(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のキートップをフレームで囲んだキーボード本体及び該キーボード本体の底面を収納支持するベースプレートを有するキーボード装置を上面に設けた本体筐体と、ディスプレイを有するディスプレイ筐体とをヒンジ機構によって回動可能に連結した電子機器であって、
前記本体筐体内に設けられ、前記ヒンジ機構によって前記ディスプレイ筐体を前記本体筐体に対して回動させる回動動作に連動して動作するリンク機構と、
前記リンク機構と前記キーボード装置との間を連結し、前記リンク機構と連動して動作することで前記キートップと前記フレームとの間の相対的な高さ位置を変化させる駆動部材と、
を備え、
前記駆動部材は、前記ベースプレートに形成された挿通口を通して前記キーボード装置の外部へと延出されて前記リンク機構と連結されており、
前記本体筐体は、前記挿通口の下方となる位置に排水経路を備え、
前記本体筐体は、前記キーボード装置と底面カバーとの間に電子基板を有し、
前記電子基板は、前記挿通口の下方となる位置に孔部を有し、
前記リンク機構は、前記挿通口を通して前記キーボード装置の外部へと延出された前記駆動部材の端部が係合するスリットが設けられ、前記ヒンジ機構の回転動作に伴って前後方向に移動することで前記駆動部材を回転させるスライド部材を有し、
前記スライド部材は、前記キーボード装置の側部で前記電子基板の上面側に配設されており、前記スリットの下面側から下方に向かって突出し、前記電子基板の孔部に挿入された突起を有することを特徴とする電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器10の平面図であり、ヒンジ機構12L,12Rによってディスプレイ筐体14を本体筐体16から開き、ノート型PCでの使用形態として上から見た図である。
図2は、
図1に示す電子機器10をノート型PCでの使用形態とした場合の側面図であり、
図3は、
図2に示す状態からディスプレイ筐体14を開き方向に回動させて360度位置としたタブレット型PCでの使用形態とした場合の側面図である。
【0020】
本実施形態に係る電子機器10は、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して90度〜150度程度の角度位置に回動させた状態ではノート型PCとして好適に使用でき(
図1及び
図2参照)、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して360度位置まで回動させた状態ではタブレット型PCとして好適に使用できる(
図3参照)、いわゆるコンバーチブル型PCである。本発明は、このようなコンバーチブル型PC以外、例えばディスプレイ筐体が180度程度までしか開かない一般的なノート型PC等、各種の携帯用情報機器等の電子機器に適用できる。
【0021】
以下、
図1及び
図2に示すノート型PCでの使用形態を基準とし、ディスプレイ筐体14の表面(前面)14aに設けられたディスプレイ18を視認しながら本体筐体16の操作面である表面(上面)16aに設けられたキーボード装置20を操作する使用者から見た方向で、手前側を前側(前方)、奥側を後側(後方)と呼び、本体筐体16の厚み方向を上下方向、幅方向を左右方向と呼んで説明する。
【0022】
また説明の便宜上、本体筐体16に対するディスプレイ筐体14の角度位置について、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して完全に閉じた状態とし、互いの表面14a,16aが対面した姿勢を0度位置(
図2中で本体筐体16の上に2点鎖線で示すディスプレイ筐体14参照)と呼ぶ。そしてこの0度位置を基準として、ディスプレイ筐体14を開き方向に回動させる方向で角度を刻みながら説明するものとし、例えばディスプレイ筐体14と本体筐体16とが直交した姿勢を90度位置と呼び、表面14a,16aが同一方向(上方)を向いて互いに平行した姿勢を180度位置(
図2中に2点鎖線で示すディスプレイ筐体14参照)と呼ぶ。さらに、ディスプレイ筐体14と本体筐体16の背面同士、つまりディスプレイ筐体14の背面(後面)14bと本体筐体16の背面(下面)16bとが対面した姿勢を360度位置(
