(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本特許文書における実行様態および実施形態において記載される白内障手術システムは、画像化フィードバックをタイムリーに生成する。この画像化フィードバックにより、外科医が支援されるかまたはフィードバックに基づいて手術が調節され、あるいは、このような調節がシステムそのものによって決定および実行される。
【0021】
図1Aに示す白内障手術システム100は、レーザ源110を含む。レーザ源110は、第1の1組のレーザパルスのレーザビームを生成する。これらのレーザパルスの持続時間またはパルス長さは、1〜1,000フェムト秒または1〜1,000ピコ秒の範囲である。レーザビームのエネルギーおよび出力は、選択された標的領域内における良好に制御された光破壊を(他の眼科組織(例えば、光受容網膜)の損傷を招くことなく)効率的に達成できるように、選択され得る。白内障手術システム100は、誘導光学素子120も含み得る。誘導光学素子120は、第1の1組のレーザパルスを角膜3および前房4を通じて眼1の水晶体5へ誘導するように、レーザ源110へ接続される。水晶体5は、嚢層またはバッグ6によって被覆される。誘導光学素子120は、対物素子122およびドッキングユニットまたは患者インターフェース(PI)124を通じてレーザビームを白内障標的領域内に誘導するように、構成され得る。ドッキングユニットまたは患者インターフェース(PI)124を眼1上にドックして、真空吸引の付加により眼を白内障手術システム100に固定することができる。いくつかの実施形態において、対物素子122と、眼1との間は直接接続または固定接続されていない場合がある。これらの実施形態において、眼トラッカーを用いて、画像化プロセスを例えば眼のあり得る動きと相関付けることもできる。
【0022】
白内障標的領域は、眼1の前部内に配置され得る。眼1は、角膜3、前房4、水晶体5および眼1の水晶体嚢6を含む。白内障標的領域は、嚢切開の実行時において、例えば、水晶体5の前嚢層または水晶体嚢内の円、円筒または傾斜円筒であり得る。白内障標的領域は、高い体積分率の水晶体5であってもよく、これにより、水晶体5または少なくともその核の光破壊、チョップまたは溶解が達成される。白内障標的領域は、角膜3内に設けられ得る(例えば、白内障手術デバイスの挿入用ポートを生成するためのアクセス用切開部)。より包括的な白内障手術(例えば、屈折白内障手術)において、さらなる角膜縁弛緩用の切断部または切開(LRI)または弧状切開を形成してもよい。
【0023】
嚢切開の直径は、3〜6mmの範囲であり得、2〜4mm範囲のz深さにおいて保存された水晶体嚢内に挿入されるべき眼内レンズ(すなわちIOL)の設計によって決定される。z深さは、白内障手術システム100の光軸に沿って、角膜3とPI124との接触面をz深さに対するゼロ基準レベルとして用いて測定される。水晶体光破壊の標的領域は、2〜4mmのz深さ〜7〜10mmのz深さにわたって延び得、直径は4〜8mmであり得る。最後に、角膜LRI、弓状およびアクセス切断部を0〜2mmのz深さにおいて6〜14mmの大直径において形成することにより、視野への直接的影響を最小化または実質的に回避することができる。これらの数値範囲は、白内障手術の危険性が、単なる角膜手術(例えば、LASIK)または網膜手術よりも実質的に高いことを示す。角膜/LASIK手術および網膜手術のいずれも、ずっと狭いz深さ範囲において行われ、手術体積も、白内障手術の場合よりもずっと少量である。角膜手術は典型的には、0.1〜0.5mmのz深さ範囲に限定されることが多い。なぜならば、角膜の厚さが1mmを超えることは稀であり、また、前房を無傷で保持するために、光破壊は典型的には角膜全体を切断しないことが多いからである。角膜切断部の典型的な直径は、2〜3mm範囲であり得る。網膜手術は眼1の後部において深いz深さにおいて行われるが、切断部が形成されるz深さの範囲は典型的には、対象網膜層の全体的厚さである2mm未満である。
【0024】
これとは対照的に、白内障手術の場合、上記した白内障標的領域のうちほとんどまたは全てにおいて、角膜3および水晶体5双方における光破壊を伴うことが多い。そのため、白内障手術の場合、z深さ範囲における切断部は4mm以上、場合によっては6mm以上になり得る。これらの白内障z深さ範囲は、上記した角膜または網膜手術のz深さ範囲よりも実質的に大きい。さらに、白内障関連切断部の直径は、角膜切断部の直径を実質的に超える。そのため、白内障用切断部を形成する場合、LASIKシステムの設計のための角膜切断部の形成または網膜手術システムの設計のための網膜切断部の形成の場合よりも、画像化システムを含む白内障手術システムの設計の場合のほうが実質的に困難性が高まる。
【0025】
白内障手術システム100は、レーザコントローラ130も含み得る。レーザコントローラ130は、標的走査パターンの電子表示を生成することと、誘導光学素子120を制御して、第1の1組のレーザパルスを標的走査パターンの一部に従って走査して、第1の光破壊領域を白内障標的領域内に生成することとを行う。
【0026】
上述したように、白内障標的領域は、前嚢層の近隣にあり得、標的走査パターンは、円形嚢切開、前嚢切開または曲線嚢切開のための水晶体5の前嚢層内の円または円筒上の1組の標的点であり得る。
【0027】
あるいは、白内障標的領域は、水晶体5の一部であり得、標的走査パターンは、ラジアルチョップ面、円筒、螺旋パターンまたはメッシュパターン上の1組の標的点であり得、水晶体5そのものの光破壊を誘発させる。標的走査パターンの点は、例えばそのラジアルまたは(x、y、z)座標によって規定され得る。これらの座標は、レーザコントローラ130の対応するメモリ内に保存された実行ファイルに基づいて、プロセッサ内において電子的に表現され得る。
【0028】
白内障手術システムは、スペクトル領域光学コヒーレンス断層(SD−OCT)画像化システム200も含み得る。スペクトル領域光学コヒーレンス断層(SD−OCT)画像化システム200は、手術レーザビームの走査によって生成された第1の光破壊領域の一部の画像を生成する。SD−OCT画像化システム200は、眼1中へ誘導されるべき誘導光学素子120中へ画像化ビームを連結することと、誘導光学素子120から返送された画像化ビームを受信することとを行うように、構成される。SD−OCT画像化システム200は、以下に詳述するように、手術時において第1の光破壊領域の画像(単数または複数)を生成することと、外科医またはレーザコントローラ130のためにタイムリーなまたは実用的なフィードバックを提供することとを行うように、構成され得る。
【0029】
図1Bは、白内障手術システム100の動作を示す。この例において、レーザコントローラ130は、後嚢層の近隣の円弧である白内障標的領域中の標的走査パターン302の電子表示生成することができる。誘導光学素子120は、レーザ源110によって生成された手術レーザビーム304の第1の1組のレーザパルスを標的走査パターン302の点を通じて集束および走査することができ、これにより、第1の光破壊領域306が生成される。この例において、第1の光破壊領域306は、標的走査パターン302の点に形成された1組の気泡またはキャビテーション気泡からなり得る。光破壊の開始後、SD−OCT画像化システム200は、画像化ビーム308を白内障標的領域を通じて走査して、第1の光破壊領域306の画像を生成することができる。いくつかの実行様態において、画像化ビーム308および手術レーザビーム304は、同じ共有された誘導光学素子120によって走査または誘導され得る。他の実行様態において、光学経路のうち一部のみが共有され得、画像化ビーム308は、さらなる共有されていない画像化誘導光学素子によって部分的に走査され得る。これらの設計全ては、誘導光学素子120の実施形態である。
【0030】
手術が計画通りに進捗していること(例えば、光破壊による気泡306が標的走査パターン302に従って形成されかつ意図しない結果が発生していないこと)がSD−OCT画像化システム200によって生成された画像によって示された場合、レーザコントローラ130は、手術レーザビーム304を元々の標的走査パターン302に沿って走査することを継続することができる。しかし、計画された手術からの逸脱がある旨をこの画像が示す場合、レーザコントローラ130は、後続の図に示すように、変更された走査パターンの電子表示を生成することにより、応答し、誘導光学素子120を制御して、この変更された走査パターンに従って第2の1組のレーザパルスを走査して、第2の光破壊領域を生成し得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、SD−OCT画像化システム200と、レーザコントローラ130との間は直接的に接続されていない場合がある。これらの実施形態において、SD−OCT画像化システム200は、第1の光破壊領域306の画像を表示し得、システムオペレータ(例えば、外科医)は、変更された走査パラメータを入力して、変更された走査パターンの電子表示をレーザコントローラ130に生成させ得る。
