特許第6054995号(P6054995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6054995クロストークを防止する光学式エンコーダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054995
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】クロストークを防止する光学式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   G01D5/347 110S
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-16038(P2015-16038)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-142536(P2016-142536A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2015年12月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】王 苗苗
(72)【発明者】
【氏名】大竹 伸幸
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−65802(JP,A)
【文献】 特開2000−205894(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/203314(WO,A1)
【文献】 特開2007−71634(JP,A)
【文献】 特開2005−207758(JP,A)
【文献】 特開2004−347382(JP,A)
【文献】 特開昭63−42420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/38
G01B 7/00−7/34、
11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に対して一体的に移動可能であるとともに、複数のスリット列がそれぞれ間隔を空けて形成された可動スリット部品と、
前記複数のスリット列に向かって光を発生する発光部と、
前記複数のスリット列を通過する前記発光部からの光を検出するように、前記複数のスリット列に対応して設けられる複数の受光部と、
を備える光学式エンコーダであって、
前記複数の受光部のうちの少なくとも1つの受光部の、前記発光部からの光の光軸に対して内側に位置する内方縁及び前記光軸に対して外側に位置する外方縁の少なくとも一方が、該少なくとも1つの受光部に対応するスリット列の縁部に比べて、前記光軸に対して遠位に位置し
前記少なくとも1つの受光部が、該少なくとも1つの受光部に対応するスリット列の両側に隣接して延在していて光を通過させない1対の遮光部のうちの、前記スリット列の内側に位置する遮光部の内方縁、及び前記スリット列の外側に位置する遮光部の外方縁からそれぞれ前記光軸に対して平行な線を伸ばして画定される範囲の内側に設けられる、光学式エンコーダ。
【請求項2】
前記光軸に対して直交する方向における前記少なくとも1つの受光部の幅及び該少なくとも1つの受光部に対応するスリット列の幅が等しくなるようにした、請求項1に記載の光学式エンコーダ。
【請求項3】
測定対象物に対して一体的に移動可能であるとともに、複数のスリット列がそれぞれ間隔を空けて形成された可動スリット部品と、
前記複数のスリット列に向かって光を発生する発光部と、
前記複数のスリット列を通過する前記発光部からの光を検出するように、前記複数のスリット列に対応して設けられる複数の受光部と、
を備える光学式エンコーダであって、
前記複数の受光部のうちの少なくとも1つの受光部の、前記発光部からの光の光軸に対して内側に位置する内方縁及び前記光軸に対して外側に位置する外方縁の少なくとも一方が、該少なくとも1つの受光部に対応するスリット列の縁部に比べて、前記光軸に対して遠位に位置し、
前記光軸に対して直交する方向における前記少なくとも1つの受光部の幅が、該少なくとも1つの受光部に対応するスリット列の幅よりも大きいようにするとともに、
前記少なくとも1つの受光部の前記内方縁と、前記少なくとも1つの受光部に対応するスリット列の縁部とが、前記光軸から等しい距離に在る、光学式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
光学式エンコーダは、可動体の動作に関する情報、例えば移動方向、位置、速度などを取得するのに使用される。例えば、回転体とともに使用される公知の光学式エンコーダは、回転体とともに回転する回転スリットを通過した光を受光部において検出することによって、回転体の回転動作に関する情報を取得する。
【0003】
