特許第6055094号(P6055094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6055094アルミニウム腐食に対する保護の改善された食器洗浄組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055094
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】アルミニウム腐食に対する保護の改善された食器洗浄組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/37 20060101AFI20161219BHJP
   C11D 1/66 20060101ALI20161219BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20161219BHJP
   C11D 3/386 20060101ALI20161219BHJP
   C11D 3/10 20060101ALI20161219BHJP
   C11D 11/00 20060101ALI20161219BHJP
   C11D 17/04 20060101ALI20161219BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20161219BHJP
   A47L 15/42 20060101ALI20161219BHJP
   B65D 65/46 20060101ALI20161219BHJP
   B65D 77/08 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C11D3/37
   C11D1/66
   C11D3/33
   C11D3/386
   C11D3/10
   C11D11/00
   C11D17/04
   C11D3/395
   A47L15/42 Z
   B65D65/46
   B65D77/08 A
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-521799(P2015-521799)
(86)(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公表番号】特表2015-524861(P2015-524861A)
(43)【公表日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】US2013050028
(87)【国際公開番号】WO2014011845
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2015年1月9日
(31)【優先権主張番号】13/546,306
(32)【優先日】2012年7月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シンベイ ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー スコット デュポン
(72)【発明者】
【氏名】ポール ヨウリク
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/130076(WO,A1)
【文献】 特開2005−048183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 3/37
A47L 15/42
B65D 65/46
B65D 77/08
C11D 1/66
C11D 3/10
C11D 3/33
C11D 3/386
C11D 3/395
C11D 11/00
C11D 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動食器洗浄洗剤組成物であって、
a.)前記組成物の5重量%〜60重量%のアミノ酸系ビルダーであって、100〜約1,000Daの分子量を含む、アミノ酸系ビルダーと、
b.)亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーであって、少なくとも以下のモノマー:
i.)カルボン酸含有モノマー、
ii.)スルホン酸基含有モノマー、及び
iii.)任意に更にイオン性モノマー又は非イオン性モノマー、によって形成される、予成形ポリマーと、
c.)前記組成物の0.5重量%〜10重量%の非イオン性界面活性剤と、を含
前記予成形ポリマー中の亜鉛塩のポリマーに対するモル比が、約0.1:1〜約100:1である、自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項2】
前記アミノ酸系ビルダーが、前記組成物の10重量%〜50重量%存在する、請求項1に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項3】
前記アミノ酸系ビルダーが、メチル−グリシン−二酢酸及びその塩類、グルタミン酸−N,N−二酢酸及びその塩類、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項4】
前記亜鉛対イオンが、亜鉛塩であり、前記亜鉛塩が、硫酸亜鉛である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項5】
前記亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーが、前記組成物の0.1重量%〜50重量%で前記組成物中に存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤が、前記組成物の1重量%〜8重量%で前記組成物中に存在し、前記組成物が、アニオン性界面活性剤、双極性界面活性剤、及び両性界面活性剤を実質的に含まない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項7】
酵素を更に含み、前記酵素が、プロテアーゼ、アミラーゼ、及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記酵素が、前記組成物中に前記組成物1グラム当たり0.001mg〜10mg存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項8】