【0032】
図1Aに示すように、いくつかの実施形態において、SD−OCT画像化システム200は、OCT画像プロセッサ201を含み得る。OCT画像プロセッサ201は、光破壊の開始後に、生成された画像を分析し得る。いくつかの実施形態において、OCT画像プロセッサ201は、分析結果を外科医のために表示して、手術時においてタイムリーかつ実用的なフィードバックを提供し、これにより、外科医は、変更された走査パターンをレーザコントローラ130に入力することができる。
図1Bの例において、OCT画像プロセッサ201は、後嚢層から第1の光破壊領域306への距離を測定するように構成され得、この距離が事前設定された安全マージンを下回った場合、警告信号を外科医のために表示する。
【0033】
いくつかの実施形態において、SD−OCT画像化システム200は、
図1Aのようにレーザコントローラ130へ接続され得、あるいは、OCT画像プロセッサ201は、
図1Cのように自立型ユニットであり得、SD−OCT画像化システム200およびレーザコントローラ130へ直接接続される。これらの実施形態において、OCT画像プロセッサ201は、第1の光破壊領域306の画像に関連して制御信号を生成し得、この生成された制御信号をレーザコントローラ130へ付加して、変更された走査パターンの電子表示をレーザコントローラ130に生成させる。OCT画像プロセッサ201は、
図1AのようにSD−OCT画像化システム200へ全体的または部分的に一体化され得る。
【0034】
図1Dに示すように、いくつかの実施形態において、OCT画像プロセッサ201は、レーザコントローラ130と重複またはさらには一体化してもよい。
図1A、
図1Cおよび
図1Dの実施形態は、OCT画像の処理および変更された走査パターンの生成のためのソフトウェア関連機能は、多目的プロセッサによって部分的または全体的に実行することができることを示す。多目的プロセッサは、SD−OCT画像化システム200またはレーザコントローラ130中に収容してもよいし、あるいは、双方と一体化されたブロック中に収容してもよいし、あるいは、双方から分離された自立型ブロックであってもよい。
【0035】
上述したように、白内障手術において、z深さ範囲は4mmを超え得、あるいはいくつかの実施形態においては6mmを超え得るほど著しく大きいため、角膜または網膜システムにおいて用いられるものよりも実質的により複雑なSD−OCT画像化システム200が必要となり得る。そのため、いくつかの実施形態において、SD−OCT画像化システム200は、4mmよりも大きな画像化またはz深さ範囲Lmax(例えば、4〜20mmの範囲)を持つように、構成され得る。他の実施形態において、画像化またはz深さ範囲Lmaxは、6mmを超え得る(例えば、6〜10mmの範囲)。
【0036】
Lmaxすなわち、SD−OCT画像化システム200の画像化またはz深さ範囲は、以下に詳述するように、画像化レーザビーム308の波長λ、波長分解能δλ、ナイキスト周波数Nf、焦点長さfおよびSD−OCT−画像化システム200の瞳孔dに依存し得る。そのため、SD−OCT画像化システム200の実施形態は、画像化またはz深さ範囲が4mmを超えるかまたはいくつかの実施形態において6mmを超えるように、パラメータλ、δλ、Nf、fおよびdと共に設計することができる。
【0037】
2mmを超える画像化範囲を必要とするいくつかの既存のシステムにおいて画像化深さ範囲を1〜2mmから4mm以上へ拡張するためには、ほとんど実現不可能な光学素子よりもより高度な光学素子が必要となる点からも、システムの画像化深さ範囲を1〜2mmから4mm以上へ拡張することが困難であることが理解される。そのため、これらのシステムにおいては、画像化範囲が2mm未満である従来の画像化システムを用い、いくつかの画像を隣接するz深さにおいて約2mmの間隔を空けて取得し、(隣接する深さの画像を複雑な画像認識/処理回路を用いて統合することにより)単一の画像をより広い範囲で生成することにより、この従来のシステムの画像化範囲を拡張する。このようなシステムは、電子的に複雑であり得、画像統合を行った場合、性能が大幅に低下する。画像化性能の実質的な速度低下および複雑な電子機器の必要性を回避するために、SD−OCT画像化システム200の実行様態は、2つ以上の画像の統合の必要無く、4mmまたは6mmを超える画像化深さ範囲を達成する。
【0038】
明確さのため、2種類の画像化走査(すなわち、A走査およびB走査)を区別することが一般的である点に留意されたい。A走査とは、z軸が誘導光学素子120の光軸とアライメントされた基準フレーム内の単一の横(x、y)座標に対応するz深さの範囲内の標的の画像を指す。A走査は、画像化システムの画像化ビームを標的の単一の(x、y)点へ方向付け、異なるz深さに対応する画像化情報を収集することにより、得ることができる。
【0039】
いくつかの画像化システムは実際は、z画像化深さ範囲を走査し、異なるz深さについての画像データを連続して記録することにより、A走査を生成する。しかし、以下に述べるように、SD−OCT画像化システムは、異なるz深さについての画像データを同時に収集する(すなわち、z方向を走査しない)が、その画像も、A走査と呼ぶ。
【0040】
B走査とは、1組のA走査を指し、画像化ビームが横線に沿ってまたは横走査パターンにおいて走査された際に画像化ビームとして収集される、1組または1つの線の(x、y)点に対応する。通常の(x、y)分解能の典型的なB走査は、500〜2,000回のA走査を含み得る。高(x、y)分解能のB走査は、1,000〜3,000回のA走査を含み得る。特に高い(x、y)分解能B走査は、2,000〜5,000回または2,000〜16,000回のA走査を含み得る。典型的には、B走査は、標的の断面、円形または円筒画像と統合されたこれらのA走査を含み得る。そのため、B走査は、個々のA走査の場合よりも実質的により詳細なおよびよって実質的により実用的なフィードバック画像化情報を外科医のために提供することができる。そのため、白内障手術システム100の実施形態において、第1の光破壊領域および第2の光破壊領域の画像は、500〜2,000回、1,000〜3,000回、2,000〜5,000回または2,000〜16,000回のA走査を含み得るB走査を指し得る。
【0041】
OCT画像化システムは、2つのクラス(すなわち、時間領域またはTD−OCT画像化システム、およびスペクトル領域またはSD−OCT画像化システム)に分類され得る。TD−OCT画像化システムは、画像化光線を帯域幅と共に用いる。この帯域幅は、短いパルス長さの規定と、異なるz深さからの画像化情報の連続的収集(実際には、z軸に沿った走査)とに適している。これとは対照的に、SD−OCT画像化システムにおいては、異なる波長スペクトル成分により異なるz深さを示す画像化情報を並列して同時に取得および搬送する帯域幅を有する画像化光線が用いられる。その結果、SD−OCT画像化システムは、異なるz深さからの画像化情報を同時に並列に収集することができる。z深さの画像化情報を並列して感知することにより、SD−OCT画像化システムの性能がTD−OCT画像化システムと比較して10〜1,000倍だけ加速される。このようなより高性能のSD−OCT画像化システムは、以下に述べるように、いくつかの実施形態において用いることができる。
【0042】
画像化時間の点において、このような高性能により、手術時間よりも短い画像化時間内において光破壊が発生した後、SD−OCT画像化システム200実施形態において、B走査画像を生成することが可能になる。画像化時間は、1秒未満であり得る(例えば、0.1ミリ秒〜1秒の範囲内)。いくつかの実施形態において、画像化時間は、0.1秒未満であり得る(例えば、1ミリ秒〜0.1秒の範囲内)。これらの短い画像化時間により、SD−OCT画像化システム200によって生成された画像に基づいて、白内障手術の進捗についてのタイムリーおよびよって有用なフィードバックを外科医のために提供することができ、これにより、外科医がこのフィードバックに基づいて手術を変更することが可能になる。この変更は、変更された標的走査パターンの入力を含み得る。
【0043】
次のレベルの有用性は、白内障手術時においてフィードバック画像を1回だけではなく繰り返し提供することができるSD−OCT画像化システム200のいくつかの実施形態によって提供される。このようなシステムは、第1の光破壊領域306の発展、位置および成長についての貴重なタイムリーなフィードバックを提供することができ、これにより、白内障手術システム100の精度、性能および安全性の定性的向上が可能になる。
【0044】
