(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
前記した二つの電極は、PET(ポリエステル)、PI(ポリイミド)等のフィルムに導電性インクを印刷すること等によって形成される。そして、ドナー部のゲル、及び、フィルムは透明にすることが可能であるが、この導電性インクが透明でないため、従来の技術では、パッチを通して薬剤を浸透させたい部位を目視で確認することはできず、パッチの貼り付けが不便であった。
【0006】
そこで、本発明は、所望の位置への貼り付けを簡易にするイオントフォレシス用パッチを提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、外部導体に接触配置されることにより、通電装置からの電流を前記外部導体へと出力す
るイオントフォレシス用パッチであって、
前記外部導体と接触する第1接触部材を有し、前記外部導体へと浸透させる薬剤を前記第1接触部材に含有したドナー部と、
前記外部導体と接触する第2接触部材を有し、前記外部導体に前記ドナー部と離れて載置されるリファレンス部と、前記第1接触部材
に前記通電装置からの電流を供給するための第1電極
と、供給された電流を前記外部導体及び前記第2接触部材を介して前記通電装置に戻すための第2電極
とを有し、前記ドナー部と前記リファレンス部に亘って設けられる電極体と、を備え、前記電極体は、柔軟性を有するフィルムの片面に導電性インクが印刷されることで前記第1電極及び前記第2電極が形成された片面配線構造であり、前記第1電極の印刷パターンは、前記導電性インクが印刷されない隙間領域を有し、前記フィルム及び前記第1接触部材は透明であることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、前記第1電極の印刷パターンは、前記導電性インクが印刷されない前記隙間領域を有し、前記フィルム及び前記第1接触部材は透明であるので、薬物を浸透させたい前記外部導体の部位を、前記イオントフォレシス用パッチの前記第1接触部材とは反対側の面から視認することができる。従って、該部位に前記第1接触部材が接触するように前記イオントフォレシス用パッチを前記外部導体に貼り付けることができる。
【0009】
前記イオントフォレシス用パッチであって、前記第1電極の印刷パターンは、少なくとも同心円
、及び
、前記ドナー部の中心を
通り且つ互いに直交する2つの直線の何れかを有する形状であり、前記直線は前記第1電極の中心を指示する照準線としての機能を持つことを特徴とする。これにより、前記第1接触部材の中心が、薬物を浸透させたい前記外部導体の部位と接するように前記イオントフォレシス用パッチを前記外部導体に貼り付けることができる。
【0010】
前記イオントフォレシス用パッチであって、前記第1電極の印刷パターンは、渦巻き状の形状であることを特徴とする。これにより、前記第1接触部材の中心が、薬物を浸透させたい前記外部導体の部位と接するように前記イオントフォレシス用パッチを前記外部導体に貼り付けることができる。
【0011】
前記イオントフォレシス用パッチであって、前記第1電極の印刷パターンは、少なくともメッシュ状の形状を有することを特徴とする。これにより、前記第1接触部材の中心が、薬物を浸透させたい前記外部導体の部位と接するように前記イオントフォレシス用パッチを前記外部導体に貼り付けることができる。
【0012】
前記イオントフォレシス用パッチであって、前記第1電極の印刷パターンは、放射状の形状であることを特徴とする。これにより、前記第1接触部材の中心が、薬物を浸透させたい前記外部導体の部位と接するように前記イオントフォレシス用パッチを前記外部導体に貼り付けることができる。
【0013】
本発明によれば、第1電極の印刷パターンは、導電性インクが印刷されない隙間領域を有し、フィルム及び第1接触部材は透明であるので、薬物を浸透させたい外部導体の部位を、イオントフォレシス用パッチの第1接触部材とは反対側の面から視認することができる。従って、該部位に第1接触部材が接触するようにイオントフォレシス用パッチを外部導体に貼り付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るイオントフォレシス用パッチについて、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0016】
