特許第6055188号(P6055188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055188
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】ターボ機械の解析方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20161219BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20161219BHJP
   F04B 51/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   F02C7/00 A
   F01D25/00 V
   F01D25/00 W
   F04B51/00
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-39535(P2012-39535)
(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公開番号】特開2012-180831(P2012-180831A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2015年2月16日
(31)【優先権主張番号】13/039,286
(32)【優先日】2011年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】アドリアナ・エリザベス・トレホ・サンチェス
(72)【発明者】
【氏名】モハマッド・ワシーム・アダミ
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・レオン・ベガ・パエス
(72)【発明者】
【氏名】モニカ・リズベス・ペレス・ガンボア
(72)【発明者】
【氏名】ホアン・パウロ・チャベス・ヴァルドヴィノス
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−309584(JP,A)
【文献】 特開昭62−216008(JP,A)
【文献】 特開平04−023131(JP,A)
【文献】 特開平08−006635(JP,A)
【文献】 特表平02−502768(JP,A)
【文献】 特開平05−127907(JP,A)
【文献】 特開2001−166819(JP,A)
【文献】 特開2000−293217(JP,A)
【文献】 特開2010−128553(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0208429(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F02C 7/00, 9/00
G05B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のターボ機械(48)パラメータに基づいてターボ機械(48)の1つ以上の部品に関する1つ以上の性能変化を測定するように構成されたインテリジェントターボ機械トラッキングフィルタ(ITTF)システム(44)と、
1つ以上の性能変化に基づいて前記ターボ機械(48)性能の根本原因を決定するように構成された根本原因アナライザ(46)と、
を備え、
前記1つ以上の性能変化には傾向データ(52)が含まれ、
前記根本原因アナライザ(46)は、前記根本原因の正確度の確率を導出するように構成され、
前記根本原因アナライザ(46)は、前記1つ以上の性能変化の最大値および最小値を求めることにより、前記1つ以上の性能変化を数量化するように構成された傾向数量計算器(56)を備える、
ターボ機械を解析するためのシステム。
【請求項2】
前記根本原因アナライザ(46)は、ファジー論理を用いて前記1つ以上の性能変化を処理するように構成されたファジー論理ベースエンジン(58)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記根本原因アナライザ(46)は、前記ターボ機械(48)の機械的挙動、前記ターボ機械(48)の熱力学的挙動、又はそれらの組み合わせをモデル化するように構成された物理モデル(62)を備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記根本原因アナライザ(46)は、前記ターボ機械(48)の履歴傾向をモデル化するように構成された統計モデル(64)を備える、請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記根本原因アナライザ(46)は複数の知識規則を有する知識ベースシステム(KBS)(60)を備え、前記複数の知識規則は前記ターボ機械(48)に関する主題専門家