーボネートは、約2.0重量パーセントの量で添加され得る。
【0026】
高温及び高電圧における容量低下への耐性を提供することに加えて、提供されるジスルホニルイミドアニオン及びその塩は、それが電解質中にあるとき、電荷輸送リチウム電解質塩、LiPFの加水分解安定性を改善することができ、また提供されるリチウムイオン電気化学電池の性能にとって有害となり得るHFの生成を抑制することができる。それに加えて、提供されるジスルホニルイミドアニオン及びその塩の使用は、高温及び高電圧における電池抵抗の増進を減少させることができ、また高温保管条件下で容量維持率を改善することができる。その結果として、提供されるジスルホニルイミドアニオン及び/又はそのジリチウム塩を、提供されるリチウムイオン電気化学電池の電解質に添加することを含む、リチウムイオン電気化学電池を安定化させる方法が提供される。
【0027】
提供されるリチウムイオン電気化学電池において添加剤として採用できる代表的な多官能性スルホネートアニオンには、これらに限定されるものではないが、SCFSO
SCFCFSOSCFCFCFSOSCFCFCFCFSO
SCF CFCFCFCFCFSOSCF CFCFCFCFCFCFCFSO
SCFCF(CF)CFSOSCFCFOCFCFSO
及び
【0028】
【化1】

が挙げられる。
【0029】
提供されるリチウムイオン電気化学電池において添加剤として採用できる多官能性スルホニルイミドアニオンには、
CFSON()SOCFCFSON()SOCF
CFSON()SOCFCFCFCFSON()SOCF
SON()SOCFCFCFSON()SO
CFSON()SOCFCF(CF)CFSON()SOCF、及び
CFSON()SOCFCFOCFCFSON()SOCFが挙げられる。
【0030】
本開示の電解質はまた、化学構造IIを有するビニレンカーボネートなどの、添加剤を含むことができ、化学式中、RはH又はC〜Cアルキル若しくはアルケニル基である。
【0031】
【化2】
【0032】
本発明の種々の実施形態において有用であり得る化学構造(II)の代表的な添加剤には、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、プロピルビニレンカーボネート、イソプロピルビニレンカーボネート、ブチルビニレンカーボネート、イソブチルビニレンカーボネートなどが挙げられるがこれらに限定されない。別の方法として又は追加として、本開示の電解質には、化学構造(III)を有するエチレンカーボネートを挙げることができ、化学式中、Xは、水素、フッ素、又は塩素であり、Qは、フッ素又は塩素又はC〜Cアルキル若しくはアルケニル基である。
【0033】
【化3】
【0034】
本発明の種々の実施形態に有用であり得る化学構造(III)の代表的な添加剤には、フルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート、1−フルオロ−2−メチルエチレンカーボネート、1−クロロ−2−メチルエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートなどが挙げられるがこれに限定されない。化学構造(III)で例示されるものなどの添加剤は、電解質の総重量の約0.5重量パーセント(重量%)を超える、約1.0重量%を超える、約5重量%を超える、約10重量%を超える、約20重量%を超える、約50重量%を超える、又は更に大きい量で、電解質に添加され得る。これらの添加剤は、例えば、米国特許出願公開第2009/0053589号(オブロバック(Obrovac)ら)に記載されている。
【0035】
レドックス化学物質シャトルなどの、他の添加剤もまた、提供されるリチウムイオン電気化学電池の電解質に添加され得る。レドックス化学物質シャトルは、再充電可能リチウムイオン電気化学電池に対して過充電保護を付与し得る。レドックス化学物質シャトルは、例えば、米国特許第7,585,590号(Wangら)、並びに米国特許第7,615,312号、同第7,615,317号、同第7,648,801号、及び同第7,811,710(全てDahnら)に開示されている。高電圧カソードのためのレドックス化学物質は、例えば、米国特許出願公開第2009/0286162 A1号(Lamannaら)に開示されている。
【0036】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0037】
調製例1−LiOSO(CFSOOLi(C3DS)の調製