図1は、経皮的薬物投与装置10の全体構造を示す斜視図であり、経皮的薬物投与装置10を構成するイオントフォレシス用パッチ12と、通電装置(制御装置)14とを分離した状態で示している。
図2は、
図1に示すイオントフォレシス用パッチ12の分解斜視図である。
【0017】
経皮的薬物投与装置10(以下、装置10という)は、例えば、血液透析患者の穿刺の除痛のために用いられ、患者の腕に局所麻酔剤(例えば、リドカインを含むイオン性麻酔剤)を投与、浸透させるための医療用器具であり、イオントフォレシス用パッチ12(以下、パッチ12という)を外部導体である患者の皮膚に貼り付け、通電装置14から通電することで、パッチ12に封入されたイオン性麻酔剤を生体に対して浸透させるものである。パッチ12は、イオン性麻酔剤以外のイオン性薬剤を患者に投与するための装置に適用してもよく、イオン性でない薬剤を患者に投与するための装置に適用してもよい。
【0018】
図1及び
図2に示すように、装置10は、パッチ12と、該パッチ12の表面(上面)に載置及び接続される通電装置14とを備える。
【0019】
パッチ12は、円形薄板状のドナー部16と、該ドナー部16から離れて設けられた一辺が円弧状からなる矩形薄板状のリファレンス部18と、これらドナー部16とリファレンス部18とにわたって通電装置14が接続される電極フィルム(電極体)20とを備える。電極フィルム20は、ドナー部16及びリファレンス部18に対応した形状からなるドナー側部位22及びリファレンス側部位24と、ドナー部16とリファレンス部18を繋ぐ狭幅なブリッジ部位26とを有する(
図2参照)。
【0020】
電極フィルム20は、ドナー側部位22及びリファレンス側部位24の外形を規定するベース28が、ドナー側部位22では1枚構造とされ、リファレンス側部位24では折り曲げ部(屈曲部)30(
図3A、
図3B参照)で折り曲げて重ね合わされた2枚構造(2枚積層構造)となっている。つまり、リファレンス側部位24は、皮膚への貼り付け側(底面側)となる第1リファレンス側部位24aと、折り曲げ部30で折り曲げられて第1リファレンス側部位24aの裏面に重ね合わされる第2リファレンス側部位24bとから構成されている。
【0021】
ドナー部16は、該ドナー部16の外形に対応した円形状のドナー用貼付部材32と、該ドナー用貼付部材32の開口に充填される透明なドナー用ゲル(第1接触部材)34とを有し、該ドナー用ゲル34の表面(
図2における上面)に電極フィルム20のドナー側部位22が電気的に接続される。リファレンス部18は、該リファレンス部18の外形に略対応した一辺が円弧状からなる矩形状のリファレンス用貼付部材36と、該リファレンス用貼付部材36の開口に充填される透明なリファレンス用ゲル(第2接触部材)38とを有し、該リファレンス用ゲル38の表面(
図2における上面)に電極フィルム20のリファレンス側部位24が電気的に接続される。
【0022】
ドナー用貼付部材32及びリファレンス用貼付部材36は、一定の強度で人体等の皮膚に貼り付く粘着性を有する弾性体であり、絶縁性を有する。ドナー用貼付部材32及びリファレンス用貼付部材36は、透明な材質で構成してもよい。ドナー用ゲル34には、前記イオン性麻酔剤が封入されており、リファレンス用ゲル38には、生体に為害性のない電解質(例えば、緩衝塩、食塩等)の液剤又は溶液が封入されている。穿刺になれた医療従事者であれば、穿刺予定箇所の薬剤送達の面積が2.5cm
2あれば容易に針を刺させるので、例えば、ドナー用ゲル34及びリファレンス用ゲル38が皮膚に接触する接触面(
図2における下面)の面積は2.5〜5.0cm
2程度とするとよい。
【0023】
ドナー用貼付部材32の開口にドナー用ゲル34を埋入し、リファレンス用貼付部材36の開口にリファレンス用ゲル38を埋入し、これらドナー用貼付部材32及びリファレンス用貼付部材36を患者の皮膚に貼り付けることで、ドナー部16及びリファレンス部18を略同時に皮膚に接触させることができ、1回の動作でパッチ12を皮膚に簡単に貼り付けることができる。なお、ドナー用ゲル34及びリファレンス用ゲル38の皮膚に対する前記接触面に粘着性を持たせてもよい。
【0024】
