(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多孔質支持体および薄膜ポリアミド層を含む複合ポリアミド膜を製造する方法であって、前記方法は、多官能性アミンモノマーおよび多官能性ハロゲン化アシルモノマーを多孔質支持体の表面に適用する段階および前記モノマーを界面重合させて薄膜ポリアミド層を形成する段階を含み、前記方法は、以下の段階:
i)前記多官能性アミンモノマーを含む極性溶液および前記多官能性ハロゲン化アシルモノマーを含む非極性溶液を適用することにより界面重合を行う段階であって、前記非極性溶液は前記モノマーの少なくとも0.001%重量/体積の追加モノマーをさらに含む、段階、および
ii)0.2〜5%重量/体積の追加モノマーを含むコーティング溶液を薄膜ポリアミド層に適用する段階
の少なくとも1つを含み、
前記追加モノマーは、a)ハロゲン化アシルおよびエポキシから選択されるアミン−反応性官能基およびb)式(
IV):
【化4】
(式中、AおよびA’は
、ハロゲン
およびヒドロキシルから独立して選択
される)
により表されるリン−含有官能基で置換されている脂肪族およびアレーンから選択される炭化水素基を含むことを特徴とする、方法。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本発明は、特定のタイプ、構造もしくは形状の複合膜または用途に特に制限されるわけではない。たとえば、本発明は、種々の用途、たとえば正浸透(FO)、逆浸透(RO)、ナノ濾過(NF)、超濾過(UF)およびミクロ濾過(MF)液体分離、において有用であるところの平らなシート、管状および中空の繊維のポリアミド膜に使用可能である。しかし、本発明は、ROおよびNF分離のために設計された膜にとって特に有用である。RO複合膜は、実質的にすべての溶解された塩に対して相対的に不浸透性であり、典型的には、一価のイオン、たとえば塩化ナトリウム、を有する塩の約95%超を退ける。RO複合膜は典型的には、約100ドルトンより大きい分子量を有する有機分子と同様に無機分子の約95%超を退ける。NF複合膜は、RO複合膜より浸透性であり、典型的には、一価のイオンを有する塩の約95%未満を退けるが、二価のイオンの場合にはその種に依存して、二価のイオンを有する塩の約50%超(しばしば90%超)を退ける。NF複合膜は、典型的には、約200より大きく500ドルトンまでの分子量を有する有機分子と同様にナノメートルの範囲の粒子を退ける。
【0005】
複合ポリアミド膜の例は、FilmTec社のFT−30
TMタイプの膜、すなわち不織の裏張りウェブ(たとえばPETのスクリム)の底の層(裏側)、約25〜125μmの典型的な厚さを有する多孔質の支持体の中間層、および典型的には約1ミクロン未満、たとえば0.01ミクロンから1ミクロンであるが、より一般的には約0.01〜0.1μmの厚さを有する薄膜ポリアミド層を含むトップ層(表側)を含むフラットシート複合膜、を包含する。該多孔質支持体は典型的には、浸透物の基本的には制限されない通過を許すのに十分なサイズであるが、その上に形成された薄膜ポリアミド層の架橋を妨げるのに十分なほどには大きくない孔サイズを有するポリマー状物質である。たとえば、該支持体の孔サイズは好ましくは約0.001〜0.5μmの範囲である。多孔質の支持体の非制限的な例は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、および種々のハロゲン化ポリマー、たとえばポリビニリデンフロライドから製造されたものを包含する。ROおよびNF用途の場合、該多孔質支持体は強度を与えるが、その相対的に高い多孔性のために流動体の流れに対してほとんど抵抗を提供しない。
【0006】
その相対的な厚さのために、該ポリアミド層は、該多孔質へのそのコーティング被覆率または充填量(loading)たとえば多孔質支持体の1平方メートル表面積当たり約2〜5000mgのポリアミド、より好ましくは、約50〜500mg/m