SD−OCT画像化システム200のいくつかの実施形態は、さらなる定性的向上を提供することができる。これらの実施形態においては、白内障手術時において数個の更新画像を提供できるだけではなく、手術進捗について実質的なライブ画像を提供することができる。本質的にライブのフィードバックにより、極めて貴重なタイムリーかつ実用的な情報を外科医に送達することにより、外科医は、手術進捗の監視、手術精度の向上、望ましくない結果の早期検出およびそのような結果へのリアルタイムでの対応を行うことが可能になる。
【0045】
一般的に用いられるライブビデオ画像リフレッシュレートは、約24フレーム/秒である。よって、20〜25フレーム/秒以上のリフレッシュレートまたはフレームレートで画像を提供することが可能な画像化システムにより、外科医にとって本質的にライブのようにみえる画像を提供することができる。一方、フレームレートまたはリフレッシュレートが20〜25フレーム/秒を大幅に下回るシステムの場合、ライブビデオ画像化とは認識されず、ぎくしゃくしかつコマ落ちする画像として認識されるため、外科医にとって白内障手術において気が散る原因にさえなり得る。
【0046】
この文脈において、TD−OCT画像化システムは、z深さ画像化情報を連続して取得するため、わずか1または数フレーム/秒のリフレッシュレートで低分解能のB走査を生成し得る。より高分解能の画像を提供することが期待されているTD−OCT画像化システムの場合、画像の走査および更新をさらに1フレーム/秒を大きく下回るレートで行わざるを得ない場合がある。このようにライブよりも際だって低速のフィードバック画像は、外科医からみてぎくしゃくした画像にみえ、また、気が散る原因にさえなり得る。さらに、このような低速の走査速度およびその結果発生する低速のリフレッシュレートに起因して、いくつかのTD−OCT画像化システムにおいて、アーチファクトが表示され得る(例えば、実際には平滑な層の画像において、表示ががとびとびに不連続になり得る)。
【0047】
これとは対照的に、SD−OCTシステムの場合、全てのz深さからの(x、y)点における画像データを同時かつ並列に収集する。これらの画像は、未だにA走査と呼ばれる場合があるが、連続的なz走査は用いられない。このように、異なる深さからの画像データを並列かつ同時に収集するため、SD−OCTシステム200の実施形態において、上述したように、A走査をTD−OCT画像化システムの場合よりも10〜1,000倍高速に取得することができる。詳細には、品質SD−OCT画像化システム200は、10,000〜100,000回のA走査/秒を取得することができ、あるいは、同等に10〜100kHzのA走査取得レートを持つことができる。高品質のSQ−OCT画像化システム200のA走査取得レートは、30〜300kHzであり得る。詳細には、高品質のSD−OCT画像化システム200のA走査取得レートは100kHz〜1、000kHzであり得、TD−OCT画像化システムの場合に達成することが可能なA走査取得レートを大きく上回る。
【0048】
明確なことに、A走査取得レートまたはA走査の回数/秒は、A走査の回数/B走査に、画像数/秒を乗じたもの、すなわち画像リフレッシュレートにほぼ等しい。例えば、A走査取得レートが10,000〜100,000回のA走査/秒(または10〜100kHz)の品質である場合、通常の(x、y)分解能の500〜2,000回のA走査/B走査の画像は、20〜200フレーム/秒のリフレッシュレート範囲を含む5〜200フレーム/秒の範囲の画像リフレッシュレートにおいて取得される。別の例において、高品質のA走査取得レートである30〜300kHzにおいて、1,000〜3,000回のA走査/B走査の高(x、y)分解能の画像は、25〜300フレーム/秒の範囲を含む10〜300フレーム/秒の範囲内の画像リフレッシュレートにおいて取得され得る。最後に、特に高品質のA走査取得範囲である100〜1,000kHzにおいて、25〜500フレーム/秒の範囲の画像リフレッシュレートにおいて、特に高(x、y)分解能の2,000〜5,000のA走査/B走査の画像を生成することができる。
【0049】
これらの例から分かるように、A走査取得レート品質およびA走査/B走査分解能比の多様な組み合わせを用いたSD−OCT画像化システム200の実施形態により、20フレーム/秒閾ライブビデオレートを明確に上回る画像リフレッシュレートが得られ、よって、TD−OCT画像化システムに比して定性的な利点が得られる。
【0050】
SD−OCT画像化システム200の実施形態は、典型的には特に高分解能および通常のA走査取得レート品質で動作させられる場合、ライブビデオレートよりも低い画像リフレッシュレートで動作させることができる点に留意されたい。このような実施形態は、SD−OCT画像化システム200のオペレータが医療的な理由のために特に高分解能の設定を必要とし、SD−OCT画像化システム200のライブビデオレート能力無しですませようとする場合に用いることができる。
【0051】
画像データの全体的量は、他の方法で取得することも可能である。SD−OCT画像化システム200の特定の設計パラメータ(例えば、そのセンサーアレイの全体長さ)により、分解点のz方向距離であるz分解能が制御される。このz分解能は、例えば、データ点間の5ミクロンのz方向距離であり得る。すなわち、典型的なLmax=5mmのzの深さ範囲において1,000個のz深さ点が得られる。通常の(x、y)分解能の実施形態において、B走査が((x、y)面において約5ミクロンだけ間隔を空けて配置されることの多い)500〜2,000回のA走査を含む場合、この実施形態において、画像分解能が0.5〜2百万画素/1画像で画像が生成され得る。他の実施形態において、20〜200、25〜300または25〜500フレーム/秒以上のライブビデオレートで画像を提供しつつ、1〜3百万、2〜5百万またはさらには2百万〜1千万画像点/フレームの画像分解能で画像を取得することができる。
【0052】
このように高(x、y)、zおよび画像分解能が極めて高いため、SD−OCT画像化システム200の実施形態において、複雑であり、鋭利でありかつ豊富な詳細を含む画像を取得および表示することができる。例えば、B走査は、(x、y)面内のいくつかの円、放射線、螺旋、および2次元(2D)横または横走査グリッドに沿った水晶体5の走査を含み得る。これらの詳細画像により、SD−OCT画像化システム200は、モデルの利用ならびにジオメトリおよび形状についての前提を行う代わりに、水晶体5の実際の形状をマップアウトすることができる。
【0053】
ここで、OCT画像の表示には時間もかかる点に留意されたい。そのため、画像表示のリフレッシュレートは、SD−OCT画像化システム200の表示ユニットの電子性能の速度によって限定され、OCT画像取得ユニットのレートを下回り得る。この文脈において、上記したリフレッシュレートは、((電子およびデータ転送制限要素に応じて低下する可能性のある)表示ユニットの表示レートによってではなく)SD−OCT画像化システム200による画像取得速度を特徴付ける。
【0054】
SD−OCTおよびTD−OCT画像化システムの画像化速度が20〜25フレーム/秒のライブビデオレートの対向しあう側部上にあると仮定した場合、SD−OCT画像化システム200を含む白内障手術システムの実施形態において、運動アーチファクトの無い、タイムリーかつ円滑なライブフィードバック情報を外科医のために提供することができる。一方、典型的なTD−OCT画像化システムを用いた実施形態においては、このような円滑なライブフィードバックを外科医のために提供することは不可能であり、また、運動アーチファクトが表示される傾向にある。
【0055】
SD−OCT画像化システム200の実施形態の長期性能に影響を及ぼす最後の要素として、SD−OCT画像化システムの場合、可動部分が含まれないため、信頼性および保守性が極めて満足できる点がある。これとは対照的に、TD−OCTシステムの場合、TD−OCT装置の基準アーム内の基準ミラーの動きに関連して高速移動する部分が含まれる。明らかなことに、このようなTD−OCTシステム内の可動部分に起因して、誤動作およびミスアライメントの可能性が増加し、その結果全体的性能が低下し得、現場修理の必要回数が増加し、また、長期性能低下の可能性も高まる。
【0056】
