特許第6054998号(P6054998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6054998
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】逸失エネルギの決定方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/00 20160101AFI20161219BHJP
【FI】
   F03D80/00
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-27892(P2015-27892)
(22)【出願日】2015年2月16日
(62)【分割の表示】特願2013-552946(P2013-552946)の分割
【原出願日】2012年2月8日
(65)【公開番号】特開2015-92085(P2015-92085A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2015年2月16日
(31)【優先権主張番号】102011003799.3
(32)【優先日】2011年2月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ボーレン、ヴェルナー ハインリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ブラガ、ヌーノ
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ、アンドレアス
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−225646(JP,A)
【文献】 特開2010−084545(JP,A)
【文献】 特開2004−019583(JP,A)
【文献】 特開2010−025115(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0079263(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0080703(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0179773(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0088129(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞り又は非絞り運転されている少なくとも1つの基準風力発電装置の記録された出力から第1の風力発電装置の停止又は絞り運転中に該第1の風力発電装置によって電気エネルギに変換できない逸失エネルギを決定するための、複数の相関法則ないし相関係数を含むデータベースの作成方法であって、
以下の工程:
前記第1の風力発電装置と絞り又は非絞り運転されている少なくとも1つの基準風力発電装置のある瞬間の出力を検出すること、
前記第1の風力発電装置の出力と前記少なくとも1つの基準風力発電装置の出力の間の関係を表す相関法則ないし相関係数、をその都度決定すること、及び
少なくとも1つの境界条件に依存して少なくとも1つの前記相関法則ないし相関係数を記憶すること
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの境界条件は、
・実際の風向、
・実際の風速、
・基準風力発電装置の実際の出力、
・実際の外部温度、及び
・実際の空気密度
を含む群から選択されること、及び/又は
前記第1の風力発電装置、前記基準風力発電装置について及び/又は更なる風力発電装置について、少なくとも1つの境界条件に依存してある瞬間の出力が記憶されること
を特徴とする請求項1に記載のデータベースの作成方法。
【請求項3】
・前記実際の風向、
・前記実際の風速、
・前記基準風力発電装置の実際の出力、
・前記実際の外部温度、及び/又は
・前記実際の空気密度
は、境界条件として使用されるために、離散的な領域に分割されること
を特徴とする請求項2に記載のデータベースの作成方法。
【請求項4】
前記相関法則ないし相関係数は平常の運転時に記録及び記憶され、かくして、データベースは該相関係数によって順次満たされること、及び
任意的に及び/又は必要に応じ、測定によってまだ決定されていない相関法則ないし相関係数が計算されること
を特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のデータベースの作成方法。
【請求項5】
1つないし複数の境界条件の複数の異なる値ないし複数の異なる値の組合せのために、3又は4以上の風力発電装置について、夫々1つの相関法則のセットないし相関係数のセットが記録され、その際、夫々1つの相関法則ないし相関係数は、そのうち夫々2つの風力発電装置の相関を表すこと
を特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のデータベースの作成方法。
【請求項6】
第1の風力発電装置の停止又は絞り運転のためにこの第1の風力発電装置によって電気エネルギに変換できない逸失エネルギの検出方法であって、
以下の工程:
・絞り又は非絞り運転されている少なくとも1つの基準風力発電装置の実際の出力を検出すること、
・前記少なくとも1つの基準風力発電装置の出力と予め記録された相関法則ないし相関係数とから、前記第1の風力発電装置の期待出力を計算すること、但し、該相関係数は、これの動作点について、夫々の基準風力発電装置の出力と前記第1の風力発電装置の期待出力との間の関係を与えること、及び
・前記計算された期待出力と関連する期間とから逸失エネルギを計算すること、
・及び/又は前記第1の風力発電装置又は複数の風力発電装置予め記憶された絶対的出力値を実際の風向及び/又は実際の風速に依存して読み出すこと、及び
前記読み出された期待出力と関連する期間とから逸失エネルギを計算すること
を含む方法。
【請求項7】
所定のないし前記相関係数は、記憶された複数の相関係数から、
・実際の風向、
・実際の風速、
・基準風力発電装置の実際の出力、
・実際の外部温度、及び/又は
・実際の空気密度
に依存して選択されること
を特徴とする請求項に記載の逸失エネルギの検出方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの基準風力発電装置は実際の支配的な風向に依存して選択されること、及び/又は複数の風力発電装置が夫々1つの期待出力を計算するために基準風力発電装置として選択かつ使用され、かくして、複数の期待出力が計算され、該複数の期待出力から1つの期待平均出力が計算されること
を特徴とする請求項又はに記載の逸失エネルギの検出方法。
【請求項9】
前記1つの期待平均出力は、前記複数の期待出力を用いる平均化又は最小誤差二乗法によって計算されること
を特徴とする請求項に記載の逸失エネルギの検出方法。
【請求項10】
前記実際の風向及び/又は前記実際の風速は、前記基準風力発電装置において、前記第1の風力発電装置において、測定マストにおいて及び/又は他の測定点において検出されること
を特徴とする請求項の何れかに記載の逸失エネルギの検出方法。
【請求項11】