図3参照)と呼ぶものとする。なお、0度位置、90度位置、180度位置及び360度位置等については、本体筐体16、ディスプレイ筐体14又はヒンジ機構12L,12Rの構造により、角度数字の示す正確な角度位置から多少ずれた角度位置となることも当然生じるものであり、これらのずれた角度位置も含めて、本実施形態では0度位置等と呼んで説明している。
【0023】
図1〜
図3に示すように、電子機器10は、ディスプレイ18を有するディスプレイ筐体14と、キーボード装置20を有する本体筐体16とを備え、ディスプレイ筐体14と本体筐体16との間が左右一対のヒンジ機構12L,12R(以下、まとめて「ヒンジ機構12」とも呼ぶ)によって回動可能に連結されている。
【0024】
ディスプレイ筐体14はヒンジ機構12を通過した図示しないケーブルにより本体筐体16と電気的に接続されている。ディスプレイ18は、例えばタッチパネル式の液晶表示装置によって構成される。
【0025】
本体筐体16は、表面16aを形成する上面カバー21と、背面16bを形成する底面カバー22とによって扁平な箱状に形成され、その後端縁部にヒンジ機構12が設けられている。本体筐体16の内部には、電子基板38(
図5及び
図6参照)、演算装置及びメモリ等の各種電子部品が収納されている。
【0026】
本体筐体16の表面16aに設けられたキーボード装置20は、前後左右方向に並ぶように配列された複数のキートップ24と、各キートップ24の周囲の隙間を埋めるフレーム(コスメティックフレーム)26とを備えたアイソレーション型のキーボード装置である。このためキーボード装置20では、隣接するキートップ24間がフレーム26によって区画され、それぞれが独立した構成となっている。
【0027】
フレーム26は、一枚の板状部材に各キートップ24を挿通させる複数のキー配設孔26a(
図4及び
図12参照)を形成した枠体である。フレーム26は、本体筐体16の表面16aに設けた開口21a、つまり本体筐体16の上面カバー21に形成されたキーボード装置20の配設用の開口21a内で上下動可能である。フレーム26の上下動作はヒンジ機構12によるディスプレイ筐体14の回動動作に連動する。
【0028】
図4は、
図1に示すキーボード装置20の一部拡大斜視図であり、
図5は、キーボード装置20を含めた本体筐体16の内部構造を模式的に示した縦断面図である。また、
図6は、本体筐体16からキーボード装置20を取り外した状態を模式的に示した平面図であり、
図7は、本体筐体16の底面カバー22の内面構造を模式的に示した平面図である。
【0029】
図4及び
図5に示すように、キーボード装置20は、キートップ24及びフレーム26を有するキーボード本体30と、キーボード本体30の底面を収納支持するバスタブ形状のベースプレート32とを備える。
【0030】
キーボード本体30は、ベースプレート32の上面側に図示しないガイド機構を介して上下動可能に配設されるキートップ24と、キートップ24の周囲の隙間を埋め、ベースプレート32の上面側で駆動部材である駆動ワイヤ34の駆動作用下に上下動可能に配設されるフレーム26とを備える。
【0031】
キートップ24は、押下操作された際、ベースプレート32の上面に配設されたメンブレンスイッチ等の接点を閉じることでそのキー種類に応じた信号を発信する一般的なキースイッチである。フレーム26は、キートップ24の周囲に配置された枠状の樹脂製プレート部材であり、ベースプレート32の上面上且つ上面カバー21の開口21a内となる位置で上下動可能に支持されている。フレーム26は、その下面(内面)が駆動ワイヤ34によって押圧されることで上下動し、その上面がキートップ24の頂面よりも下にある下降位置(
図12参照)から、その上面がキートップ24の頂面と面一又は僅かに上にある上昇位置(
図13参照)まで移動することができる。
【0032】
ベースプレート32は、薄いアルミニウム板等の金属板で形成されている。ベースプレート32はキーボード本体30の取付板となるものであり、当該キーボード装置20に配設される全てのキートップ24が1枚のベースプレート32を共用している。
図4及び