要約すると、SD−OCT画像化システムは、特に白内障用途の場合において少なくとも以下の理由に起因して、TD−OCTシステムと定性的に異なる:(1)SD−OCT画像化システムは、ライブ画像化またはフィードバック画像を高精度白内障手術プロセスに有用な20〜200、20〜300または20〜500フレーム//秒のリフレッシュレートで提供するように構成される一方、TD−OCTシステムはそうではない。(2)SD−OCT画像化システムは、500〜2,000、1,000〜3,000または2,000〜5,000A走査/B走査以上のライブビデオレートでの高(x、y)分解能で画像提供が可能である一方、TD−OCT画像化システムはそうではない。(3)SD−OCT画像化システムは、10〜100kHz、30〜300kHzまたは100〜1,000kHzの品質A走査取得レートで動作可能である一方、TD−OCTシステムはそうではなくてもよい。(4)SD−OCT画像化システムの場合、豊富な詳細を含む画像を高画像分解能で例えば0.5〜2、1〜3または2〜5百万画像点などのライブビデオレートで提供することに適している一方、TD−OCTシステムはそうではない。(5)SD−OCT画像化システムの場合、豊富な詳細を含む画像の提供が可能であるため、水晶体5の画像全体を水晶体5のモデルの使用無しに形成することが可能である一方、TD−OCTシステムはそうではない。(6)SD−OCT画像化システムは典型的には、運動アーチファクトを表示しない一方、TD−OCTシステムは運動アーチファクトを表示する可能性が高い。(7)最後に、SD−OCT画像化システムの場合、現場修理およびメンテナンスは頻繁でなくてよい(例えば、6ヶ月毎または9ヶ月毎のみ)一方、TD−OCT画像化システムの場合、可動部分の現場修理およびメンテナンスをもっと頻繁に必要になることが多い。
【0057】
一般的には白内障標的領域(および詳細には第1の光破壊領域306)の1つ以上のフィードバック画像またはフィードバックビデオを提供できるというSD−OCT画像化システム200の利点として、外科医がこのフィードバックに応じて手術を変更することができる点がある。手術変更は、提供されたフィードバック画像またはビデオに応じて変更された走査パターンを生成することにより、行われる。変更された走査パターンは、レーザコントローラ130がシステムオペレータから受信された初期入力に従って元々の標的走査パターン302の電子表示を生成した後、異なる様態で生成され得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、レーザコントローラ130は、システムオペレータから同様に受信された変更入力に従って、変更された標的走査パターンの電子表示を生成し得る。このような実施形態において、変更入力は、第1の光破壊領域306の部分の画像の分析に応じて、システムオペレータによって生成され得る。例えば、外科医は、第1の光破壊領域306の画像を調査し、手術レーザビームを過度に分散させる原因となる望ましくない気泡の形成を発見し、手術レーザビーム304を操作して気泡を除去する、変更された走査パターンを生成させる。
【0059】
他の実施形態において、SD−OCT画像化システム200は、較正マークを表示し得る。これらの較正マークは、外科医またはシステムオペレータが第1の光破壊領域306の標的走査パターン302に相対する位置を較正する作業を支援する。このような較正マークは、画像の特徴点(例えば、角膜3または水晶体5の頂点)と関連付けられ得る。
【0060】
さらに他の実施形態において、SD−OCT画像化システム200は、OCT画像プロセッサ201を含み得る。OCT画像プロセッサ201は、第1の光破壊領域306の画像を分析し、システムオペレータのためのフィードバックを表示することができる。例えば、OCT画像プロセッサ201が誤較正(すなわち、標的走査パターン302が必要としたであろう場所から離れた場所に第1の光破壊領域306が形成されたこと)を感知した場合、OCT画像プロセッサ201は、誤較正フィードバック信号を外科医へ送ることができる。その後、外科医は、手術の停止を決定し、システムの再較正を行うかまたは誤較正距離を補償するために変更された走査パターンを入力することができる。
【0061】
さらに他の実施形態において、SD−OCT画像化システム200は、第1の1組の手術レーザパルスの生成前に基準画像をとり、第1の1組のレーザパルスによる第1の光破壊領域306の生成後にフィードバック画像をとることができる。OCT画像プロセッサ201は、これら2つの画像間の差を決定し、これらの差を表示することができる。決定および表示された差により、外科医またはOCT画像プロセッサ201は、白内障手術の進捗を監視し、標的走査パターン302と比較した場合の相違(例えば、意図しない手術副産物(例えば、気泡)の発生)をタイムリーに追跡することができ、また、画像および表示された差に基づいて、変更された走査パターンを発生させることができる。
【0062】
最後に、いくつかの実施形態において、OCT画像プロセッサ201は、より高度かつ積極的な役割を果たすことができる。例えば、OCT画像プロセッサ201は、第1の光破壊領域306の画像を積極的に分析し、制御信号を生成して、必ずしも外科医からの変更入力を待機せずに、レーザコントローラ130に変更された走査パターンの電子表示を生成させることができる。例えば、OCT画像プロセッサ201が危険性が差し迫っている状況を発見した場合(例えば、第1の光破壊領域の形成が後嚢層に近すぎる場合)、OCT画像プロセッサ201は、外科医との遅くかつ時間のかかる対話の結果を待つことなく、白内障手術を停止することができる。
【0063】
上記の5個の実施形態は、多様な様態で組み合わせることができる。例えば、画像から危険性が差し迫っている状況が決定された場合、OCT画像プロセッサ201は、外科医のためのフィードバック信号の表示と、手術停止のためのレーザコントローラ130のための制御信号の準備との双方を行うことができる。その後、OCT画像プロセッサ201は、所定の時間にわたって外科医からの変更入力を待機し得る。このような変更入力が所定時間内に無い場合、OCT画像プロセッサ201は、差し迫っている危険な状況を回避するために自身で行動を進めることができ、制御信号をレーザコントローラ130へ送って、外科医からの入力をさらに待機することなく手術を停止させることができる。
【0064】
図2A〜
図2Bは、水晶体5の後領域内に標的走査パターン302を計画したレーザコントローラ130の特定の例を示す。白内障手術システム100は、標的走査パターン302に従って手術レーザビーム304を付加して、第1の光破壊領域306を生成し得る。しかし、画像化レーザビーム308による第1の光破壊領域306の後続画像化の結果、第1の光破壊領域306が意図される標的走査パターン302から逸脱310だけ誤留置されて形成されていることが判明する場合がある。逸脱310は、標的走査パターン302に相対する第1の光破壊領域306の位置、方向または形状の逸脱であり得る。このような誤留置または誤較正は、以下のような多様な理由に起因して発生し得る:例えば、外科医による誤入力、誘導光学素子120の製造プロセスにおける精度低下、コンポーネントの熱膨張、初回画像化後の患者の動き、患者インターフェース124の圧力に起因する眼の変形、または、動作前の診断プロセス時における眼1の屈折特性の特徴付けの誤り。
【0065】
図2Bにおいて、いくつかの実施形態において、SD−OCT画像化システム200が分析無しに標的走査パターン302のフィードバック画像および第1の光破壊領域306の画像を表示することができる様子が図示されている。このフィードバック画像から、外科医は、逸脱310を視覚的に決定し、補償のための変更入力を入力して、レーザコントローラ130に走査パターン312を変更させる。他の実施形態において、SD−OCT画像化システム200は、外科医の分析を支援するための較正マークを表示し得る。
【0066】
他の実施形態において、OCT画像プロセッサ201は、逸脱310を決定し得る。その後、いくつかの実施形態において、OCT画像プロセッサ201は、決定された逸脱310ならびに外科医のためのフィードバックおよび推奨事項を表示し得る(例えば、走査パターンのシフトの大きさおよび方向についての提案、または外科医に対する警告サイン)。これらの実施形態において、外科医は、変更入力をレーザコントローラ130に入力して、逸脱310を低減して低減逸脱310rとする目的のために、変更された走査パターン312を生成させることができる。さらに他の実施形態において、OCT画像プロセッサ201は、レーザコントローラ130へ直接信号を送って、変更された走査パターン312の電子表示を生成させて、決定された逸脱310を低減して低減逸脱310rとする。これらの動作は全て、外科医からの変更入力を待たずに行われる。
【0067】
図2Bは、変更された走査パターン312の生成において、上記実施形態のうちいずれかにおいて誘導光学素子120の誤較正を考慮に入れることができることを示す。変更された走査パターン312は、およそ誘導光学素子120の誤較正の分だけ標的走査パターン302からシフトする場合があり、そのため、誘導光学素子120の誤較正に起因して手術レーザビーム304によって形成された第2の光破壊領域314が変更された走査パターン312から誤留置された場合、第2の光破壊領域314は、元々意図されていた標的走査パターン302に近接して形成され、その結果、逸脱310が低減されて低減逸脱310rとなる。
【0068】
図2Cに示す関連実施形態において、OCT画像プロセッサ201は、第1の光破壊領域306が意図せずに危険領域316内に進入する状態で形成されたかまたは延在してしまっていないかを決定することができる。第1の光破壊領域306が危険領域316内に形成された場合、後嚢層の完全性が脅かされ、破壊する可能性があり、その結果、嚢6が穿刺され、複雑な硝子体茎切除術手術が必要となり得る。その場合、白内障手術の危険性が実質的に高まる。