アルカリ源を更に含み、前記アルカリ源が、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムであり、前記アルカリ源が、前記組成物の2重量%〜30重量%存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項9】
前記組成物の5重量%〜20重量%の炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムを更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の自動食器洗浄洗剤組成物。
【請求項10】
アルミニウムを保護するための自動食器洗浄洗剤組成物を製造する方法であって、
a.)硫酸亜鉛とポリマーとを混合して、亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーを形成する工程であって、前記ポリマーが、少なくとも以下のモノマー:
iv.)カルボン酸含有モノマー、
v.)スルホン酸基含有モノマー、及び
vi.)任意に更にイオン性モノマー又は非イオン性モノマー、によって形成される、工程と
b.)前記亜鉛対イオンを有する前記予成形ポリマーをアミノ酸系ビルダーに添加する工程であって、前記アミノ酸系ビルダーが、1,000〜20,000Daの分子量を含む、工程と、を含む、方法。
【請求項11】
前記予成形ポリマー中の亜鉛塩のポリマーに対するモル比が、0.1:1〜100:1である、請求項10に記載の自動食器洗浄洗剤組成物を製造する方法。
【請求項12】
A.洗剤組成物であって、
a.)前記組成物の約5重量%〜約60重量%のアミノ酸系ビルダーであって、約1,100〜約1,000Daの分子量を含む、アミノ酸系ビルダーと、
b.)亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーであって、少なくとも以下のモノマー:
vii.)カルボン酸含有モノマー、
viii.)スルホン酸基含有モノマー、及び
ix.)任意に更にイオン性モノマー又は非イオン性モノマー、によって形成される、予成形ポリマーと、
c.)前記組成物の1重量%〜20重量%の非イオン性界面活性剤と、を含み、
前記予成形ポリマー中の亜鉛塩のポリマーに対するモル比が、約0.1:1〜約100:1である、洗剤組成物と、
B.水溶性パウチであって、前記洗剤組成物が収容される、水溶性パウチと、を含む自動食器洗浄洗剤単位用量製品。
【請求項13】
前記水溶性パウチが、複数の区画を有し、前記区画のうちの少なくとも1つが、酵素を含み、少なくとも別の区画が、漂白剤を含む、請求項12に記載の自動食器洗浄洗剤単位用量製品
【請求項14】
前記区画のうちの少なくとも1つが、粉末形態の前記組成物の成分を少なくとも収容し、前記粉末形態が、漂白剤を含む、請求項13に記載の自動食器洗浄洗剤単位用量製品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動食器洗浄洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食器洗浄洗剤組成物を評価するための重要な基準は、洗浄後の食器の外観である。特に非リン酸塩自動食器洗浄洗剤において長期にわたって存在する問題は、アルミニウム食器の腐食である。腐食は、通常、アルミニウム表面の曇り又は縞状の外観で、あるいは真珠光沢によって現れる。
【0003】
洗剤組成物中に亜鉛及びポリマーを含める等、アルミニウム腐食を低減するための解決策が提案されている。しかし、多くの自動食器洗浄組成物は、ガラス食器に光沢効果をもたらすためにアミノ酸ビルダーを含有している。これらビルダーは、亜鉛の有効性を低減する負の効果を有するので、組成物中の亜鉛濃度を増大させる必要がある。理論に束縛されるものではないが、亜鉛がアルミニウム表面に輸送されるためにポリマーと複合体化する機会を得る前に、これらアミノ酸系ビルダーは、亜鉛と複合体を形成する。結果として、効果を得るためには、食器洗浄洗剤組成物中により多くの亜鉛が含まれていなくてはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、製剤中の亜鉛の総量を最小化しながら、アルミニウム腐食を効率的に低減する自動食器洗浄組成物が必要とされている。更に、食器の光沢も維持しながら、アルミニウム腐食を低減する自動食器洗浄組成物が必要とされている。更に、単位用量形態で速やか且つ容易に製造することができる自動食器洗浄組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
自動食器洗浄組成物であって、a.)組成物の約5重量%〜約60重量%のアミノ酸系ビルダーであって、約100〜約1,000Daの分子量を含む、アミノ酸系ビルダーと、b.)亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーであって、少なくとも以下のモノマー:カルボン酸含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、及び任意に更にイオン性モノマー又は非イオン性モノマー、によって形成される、予成形ポリマーと、c.)組成物の約0.5重量%〜約10重量%の非イオン性界面活性剤とを含む、自動食器洗浄組成物。
【0006】
アルミニウムを保護するための自動食器洗浄洗剤組成物を製造する方法であって、硫酸亜鉛とポリマーとを混合して、亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーを形成する工程であって、このポリマーが、少なくとも以下のモノマー:カルボン酸含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、及び任意に更にイオン性モノマー又は非イオン性モノマー、によって形成される、工程と、亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーをアミノ酸系ビルダーに添加する工程であって、アミノ酸系ビルダーが、約100〜約1,000Daの分子量を含む、工程とを含む。方法。
【0007】
