特許第6055006号(P6055006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055006
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】分光装置及び分光方法並びに分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/18 20060101AFI20161219BHJP
   G01J 4/04 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   G01J3/18
   G01J4/04 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-47629(P2015-47629)
(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公開番号】特開2016-166841(P2016-166841A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2015年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】津田 幸夫
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−323374(JP,A)
【文献】 特開2012−163534(JP,A)
【文献】 特開2012−222747(JP,A)
【文献】 特開平05−281041(JP,A)
【文献】 特開2013−160701(JP,A)
【文献】 特開2003−083810(JP,A)
【文献】 特開2006−042234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00−3/52
G01J 4/00−4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折格子を用いて入力信号に含まれる特定波長の成分を分離する分光装置であって、
前記入力信号を偏波方向の異なる第1の偏光及び第2の偏光に分離する第1のPBS(11)と、
偏波方向が前記回折格子の溝に対して第1の一定角度傾斜する前記第1の偏光を透過するとともに、偏波方向が前記第1の一定角度に直交する第2の一定角度である偏光を反射する第2のPBS(12P)と、
偏波方向が前記回折格子の溝に対して前記第1の一定角度傾斜する前記第2の偏光を透過するとともに、偏波方向が前記第2の一定角度である偏光を反射する第3のPBS(12S)と、
前記第2のPBSから入射された前記第1の偏光を、前記回折格子の溝に対する特定の偏波方向に回転させて第1の光路に出射するとともに、前記第1の光路側から入射された光の偏波方向を前記第2の一定角度に回転させて前記第2のPBSに出射する第1の偏波回転部(13P)と、
前記第3のPBSから入射された前記第2の偏光を、前記回折格子の溝に対する前記特定の偏波方向に回転させて第2の光路に出射するとともに、前記第2の光路側から入射された光の偏波方向を前記第2の一定角度に回転させて前記第3のPBSに出射する第2の偏波回転部(13S)と、
前記第1の光路及び前記第2の光路上に配置され、前記第1の偏波回転部から入射された前記第1の偏光及び前記第2の偏波回転部から入射された前記第2の偏光を、波長ごとに異なる方向に回折する回折格子(15)と、
前記回折格子で回折された前記特定波長の偏光を、前記第1の光路又は前記第2の光路に折り返す折り返し部(16)と、
を備え、
前記第2のPBSは、前記回折格子で回折後に前記第1の偏波回転部を通過して偏波方向が前記第2の一定角度となった前記特定波長の偏光を反射することによって、当該特定波長の偏光を前記第1の偏光から分離し、
前記第3のPBSは、前記回折格子で回折後に前記第2の偏波回転部を通過して偏波方向が前記第2の一定角度となった前記特定波長の偏光を反射することによって、当該特定波長の偏光を前記第2の偏光から分離する、
分光装置。
【請求項2】
回折格子を用いて入力信号に含まれる特定波長の成分を分離する分光装置であって、
前記入力信号を偏波方向の異なる第1の偏光及び第2の偏光に分離する第1のPBS(11)と、
偏波方向が前記回折格子の溝に対して第1の一定角度傾斜する前記第1の偏光を反射するとともに、偏波方向が前記第1の一定角度に直交する第2の一定角度である偏光を透過する第2のPBS(12P)と、