【0069】
このような完全性の破壊を阻止するために、多様な実施形態において、OCT画像プロセッサ201は、フィードバック画像(単数または複数)またはSD−OCT画像化システム200の本質的にライブの画像化を分析して、危険領域316内において第1の光破壊領域306が後嚢層に近接しすぎてまたは本質的にライブの画像化内に形成されていないかを監視することができる。OCT画像プロセッサ201は、第1の光破壊領域306がこの危険領域316内に形成されていることを感知した場合、OCT画像プロセッサ201は、外科医のための警告フィードバックを表示するかまたはレーザコントローラ130のための制御信号を生成して、変更された走査パターン312を生成させることができる。上記の実施形態全てにおいて、レーザコントローラ130は、変更された走査パターン312を生成し、手術レーザビーム304に相応に指令して、危険領域316の外部において第2の光破壊領域314を形成させることができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、OCT画像プロセッサ201およびレーザコントローラ130は、部分的または全体的に一体化され得る。例えば、単一の一体型プロセッサは、OCT画像プロセッサ201の画像処理機能およびレーザコントローラ130の走査パターン生成機能双方を行うことができる。
【0071】
図3A〜
図3Eに示す実施形態において、標的走査パターン302はチョップパターンである。場合によっては、白内障外科医は、水晶体を2個、4個または6個の部分にチョップして、嚢切開を通じた除去または吸引を促進することを選択し得る。
【0072】
図3A〜
図3Bは、白内障手術の設計フェーズにおいて、外科医から対応する入力を受信すると、レーザコントローラ130は、標的走査パターン302を生成し得る。標的走査パターン302は、例えば、2つのチョップ面上において(x、z)面および(y、z)面内に形成された点からなる。理想的な白内障手術においては、第1の1組のレーザパルスがこの標的走査パターン302へ付加されると、生成された第1の光破壊領域306は、4つのチョップ面を含み、これにより、水晶体がこれらのチョップ面に沿ってチョップされて4つのセグメントとなる。
【0073】
図3C〜
図3Dにおいて、非理想的な場合において、手術レーザビーム304の第1の1組のレーザパルスが標的走査パターン302の点へ方向付けられて第1の光破壊領域306の形成が開始すると、意図しない手術副産物320も発生し得る。この手術副産物320の原因として、新規形成された光破壊気泡群が合体して単一の大型の気泡となり、この大型気泡が後続レーザパルスを意図しない方向(例えば、網膜へ向かって)分散または再方向付けし得、その結果、損傷および光毒症に繋がり得る。そのため、光破壊プロセスの精度が低下し得、また、後続レーザパルスが気泡320中へ方向付けられた場合、光破壊プロセスのの危険性が増し得る。
【0074】
このような意図しない発展を、OCT画像プロセッサ201によって阻止することができる。OCT画像プロセッサ201は、SD−OCT画像化システム200の画像の分析により、気泡または別の手術副産物320の形成を認識することができる。SD−OCT画像は本質的にライブの速度で生成することが可能であるため、OCT画像プロセッサ201は、この認識をタイムリーかつ実用的なフィードバックとして外科医またはレーザコントローラ130のためにリレーすることができ、その結果、以下に述べるように変更応答を促すことができる。
【0075】
図3C〜
図3Dに示すように、フィードバックは、OCT画像プロセッサ201が、画像を分析し、チョップパターンの推奨回転レベルを決定し、推奨されるチョップパターンの回転を外科医に表示して、対応する変更入力を入力させる形態をとり得る。他の実施形態において、OCT画像プロセッサ201は、制御信号を直接レーザコントローラ130へ付加して、回転されたチョップパターンの電子表示を変更された走査パターン312として生成して、回転されたチョップパターンが312が気泡320と重複しないようにする。回転されたチョップパターン312は、水晶体5のz深さ範囲全体を通じて延び得、その場合、実際に手術がやり直される。あるいは、回転されたチョップパターン312は、部分的チョップパターンであってもよく、その場合、元々の標的走査パターン302が中止されたz深さから切断が継続される。
【0076】
図3Eに示すように、OCT画像プロセッサ201は、手術レーザビーム304を変更されたまたは回転された走査パターン312の点へと方向付けて、合体気泡320と重複しない、第2のまたは回転されたまたは変更された光破壊領域314を形成することを推奨し得る。よって、この実施形態において、手術レーザビーム304が意図しない方向に分散する事態が回避され、その結果、白内障手術の危険性が低下する。
【0077】
図4Aは、OCT画像プロセッサ201が手術副産物320の発生を感知したのに応答して、変更されたかまたは重複していない走査パターン312を形成する別の実施形態を示す。ここで、変更されたまたは重複していない走査パターン312は、回転されたチョップ面を含まない。その代わりに、変更されていない標的走査パターン302に従って手術レーザビーム304が走査されているが、手術副産物気泡320中へ方向付けられるレーザパルスをレーザコントローラ130により無力化することによって、重複が回避される。走査が手術副産物気泡320を通過した後、レーザコントローラ130は、レーザパルスの無力化をキャンセルして、標的走査パターン302の全ての点に衝突させることができる。
【0078】
図4Bに示すさらに別の実施形態において、手術レーザビーム304の走査を元々の標的走査パターン302に沿って継続すると、手術副産物気泡320と重複した第1の光破壊領域306が発生するとOCT画像プロセッサ201が(SD−OCT画像化システム200のフィードバック画像またはライブレート画像ストリームの分析により)認識した場合、OCT画像プロセッサ201は、手術レーザビーム304の走査をすぐに停止させることができる。いくつかの実施形態において、この停止後、OCT画像プロセッサ201またはレーザコントローラ130は、システムオペレータのためにプロンプトを表示して、変更入力または修正策を要求することができる。
【0079】
いくつかの手術シナリオにおいて、複数の気泡320−iがほぼ同時に発生し得る。そのため、白内障手術システム100のいくつかの実施形態を、複数の気泡の同時発生を回避する、変更された走査パターン312を生成するように構成することができる。
【0080】
図4C〜
図4Dに示すいくつかの実施形態において、OCT画像プロセッサ201を、第1の光破壊領域306と異なる画像の一部を分析することと、この分析に基づいたフィードバックを生成することとを行うように構成することができる。この特定の例において、第1の光破壊領域306が形成されると、矢印に示すように、水晶体5およびよって水晶体嚢6が拡張し得る。SD−OCT画像化システム200は、この拡張した前嚢層322を画像化することができる。OCT画像プロセッサ201は、この画像を分析し、この拡張した前嚢層322の位置シフトを決定することができる。
【0081】
前嚢層の位置を把握することは、白内障手術において重要である。なぜならば、いくつかの実施形態において、嚢切開標的走査パターン324は、前嚢層を横断して配置されるからである。嚢状拡張の前に撮影された画像に従って嚢切開標的走査パターン324が配置された場合、手術レーザビーム304は、嚢切開を不正確な位置に生成しようとする。
【0082】
図4Dに示すように、このような不正確な生成を回避するために、OCT画像プロセッサ201は、拡張した前嚢層322の位置シフトを決定し、このシフトをシステムオペレータのために表示して変更入力をレーザコントローラ130に入力させるか、または、このシフトを直接レーザコントローラ130へ信号送信する。いずれの場合も、レーザコントローラに変更された嚢切開走査パターン326を生成させる。この変更された嚢切開走査パターン326は、拡張嚢内において嚢切開を適切に発生させる。
【0083】
図5A〜