の知識を取り込むように構成される、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記KBS(60)は、前向き連鎖システム、後ろ向き連鎖システム、又はそれらの組み合わせを備える、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ターボ機械(48)は、タービンシステム(10)、ポンプ、又は圧縮機の少なくとも1つである、請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記ターボ機械(48)パラメータは、温度、振動、速度、流量、圧力、燃料測定値、汚染測定値、幾何学的位置、隙間、又はアクチュエータ位置の少なくとも1つである、請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してターボ機械に関し、より詳細には、ターボ機械の根本原因を解析するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械としては、タービン、圧縮機、又はポンプ等の装置が挙げられる。ターボ機械は稼働するにつれて、効率及び性能が時間と共に劣化する可能性がある。この性能の劣化は、摩耗又は部品損傷等の様々な要因に起因することがある。この性能の劣化の根本原因を発見することは、例えば、ターボ機械をその本来の作動効率に回復させるためにターボ機械にどのような保守を行なうべきかを決定するのに役立つことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許7627454号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ターボ機械性能の根本原因の決定は、ターボ機械の運転停止と、それに続いて様々なターボ機械部品の視覚分析とを必要とすることになり、非効率的でコストがかかる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その技術的範囲が本来の特許請求発明に相当する特定の実施形態を以下に要約する。これらの実施形態は、特許請求発明の技術的範囲を限定することを意図するものではなく、むしろこれらの実施形態は、本発明の実施可能な形態の概要を示すことのみを意図している。実際、本発明は、以下に記載した実施形態と同様であるか又はそれらとは異なるものである可能性がある様々な形態を包含できる。
【0006】
第1の実施形態では、ターボ機械を解析するためのシステムを提供する。本システムは、複数のターボ機械パラメータに基づいてターボ機械の1つ以上の部品に関する1つ以上の性能変化を測定するように構成されたインテリジェントターボ機械トラッキングフィルタ(ITTF)システムを含む。本システムは、1つ以上の性能変化に基づいてターボ機械性能の根本原因を決定するように構成された根本原因アナライザを更に含む。1つ以上の性能変化には傾向データが含まれる。
【0007】
第2の実施形態では、ターボ機械を解析するための方法を提供する。本方法は、複数のターボ機械パラメータを測定するステップと、複数のターボ機械パラメータに基づいてプロファイル傾向を導出するステップと、プロファイル傾向を数量化して数量的プロファイル傾向を生成するステップとを含む。本方法は、数量的プロファイル傾向に基づいて複数のファジー値を導出するステップと、数量的プロファイル傾向に対するルール及びモデルの適用に基づいてプロファイル傾向の根本原因解析を導出するステップとを更に含む。
【0008】
第3の実施形態では、非一時的機械可読媒体を提供する。非一時的機械可読媒体は、ターボ機械性能の変化を確認するためのセンサデータを処理するように構成された命令と、ターボ機械性能の変化を有するセンサデータに基づいてプロファイル傾向を導出するように構成された命令とを含む。非一時的機械可読媒体は、ファジー論理をプロファイル傾向に適用することによってターボ機械性能の変化の第1の根本原因を導出するように構成された命令を更に含む。
【0009】
本発明の上記及びその他の特徴、態様並びに利点は、図面を通して同様の符号が同様の部品を表す添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことによってより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ターボ機械の一実施形態のブロック図である。
図2】ターボ機械を解析するのに適した根本原因アナライザシステム及びインテリジェントターボ機械トラッキングフィルタ(ITTF)システムの実施形態のブロック図である。
図3図2の根本原因アナライザシステムの一実施形態のブロック図である。
図4】ファジー論理値の実施形態の図である。