図5に示すように、ベースプレート32は、その四周縁部が上方に起立した側壁32aによって囲まれることで、キーボード本体30の底面を収納可能、且つ内側に液体を貯留可能なバスタブ形状を有する。従って、使用者が誤ってキーボード装置20に対して水や飲料等の液体をこぼした場合、この液体は各キートップ24とフレーム26との隙間を通ってキーボード装置20内に浸入することになるが、バスタブ形状を有するベースプレート32が受け皿となって本体筐体16内に漏水することが防止される。
【0033】
但し、詳細は後述するが、当該電子機器10では上記のようにフレーム26を駆動ワイヤ34によって上下動可能に構成するため、駆動ワイヤ34をキーボード装置20の外部へと延出させている。このため、ベースプレート32の側壁32aには駆動ワイヤ34を挿通させるための挿通口32b(
図4及び
図5参照)が前後方向に並んで形成されている。その結果、ベースプレート32のバスタブ形状に貯留された液体がこの挿通口32bを通って本体筐体16内に浸入する恐れがあるため、当該電子機器10では挿通口32bを通過した液体を本体筐体16外へと円滑に排水するための排水経路36を設け、本体筐体16内の各種電子部品の浸水を防止する構成としている。
【0034】
図5及び
図6に示すように、このようなキーボード装置20は、本体筐体16の上面カバー21に形成された開口21aに対して配設されることで、本体筐体16内に設けられた電子基板38の上面側に配置される。電子基板38は、本体筐体16の左右方向に渡って延在しており、当該電子機器10の主となる制御基板である。電子基板38の左右端部には、それぞれ前後方向に並んだ複数(本実施形態では6個)の孔部38aが形成されている。
【0035】
次に、フレーム26の可動構造の一構成例を説明し、その後、排水経路36の構成について説明する。
【0036】
上記した通り、本実施形態の構成ではフレーム26の可動構造(上下動作)はヒンジ機構12によるディスプレイ筐体14の回動動作に連動する。そこで、先ず、ヒンジ機構12の構成例について説明する。
【0037】
図8は、本実施形態に係る電子機器10に用いられるヒンジ機構12の一構成例を模式的に示す平面図であり、左側のヒンジ機構12Lの構成を代表的に示している。以下、ヒンジ機構12として左側のヒンジ機構12Lを例示して説明するが、右側のヒンジ機構12Rは左側のヒンジ機構12Lと左右対称構造であって実質的に同一構造のため、その詳細な説明は省略する。
【0038】
図8に示すように、ヒンジ機構12L(12R)は、左右方向に延在する第1シャフト(第1軸)40と、第1シャフト40と平行して設置された第2シャフト(第2軸)41と、第1シャフト40及び第2シャフト41を回転可能に軸支して収納する箱状のヒンジ筐体42とを備える(
図2及び
図3も参照)。
【0039】
第1シャフト40は、一端部がディスプレイ筐体14に設けられた図示しない嵌合孔に嵌入固定されることで該ディスプレイ筐体14と一体的に回転する。第2シャフト41は、一端部が本体筐体16に設けられた図示しない嵌合孔に嵌入固定されることで該本体筐体16と一体的に回転する。第1シャフト40及び第2シャフト41の大部分はヒンジ筐体42の内部に回転可能な状態で収納されている。これら第1シャフト40及び第2シャフト41は、例えば0度位置から180度位置までは第1シャフト40のみが回転し、180度位置から360度位置までは第2シャフト41のみが回転する構成とされている。勿論、他の回転角度位置で第1シャフト40及び第2シャフト41の回転が選択される構成であってもよく、例えば第1シャフト40及び第2シャフト41が図示しない歯車列等によって同期回転する構成であってもよい。
【0040】
ヒンジ筐体42には本体筐体16の後端縁部に設けられた凸状部が入り込む凹状部42aが設けられており、この凹状部42aの一側面にはスパイラルピン44が突設されている。スパイラルピン44は本体筐体16側の第2シャフト41と同軸上に設けられ、ヒンジ筐体42の回動動作に連動して第2シャフト41と同軸で回転する。スパイラルピン44の外周面には、
図9に示す展開図に示された形状からなるレール溝46が螺旋状に形成されている。
【0041】