偏波方向が前記回折格子の溝に対して前記第1の一定角度傾斜する前記第2の偏光を反射するとともに、偏波方向が前記第2の一定角度である偏光を透過する第3のPBS(12S)と、
前記第2のPBSから入射された前記第1の偏光を、前記回折格子の溝に対する特定の偏波方向に回転させて第1の光路に出射するとともに、前記第1の光路側から入射された光の偏波方向を前記第2の一定角度に回転させて前記第2のPBSに出射する第1の偏波回転部(13P)と、
前記第3のPBSから入射された前記第2の偏光を、前記回折格子の溝に対する前記特定の偏波方向に回転させて第2の光路に出射するとともに、前記第2の光路側から入射された光の偏波方向を前記第2の一定角度に回転させて前記第3のPBSに出射する第2の偏波回転部(13S)と、
前記第1の光路及び前記第2の光路上に配置され、前記第1の偏波回転部から入射された前記第1の偏光及び前記第2の偏波回転部から入射された前記第2の偏光を、波長ごとに異なる方向に回折する回折格子(15)と、
前記回折格子で回折された前記特定波長の偏光を、前記第1の光路又は前記第2の光路に折り返す折り返し部(16)と、
を備え、
前記第2のPBSは、前記回折格子で回折後に前記第1の偏波回転部を通過して偏波方向が前記第2の一定角度となった前記特定波長の偏光を透過することによって、当該特定波長の偏光を前記第1の偏光から分離し、
前記第3のPBSは、前記回折格子で回折後に前記第2の偏波回転部を通過して偏波方向が前記第2の一定角度となった前記特定波長の偏光を透過することによって、当該特定波長の偏光を前記第2の偏光から分離する、
分光装置。
【請求項3】
前記第1の一定角度は45°であり、
前記第2の一定角度は−45°であり、
前記第1の偏波回転部から前記第1の光路に出射される光及び前記第2の偏波回転部から前記第2の光路に出射される光の偏波方向は、同一であり、かつ、前記回折格子の溝に対して平行又は垂直である、
請求項1又は2に記載の分光装置。
【請求項4】
前記折り返し部は、前記第1の光路の前記回折格子で回折された前記特定波長の偏光を前記第2の光路に折り返し、前記第2の光路の前記回折格子で回折された前記特定波長の偏光を前記第1の光路に折り返す、
請求項1から3のいずれかに記載の分光装置。
【請求項5】
前記折り返し部は、前記回折格子から入射された光を偶数回反射して前記第1の光路又は前記第2の光路に折り返す、
請求項1から4のいずれかに記載の分光装置。
【請求項6】
前記第2のPBSで分離された前記特定波長の偏光を受光器に導くGI(Graded−Index)光ファイバを備え、
前記GI光ファイバにおける前記特定波長の偏光の入射端に、前記第2のPBSから出射される前記特定波長の偏光の分散方向に対して垂直なスリットが設けられている、
請求項1から5のいずれかに記載の分光装置。
【請求項7】
前記第1のPBSから入射された前記第1の偏光の偏波方向を前記回折格子の溝に対して前記第1の一定角度傾斜させて前記第2のPBSに出射する第1の偏波保持光ファイバ(22P)と、
前記第1のPBSから入射された前記第2の偏光の偏波方向を前記回折格子の溝に対して前記第1の一定角度傾斜させて前記第3のPBSに出射する第2の偏波保持光ファイバ(22S)と、
を備える、
請求項1から6のいずれかに記載の分光装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の複数の分光装置と、
入力信号を前記複数の分光装置に分配する分配器(24)と、
前記分配器と前記複数の分光装置の間に配置され、前記分光装置に入力される入力信号を、予め定められた偏光状態に設定する光学素子(26)と、
を備える分析装置。
【請求項9】
回折格子を用いて入力信号に含まれる特定波長の成分を分離する分光方法であって、
第1のPBSが、前記入力信号を偏波方向の異なる第1の偏光及び第2の偏光に分離し、
偏波方向が前記回折格子の溝に対して第1の一定角度傾斜する前記第1の偏光を第2のPBSが第1の偏波回転部(13P)に透過し、偏波方向が前記回折格子の溝に対して前記第1の一定角度傾斜する前記第2の偏光を第3のPBSが第2の偏波回転部(13S)に透過し、
第1の偏波回転部(13P)が前記第2のPBSから入射された前記第1の偏光の偏波方向を前記回折格子の溝に対する特定の偏波方向に回転させて第1の光路に出射するとともに、第2の偏波回転部(13S)が前記第3のPBSから入射された前記第2の偏光の偏波方向を前記特定の偏波方向に回転させて第2の光路に出射し、