図3Aは、リファレンス側部位24の折り曲げ前の状態での電極フィルム20の底面図であり、
図3Bは、
図3Aに示す電極フィルム20の表面に絶縁性のレジスト40を設置した状態での底面図である。つまり、
図3Aは、レジスト40(
図3B中に破線のクロスハッチングで示す)を省略した電極フィルム20の底面図を示している。なお、
図3A及び
図3Bの図示では、電極フィルム20の表面の大部分(ドナー側部位22及び第1リファレンス側部位24a)は、皮膚の貼り付け側面である底面を示し、実際の製品状態において、折り曲げ部30で折り曲げられる第2リファレンス側部位24bは、通電装置14の載置面である上面となる。
【0025】
図3Aに示すように、リファレンス側部位24の折り曲げ前(製造途中の状態)の電極フィルム20は、リファレンス側部位24が折り曲げ部30で略対称に構成された形状からなる1枚のベース28を有するフレキシブル基板である。ベース28は、ポリエステルやポリイミド等の樹脂を薄いフィルム状に形成した透明で柔軟性のあるフィルムである。
【0026】
電極フィルム20は、折り曲げ部30で折り曲げる前のベース28の表面上に、ドナー側部位22及びリファレンス側部位24を構成する各電極及び各配線が形成される片面配線構造である。
【0027】
ドナー側部位22では、ベース28の底面となる面(
図2に示すドナー側部位22の下面)にドナー用ゲル34と接触して電気的に接続される外形が円形状の第1電極42が設けられ、リファレンス側部位24では、ベース28の底面となる面(
図2に示す第1リファレンス側部位24aの底面)に外形が略長円形状の第2電極44が設けられ、これら第1電極42及び第2電極44は、ベース28の底面となる面上に配線された第1接続端子線46及び第2接続端子線48を介して通電装置14に接続される。
【0028】
第1接続端子線46は、第2リファレンス側部位24bの表面に設けられた端子台46aと、端子台46aから第2リファレンス側部位24b及びブリッジ部位26の表面を経由して適宜屈曲しながら配線された第1電極42に接続される接続線46bとを有する。端子台46aの中心には、小径の孔部47aが板厚方向に貫通形成されており、該孔部47aはベース28も貫通している。接続線46bは、第2リファレンス側部位24b及び第1リファレンス側部位24aの円弧状の一辺に沿って延び、ブリッジ部位26の中心を通って第1電極42に接続される。
【0029】
第2接続端子線48は、第2リファレンス側部位24bの表面に設けられた端子台46aと並列配置された端子台48aと、端子台48aから第1リファレンス側部位24aの略中心まで適宜屈曲しながら配線された接続線48bとを有する。接続線48bの端子台48a側とは反対側の端部には、円形状の電極パッド48c(
図2参照)が設けられ、該電極パッド48c上に第2電極44が通電可能な状態で接触配置される。端子台46aと同様に、端子台48aの中心にも孔部47bがベース28を通して貫通形成されている。接続線48bは、第2リファレンス側部位24bの中心まで延びた後、第1リファレンス側部位24aの中心まで真っ直ぐに延びて電極パッド48cに接続されている。
【0030】
電極フィルム20では、
図3Aに示すように、リファレンス側部位24の折り曲げ前のベース28の表面に対し、例えば、銀を含む導電性インクを印刷することにより第1電極42、第1接続端子線46及び第2接続端子線48を形成し、第2電極44は、第2接続端子線48の電極パッド48cを形成した後、その上面に、例えば、銀/塩化銀を含む導電性インクを印刷することにより形成される。勿論、第2電極44についても、第1電極42等と同材料で形成してもよく、この場合には、電極パッド48cを省略し、第1電極42、第1接続端子線46、第2接続端子線48、及び第2電極44を一挙に形成してもよい。
【0031】
第1電極42及び第2電極44は、第1電極42及び第2電極44が形成される領域内に隙間ができるように導電性インクが印刷されて形成される。つまり、第1電極42及び第2電極44の印刷パターンは、導電性インクが印刷されない複数の隙間領域43、45を有する。本実施の形態では、第1電極42の印刷パターンは、同心円である3つの円42a、42b、42cと、該同心円の中心を通り、且つ、互いに