2、の観点でしばしば記載される。該ポリアミド層は、米国特許第4277344号明細書および米国特許第6878278号明細書に記載されているように、好ましくは多孔質支持体の表面上での多官能性アミンモノマーと多官能性ハロゲン化アシルモノマーとの界面重縮合反応により製造される。より具体的には、該ポリアミド膜層は、多孔質支持体の少なくとも1つの表面において、多官能性アミンモノマーを多官能性ハロゲン化アシルモノマーと界面重合させることにより製造され得る(ここで各用語は、単独の種または複数の種の使用の両方を指すことが意図される)。本明細書において使用されるように、用語「ポリアミド」は、アミド結合(−C(O)NH−)が分子鎖に沿って存在するポリマーを指す。該多官能性アミンおよび多官能性ハロゲン化アシルモノマーは、もっとも一般的には、溶液からのコーティング段階により該多孔質支持体に適用され、ここで該多官能性アミンモノマーは典型的には水性に基づくまたは極性の溶液からコーティングされ、多官能性ハロゲン化アシルは有機物に基づくまたは非極性溶液からコーティングされる。コーティング段階は、特定の順序に従う必要はないが、該多官能性アミンモノマーは好ましくは該多孔質支持体の上に最初にコーティングされ、続いて多官能性ハロゲン化アシルによりコーティングされる。コーティングは、噴霧、フィルムコーティング、ローリング、または他のコーティング技術の中では浸漬タンクの使用を通して実行されることができる。過剰の溶液は該支持体から空気ナイフ、乾燥機、オーブンなどにより除去され得る。
【0007】
該多官能性アミンモノマーは、少なくとも2の一級または二級のアミノ基を含み、芳香族(たとえばm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,3,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノアニソール、およびキシレンジアミン)または脂肪族(たとえば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、およびトリス(2−ジアミノエチル)アミン)であってもよい。好ましい多官能性アミンモノマーの例は、2または3のアミノ基を有する一級アミン、たとえばm−フェニレンジアミンおよび2つのアミノ基を有する二級の脂肪族アミンたとえばピペラジンを包含する。一つの好ましい多官能性アミンはm−フェニレンジアミン(mPD)である。多官能性アミンモノマーは極性溶液として該多孔質支持体に適用されてもよい。該極性溶液は、約0.1〜約20重量百分率、より好ましくは約0.5〜約6重量百分率の多官能性アミンモノマーを含み得る。該多孔質支持体上にひとたびコーティングされると、過剰の溶液は任意的に除去されてもよい。
【0008】
該多官能性ハロゲン化アシルモノマーは少なくとも2つのハロゲン化アシル基を含み、該多官能性塩化アシルは、蒸気相(たとえば十分な蒸気圧を有する多官能性ハロゲン化アシルの場合)から配分され得るが、該多官能性ハロゲン化アシルモノマーは、好ましくは有機物をベースとするまたは非極性の溶媒からコーティングされる。該多官能性ハロゲン化アシルは特に制限されず、芳香族または非環式多官能性ハロゲン化アシルがそれの組み合わせとともに使用されることができる。芳香族多官能性ハロゲン化アシルの非制限的な例は:塩化トリメシン酸、塩化テレフタル酸、塩化イソフタル酸、塩化ビフェニルジカルボン酸、および二塩化ナフタレンジカルボン酸を包含する。非環式多官能性ハロゲン化アシルの非制限的な例は、シクロプロパントリカルボン酸塩化物、シクロブタンテトラカルボン酸塩化物、シクロペンタントリカルボン酸塩化物、シクロペンタンテトラカルボン酸塩化物、シクロヘキサントリカルボン酸塩化物、テトラヒドロフランテトラカルボン酸塩化物、シクロペンタンジカルボン酸塩化物、シクロブタンジカルボン酸塩化物、シクロヘキサンジカルボン酸塩化物、およびテトラヒドロフランジカルボン酸塩化物を包含する。一つの好ましい多官能性ハロゲン化アシルは、塩化トリメソイル(TMC)である。該多官能性ハロゲン化アシルは、非極性溶媒に、約0.01〜10重量百分率、好ましくは0.05〜3重量百分率の範囲で溶解され得、連続コーティング操作の一部として配分され得る。適切な溶媒は、多官能性ハロゲン化アシルを溶解することができ、かつ水と非混和性であるもの、たとえばヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンおよびハロゲン化炭化水素、たとえばFREONシリーズである。好ましい溶媒は、オゾン層にほとんど脅威を与えず、そして特別の注意を要することなく決まった処理を受けるのに引火点および可燃性の観点において十分に安全であるものを包含する。好ましい溶媒は、Exxon化学会社から入手可能なISOPAR