前記第1の光路及び前記第2の光路上に配置された回折格子(15)が、前記第1の偏光及び前記第2の偏光を、波長ごとに異なる方向に回折し、
折り返し部(16)が、前記回折格子で回折された前記特定波長の偏光を、前記第1の光路又は前記第2の光路に折り返し、
第1の偏波回転部(13P)が前記回折格子で回折された前記特定波長の光の偏波方向を前記第1の一定角度に直交する第2の一定角度に回転させて前記第2のPBSに出射するとともに、第2の偏波回転部(13S)が前記回折格子で回折され前記特定波長の光の偏波方向を前記第2の一定角度に回転させて前記第3のPBSに出射し、
第2のPBSが前記第1の偏波回転部から入射された偏波方向が前記第2の一定角度である前記特定波長の偏光を反射することによって、当該特定波長の偏光を前記第1の偏光から分離し、第3のPBSが前記第2の偏波回転部から入射された前記第2の一定角度である前記特定波長の偏光を反射することによって、当該特定波長の偏光を前記第2の偏光から分離する、
分光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折格子を用いて入力信号に含まれる特定波長の成分を分離する分光装置及び分光方法並びに分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回折格子による光の回折作用を利用して入射光に含まれる各波長成分を選択的に受光する分光装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。回折格子の回折特性は入射光の偏光状態に依存する。この依存性の影響をなくすために、特許文献1の発明は、偏光分離素子21で測定対象の入射光を偏光状態ごとに分離し、偏波変換部22で各偏光の偏光状態を揃えて回折格子27に入射させ、波長選択後の偏光を偏光分離素子21で合波して取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−323374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明は、偏光分離素子21を用いて入射光の分離及び波長選択後の偏光の合波を行っているため、選択波長における偏光状態を検出することはできない。
【0005】
そこで、本発明は、選択波長における偏光状態を検出可能な分光装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る分光装置は、
回折格子を用いて入力信号に含まれる特定波長の成分を分離する分光装置であって、
前記入力信号を偏波方向の異なる第1の偏光及び第2の偏光に分離する第1のPBS(11)と、
偏波方向が前記回折格子の溝に対して第1の一定角度傾斜する前記第1の偏光を透過するとともに、偏波方向が前記第1の一定角度に直交する第2の一定角度である偏光を反射する第2のPBS(12P)と、
偏波方向が前記回折格子の溝に対して前記第1の一定角度傾斜する前記第2の偏光を透過するとともに、偏波方向が前記第2の一定角度である偏光を反射する第3のPBS(12S)と、
前記第2のPBSから入射された前記第1の偏光を、前記回折格子の溝に対する特定の偏波方向に回転させて第1の光路に出射するとともに、前記第1の光路側から入射された光の偏波方向を前記第2の一定角度に回転させて前記第2のPBSに出射する第1の偏波回転部(13P)と、
前記第3のPBSから入射された前記第2の偏光を、前記回折格子の溝に対する前記特定の偏波方向に回転させて第2の光路に出射するとともに、前記第2の光路側から入射された光の偏波方向を前記第2の一定角度に回転させて前記第3のPBSに出射する第2の偏波回転部(13S)と、
前記第1の光路及び前記第2の光路上に配置され、前記第1の偏波回転部から入射された前記第1の偏光及び前記第2の偏波回転部から入射された前記第2の偏光を、波長ごとに異なる方向に回折する回折格子(15)と、
前記回折格子で回折された前記特定波長の偏光を、前記第1の光路又は前記第2の光路に折り返す折り返し部(16)と、
を備え、
前記第2のPBSは、前記回折格子で回折後に前記第1の偏波回転部を通過して偏波方向が前記第2の一定角度となった前記特定波長の偏光を反射することによって、当該特定波長の偏光を前記第1の偏光から分離し、