従来の光学式エンコーダにおいて、受光部は、回転スリットに対して整列するように設けられる。すなわち、検出信号の出力レベルを増大させるために、回転スリットを通過して直進する光が受光部に到達するように、受光部及び回転スリットは、縁部が互いに一直線上に並ぶように整列されている。
【0004】
特許文献1には、点光源から発せられる光が広がりながら受光素子列まで達することを考慮して、受光素子列の配列長を、回転スリット板に形成されたスリット列のピッチの長さよりも長くした回転角度検出装置が開示されている。この関連技術は、不感帯領域が発生するのを防止して、回転角度の検出精度を向上させることを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−007174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複数のスリット列をそれぞれ通過した光を互いに独立して検出するように構成された光学式エンコーダにおいて、隣接する別のスリット列を通過した光によってクロストークが生じる場合がある。図5は、関連技術に係るエンコーダにおけるスリット列及び受光部の位置関係を表している。回転板100には、5つのスリット列101〜105が互いに間隔を空けて形成されている。回転板100に対向するように設けられた光検出器200は、スリット列101〜105にそれぞれ対応するように受光部201〜205を備えている。
【0007】
スリット列101〜105及び受光部201〜205は、共通の中心軸線A1〜A5を有しており、同一の範囲にわたって延在している。したがって、図5において点線で示されるように、スリット列100〜105の縁部は、対応する受光部200〜205の縁部に対して整列されている。
【0008】
図6は、関連技術に係るエンコーダにおいて発光部から発生される光の例を表している。図示されるように、発光部300から発せられる光は完全な平行光(光軸310に対して平行に向けられた光)ではない。光軸310に対して傾斜する方向に向けられた光L1は、回転スリット102を通過した後に、該回転スリット102に対応する受光部202に隣接する別の受光部201に到達する。同様に、光軸310に対して傾斜する方向に向けられた光L2は、回転スリット104を通過した後に、対応する受光部204ではなく、隣接する別の受光部205に到達する。
【0009】
このように、対応する回転スリットとは別の回転スリットを通過した光が受光部に到達した場合、受光部からの出力信号が変化する(以下、単に「光クロストークと称する。)。その結果としてエンコーダの検出精度が低下する。
【0010】
したがって、光クロストークが発生するのを防止できる光学式エンコーダが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の1番目の発明によれば、測定対象物に対して一体的に移動可能であるとともに、複数のスリット列がそれぞれ間隔を空けて形成された可動スリット部品と、前記複数のスリット列に向かって光を発生する発光部と、前記複数のスリット列を通過する前記発光部からの光を検出するように、前記複数のスリット列に対応して設けられる複数の受光部と、を備える光学式エンコーダであって、前記複数の受光部のうちの少なくとも1つの受光部の、前記発光部からの光の光軸に対して内側に位置する内方縁及び前記光軸に対して外側に位置する外方縁の少なくとも一方が、該少なくとも1つの受光部に対応するスリット列の縁部に比べて、前記光軸に対して遠位に位置し、前記少なくとも1つの受光部が、該少なくとも1つの受光部に対応するスリット列の両側に隣接して延在していて光を通過させない1対の遮光部のうちの、前記スリット列の内側に位置する遮光部の内方縁、及び前記スリット列の外側に位置する遮光部の外方縁からそれぞれ前記光軸に対して平行な線を伸ばして画定される範囲の内側に設けられる、光学式エンコーダが提供される。
本願の2番目の発明によれば、1番目の発明において、前記光軸に対して直交する方向における前記少なくとも1つの受光部の幅及び該少なくとも1つの受光部に対応するスリット列の幅が等しい。
本願の3番目の発明によれば、測定対象物に対して一体的に移動可能であるとともに、複数のスリット列がそれぞれ間隔を空けて形成された可動スリット部品と、前記複数のスリット列に向かって光を発生する発光部と、前記複数のスリット列を通過する前記発光部からの光を検出するように、前記複数のスリット列に対応して設けられる複数の受光部と、を備える光学式エンコーダであって、前記複数の受光部のうちの少なくとも1つの受光部の、前記発光部からの光の光軸に対して内側に位置する内方縁及び前記光軸に対して外側に位置する外方縁の少なくとも一方が、該少なくとも1つの受光部に対応するスリット列の縁部に比べて、前記光軸に対して遠位に位置し、前記光軸に対して直交する方向における前記少なくとも1つの受光部の幅が、該少なくとも1つの受光部に対応するスリット列の幅よりも大きいようにするとともに、前記少なくとも1つの受光部の前記内方縁と、前記少なくとも1つの受光部に対応するスリット列の縁部とが、前記光軸から等しい距離に在る。