TMである。
【0009】
有機物をベースとする溶液は、少量の他の物質(たとえば約50〜100ppm、実施態様によっては少なくとも100ppmの水)をさらに含み得る。たとえば、米国特許第6878278号明細書、米国特許第6723241号明細書、米国特許第6562266号明細書および米国特許第6337018号明細書は、界面重合を実行する前において、該多官能性ハロゲン化アシル溶液へ、広い範囲の錯体化剤を添加することを記載している。一の種類のそのような錯体化剤は式(I)により示される。
【0010】
【化1】

ここでαは、慣用のIUPACの周期表の(a)IIIA〜VIB族(すなわち、IIIA、IVA、VA、VIA、VIIA、VIIIA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB族)および(b)周期3〜6(すなわちNa、K、Rb、およびCsで始まる周期)に該当する元素から選択された結合核を含む非硫黄である。慣用のIUPACのIIIA族からVIB族は、「新しい表記」のIUPAC周期表の3〜16族およびCAS版の周期表のIIIB〜VIA族に該当する。混乱を避けるために、本明細書における参照は慣用のIUPAC周期表を使用する、すなわちIIIA族はSc、Y、La等で始める列に該当し、VIB族はO、S、Se、Te、Poで始まる列に該当する。具体的な例は:(1)以下の金属:アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、イットリウム、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモニー、テルリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジウム、プロメチウム、サマリウム、ユロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス(ビスマスは典型的には好ましくない)、およびポロニウム;(2)以下の半導体:ケイ素、セレニウム、およびゲルマニウム、および(3)リンを包含する。特に好ましい結合核は、Al、Si、P、As、Sb、SeおよびTeおよび金属、たとえばFe、Cr、Co、Ni、Cu、およびZnを包含する。Lは、以下の結合、たとえば炭素含有基、たとえば芳香族基、アルカン類、アルケン類、−−O−−、−−S−−、−−N−−、−−H−−、−−P−−、−−O−−P−−および−−O−−P−−O−−(これらのそれぞれは置換されていてもいなくてもよい)から選択された任意的な化学的結合基であり、同じまたは異なっていてもよい。βは溶解化基であり、同じまたは異なり、置換されていてもいなくてもよく、かつLにより定義される内部結合基を含んでいてもよいところの1〜12の炭素原子を含む。例は、1〜6の炭素原子を有する脂肪族およびアレーン基、芳香族基、複素環基、およびアルキル基を包含する。「x」は、0〜1の整数であり「y」は1〜5、好ましくは2〜4の整数である。使用される特定の溶媒およびハロゲン化アシルに依存するが、以下の錯体化剤が本発明において一般的に有用である:リン、ビスマス、ヒ素およびアンチモニーのトリフェニル誘導体(たとえばホスフィン、ホスフェート);リンのアルカンオキシエステル、たとえばトリブチルおよびジブチルホスファイト;有機金属錯体たとえばフェロセンおよび四エチル鉛および鉄(II)、鉄(III)、コバルト(III)およびクロム(III)のアセチルアセトネート錯体。そのような錯体化剤の好ましい種類は、式(II)により示される。
【0011】
【化2】
ここで「P」はリンであり、「O」は酸素であり、R
1、R
2およびR