図5Dにおいて、レーザ支援型の嚢切開または切開の形成に関連する別の実施形態が示される。この実施形態において、OCT画像プロセッサ201は、反復されるフィードバック画像またはライブストリーミング画像を分析し、未切断部分または「タグ」330を第1の光破壊領域306内において特定し得る。未切断部分または「タグ」330においては、光破壊効率が限定されるため、前嚢膜が完全に切断できていない結果、未切断部分または「タグ」330が残っている可能性がある。このようなタグ330が残っている場合、嚢蓋または嚢キャップが外科医によって除去された際に嚢または嚢膜の破断の危険性が増す。このような望ましくないかまたは危険性の高い結果を回避するため、OCT画像プロセッサ201は、さらなる変更された走査パターン312に沿った走査を行うことによりタグ330を除去する方法についての外科医への推奨事項を表示するか、または、制御信号をレーザコントローラ130へ直接付加して、変更された走査パターン312の電子表示を生成して、少なくともタグ330を再走査して、再走査されたタグ領域332を第2の光破壊領域314として生成する。この再走査により、第1の光破壊領域306および第2の光破壊領域314は、完成した光破壊領域334(この場合、完成した嚢切開334)を形成することができ、その結果、外科医は、最小の破断危険性で嚢蓋または嚢キャップを除去することができる。
【0084】
図6に示すいくつかの実施形態において、SD−OCT画像化システム200は、スペクトロメータベースのOCT(SB−OCT)画像化システム200を含み得る。SB−OCT画像化システム200は、広帯域光またはレーザビームを生成する広帯域光源210を含む。広帯域ビームは、平均波長λ
0および比較的広帯域幅W
sourceを持ち得る。いくつかの典型的な例において、λ
0は800〜1100nm範囲内にあり、W
sourceは10〜150nm範囲内にある。
【0085】
広帯域ビームは、ビーム誘導システム211へ接続され得る。ビーム誘導システム211は、第1のビームスプリッター212を含み得る。第1のビームスプリッター212は、広帯域ビームを分割して、画像ビーム222および基準ビーム224とし得る。画像ビーム222は、第2のビームスプリッター214によって誘導光学素子120の主要光学経路内へと誘導され得、この主要光学経路内から、対物素子122および恐らくは患者インターフェース124を通じて眼1へ到達する。ビーム誘導システム211は、眼1から第1のビームスプリッター212へ送られる返送画像ビーム222rも含み得る。画像ビーム222および返送画像ビーム222rは、画像化レーザビーム308として上記に総称している。
【0086】
加えて、ビーム誘導システム211は、基準ビーム224を基準ミラー216へ誘導し、返送基準ビーム224rを基準ミラー216から誘導し、返送画像ビーム222rおよび返送基準ビーム224rを組み合わせて、第1のビームスプリッター212において結合ビーム226とすることができる。結合ビーム226は、眼1からの画像化情報を返送画像ビーム222rおよび返送基準ビーム224rの干渉によって搬送する。いくつかの実施形態において、基準ミラー216の代わりにまたは基準ミラー216と共に他の種類の遅延素子が用いられ得る。さらに別のビームスプリッターを用いて、返送画像ビーム222rおよび返送基準ビーム224rを結合することができる。いくつかの実施形態において、ビーム誘導システム211は、マッハツェンダー干渉計を含み得る。このようなシステムは、好ましいノイズ低減特性を持ち得る。
【0087】
TD−OCT画像化システムは、マイケルソンモーリー干渉計と本質的に同様に別個に各(x、y)点について対応する距離範囲において基準ミラー216を移動させることにより、画像化データをz画像化範囲中の異なるz深さから連続して取得する。これとは対照的に、SD−OCT画像化システムにおいては、広帯域画像化光の異なるスペクトル成分を用いて、異なるz深さから画像化データを並列に取得する。SD−OCT画像化システムは、多数のマイケルソンモーリー(MM)干渉計が異なる波長において並列動作しているものとみなすことができる。異なる波長において動作するMMシステムの場合、眼1の画像化を異なるz深さにおいて行うため、SD−OCTシステム200の結合ビーム226は、画像化データまたは情報を全て眼1のz深さから同時に搬送するため、いかなる機械システムコンポーネント(例えば、基準ミラー216)の動きまたは走査は不要である。上述したように、このように、SD−OCTシステムにおいては機械的走査は不要であるため、TD−OCT画像化システムと比較して、画像化速度が少なくとも10倍またはより典型的には100〜1,000倍高速化される。
【0088】
SD−OCT画像化システム200は、OCTカメラ230も含み得る。OCTカメラ230は、結合ビーム226を受信するように構成される。全てのz深さについて画像情報を回復させるには、結合ビーム226をスペクトル分解装置231(例えば、プリズムまたはグレーチング)によってスペクトル成分に分解することができる。波長λの周囲のδλ帯域幅を有する各スペクトル成分と、搬送される干渉情報とを、センサーアレイ232の個々のセンサーによって並列に感知することができる。これらのセンサーは、相互に距離d’だけ空けて離間される。その後、センサーによって個々に感知される干渉情報を用いて、z深さ範囲全体の画像を高速フーリエ変換器(FFT)システム233によって再構築することができ、これにより、感知されたスペクトル成分からフーリエ変換が生成される。実際、異なる波長成分によって搬送される干渉データまたは情報を変換して、画像化されたz深さ範囲の同時または本質的に瞬間的な「z走査」を得ることができる。このような干渉データから「z走査」データへの変換は、画像生成器234によって実行され得る。画像生成器234は、感知されたスペクトル成分からのフーリエ変換から、OCT画像を生成および出力する。
【0089】
OCTカメラ230のいくつかの実施形態において、CCD(電荷結合デバイス)画素がセンサーアレイ232のセンサーとして用いられ得る。他の実施形態において、CMOSセンサーの利用により、読み出し速度の向上が達成され得る。このような実施形態において、CMOSセンサーは、並列に読み出され得る。さらに、CMOS実施形態において、画像化の前に選択されたかまたは(画像化に起因してコンテンツが変化したかに基づいて)リアルタイムで選択された対象センサーまたは画素のみを読み出すことが可能である。これらの局面双方により、CMOS画素は、OCTカメラ230の性能のスピード向上において極めて有利である。
【0090】
標準的な光学分析を用いて、SD−OCTシステム200の重要画像化および性能パラメータは、以下のようなアーキテクチャパラメータおよび設計パラメータによって特徴付けられ得る。スペクトル分解装置231は、結合ビーム226の異なる波長成分を若干異なる方向に方向付けるため、個々のセンサーまたは画素の小型化またはパッキング密度が高くなるほど(d’が小さくなるほど)、OCTカメラ230によって分解されるδλ波長/スペクトル範囲も狭くなる。画素密度に加えてδλを決定するその他の数量は、波長の全体的範囲である(すなわち、OCTカメラ230の帯域幅W
camera)。単純な配置構成において、δλは、帯域幅W
cameraに比例し、センサーアレイ232の行内の画素数に反比例する。
【0091】
重要な画像化z深さ範囲またはz画像化範囲として、Lmaxは、δλに密接に関連する。すなわち、δλの波長範囲が狭いほど、z方向における画像化範囲が広くなる。なぜならば、これら2つの量は、逆フーリエ変換によって接続されるからである。詳細には、理論的最大画像化範囲は、以下によって得られる。
【数1】
【0092】
ここで、値λ
0は、広帯域光源210の平均または中心波長を示し、Nfは、OCTカメラ230のナイキスト周波数を示す。実際には、さらなる要素に起因して、有効画像化範囲がこの理論的最大範囲を下回る場合がある(例えば、信号/ノイズ比)。そのため、有効画像化範囲は典型的には、この理論的値Lmaxよりも小さくなる。
【0093】
画像化範囲をさらに制限し得る1つの要素として、レイリー範囲Rがある。Rは、Δxを用いて表すことができる。Δxは、横x方向における分解能または「横分解能」であり、光源210の開口数NAおよび波長λ
0によって決定される。詳細には、Δxは、以下のように表すことができる。
【数2】
【0094】
式中、fは焦点距離であり、dは対物素子122の瞳孔であり、その比によってNAが決定される。Δxを用いて、上記したレイリー範囲Rを以下のように表すことができる。
【数3】
【0095】
レイリー範囲Rは、焦点深さと、ビーム幅が焦点深さにおけるビーム幅の
【数4】
倍である深さとの間のz方向距離として定義されることが多い。よって、Rは、z範囲を特徴付ける。このz範囲内において、幾何光学および波動光学によって制限されるような高分解能画像化が可能となるくらいの充分に狭いビームが得られる。この文脈において、Lmaxは、光源210およびセンサーアレイ232の分解能によって制限されるようなz画像化範囲を特徴付けるものとしてみなすことができる。例えばガウスビームの場合において最適と思われるシステム設計原理により、これら2つのz範囲が相互にアライメントされる。例えば、いくつかの実行様態において、Lmaxは、本質的に1〜6Rに等しくなるように、選択され得る。
Lmax=1、…6R (4)
【0096】
同じ設計原理を、広範に用いられている「焦点深度」の概念を通じて述べることができる。「焦点深度」は、レイリー範囲の2倍として規定されることが多い。
【0097】