LiOHの水溶液を、機械的攪拌器、温度形、還流凝縮器、及び添加用漏斗が装備された丸底フラスコ内で、53.091gのLiOH−HO(FMC Corp.,Philadelphia,PAから入手可能)を275mLの脱イオン水中に溶解することによって調製した。60℃にて攪拌中のLiOH溶液に、80.00gのFSO(CFSOF(P.Sartoriら、J.Fluorine Chem.、83、145〜149(1997)及び米国特許第3,476,753号(Hansen)に記載される既知の電気化学的フッ素化方法によって調製した)を、添加用漏斗から1時間かけて徐々に添加した。添加速度は、反応混合物を反応発熱から85℃を上回って加熱するのを回避するように制御した。添加が完了した後、更に約3時間、攪拌しながら80℃での加熱を継続して、加水分解を完了まで進行させ、次に反応混合物を室温まで冷却した。冷却した反応混合物を、攪拌しながら過剰のドライアイスで処理し、残留LiOHをLiCOに変換した。数グラムのセライト(Sigma−Aldrich、Milwaukee,WIから入手可能)を攪拌しながら添加し、得られたスラリーを吸引濾過して、不溶性の固体(主にLiF及びLiCO)を除去した。回収された水性濾液を、パイレックス(登録商標)パン内で90℃対流式オーブンにて一晩加熱し、次に真空オーブン内で20トール(2.67kPa)、135℃にて更に乾燥させることによって蒸発乾固した。得られた乾燥塩を、200mLのエタノール(200プルーフ)中に溶解し、吸引濾過して、残留LiF及びLiCO固体を除去した。濾液を、回転蒸発器上で30〜80℃、20トール(2.67kPa)にて蒸発乾固し、透明で粘稠な油を得た。前記油に200mlのトルエンを添加し、それを次に50〜90℃、20トール(2.67kPa)にて回転蒸蒸発によって除去して、残留エタノールを取り去った。後者のプロセスを2回反復し、白色固体粉末を得た。前記固体を、ガラスジャーに移し、真空オーブン内で140℃、10mトル(1.3Pa)にて一晩乾燥して、本質的に全ての水及び残留揮発性有機溶剤を除去した。合計79.1gの生成物を回収した(FSO(CFSOFを基準として96%の収率)。生成物の同定及び純度を、定量的19F NMR分析によって決定した(99.3重量%のLiOSO(CFSOOLi、0.7重量%のLiOSOCFCF(CF)SOOLi、0.02重量%のCFCOOLi)。
【0038】
電解質溶液中のC3DS溶解度の測定
基準電解質中のC3DSの溶解速度は低速であるため、初期の混合後、電解質中のC3DSの時間依存性濃度を知ることが必要であった。溶解されたC3DSの濃度を、19F NMR分光法を用いて測定した。0.5重量%のC3DSを、基準電解質処方、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)(容積比3:7)(Novolyte,Independence、OHから入手可能)中の1.0MのLiPFに入れた。その混合物を、水分レベルが5ppm未満であるArパージグローブボックス内で、それぞれ、0分(<1分)、30分、及び4時間の間攪拌した。次に、この混合物のアリコートを濾過し、密封したNMR管内へと移した。NMRサンプルを、Bruker 500MHz NMR分光計上で分析した。図1は、4時間攪拌後の、電解質溶液の19F NMRスペクトルである。図1において、−74ppmにおけるダブレットは、LiPFの共鳴の結果である。−114ppmにおけるピークA及び−119ppmにおけるピークBは、それぞれ、C3DS中のフッ素原子A及びBに帰属される。
LiOSOCFCFCFSOOLi
A B A
【0039】
全てのピークを統合し、1M LiPFへ正規化した。C3DSの容量モル濃度を、ピークAとBとを加算し、LiPFのピーク領域で除したピーク領域を用いて獲得した。1.17g/mlの電解質密度を仮定して、C3DSの容量モル濃度から、電解質中のC3DSの重量%濃度が容易に算出された。0分及び30分の攪拌後、C3DSの溶解度は、それぞれ、約0.09重量%及び0.10重量%であったのに対し、4時間後、溶解度は0.23重量%に増大した。下記の実施例では、C3DS添加剤を含有するリチウムイオン電池は、C3DSの0.5重量%チャージを伴うコントロール電解質の0分(<1分)の攪拌後、上澄み電解質溶液を注入されたことに留意されたい。前記電解質溶液中のC3DS濃度は、0.09重量%であると推定された。
【0040】
調製例2−LiOSO(CFSOOLi(C4DS)の調製
C4DSを、FSO(CFSOF(調製例1に記載される通り、電気化学的フッ素化によって調製した)が出発物質として使用されたことを除いて、調製例1と同じ手順を用いて調製した。生成物を分離し、その同定及び純度を19F NMR分析によって決定した(99.210重量%のLiOS(CFSOLi)。
【0041】
調製例3−(Li[CFSONSO(CFSONSO2−(C4DI)の調製