図5】ターボ機械性能の根本原因を解析するのに適した論理の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の1つ以上の特定の実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するため、実際の実装の全ての特徴が本明細書で説明されるわけではない。いずれのそのような実際の実装の開発においても、あらゆる技術的計画又は設計計画の場合と同様に、実装ごとに異なる可能性があるシステム関連の制約及びビジネス関連の制約との適合など、開発者の具体的な目標を実現するため、多数の実装固有の決定が行なわれなければならないことを理解されたい。更に、そのような開発努力は複雑で時間がかかる可能性があるが、それでも、本開示の恩恵を受ける当業者には設計、組立、及び製造の日常的な仕事であることを理解されたい。
【0012】
本発明の様々な実施形態の要素を紹介する時、冠詞である「1つの(a、an)」、「その(該)(the)」及び「前記(said)」は、その要素が1つ以上存在することを意味するものとする。「備える(comprising)」、「含む(including)」及び「有する(having)」といった用語は包括的であり、その用語には列挙した要素以外の追加要素が存在し得ることを意味するものとする。
【0013】
タービンエンジン、圧縮機、又はポンプ等のターボ機械は、作動中に性能の変化を経験することがある。例えば、タービンエンジンは、タービンエンジンに対してオペレータ又はコントローラによる変更を加えることなく、特定の毎分回転数(RPM)での作動からより高い又はより低いRPMでの作動へと変化する。ターボ機械の動作上の変化(例えば、RPMの変化)は、例えば、部品の破損、燃料組成(例えば、燃料中の水)の望ましくない変化、予想外の保守事象(例えば、翼亀裂)などの特定の状況によるものと考えられる。一実施形態では、ターボ機械は、例えば、温度、振動、速度、流量、圧力などのパラメータを測定するのに適した複数のセンサを含む。センサは、インテリジェントターボ機械トラッキングフィルタ(ITTF)に通信可能に接続される。ITTFは、ターボ機械の部品に対応するターボ機械パラメータを測定及び解析し、ターボ機械パラメータの変化を検出する。別の実施形態では、複数のセンサから受信した測定値は遠隔監視データベースに保存され、ITTFは遠隔監視データベースから測定値を取り出して解析及び変化検出を行なう。次いで、ターボ機械の各々の部品に関する傾向又は時系列を導出するために、これらの測定値をITTFによって処理する。例えば、ITTFは、エンジン出力、エンジンRPM、温度、圧力、燃料消費量、排気流量などのパラメータの1つ以上の傾向を導出する。
【0014】
次いで、図1〜5に関して後で詳しく述べるように、性能変化の根本原因のリストを決定するために根本原因アナライザによって傾向を解析する。根本原因のリストは、根本原因の確率によって順序付ける。つまり、各々の根本原因決定には、根本原因が測定された傾向の真の又は正確な根本原因である確率を示す確率値を採り入れる。2つ以上の根本原因が性能変化を生じさせることがある点に留意する必要がある。例えば、圧縮機の汚れと燃料中の水はタービンシステムの出力の低下につながる可能性がある。実際、複数の根本原因が導出されることがある。根本原因アナライザは、具体的な修正又は修理を勧めることによって変化又は偏差をもたらす問題の効果的な調整を可能にし得る勧告を生成することもできる。特定の動作傾向の根本原因を修正することによって、許容レベル以下の性能で動作するターボ機械を高レベルの性能で動作するように最適化できる。
【0015】
前述のことを考慮に入れて、本明細書に開示した技術を組み込んだターボ機械、例えば図1に示すタービンシステム10の一実施形態を説明することが有用であろう。タービンシステム10は、例えば、LM6000の名称でニューヨーク州スケネクタディのゼネラル・エレクトリック・カンパニーによって製造されるものである。図示のように、タービンシステム10は燃焼器12を含む。燃焼器12は、燃焼器12内の燃焼室で燃焼するように空気と混合された燃料を受け入れる。この燃焼によって、高温の加圧排気ガスが生じる。燃焼器12は、排気ガスを高圧(HP)タービン14及び低圧(LP)タービン16を経て排気出口18へと案内する。HPタービン14はHPロータの一部である。同様に、LPタービン16はLPロータの一部である。排気ガスがHPタービン14及びLPタービン16を通過すると、ガスは強制的に、タービン翼が駆動シャフト20をタービンシステム10の軸に沿って回転させる。図示のように、駆動シャフト20は、HP圧縮機22及びLP圧縮機24を含むタービンシステム10の様々な部品に接続される。
【0016】