3は、炭素含有基から独立して選択される。用語「炭素含有基」は、分岐状および非分岐状の非環式基、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、tert−ブチル等を意味することが意図される。これらの基は置換されていなくても置換されていてもよく(たとえばアミド基、エーテル基、エステル基、スルホン基、カルボニル基、無水物、シアン化物、ニトリル、イソシアネート、ウレタン、ベータヒドロキシエステル、二重結合および三重結合等で置換されている)、環状基、たとえばシクロ、ペンチル、シクロヘキシル、芳香族基たとえばフェニル、複素環式(たとえばピリジン)等であり、それらは置換されていなくても置換されていてもよい(たとえばメチル、エチル、プロピル、ヒドロキシル、アミド、エーテル、スルホン、カルボニル、エステル等で置換されている)。環状基は、脂肪族結合基、たとえばメチル、エチル等によりリン原子に結合されていてもよい。好ましい炭素含有基は、無置換、分岐状または非分岐状のC
1〜C
12基、より好ましくはC
1〜C
8脂肪族基、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピレン、ブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2−エチルブチル、ペンチル、ヘキシル等を包含する。さらに、基はフェニル基を包含する。使用されるとき、上記の錯体化剤は、好ましくは、多官能性ハロゲン化アシルを約1:5〜5:1、1:1〜3:1が好ましい、の比で含む、有機物をベースとするまたは非極性のコーティング溶液に添加される。別の好ましい実施態様においては、該コーティング溶液中の該錯体化剤の濃度は約0.001〜2重量%である。
【0012】
多官能性ハロゲン化アシルおよび多官能性アミンモノマーは、ひとたび、互いに接触されると、それらの表面において反応して、ポリアミド層または膜を形成する。しばしばポリアミド「識別層(discriminating layer)」または「薄膜層」と呼ばれるこの層は、溶質(たとえば塩)を溶媒(たとえば水性フィード)から分離するためのその基本的な手段を、該複合膜に与える。
【0013】
多官能性ハロゲン化アシルと多官能性アミンとの反応時間は、1秒未満であり得るが、接触時間は典型的には約1〜60秒の範囲であり、その後、過剰の液体は空気ナイフ、水浴、乾燥機などにより任意的に除去され得る。過剰の溶媒の除去は、環境温度における空気乾燥が使用され得るが、高められた温度、たとえば約40℃〜約120℃において達成されることができる。
【0014】
一つの実施態様において、本方法は、多官能性アミンモノマーと多官能性ハロゲン化アシルとを多孔質支持体の表面に適用する段階、および該複数のモノマーを界面重合させて、薄膜ポリアミド層を形成する段階を含む。本方法は、以下の段階:i)少なくとも1つのリン含有官能基またはその塩および少なくとも1つのアミン−反応性基を含むモノマーの存在において界面重合を行う段階;および/またはii)そのようなモノマーを界面重合後に薄膜ポリアミド層に適用する段階、の少なくとも1を含むことを特徴とする。
【0015】
該モノマーは、脂肪族類およびアレーン類から選択された炭化水素基を含む。好ましい脂肪族類は、14以下の炭素原子を含む非環状および環状基、たとえばアルキルおよびアルケニル基(好ましくは2〜6の炭素原子を有する)、シクロヘキサンおよび縮合した非芳香族環(たとえばトリシクロ[3,3,1,13,7]デカン)を包含する。使用可能なアレーン基は、好ましくは14以下の炭素原子を含む芳香族環状構造、たとえばベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニレン、ピレン、アントラキノン、ビフェニル等を包含する。他の代表的な芳香族環状構造は、ヘテロアレーン、たとえばピリジン、ピラジン、フランおよびチアジアゾールを包含する。ベンゼン環構造が好ましい。
【0016】