請求項1〜の何れかの方法によって作成されたデータベースからの少なくとも1つのないし前記少なくとも1つの相関係数が使用されること
を特徴とする請求項10の何れかに記載の逸失エネルギの検出方法。
【請求項12】
風の運動エネルギを電気エネルギに変換するための風力発電装置であって、
請求項1〜11の何れかに記載の方法を実行するよう構成された制御装置を有する
風力発電装置。
【請求項13】
複数の風力発電装置と、制御装置とを含むウインドパークであって、
前記制御装置が、第1の風力発電装置としての風力発電装置のために、かつ、基準風力発電装置としてのウインドパークの少なくとも1つの更なる風力発電装置を考慮して、請求項1〜11の何れかに記載の方法を実行するよう構成されている
ウインドパーク。
【請求項14】
環境条件を検出するための測定マストを有すること
を特徴とする請求項13に記載のウインドパーク。
【請求項15】
前記制御装置は、前記複数の風力発電装置の何れかに及び/又は所定のないし前記測定マストに設けられること、及び/又は、前記制御装置は、第1の風力発電装置としてのウインドパークの風力発電装置の各々についてその都度選択的に逸失エネルギを計算するよう構成されること
を特徴とする請求項13又は14に記載のウインドパーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置が停止(運転停止)又は出力絞り(絞り運転:Drosselung)の間に風から獲得できないがそのような停止又は出力絞りがなければ風から獲得可能であった逸失エネルギの決定方法に関する。更に、本発明は、そのような逸失エネルギを決定するために利用可能なデータの記録(取得)に関する。更に、本発明は、そのような逸失エネルギを決定可能な風力発電装置に関する。更に、本発明は、少なくとも1つの風力発電装置の逸失エネルギを決定可能なウインドパークに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置は一般的には既知である。風力発電装置は、例えば、タワーと、該タワーの上部に配されるナセルを含み、該ナセルは、ハブないしスピナーに配された複数のロータブレードを有するロータを含むが、その様子は例えば図1に一例として示されている。複数のロータブレードとスピナーを本質的に含むロータは、支配的な(優勢な)風(ないし卓越風)によって回転させられ、それによって、その運動エネルギを電気エネルギに、瞬時値で言えば電気的出力(電力)に変換する発電機を駆動する。そのような電気的出力ないし電気エネルギは、通常、給電網に供給され、それに応じて需要者に利用可能になる。複数のそのような又はその他の風力発電装置が互いに隣接した関係で設置され、かくして、ウインドパークを形成することがしばしばある。この場合、複数の風力発電装置は、例えば互いに対し数百メートル離されて設置されることもある。この場合、ウインドパークは、共通の給電点によって識別(区別)されるのが、必ずしもそうとは限らないが、通常である。このようにして、ウインドパークによってその都度生成される全出力(全電力)、即ち、ウインドパークの全ての風力発電装置(の出力)の合計は、集中的に一箇所において即ち給電点において給電網に供給されることができる。
【0003】
風力発電装置は、風の状態が当該風力発電装置の運転、とりわけ当該風力発電装置の非絞り(非抑制)運転を可能にするものであるにも拘らず、停止又は絞り(抑制ないし減速)運転されることが時折起こり得る。風力発電装置のそのような停止は、例えば保守整備作業の際又は事故(故障)が発生した場合に必要になり得る。また、給電網を制御するために、給電網を管理(運営)している給電網管理者(運営者)が、風力発電装置に関し、所定の期間、給電網に供給されるべき電力を低減するか或いは全く供給しないことを指令することも起こり得る。また、絞り運転は、例えば環境汚染防止の理由からも、とりわけ減音運転による騒音の制限のために又はシャドウ・フリッカ(Schattenschlag)の回避又は抑制のために、考慮される。絞り運転についての更なるあり得る例としては、給電網管理者の設定条件、着氷、又は、風力発電装置を巡回(点検)する際の絞り運転又はシャットダウン(運転停止)がある。原理的には、絞り運転ないしシャットダウンは、例えば氷塊落下の危険がある場合のような安全上の理由、及び/又は例えば騒音低減のような環境汚染防止上の理由、及び/又は例えば温度が過大に上昇する場合のような内的な技術上の理由、及び/又は例えば接続されている給電網に過電圧が生じた場合又は例えば着氷により空力特性が毀損される場合のような外的な技術上の理由から重要になり得る。
【0004】
とりわけ風力発電装置の停止は風力発電装置の管理者(運営者)にとって通常望ましくない。その理由は、そのような場合、当該管理者には、給電網に電気エネルギが供給されないことにより報酬(収入)の減少が生じるからである。シャットダウンないし絞り運転の理由に応じては、逸失したエネルギに対する補償の要求は、例えば給電網管理者(運営者)のような第3者についても起こり得る。従って、原理的には仮想的な値を表すこの逸失エネルギを決定することは重要である。その際、このエネルギ量は可及的に正確に決定されることが望ましい。というのは、そうでない場合、その結果として得られる報酬(補償金)は正確には決定することができず、風力発電装置の管理者(運営者)にとって不利にも有利にもなり得るからである。
【0005】
そのように把握される逸失エネルギは、障害がなければ生成可能であった、通常はパーセント値で特定される、生産ベース利用可能性ないしエネルギ利用可能性とも称される。この概念は、風力発電装置が運転停止されその結果利用不可能であった期間を、例えば丸1年に対するパーセント値として、単に特定する時間ベース利用可能性の概念と区別するためにも使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 2008/079263 A1
【特許文献2】EP 2 206 917 A2
【特許文献3】DE 10 2004 057 320 A1
【特許文献4】EP 2 169 218 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生産ベース利用可能性を決定するために又はその計算のために逸失エネルギを決定するために、例えば、関係する風力発電装置の動作特性曲線を基礎とすることができる。この動作特性曲線は風速に応じた生成出力(電力)を与える。風力発電装置が停止又は絞り運転される場合、支配的な(優勢な)風速(ないし卓越風速)は測定によって既知であるので、この出力(電力)特性曲線から、風力発電装置がこの出力特性曲線に応じて供給するであろう対応出力(電力)を読み取ることができる。ここで問題となるのは、とりわけ、支配的な風速を確実かつ正確に決定することが困難であることである。確かに、風力発電装置は、通常、例えば風速計(風力計)のような風測定装置を備えるが、実際には、そのような装置は、通常は、風力発電装置の制御のためには使用されないか、極めて限定的にしか使用されない。風力発電装置の動作点は、例えば、該風力発電装置が回転可変速原理を利用しているか又は回転可変速型の風力発電装置である場合、ロータ回転速度又はロータ加速度に応じて設定されるのが通常である。換言すれば、風力発電装置又はそのロータは、1つの高信頼性風測定センサであるといえるが、停止状態では風速に関する如何なる情報も提供することはできない。