自動食器洗浄洗剤組成物であって、a.)組成物の約5重量%〜約60重量%のアミノ酸系ビルダーであって、約100〜約1,000Daの分子量を含む、アミノ酸系ビルダーと、b.)亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーであって、少なくとも以下のモノマー:カルボン酸含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、及び任意に更にイオン性モノマー又は非イオン性モノマーによって形成される、予成形ポリマーと、c.)組成物の約1重量%〜約20重量%の非イオン性界面活性剤とを含み、自動食器洗浄洗剤組成物が水溶性パウチ内に収容される、自動食器洗浄洗剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の全ての実施形態において、特に断らない限り、百分率は全て、組成物全体の重量を基準としている。全ての比率は、特に記述のない限り、重量比である。全ての範囲は、包含的であり、かつ組み合わせ可能である。有効数字の数は、表示された量に対する限定を表すものでも、測定値の精度に対する限定を表すものでもない。特に指示がない限り、全ての数量は、「約」という単語によって修飾されるものと理解される。列挙された成分に関連する重量は全て、有効濃度に基づいており、特に明記しない限り、市販の材料に含まれ得るキャリア又は副生成物を含まない。
【0009】
本明細書全体を通して記載される全ての最大数値限定は、このようなより小さい数値限定が本明細書に明示的に記載されているかのように、全てのより小さい数値限定を包含するものと理解すべきである。本明細書全体を通して記載される全ての最小数値限定は、このようなより高い数値限定が本明細書に明示的に記載されているかのように、全てのより高い数値限定を含む。本明細書全体を通して記載される全ての数値範囲は、このようなより狭い数値範囲が全て本明細書に明示的に記載されているかのように、このようなより広い数値範囲内の全てのより狭い数値範囲を含む。
【0010】
亜鉛対イオンを有する予成形ポリマー
消費者は、アルミニウム食器の表面を腐食によって変化させない食器洗浄洗剤組成物を望んでいる。洗剤組成物中に亜鉛及びポリマーを含める等、アルミニウム腐食を低減するための解決策が提案されている。しかし、このような洗剤組成物は、多くの場合、洗剤中の亜鉛の有効性に対して負の影響を有する、光沢をもたらすためのアミノ酸系ビルダーを含んでいる。亜鉛がアルミニウム表面に輸送されるためにポリマーと複合体化する機会を得る前に、これらビルダーは、亜鉛と複合体を形成する。結果として、効果を得るためには、食器洗浄洗剤組成物中により多くの亜鉛が含まれていなくてはならない。
【0011】
驚くべきことに、亜鉛塩のアルミニウム腐食阻害効果を増大させ得るのは、予成形ポリマーと亜鉛対イオンとの組み合わせであるので、用いられる亜鉛塩の量を低減することができる。本明細書で使用するとき、用語「予成形」は、洗剤組成物、特にアミノ酸系ビルダーを含有する洗剤組成物の残りに後で添加する前に作製される、ポリマー及び亜鉛対イオンの別個の実体を指す。
【0012】
理論に束縛されるものではないが、亜鉛は、予成形ポリマーと既に複合体化しているので、一般的に、自動食器洗浄機の洗浄液中のアミノ酸ビルダーと結合することができない。一般的に、これらビルダーは、一旦予成形ポリマーが形成されたら、ポリマーから亜鉛を引き離すのに十分な程度強力ではない。これにより、アミノ酸系ビルダーのせいで失われる亜鉛が少なくなるので、抗腐食効果を得るために亜鉛をより効率的に使用することが可能になる。
【0013】
亜鉛塩
本発明の第1の態様は、亜鉛とポリマーとを複合体化させて、亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーを形成することを提供する。その後、予成形ポリマーを自動食器洗浄製剤に添加してよい。様々な亜鉛塩(有機及び無機の両方)を用いて、下記の通りポリマーと複合体化させることができる。有機亜鉛塩としては、一例として、少なくとも1つのモノマー及び/又はポリマー有機酸のうちの1つ以上の亜鉛塩が挙げられ、モノマー及び/又はポリマー有機酸の亜鉛塩は、非分岐飽和又は不飽和モノカルボン酸の亜鉛塩、分岐飽和又は不飽和モノカルボン酸の亜鉛塩、飽和及び不飽和ジカルボン酸の亜鉛塩、芳香族モノ−、ジ−、及びトリカルボン酸の亜鉛塩、糖酸の亜鉛塩、ヒドロキシ酸の亜鉛塩、オキソ酸の亜鉛塩、及びアミノ酸の亜鉛塩、並びに/又はポリマーカルボン酸の亜鉛塩からなる群から選択される。1つの実施形態では、これらの亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーは、マグネシウムも含まず、少なくとも8個の炭素原子を有する非分岐若しくは分岐、不飽和若しくは飽和、モノ−若しくはポリヒドロキシル化脂肪酸、及び/又は樹脂酸の亜鉛塩も含まない。
【0014】
更に、亜鉛塩は、メタン酸(ギ酸)、エタン酸(酢酸)、プロパン酸(プロピオン酸)、ペンタン酸(吉草酸)、及びヘキサン酸(カプロン酸)からなる群から選択してよい。
【0015】
1つの実施形態では、亜鉛塩は、2−メチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−ブチルオクタン酸、2−ペンチルノナン酸、及び2−ヘキシルデカン酸の群から選択される。
【0016】
別の実施形態では、亜鉛塩は、非分岐飽和又は不飽和ジ−又はトリカルボン酸:プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、及びヘプタン二酸(ピメリン酸)の群から選択される。
【0017】
更なる実施形態では、芳香族、モノ−、ジ−、及びトリカルボン酸:安息香酸、2−カルボキシ安息香酸(フタル酸)、3−カルボキシ安息香酸(イソフタル酸)、4−カルボキシ安息香酸(テレフタル酸)、3,4−ジカルボキシ安息香酸(トリメリット酸)、3,5−ジカルボキシ安息香酸(トリメシン酸)の群から選択される。
【0018】
また、亜鉛塩は、糖酸:ガラクトン酸、マンノン酸、フルクトン酸、アラビノン酸、キシロン酸、リボン酸、2−デオキシリボン酸、アルギン酸の群から選択してもよい。
【0019】
また、亜鉛塩は、ヒドロキシ酸:ヒドロキシフェニル酢酸(マンデル酸)、2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、ヒドロキシコハク酸(リンゴ酸)、2,3−ジヒドロキシブタン二酸(酒石酸)、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸(クエン酸)、アスコルビン酸、2−ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)の群から選択してもよい。