前記第3のPBSは、前記回折格子で回折後に前記第2の偏波回転部を通過して偏波方向が前記第2の一定角度となった前記特定波長の偏光を反射することによって、当該特定波長の偏光を前記第2の偏光から分離する。
【0007】
本発明に係る分光装置は、
回折格子を用いて入力信号に含まれる特定波長の成分を分離する分光装置であって、
前記入力信号を偏波方向の異なる第1の偏光及び第2の偏光に分離する第1のPBS(11)と、
偏波方向が前記回折格子の溝に対して第1の一定角度傾斜する前記第1の偏光を反射するとともに、偏波方向が前記第1の一定角度に直交する第2の一定角度である偏光を透過する第2のPBS(12P)と、
偏波方向が前記回折格子の溝に対して前記第1の一定角度傾斜する前記第2の偏光を反射するとともに、偏波方向が前記第2の一定角度である偏光を透過する第3のPBS(12S)と、
前記第2のPBSから入射された前記第1の偏光を、前記回折格子の溝に対する特定の偏波方向に回転させて第1の光路に出射するとともに、前記第1の光路側から入射された光の偏波方向を前記第2の一定角度に回転させて前記第2のPBSに出射する第1の偏波回転部(13P)と、
前記第3のPBSから入射された前記第2の偏光を、前記回折格子の溝に対する前記特定の偏波方向に回転させて第2の光路に出射するとともに、前記第2の光路側から入射された光の偏波方向を前記第2の一定角度に回転させて前記第3のPBSに出射する第2の偏波回転部(13S)と、
前記第1の光路及び前記第2の光路上に配置され、前記第1の偏波回転部から入射された前記第1の偏光及び前記第2の偏波回転部から入射された前記第2の偏光を、波長ごとに異なる方向に回折する回折格子(15)と、
前記回折格子で回折された前記特定波長の偏光を、前記第1の光路又は前記第2の光路に折り返す折り返し部(16)と、
を備え、
前記第2のPBSは、前記回折格子で回折後に前記第1の偏波回転部を通過して偏波方向が前記第2の一定角度となった前記特定波長の偏光を透過することによって、当該特定波長の偏光を前記第1の偏光から分離し、
前記第3のPBSは、前記回折格子で回折後に前記第2の偏波回転部を通過して偏波方向が前記第2の一定角度となった前記特定波長の偏光を透過することによって、当該特定波長の偏光を前記第2の偏光から分離する。
【0008】
本発明に係る分光装置では、前記第1の一定角度は45°であり、前記第2の一定角度は−45°であり、前記第1の偏波回転部から前記第1の光路に出射される光及び前記第2の偏波回転部から前記第2の光路に出射される光の偏波方向は、互いに平行であり、かつ、前記回折格子の溝に対して平行又は垂直であってもよい。
【0009】
本発明に係る分光装置では、前記折り返し部は、前記第1の光路の前記回折格子で回折された前記特定波長の偏光を前記第2の光路に折り返し、前記第2の光路の前記回折格子で回折された前記特定波長の偏光を前記第1の光路に折り返してもよい。
【0010】
本発明に係る分光装置では、前記折り返し部は、前記回折格子から入射された光を偶数回反射して前記第1の光路又は前記第2の光路に折り返してもよい。
【0011】
本発明に係る分光装置では、前記第2のPBSで分離された前記特定波長の偏光を受光器に導くGI(Graded−Index)光ファイバを備え、前記GI光ファイバにおける前記特定波長の偏光の入射端に、前記第2のPBSから出射される前記特定波長の偏光の分散方向に対して垂直なスリットが設けられていてもよい。
【0012】
本発明に係る分光装置では、前記第1のPBSから入射された前記第1の偏光の偏波方向を前記回折格子の溝に対して前記第1の一定角度傾斜させて前記第2のPBSに出射する第1の偏波保持光ファイバ(22P)と、前記第1のPBSから入射された前記第2の偏光の偏波方向を前記回折格子の溝に対して前記第1の一定角度傾斜させて前記第3のPBSに出射する第2の偏波保持光ファイバ(22S)と、
を備えていてもよい。
【0013】
本発明に係る分析装置では、本発明に係る複数の分光装置と、入力信号を前記複数の分光装置に分配する分配器(24)と、前記分配器と前記複数の分光装置の間に配置され、前記分光装置に入力される入力信号を、予め定められた偏光状態に設定する光学素子(26)と、を備えていてもよい。
【0014】
本発明に係る分光方法は、
回折格子を用いて入力信号に含まれる特定波長の成分を分離する分光方法であって、
第1のPBSが、前記入力信号を偏波方向の異なる第1の偏光及び第2の偏光に分離し、