レール溝46は、スパイラルピン44の外周面で軸方向に沿って螺旋を描くように形成され、ヒンジ機構12Lの場合はスパイラルピン44の左側から右側に向かう溝である。レール溝46には、後述するリンク機構50を構成するヒンジリンク52の係合片52aが摺動可能に係合している。
【0042】
ディスプレイ筐体14が180度位置から360度位置まで回動する間は第2シャフト41が回転するため、この回転に応じてスパイラルピン44が回転し、これにより係合片52aはレール溝46を移動する。一方、ディスプレイ筐体14が0度位置から180度位置まで回動する間は第2シャフト41が回転しないためスパイラルピン44も回転せず、このため係合片52aはレール溝46の始点となる一端部に留まる。なお、例えば第1シャフト40と第2シャフト41を同期回転する構成とした場合は、レール溝46の始点となる一端部にスパイラルピン44の周方向に沿う溝(空振り溝)を設け、0度位置から180度位置の間はこの周方向に沿う溝を係合片52aが移動するように構成すればよい。
【0043】
次に、ヒンジ機構12によるディスプレイ筐体14の回動動作とキーボード装置20のフレーム26の上下動作とを連動させるリンク機構50の構成例について説明する。
【0044】
図10は、180度位置(から0度位置の間)でのリンク機構50の状態を模式的に示す平面図であり、
図11は、360度位置でのリンク機構50の状態を模式的に示す平面図である。
図10及び
図11では、左側のヒンジ機構12L及びこれと連動するリンク機構50を例示して説明するが、右側のヒンジ機構12R及びこれと連動するリンク機構50は左側のものと左右対称構造であって実質的に同一構造のため、その詳細な説明は省略する。
【0045】
図10及び
図11に示すように、リンク機構50は、本体筐体16の内部で動作するものであり、本体筐体16の内面で左右方向に移動可能に支持されたヒンジリンク52と、本体筐体16の内面に対して一端側の回動軸54を中心として回動可能に支持された揺動部材56と、揺動部材56の回動軸54とは反対側の他端側に対して作用ピン58を介して回転可能に連結されたスライド部材60とを備える。リンク機構50を構成するヒンジリンク52、揺動部材56及びスライド部材60は、本体筐体16の上面カバー21の下面(内面)に対して移動可能に支持され、電子基板38の上面側に配置されている(
図5及び
図6も参照)。
【0046】
ヒンジリンク52は、後方へと突出してスパイラルピン44のレール溝46に係合する係合片52aを有したL字形状のプレートである。ディスプレイ筐体14が回動されてスパイラルピン44が回転すると、ヒンジリンク52は係合片52aがレール溝46を摺動することで左右方向にスライド移動する(
図10及び
図11参照)。
【0047】
揺動部材56は、回動軸54が設けられたヒンジリンク52側の一端側に膨らんだ湾曲形状を有する略三角形状のプレートである。揺動部材56は、回動軸54の後側となる位置でヒンジリンク52との間が連結ピン62によって互いに回転可能な状態で連結されている。揺動部材56の回動軸54とは反対側の他端側は、作用ピン58によってスライド部材60と回転可能に連結されている。
【0048】
スライド部材60は、図示しないガイド構造によって本体筐体16に対して前後方向にスライド可能に設けられた長尺矩形状のプレートである。スライド部材60は、その後端部に作用ピン58が突設されており、この作用ピン58が揺動部材56に回転可能に連結されている。
【0049】
このようなリンク機構50では、スパイラルピン44の回転を受けてヒンジリンク52が左右方向にスライド移動すると、連結ピン62が力点となると共に回動軸54が回動支点となって揺動部材56が回動し、作用ピン58が作用点となってスライド部材60が前後方向に移動する(
図10及び
図11参照)。
【0050】
次に、リンク機構からの駆動力を受けてフレーム26を上下動作させる駆動ワイヤ34の構成例について説明する。
【0051】
図6、
図10及び
図12に示すように、駆動ワイヤ34は、左右のヒンジ機構12L,12Rと連動する左右のスライド部材60のスリット60a,60a間に架け渡されている。駆動ワイヤ34はSUS材等で形成された硬質の線材であり、例えば直径1mm程度で十分な剛性を有する。本実施形態では6本の駆動ワイヤ34を前後方向に並列している。