【0020】
亜鉛塩は、オキソ酸:2−オキシプロピオン酸(ピルビン酸)、4−オキソペンタン酸(レブリン酸)の群から選択してもよい。
【0021】
亜鉛塩は、アミノ酸:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニン、グリシン、セリン、チロシン、スレオニン、システイン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンの群から選択してもよい。
【0022】
本発明の更なる実施形態では、予成形ポリマーは、有機カルボン酸の少なくとも1つの亜鉛塩を含み、1つの実施形態では、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、及び/又はクエン酸亜鉛からなる群から選択される亜鉛塩を含む。
【0023】
亜鉛塩のスペクトルは、有機カルボン酸の1つの実施形態では、水難溶性又は水不溶性である塩、即ち、100mg/L未満、1つの実施形態では10mg/L未満の溶解度を有する塩、特に、溶解度を有しない塩から、100mg/L超、1つの実施形態では500mg/L超、別の実施形態では1g/L超、別の実施形態では5g/L超の水溶解度を有する塩まで及ぶ(全ての溶解度は20℃の水温におけるものである)。亜鉛塩の第1の群としては、例えば、クエン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、及びステアリン酸亜鉛が挙げられ、可溶性亜鉛塩の群としては、例えば、ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、及びグルコン酸亜鉛が挙げられる。1つの実施形態では、亜鉛塩は、硫酸亜鉛である。
【0024】
また、無機亜鉛塩を、亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーに対する対イオンとして用いてもよい。無機亜鉛塩としては、一例として、酸化状態II、III、IV、V、又はVIのうちの1つにおける1つ以上の亜鉛塩が挙げられる。1つの態様では、好適な金属塩及び/又は金属錯体は、Zn(II)硫酸塩、Zn(II)クエン酸塩、Zn(II)ステアリン酸塩、Zn(II)アセチルアセトネート、Zn(II)硝酸塩、ハイドロジンカイト、塩化亜鉛、臭化亜鉛、又は酢酸亜鉛からなる群から選択してもよい。
【0025】
更に好適な無機亜鉛塩は、国際公開第94/26860号及び同第94/26859号に開示されている。
【0026】
予成形亜鉛対イオンポリマー
様々なポリマーを用いて、亜鉛と複合体化させて、亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーを形成することができる。1つの実施形態では、ポリマーは、少なくとも以下のモノマー:(i)カルボン酸含有モノマー、(ii)スルホン酸基含有モノマー、及び(iii)任意に更にイオン性モノマー又は非イオン性モノマーによって形成される。
【0027】
本明細書に記載するスルホン化/カルボキシル化モノマーを有する好適な予成形ポリマーは、約100,000Da以下、又は約75,000Da以下、又は約50,000Da以下、又は約3,000Da〜約50,000、別の実施形態では約4,500Da〜約20,000Da、別の実施形態では約8,000Da〜約10,000Daの重量平均分子量を有し得る。
【0028】
1つの実施形態では、予成形ポリマーは、不飽和又は飽和カルボン酸モノマーの1つ以上のコポリマーを有するように選択される。カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸、又はアクリル酸のエトキシレートエステル、アクリル酸及びメタクリル酸のうちの1つ以上が挙げられる。1つの実施形態では、カルボン酸は、(メタ)アクリル酸である。
【0029】
別の実施形態では、予成形ポリマーは、スルホン酸基を含有する1つ以上のモノマーを有するように選択される。スルホン化モノマーとしては、(メタ)アリルスルホン酸ナトリウム、スルホン酸ビニル、フェニル(メタ)アリルエーテルスルホン酸ナトリウム、又は2−アクリルアミド−メチルプロパンスルホン酸のうちの1つ以上が挙げられる。1つの実施形態では、不飽和スルホン酸モノマーは、大部分は2−アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸(AMPS)である。
【0030】
更なる実施形態では、予成形ポリマーは、イオン性モノマー又は非イオン性モノマーを含むように選択される。非イオン性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、スチレン、又はα−メチルスチレンのうちの1つ以上が挙げられる。
【0031】
1つの実施形態では、予成形ポリマーは以下の濃度のモノマーを含む:ポリマーの約40〜約90重量%の、別の実施形態では約60〜約90重量%の、1つ以上のカルボン酸モノマー;ポリマーの約5〜約50重量%の、別の実施形態では約10〜約40重量%の、1つ以上のスルホン酸モノマー;及び任意にポリマーの約1重量%〜約30重量%の、1つの実施形態では約2〜約20重量%の、1つ以上の非イオン性モノマー。1つの実施形態では、ポリマーは、ポリマーの約70重量%〜約80重量%の少なくとも1つのカルボン酸モノマーと、ポリマーの約20重量%〜約30重量%の少なくとも1つのスルホン酸モノマーとを含む。
【0032】
市販のポリマーの例としては、Dow(以前はRohm & Haas)によって供給されるAcusol 587G及びAcusol 588G、並びに米国特許第5,308,532号及び国際公開第2005/090541号に記載されているものが挙げられる。Acusol 588は、約65重量%のアクリル酸、及び約35重量%の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)を含むポリマーである。
【0033】
別の実施形態では、予成形ポリマーは、約31重量%のアクリル酸と、53重量%のマレイン酸と、16重量%の3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート(HAPS)とを含むポリマーであるGT−101である。GT101は、Nippon Shokubai製である。