駆動シャフト20は、例えば同軸に位置合わせされた1つ以上のシャフトを含む。駆動シャフト20は、HPタービン14をHP圧縮機22に接続してHPロータを形成するシャフトを含む。HP圧縮機22は、駆動シャフト20に連結された翼を含む。従って、HPタービン14内でタービン翼が回転すると、HPタービン14をHP圧縮機22に接続するシャフトが、翼をHP圧縮機22内で回転させる。これにより、HP圧縮機22内の空気が圧縮される。同様に、駆動シャフト20は、LPタービン16をLP圧縮機24に接続してLPロータを形成するシャフトを含む。LP圧縮機24は、駆動シャフト20に連結された翼を含む。従って、タービン翼がLPタービン16内で回転すると、LPタービン16をLP圧縮機24に接続するシャフトが、翼をLP圧縮機24内で回転させる。HP圧縮機22及びLP圧縮機24内で翼が回転すると、空気取入口26を経て受け入れられた空気が圧縮される。圧縮された空気は燃焼器12に送られ、燃料と混合して、効率性の高い燃焼を可能にする。従って、タービンシステム10は二重同軸シャフト装置を含み、LPタービン16は駆動シャフト20内の第1のシャフトによってLP圧縮機24に駆動接続され、HPタービン14は同様に、第1のシャフトの内部にあり、これと同軸の駆動シャフト20内の第2のシャフトによってHP圧縮機22に駆動接続される。シャフト20は更に負荷28にも接続され、この負荷は車両、又は発電所内の発電機や航空機のプロペラ等の固定負荷である。負荷28は、タービンシステム10の回転出力によって動力が得られる任意の適切な装置である。
【0017】
タービンシステム10は、タービンシステム10の動作及び性能に関連する複数のエンジンパラメータを監視するように構成された複数のセンサを更に含む。センサとしては、例えば、HPタービン14、LPタービン16、HP圧縮機22、及び/又はLP圧縮機24のそれぞれの、例えば入口及び出口部分に隣接して配置された入口センサ30及び出口センサ32が挙げられる。入口センサ30及び出口センサ32は、例えば、周囲温度や周囲圧力等の環境条件、並びに排気ガス温度、ロータ速度、エンジン温度、エンジン圧力、ガス温度、エンジン燃料流量、振動、回転部品と固定部品との間の隙間、圧縮機吐出圧力、汚染、及びタービン排気圧力等の、タービンシステム10の動作及び性能に関連する複数のエンジンパラメータを測定する。更に、センサ30及び32は、弁位置、及び可変形状部品(例えば、空気入口)の幾何学的位置等のアクチュエータ情報を測定する。複数のセンサ30及び32はまた、タービンシステム10の様々な動作段階に関連するエンジンパラメータを監視するように構成される。複数のセンサ30及び32によって得られる測定値は、モジュール線34、36、38及び40を経て送信される。例えば、モジュール線34を利用してLP圧縮機24からの測定値を送信し、モジュール線36を利用してHP圧縮機22からの測定値を送信する。同じようにして、モジュール線38を利用してHPタービン14からの測定値を送信し、モジュール線40を利用してLPタービン16からの測定値を送信する。このように、モジュール線34、36、38及び40は、タービンシステム10の別個のモジュールからの測定値を送信する。その後、送信された測定値を処理して、タービンシステム10の期待性能からの何らかの偏差を決定する。性能の偏差を解析することによって、後で詳しく述べるように、そのような偏差の根本原因を確認して対処する。
【0018】
図2は、ターボ機械48の動作性能の変化の根本原因を導出するのに適した、遠隔監視データベース42、ITTF44、及び根本原因アナライザ46の実施形態を示すブロック図である。ターボ機械48は、例えば、ロータと流体との間にエネルギーを伝達するのに適した、タービン、ポンプ、圧縮機である。ターボ機械48は、例えば、図1に関して更に詳細に説明したタービンシステム10であってもよい。代替的には、ターボ機械48は、蒸気タービン、水力タービン、又は風力タービンであってもよい。
【0019】
例示の実施形態のような特定の実施形態では、ターボ機械48は多数のセンサ50を含む。センサ50としては、温度センサ、圧力センサ、液体レベルセンサ、振動センサ、流体流量センサ、汚染物質排出量センサ、隙間センサ(例えば、回転部品と固定部品との間の間隔)などが挙げられる。図示の実施形態では、センサ50からの測定値を遠隔監視データベース42に記録又は保存する。遠隔監視データベース42は、関係型データベース、ファイル、分散型データベース、又は情報を保存・取り出しするのに適した任意のデータベースであってよい。特定の実施形態では、測定値は、特定のサンプルレートで、例えばほぼ250ミリ秒ごと、500ミリ秒ごと、1秒ごと、又は10秒ごとにサンプルをとる。追加的又は代替的には、センサ50の信号のリアルタイム処理を可能にするようにセンサ50をITTF44に直接接続してもよいことを理解されたい。つまり、ITTF44は、遠隔監視データベース42からデータを取り出す必要もなくセンサ50から受信したデータを直接処理できる。遠隔監視データベース42には、図示のように、根本原因アナライザ46が直接問い合わせることができることも理解されたい。追加的には、ITTF44及び根本原因アナライザ46は、本明細書に開示した技術を実施するためにコンピューティング装置によって用いられるコード又はコンピュータ命令を保存している非一時的機械可読媒体を含んでもよい。