【0012】
これら及び他の本発明の目的、特徴及び利点は、添付図面に示される本発明の例示的な実施形態に係る詳細な説明を参照することによって、より明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る光学式エンコーダによれば、発光部から発生される光の広がりに対応するように、受光部の内方縁及び外方縁のいずれか一方が、対応するスリット列の縁部に比べて、光軸に対して遠方の位置に設けられる。それにより、別のスリット列を通過した光によって光クロストークが発生するのを防止できるようになる。したがって、エンコーダの検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る光学式エンコーダを示す概略図である。
図2A】回転板の一部を示す上面図である。
図2B図2Aの線2Bに沿って見た部分断面図である。
図3A】スリット列及び受光部の位置関係を表す図である。
図3B】スリット列及び受光部の位置関係を表す図である。
図3C】スリット列及び受光部の位置関係を表す図である。
図4】一実施形態に係るエンコーダにおいて発光部から発生される光の例を表す図である。
図5】関連技術に係るエンコーダにおける回転板及び受光部の位置関係を表す図である。
図6】関連技術に係るエンコーダにおいて発光部から発生される光の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図示される実施形態の構成要素は、本発明の理解を助けるために寸法が適宜変更されている。また、同一又は対応する構成要素には、同一の参照符号が使用される。
【0016】
図1は、一実施形態に係る光学式エンコーダを示す概略図である。光学式エンコーダ10は、回転軸30の回転動作に関する情報、例えば回転方向、回転角度位置及び回転速度などを取得するのに使用されるロータリエンコーダである。光学式エンコーダ10は、回転板20と、ハウジング部品40と、発光部50と、光検出器60と、を備えている。
【0017】
回転軸30は、回転軸線Oの回りに回転可能な概ね円柱状の部材であり、本実施形態における光学式エンコーダ10の測定対象物である。回転軸30は、例えば電動機(図示せず)の出力軸であってもよいし、又は出力軸に直接的若しくは間接的に連結された他の軸であってもよい。回転軸30の外周には、回転板20が取付けられており、回転板20は、回転軸30とともに回転できるようになっている。回転板20は、後述するように、発光部50から発生される光を通過する透光部と、光を遮断する遮光部と、を備えている。
【0018】
ハウジング部品40は、回転軸30及び回転板20の回転動作から独立して固定された部品である。ハウジング部品40の内周には軸受44が設けられており、軸受44は回転軸30を回転可能に支持している。ハウジング部品40には、回転板20とは反対側に窪んだ凹部42が形成されており、発光部50が収容されるようになっている。
【0019】
発光部50は、予め定められた方向(光軸Xの方向)に光を発生するように構成されている。発光部50は、光検出器60に向かって光を発生するように、ハウジング部品40の凹部42に設けられている。発光部50は、例えば発光ダイオードである。発光部50は、発生される光を平行光に変換するレンズを備えていてもよい。
【0020】
光検出器60は、発光部50に対向するように、回転板20の、発光部50とは反対側に設けられている。光検出器60は、回転板20の透光部を通過する発光部50からの光を検出して、電気信号として出力するように構成される。例えば、光検出器60は、互いに独立して光を検出可能な複数のフォトダイオードを備えている。
【0021】
光学式エンコーダ10は、発光部50から発生されるとともに、回転板20の透光部を通過して光検出器60に到達した光を検出し、それにより回転軸30の回転動作に関する情報を取得する。光学式エンコーダ10が動作する原理は周知であるので、本明細書においては詳細な説明を省略する。
【0022】
図2A及び図2Bを参照して、回転板20の構成例を詳述する。図2Aは、回転板20の一部を示す上面図である。図2Bは、図2Aの線2Bに沿って見た部分断面図である。回転板20には、回転板20を回転軸線Oに対して平行な方向に貫通する複数のスリット列24a〜24eから構成されている。スリット列24a〜24eは、回転軸線Oから互いに等しい距離にある複数のスリットからそれぞれ構成されている。すなわち、各々のスリット列24a〜24eを構成するスリットは、回転軸線Oを中心とする円周上に整列するように形成されている。或いは、スリット列24a〜24eのうちの少なくとも1つが単数のスリットから形成されていてもよい。各スリット列24a〜24eは、発光部50から光検出器60に向かう光を通過させる透光部として作用する。