Eq.(1)〜(4)に示すように、z画像化範囲は、LmaxおよびRに依存し、LmaxおよびRは、システム設計パラメータ(例えば、λ
0、δλ、W
camera、W
source、f、d’、Nf、およびd)に依存する。よって、白内障手術のための画像化システムについて、上記のシステム設計パラメータは、SD−OCT画像化システム200のz深さ画像化範囲が4mmまたは6mmを超えて例えば4〜20mmまたは6〜10mmの範囲内に入るように選択されるべきであり、これにより、白内障手術システム100が高分解能および充分に高速の画像化により白内障手術を支援することが可能となる。この設計要求は極めて高い要求であり、白内障画像化システムが角膜または網膜画像化システムと異なる点である。
【0098】
図7に示す実施形態により、大きなz深さ画像化範囲だけでなく、高速画像化時間が得られ、これにより、SD−OCT画像化システム200からフィードバック画像をタイムリーかつ実用的に得ることができる(例えば、本質的にライブビデオレートで動作することができる)。上述したように、SD−OCT画像化システム200を備えた白内障手術システム100は、その制御システム(例えば、OCT画像プロセッサ201およびレーザコントローラ130)を本質的にリアルタイムで動作させることができ、よって、手術時において手術走査パターンを受信されたフィードバック画像化情報に従って調節または変更する選択肢が得られる。
【0099】
以下に詳述するように、
図7の実施形態は、事前計算された走査パターンを用いて、OCT画像化ビーム308/222を特に高速で走査するようにも構成される。いくつかの実施形態において、SD−OCT画像化システム200のこれらの高速画像化リフレッシュレートは、専用入力/出力ボード260を設けることにより、達成することができる。
【0100】
専用入力/出力ボード260の1つの機能として、画像化専用の回路およびプロセッサを持たないいくつかの既存のOCT画像化システムの問題に対処することがある。これらのシステムにおいて、画像化を担当するプロセッサは、1つよりも多くの機能を(交互的様態、並列様態または重複様態で)マルチタスクで行うように強制またはプロンプトされ得る。これらの機能を行うために、画像化プロセッサは、例えば画像化ビーム222/308を走査するタスクから別のタスクへ切り換えて戻ることにより、「割り込み」を行うことができる。しかし、このような割り込みを走査するタスクは短いが、問題の原因になり得る。なぜならば、割り込みに起因して走査が停止または一時停止している間、レーザビームが同じ位置に残り得るからである。このように走査を一時停止した場合、(x、y)走査のタイミングが妨害され得、その結果、画像化位置の座標においてエラーおよびノイズが発生する。出力された走査データのこのタイミングエラーは、50、100マイクロ秒以上の遅延になり得、ジッターと呼ばれる現象となる。
【0101】
加えて、典型的には他のいくつかの入力/出力エージェントが、同じシステムバス上において通信することが多い。このシステムバス上において、画像化プロセッサが画像化ビームの走査を駆動するが、全てにおいて、バスのサイクル時間のうちほんの一部しか必要ではない。このようにチャンネルが共用されるため、残念なことに、低データ転送レートしかサポートすることができない。さらに、これらの競合する要求を管理するために、システムバスのサイクルのうち一部は典型的には、制御信号によって占有されることが多い。そのため、専用リンクを通じて単一タスクモードで走査ユニットへ走査データを出力するように画像化プロセッサを切り換えることによりOCT画像化システムが走査の一時停止を回避するように設計されている場合でも、画像化プロセッサは、この出力ステップにおいて他の機能を行うこと(例えば、次の走査パターンを計算すること)ができない。これらの制約全てに起因して、このような既存の画像化システムの性能が大幅に低下する。
【0102】
SD−OCT画像化システム200の実行様態は、以下の高効率の設計を用いることにより、これらの問題を解消することができる。画像ビーム222の走査は、画像化プロセッサ250および専用入力/出力ボード260によって制御され得る。画像化プロセッサ250は、走査データ(例えば、標的走査パターン302および変更された走査パターン312)を計算することができる。これらの走査データは、例えば、OCT画像ビーム222を白内障標的領域内に方向付けるべき位置である一連の(x、y)座標を含み得る。画像化プロセッサ250は、走査データを計算し、また、コンピュータコードまたは命令セットを保存する記憶媒体に関連する他の機能を行うことができ、これにより、画像化プロセッサ250のこれらの機能が促進される。
【0103】
専用入力/出力ボード260は、ローカルまたは専用メモリコントローラ262(直接メモリアクセス(DMA)エンジン262とも呼ばれる)を含み得る。DMAエンジン/メモリコントローラ262は、計算された走査データの画像化プロセッサ250からデータバッファ264への間接的または直接的転送を管理することができる。ローカルメモリコントローラ262へ接続されたデータバッファ264は、走査データを保存し、走査データを出力デジタル/アナログ変換器(出力DAC)266へ高速で出力するように、動作することができる。出力DAC266は、走査データを受信することと、選択された出力走査データをアナログ走査信号へ変換することと、および走査信号を(例えば走査データバーストモードにおいて)OCTビームスキャナ268へ出力することとを行うように、データバッファ264へ接続され得る。
【0104】
画像ビーム222は、別個の専用画像化光学素子を通じてまたは手術ビームの誘導光学素子120を部分的に通じて、OCTビームスキャナ268によって走査され得る。これらの実行様態のいずれかにおいて、画像ビーム222は、対物素子122および対応するドッキングユニットまたは患者インターフェース(PI)124を通じて眼中へ接続され得る。他の実施形態において、画像ビーム222は、ドッキングユニット124を眼1へドックさせること無く、空気を通じて眼1中へと誘導され得る。
【0105】
出力DAC266による走査データの出力は、画像化同期装置242によってOCTカメラ230の動作と同期され得、これにより、OCTカメラ230は、OCT画像を走査動作と同期してとることができる。このように同期して撮影されたOCT画像は、OCT画像プロセッサ201へ出力され得る。OCT画像プロセッサ201は、上記に述べた多数の画像処理タスクのうちいずれか1つを行うことができる。最後に、生成および処理された画像は、OCT画像表示270によって表示され得る。いくつかの実施形態において、画像化プロセッサ250およびOCT画像プロセッサ201は、部分的または全体的に一体化され得る。
【0106】
図8は、専用入力/出力ボード260の実行様態をより詳細に示す。画像化プロセッサ250は、バス252(例えば、PCIバス252)へ接続され得る。システムは、プロセッサメモリ254も含み得る。画像化プロセッサ250は、走査パターンを計算した後、計算された走査パターンを共有PCIバス252を通じてプロセッサメモリ254へ出力することができる。画像化プロセッサ250が走査パターンを生成した後でありかつ実際の走査動作の開始前において、専用DMAエンジン262は、走査データをプロセッサメモリ254からデータバッファ264へと転送することができる。データバッファ264は、先入れ先出し(FIFO)メモリ264であり得る。FIFOデータバッファ264は、走査パターンまたは走査データを保存し、専用DMAエンジン262によってプロンプトされた際、保存された走査データを出力DAC266へと出力し得る。出力DAC266は、走査データをアナログ走査信号へ変換し、これらの信号をOCTビームスキャナ268のxガルボビームスキャナ268xおよびyガルボビームスキャナ268yへと出力し得る。xガルボビームスキャナ268xおよびyガルボビームスキャナ268yは、xガルボミラーおよびyガルボミラー(またはリダイレクタ要素)を制御して、走査データとしてコードされた標的走査パターン302および変更された走査パターン312に従ってOCT画像ビーム222/308を走査させる。いくつかの実行様態において、一体型(x、y)ガルボ−コントローラ268xyが設けられ得る。一体型(x、y)ガルボ−コントローラ268xyは、x軸およびy軸双方の周囲を回転することが可能な単一のガルボミラーを制御する。出力DAC266はまた、画像化同期装置242を駆動して、走査動作によるOCT画像の取得を同期させることができる。
【0107】
いくつかの実行様態において、画像化プロセッサ250は、共有PCIバス252の代わりの専用メモリバスまたはローカルバスを通じて走査データを専用入力/出力ボード260へ出力することができる。他の実行様態において、画像化プロセッサ250と、DMAエンジン262とが直接接続され得る。
【0108】