【0008】
更なる可能なオプションの1つは、風速を測定するための測定マスト(Messmast)を用いることであるが、これは、これにより測定される風速を利用するために、(又は)上述の出力(電力)特性曲線を介して該特性曲線により生成され得るであろう出力(電力)を決定するために、使用される。しかしながら、この場合にも、不確実なのは測定マストの精度(正確性)である。更に、測定マストは関係する風力発電装置から離れて設置されるため、測定マストにおける風速と関係する風力発電装置における風速との間に齟齬が生じる。更に、風速は、それのみが上述の出力(電力)特性曲線において考慮されるにも拘らず、風を十分には特徴付けることができない。従って、風は、例えば−計算された−平均値について、当該風が極めて一様であるか極めて突風的であるかに応じて、風力発電装置に異なる作用を与え、それに応じて、異なる出力(電力)生成を引き起こし得る。
【0009】
測定マスト又はいわゆるメテオマスト(気象観測マスト:Meteo−Mast)を1又は複数の気象観測所と関連付け、それにより支配的な気象状況、とりわけ支配的な風のための情報を改善することも既に提案されている。とりわけ、メテオマストの測定は、これによって、風の局所的な変動による影響を受けにくくなる。
【0010】
それゆえ、本発明の課題は上述の問題の少なくとも1つを除去ないし縮小することであり、とりわけ、本発明は、逸失エネルギないし生産ベース利用可能性をより正確に決定することを可能にする方策を提案するべきである。少なくとも、本発明は、代替的な方策を提案するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明により、請求項1の方法及び請求項6の方法が提供される。
(形態1)上記の課題を解決するために、本発明の第1の視点により、絞り又は非絞り運転されている少なくとも1つの基準風力発電装置の記録された出力から第1の風力発電装置の停止又は絞り運転中に該第1の風力発電装置によって電気エネルギに変換できない逸失エネルギを決定するための、複数の相関法則ないし相関係数を含むデータベースの作成方法が提供される。この方法は、以下の工程:
前記第1の風力発電装置と絞り又は非絞り運転されている少なくとも1つの基準風力発電装置のある瞬間の出力を検出すること、
前記第1の風力発電装置の出力と前記少なくとも1つの基準風力発電装置の出力の間の関係を表す相関法則ないし相関係数、をその都度決定すること、及び
少なくとも1つの境界条件に依存して少なくとも1つの前記相関法則ないし相関係数を記憶すること
を含む(第1基本構成)。
(形態2)上記形態1の方法において、前記少なくとも1つの境界条件は、
・実際の風向、
・実際の風速、
・基準風力発電装置の実際の出力、
・実際の外部温度、及び
・実際の空気密度
を含む群から選択されること、及び/又は
前記第1の風力発電装置、前記基準風力発電装置について及び/又は更なる風力発電装置について、少なくとも1つの境界条件に依存してある瞬間の出力が記憶されることが好ましい。
(形態3)上記形態2の方法において、
・前記実際の風向、
・前記実際の風速、
・前記基準風力発電装置の実際の出力、
・前記実際の外部温度、及び/又は
・前記実際の空気密度
は、境界条件として使用されるために、離散的な領域に分割されることが好ましい。
(形態4)上記形態1〜3の何れかの方法において、前記相関法則ないし相関係数は平常の運転時に記録及び記憶され、かくして、データベースは該相関係数によって順次満たされること、及び
任意的に及び/又は必要に応じ、測定によってまだ決定されていない相関法則ないし相関係数が計算される、とりわけ内挿法又は外挿法によって求められる、ことが好ましい。
(形態5)上記形態1〜4の何れかの方法において、1つないし複数の境界条件の複数の異なる値ないし複数の異なる値の組合せのために、3又は4以上の風力発電装置について、夫々1つの相関法則のセットないし相関係数のセットが記録され、その際、夫々1つの相関法則ないし相関係数は、そのうち夫々2つの風力発電装置の相関を表すことが好ましい。
(形態6)上記の課題を解決するために、更に、本発明の第2の視点により、第1の風力発電装置の停止又は絞り運転中に該第1の風力発電装置によって電気エネルギに変換できない逸失エネルギを決定するための、複数の出力値を含むデータベースの作成方法が提供される。この方法は、以下の工程:
絞り又は非絞り運転されている少なくとも1つの第1の風力発電装置のある瞬間の出力を検出すること、及び
少なくとも1つの境界条件に依存して前記検出された出力を記憶すること、該境界条件は基準風力発電装置の出力によって形成されることを含む(第2基本構成)。
(形態7)上記の課題を解決するために、更に、本発明の第3の視点により、第1の風力発電装置の停止又は絞り運転のためにこの第1の風力発電装置によって電気エネルギに変換できない逸失エネルギの検出方法が提供される。この方法は、以下の工程:
・絞り又は非絞り運転されている少なくとも1つの基準風力発電装置の実際の出力を検出すること、
・前記少なくとも1つの基準風力発電装置の出力と予め記録された相関法則ないし相関係数とから、とりわけ予め記録された相関係数とから、前記第1の風力発電装置の期待出力を計算すること、但し、該相関係数は、これの動作点について、夫々の基準風力発電装置の出力と前記第1の風力発電装置の期待出力との間の関係を与えること、及び
・前記計算された期待出力と関連する期間とから逸失エネルギを計算すること、
・及び/又は前記第1の風力発電装置又は複数の風力発電装置予め記憶された絶対的出力値を実際の風向及び/又は実際の風速に依存して読み出すこと、及び
前記読み出された期待出力と関連する期間とから逸失エネルギを計算すること
を含む(第3基本構成)。
(形態8)上記形態7の方法において、所定のないし前記相関係数は、記憶された複数の相関係数から、
・実際の風向、
・実際の風速、
・基準風力発電装置の実際の出力、
・実際の外部温度、及び/又は
・実際の空気密度
に依存して選択されることが好ましい。
(形態9)上記形態7又は8の方法において、前記少なくとも1つの基準風力発電装置は実際の支配的な風向に依存して選択されること、及び/又は複数の風力発電装置が夫々1つの期待出力を計算するために基準風力発電装置として選択かつ使用され、かくして、複数の期待出力が計算され、該複数の期待出力から1つの期待平均出力が計算されることが好ましい。
(形態10)上記形態9の方法において、1つの期待前記平均出力は、前記複数の期待出力を用いる平均化又は最小誤差二乗法によって計算されることが好ましい。
(形態11)上記形態7〜10の何れかの方法において、前記実際の風向及び/又は前記実際の風速は、前記基準風力発電装置において、前記第1の風力発電装置において、測定マストにおいて及び/又は他の測定点において検出されることが好ましい。
(形態12)上記形態7〜11の何れかの方法において、
上記形態1〜6の何れかの方法によって作成されたデータベースからの少なくとも1つのないし前記少なくとも1つの相関係数が使用されることが好ましい。