【0023】
スリット列24a〜24eは、回転軸30の回転動作に関する情報を取得するためにそれぞれ設けられている。スリット列24a〜24eは、それぞれ異なる内容の情報を取得できるように、ピッチ及び寸法の少なくとも一方が互いに相違している。便宜上、以下の実施形態の説明において、回転軸線Oの近傍に位置するスリット列から外側に向かって設けられるスリット列24a〜24eを、「第1のスリット列」、「第2のスリット列」、「第3のスリット列」、「第4のスリット列」、「第5のスリット列」、とそれぞれ称することとする。
【0024】
図2Bを参照すれば、スリット列24a〜24eのうちの隣接する任意の2つのスリット列の間には、光を遮断する作用を有する遮光部22ab、22bc、22cd、22deが形成される。また、第1のスリット列24aの内側には、遮光部22aが形成されるとともに、第5のスリット列24eの外側には、遮光部22eが形成されている。
【0025】
ところで、図6を参照して前述したように、複数のスリット列を通過する光をそれぞれ独立して検出するように構成されたエンコーダにおいて、隣接するスリット列を通過した光を誤検出する光クロストークが発生することがある。そこで、本実施形態においては、発光部から発生される光の広がりを考慮して、光検出器の受光部(光を検出可能な有効領域)が、対応するスリット列よりも光軸から離れた位置に設けられている。すなわち、光軸に対して平行な方向に延在する受光部の中心軸線が、対応するスリット列の中心軸線よりも光軸から離れた位置に在るように、光検出器が構成される。
【0026】
図3Aは、一実施形態に係るエンコーダにおける回転板及び受光部の位置関係を表している。図3Aに示されるように、本実施形態に係るエンコーダは、受光部60a、60b、60d、60eの中心軸線A1’、A2’、A4’、A5’が、対応するスリット列24a、24b、24d、24eの中心軸線A1、A2、A4、A5よりも光軸Xから離れた位置に在るように、光検出器60が構成される。なお、第3のスリット列24cの中心軸線A3は、光軸Xと概ね一致している。このように、光軸Xにまたがって延在する第3のスリット列24cに対応する受光部60cにおいては、光クロストークが発生しにくい。したがって、第3のスリット列24c及び対応する受光部60cは、互いに整列していてもよい。このように、本発明に係るエンコーダは、一部の受光部、特に光軸Xの近傍に設けられる受光部は、対応するスリット列に対して整列されていてもよい。図示された実施形態では、第3のスリット列24c及び対応する受光部60cは、同一の幅を有しているものの、受光部60cの幅が第3のスリット列24cの幅よりも大きくなるように寸法決めされてもよい。この場合、受光部60cは、光軸Xに対して広がる光をより多く検出できるようになるので、検出信号の出力レベルが増大する。
【0027】
図3Aにおいて、スリット列24a〜24eと受光部60a〜60eとの位置関係を強調するため、回転板20の各スリット列24a〜24eの内方縁(光軸Xに対して近位の縁部)及び外方縁(光軸Xに対して遠位の縁部)と、各スリット列24a〜24eに対応する受光部60の内方縁及び外方縁との間が点線でそれぞれ接続されている。例えば、第1のスリット列24aに対応する受光部60aの外方縁60a1は、第1のスリット列24aの外方縁24a1よりも、光軸Xの外側に位置している。また、受光部60aの内方縁60a2は、第1のスリット列24aの内方縁24a2よりも、光軸Xの外側に位置している。また、光軸Xに対して直交する方向における受光部60aの幅は、第1のスリット列24aの幅よりも大きくなるように寸法決めされている。
【0028】
本実施形態によれば、スリット列及び受光部の位置関係及び幅比は、光クロストークが発生しないように適宜変更される。例えば、一実施形態によれば、受光部の内方縁及び外方縁の一方のみが、対応するスリット列よりも光軸Xから離間した位置に配置されるように受光部が構成されてもよい。また、一実施形態によれば、受光部が、対応するスリット列の両側に隣接する遮光部によって画定される範囲内に設けられるように受光部が構成されてもよい。この場合、スリット列の内側に位置する遮光部の内方縁及び外側に位置する遮光部の外方縁からそれぞれ光軸に対して平行な線を伸ばして画定される範囲内に受光部が配置されるようになる。
【0029】
また、一実施形態によれば、少なくとも1つのスリット列の幅と対応する受光部の幅を等しくするとともに、受光部がスリット列よりも光軸Xから離れた位置に配置されるように受光部が構成されてもよい(図3Aの第2のスリット列24b及び対応する受光部60b参照)。また、別の実施形態によれば、受光部の幅が対応するスリット列の幅よりも大きくなるように寸法決めされるとともに、受光部の内方縁とスリット列の内方縁が互いに整列されるように構成されてもよい(図3Aの第4のスリット列24d及び対応する受光部60d参照)。