この設計は、少なくとも以下の理由によって効率的である:(1)走査データまたは走査パターンが画像化プロセッサ250によって事前計算されているため、時間のかかるリアルタイムの走査データ計算が不要である。(2)走査データをリアルタイムで出力するタスクが画像化プロセッサ250へ課されていない。なぜならば、事前計算された走査データが専用データバッファ264中に保存されているからである。この設計により、画像化プロセッサ250のマルチタスクに起因する介入、一時停止およびジッターを50マイクロ秒、40マイクロ秒またはさらには20マイクロ秒未満に低下させることができる。(3)走査データの転送が他のエージェントによって共有されたバス252によって妨害されることがなく、また、典型的には低速の転送レートの共有PCIバス252によって速度低下させられることもない。(4)データバッファ264は、走査タスクのために専用に用いられるため、走査データの出力を高速転送モード(例えば、バーストモード)で行うことが可能になり、よって走査速度がさらに高くなる。
【0109】
加えて、専用入力/出力ボード260は、走査データの出力を本質的に自立的に駆動するため、画像化プロセッサ250は、走査データ出力と平行して他の機能(例えば、変更された走査パターン312の生成)を行わなくてよい。
【0110】
いくつかの実行様態において、出力DAC266による出力速度は高速に設定することができるため、SD−OCT画像化システム200の動作速度は、(走査電子機器の速度ではなく)OCTカメラ230の統合時間によって制限され得る。これらの実行様態のうちいくつかにおいて、出力DAC266は、以下の範囲のうち1つの範囲内の速度で走査信号を出力することができる:1Hz〜1MHz、100Hz〜1MHz、または1kHz〜100kHz。
【0111】
図9に示すように、いくつかの白内障手術レーザシステム100は、別の種類の画像化システム(すなわち、掃引光源−OCT(SS−OCT)画像化システム280)を含み得る。SS−OCT画像化システム280は、波長スイープ光源282を含み得る。波長スイープ光源282は、コヒーレント画像ビームをSD−OCT光源210の場合よりも狭い帯域幅W
sourceで出射することができる。高度変調技術により、SS−OCT光源282は、出射された画像ビーム222の波長を変化させ、波長λを帯域幅W
sourceにおいて時間において「スイープ」する。SS−OCT画像化システム280は、SD−OCT画像化システム200の場合と同様のビーム誘導システム211を用い得る。詳細には、第1のビームスプリッター212は、ここでも、異なる波長と関連付けられた画像化情報を搬送する結合ビーム226を生成することができる。
【0112】
スペクトロメータベースの画像化システムからの差として、SS−OCT画像化システム280は、異なる波長またはスペクトル成分を時間において分離する。一方、SD−OCTシステム200は、これらを空間において分離する。これらの異なる波長成分は、異なるz深さに対応する画像データを搬送し、波長λがSS−OCT光源282によってスイープされる際に時間系列中に分離される。よって、SS−OCTシステム280のOCTカメラ230も異なる。
【0113】
いくつかの実行様態において、単一の検出器284からなり得る。単一の検出器284は、短い時間間隔で結合ビーム226を検出および分解することができる。いくつかの実施形態において、検出器284は、アバランシェフォトダイオードまたは光電子増倍管であり得る。検出器284は、異なる波長またはスペクトル成分に対応する検出された信号を1組のデータビナー286へ転送またはダンプすることができる。SS−OCT画像化システム280のいくつかの実施形態は、SB−OCT画像化システムに類似する。なぜなら、両者とも、スペクトル分解を介して画像生成を行うからである。SB−OCTシステムの場合と同様に、SS−OCT画像のスペクトル成分を組み立てて、OCT画像とすることができる。高速フーリエ変換器288は、データビナー286のコンテンツに対してフーリエ変換を行って、画像生成器234によるOCT画像の生成を支援することができる。FFTユニット288は、SD−OCT画像化システム200内のFFTユニット233に類似し得る。
【0114】
上記の記載によれば、SS−OCT画像化システム280は、TD−OCT画像化システムと同様の特徴を有する。なぜならば、1つのフェーズにおいて、画像化データの取得が並列的にではなく連続的に行われるからである。しかし、TD−OCTシステムの場合と対照的に、異なるz深さの画像化データが結合ビーム226の異なるスペクトル成分と共に取得されるため、FFTユニット288によってフーリエ変換を行う必要が出てくる。この点において、SS−OCT画像化システム280は、異なるスペクトル成分と共に明白に機能するSD−OCT画像化システム200に関連する。SS−OCTシステムは、以下の1つの点においてSD−OCTシステムに類似する:すなわち、機械的部分(例えば、基準ミラー216)を移動させることなく、波長スイープ光源282の画像ビームの波長をスイープする。最後に、波長スイープ光源282の波長スイープは、TD−OCTシステムの走査速度を大きく上回る速度で行うことが可能である。なぜならば、スイープにおいて可動部分が用いられないため、SS−OCTシステム280は、SD−OCTシステムの画像化速度にはかなわないものの、TD−OCTシステムよりもずっと高速で画像化を行うことができるからである。よって、SS−OCT画像化システム280の実行様態は、ライブリフレッシュレートで受容可能な分解能で画像生成を行うことができ、これにより、極めて有用な機能性を持ちかつ実用的なフィードバックが白内障手術システム100のために提供される。
【0115】
図10は、白内障手術システム100を作動させるための眼科手術方法500を示す。方法500は、眼1の水晶体5のための標的走査パターン302の電子表示をレーザコントローラ130によって生成すること(510)と、標的走査パターン302に従って眼の水晶体5内において手術レーザビーム304を白内障手術レーザシステム100によって生成および走査することにより、水晶体中に切開部306を生成すること(520)と、レーザビームの走査開始後に眼の一部および切開部306の画像をスペクトル領域光学コヒーレンス断層画像化システム200によって生成すること(530)と、生成された画像の画像分析をOCT画像プロセッサを用いて行うこと(535)と、行われた画像分析に関連して変更された走査パターン312の電子表示をレーザコントローラ130によって生成すること(540)と、変更された走査パターン312に従って、眼の水晶体5内において手術レーザビーム304を白内障手術レーザシステム100によって生成および走査することにより、変更された切開部314を生成すること(550)とを含み得る。
【0116】
いくつかの実行様態において、変更された走査パターン540の電子表示を生成することは、眼の部分の生成された画像に応じて、システムオペレータから変更入力を受信することを含み得る。
【0117】
他の実行様態において、変更された走査パターン540の電子表示を生成することは、生成された画像をOCT画像プロセッサ201によって分析することと、標的走査パターン302に相対する切開部306の逸脱を決定することと、レーザコントローラ130に変更された走査パターン312を生成させるための制御信号をOCT画像プロセッサ201によって生成することとを含み得る。
【0118】
図11は、白内障手術600の関連方法を示す。方法600は、眼1の水晶体5内におけるレーザコントローラ130による手術レーザビーム304の走査を制御すること(610)と、水晶体の一部の画像5を少なくとも5フレーム/秒の速度でスペクトル領域光学コヒーレンス断層画像化システム200によって生成すること(620)と、生成された画像の分析をOCT画像プロセッサによって行うこと(625)と、OCT画像プロセッサによって行われた分析に応じて、手術レーザビーム304の走査をレーザコントローラ130によって変更すること(630)とを含み得る。
【0119】
本明細書中、多数の特定の例が述べられているが、これらの特定の例は、本発明の範囲または特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、特定の実施形態に特有の特徴の記載として解釈されるべきである。本明細書中において別個の実施形態の文脈において述べられた特定の特徴を組み合わせて、単一の実施形態において実行することも可能である。逆にいえば、単一の実施形態の文脈中に述べられた多様な特徴を複数の実施形態の文脈において別個にまたは任意の適切なさらなる組み合わせで実行することも可能である。さらに、特徴について、特定の組み合わせで機能するものとして上述され得、さらには当初の請求項にそのように記載され得るが、場合によっては、請求項に記載の組み合わせの1つ以上の特徴を当該組み合わせから除去することができ、請求項に記載の組み合わせをさらなる組み合わせまたはさらなる組み合わせの変更例に用いることが可能である。