(形態13)風の運動エネルギを電気エネルギに変換するための風力発電装置であって、上記形態1〜12の何れかの方法を実行するよう構成された制御装置を有する風力発電装置も有利に提供される。
(形態14)複数の風力発電装置と、制御装置とを含むウインドパークであって、前記制御装置が、第1の風力発電装置としての風力発電装置のために、かつ、基準風力発電装置としてのウインドパークの少なくとも1つの更なる風力発電装置を考慮して、上記形態1〜12の何れかの方法を実行するよう構成されているウインドパークも有利に提供される。
(形態15)上記形態14のウインドパークにおいて、環境条件を検出するための、とりわけウインドパークにおいて支配的な風速を検出するための、測定マストを有することが好ましい。
(形態16)上記形態14又は15のウインドパークにおいて、前記制御装置は、前記複数の風力発電装置の何れかに及び/又は所定のないし前記測定マストに設けられること、及び/又は、前記制御装置は、第1の風力発電装置としてのウインドパークの風力発電装置の各々についてその都度選択的に逸失エネルギを計算するよう構成されることが好ましい。
【0012】
これに応じ、データベースを生成する方法が提案される。このデータベースは、逸失エネルギを決定するために使用される複数の、とりわけ多数の相関係数を含む。この場合、逸失エネルギは、とりわけ請求項6に規定されているように検出(決定)される。これに応じ、第1の風力発電装置が運転停止又は絞り(抑制ないし減速:gedrosselt)運転される場合が考慮される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
説明を単純化するために、まず、運転停止している(1つの)風力発電装置を出発点とする。この場合、非絞り運転で作動している少なくとも1つの基準風力発電装置の実際の出力(電力)が検出される。なお、原理的には、絞り運転している(1つの)基準風力発電装置を出発点とすることも可能である。しかしながら、より分かりやすく説明をするために、最初に、絞り運転されていない風力発電装置を出発点とする。この非絞り運転されている風力発電装置は、測定可能であるか又はその値がこの基準風力発電装置の制御装置に読み出し可能に含まれている出力を与える。この既知の出力から、予め記録された相関を介して、とりわけ予め抽出(記録)された相関係数を介して、現在運転停止している第1の風力発電装置の期待出力(予想ないし見込出力)が計算される(求められる)。従って、例えば、基準風力発電装置が非絞り運転で運転され、その際1MWの出力を生成し、相関係数が例えば1.2の場合、現在運転停止している第1の風力発電装置の期待出力は1.2MWと見積もられるであろう。例えば出力又は風向のような環境条件のような実際の値(実際値)は、基本的に、ある瞬間の(瞬時の)値ないしある瞬間に支配的な(優勢な)条件の値と理解されるべきである。
【0014】
この相関係数は所定の動作点(複数)に対して記録されるが、その限りでは、この1つの基準風力発電装置と第1の風力発電装置の間の1つの相関係数のみならず、複数の、とりわけ多数の相関係数が使用される。原理的には、基準風力発電装置の出力と第1の風力発電装置の出力の間の(1つの)相関は、例えば1次又はより高次の関数によるように、1つの係数によるのとは異なるようにして記述(規定)することも可能である。尤も、複数の係数の使用は比較的簡単な解決策である。基準風力発電装置のその都度の実際の出力からの第1の風力発電装置の期待出力の計算(決定)の精度(正確性)は、相応に多くの状況に対して使用されかつ相応に予め記録される相応に多数の係数の決定及び使用によって可能になる。
【0015】
従って、本発明は、逸失エネルギの検出(決定)にも、そのために必要とされる相関係数(複数)の検出(決定)及びそれによる相応のデータベースの作成にも関係する。
【0016】
有利には、相関法則と称されることもあるこれらの相関、とりわけ相関係数は、境界条件に依存して検出(決定)され、相応に記憶される。その際、第1の風力発電装置と、1つの更なる基準風力発電装置又は複数の更なる基準風力発電装置の間の相関が記録され得る。
【0017】
一実施形態によれば、夫々の動作点の出力の絶対値が、とりわけ風速又は風向に依存して、記録される。記録は、好ましくは個々の風力発電装置に対して行われるが、代替的に又は追加的に(その代わりに又はそれに追加して)、ウインドパーク全体に対する1つの値を記録することも可能である。有利には、これらの値は、個々の風力発電装置に対する相関係数(複数)と一緒に記録され、(1つの)データベースに記憶される。これらの絶対値は、基準風力発電装置が有効に利用可能でない場合、とりわけ、ウインドパークの全ての風力発電装置が絞り運転又は運転停止されている場合に、利用される。これは、例えば給電網管理者による(予)設定に応じてウインドパーク全体の供給出力が低減される場合に当てはまる。そのような又は似たような場合に、ウインドパークの個々の風力発電装置に対して、期待出力が、風速及び風向に依存して、データベースから読み出される(選出される)。その期待出力から、関連する風力発電装置の期待エネルギ(予想ないし見込エネルギ)及び更にはウインドパーク全体の期待エネルギも計算することができる。
【0018】
風向及び風速に依存する実際の出力値の具体的測定及び記憶によって、期待出力を決定するための極めて正確でかつ良好に再現可能な基礎が生成される。複雑なモデルの作成及び使用は回避される。ウインドパークの全期待出力を決定するために、例えば、個々の風力発電装置の期待出力が合算されるか、或いは、例えば、ウインドパークの記憶された全期待出力がデータベースから読み出される。風力及び風向は、例えば、ウインドパークの中心点において、とりわけ測定マストにおいて、検出される。更に、相関係数と関連して記載されている全ての観点、説明及び実施形態は、適用可能である限り、絶対的な出力値(出力の絶対値)の記憶及び使用に対しても妥当する。
【0019】
有利には、ウインドパークの全ての風力発電装置の間の相関が記録される。記憶の際には、複数の基準風力発電装置が使用される場合、夫々の相関について、関連する基準風力発電装置が一緒に記憶される。複数の基準風力発電装置は、例えば、更なる境界条件に応じて少なくとも1つの特に良好に好適な基準風力発電装置を選択するために使用することができ、及び/又は、複数の基準風力発電装置は、期待出力を冗長的に決定し、それにより誤差最小化のために対比を行うために使用することができる。更に、複数の基準風力発電装置は、不測の原因のために1つの基準風力発電装置が故障(停止)した場合であっても、第1の風力発電装置の期待出力を決定可能にするために使用することができる。
【0020】
有利には、例えば風向のような境界条件に依存して1つの基準風力発電装置の選択が実行される。かくして、場合によっては風向に依存して、1つの基準風力発電装置が、第1の風力発電装置即ち検査されるべき風力発電装置の挙動を多かれ少なかれ代表することができる。例えば第1の風力発電装置と選択された基準風力発電装置との間に障害がある場合、このことにより、風が基準風力発電装置から第1の風力発電装置に又はその反対方向に吹くとき、これら2つの風力発電装置の挙動は少なくとも部分的に連携が解除され得る。尤も、風の状態がこれら2つの風力発電装置が風向から見て隣り合って位置するような場合には、そのような障害の影響は小さい。
【0021】