偏波方向が前記回折格子の溝に対して第1の一定角度傾斜する前記第1の偏光を第2のPBSが第1の偏波回転部(13P)に透過し、偏波方向が前記回折格子の溝に対して前記第1の一定角度傾斜する前記第2の偏光を第3のPBSが第2の偏波回転部(13S)に透過し、
第1の偏波回転部(13P)が前記第2のPBSから入射された前記第1の偏光の偏波方向を前記回折格子の溝に対する特定の偏波方向に回転させて第1の光路に出射するとともに、第2の偏波回転部(13S)が前記第3のPBSから入射された前記第2の偏光の偏波方向を前記特定の偏波方向に回転させて第2の光路に出射し、
前記第1の光路及び前記第2の光路上に配置された回折格子(15)が、前記第1の偏光及び前記第2の偏光を、波長ごとに異なる方向に回折し、
折り返し部(16)が、前記回折格子で回折された前記特定波長の偏光を、前記第1の光路又は前記第2の光路に折り返し、
第1の偏波回転部(13P)が前記回折格子で回折された前記特定波長の光の偏波方向を前記第1の一定角度に直交する第2の一定角度に回転させて前記第2のPBSに出射するとともに、第2の偏波回転部(13S)が前記回折格子で回折され前記特定波長の光の偏波方向を前記第2の一定角度に回転させて前記第3のPBSに出射し、
第2のPBSが前記第1の偏波回転部から入射された偏波方向が前記第2の一定角度である前記特定波長の偏光を反射することによって、当該特定波長の偏光を前記第1の偏光から分離し、第3のPBSが前記第2の偏波回転部から入射された前記第2の一定角度である前記特定波長の偏光を反射することによって、当該特定波長の偏光を前記第2の偏光から分離する。
【0015】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、選択波長における偏光状態を検出可能な分光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1に係る分光装置の構成の一例を示す。
図2】実施形態1に係る偶数回反射するミラーを用いた分光装置の構成の一例を示す。
図3】偏波保持光ファイバの入射端の構成の一例を示す。
図4】実施形態2に係る分光装置の構成の一例を示す。
図5】クワッドパス構成を用いた実施形態2に係る分光装置の構成の一例を示す。
図6】実施形態3に係る分光装置の構成の一例を示す。
図7】実施形態4に係る第1の分光装置の構成の一例を示す。
図8】実施形態4に係る第2の分光装置の構成の一例を示す。
図9】実施形態5に係る分析装置の構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0019】
(実施形態1)
図1に、本実施形態に係る分光装置の構成の一例を示す。本実施形態に係る分光装置81は、入力信号を、互いに直交する2つの偏光状態ごとに分離するPBS11を備え、分離したそれぞれの光を回折格子15に回折させ、回折後の光を合波させずに個別に取り出す。これによって、本実施形態に係る分光装置81は、選択波長における偏光状態を検出可能にする。本実施形態では、分離する偏光状態が互いに直交するP偏光とS偏光の場合について説明する。
【0020】
具体的には、本実施形態に係る分光装置81は、PBS11、12P及び12S、ファラデー素子13P及び13S、レンズ14P及び14S、回折格子15、並びにミラー16を備える。
【0021】
PBS11は、偏波分離部として機能し、入力信号を偏光状態ごとに分離する。例えば、P偏光とS偏光に分離し、P偏光を偏波保持光ファイバ22Pに入射させ、S偏光を偏波保持光ファイバ22Sに入射させる。偏波保持光ファイバ22Pを伝搬した光はPBS12Pに入射される。偏波保持光ファイバ22Sを伝搬した光はPBS12Sに入射される。このとき、PBS12P及びPBS12Sに入射される光の偏光状態は、回折格子15の溝に対して第1の一定角度傾斜させる。
【0022】
第1の一定角度は、例えば45°である。以下、本実施形態では、第1の一定角度が45°であり、第2の一定角度が第1の一定角度に直交する−45°である場合について説明する。ただし、本発明における第1の一定角度及び第2の一定角度は45°及び−45°に限定されず、PBS12P及び12Sにおいて往路と復路の光が分離可能であればよく、回折格子15の回折効率のよい角度に調整することが好ましい。また、回折格子15に入射する第1の光路L4P及び第2の光路L4Sの偏波方向が同一になればよい。
【0023】