【0034】
ポリマーは、亜鉛対イオンを用いて予成形される。また、ポリマーは、亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーに加えて、洗剤組成物に個々に添加してもよい。
【0035】
亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーは、ビルダーを含有する自動食器洗浄洗剤組成物に添加する前に、亜鉛塩とポリマーとを結合させる任意の方法から形成することができる。1つの実施形態では、アルミニウムを保護するための自動食器洗浄洗剤組成物を作製する方法は、亜鉛塩(例えば、硫酸亜鉛)と酸形態のポリマーとを混合することを含む。亜鉛は、酸形態のポリマーにおける水素(H)基を置換して、亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーを形成する。次いで、亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーを、約100〜約1,000Daの分子量を含むアミノ酸系ビルダーを含有する洗剤組成物に添加する。
【0036】
1つの実施形態では、本発明の組成物は、1つ、2つ、3つ以上の異なる予成形ポリマーを含有することができる。別の実施形態では、本発明の組成物は、1つ、2つ、3つ以上の異なる予成形ポリマーに加えて、1つ、2つ、3つ以上の予成形ポリマーを含有してよい。
【0037】
別の実施形態では、アルミニウムを保護するための自動食器洗浄洗剤組成物を作製する方法は、亜鉛塩(例えば、硫酸亜鉛)とポリマーのナトリウム塩(O-Na+)とを混合して、対イオン交換を促進することを含む。亜鉛は、Na+を置換して、ポリマー上に(O-Zn)基を形成する。次いで、亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーを、約100〜約1,000Daの分子量を含むアミノ酸系ビルダーを含有する洗剤組成物に添加する。
【0038】
1つの実施形態では、亜鉛対イオンを有する予成形ポリマー中の、亜鉛のポリマーに対する比は、約0.1〜約100:1、別の実施形態では約0.5:1〜約50:1、別の実施形態では約1:1〜約10:1である。
【0039】
一旦自動食器洗浄洗剤組成物に添加されると、亜鉛対イオンを有する予成形ポリマーは、全組成物の約0.5重量%〜約50重量%、別の実施形態では約5重量%〜約35重量%、別の実施形態では約5重量%〜約15重量%の量で自動食器洗浄洗剤組成物中に存在し得る。本明細書で使用するのに好適であり得るポリマーの十分な説明は、米国特許出願公開第2011/000903号の2ページ4行目〜8ページ25行目、及び米国特許第7,892,362号の6段35行目〜17段25行目に見出すことができる。
【0040】
洗浄活性物質
任意の従来の洗浄成分を自動食器洗浄洗剤組成物の一部として用いてよい。記載される濃度は重量%であり、全組成物について言及する(被包する水溶性材料は除外する)。洗浄製品はリン酸塩ビルダーを含有してもよく、又はリン酸塩ビルダーを含まず、界面活性剤、アルカリ源、酵素、ポリマー、抗腐食剤(例えば、ケイ酸ナトリウム)及び処理剤から選択され得る1つ以上の洗剤活性成分を含んでもよい。1つの実施形態では、自動食器洗浄洗剤組成物は、ビルダー化合物と、アルカリ源と、界面活性剤と、抗スケーリングポリマー(1つの実施形態では、スルホン化ポリマー)と、酵素と、更なる漂白剤とを含む。
【0041】
ビルダー
本明細書で使用するためのビルダーとしては、アミノ酸系ビルダーが挙げられる。ビルダーは、組成物の約1重量%〜約60重量%、別の実施形態では約5重量%〜約50重量%、別の実施形態では約15重量%〜約30重量%の濃度で用いられる。
【0042】
アミノ酸系ビルダーとしては、MGDA(メチル−グリシン−二酢酸)並びにその塩及び誘導体と、GLDA(グルタミン酸−N,N−二酢酸)並びにその塩及び誘導体とが挙げられる。GLDA(その塩及び誘導体)は、1つの実施形態では、より具体的には、四ナトリウム塩に含まれる。1つの実施形態では、組成物は、リン酸塩ビルダーを実質的に含まない。他の好適なビルダーは、米国特許第6,426,229号に記載されている。
【0043】
界面活性剤
食器洗浄洗剤組成物は、非イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤系を含んでよい。1つの実施形態では、非イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤系は、蒸留水中1%の濃度で測定したとき、40〜70℃、別の実施形態では45〜65℃の転相温度を有する。「非イオン性界面活性剤系」とは、本明細書では、2つ以上の非イオン性界面活性剤の混合物を意味する。1つの実施形態では、自動食器洗浄洗剤組成物は、アニオン性界面活性剤及び/又は双極性界面活性剤を実質的に含まない。
【0044】
界面活性剤は、全組成物の0〜10重量%、別の実施形態では0.1重量%〜10重量%、別の実施形態では約1重量%〜約8重量%、別の実施形態では0.25重量%〜6重量%の量で存在し得る。1つの実施形態では、本発明の製品は、0.1〜10%の非イオン性界面活性剤を含み、ここで、非イオン性界面活性剤の総量の少なくとも50%、別の実施形態では少なくとも60%は、水性組成物であるか、又は単位用量形態の水性組成物成分である。
【0045】
好適な非イオン性活性剤としては、i)エトキシル化非イオン性界面活性剤(6〜20個の炭素原子を有するモノヒドロキシアルカノール又はアルキルフェノールと、アルコール又はアルキルフェノール1モル当たり少なくとも12モル、別の実施形態では少なくとも16モル、別の実施形態では少なくとも20モルのエチレンオキシドとの反応により調製される)、ii)6〜20個の炭素原子と少なくとも1つのエトキシ基及びプロポキシ基とを有するアルコールアルコキシル化界面活性剤が挙げられる。1つの実施形態では、界面活性剤i)とii)との混合物である。
【0046】
ケイ酸塩
ケイ酸塩は、存在する場合、組成物の約1〜約20重量%、1つの実施形態では約5〜約15重量%の濃度である。1つの実施形態では、ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム(例えば、二ケイ酸ナトリウム)、メタケイ酸ナトリウム、及び結晶性フィロケイ酸塩である。
【0047】
酵素