これに関し、基準風力発電装置は、当業者には理解できることであるが、第1の風力発電装置の付近に設置されている基準風力発電装置である。この場合、この付近とは、基準風力発電装置の挙動が依然として第1の風力発電装置に対しその挙動において十分な関連性を期待させる限り、数百メートル、更には1キロないし数キロメートルの距離に相当し得る。これは、例えば地形(敷地)のような具体的状況に依存し得る。地形(敷地)が一定(平坦)であるほど及び地形(敷地)の障害が少ないほど、更に離れて設置されている基準風力発電装置もまた依然として第1の風力発電装置に対し十分な関連性を有することが、一層期待することができる。
【0022】
有利には、基準風力発電装置の実際の出力、実際の風向及び/又は実際の風速は、夫々(その都度)、境界条件を形成し、これに依存して相関が記録、記憶される。次に、(本発明の)方法を相関係数(複数)との関連において説明する。その説明は、原理的には、他の相関にも適用可能である。有利には、実際の風向及び実際の風速は、夫々(その都度)、境界条件を形成する。それに従って、第1の風力発電装置と関連する基準風力発電装置の間の相関係数が、風向に依存しても、風速に依存しても記録される。かくして、例えば、風速が7m/sで風向が南向きの場合、1.2の相関係数が得られ、これに対し、風速が同じでも風向が北向きの場合、1.4の相関係数が得られる。更なる一例を挙げるために、風速が、同じ風向でも6m/sしかない場合、相関係数は例えば1となり得るであろう。これらの値は全て記録され、データベースに記憶される。夫々境界条件としての風向及び風速を有する例では、個々の基準風力発電装置に対し2次元のデータベースフィールドが形成されるものとする。これらの値が複数の基準風力発電装置に対して記録される場合、比喩的に言えば、更なる変数として基準風力発電装置の識別(Identifizierung)を有する3次元のデータフィールドが形成される。記憶の種類ないしデータベースの構築は、ウインドパークの全ての風力発電装置に対し相関係数(複数)が記録され、(1つの)マトリックスに記憶され、境界条件の個々の値に対しそのようなマトリックスが記録されるように構成することも可能である。
【0023】
代替的に又は追加的に、基準風力発電装置の実際の出力を境界条件として使用することも可能である。この出力は、例えば風速の代わりに使用することが可能であろう。それに従って、まず、境界条件として、支配的な(優勢な)風向、例えば北風と、支配的な出力(実際の出力)、例えば1MW、が決定される(求められる)であろう。次いで、第1の風力発電装置の出力と基準風力発電装置(の出力)との間の関連性が決定され(求められ)、これらの境界条件、即ち北風及び1MWの生成出力に対し、この第1の基準風力発電装置のためのデータベースに記憶される。ここで、第1の風力発電装置が例えば保守点検のために停止される場合、その期待出力が決定され得る。このために、境界条件に対する相関係数、即ち例えば風速7m/sの北風に対する相関係数がデータベースから読み出されるか、或いは、その代わりに、データベースないしデータベースセットが相応に記憶ないし構成されている場合には、北風及び生成出力1MWの境界条件に対する相関係数がデータベースから読み出される。この相関係数は、次いで、記述した両方の場合において、基準風力発電装置の生成出力と乗算され、第1の風力発電装置の期待出力が決定される(求められる)。
【0024】
従って、記述した第2の例では、基準風力発電装置の瞬間の(瞬時の)生成出力は、2つの機能を有する。即ち、まず、関連する(割り当てられた)相関係数をデータベースから読み出すために使用され、次いで、該読み出された相関係数を用いて第1の風力発電装置の期待出力を計算する(求める)ために使用される。
【0025】
有利には、基準風力発電装置の実際の出力(これについては境界条件として使用される場合に限るが)、実際の風向及び/又は実際の風速は、複数の離散的ないし不連続な(別々の)領域に分割される。これにより、データベースの大きさを限定することができる。例えば基準風力発電装置の出力がその定格出力に関し1%の幅で分割される場合、定格出力が2MWの風力発電装置に対し、20kW領域ないし幅の分割が生成される。尤も、これは、出力が境界条件として使用される限りにおいて、即ち、出力が相関係数をデータベースに記憶ないしデータベースから読み出すために使用される限りにおいてであるが、出力のみに関係する。しかしながら、第1の風力発電装置の期待出力を具体的に計算するためには、相関係数は、複数の離散的な領域に分割されていない実際の(現実の)出力と乗算される。勿論、とりわけ複数の離散的な領域が出力測定の精度(正確性)の範囲内にある場合には、複数の離散的な領域に分割された出力との乗算を行うことも可能であろう。
【0026】
風速は例えば0.1m/s幅ないし領域に分割することができ、風向は例えば30°のセクタ(扇形領域ないし角度範囲)に分割することができる。
【0027】
例えば5m/sの始動風速ないしいわゆる「カットイン」風速と25m/sの定格風速を有する基準風力発電装置に対し、風向の離散化が30°セクタで行われかつ風速の離散化が0.1m/s幅で行われる場合、360°/30°=12風向セクタ掛ける(20m/s)/(0.1m/s)=200風速幅の(1つの)データフィールド、従って、2400フィールドを有する(1つの)データフィールド、即ち、2400の相関係数が、この例の基準風力発電装置に対して得られる。
【0028】
有利には、相関係数は定常運転中に記録、記憶され、それによって、データベースは連続的に(ないし順次:sukssesiv)相関係数で満たされる。任意的に及び/又は必要に応じ、測定によってはまだ決定できなかった相関係数を、既に存在する相関係数から計算すること、とりわけ内挿法(補間法)または外挿法(補外法)によって求めることも可能である。相関係数として他の相関法則、例えば、1次の相関関数を使用する場合にも、内挿法又は外挿法を実行することが可能であり、例えばそのような相関関数の係数の内挿又は外挿によって実行することができる。従って、相関係数を決定する(求める)必要があるにも拘らず第1の風力発電装置及び少なくとも1つの基準風力発電装置を運転することが提案される。その際、必然的に、そもそも風力発電装置が運転される限りにおいてではあるが、(1つの)所定の動作点、従って、風向及び風速のような(複数の)相応の境界条件が生成される。これに関し、(1つの)相関係数が記録されかつ(複数の)支配的な境界条件を考慮に入れてデータベースに記憶される。有利には、それは、ウインドパークの全ての風力発電装置に対し相互に実行される。動作点従って境界条件が変化すれば、新たに(1つの)相関係数が計算され(求められ)、新たな境界条件の下で従ってデータベースの異なるアドレスに記憶される。
【0029】
かくして、データベースは、風力発電装置が既に運転されていたときの境界条件に対する相関係数のみを含む。ここで、第1の風力発電装置がシャットダウンされ、従前は相関係数が記録されていなかった基準風力発電装置についての(1つの)動作点が生成される場合、これは、既に記憶されている隣接する相関係数から、即ち、類似する境界条件(複数)について既に記録されている相関係数(複数)から、計算する(求める)ことができる。例えば、0から30°セクタの風向及び10m/sの風速に対する相関係数は、2つの相関係数から内挿法によって求めることができるが、ここで、該2つの相関係数の一方は、9.9m/sの風速で330から360°の風向セクタに対し記録されたものであり、他方は、10.1m/sの風速で30から60°の風向セクタに対し記録されたものである。これは、内挿法による計算のための単純な一例に過ぎない。同様に、欠落している相関係数の計算ないし見積もり(評価)のために複数の相関係数を考慮することができる。