PBS12Pは、第1の偏波出力部として機能し、偏波保持光ファイバ22Pから入射された光をそのまま透過する。PBS12Sは、第2の偏波出力部として機能し、偏波保持光ファイバ22Sから入射された光をそのまま透過する。ファラデー素子13P及び13Sは、それぞれ第1の偏波回転部及び第2の偏波回転部として機能し、PBS12Pから入射された偏光とPBS12Sから入射された偏光の偏波方向を45°回転させる。
【0024】
ファラデー素子13Pは、P偏光を、回折格子15の溝に対する特定の偏波方向に回転させる。ファラデー素子13Sは、S偏光を、回折格子15の溝に対する特定の偏波方向に回転させる。ファラデー素子13Pを通過後の光及びファラデー素子13Sを通過後の光の特定の偏波方向は、回折格子15の回折効率が大きい偏波方向とすることが好ましい。特定の偏波方向は、例えば、回折格子15の溝に対して垂直又は水平な偏波方向である。本実施形態では、第1の一定角度が45°の偏波方向の光をファラデー素子13P及び13Sで45°回転させ、回折格子15の溝に対して垂直な偏波方向にし、回折格子15のS偏光(TM波)を用いるようにしている。
【0025】
レンズ14Pは、ファラデー素子13Pから入射された光を平行光にする。回折格子15は、レンズ14Pから入射された光を回折する。ミラー16は、回折格子15で回折された光を反射する。レンズ14Pからミラー16までは第1の光路L4Pを通る。
【0026】
レンズ14Sは、ファラデー素子13Sから入射された光を平行光にする。回折格子15は、レンズ14Sから入射された光を回折する。ミラー16は、回折格子15で回折された光を反射する。レンズ14Sからミラー16までは第2の光路L4Sを通る。なお、レンズ14Pとファラデー素子13P及びレンズ14Sとファラデー素子13Sの配置は逆でもよい。
【0027】
ここで、本実施形態では、ミラー16は、折り返し部として機能し、入射された光を、入射光の光路に折り返す。例えば、ミラー16は、第1の光路L4Pから入射された光を第1の光路L4Pに折り返し、第2の光路L4Sから入射された光を第2の光路L4Sに折り返す。本実施形態ではミラー16を用いて入射光の光路に折り返す例を示したが、本発明はこれに限定されず、任意の光学素子を用いることができる。特に、図2に示すように、回折格子15から入射された光を偶数回反射するコーナーミラー等のミラー16を用いることが好ましい。
【0028】
回折格子15は、ミラー16から入射した光を回折する。レンズ14Pは、回折格子15で回折された光をPBS12Pに向けて集光する。ファラデー素子13Pは、レンズ14Pから入射された光の偏波方向を−45°回転させる。ここで、本実施形態に係る分光装置81は、レンズ14P、ファラデー素子13P及びPBS12Pを同一の光軸上に配置することができるとともに、光入出射を別々とできるため、収差によるビームの広がりを防ぐことができる。
【0029】
回折格子15は、ミラー16から入射した光を回折する。レンズ14Sは、回折格子15で回折された光をPBS12Sに向けて集光する。ファラデー素子13Sは、レンズ14Sから入射された光の偏波方向を−45°回転させる。ここで、本実施形態に係る分光装置81は、レンズ14S、ファラデー素子13S及びPBS12Sを同一の光軸上に配置することができるとともに、光入出射を別々とできるため、収差によるビームの広がりを防ぐことができる。
【0030】
ここで、ファラデー素子13P及び13Sは、回折格子15の溝に対して垂直であった偏波方向を−45°回転させ、偏波方向を第2の一定角度とする。これにより、第1の光路L4Pから入射された特定波長の偏光はPBS12Pで透過されずに反射され、第2の光路L4Sから入射された特定波長の偏光はPBS12Sで透過されずに反射される。
【0031】
PBS12Pで反射された光は、光ファイバ23Pで受光器18Pに導かれ、受光器18Pで受光される。PBS12Sで反射された光は、光ファイバ23Sで受光器18Sに導かれ、受光器18Sで受光される。
【0032】
ここで、光ファイバ23P及び23Sは、GI(Graded−Index)光ファイバであることが好ましい。この場合、図3に示すように、GI光ファイバ23における光の入射端に、回折格子15にて回折された光のうち、所望の波長成分のみを取り出すために、入射光の分散方向に対して垂直なスリット231が設けられていることが好ましい。スリット231は、PBS12P又は12Sから出射される光の分散方向に対して垂直に設ける。スリット231の幅は任意であるが、例えば10μmとすることができる。