二官能性イミド酸、CFSONHSO(CFSONHSOCFを、米国特許第7,517,604号、第10コラム、40行目に記載される手順に従って、四水和物として調製した。この材料(66.7g)を、電磁攪拌棒、加熱マントル、クライゼンアダプタ、熱電対プローブ、添加用漏斗、及び水冷コンデンサ付きDean−Starkトラップを装備した500mLの二首丸底フラスコに入れた。脱イオン水(16.7mL)を、室温にて攪拌しながら添加して、二官能性イミド酸を溶解した。次に、6.55gのLiOH−HOを攪拌しながら添加して、酸を部分的に中和した。発熱がおさまった後、1.71gのLiCOを添加して、中和を完了した。発泡(COの発生による)がおさまった後、反応混合物を、攪拌しながら70〜80℃へ加熱した。次に、9.0mLの50% H水溶液を攪拌しながら滴下添加して、小規模の不純物によって引き起こされた茶色を退色した。全ての過酸化水素を添加した後、攪拌しながら反応温度を80℃で1時間維持して、退色処理を完了した。漂白が完了した後、反応温度を高めて、水を蒸留させた。合計で12mLの水をDean Starkトラップに収集し、廃棄して、ポット内に残留するジリチウム塩を約80%固形分に濃縮した。濃縮物を室温まで冷却すると、ジリチウム塩が水溶液中に溶解して残った。濃縮物を、0.2ミクロンGHP膜(Pall Life Sciences,Port Washington,NYから入手可能)を通過させる吸引濾過して、過剰な溶解されていなリチウムカーボネートを除去し、7.0のpHを有する無色透明の濾液を得た。濾液をPYREX(登録商標)結晶皿に移し、対流式オーブン内で160℃にて部分的に乾燥して、白色固体を形成した。白色固体をガラスジャーに移し、真空オーブン内で150℃、0.01トール(1.33Pa)にて一晩、更に乾燥した。真空で室温付近まで冷却した後、生成物の純粋な白色粉末を、保管及びサンプリング用の乾燥した箱内へと窒素下ですみやかに移した。(Li[CFSONSO(CFSONSOCF2−(C4DI)の単離収率は、59.45g(96.8%収率)であった。定量的19F NMR分析は、97.2重量%の純度を有する生成物の化学構造を確認した。
【0042】
電気化学電池の調製
電極の調製
95重量%のLiNi0.4Mn0.4Co0.2正極活物質、3M,St.Paul,MNから入手可能)、2.5重量%のSuper P carbon(Timcal Graphite and Carbon,Bodio,Switzerlandから入手可能な導電剤)、及び2.5重量%のポリフッ化ビニリデン結合剤(Arkema Inc.,King of Prussia,PAから入手可能なKYNAR RX PVDF)を、1−メチル−2−ピロリジノン(Honeywellから入手可能なNMP)中で溶剤として混合した。上述の溶液の固体含有量は58.3重量%であり、スラリー湿潤密度は1.91g/cmであった。次に、得られたスラリーをアルミホイル上にコーティングし、120℃にて乾燥し、正極(カソード)を調製した。次に得られたカソードを、使用前に2.91g/cm(30%有孔率)にカレンダー仕上げをした。同様に、92重量%のMAGEグラファイト(Hitachiから入手可能な負極活物質)及び8重量%のPAA−Li結合剤(水中LiOHで中和することによってPAA(Sigma−Aldrichから入手可能なポリアクリル酸)から調製した)を、溶剤としての水中で混合した。得られた混合物を、銅ホイルに塗布し、乾燥して、負極を生成した。アノードを、電池の組み立て前に1.61g/cm(25%有孔率)にカレンダー仕上げをした。
【0043】
電解質の調製
容量で3:7の比を有するエチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)(どちらもNovolyteから入手可能)を含む、非水性溶剤混合物を調製した。リチウム塩、LiPF(Novolyteから入手可能)を、上述の溶剤混合物に溶解して、1.0Mの電解質原液を調製した。種々の量の添加剤を、後述の実施例に示すように、1.0Mの電解質溶液に添加した。全ての電解質は、5ppm未満の水分含有量を有するArパージグローブボックス内で調製した。上述の配合した電解質を、リチウムイオン電池への注入の直前に濾過した。
【0044】
コイン電池の作製
コイン電池を、乾燥室内で、得られたカソード及びアノードを用いて、2325寸法法(23mm直径及び2.5mm厚)ステンレス鋼コイン電池ハードウェアにおいて製造した。2つの層のCELGARD #2335(Celgard,Charlotte,NCから入手可能)を、セパレータとして使用した。上述に記載された通りに調製された100μlの電解質を、コイン電池に手動で注入した。最後に、電池を圧着によって封止した。
【0045】
コイン電池サイクル動作
コイン電池試験条件(電圧上下限、温度、及びレート)は、添加剤を伴う性能と伴わない性能との区別化を可能にするため、コントロール電池において200サイクルにわたって、電池にストレスを加え、著しい容量低下を引き起こすように選択した。添加剤試験を、後述の試験プロトコルを使用して、2つの異なる温度にて実行した(室温及び60℃)。任意の所与の電池に関して、形成及びサイクル動作は同一温度にて実行した。