【0020】
ITTF44は、カルマンフィルタリング、トラッキングフィルタリング、回帰マッピング、ニューラルマッピング、逆モデリング技法、又はそれらの組み合わせ等のパラメータ同定法を利用して、データの変化を確認する。改良カルマンフィルタ、拡張カルマンフィルタ、又はその他のフィルタリングアルゴリズムによってフィルタリングを実行してもよく、代替的には、比例積分調整器或いはその他の形態の二乗(n−入力、n−出力)又は非二乗(n−入力、m−出力)調整器によって実行してもよい。これらのフィルタリング技術は、ターボ機械48のパラメータの予想外の変化の同定を可能にすることができる。例えば、ターボ機械48がタービンシステム10(図1に示す)である場合、HPタービン14及びLPタービン16の運転停止は一般的に駆動シャフト20の回転速度の予想していた低速化を起こすであろう。予想外の傾向、例えば運転停止に続く駆動シャフト20の速度の予想外の急上昇は、ITTF44によって検出できる。同様に、LP圧縮機24から出る不均一な空気流は空気流量の測定値の予想外の変化をもたらすことがあり、この変化はITTF44によって検出できる。別の例では、タービンエンジン翼又は圧縮機翼等の翼に堆積した粒子状物質を検出する。
【0021】
追加的には、ITTF44によってもたらされるフィルタリング技術は、データの「ノイズ」又は誤差の低減を可能にし、そうすることでセンサ50の測定値の真値の改良推定値を得ることができる。更に、ITTF44は、履歴データに基づいて期待値又は予測値を導出する。例えば、ITTF44は、略上方傾斜傾向、平坦傾向、及び/又は下方傾斜傾向を予測する。予測された傾向は実際の傾向と比較し、その比較を用いて性能の予想外の変化を検出する。ITTF44はそれから、ターボ機械性能の検出された変化に基づいてターボ機械48に関するプロファイル傾向52を生成する。プロファイル傾向52には、例えば、性能の変化を検出するためにITTF44が受信した測定値及びITTF44が導出したデータの全てが含まれる。
【0022】
更なる評価のために、プロファイル傾向52を根本原因アナライザ46に送信してもよい。一実施形態では、根本原因アナライザ46は、図3に関して後で詳しく述べるように、例えば、ファジー論理エンジン、物理学ベースモデル、統計モデル(例えば、回帰モデル又はニューラルネットワークモデル)、及び/又は知識ベースシステム(例えば、エキスパートシステム又は推論エンジン)を利用してプロファイル傾向52を評価する。根本原因アナライザ46はそれから、性能の何らかの変化の1つ以上の原因を列挙する根本原因解析54を作成する。追加的には、根本原因解析54には、性能変化の原因が性能変化の真の原因である確率が含まれる。従って、根本原因解析54を用いて、例えば、ターボ機械の特定の部品の動作の検査及び/又は保守に重点的に取り組むことができる。ターボ機械の運転を停止する必要もなく性能変化の根本原因の決定を可能にすることによって、開示の実施形態はターボ機械48の利用率を向上させることができ、休止時間及び必要な保守活動の大幅な削減につながることになる。
【0023】
図3は、プロファイル傾向52を処理して根本原因解析54を導出するのに適した図2の根本原因アナライザの一実施形態を示すブロック図である。上記のように、プロファイル傾向52は、温度、振動、速度、流量、圧力、燃料組成、汚染、隙間、幾何学的位置、及び/又はアクチュエータ測定値(例えば、アクチュエータ位置)等の1種類以上のターボ機械測定値を含むように導出する。プロファイル傾向52は、例えば、傾向傾斜又は勾配(例えば、Δx/Δy)、傾向データ中の「ノイズ」の量、傾向の変化の量(例えば、期待値と測定値との差)、傾向の最大値、及び/又は傾向の最小値等の傾向値を数量化又は測定するために、まず傾向数量計算器56によって処理されることになる。傾向数量計算器56はまた、例えば、データベース42に保存したセンサ測定値を取り出すために、遠隔監視データベース42に問い合わせる。
【0024】
ファジー論理エンジン58は、傾向数量計算器56、知識ベースシステム(KBS)60、物理モデル62、及び統計モデル64と共に使用して、根本原因解析54を導出する。物理モデル62としては、計算流体力学(CFD)モデル、有限要素解析(FEA)モデル、ソリッドモデル(例えば、パラメトリック及びノンパラメトリックモデル)、及び/又は3次元〜2次元FEAマッピングモデルが挙げられる。物理モデル62は、プロファイル傾向52の解析を可能にし、ターボ機械48の機械的及び熱力学的挙動に基づいて相関因果関係を確認する。つまり、摩耗している又はさもなければ低い性能を示している可能性がある部品を識別するために、物理モデル62を使用して、プロファイル傾向52で見られるのと同様の物理的条件下でターボ機械48の挙動をシミュレートする。従って、物理モデル62を使用して、プロファイル傾向52で見られるあらゆる変化の物理的根本原因を発見することができる。