自動食器洗浄洗剤組成物において用いるのに好適な酵素としては、メタロプロテアーゼ及びセリンプロテアーゼ等のプロテアーゼが挙げられる。好適なプロテアーゼとしては、動物、植物又は微生物由来のものが挙げられる。化学的又は遺伝的に改変された突然変異体が含まれる。
【0048】
市販のプロテアーゼ酵素としては、商品名Alcalase(登録商標)、Savinase(登録商標)、Primase(登録商標)、Durazym(登録商標)、Polarzyme(登録商標)、Kannase(登録商標)、Liquanase(登録商標)、Ovozyme(登録商標)、Neutrase(登録商標)、Everlase(登録商標)及びEsperase(登録商標)としてNovo Nordisk A/S(Denmark)によって販売されているもの、商品名Maxatase(登録商標)、Maxacal(登録商標)、Maxapem(登録商標)、Properase(登録商標)、Purafect(登録商標)、Purafect Prime(登録商標)、Purafect Ox(登録商標)、FN3(登録商標)、FN4(登録商標)、Purafect OXP(登録商標)及びExcellase(登録商標)としてGenencor Internationalによって販売されているもの、並びに商品名Opticlean(登録商標)及びOptimase(登録商標)としてSolvayによって販売されているものが挙げられる。
【0049】
1つの実施形態では、本発明の洗浄組成物は、少なくとも0.001mgの活性プロテアーゼを含む。更なる実施形態では、組成物は高濃度のプロテアーゼを含み、特に組成物1グラム当たり少なくとも0.1mgの活性プロテアーゼを含む。1つの実施形態では、本発明の組成物におけるプロテアーゼの濃度としては、組成物1グラム当たり、約1.5〜約10mg、別の実施形態では約1.8〜約5mg、別の実施形態では約2〜約4mgの活性プロテアーゼが挙げられる。
【0050】
別の実施形態では、酵素は、アミラーゼである。好適なアルファ−アミラーゼとしては、細菌又は真菌由来のものが挙げられる。化学的又は遺伝的に改変された突然変異体(変異体)が含まれる。
【0051】
好適な市販のアルファ−アミラーゼは、DURAMYL(登録商標)、LIQUEZYME(登録商標)、TERMAMYL(登録商標)、TERMAMYL ULTRA(登録商標)、NATALASE(登録商標)、SUPRAMYL(登録商標)、STAINZYME(登録商標)、STAINZYME PLUS(登録商標)、FUNGAMYL(登録商標)及びBAN(登録商標)(Novozymes A/S)、BIOAMYLASE−D(G)、BIOAMYLASE(登録商標)L(Biocon India Ltd.)、KEMZYM(登録商標)AT 9000(Biozym Ges.m.b.H,Austria)、RAPIDASE(登録商標)、PURASTAR(登録商標)、OPTISIZE HT PLUS(登録商標)及びPURASTAR OXAM(登録商標)(Genencor International Inc.)並びにKAM(登録商標)(KAO,Japan)である。1つの実施形態では、アミラーゼは、NATALASE(登録商標)、STAINZYME(登録商標)及びSTAINZYME PLUS(登録商標)、並びにこれらの混合物である。
【0052】
1つの実施形態では、組成物は、少なくとも0.001mgの活性アミラーゼを含む。1つの実施形態では、高濃度のアミラーゼ、組成物1グラム当たり少なくとも0.05mgの活性アミラーゼ、別の実施形態では、組成物1グラム当たり約0.1〜約10mg、別の実施形態では約0.25〜約6mg、別の実施形態では約0.3〜約4mgの活性アミラーゼが用いられる。本明細書で使用するのに好適な酵素の十分な説明は、米国特許第7,892,362号の6段35行目〜17段25行目に見出すことができる。
【0053】
漂白剤
無機及び有機漂白剤は、本明細書において用いるのに好適な洗浄活性物質である。無機漂白剤としては、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩及び過ケイ酸塩等の過水和物塩が挙げられる。無機過水和物塩は、通常、アルカリ金属塩である。無機過水和物塩は、追加的保護なしで、結晶性固体として含まれてよい。あるいは、塩は、コーティングされてもよい。
【0054】
アルカリ金属過炭酸塩、特に過炭酸ナトリウムは、本明細書で用いるための過水和物である。過炭酸塩は、製品内安定性を提供するコーティングされた形態で製品に配合され得る。製品内安定性を提供する好適なコーティング材料は、水溶性アルカリ金属硫酸塩と炭酸塩との混合塩を含む。このようなコーティングは、コーティング方法と共に、英国特許第1,466,799号に既に記載されている。混合塩コーティング材料の過炭酸塩に対する重量比は、1:200〜1:4、別の実施形態では1:99〜1 9、別の実施形態では1:49〜1:19の範囲である。1つの実施形態では、混合塩は、一般式:Na2S04.n.Na2CO3(式中、nは、0.1〜3、1つの実施形態では、nは、0.3〜1.0、別の実施形態では、nは、0.2〜0.5である)を有する硫酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合塩である。
【0055】
製品内安定性を提供する別の好適なコーティングは、SiO2:Na20比が1.8:1〜3.0:1、別の実施形態ではL8:1〜2.4:1のケイ酸ナトリウム,及び/又はメタケイ酸ナトリウムを含み、無機過水和物塩の2重量%〜10重量%(通常、3重量%〜5重量%)のSiO2濃度で適用される。ケイ酸マグネシウムをコーティングに含んでもよい。ケイ酸塩及びホウ酸塩又はホウ酸又はその他の無機物を含有するコーティングも好適である。
【0056】
ワックス類、油類、脂肪石鹸類を含有するその他のコーティングも、本発明の範囲内で有利に使用できる。ペルオキシ一過硫酸カリウムは、本明細書で有用な別の無機過水和物塩である。
【0057】
典型的な有機漂白剤は、ジアシル及びテトラアシルペルオキシドを含む有機ペルオキシ酸、特に、ジペルオキシドデカン二酸、ジペルオキシテトラデカン二酸、及びジペルオキシヘキサデカン二酸である。1つの実施形態では、過酸化ジベンゾイルは、本明細書における有機ペルオキシ酸である。
【0058】