【0030】
例えば、とりわけウインドパークの運転の初年度において、関連する風力発電装置の運転がまだ長期間にわたっていないために、まだ多数の相関係数が記録されていない場合、逸失エネルギの計算は、例えば過去一年のような過去の期間について遡及的に実行することができる。このために、基準風力発電装置の生成出力のデータが記憶される。次いで、重要な期間の終了時に、記憶された出力データ及びそのときまでにその間に検出された(求められた)相関係数から、逸失エネルギを計算することができる。これは、そのときまでにより多くの相関係数が記録でき、そのため、必要な内挿又は外挿をより少なくすることができるないし全く行わなくてもよいという利点を有する。
【0031】
更なる境界条件として、例えば、温度、気圧、湿度及び空気の密度等の環境(周囲)条件を記録することができる。部分的に物理的に関連性を有するこれらの例示した境界条件は、風力発電装置の運転に影響を及し、関連する相関係数に相応に反映され得る。複数の境界条件を考慮することにより、(複数の)相関係数のための多次元のデータベースを得ることができる。
【0032】
更に、逸失エネルギを求めるための本発明の方法は、境界条件の変動に関し、とりわけ風速のような測定(値)の不正確性に関し、許容性がある。つまり、提案される方法は、少なくとも2段階コンセプトを有する。
【0033】
第1段階では、相関係数は境界条件に依存して選択される。境界条件を考慮することによって、この相関係数は相当に正確でかつとりわけ信頼性のある相関を再現する。
【0034】
第2段階では、相応の相関係数が基準風力発電装置の出力と乗算される。これによって、空気密度のような影響要素(複数)を、その記録を要することなく、考慮することができる。例えば、空気密度は、相関係数の選択の際に境界条件として考慮されなくても、間接的に、明確な(具体的な)測定(値)なしで、基準風力発電装置の出力に入り込む。空気密度の場合、風力発電装置の相応に大きい出力が得られるが、これは、密度が大きい空気はより多くの運動エネルギを含むからである。従って、空気密度非依存性の相関係数との乗算によって、基準風力発電装置の出力がより大きければ、第1の風力発電装置の期待出力の計算値もより大きくなる。風速測定(値)及び第1の風力発電装置の出力特性曲線によって第1の風力発電装置の期待出力を決定する(求める)場合、空気密度は、この例を続けるために、考慮されないままであろう。それは、相応に誤って計算された第1の風力発電装置の期待出力を生じるであろう。
【0035】
また、本発明の方法は、例えば、風速の不正確な測定(値)に対しても許容性がある。このことは、まさに風速こそが測定が困難であり、大きな誤差の影響を受けるという理由からして既に重要である。尤も、提案される方法では、風速は、そもそも関係がある場合にのみ、相関係数の決定に関与する。測定された風速が例えば実際の風速を凡そ10%超過していれば、これは、一方では、関連する相関係数の決定および対応する記憶に影響を及ぼすが、他方では、風速依存的に実行される場合には、相関係数の再読み出しにも反映する。しかしながら、それによって、この例示したシステム的誤差は再び際立つ。換言すれば、この場合、風速は、基礎をなす動作点のおおまかな再認識にのみ役立つ。風速の絶対値の誤りの程度は、当該値が再び再現された限りでは、反映されない。
【0036】
風速の測定の際に偶然誤差が生じると、尤もこれは通常大規模に予期されるべきものではないが、これにより、誤った相関係数が読み出され得る。しかしながら、この場合、その変動の程度が風速自体と比べてより小さい、類似の風速の少なくとも1つの相関係数が読み出されるであろう。従って、この場合にも、本発明の方法は誤差許容性を示す。
【0037】
第1の風力発電装置の停止(運転停止)の場合についてこれまでに説明した方法は、原理的に、第1の風力発電装置の絞り(絞り運転:Drosselung)の場合にも適用することができる。例えば騒音低減のために、第1の風力発電装置が絞り(抑制ないし減速)運転される一方で、基準風力発電装置は、例えば、第1の風力発電装置と比べて、より小型であるとか、原理的により低騒音的に構成されているとか、住宅地からより遠方に設置されているというような理由で、絞り運転されない場合、上述した態様で、第1の風力発電装置の期待出力を非絞り運転において決定する(求める)ことができる。逸失エネルギは、絞り運転時の出力と非絞り運転時の計算された期待出力の差から得られる。完全を期すために、更に以下を指摘する。即ち、逸失エネルギは、関連する期間にわたって積分された逸失出力から得られることは当業者には明らかである。これは、最も単純なないし単純化された場合では、逸失出力と相応の期間の積を意味する。
【0038】
有利には、第1の風力発電装置の期待出力を決定するために、複数の基準風力発電装置を使用することが提案される。相関係数又は他の相関を検出する際、既述のとおり、基準風力発電装置の夫々について個別に実行することにより、基準風力発電装置の夫々について1つのデータセットを生成することができる。対象となる全ての風力発電装置間の相関を同時に記録し、その都度1つのマトリックスに書き込むことも可能である。そして、第1の風力発電装置の停止時にその期待出力が計算される場合、これはその都度基準風力発電装置(複数)の夫々を用いて実行することができるが、このために、その都度1つの相関係数がこの基準風力発電装置のために読み出され、その現在の(瞬時の)出力と乗算されて、第1の風力発電装置の期待出力を計算することができる。これに関し、理想的場合では、個々の基準風力発電装置から、第1の風力発電装置の同じ期待出力が生成される。この理想的結果が達成される場合、期待出力の計算の質の高さが保証される。尤も、偏差(ずれ)が生成される場合は、複数回、即ち冗長的に決定された(求められた)期待出力を使用し、これにより、ただ1つの期待出力を計算することも可能である。このために、例えば、決定した(求められた)全ての出力を加算し、その総数で除算することにより、単純な平均値を形成することも可能である。尤も、場合によっては、1つの基準風力発電装置を重要性に応じて(als relevanter)分類(等級分け)することができ、それによって求められた値を、重みを付けることによって、より強く考慮することも可能である。他の可能なオプションの1つは、最小誤差二乗法を使用することである。即ち、個別に決定された期待出力についての夫々の偏差(誤差)の二乗和を最小値にするものである共通の期待出力値が決定される。
【0039】