【0052】
各駆動ワイヤ34は、両端にそれぞれ設けられた駆動端部34a,34aと、両端の駆動端部34a,34a間で左右方向に延びた直線部分である基部34bとを有する。
図4及び
図5に示すように、駆動端部34aは基部34bの端部を90度屈曲させたアーム部34cの先端から90度屈曲させて形成されており、基部34bと平行するように左右方向へと突出している。これにより、駆動ワイヤ34の両端部はクランク形状となっている。キーボード装置20のベースプレート32の左右の側壁32aには各駆動ワイヤ34に対応する位置に切欠形状の挿通口32bが設けられており、この挿通口32bを通過した基部34bの端部にアーム部34c及び駆動端部34aが設けられている。駆動ワイヤ34の両端の構成は、左右対称構造とされている。
【0053】
両端の駆動端部34a,34aは、左右のスライド部材60,60のスリット60a,60aにそれぞれ上下動可能且つ回転可能な状態で係合される。基部34bは、各キートップ24間に形成された前後方向の間隙を埋めるように左右に延在したフレーム26の横枠26bの下面に対して回転可能な状態で連結される(
図12及び
図13参照)。基部34bには、前方に向けてV字状に屈曲された屈曲部34dが形成されている。屈曲部34dは、基部34bの左右方向に渡って複数形成されている。
【0054】
次に、リンク機構50によってディスプレイ筐体14の回動動作と連動するフレーム26の上下動作について説明する。
【0055】
先ず、ディスプレイ筐体14が0度位置から180度位置までの間は、第2シャフト41が回転しないためスパイラルピン44も回転せず、
図10に示すように初期位置にあるヒンジリンク52によって揺動部材56が図中で最も反時計方向に回動した位置にあり、作用ピン58が最も前方となる位置にある。このため、スライド部材60も最も前側に移動した位置にある。
【0056】
この状態では、駆動ワイヤ34は、
図10及び
図12に示すようにベースプレート32上で屈曲部34dが横倒し姿勢となっている。このため、駆動ワイヤ34の基部34bが回転可能に連結されたフレーム26も基部34bによって引き寄せられて下降位置にあり、
図12に示すようにキートップ24の頂面よりもフレーム26の上面が下にあり、キートップ24を良好に操作することができる。
【0057】
次に、ディスプレイ筐体14が180度位置を超えて開き方向に回動されると、ヒンジ機構12のヒンジ筐体42も回動し、スパイラルピン44が回転するため、180度位置から360度位置までの間は、ヒンジリンク52の係合片52aがレール溝46を摺動する(
図10参照)。その結果、180度位置から360度位置までの間でのスパイラルピン44の回転により、
図12に示すようにヒンジリンク52が進動方向(
図12中で右側)に押し出し移動されて揺動部材56を時計方向に回動させ、作用ピン58を介してスライド部材60を後方へと進動させる。
【0058】
スライド部材60が後方に移動すると、駆動ワイヤ34の駆動端部34aも後方に移動するため、駆動ワイヤ34は基部34bが回転して屈曲部34dが起立し、
図11及び
図13に示す360度位置ではベースプレート32上で屈曲部34dが起立した鉛直姿勢となる。
【0059】
この状態では、駆動ワイヤ34の基部34bはベースプレート32上から上昇した上昇位置にあり、この基部34bと連結されたフレーム26も基部34bによって持ち上げられて上昇位置にある。このため、
図13に示すようにフレーム26の上面がキートップ24の頂面と面一又は僅かに上にあり、キーボード装置20の上面が略平面となる。つまり、各キートップ24がフレーム26によって実質的に隠された状態となって本体筐体16の表面16aが平面となるため、タブレット型PCとして使用する際、キーボード装置20が邪魔になることがない。なお、360度位置にあるディスプレイ筐体14を閉じ方向に回動動作させる場合には、上記の開き方向への回動動作と逆方向の動作が生じることになる。
【0060】
ところで、上記したように当該電子機器10では、キーボード装置20のベースプレート32にバスタブ形状を採用しているものの、駆動ワイヤ34を挿通させる挿通口32bからの漏水が懸念される。