過酸化ジアシル、特に過酸化ジベンゾイルは、約0.1〜約100マイクロメートル、別の実施形態では約0.5〜約30マイクロメートル、別の実施形態では約1〜約10マイクロメートルの重量平均直径を有する粒子の形態で存在すべきである。1つの実施形態では、粒子の少なくとも約25%、別の実施形態では少なくとも約50%、別の実施形態では少なくとも約75%、別の実施形態では少なくとも約90%が、10マイクロメートルよりも小さい。上記粒径範囲内の過酸化ジアシルは、より大きな過酸化ジアシル粒子よりも優れた(特にプラスチック食器からの)汚れ除去を提供し、同時に自動食器洗浄機での使用中の望ましくない付着及び被膜形成を最少化することも見出された。したがって、過酸化ジアシルの粒径によって、配合者は、低濃度の過酸化ジアシルで良好な汚れ除去を達成することができ、それによって付着及び被膜形成が低減される。逆に、過酸化ジアシルの粒径が増すにつれて、良好な汚れ除去のために更に多くの過酸化ジアシルが必要となり、食器洗浄過程の間に生じる表面への付着を増やすことになる。
【0059】
更なる典型的な有機漂白剤としてはペルオキシ酸が挙げられ、具体例は、アルキルペルオキシ酸及びアリールペルオキシ酸である。代表例は、(a)ペルオキシ安息香酸及びその環置換誘導体、例えば、アルキルペルオキシ安息香酸に加えて、ペルオキシ−α−ナフトエ酸及びモノ過フタル酸マグネシウム、(b)脂肪族又は置換脂肪族ペルオキシ酸、例えば、ペルオキシラウリン酸、ペルオキシステアリン酸、ε−フタルイミドペルオキシカプロン酸[フタロイミノペルオキシへキサン酸(PAP)]、o−カルボキシベンズアミドペルオキシカプロン酸、N−ノネニルアミド過アジピン酸及びN−ノネニルアミド過コハク酸、並びに(c)脂肪族及び芳香脂肪族ペルオキシジカルボン酸、例えば、1,12−ジペルオキシカルボン酸、1,9−ジペルオキシアゼライン酸、ジペルオキシセバシン酸、ジペルオキシブラシル酸、ジペルオキシフタル酸、2−デシルジペルオキシブタン−1,4−二酸、N,N−テレフタロイルジ(6−アミノ過カプロン酸)である。
【0060】
1つの実施形態では、本発明の組成物は、過炭酸塩を含有する。別の実施形態では、組成物は、過炭酸ナトリウムを含む。
【0061】
漂白活性化剤
漂白活性化剤は、典型的に、60℃以下の温度における洗浄過程において漂白作用を増強する有機過酸前駆体である。本明細書で用いるのに好適な漂白活性化剤としては、過加水分解条件(perhydrolysis condition)下で、好ましくは1〜10個の炭素原子、特に2〜4個の炭素原子を有する脂肪族ペルオキシカルボン酸、及び/又は任意に置換された過安息香酸をもたらす化合物が挙げられる。好適な物質は、指定された炭素原子数のO−アシル及び/若しくはN−アシル基、並びに/又は任意に置換されたベンゾイル基を有する。好ましいのは、ポリアシル化アルキレンジアミン、特にテトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、アシル化トリアジン誘導体、特に1,5−ジアセチル−2,4−ジオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(DADHT)、アシル化グリコールウリル、特にテトラアセチルグリコールウリル(TAGU)、N−アシルイミド、特にN−ノナノイルスクシンイミド(NOSI)、アシル化フェノールスルホネート、特にn−ノナノイル−又はイソノナノイルオキシベンゼンスルホネート(n−又はイソ−NOBS)、無水カルボン酸、特に無水フタル酸、アシル化多価アルコール、特にトリアセチン、二酢酸エチレングリコール及び2,5−ジアセトキシ−2,5−ジヒドロフラン、更にはトリエチルアセチルクエン酸塩(TEAC)である。漂白活性化剤は、本発明の組成物中に含まれる場合には、組成物の約0.1〜約10重量%、好ましくは約0.5〜約2重量%の濃度である。
【0062】
漂白触媒
本明細書で使用するのに好ましい漂白触媒としては、マンガントリアザシクロノナン及び関連する錯体(米国特許第4246612号、同第5227084号);Co、Cu、Mn及びFeビスピリジルアミン及び関連する錯体(米国特許第5114611号);並びにペンタミンアセテートコバルト(III)及び関連する錯体(米国特許第4810410号)が挙げられる。本明細書で用いるのに好適な漂白触媒の十分な説明は、国際公開第99/06521号の34ページ26行目〜40ページ16行目に見出すことができる。漂白触媒は、本発明の組成物中に含まれる場合には、組成物の約0.1〜約10重量%、好ましくは約0.5〜約2重量%の濃度である。
【0063】
アルカリ
アルカリ源の例としては、これらに限定はされないが、アルカリ水酸化物、アルカリ水素化物、アルカリ酸化物、アルカリセスキ炭酸塩、アルカリ炭酸塩、アルカリホウ酸塩、鉱酸のアルカリ塩、アルカリアミン、アルカロイド及びこれらの混合物が挙げられる。1つの実施形態では、アルカリ源は、炭酸ナトリウム、別の実施形態では水酸化ナトリウム、別の実施形態では水酸化カリウムである。アルカリ源は、典型的に、洗浄液に約8〜約12、より好ましくは約9〜約11.5のpHを与えるのに十分な量で存在する。本明細書の組成物は、組成物の約1重量%〜約40重量%、より好ましくは約2重量%〜20重量%のアルカリ源を含み得る。
【0064】
洗浄液は、洗浄液に所望のpHを与えるのに十分な量のアルカリ源を含む。1つの実施形態では、洗浄液は、約20〜約1,200ppm、別の実施形態では約100〜約1,000のアルカリ源を含有する。1つの実施形態では、アルカリ源は、一価イオン源を含む。一価イオンは高いアルカリ性に寄与し、同時に洗浄液のイオン強度をほとんど上昇させない。本明細書での使用に好ましいアルカリ源は、金属水酸化物、具体的には水酸化ナトリウム又はカリウム、及び水酸化カリウムである。
【0065】
水溶性パウチ
1つの実施形態では、本発明の製品は、単位用量製品である。単位用量形態の製品としては、錠剤、カプセル、サッシェ、パウチ等が挙げられる。1つの実施形態では、単位用量は、水溶性フィルム(錠剤、カプセル、サッシェ、パウチを含む)に収容される。1つの実施形態では、製品は、水溶性パウチの形態である。パウチ材料の非限定的な例としては、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0066】
1つの実施形態では、本発明の組成物は、水溶性フィルムパウチ又は水溶性射出成形パウチに収容される。射出成形パウチの例は、米国特許出願公開第2011/0175257中に見出すことができる。パウチに収容される本発明の組成物の重量(パウチ材料の重量を除く)は、約10〜約35グラム、1つの実施形態では約12〜約26グラム、別の実施形態では14〜22グラムである。この重量は、単位用量形態の1つ以上の区画に収容される組成物、あるいは、単位用量形態の1つ以上の区画に収容される1つ以上の成分に分割された組成物を含む。