1)標準形成工程(C/30リミットまでの定電圧トリクルで、C/8にて4.4Vまで定電流充電−開回路電圧にて15分休止−C/8〜2.5Vにて定電流放電−開回路電圧にて15分休止)
2)C/20リミットまでの定電圧トリクルで、C/2レートにて4.4Vまで定電流充電
3)1Cレートにて2.5Vまで定電流放電−開回路電圧にて15分休止
4)工程2〜3を更に200サイクル反復
【0046】
比較実施例1及び2並びに実施例1及び2
コイン電池を、上述のカソード及びアノードで調製した。表Iに示す添加剤を、上述の1.0MのLiPFを含有する処方した電解質原液に添加した。
【0047】
【表1】

表1 1Mの電解質原液への添加剤 比較実施例1〜2及び実施例1〜2
【0048】
比較実施例1〜2及び実施例1〜2に関するコイン電池を、上述に詳細に述べるプロトコルに従ってサイクル動作した。異なる多数の電池を、室温及び60℃(高温)にてサイクル動作した。図2aは、室温に維持されたコイン電池に関する、コイン電池の比放電容量(mAh/g)対サイクル数のグラフを含む。室温にてサイクル動作した場合、添加されたVC(比較実施例2)、及びVCとC3DSとの組み合わせ(実施例2)を有する電池は、100サイクル後、明らかな容量低下を示す。しかしながら、コントロール及びC3DS電池(比較実施例1及び実施例1)は、200サイクル後に著しい容量損失を伴わず、同様のサイクル性をもたらした。
【0049】
より激しい条件下(60℃サイクル動作)では、C3DSを伴う電池(実施例1)は、図2bに示されるようにコントロール電池(比較実施例1)よりも高い放電容量維持率を示す。VC+C3DSの二成分混合物(実施例2)は、60℃において、VC単独(比較実施例2)よりも更に良好なサイクル動作グ性能を提供する。
【0050】
比較実施例3及び4、並びに実施例3及び4。
コイン電池を、上述のカソード及びアノードで調製した。容積比3:7を有するEC:EMCを含む非水性溶剤混合物を調製した。リチウム塩、LiPFを、上述の溶剤混合物に溶解して、1.0Mの電解質溶液を調製した。表2に示す添加剤を、上述の1.0MのLiPF電解質原液に添加した。この基準(又はコントロール)サンプルを分けるため、電解質溶液に、それぞれ、2.0重量%のビニレンカーボネート(VC)、2.0重量%のC4DI、及び2.0重量%のVC+2.0重量%のC4DIの混合物を添加した。全ての電解質は、5ppm未満の水分含有量を有するArパージグローブボックス内で調製した。
【0051】
【表2】

表2 1Mの電解質原液への添加剤 比較実施例3〜4及び実施例3〜4
【0052】
LiNi0.4Mn0.4Co0.2のリチウム混合金属酸化物95重量%と、MAGEグラファイトアノードとを含有する正極を、上述の実施例1〜2に記載される通りに調製した。
【0053】
コイン電池を、上述の通りに製造した。コイン電池試験条件(電圧上下限、温度、及びレート)は、添加剤を伴う性能と伴わない性能との区別化を可能にするため、コントロール電池において200サイクルにわたって、電池にストレスを加え、著しい容量低下を引き起こすように選択した。添加剤試験を、実施例1〜2に関して上述したものと同一の試験プロトコルを使用して、2つの異なる温度にて実行した(室温及び60℃)。任意の所与の電池に関して、形成及びサイクル動作は同一温度にて実行した。
【0054】
図3は、過酷な条件下(60℃サイクル動作)での、コイン電池の放電容量対サイクル数のグラフである。C4DI添加剤を含有する電池は、コントロール電池(添加剤を伴わない)よりも高い放電容量維持率を示す。VC+C4DIの二成分添加剤混合物を含有する電池は、60℃にて、VC又はC4DI添加剤単独の場合よりも、更に良好なサイクル寿命性能を提供する。
【0055】
比較実施例5及び6、並びに実施例5及び6
高電圧LiMn1.5Ni0.5スピネルカソードをコイン電池中に利用したことを除いて、実施例5〜6及び比較実施例5〜6用のコイン電池を実施例1〜2及び比較実施例1〜2に関するものと同じ様式で構成した。高電圧スピネルLiMn1.5Ni0.5カソード材料を含有する正極を、固体状態プロセスを使用して調製した。前駆体粉末NiO、Mn、LiOを、ローラーミルと自動粉砕との組み合わせによって一緒に混合した。前記材料を次に、900℃〜750℃の温度プロファイルを有するファーネス内で焼結した。冷却後、材料を軽くすりつぶし、100ミクロンにて篩過した。その後、LiMn1.5Ni0.5粉末を、Mazerustarミキサ内でPVDF、NMP、及びSuper Pと混合して、90:5:5コーティングスラリーを生成した。以下の5Vサイクル動作研究におけるカソードとしての使用のために、スラリーをアルミホイル上にコーティングし、120℃にて真空下で乾燥した。
【0056】