【0025】
統計モデル64は、例えば、履歴データに基づいて因果関係を推測するのに適した統計解析を可能にする。より詳細には、ターボ機械48の履歴を通して記録されたデータには、特定のターボ機械48(例えば、タービンシステム10の特定の装置)からのデータと全ターボ機械48からのデータとが含まれるが、これらは記録されたデータと現在の観測データとの相関関係を導出するのに適した統計技術を用いて解析できる。相関係数、分布分析(例えば、正規分布、対数正規分布、パレート分布)、及び/又は相関行列のような、任意の適切な相関統計技術を用いてもよい。更に、統計解析を使用して、ターボ機械48の挙動の今後の値及び傾向を予測する。例えば、回帰分析(例えば、最小二乗回帰、線形回帰、非線形回帰、重回帰)を使用して、現在の測定データに基づいて今後の値を予測する。追加的には、ベイズ推論法のような、特定の仮説が真(又は偽)である確率を計算するのに適した統計的推論法を用いてもよい。例えば、ターボ機械の特定の部品が平均以下である確率を計算するために仮説を立てる。統計モデル64の使用によって、履歴データを現在のターボ機械48の傾向の根本原因の決定に使用することが可能になる。
【0026】
KBS60を使用して、ターボ機械48に関連する主題専門知識及び/又は経験を導入する。例えば、ターボ機械48に接した経験により得られた知識を表現する1つ以上の規則(例えば、推論規則)を使用する。KBS規則を構築するために、知識工学者は主題専門家への一連のインタビューを行なって、専門家の知識を知識ベースでまとめられた規則として符号化する。規則は、「速度急上昇が10秒ごとに発生する場合、タイミングコントローラが不発の可能性がある」、又は「タービン燃料の水分含有量が平均を上回る場合、起動時間が増加すると共に起動温度が低下する」のような、「if・・・then・・・」形式の条件文であってよい。知識ベースに加えて、KBS60は、知識規則を処理して1つ以上の診断的及び/又は規範的結論に達するのに適した推論エンジン(例えば、エキスパートシステム)を含んでもよい。例えば、推論エンジンは、プロファイル傾向52のデータを「if」条件文への入力として使用し、且つ文の中で「then」節を使用して、1つ以上の考えられる診断的及び/又は規範的結論に達する。実際、専門知識の使用を導入することによって、より改良された根本原因解析54を導出できる。
【0027】
ファジー論理エンジン58を使用して、精密値からマップされた近似値又はファジー値を使用する能力を根本原因アナライザ46に提供する。例えば、KBS60、物理モデル62、及び統計モデル64は、「温度変化=251℃」といった精密値の代わりに「温度変化=非常に高い」といったファジー値を使用する。ファジー値の使用により、例えば、根本原因アナライザ46の設計及び実装の単純化を通して根本原因アナライザ46の性能を向上させる。実際、より複雑な数学的構成(例えば、微分方程式)と比べてより単純なファジー論理技術を使用することによって、ファジー論理エンジン58は、図2のターボ機械48のような複雑なシステムを特徴付けるのに適したファジーモデル及び規則の実施を可能にする。
【0028】
KBS60、物理モデル62、統計モデル64は、計算においてファジー値を用いるのに適した計算エンジンとしてファジー論理エンジン58を使用する。つまり、精密値を用いて全ての計算を行なう代わりに、ファジー論理エンジンは、KBS60、物理モデル62、統計モデル64がファジー値及びファジー規則を用いて計算を行なうことを可能にする。ファジーモデル、規則、及び値を使用することによって、根本原因アナライザ46は根本原因解析54のより正確且つより迅速な導出が可能になる。
【0029】
図4は、図2に示す根本原因アナライザによって使用するのに適したファジー値又はファジー関数70、72の一実施形態を示す。図示の実施形態では、値70、72及び74は、それぞれ低温、適温、及び高温といった温度値に対応する。値70、72及び74は、図1に示すタービンシステム10のようなタービンシステムの運転温度を表す。その他の種類のファジー値、例えば、振動、圧力、流量、燃料、速度、隙間、汚染、アクチュエータ位置、幾何学的位置などに基づく値を用いてもよいことを理解されたい。図示の実施形態では、X軸に配置された温度範囲は、ファジー値70、72及び/又は74の1つに対する具体的な運転温度のマッピングの基礎として使用でき、値70、72及び74に真値度を割り当てるのに使用することもできる。一実施形態では、真理値がファジー値70、72及び74に対する真値度を規定する。この実施形態では、真値度は0〜1の範囲に制限されることになり、この場合0はファジー値が完全に偽であることを示し、1はファジー値が完全に真であることを示す。