【0067】
1つの実施形態では、パウチは、1つの区画、あるいは2つ又は3つ以上の区画を含む。別の実施形態では、パウチは、多区画パウチを形成するために少なくとも2つの隣り合う区画を含む。1つの実施形態では、2つの区画は、互いに重ねて置かれる。区画は、本明細書に記載する請求される組成物全体の成分を含有し得る。多区画パウチ及びそれを製造する方法の例は、米国特許第7,125,828号中に見出すことができる。
【0068】
1つの実施形態では、区画のうちの少なくとも1つは、粉末成分を収容し、他の区画は、非粉末成分を収容する。非粉末成分は、ゲル又は液体又は水性液体の形態であってよい。粉末成分は、圧縮粉末若しくは非圧縮粉末又はこれらの混合物であってよい。1つの実施形態では、区画のうちの少なくとも1つは、固体成分を収容し、別の区画は、非固体成分を収容する。別の実施形態では、区画のうちの少なくとも1つは、固体成分を収容し、別の区画は、水性液体成分を収容する。それぞれの区画に収容される成分は、互いに同じ又は変動する重量比を有してよい。
【0069】
1つの実施形態では、2つの隣り合う区画は、それぞれ、液体組成物を含有する。別の実施形態では、各区画は、多区画パウチが異なる組成物を収容している場合、少なくとも1つの区画は、固体組成物を収容する。1つの実施形態では、固体組成物は、粉末形態であり、特に高密度化粉末である。固体組成物は、パックの強度及び堅牢性に寄与する。1つの実施形態では、少なくとも1つの区画は、多相組成物を収容する。
【0070】
1つの実施形態では、パウチは、約5〜約70mL、別の実施形態では約15〜約60mL、別の実施形態では約18〜57mLの全体体積を有する。パウチは、約2:1〜約1:8、別の実施形態では約1:1〜約1:4の範囲の長手方向/横方向アスペクト比を有してよい。長手方向寸法は、約2Kgの静荷重下で、長手方向に重ねて置かれた、即ち、あるパウチが別のパウチの上に置かれたパウチ区画で最大の設置面積を有する基部のうちの1つ上にパウチが存在する場合のパウチの最大高さとして定義される。横方向寸法は、同条件下で長手方向に対して垂直な面におけるパウチの最大幅として定義される。これら寸法は、大部分の食器洗浄機のディスペンサーに取り付けるのに適している。パウチの形状は広く変動してよいが、利用可能な容量を最大化するために、パウチは、大部分のディスペンサーの設置面積とできる限り類似した、即ち略長方形の基部を有する。
【0071】
酵素は、漂白剤及びビルダー(これらは、酵素のカルシウムと結合することにより酵素を不安定にすることがある)との相互作用により、組成物内で安定性を失う場合がある。更に、組成物中の酵素の性能は、溶液、漂白剤、ビルダー等のアルカリ性によって付与され得る。1つの実施形態では、多区画パウチの固体組成物は、漂白剤を含み、液体組成物は、酵素を含む。1つの実施形態では、酵素を含む組成物を包むフィルムの1つは、自動食器洗浄機の本洗いサイクル中に、漂白剤含有組成物を包むフィルムに先だって溶解し、これにより、漂白剤含有組成物の送達に先立って酵素含有組成物が洗浄液中に放出される。これにより、酵素には、最適条件下で作用する可能性が与えられ、他の洗剤活性物質との相互作用が避けられる。
【0072】
多区画パウチの成分の制御放出は、フィルムの厚さ及び/又はフィルム材料の溶解度を変えることによって達成することができる。フィルム材の溶解は、例えば国際公開第02/102,955号の17及び18ページに記載されているように、例えば、フィルムの架橋により遅らせることができる。すすぎ放出用に設計された他の水溶性フィルムが、米国特許第4,765,916号及び同第4,972,017号に記載されている。
【0073】
異なる溶解度を有するフィルムで作製された異なる区画を備える多区画パウチによって遅延放出を達成する他の手段が、国際公開第02/08380号に教示されている。
【実施例】
【0074】
実施例1−自動食器洗浄洗剤
【0075】
【表1】
1 SLF−18 POLY TERGENT(BASF Corporation製)
2 コポリマーACUSOL(登録商標)425N(Dow製)
3 亜鉛対イオンを有するポリマー
【0076】
ポリマーの章に定義した通り、ポリマー又はポリマーの混合物は、実施例1又は2において等量で置換され得ることを理解されたい。
【0077】
実施例2−自動食器洗浄単位用量製品
【0078】
【表2】
1 ポリマーの章で定義した亜鉛イオンを有するコポリマー又はコポリマーの任意の混合物
2 ACUSOL(登録商標)445N(Dow製)
3 SLF−18 POLY TERGENT(BASF Corporation製)
【0079】
本明細書で使用するとき、冠詞「a」は、特に他のことを意味すると定義されない場合、少なくとも1つ又は1つ以上を意味する。全ての数量は、特に具体的に断りのない限り、又は先行技術に対して本発明を定義するために正確な量を必要とすることのない限り、用語「約」によって修飾されることが理解される。
【0080】
相互参照されるか又は関連する全ての特許又は特許出願を含む、本明細書に引用される全ての文書を、特に除外すること又は限定することを明言しない限りにおいて、その全容にわたって本明細書に援用するものである。いずれの文献の引用も、こうした文献が本明細書で開示又は特許請求される全ての発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、あるいは、こうした文献が、単独で、又は他の全ての参照文献とのあらゆる組み合わせにおいて、こうした発明のいずれかを参照、教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。更に、本文書において、用語の任意の意味又は定義の範囲が、参考として組み込まれた文書中の同様の用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合には、本文書中で用語に割り当てられる意味又は定義に準拠するものとする。
【0081】
本発明の特定の実施形態が例示され記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を添付の特許請求の範囲で扱うものとする。