直交する2つの直線42d、42eとを有する形状である。なお、第1電極42の印刷パターンは、同心円及びドナー部16の中心を通る直線の何れかを有する形状であってもよい。また、第2電極44の印刷パターンは、中心が同一となるように設けられた円44a及びその円の周りに配置された2つの略長円44b、44cと、該中心を通り、且つ、互いに直交する2つの直線44d、44eとを有する形状である。
【0032】
ドナー部16のドナー用ゲル34及びリファレンス部18のリファレンス用ゲル38は少なくとも透明であり、第1電極42及び第2電極44は、隙間領域43、45を有するように導電性インクが透明のベース28に印刷されたものであるので、導電性インクが印刷された領域は、入射された光を遮光するが、複数の該隙間領域43、45は、光を遮光することなく入射された光を透過することができる。なお、ドナー用ゲル34は、その中心が、第1電極42の同心円の中心と略一致するように、第1リファレンス側部位24aに設けられる。
【0033】
第1電極42、第1接続端子線46、第2接続端子線48、及び第2電極44を形成した後、
図3Bに示すように、絶縁性の接着剤や塗料等からなるレジスト40によって封止される。このレジスト40は、透明な材質等によって構成されていてもよい。勿論、ドナー用ゲル34及びリファレンス用ゲル38と接触する第1電極42及び第2電極44の接触面にはレジスト40は塗布されず、各孔部47a、47bに対応する部分にも、各孔部47a、47bよりも大径の円形状にレジスト40が塗布されない孔部49a、49bが設けられる。前記導電性インクは、複数回の印刷により厚みを増し、通電不良の発生をより確実に防止できるように構成してもよい。また、レジスト40に代えて、絶縁性のシート材を貼り付ける等の方法で各配線の露出面を絶縁被覆してもよい。
【0034】
この際、第1接続端子線46及び第2接続端子線48の接続線46b、48bの折り曲げ部30に対応する部分、つまり、折り曲げ部30を含む一部分が、その前後の部分よりも幅広に形成された拡幅部46c、48dとして形成される。これにより、折り曲げ部30で第1リファレンス側部位24aと第2リファレンス側部位24bとを折り曲げた際に、接続線46b、48bが破断したり捲れたりすることをより確実に防止でき、折り曲げ時の耐久性と信頼性を高めることができる。
【0035】
次に、以上のような構成からなる電極フィルム20を用いてパッチ12を構成する方法について述べる。
【0036】
ベース28の一表面上に第1電極42、第2電極44、第1接続端子線46、及び第2接続端子線48を形成した後、
図4A及び
図4Bに示すように、リファレンス側部位24を折り曲げ部30で折り曲げる。そして、第1リファレンス側部位24aと第2リファレンス側部位24bとを、互いの裏面同士を密着した状態で接着剤等によって固定する。これにより、リファレンス側部位24では、第1電極42を設けた面と同一面上となる一面側に第2電極44が配置され(
図4A参照)、その裏面となる他面側に端子台46a、48aが配置される(
図4B参照)。
【0037】
なお、この折り曲げ工程前に、
図2に示すように、各端子台46a、48aの上面にホック50、52を、ベース28の裏面から各孔部47a、47bに挿通させた留め具(ハトメ)54、56に嵌め込むことによって固定しておくとよい。これにより、ホック50、52と留め具54、56とが、第2リファレンス側部位24bに確実に固定され、ホック50、52は端子台46a、48aに電気的に接続される。また、折り曲げ部30で折り曲げ後、ホック50、52には、上方に向かって突出し、通電装置14の接続孔14a、14b(
図1参照)に接続される小径略円柱状の突出部50a、52aが設けられている。
【0038】
図2に示すように、ドナー用貼付部材32、リファレンス用貼付部材36、ドナー用ゲル34、及びリファレンス用ゲル38を上記の通り折り曲げた電極フィルム20に対してそれぞれ所定の位置に配置することにより、パッチ12を構成することができる。
【0039】
通電装置14の上面には、緑色の光を発光する第1LED62と、黄色の光を発光する第2LED64と、通電装置14の電源をオンにさせるメインスイッチ66とが設けられている(
図1参照)。また、通電装置14の底面には、パッチ12のホック50、52の突出部50a、52aが接続される接続孔14a、14bが設けられており(