用語「アミン−反応性」官能基は、界面重合の間に、すなわち、薄膜ポリアミド層の形成の間に存在する時間および条件の間に、多官能性アミンモノマーのアミン官能基と反応性である官能基を指す。これは一般的には、室温、標準大気圧において数秒の接触時間内における実質的な反応を要求する。アミン−反応性官能基の代表的な例は、ハロゲン化アシル(たとえば酸塩化物)、無水物、イソシアネートおよびエポキシを包含する。好ましい実施態様において、アミン−反応性官能基はハロゲン化アシルまたは酸無水物である。界面重合の間に存在するときには、本モノマーは、得られるポリアミド構造内に取り込まれると考えられる(すなわち、本モノマーおよび多官能性アミンおよびハロゲン化アシルモノマーは反応生成物を形成する)。ポリアミドが形成されたのちに適用されるときには、本モノマーは、薄膜ポリアミドの中に存在する残余のアミン基と反応すると考えられる)。
【0017】
好ましい種類のリン−含有官能基は、式(III)により表される。
【0018】
【化3】
ここでOは酸素であり;Pはリンであり;AおよびA’は、独立してアミン(たとえば−NR
4R
5、ここでR
4およびR
5は、水素、1〜6の炭素原子を有するアルキル、またはアリール(たとえばフェニル)から独立して選択される)、アルコキシまたはアリーオキシ(たとえば−OR
6ここでR
6は、1〜6の炭素原子を有するアルキルまたはアリール(たとえばフェニル)から選択される)、ハロゲン、ヒドロキシルおよび水素、−ここですべてのアルキルおよびアリール基は置換されていなくても(たとえばハロゲン、ヒドロキシ等で)置換されていてもよい、から選択され;Yは好ましくは化学結合(すなわち中央のリン原子と直接的に)、酸素、硫黄、アミン(たとえば−NR
7、ここでR
7は、水素、1〜6の炭素原子を有するアルキルまたはアリール(たとえばフェニル)から選択される、アルキル(たとえば1〜6の炭素原子を有するもの)、およびアリール、ここで各アルキルまたはアリール基は置換されていないかまたは置換されている(たとえばハロゲン、ヒドロキシル、式(III)によりあらわされる基等で置換されている)、から選択された結合基である。好ましいサブクラスの実施態様において、AおよびA’はハロゲン(好ましくは塩化物)およびヒドロキシルから選択される。他のサブクラスにおいては、Yは酸素、アルキル、または式(IV)により示されるような化学結合である。
【化4】
【0019】
本モノマーは、少なくとも1つのリン−含有官能基またはその塩およびアミン−反応性官能基で置換されている上に、任意的に、追加のアミン−反応性基、リン−含有官能基、または非アミン−反応性官能基(たとえば薄膜ポリアミド層の形成の間に存在する時間および条件の間「非反応性」)、たとえばハロゲン、ヒドロキシル、ニトリル、アミド(−CONH
2)、ケトン(−CO−)、スルホン(−SO
2−)、ニトロおよび、非置換であっても、基たとえばヒドロキシル、ニトリル、およびエーテル基で置換されていてもよい1〜12の炭素原子を有するアルキルおよびアルケニル基で置換されていてもよい。
【0020】
一つの実施態様において、炭化水素基は、リン−含有官能基および式(V)において示されるようなアミン−反応性基を含むベンゼン環を含む。
【0021】
【化5】
ここでA、A’およびYは上記の通りであり、Zはハロゲン化アシル、無水物、イソシアネート、およびエポキシから選択されたアミン−反応性官能基であり、ハロゲン化アシルおよび酸無水物が好ましい。Zおよびリン含有官能基は、好ましくはベンゼン環のメタまたはパラに配置される。非制限的なサブクラスは、式(Va−e)により示される。
【化6】
ここでXおよびX’は、ハロゲン(たとえば塩化物基、−Cl)から独立して選択される。好ましいセットの実施態様において、AおよびA’は、ヒドロキシルおよびハロゲンから独立して選択される(好ましくは塩化物基)。別の好ましいセットの実施態様において、Yは酸素または化学結合から選択される。式(Va)と関連する好ましいセットの実施態様において、複数のハロゲン化アシル官能基は両方ともリン含有官能基に対してメタ位にある。式(Vb)と関連する好ましいセットの実施態様において、複数のハロゲン化アシル官能基はリン含有官能基に対してメタ位またはパラ位にある。