【0033】
GI光ファイバ23に入射される光は、PBS12P又は12Sで反射された光であるため、温度変化等の使用環境の変化により光軸がずれ、S1やS2のように入射位置が変化する場合がある。このような場合においても、スリット幅より広いコア径を有するGI光ファイバを用いることで、PBS12P又は12Sから出射される光をGI光ファイバ23に結合させることができる。
【0034】
受光器18Pは、入力信号に含まれるP偏光のうち、回折格子15で波長選択された光の光強度を測定する。受光器18Sは、入力信号に含まれるS偏光のうち、回折格子15で波長選択された光の光強度を測定する。このため、本実施形態に係る発明は、選択波長における光強度を偏波成分ごとに検出することによって、選択波長における偏光状態を検出することができる。また、本実施形態に係る分光装置81は、回折格子15において選択する波長を掃引することで、スペクトルアナライザとして用いることができる。
【0035】
本実施形態に係る分光装置81は、直交2偏波に分離した入力信号を、ファラデー素子13P及び13Sを用いることで波長選択後の光を分離して取り出す。PBS12P、ファラデー素子13P及びレンズ14Pを第1の光路L4P上に配置することができ、PBS12S、ファラデー素子13S及びレンズ14Sを第2の光路L4S上に配置することができる。このため、ビームをレンズ光軸と一致させることができ、収差増に伴う波長分解能およびダイナミックレンジの悪化を防止することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、ファラデー素子13Pと回折格子15の間にレンズ14Pが配置され、ファラデー素子13Sと回折格子15の間にレンズ14Sが配置される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、レンズに代えて球面ミラーを用いてもよい。
【0037】
(実施形態2)
図4に、実施形態に係る分光装置の構成の一例を示す。本実施形態に係る分光装置82は、ミラー16が光を折り返す光路が実施形態1と異なる。
【0038】
具体的には、ミラー16は、第1の光路L4Pから入射された光を第2の光路L4Sに折り返し、第2の光路L4Sから入射された光を第1の光路L4Pに折り返す。このように、本実施形態に係る分光装置82は、直交2偏波に分離した入力信号を、同一光路且つ逆方向となるよう入力し、ファラデー素子13P及び13Sを用いることで波長選択後の光を分離して取り出す。本実施形態ではミラー16を用いて入射光の光路に折り返す例を示したが、本発明はこれに限定されず、任意の光学素子を用いることができる。
【0039】
PBS11で分離されたP偏光は、往路では第1の光路L4Pを経由し、復路では第2の光路L4Sを経由する。PBS11で分離されたS偏光は、往路では第2の光路L4Sを経由し、復路では第1の光路L4Pを経由する。このように、本実施形態に係る分光装置82は、PBS11で分離されたP偏光及びS偏光が共通の光学素子を通過するため、偏光状態を検出する際における光学素子のばらつきの影響を少なくすることができる。
【0040】
回折格子15をリットマン配置とし、回折格子15に回折させる回数はクワッドパス構成であることが好ましい。図5に、クワッドパス構成を用いた分光装置の構成の一例を示す。クワッドパス構成は、PBS11及びPBS12を透過した光を、ファラデー素子13P,13Sを通し、レンズ14P,14Sで平行光とし、回折格子15に入射し、第1のコーナーミラー16−1で反射した光を再び回折格子15に入射した光の回折光を第2のコーナーミラー16−2で反射させ、再び回折格子15に入射させ、再びコーナーミラー16−1で反射させて再び回折格子15に入射させ、その回折光をレンズ14P,14Sでファラデー素子13P,13Sを介してPBS12P,12Sに集光することで、実現する。
【0041】
これにより、高分解能を維持しつつ分光装置の大型化を防ぐことができる。リットマン配置は、出射角が大きく、S偏光の回折効率が高い一方、P偏光の回折効率は低い。このため、安定な測定を実現するためには、PDLの解消は非常に重要となる。
【0042】
(実施形態3)
図6に、本実施形態に係る分光装置の構成の一例を示す。本実施形態に係る分光装置83は、実施形態1におけるPBS12P、12Sへの光の入力側と出力側とを逆に構成したものである。
【0043】