より高電圧のLiイオンバッテリケミストリーにおけるC4DI添加剤の性能を、MAGEグラファイト/LiMn1.5Ni0.5コイン電池においてサイクル動作することによって調べた。電池を、4.9V〜2.5Vの間でC/2の充電及び放電レートにて室温でサイクル動作した。基準(コントロール)電解質は、EC:EMC(容積比3:7)中の1MのLiPF(比較実施例5)であった。本発明の電解質を、0.5重量%のC4DI(実施例5)及び2.0重量%のC4DI(実施例6)を基準電解質に添加することによって調製した。添加された2.0重量%のVCを伴う基準電解質を含有する比較実施例も、同様に含まれる(比較実施例6)。図4は、これらの電池に関する放電容量対サイクル数を示す。基準電解質への0.5重量%及び2.0重量%のC4DIの添加は、添加剤を含有しないコントロール電池(比較実施例5)又は2.0重量%のVCを含有する電池(比較実施例6)と比較して、これらの高電圧MAGEグラファイト/LiMn1.5Ni0.5電池における放電容量維持率を著しく改善することが明らかである。
【0057】
LiNi0.4Mn0.4Co0.2カソードを有するコイン電池の熱保管試験
LiNi0.4Mn0.4Co0.2カソードと、MAGEグラファイトアノードと、添加剤を含まない、2重量%のビニレンカーボネート添加剤を含む、0.5重量%のHQ−115(比較のフッ素化電解質添加剤、3M,St.Paul,MNから入手可能)を含む、0.09重量%のC3DSを含む、0.09重量%のC4DSを含む、及び0.5重量%のC4DI添加剤を含む電解質と、を有するコイン電池を、4.2V〜2.8Vの間で室温にてC/10レートで7回、充電及び放電させた。その後、電池を100%充電状態(SOC)で4.2Vの端子電圧に充電した。次に、全てのコイン電池を、60℃のオーブンで1週間保管した。その後、バッテリを室温にて4回、放電及び充電させた。熱保管の前後の電池の放電容量を収集し、バッテリの不可逆容量損失(IRC)を図5の概略図に基づいて算出した。図6は、C3DS、C4DS、及びC4DI添加剤が、添加剤を伴わないコントロール電池と比較して、高温で保管された電池の不可逆容量損失を低減することをはっきりと示す。0.09重量%のC3DS、0.09重量%のC4DS、及び0.5重量%のC4DIに伴って獲得される性能改善のレベルは、ビニレンカーボネート添加剤(2.0重量%)の著しく高い充填を使用して獲得されるものに匹敵し、また0.5重量%のHQ−115を使用して獲得されるものより良好である。
【0058】
C4DI添加剤を伴うコイン電池における水混入の悪影響の抑制
既知の量の水が存在するときにコイン電池性能に及ぼすC4DI添加剤の影響を決定するために、基準電解質を含有する電池、及び添加された2.0重量%のC4DIを伴う電解質を含有する電池の全てに、1000ppmの水を混入して(電解質中)、室温にてC/5レートで4.2V〜2.8Vの間でサイクル動作した。図7は、これらの電池の比放電容量対サイクル数を示す。2.0重量%のC4DIの添加は、放電容量を大幅に改善し、また、1000ppmの水混入を含有するリチウムイオン電池のインピーダンス上昇を低減する。
【0059】
C4DI添加剤を伴うLiPF系電解質の加水分解安定性及び熱安定性
H及び19F NMR分光法を利用して、LiPF含有電解質中に水混入が存在する場合に、C4DIが、LiPFの加水分解安定性を著しく改善し、HF発生を抑制し得るかを決定した。まず、2.0重量%のC4DIを、基準の電解質処方、1MのLiPFEC:EMC(容積比3:7)に投入した。次に、300ppmの脱イオン水を、露点が−70℃未満である乾燥室内で、基準電解質のサンプルと、2.0重量%C4DIを含有する電解質のサンプルとにそれぞれ添加した。プラスチックバイアル瓶中で室温にて24時間保管した後、各溶液を密封したNMR管に移した。NMRサンプルを、Bruker 500MHz NMR分光計上で分析した。基準電解質のH NMRスペクトルにおいて、7.8ppmにおけるダブレットは、HFの陽子共鳴の結果であった。同様に、HFはまた、基準電解質の19F NMRスペクトルでは、−189ppmにおけるダブレット出現として識別された(H−F結合に起因する分裂)。また、フルオロリン酸OPFOHが、基準電解質の19F NMRスペクトルにおいて−88ppmにおけるダブレットとして識別された。興味深いことに、2.0重量%のC4DI添加剤を含有する電解質に関しては、HF及びOPFOH信号は観察されず、C4DIは、LiPF加水分解及び関連するHFの発生を抑制することが示唆される。抑えられたHF発生は、酸誘発性の電解質溶剤の分解を制限し、また電極表面における望ましくない酸誘発性反応を低減することによって、電解質の安定性に対して有益であると期待される。
【0060】
2.0重量%のC4DI添加剤のHF発生を抑制する能力を良好に定量化するために、上述のプロトコルを使用して、基準電解質と2.0重量%のC4DIを含有する電解質との双方に異なる濃度の水を、それぞれ添加した。300、500、700、及び1000ppmの水をそれぞれ添加した基準電解質及び2.0重量%のC4DIを含有する電解質溶液の19F NMRスペクトルを、室温にて24時間保管した後に取得した。結果は、2重量%のC4DIは、LiPF系電解質に最大1000ppmの水を添加した後でさえも、感知可能なレベルのHFが形成されるのを防ぎ得ることを示す。