非制限的な種は、以下:4−(ジクロロホスフィニル)塩化ベンゾイル、3−(ジクロロホスフィニル)塩化ベンゾイル、2−(ジクロロホスフィニル)塩化ベンゾイル、4−(クロロカルボニル)フェニルホスホン酸、3−(クロロカルボニル)フェニルホスホン酸、2−(クロロカルボニル)フェニルホスホン酸、4−(ジメトキシルホスフィニル)塩化ベンゾイル、3−(ジメトキシホスフィニル)塩化ベンゾイル、3−(ジエトキシホスフィニル)塩化ベンゾイル、2−(ジメトキシホスフィニル)塩化ベンゾイル、4−[(ジエトキシホスホリル)メチル]塩化ベンゾイル、4−(クロロカルボニル)フェニルホスホン酸、3−(クロロカルボニル)フェニルホスホン酸、4−(クロロカルボニル)フェニルホスホン酸モノエチルエステル、3−(エトキシホスフィニル)塩化ベンゾイル、3−(ヒドロキシメチルホスフィニル)塩化ベンゾイル、4−(ヒドロキシルホスフィニル)塩化ベンゾイル、3−(クロロカルボニル)フェニルホスホンアミドのメチルエステル、4−[(ジクロロホスフィニル)オキシ]フタル酸無水物、3,5−ビス(ジクロロホスフィニル)塩化ベンゾイル、5−(ジクロロホスフィニル)塩化イソフタロイル、3,5−ビス(ホスホノオキシ)塩化ベンゾイル、5−(クロロカルボニル)−1,3−フェニレンジホスホロジクロリデートおよび5−(ビス(ジクロロホスホリル)メチル)二塩化イソフタロイルを包含する。
【0022】
別の種類の実施態様において、該炭化水素基は式(VI)に記載されるような脂肪族基を包含する。
【化7】
ここで、A、A’、YおよびZは上記の通りであり、該脂肪族基は好ましくは、1〜9、好ましくは1〜6、の炭素原子を含む非環状および環状基である。好ましいセットの実施態様において、AおよびA’はヒドロキシルおよびハロゲンから独立して選択される(好ましくは塩化物基)。別の好ましいセットの実施態様において、Yは酸素または化学結合から選択される。さらに別の態様では、Zは、ハロゲン化アシルおよび無水物から選択される。非制限的な例は、式(VIa)により示されるように、ベンゼン基をシクロヘキサン基で置き換えることにより修飾された式(V)により示されるモノマーを包含する。
【0023】
【化8】
ここでA、A’、YおよびZは、上記の通りである。非制限的な種は、1−(クロロカルボニル)シクロヘキシル−1−ホスホン酸、2−(クロロカルボニル)シクロヘキシル−1−ホスホン酸、3−(クロロカルボニル)シクロヘキシル−1−ホスホン酸、4−(クロロカルボニル)シクロヘキシル−1−ホスホン酸、1−(ジクロロホスホリル)シクロヘキサンカルボニル塩化物、2−(ジクロロホスホリル)シクロヘキサンカルボニル塩化物、3−(ジクロロホスホリル)シクロヘキサンカルボニル塩化物、4−(ジクロロホスホリル)シクロヘキサンカルボニル塩化物、3−(ジクロロホスフィニル)−トリシクロ[3.3.1.13.7]デカン−1−カルボニル塩化物、5−(クロロカルボニル)シクロヘキシル−1,3−ビス(ホスホン酸)、3,5−ビス(ジクロロホスホリル)シクロヘキサンカルボニル塩化物を包含する。
【0024】
追加的なサブクラスの実施態様は、式(VII)により示される。
【化9】
ここで、A、A’、YおよびZは上記の通りであり、該脂肪族基は1〜9の炭素原子を含む(「n」は、1〜14の整数であり、好ましくは1〜6の炭素原子を有するアルキルである)。好ましいセットの実施態様において、AおよびA’はヒドロキシルおよびハロゲンから独立して選択される(好ましくは塩化物基)。別の好ましいセットの実施態様においては、Yは酸素または化学結合から選択される。さらに別の態様では、Zはハロゲン化アシル9および無水物から選択される。非制限的なセットの実施態様は、式(VIII)および(IX)により示される。
【化10】
ここで、A、A’、Y、Xおよびnは上記の通りである。非制限的な種は、以下、ホスホノ塩化アセチル、2−(ジクロロホスフィニル)塩化アセチル、3−クロロ−3−オキソプロピル−1−ホスホン酸、3−(ジクロロホスホリル)塩化プロパノイル、4−(クロロ−4−オキソブチル)ホスホン酸、1−クロロ−1−オキソプロパン−2−イルホスホロジクロリデート、6−(ジクロロホスフィニル)塩化ヘキサノイルおよび(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)メチルホスホロジクロリデートを包含する。追加的な種は、2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)メチルホスホロジクロリデートおよび2−(ジクロロホスフィニルメチル)二塩化ブタンジオイルを包含する。