【0061】
そこで、次に挿通口32bを通過した液体を本体筐体16外へと円滑に排水するための排水経路36について具体的に説明する。
【0062】
図5及び
図7に示すように、排水経路36は、ベースプレート32の側壁32aの挿通口32bの下方に配設されており、本体筐体16の底面カバー22の底面に貫通形成された排水口64と、排水口64と各挿通口32bの下方となる位置との間を液体を流通可能に接続する樋形状部66とを有する。
【0063】
樋形状部66は、底面カバー22の内面に形成された左右一対の壁部66a,66aによって構成されている。本実施形態の場合、駆動ワイヤ34がキーボード装置20の前後方向に並んで複数設けられているため、挿通口32bも左右の側壁32aの前後方向に並んで複数設けられている(
図4及び
図6参照)。そこで、樋形状部66は、前後方向に並んだ全ての挿通口32bから流れ落ちた液体を受けることができるように、全ての挿通口32bに亘るように前後方向に延在する長尺な形状となっている。
図5に示すように、各壁部66aの上端面と電子基板38との間にはスポンジ等で形成された防水シール67が配設されている。
【0064】
なお、挿通口32bをベースプレート32の底面に形成し、例えばクランク形状によってこれを通した駆動ワイヤ34をキーボード装置20の側方に延出させた構成であってもよく、この場合にはベースプレート32の底面に形成された挿通口32bの下方に孔部38aや排水経路36を配置すればよい。
【0065】
排水口64は、挿通口32bから流れ落ちて樋形状部66を流れた液体を本体筐体16の外部に排出するための孔部である。本実施形態の場合、ノート型PCの使用形態で本体筐体16の後側が前側よりも高くなり、前下がりに傾斜した載置姿勢となるように設定されている。そこで、排水口64は樋形状部66を後側から前側に流れた液体を円滑に排出するため、樋形状部66の前端部に形成されている(
図7参照)。
【0066】
従って、キーボード装置20の上面にこぼされた水や飲料等の液体がキートップ24の隙間からベースプレート32の上面を介して挿通口32bから落下した場合であっても、この液体は樋形状部66を介して排水口64から円滑に本体筐体16外へと排出されることになる。
【0067】
当該電子機器10では、挿通口32b(ベースプレート32)と底面カバー22との間には電子基板38が介在している。そこで、上記したように各挿通口32bの下方となる位置で電子基板38に孔部38aをそれぞれ形成し、排水経路36と挿通口32bとの間を連通させている(
図5及び
図6参照)。これにより、挿通口32bから流れ落ちる液体は、電子基板38の上面上を流れることなく孔部38aから樋形状部66へと落下する。電子基板38の上面上への液体の流入をより確実に防止するため、孔部38aの縁部となる電子基板38とベースプレート32との間にも防水シール67が配設されている。
【0068】
電子基板38の各孔部38aには、スライド部材60の側縁部から下方に向かって突出したリブ状の突起60bが挿入されている。突起60bは、駆動ワイヤ34の駆動端部34aが係合されるスリット60aの下方に設けられ、スライド部材60の前後方向の移動に伴い孔部38a内で移動可能である。突起60bを設けたことにより、挿通口32bを通って駆動ワイヤ34を伝わりスリット60aへと流れた液体を、該突起60bに伝わせて孔部38aの下方へと落下させ、円滑に樋形状部66へと排水することができる(
図5中の破線W参照)。
【0069】
このような排水経路36を用いたキーボード装置20からの排水構造は、駆動ワイヤ34によってフレーム26を上下動させ、これによりキートップ24とフレーム26との間の相対的な高さ位置を変化させる構成以外、例えば
図14に示すようにフレーム26を固定構造とし、キートップ24を上下動させることでキートップ24とフレーム26との間の相対的な高さ位置を変化させる構成に対しても適用できる。
【0070】
図14は、キートップ24を上下動させる構成例を示す動作図であり、
図14(A)は、キートップ24が最も上方にある使用位置での側面図であり、
図14(B)は、
図14(A)に示す状態からキートップ24が押し下げられた非使用位置での側面図である。