【0030】
図3B及び図3Cは、別の実施形態におけるスリット列及び受光部の位置関係を表している。図3B及び図3Cに示される実施形態においては、スリット列24の中心軸線A6と、対応する受光部60fの中心軸線A6’とが同一直線上に整列するように配列される。図3Bに示されるように、受光部60fの外方縁60f1は、スリット列24fの外方縁24f1よりも、光軸Xから離れた位置に配置される。他方、受光部60fの内方縁60f2は、スリット列24fの内方縁24f2よりも、光軸Xに近い位置に配置されている。スリット列24f及び受光部60fがこのような位置関係を有する場合、スリット列24fの両側に位置する遮光部の範囲を大きくすることによって、光クロストークの発生を防止できる。他方、受光部60fがスリット列24fよりも大きい幅にわたって設けられるので、受光部60fの検出信号の出力レベルを増大できる。
【0031】
図3Cを参照すれば、受光部60fの外方縁60f1は、スリット列24fの外方縁24f1よりも、光軸Xに近い位置に配置される。他方、受光部60fの内方縁60f2は、スリット列24fの内方縁24f2よりも、光軸Xから離れた位置に配置されている。スリット列24f及び受光部60fがこのような位置関係を有する場合、図3Bの場合とは異なり、遮光部の範囲を変更しなくても、光クロストークの発生を防止できる。
【0032】
図4は、図3Aに示される実施形態において、スリット列を通過して受光部に到達する光を表している。破線L1は、第2のスリット列24bを通過する光を示している。破線L2は、第4のスリット列24dを通過する光を表している。本実施形態によれば、受光部60b及び受光部60dが、光軸Xに対して、それぞれ対応する第2のスリット列24b、第4のスリット列24dよりも離れた位置に設けられている。したがって、図4に示されるように、光軸Xに対して傾斜する光L1、L2は、隣接する受光部の間に形成される不感帯領域70ab、70deに到達するようになる。すなわち、受光部60a、60eに到達するのを防止できる。結果的に、光クロストークが発生するのを防止できる。
【0033】
本実施形態に係る光学式エンコーダによれば、光クロストークを防止できるので、動作に関する情報の検出精度を向上できる。また、対応するスリット列よりも大きい幅を有する受光部を設ければ、光検出器の有効領域が増大するので、検出信号の出力レベルを増大できる。さらに、本実施形態によれば、非平行光による影響を低減できるので、より理想的な平行光に近づけるためにコリメータレンズ又は光ファイバなどの高価な追加の光学要素を設ける必要がなくなり、安価な光学式エンコーダを提供できる。さらにまた、受光部によって検出される情報の信頼性が向上するので、エンコーダの組立て後の調整工程が簡素化され、生産性が向上する。このような調整工程は、受光部の出力信号が最大化又は適正化されるように、受光部及びスリットの位置を調整する目的で行われる。光クロストークに起因してエンコーダの検出精度が低下した場合、調整工程に要する時間が長期化したり、或いは出力信号が規定値を満足せずにエンコーダが不良品であると誤判定されることがある。換言すれば、本実施形態に係るエンコーダによれば、検出情報の信頼性が高くなるので、調整工程を短時間で完了できるようになるとともに、品質検査を適切に行えるようになる。
【0034】
なお、回転体の回転動作に関する情報を検出するロータリエンコーダを例として本発明の実施形態を説明したものの、本発明は、直線的動作に関する情報を検出するリニアスケールにも同様に適用できる。
【0035】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、当業者であれば、他の実施形態によっても本発明の意図する作用効果を実現できることを認識するであろう。特に、本発明の範囲を逸脱することなく、前述した実施形態の構成要素を削除又は置換することができるし、或いは公知の手段をさらに付加することができる。また、本明細書において明示的又は暗示的に開示される複数の実施形態の特徴を任意に組合せることによっても本発明を実施できることは当業者に自明である。
【符号の説明】
【0036】
10 光学式エンコーダ
20 回転板(可動スリット部品)
22a、22ab、22bc、22cd、22de、22e 遮光部
24a、24b、24c、24d、24e、24f スリット列
30 回転軸(測定対象物)
40 ハウジング部品
50 発光部
60 光検出器
60a、60b、60c、60d、60e、60f 受光部
70a、70ab、70bc、70cd、70de、70e 不感帯領域
O 回転軸線
X 光軸
A1、A2、A3、A4、A5、A6 (スリット列の)中心軸線
A1’、A2’、A3’、A4’、A5’、A6’ (受光部の)中心軸線
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6