【0061】
以下は、本発明の態様によるフルオロカーボン電解質添加剤を含む、リチウムイオン電気化学電池の代表的な実施形態である。
【0062】
実施形態1は、リチウム金属酸化物又はリチウム金属リン酸塩を含む正極と、リチウムをインターカレートする又はリチウムと合金化することが可能な負極と、添加剤を含む液体又はゲル電解質と、を含み、前記添加剤が、化学式:
X−SO−R’−SO−Y、を有する多官能性アニオンを含み、
化学式中、X及びYは、独立して、O又はRSOのいずれかであり、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖フルオロアルキル部分であり、また所望により、窒素、酸素、又はこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の鎖内へテロ原子を含有することができ、R’は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖又は環式フルオロアルキレンであり、また所望により、1つ又は複数の鎖内酸素原子を含有することができ、R及びR’の双方が、最大で20%の非フッ素置換基を有する、
リチウムイオン電気化学電池である。
【0063】
実施形態2は、前記正極がリチウム金属酸化物を含む、実施形態1によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0064】
実施形態3は、前記リチウム金属酸化物が、コバルト、ニッケル、マンガン、又はこれらの組み合わせを含むリチウム混合金属酸化物を含む、実施形態2によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0065】
実施形態4は、前記多官能性アニオンが、化学式:
OSO(CFSO、を有するジアニオンであり、
化学式中、n=1〜10である、実施形態1によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0066】
【0067】
実施形態5は、n=1〜4である、実施形態4によるリチウムイオン電気化学電池である。

実施形態6は、前記添加剤が、電解質の総重量の約0.1重量パーセント〜約1.0重量パーセントの量で存在する、実施形態4によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0068】
実施形態7は、X及びYが同一である、実施形態1によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0069】
実施形態8は、前記添加剤が、少なくとも1つのリチウムイオンを含む、実施形態1によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0070】
実施形態9は、電荷輸送媒体及び電解質塩を更に含む、実施形態1によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0071】
実施形態10は、前記電荷輸送媒体が、有機カーボネートを含む、実施形態9によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0072】
実施形態11は、前記有機カーボネートが、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、2−フルオロエチレンカーボネート、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態10によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0073】
実施形態12は、前記有機カーボネートが、ビニレンカーボネートを含む、実施形態11によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0074】
実施形態13は、前記電解質塩が、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラート)ボレート、LiN(SOCF、LiN(SO、LiAsF、LiC(SOCF、LiN(SOF)、LiN(SOF)(SOCF)、LiN(SOF)(SO)、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態9によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0075】