【0071】
図14(A)及び
図14(B)に示すように、この構成の場合、駆動ワイヤ34は各キートップ24の後側部に沿って配設される。この際、駆動ワイヤ34の外周面には各キートップ24側となる前方へと突出し、各キートップ24の受け片24aの上面に当接配置されることで受け片24aを下方に向かって押下可能な押圧片70が設けられるが、上記した屈曲部34dは設けられていない。駆動ワイヤ34は、キートップ24を前後方向の配列数分だけ前後方向に並設される。なお、
図14中の参照符号72はキートップ24を上下動可能に支持するパンタグラフ構造のガイド機構であり、参照符号74はベースプレート32の下面側に貼着され、ベースプレート32の底面に切欠き等が形成されている場合にこれを埋める防水シートである。
【0072】
駆動ワイヤ34の基部34bは、その左右方向の適宜箇所でベースプレート32又はフレーム26に設けられた軸受部(図示せず)によって回転可能に位置決め支持されている。これにより、左右のスライド部材60が前後方向に移動すると、駆動端部34aがスライド部材60のスリット60a内で回転しながら該スライド部材60と共に前後方向に移動し、その結果、軸受部で軸支された基部34bを回転中心としてアーム部34cが前後方向に振り子状に揺動しつつ、基部34bが軸周りに回転する。押圧片70は、駆動ワイヤ34の基部34bの外周面に外嵌固着された取付筒体76から屈曲形成されることで、基部34bの外周面からキートップ24側へと突出している。押圧片70は、取付筒体76の外周面から突出した板片であり、その先端に下方に向かって多少屈曲した押圧部が設けられている。
【0073】
従って、ディスプレイ筐体14が0度位置から180度位置までの間は、スライド部材60が最も前側に移動した初期位置にあるため(
図10参照)、
図14(A)に示すようにキートップ24はフレーム26の上方に飛び出した使用位置に設定される。これにより、キーボード装置20の使用が可能となっている。
【0074】
一方、ディスプレイ筐体14が180度位置を超えて開き方向に回動され、スライド部材60が後方へと進動すると(
図11参照)、
図14(B)に示すように駆動ワイヤ34の駆動端部34aも後方に移動するため、駆動ワイヤ34は押圧片70が下に移動する方向に回転する。その結果、押圧片70によって受け片24aが押圧作用を受け、キートップ24が押圧片70と共に下方に移動する。そして、360度位置では、
図14(B)に示すようにキートップ24の頂面がフレーム26の上面と面一又は僅かに低い位置にあってキーボード装置20の上面が平面となる。その結果、各キートップ24がフレーム26によって実質的に隠された状態となり、本体筐体16の表面16aが平面となるため、タブレット型PCとして使用する際、キーボード装置20が邪魔になることがない。
【0075】
そして、このようにキートップ24を駆動ワイヤ34によって上下動させる構造においても、ベースプレート32の挿通口32bの下方に排水経路36を設けているため、この挿通口32bから落下する液体を本体筐体16外へと円滑に排出することができる。
【0076】
以上のように、本実施形態に係る電子機器10は、複数のキートップ24をフレーム26で囲んだキーボード本体30及びキーボード本体30の底面を収納支持するベースプレート32を有するキーボード装置20を表面16aに設けた本体筐体16と、ディスプレイ18を有するディスプレイ筐体14とをヒンジ機構12によって回動可能に連結した構成において、本体筐体16内に設けられ、ヒンジ機構12によってディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して回動させる回動動作に連動して動作するリンク機構50と、リンク機構50とキーボード装置20との間を連結し、リンク機構50と連動して動作することでキートップ24とフレーム26との間の相対的な高さ位置を変化させる駆動部材である駆動ワイヤ34とを備える。そして、駆動ワイヤ34は、ベースプレート32の側壁32aに形成された挿通口32bを通してキーボード装置20の外部へと延出されてリンク機構50と連結されており、本体筐体16は、挿通口32bの下方となる位置に排水経路36を備える。