【0030】
例えば、具体的な運転温度が250℃である場合、250℃地点でX軸に配置された垂直線78を用いてファジー値70及び72(例えば、低温及び適温)と交差する点80及び82を決めることによって値がマップされる。そして、交差する点80及び82の縦座標値を使用して、250℃の運転温度が低温及び中温である真値度を表す。図示の実施形態では、運転温度が低温である真値度は約0.6(即ち、60%)であり、運転温度が適温である真値度は約0.125(即ち、12.5%)である。線78は値74のいかなる部分とも交差しないことから、運転温度が高温である真値度はほぼ0に設定される。従って、精密な温度測定はファジー値70、72及び74に変換され、その後これが、根本原因解析54を導出するために、KBS60、物理モデル62、及び統計モデル64と共にファジー論理エンジン58によって用いられる。
【0031】
図5は、根本原因解析54を導出するのに用いられる論理84の一実施形態を示す。論理84は、コンピュータ命令として非一時的機械可読媒体に保存され、コンピューティング装置によって用いられて本明細書に開示した技術を実施する。論理84は、まずプロファイル傾向52を導出する(ブロック86)。プロファイル傾向52の導出には、例えば、温度測定値、圧力測定値、振動測定値、流量測定値、燃料測定値、アクチュエータ測定値、汚染測定値、隙間測定値、幾何学的位置測定値などのセンサ測定値を収集することが含まれる。その後、収集された測定値は、プロファイル傾向52を導出するために、例えば、図2に示すITTF44によって用いられる。次いで、プロファイル傾向52は、図3の傾向数量計算器56に関して上述したように数量化(ブロック88)される。例えば、傾向数量計算器56は、傾向傾斜又は勾配、傾向データ中の「ノイズ」の量、傾向の変化の量、傾向の最大値、及び/又は数量的プロファイル傾向90の最小値等のパラメータを含むようにプロファイル傾向52における値を処理及び数量化する。傾向数量計算器56は、例えば保存されたセンサ50の測定値を取り出すために、遠隔監視データベース42に問い合わせる。数量的プロファイル傾向90には、全てのセンサ50の測定値を含む、ITTF44によって処理されたパラメータ及び導出された計算の全ても含まれる点に留意する必要がある。
【0032】
次いで、論理84は、数量的プロファイル傾向90に基づいて1つ以上のファジー値を導出する(ブロック92)。例えば、「HPタービン温度変化=高い」、「LPタービン温度変化=低い」、「測定値誤差=非常に小さい」、及び「可変入口案内翼=全開」といったファジー値94は、数量的プロファイル傾向90の測定パラメータに基づくことによって導出される。一実施形態では、数量的プロファイル傾向90における各々のパラメータは、ファジー値94を導出するためにパラメータの予想される変化と比較される。追加的には、真値度をファジー値に割り当ててもよい。このようにして、ターボ機械48の全ての部品に関連する値を含む、様々なファジー値94を導出できる。
【0033】
次いで、論理84は、根本原因解析54を導出するために、モデル及び規則をファジー値に適用する(ブロック96)。一実施形態では、論理84は、ファジー論理エンジン58を使用してモデル及び規則(例えば、物理モデル62、統計モデル64、及びKBS60規則)を適用する(ブロック96)。例えば、一実施形態では、ファジー論理エンジン58は、KBS60と共に使用して特定のファジー値に基づいて規則を「発する」(即ち、実行する)ことができ、新たなファジー値の導出が得られる。次に、これらの新たに導出されたファジー値によって追加的なファジー規則などが「発効」することになる。この「前向き連鎖」方法は、1つ以上の根本原因の自動推論を可能にする。つまり、前もって導出された条件に基づいて新たなデータを連続的に推測又は導出することによって、論理84は、1つ以上の根本原因が測定された傾向を引き起こすという結論に達する。例えば、根本原因としては、様々な部品及び部品問題、例えば「圧縮機の汚れ=やや汚い」、「圧縮機の漏れ=微量の漏れ」、「可変入口案内翼=動かなくなっている」、「LPタービン第1段翼=亀裂が入っている」などが挙げられる。部品及び部品問題のリストはとても長くなることがあり、場合によっては、そのようなリストで数百又は数千の項目が見られることがあることを理解されたい。
【0034】