【0025】
上記の通り、多官能性モノマーを多孔質の支持体の表面に適用する段階は、多官能性アミンモノマーを含む極性溶液と、多官能性ハロゲン化アシルモノマーを含む非極性溶液とを適用することを含む。該溶液を適用する段階は、噴霧、フィルムコーティング、ローリングによりまたは浸漬タンクの使用を通してコーティングすることを好ましくは含む。一つの実施態様において、本モノマーは、該適用段階の前に、たとえば多孔質支持体の上に非極性溶液をコーティングする前に、非極性溶液に添加される。そのような実施態様において、該非極性溶液は、好ましくは少なくとも0.001%重量/体積(w/v)の本モノマーを含む。別の実施態様において、該非極性溶液は約0.001〜0.1%重量/体積の本モノマーを含む。さらに別の実施態様においては、該非極性溶液は、本モノマーおよび多官能性ハロゲン化アシルを約0.0001:1〜1:1、より好ましくは0.001:1〜0.1:1、のモル比で含む。該非極性溶液は少量の水とともに上記の錯体化剤を含む追加の成分を含み得る(たとえば50〜500ppm、および実施態様によっては少なくとも100ppm)。
【0026】
別の実施態様においては、界面重合の前、間、または実質的な完了の後のいずれかにおいて、本モノマーが、多孔質の支持体の表面に独立して適用される(たとえば別の溶液から)。この実施態様においては、コーティング溶液は上記のように好ましくは非極性溶液であり、好ましくは約0.2〜5%重量/体積、より好ましくは約0.5〜3%重量/体積、の濃度の本モノマーを含む。該溶液は、少量の水とともに上記の錯体化剤を含む追加の成分を含み得る(たとえば50〜500ppm、および実施態様によっては少なくとも100ppm)。
【0027】
いくつかの実施態様においては、本モノマーで製造された膜は、そのようなモノマーなしに製造された実質的に類似の膜と比較したとき、より高い流束またはより低い塩の通過を示す。
【実施例】
【0028】
すべての試料TFC膜は、パイロットスケールの膜製造ラインを使用して製造された。ポリスルホン支持体はジメチルホルムアミド(DMF)中の16.5重量%溶液からのキャストであり、次に3.5重量%のメターフェニレンジアミン(mPD)水性溶液に浸された。次に得られた支持体は、非極性溶液の薄く、均一な層が適用されている間に一定の速度で反応テーブルを通して引っ張られた。該非極性溶液は、イソパラフィン系(ISOPAR L)、トリメソイル塩化アシル(TMC)、およびベンゼン−1−ホスホニルクロライド−3,5−ジクロロカルボニル(PIPC)を含んでいた。過剰の非極性溶液は除去され、得られた複合膜は水のすすぎタンクおよび乾燥オーブンを通過された。次に、試料膜の切り取り試片は、150psi、pH8、および室温において水性の塩溶液(2000ppmNaCl)を使用して標準の圧力試験に付された。試験の結果は表1にまとめられる。
【0029】
【表1】
【0030】
特定のタイプのポリアミド膜に制限されないが、本発明は、複合膜、たとえばROおよびNF用途において一般的に使用されるもの、より特にROおよびNF用途において使用されるフラットシート複合ポリアミド膜への使用に特に適する。薄膜ポリアミド層は、任意的にその表面の少なくとも一部上に、含水のポリマーを任意的に含み得る。そのようなポリマーは、ポリマー状界面活性剤、ポリアクリル酸、酢酸ポリビニル、ポリアルケンオキサイド化合物、ポリ(オキサゾリン)化合物、ポリアクリルアミドおよび、米国特許第6280853号明細書;米国特許第7815987号明細書;米国特許第7905361号明細書および米国特許第7918349号明細書に一般的に記載されている関連する反応生成物を含む。ある実施態様においては、そのようなポリマーは、配合および/または反応されてもよく、一般的な溶液からポリアミド膜にコーティングまたはさもなければ適用、または連続的に適用されてもよい。