実施形態14は、前記電解質塩が、LiPF、又はリチウムビス(オキザラート)ボレートを含む、実施形態13によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0076】
実施形態15は、前記電解質が、ビニレンカーボネートを更に含む、実施形態14によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0077】
実施形態16は、前記ジアニオンが、化学式:
SO−N−SO−(CF−SO−N−SO、を有する、実施形態1によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0078】
実施形態17は、前記添加剤が、電解質の総重量の約0.5重量パーセント〜約4.0重量パーセントの量で存在する、実施形態16によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0079】
実施形態18は、前記電解質が、ビニレンカーボネートを更に含む、実施形態16によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0080】
実施形態19は、前記添加剤が全フッ素化されている、実施形態1によるリチウムイオン電気化学電池である。
【0081】
実施形態20はリチウムイオン電気化学電池を安定化させる方法であって、リチウム金属酸化物正極又はリチウム金属リン酸塩正極と、リチウムをインターカレートする又はリチウムと合金化することが可能な負極と、液体電解質と、を有する、リチウムイオン電気化学電池を準備する工程と、化学式:
X−SO−R’−SO−Y、を有する多官能性アニオンを添加する工程と、を含み、
化学式中、X及びYは、独立して、O又はRSOのいずれかであり、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖フルオロアルキル部分であり、かつ所望により、酸素、窒素、又はこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の鎖内へテロ原子を含有することができ、R’は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝鎖又は環式フルオロアルキレンであり、かつ所望により、1つ又は複数の鎖内酸素原子を含有することができ、R及びR’の双方が、最大で20%の非フッ素置換基を有する、
方法である。
【0082】
実施形態21は、X及びYが、RSOであり、前記電解質に添加されるジアニオンの量が、前記電解質の総重量の約0.05重量パーセント〜約3.0重量パーセントである、実施形態20によるリチウムイオン電気化学電池を安定化させる方法である。
【0083】
実施形態22は、リチウム金属酸化物又はリチウム金属リン酸塩を含む正極と、リチウムをインターカレートする又はリチウムと合金化することが可能な負極と、添加剤を含む固体ポリマー電解質と、を含み、前記添加剤が、化学式:
SO−N−SO−(CF−SO−N−SO、を有する多官能性アニオンを含み、
化学式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖フルオロアルキル部分であり、かつ所望により、窒素、酸素、又はこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の鎖内へテロ原子を含有することができ、Rは、最大で20%の非フッ素置換基を有する、リチウムイオン電気化学電池である。
【0084】
実施形態23は、リチウム金属酸化物又はリチウム金属リン酸塩を含む正極と、リチウムをインターカレートする又はリチウムと合金化することが可能な負極と、添加剤を含む固体電解質と、を含み、前記添加剤が、化学式:
O−SO−R’−SO−O、を有する多官能性アニオンを含み、
化学式中、R’は、1〜10個の炭素原子を有する分枝鎖又は環式フルオロアルキレンであり、かつ所望により、1つ又は複数の鎖内酸素原子を含有することができ、R’は、最大で20%の非フッ素置換基を有する、リチウムイオン電気化学電池。
【0085】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の様々な改変及び変更が当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載される例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではない点、また、こうした実施例及び実施形態はあくまで例示を目的として示されるにすぎないのであって、本発明の範囲は本明細書において以下に記載する「特許請求の範囲」によってのみ限定されるものである点は理解すべきである。本開示に引用される参照文献は全て、その全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7