図1参照)、その内部に該接続孔14a、14bに電圧を印加する図示しない電気回路が設けられている。
【0040】
パッチ12は、
図3Aに示されるように、ベース28の一面側に、第1電極42、第2電極44、第1接続端子線46及び第2接続端子線48を形成するだけで、電極フィルム20での配線工程を終了することができ、その後は、リファレンス側部位24を折り曲げ部30で折り返すだけで所望の構成からなる電極フィルム20を成形することができる。このため、前記配線工程が簡略化されて生産効率が向上し、また配線を印刷する際に使用する版(原版)も片面用の一枚のみでよく、コスト低減も可能である。しかも、パッチ12の場合と同様に、患者の腕に密着されるドナー側部位22については柔軟な配線構造とすることができ、ドナー部16の患者への密着性を充分に確保することができる。
【0041】
また、患者の皮膚に貼り付けられる電極対として機能する一対のゲルのうち、薬剤が保持されるドナー用ゲル34を設けたドナー部16には通電装置14が載置されず、ドナー部16の柔軟性が通電装置14によって損なわれることがない。このため、血液透析患者の穿刺箇所(腕に形成したシャント部分)の血管が著しく隆起している場合であっても、薬剤を含有したドナー部16を容易に追従させた状態で密着固定させることができる。その際、ドナー部16とリファレンス部18とがブリッジ部位26を介して互いに離れて配置されていることから、ドナー部16の柔軟性を一層向上させることができ、貼り付けの自由度を高めることができる。しかも、パッチ12に直接、通電装置14を接続できるため、装置10全体としての構成を小型化し、取り扱いが容易になる。
【0042】
次に、装置10の動作について簡単に説明する。まず、薬物投与を行う前に、医療従事者若しくは患者は、薬物を投与したい患者の部位にパッチ12を貼り付ける。このとき、ドナー用ゲル34が薬物を投与したい患者の部位を覆うようにパッチ12を患者の皮膚に貼り付ける必要があるが、隙間領域43は、入射する光を透過するので、医療従事者若しくは患者は、パッチ12の上面(パッチ12のドナー用ゲル34が設けられた側とは反対側の面、つまり接触面とは反対側の載置面)から該隙間領域43を通して該部位を視認することができる。従って、該部位にドナー用ゲル34が接触するようにパッチ12を貼り付けることができる。また、互いに
直交し、同心円の中心を通る直線42d、42eは、第1電極42の中心を指示する照準線としての機能も果たすことから、ドナー用ゲル34の中心が該部位と接触するようにパッチ12を貼り付けることができる。
【0043】
そして、パッチ12を皮膚に貼り付けた後、パッチ12のホック50、52と通電装置14の接続孔14a、14bとが接続するように、パッチ12の上面に通電装置14を載置し、メインスイッチ66をオンにすると(通電装置14の電源をオンにすると)、通電が開始し、ドナー用ゲル34に封入された薬剤の投与が開始される。詳しくは、メインスイッチ66をオンにすると、通電装置14の接続孔(第3接続端子)14aに接続されたホック(第1接続端子)50から、パッチ12の端子台46a、接続線46b、及び第1電極42を経てドナー用ゲル34に電流を供給し、ドナー用ゲル34に供給された電流が、患者の体内(外部導体)に出力され、パッチ12のリファレンス用ゲル38、第2電極44、電極パッド48c、接続線48b、端子台48a、及びホック(第2接続端子)52を経て、接続孔(第4接続端子)14bから通電装置14へと戻る電流の経路を構成する。これにより、薬物が投与される。
【0044】
通電装置14による通電は、通電を開始してから所定時間経過後に自動的に終了する。また、所定時間経過前に、通電を終了させたい場合は、医療従事者若しくは患者がメインスイッチ66をオフにすることで通電を強制的に終了させることができる。このメインスイッチ66の位置は、パッチ12の内側、すなわち、リファレンス用ゲル38よりも相対的にドナー用ゲル34に近い方が好ましい。これは血液透析患者の穿刺のように複数箇所同時に薬剤投与を行う場合、リファレンス用ゲル38よりも相対的にドナー用ゲル34から遠い側にメインスイッチ66を設けた場合に、他の装置のメインスイッチ66と近接してしまう場合があり、操作が難しくなる可能性があり得るためである。
【0045】