別の実施形態では、「後ろ向き連鎖」を用いてもよく、その場合、論理84は、全ての考えられる根本原因のリストから遡って考えて、特定の根本原因が現在の一連の測定値の原因となっているという決定をどの程度のデータが裏付けているかを決定する。物理モデル62及び統計モデル64も用いてもよい。例えば、モデル62及び64をデータ及び/又はファジー値に適用することによって、更なる根本原因推定を得ることができる。物理モデル62は特定のデータ傾向の物理学ベースの根本原因を解析するのに役立つのに対して、統計モデル64は考えられる根本原因のリストを導出するためにデータ傾向を履歴情報と比較するのに役立つ。このようにして、発見した全ての根本原因を列挙することによって根本原因解析54を作成できる。追加的には、根本原因解析における各々の根本原因には、正当性又は正確度の確率が含まれる。確率は、パラメータの適合に基づいて導出できる。例えば、KBS60規則に関しては、規則の「if」即ち条件節側に適合するパラメータの数を用いて確率を導出する。別の例では、物理モデル62及び統計モデル64に適合するパラメータの数を用いてもよい。この例では、第1の物理モデル62が第2の物理モデル62よりもより多くの適合パラメータを有する場合、第1の物理モデル62は第2の物理モデルよりも高い確率を有することになる。適合には、比率適合と加重適合とが含まれることを理解されたい。比率適合では、確率測度は、モデル(又は一連の規則)のパラメータの総数で割った適合パラメータの数に基づいている。加重適合では、確率を導出する際に特定の適合パラメータに他の適合パラメータよりも多くの重要性が与えられることになる。
【0035】
根本原因解析54における各々の根本原因は、根本原因が任意の性能変化の実際の根本原因(又は複数の根本原因のうちの1つ)であるという推定確率によってランク付けすることができる。実際、論理84はそれらの各々の確率に基づいて根本原因をランク付けするため、より高くランク付けされた原因を更に調査できるようになっている。確率を用いて、例えば、保守活動をより効率的に指示する。保守計画は、高い確率を有する根本原因に基づいて作成されることになる。同様に、人材及び器材等の保守資材をより効率的に指示してより高い確率の根本原因を調査する。根本原因解析54を提供することによって、論理84はターボ機械48の作動効率を向上させると共に、コストを削減することができる。
【0036】
本発明の技術的効果としては、タービンシステム、ポンプ、及び/又は圧縮機等のターボ機械の動作中の性能変化の検出が挙げられる。更なる技術的効果としては、根本原因アナライザを用いることによる性能変化の1つ以上の根本原因の導出が挙げられる。根本原因アナライザには、微分方程式等の複雑な数学的構成を用いるのに比べて根本原因アナライザの設計及び実装を単純化するのに適したファジー論理技術が含まれる。根本原因アナライザは、複雑なターボ機械システムを特徴付け、性能変化の1つ以上の根本原因を導出するのに適している。各々の根本原因には、根本原因を決定する際に用いられるターボ機械パラメータに基づいて確率が割り当てられる。根本原因アナライザは、性能変化の全ての根本原因が含まれる根本原因解析を導出でき、根本原因はそれらの確率によってランク付けされる。根本原因解析を用いて、ターボ機械を最適に修理、保守、及び運転することができる。
【0037】
本明細書は、実施例を使用して、最良の形態を含む本発明を開示し、更にあらゆる装置又はシステムを製作且つ使用すること及びあらゆる組み込まれた方法を実行することを含む本発明の実施を当業者が行なうのを可能にする。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。そのようなその他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を有する場合、又はそれらが特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する同等な構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲の技術的範囲内に属することになるものとする。
【符号の説明】
【0038】
10 タービンシステム
12 燃焼器
14 高圧(HP)タービン
16 低圧(LP)タービン
18 排気出口
20 駆動シャフト
22 高圧(HP)圧縮機
24 低圧(LP)圧縮機
26 空気取入口
28 負荷
30 入口センサ
32 出口センサ
34 モジュール線
36 モジュール線
38 モジュール線
40 モジュール線
42 遠隔監視データベース
44 インテリジェントターボ機械トラッキングフィルタ(ITTF)
46 根本原因アナライザ(RCA)
48 ターボ機械
50 センサ
52 プロファイル傾向
54 根本原因解析
56 傾向数量計算器
58 ファジー論理エンジン
62 物理モデル
64 統計モデル
60 知識ベースシステム(KBS)
70 関数
72 関数
74 関数
78 垂直線
80 点
82 点
84 論理
86 ブロック
88 ブロック
90 数量的プロファイル傾向
92 ブロック
94 ファジー値
96 ブロック
図1
図2
図3
図4
図5