PBS12Pは、第1の偏波出力部として機能し、偏波保持光ファイバ22Pから入射された光を、ファラデー素子13Pに向けて反射する。また、PBS12Pは、第1の偏波出力部として機能し、ファラデー素子13Pから入射された光を、受光器18Pに向けて透過する。
【0044】
PBS12Sは、第2の偏波出力部として機能し、偏波保持光ファイバ22Sから入射された光を、ファラデー素子13Sに向けて反射する。また、PBS12Sは、第2の偏波出力部として機能し、ファラデー素子13Sから入射された光を、受光器18Sに向けて透過する。
【0045】
なお、本実施形態に係る光学配置は、実施形態2の発明についても適用することができる。
【0046】
(実施形態4)
図7に、本実施形態に係る第1の分光装置の構成の一例を示す。本実施形態に係る第1の分光装置91は、実施形態1の分光装置81にさらに偏波コントローラ17が備わる。
【0047】
図8に、本実施形態に係る第2の分光装置の構成の一例を示す。本実施形態に係る第2の分光装置92は、実施形態2の分光装置82に加えて、さらに偏波コントローラ17を備える。
【0048】
偏波コントローラ17は、入力信号の偏光状態を制御する。偏波コントローラ17は、例えば、入力信号を、水平偏光成分及び垂直偏光成分を各々測定できる第1の状態、±45°偏光成分を各々測定できる第2の状態、右回り円偏光成分及び左回り円偏光成分を各々測定できる第3の状態に切り替えて設定する。第2の状態とする際は、例えば、光学軸が22.5°となるように設置された1/2波長板を通過させる。第3の状態とする際は、例えば、光学軸が45°となるように設置された1/4波長板を通過させる。この3種の各偏光状態における受光器18P及び18Sの受光レベルを用いることで、ストークスパラメータを算出することができる。
【0049】
入力信号のスペクトルレベルには、一般的に偏光した信号成分だけでなく無偏光なノイズ成分も含まれている。この場合、本実施形態に係る発明は、算出したストークスパラメータを用いて入力信号の偏光度、すなわち、入力信号のS/N比を求める。或いは、受光器18P及び18Sの受光レベルの比が最大となるように、偏波コントローラ17を設定する。すると、2つの受光レベルのうちの小さい方の値を2倍してノイズ成分を2つの受光レベルの差から信号成分をそれぞれ算出し、算出した信号成分とノイズ成分の比から、入力信号のS/N比を求めることができる。
【0050】
(実施形態5)
図9に、本実施形態に係る分析装置の構成の一例を示す。本実施形態に係る分析装置93は、実施形態1で説明した分光装置81−1、81−2、81−3と、光学素子26−1、26−2、26−3を備える。光学素子26−1、26−2、26−3は、分光装置81−1、81−2、81−3へ入力される入力信号の偏光状態を変換する。例えば、光学素子26−1は実施形態4で説明した第1の状態とし、光学素子26−2は実施形態4で説明した第2の状態とし、光学素子26−3は実施形態4で説明した第3の状態とする。光学素子26−2は、例えば、光学軸が22.5°となるように設置された1/2波長板である。光学素子26−3は、例えば、光学軸が45°となるように設置された1/4波長板である。
【0051】
入力信号は、分配器24で分岐されて各分光装置81−1、81−2、81−3に入力される。各分光装置81−1、81−2、81−3は、受光器18P及び18Sの検出した光強度を出力する。処理装置25は、各分光装置81−1、81−2、81−3で検出された各P偏光及びS偏光の光強度を用いて、ストークスパラメータを算出する。これにより、分析装置93は、入力信号に含まれる各波長の偏波状態を分析することができる。なお、分析装置93は、入力信号に含まれる各波長の偏波状態を分析機能を備えない分光装置としても用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
11、12P、12S:PBS
13P、13S:ファラデー素子
14P、14S:レンズ
15:回折格子
16:ミラー
17:偏波コントローラ
18P、18S:受光器
21、22P、22S:偏波保持光ファイバ
23P、23S:光ファイバ
24:分配器
25:処理装置
26−1、26−2、26−3:光学素子
81、82、83、91、92:分光装置
93:分析装置
23:GI光ファイバ
231:スリット
232:コア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9