通電装置14は、通電中に、ドナー用ゲル34とリファレンス用ゲル38との間の抵抗値が所定の範囲内の場合は、正常状態と判断して第1LED62を発光させ、抵抗値が所定の範囲外の場合は、異常状態と判断して第2LED64を発光させる。抵抗値が所定の範囲外になると薬物投与が適切に行われないため、ユーザに警告を行うべく第2LED64を発光させる。抵抗値が所定の範囲外になる場合としては、ゲルと皮膚との接触不良、濡れた皮膚上での短絡、装置10とパッチ12との接続不良、パッチ12内での短絡等がある。また、LEDの発光以外に警報音を併用してもよい。
【0046】
[変形例1]上記実施の形態は、以下のように変形してもよい。
図5は、変形例1におけるリファレンス側部位24の折り曲げ前の状態での電極フィルム20の底面図である。なお、上記実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、異なる部分のみ説明する。上記実施の形態では、第1電極42の印刷パターンは、同心円である3つの円42a、42b、42cと、該同心円の中心を通り、且つ、互いに
直交する2つの直線42d、42eとを有する形状としたが、本変形例1の第1電極70の印刷パターンは、中心から螺旋状に広がる渦巻き状の形状である。この場合であっても、第1電極70の印刷パターンは、1つの渦巻き形状の隙間領域71を有するため、パッチ12の上面から該隙間領域71を通して薬物を投与したい患者の部位を視認することができる。従って、該部位にドナー用ゲル34が接触するようにパッチ12を貼り付けることができる。
【0047】
また、第1電極70の印刷パターンである渦巻き形状は、中心から螺旋状に広がるので、医療従事者若しくは患者は、第1電極70の中心を容易に認識することができ、ドナー用ゲル34の中心が該部位と接触するようにパッチ12を貼り付けることができる。
【0048】
[変形例2]上記実施の形態は、以下のように変形してもよい。
図6は、変形例2におけるリファレンス側部位24の折り曲げ前の状態での電極フィルム20の底面図である。なお、上記実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、異なる部分のみ説明する。本変形例2の第1電極80の印刷パターンは、前記第1電極の中心を通り、且つ、互いに直交する2つの直線と太さの異なるそれらに平行な複数の直線からなるメッシュ状の形状を有する。この場合であっても、第1電極80の印刷パターンは、メッシュ間の隙間領域81を有するため、パッチ12の上面から該隙間領域81を通して薬物を投与したい患者の部位を視認することができる。従って、該部位にドナー用ゲル34が接触するようにパッチ12を貼り付けることができる。
【0049】
また、第1電極80の印刷パターンであるメッシュ形状は、中心を通る2つの直線が、他の直線と太さが異なるため、医療従事者若しくは患者は、第1電極80の中心を容易に認識することができ、ドナー用ゲル34の中心が薬物を投与したい患者の該部位と接触するようにパッチ12を貼り付けることができる。
【0050】
[変形例3]上記実施の形態は、以下のように変形してもよい。
図7は、変形例3におけるリファレンス側部位24の折り曲げ前の状態での電極フィルム20の底面図である。なお、上記実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、異なる部分のみ説明する。本変形例3の第1電極90の印刷パターンは、中心から周囲に広がる放射状の形状であり、4〜8個の扇の頂点が中心部分で交わる形状である。この場合であっても、第1電極90の印刷パターンは、放射状の隙間領域91を有するため、パッチ12の上面から該隙間領域91を通して薬物を投与したい患者の部位を視認することができる。従って、該部位にドナー用ゲル34が接触するようにパッチ12を貼り付けることができる。
【0051】
また、第1電極90の印刷パターンである放射形状は、中心から放射状に電極が広がるので、医療従事者若しくは患者は、第1電極90の中心を容易に認識することができ、ドナー用ゲル34の中心が薬物を投与したい患者の該部位と接触するようにパッチ12を貼り付けることができる。
【0052】
以上、本発明について好適な実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。