【0077】
このような構成では、例えば使用者が誤ってキーボード装置20の上面に水や飲料等の液体をこぼした場合には、液体がキートップ24の隙間からキーボード本体30を収納支持するベースプレート32の上面へと流れ込み、そこから駆動ワイヤ34の挿通用の挿通口32bを通って本体筐体16の内部に流れ落ちることがある。しかしながら、当該電子機器10では、この挿通口32bの下方となる位置に排水経路36を設けているため、挿通口32bから流れ出し或いは駆動ワイヤ34を伝って落下した液体を本体筐体16外へと円滑に排水することができ、電子基板38に設けられた電子部品等、本体筐体16内部の電子部品への漏水が防止される。
【0078】
当該電子機器10では、本体筐体16はキーボード装置20と底面カバー22との間に電子基板38を有し、電子基板38は挿通口32bの下方となる位置に孔部38aを有する。このため、挿通口32bから流れ落ちる液体は、電子基板38の上面上を流れることなく孔部38aから排水経路36へと円滑に流れ落ちるため、電子基板38上の電子部品への漏水を防止できる。
【0079】
リンク機構50は、挿通口32bを通してキーボード装置20の外部へと延出された駆動ワイヤ34の駆動端部34aが係合するスリット60aが設けられ、ヒンジ機構12の回転動作に伴って前後方向に移動することで駆動ワイヤ34を回転させるスライド部材60を有する。そして、スライド部材60は、キーボード装置20の側部で電子基板38の上面側に配設されており、スリット60aの下面側から下方に向かって突出し、電子基板38の孔部38aに挿入された突起60bを有する。これにより、挿通口32bを通って駆動ワイヤ34を伝わりスリット60aへと流れた液体を、突起60bに伝わせて孔部38aの下方へと落下させ、円滑に排水経路36へと排水することができる。
【0080】
当該電子機器10では、排水経路36は、本体筐体16の底面カバー22に貫通形成された排水口64と、排水口64と挿通口32bの下方となる位置との間を液体を流通可能に接続する樋形状部66とを有した構成としている。このため、挿通口32bから落下した液体を樋形状部66を流通させて排水口64へと確実に導くことができる。
【0081】
この場合、駆動ワイヤ34は、キーボード装置20の前後方向に沿って複数並んで配置されると共に、各駆動ワイヤ34にそれぞれ対応するように挿通口32bは複数設けられ、樋形状部66は、全ての挿通口32bの下方となる位置に亘って設けられ、その下流側が排水口64に連通している。これにより、1本の樋形状部66を用いて複数の挿通口32bから落下した液体を円滑に排水口64へと導くことができ、本体筐体16の底面カバー22に形成する排水口64の設置数を最小限に抑えることができる。
【0082】
当該電子機器10の場合、ベースプレート32はキーボード本体30の底面を収納可能、且つ内側に液体を貯留可能なバスタブ形状を有し、該バスタブ形状の側壁32aに挿通口32bを形成している。このため、例えば誤ってキーボード装置20の上面に対してこぼされた液体は、バスタブ形状のベースプレート32内で貯留されつつ、下方に排水経路36を設けた挿通口32bから円滑に排水される。これにより、排水経路36を設けていない部分でベースプレート32から本体筐体16内に漏水することが防止されるため、本体筐体16内部の電子部品への漏水を一層確実に防止できる。
【0083】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【解決手段】電子機器10は、本体筐体16内に設けられ、ヒンジ機構12によってディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して回動させる回動動作に連動して動作するリンク機構50と、リンク機構50とキーボード装置20との間を連結し、リンク機構50と連動して動作することでキートップ24とフレーム26との間の相対的な高さ位置を変化させる駆動部材である駆動ワイヤ34とを備え、駆動ワイヤ34は、ベースプレート32の側壁32aに形成された挿通口32bを通してキーボード装置20の外部へと延出されてリンク機構50と連結されており、本体筐体16は、挿通口32bの下方となる位置に排水経路36を備える。