有利には、実際の風向及び/又は実際の風速は、基準風力発電装置において、第1の風力発電装置において及び/又は他の測定点、とりわけ測定マストにおいて検出される。第1の風力発電装置が停止している場合、それにも拘らず、例えばナセル風速計の評価のような測定技術の一部が依然として作動していることがあり、それによって、場合により、第1の風力発電装置の近似的な風速が決定され(求められ)、更なる方法のために使用することも可能である。しかしながら、基準風力発電装置の風速を使用するのが有利である。なぜなら、それによって、この基準風力発電装置の出力について大きな相関を期待することができるからである。その際、相関係数を検出し、それらを読み出す場合には可及的に夫々同じ場所で測定が行われるべきであろう。測定マストの使用は、この場合しばしばより良い風速測定が可能であるので、好都合であり得る。とりわけ、風況(観測)マストにおける風速測定は、ロータブレードによる短時間の影形成(Abschattung)によって妨害されないが、このような妨害は運転中の風力発電装置のナセル風速計の場合に通常見られるものである。更に、測定マストは、複数の風力発電装置が基準風力発電装置として使用される場合、測定のための中性点となり得る。有利には、ウインドパークの内部に及びウインドパークのために設置されかつウインドパークを全体として代表する測定値を供給する測定マストを使用することができる。付近にある気象観測所の値の使用は、それが直接的な値としてであれ、測定マスト又は風力発電装置によって測定された風速の調整(平衡化)のためであれ、有利であり、測定結果の質を改善することができる。
【0040】
本発明により、風力発電装置は、相関法則とりわけ相関係数を検出するための上述の方法及び/又は逸失エネルギを決定する(求める)ための方法を備える。
【0041】
本発明により、更に、上述の方法の少なくとも1つを備えたウインドパークが提案される。そのようなウインドパークにおいては、尤もそのようなものには限らないが、例えばSCADA(監視制御システム)を介した複数の風力発電装置間でのデータ交換が行われるよう構成することもできる。そのようなデータ交換システムは、上述の方法に不可欠なデータを交換するために使用することも可能である。
【0042】
従って、1つの解決策、即ち逸失エネルギを計算することが可能な風力発電装置ないしウインドパークとしての相応の方法が提案される。このため、停止している又は絞り運転している風力発電装置の出力が計算され、そして、基本となる時間にわたって、逸失エネルギ、即ち計算に応じて生成され、供給され、相応に補償されたであろうエネルギを決定する(求める)ことができる。これは、本質的には、補償を期待する者の利益のためにも、そのような補償を行わなければならない者の利益のためにも可及的適正に考慮するために、相応に正確に決定されるべき仮想の出力ないし仮想のエネルギである。
【0043】
従って、風力発電装置の生産ベース利用可能性を計算することができる。そのような生産ベース利用可能性は、これは対応する英語の“production based availability”に基づいてPBAとして略称されることもあるが、期待生産エネルギ(“expected energy production”, EEP)で除した測定生産エネルギ(“measured energy production”, MEP)の商としてしばしば表され、その基礎として使用される期間は1年又は1ヶ月である。生産ベース利用可能性PBAのために、例えば、以下の式による計算が問題になる:

PBA=MEP/EEP
【0044】
PBAは異なるように定義することも可能であり、それに応じて異なる式を使用することも可能である。更に、上式のパラメータも異なるように定義することも可能である。以下に、上式のパラメータの可能なオプションの1つを説明する。
【0045】
1年に現実に(実際に)生産されたエネルギ(MEP)は、一年にわたって、例えば積算電力計(Stromzaehler)ないし電力量計(Energiezaehler)のような相応の測定ユニットによって記録することができる。生産エネルギのそのような測定は、通常、風力発電装置において実行されるよう構成され、データにアクセス可能に構成される。
【0046】
期待エネルギ生産、即ち風力から電気エネルギへの期待される変換(EEP)は、現実に生産されたエネルギ(MEP)と逸失エネルギの和であるが、この逸失エネルギの計算ないし決定は本発明に応じて実行され、とりわけ改善される。即ち、本発明に応じ、出力電力(Leistungsausgaenge)がとりわけウインドパークの複数の風力発電装置間で相関される方法が提案される。好ましい一変形形態はマトリックスを形成することであるが、このマトリックスは、このために考慮される個々の風力発電装置間の、とりわけウインドパークの個々の風力発電装置間の夫々1つの相関係数を含む。そのようなマトリックスを風力発電装置について以下に具体的に例示するが、該風力発電装置はこのマトリックスにおいてはWEC1、WEC2、WEC3、WEC4〜WECnとして示されている。記載されている値は単なる一例である。
【0047】
表1
【0048】
このマトリックスは、ウインドパークの基準生産相関とみなすことができる。このマトリックスは、例えば、8m/sの風速及び30°の風向に対する(相関)係数を含むが、これは、例えば、0〜30°の領域を示すことができる。更に、他の基準風力発電装置もまた停止又は絞り運転されているときに場合によって使用され得る絶対値が含まれている。
【0049】
ある(1つの)風力発電装置が(運転)停止又は絞り運転されている場合、その期待出力、従って期待生成エネルギは、相関係数を介して、他の風力発電装置(複数)のうちの1つの風力発電装置の少なくとも1つの現実の(実際の)出力ないし現実の(実際の)エネルギから計算する(求める)ことができる。
【0050】
定められた期間の終了時に、例えば1年毎又は1月毎に、生産ベース利用可能性(PBA)を計算する(求める)ことができる。有利には、基準データとして、非絞り運転時に記録されたそのようなデータのみが使用される。ウインドパークが非絞り運転で運転された時間が長いほど、尤もこの場合その間にそのような状態ではなかった期間もあり得るが、データベース(Datenbasis)は、より完全で、場合によってはより良好なものであり得る。
【0051】
上掲の表は、更に、種々異なる風向及び種々異なる風速又は更には他の境界条件について記録することも可能であり、かくして、(1つの)ウインドパーク又は他の風力発電装置集合体について、多くのそのような表が存在し又は一緒に1つのデータベースを形成する。
【0052】
以下に、本発明の種々の実施例を添付の図面を参照して説明する。なお、特許請求の範囲に付される図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】既知の風力発電装置の一例。
図2】相関係数(Korrelationskoeffizienten)を検出する(求める)ためのフローチャートの一例。
図3】逸失エネルギを検出する(求める)ためのフローチャートの一例。
【実施例】
【0054】
図2に応じて、複数の風力発電装置を互いに関連付けるための相関パラメータが記録される。とりわけ、これは、(1つの)ウインドパークの幾つかの又は全ての風力発電装置の相関に向けられている。測定ブロック200においては、複数の風力発電装置の夫々の出力が測定される。これは、通常、本来個々の風力発電装置において利用可能な出力(電力)が後続の工程のために使用ないし提供されることを意味する。出力(電力)の、更には、交換されるべき(相互に伝送されるべき)不可欠な更なるデータのこの提供は、例えばいわゆるSCADAシステムを介して実行することができる。