【0031】
本発明の多くの実施態様が記載され、いくつかの場合には、ある実施態様、選択範囲、構成、または他の特徴が「好ましくは」として特性化されている。「好ましい」特徴の特性化は、そのような特徴が本願発明に必要である、必須であるまたは重要であると理解されるべきではない。
【0032】
上記米国特許公報の各記載内容全体は、参照することにより本明細書に取り込まれる。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
多孔質支持体および薄膜ポリアミド層を含む複合ポリアミド膜を製造する方法であって、前記方法は、多官能性アミンモノマーおよび多官能性ハロゲン化アシルモノマーを多孔質支持体の表面に適用する段階および前記モノマーを界面重合させて薄膜ポリアミド層を形成する段階を含み、前記方法は、以下の段階:
i)少なくとも1つのリン−含有官能基またはその塩および少なくとも1つのアミン−反応性官能基を含むモノマーの存在において界面重合を行う段階;および
ii)少なくとも1つのリン−含有官能基またはその塩および少なくとも1つのアミン−反応性官能基を含むモノマーを前記薄膜ポリアミド層に適用する段階の少なくとも1つを含むことを特徴とする、方法。
[態様2]
前記アミン−反応性官能基が、ハロゲン化アシル、無水物、イソシアネートおよびエポキシから選択される、上記態様1に記載の方法。
[態様3]
前記アミン−反応性官能基が、ハロゲン化アシルである、上記態様1または2に記載の方法。
[態様4]
前記リン−含有官能基が、式(III):
【化1】
(式中、AおよびA’は、アミン、アルコキシ、アリーオキシ、ハロゲン、水素、およびヒドロキシルから独立して選択され、Yは化学結合、酸素、硫黄、アルキルおよびアミンから選択される結合基である)
により表される、上記態様1〜3のいずれか1つに記載の方法。
[態様5]
AおよびA’がハロゲンおよびヒドロキシルから独立して選択される、上記態様4に記載の方法。
[態様6]
Yが、酸素、アルキル、および化学結合から選択される、上記態様4に記載の方法。
[態様7]
リン−含有官能基またはその塩およびアミン−反応性官能基を含むモノマーが、脂肪族およびアレーンから選択される炭化水素基をさらに含む、上記態様1〜6のいずれか1つに記載の方法。
[態様8]
前記炭化水素基が、1〜9の炭素原子を含む非環状または環状基を含む、上記態様6に記載の方法。
[態様9]
前記炭化水素基が、ベンゼン環を含む、上記態様7に記載の方法。
[態様10]
リン−含有官能基またはその塩およびアミン−反応性官能基を含むモノマーが、式(V)および式(VIa):
【化2】
(式中、AおよびA’は、アミン、アルコキシ、アリーオキシ、ハロゲン、水素、およびヒドロキシルから独立して選択され、Yは化学結合、酸素、硫黄、アルキルおよびアミンから選択される結合基であり、Zは、ハロゲン化アシル、無水物、イソシアネート、およびエポキシから選択されるアミン−反応性官能基である)
の少なくとも1つにより表される、上記態様1〜9のいずれか1つに記載の方法。
[態様11]
リン−含有官能基またはその塩およびアミン−反応性官能基を含むモノマーが、式(Va)および(Vc):
【化3】
(式中、XおよびX’はハロゲン類から独立して選択され、AおよびA’は、アミン、アルコキシ、アリーオキシ、ハロゲン、水素、およびヒドロキシルから独立して選択され、Yは化学結合、酸素、硫黄、アルキルおよびアミンから選択される結合基である)
の少なくとも1つにより表される、上記態様1〜10のいずれか1つに記載の方法。
[態様12]
多官能性モノマーを多孔質支持体の表面に適用する段階が、前記多官能性アミンモノマーを含む極性溶液および前記多官能性ハロゲン化アシルモノマーを含む非極性溶液を適用する段階を含み、かつ前記非極性溶液がリン−含有官能性基またはその塩およびアミン−反応性官能基を含むモノマーをさらに含む、上記態様1〜11のいずれか1つに記載の方法。
[態様13]
前記非極性溶液が、少なくとも0.001重量/体積の、リン−含有官能基またはその塩およびアミン−反応性官能基を含むモノマーを含む、上記態様12に記載の方法。