【0055】
計算ブロック202においては、測定ブロック200において夫々記録された出力間の相関係数が計算される(求められる)。そのための式は以下の通りである:

Kij=Pi/Pj
【0056】
係数Kijは風力発電装置iの出力Piと風力発電装置jの出力Pjの間の相関を表す。添え字i及びjは整数の運転(動作)変数である。
【0057】
次に、そのようにして計算された(求められた)相関係数Kijは記憶ブロック204における次の工程でマトリックスに記憶される。このマトリックスは例えば表1に相当する。
【0058】
ブロック200、202及び204に応じたこの単純化されたフローでは、ウインドパークのすべての風力発電装置間のすべての相関係数は、夫々同じ境界条件において記録及び記憶される。条件に応じて、風向及び風速のような夫々の境界条件と関連付けられている相応のマトリックスが選択される。この概略的に記載されたフローは、最初に、全ての風力発電装置が正常運転で作動すること、即ち、非絞り運転で作動することを前提としている。場合によっては、絞り運転された風力発電装置も考慮することも可能であるが、或いは、絞り運転された風力発電装置の出力は考慮されず、それに応じて関連する相関係数も計算されない。この場合、マトリックスの相応の記憶領域は空のままである。
【0059】
繰り返しブロック206を介して、上述の方法は順次(引き続き)繰り返される。このために、例えば繰り返し時間Tを設定することができ、この繰り返し時間Tは例えば10分間とすることができる。この場合、図2に示したプロセスは10分毎に実行されるであろう。
【0060】
繰り返しの際に、1つの相関係数又は複数の相関係数が決定される(求められる)が、それらに対して既に値が記憶されている場合、その都度新たに決定される相関係数は、放棄することも可能であり、その代わりに既存の相関係数を置換することも可能であり、或いは、例えばこの相関係数即ちこの記憶領域のそれまでに記録されていた全ての値を平均化(平均値形成)することによって、記憶されていた相関係数を改善することも可能である。この場合、例えば最後(最近)の10個の値のような幾つかの値のみを考慮し、相応に平均値を形成することも可能である。
【0061】
図3は、最初に、2つの風力発電装置のみが即ち1つの基準風力発電装置及び1つの第1の風力発電装置が考慮される(本発明の)方法の一例を示す。図3の方法は、ウインドパークの全ての風力発電装置が考慮されるまで、異なる複数の風力発電装置ないし風力発電装置ペアに拡張して適用することができる。この場合、図示の方法は、異なる複数の風力発電装置に対し並行的に複数回実行することも可能である。この場合にも、計算及び/又は不可欠のデータ伝送は、SCADAによって実行することができる。
【0062】
図3は、最初に、第1の照会ブロック300を示しているが、このブロックでは、選択された基準風力発電装置が正常運転で即ち非絞り運転で作動しているか否かが検査される。否の場合は、交換ブロック302に従って、他の風力発電装置を基準風力発電装置として選択することができる。この最も近い風力発電装置を用いて、第1の照会ブロック300において再び開始される。
【0063】
更に、この今しがた検査された、正常運転で作動していない、とりわけ運転停止の状態にある基準風力発電装置を、第1の風力発電装置として選択することも可能である。このことは、選択ブロック304によって示されている。ここで、第1の風力発電装置とは、そのために逸失出力(電力)ないし逸失エネルギが決定されるべき(求められるべき)、即ちそのために期待出力(電力)ないし期待エネルギが計算されるべき(求められるべき)風力発電装置である。
【0064】
選択された基準風力発電装置が非絞り運転で作動していると、第1の照会ブロック300は第2の照会ブロック306に分岐(移行)する。第2の照会ブロック306は、基本的に、第1の照会ブロック300が検査したのと同じことを検査するが、その検査は第1の風力発電装置に対して行われる。第1の風力発電装置が非絞り運転で即ち正常運転で作動している場合、第2の照会ブロック306は更に計算ブロック308に分岐する。計算ブロック308では、相関係数Kは、第1の風力発電装置の出力の係数と基準風力発電装置の出力の係数から計算される。これに続く記憶ブロック310では、この相関係数Kがデータベースに記憶される。その際、有利には、支配的な風向及び風速のような境界条件が一緒に記録される。そして、この方法は、記憶ブロック310の次に、再び第2の照会ブロック306に戻り、ブロック306、308及び310が新たに、場合によっては例えば10分間の時間遅延の後に、実行される。この方法がこれら3つのブロック306、308及び310のこのループにおいて実行されているとき、基本的に、相関係数Kの獲得は、これら2つの風力発電装置即ち基準風力発電装置及び第1の風力発電装置のために特別に実行される。従って、(これらの)風力発電装置は正常運転の状態にあり、更に順次非正常運転のために必要とされるデータベースを作成する。
【0065】
第2の照会ブロック306において、第1の風力発電装置が正常運転の状態にないこと、即ち絞り運転されて作動していること又は(運転)停止状態にあることが確認されると、読み取りブロック312に分岐する。このブロックでは、とりわけ支配的な風向及び風速のような境界条件を考慮して、予め作成されたデータベースに従って相関係数Kが読み出される。関連する相関係数がデータベースに記録されていない場合、該相関係数は、場合によっては、他の既存の複数の相関係数から内挿法によって得ることができる。
【0066】
次いで、決定ブロック314において、読み出された相関係数Kを用いることにより、基準風力発電装置の基準出力PRefから第1の風力発電装置の期待出力を決定する(求める)ことができる。この(期待)出力はこの実施例ではP1Sと称する。
【0067】
次いで、エネルギ決定ブロック316において、見込みないし期待出力P1Sを相応の時間について積分することによって対応するエネルギの決定が行われる。この実施例では、単純化のために、関連する時間間隔に対し出力P1Sが一定であることを前提としているので、エネルギは、P1Sと対応する時間値Tの積で計算される(求められる)。このエネルギは予め計算されている(求められている)エネルギEに加算され、かくして、関連する期待エネルギを例えば1月又は1年のような観測期間にわたって合計することができる。
【0068】
エネルギ決定ブロック316の時間係数Tは、図2の繰り返しブロック206の時間係数Tに対応し得る。尤も、これは必須の条件ではない。とりわけ、10分毎に上述の工程が繰り返され、見込み出力が決定ブロック314において決定されることが可能である。尤も、その際、第1の風力発電装置は、場合によっては、例えば5分後にようやく正常運転でなくなるということもあり得る。このような情報は、図示の方法によって利用可能であり、この実施例では、繰り返し周期が10分であるにも拘らず、エネルギの計算は5分の期間にのみ基づいて行われるであろう。
【0069】
エネルギがエネルギ決定ブロック316において決定ないし補正された後、上述の方法は、再び第2の照会ブロック306において既述のように開始される。
図1
図2
図3