特許第6055199号(P6055199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055199
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】野菜収穫機
(51)【国際特許分類】
   A01D 17/00 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   A01D17/00
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-93090(P2012-93090)
(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2013-220053(P2013-220053A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年4月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391025914
【氏名又は名称】八鹿鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 宏志
(72)【発明者】
【氏名】和田 秀人
(72)【発明者】
【氏名】楢原 陽三郎
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−063394(JP,A)
【文献】 実開平01−096432(JP,U)
【文献】 実開昭61−100938(JP,U)
【文献】 実開昭63−011417(JP,U)
【文献】 特開2011−115172(JP,A)
【文献】 特開2005−021038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00−33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部と、前記走行部の上部に配置される野菜搬送部と、前記野菜搬送部の前部上方に配置される野菜掻き込み部と、を備えて、前記走行部を駆動して機体を進行させながら野菜を掻き込んで収穫する野菜収穫機であって、
前記野菜搬送部は、左右一対の駆動輪体と左右一対の従動輪体との間にそれぞれ左右一対の無端体を巻回し、左右一対の無端体間に所定間隔をあけて搬送部材を横架し、
前記搬送部材は、無端体の内周側に設けられる複数の第一搬送部材と、無端体の外周側に設けられる複数の第二搬送部材とからなり、
前記無端体を構成するチェーンの所定ピッチごとに第一搬送部材を取り付ける第一支持プレートと、
前記第一搬送部材と第二搬送部材の両方を取り付ける第二支持プレートとを固定し、
前記第一支持プレートは、前記チェーンのピンの回動軌跡の内側方向に向かうように固定され、
前記第二支持プレートは、前記回動軌跡の内外両方向に向かうように固定され、
該第二支持プレートにおいて、前記回動軌跡の内側に第一搬送部材の軸部材が支持され、回動軌跡の外側に第二搬送部材の軸部材が支持され、
前記第一搬送部材の軸部材の軸心は、無端体を構成するチェーンのピンの軸心の回動軌跡よりも内側に配置され、前記第二搬送部材の軸部材の軸心は、前記回動軌跡よりも外側に配置される
ことを特徴とする野菜収穫機。
【請求項2】
請求項1記載の野菜収穫機において、前記第一搬送部材と第二搬送部材は、共に、左右の無端体に横設される軸部材と、該軸部材に回転自在に外嵌されるカラーとを備え、該カラーは軸方向に三分割されていることを特徴とする野菜収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体を走行させながら野菜を収穫する野菜収穫機に関する。詳しくは、圃場上の野菜を掻き込んで、コンベアにより後方へ搬送するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畝で生育した人参、玉葱、馬鈴薯、甘藷等の野菜が畝から引きぬかれ、畝上に置かれた後、その畝上の野菜を野菜収穫機によって収穫することは知られている。例えば、特許文献1に示す技術である。
【0003】
特許文献1に示す技術では、機体前部に掻き込み部が配設され、該掻き込み部の下方に野菜搬送部の前部が配置され、その野菜搬送部は後斜め上方に延設されて、掻き込み部により野菜搬送部に掻き込んで、拾い上げた野菜を野菜搬送部により後方へ搬送し、野菜搬送部の後端部よりコンテナに収容するようにしていた。
【0004】
特許文献1における野菜収穫機の野菜搬送部は、左右一対の駆動スプロケットと左右一対の従動スプロケットとの間にそれぞれ左右一対の無端体となるチェーンを巻回し、左右一対のチェーン間に所定間隔をあけて搬送部材を横架していた。該搬送部材は、周回するチェーンの外周側に設けられる複数の第一搬送部材と、内周側に設けられる複数の第二搬送部材からなり、第一搬送部材は軸部材と、該軸部材に回転自在に外嵌されるカラーから構成されていた。前記カラーは左右に分割されて軸部材上に外嵌される第一カラーと、第一カラーの分割部分の外周を覆う第二カラーから構成されていた。このように、第二カラーを設けることで第一カラーの分割部分の強度を高めることが可能となっていた。しかし、二条植えの畝の掘起作業の場合には、畝の左右両側から中央方向にサブソイラが挿入されて掘り起こされ、左右中央が掘り起こされずに硬い状態となっていたので、搬送部材が左右二分割の構成であると、野菜収穫機による収穫作業時に、搬送部材の左右中央が変形し、カラーが軸部材に対して回転できず、搬送部材上に付着した土が落ち難くなり、野菜とともに土がコンテナに収容されることがあった。また、第一搬送部材はカラーが軸部材に対して回転自在であるが、第二搬送部材はチェーンに固定されているために回転できず土の付着が発生しやすくなっていた。特に、冬季では圃場が乾燥しにくいため、搬送部材に土が付着し易く塊となって、後方まで搬送されて、コンテナ内に収容されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−63394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、野菜収穫機の野菜搬送部の搬送部材に土が付着しないようにして、土がコンテナに収容されないようにするとともに、野菜搬送部前端部での土の掻き込みも低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
請求項1においては、走行部と、前記走行部の上部に配置される野菜搬送部と、前記野菜搬送部の前部上方に配置される野菜掻き込み部と、を備えて、前記走行部を駆動して機体を進行させながら野菜を掻き込んで収穫する野菜収穫機であって、前記野菜搬送部は、左右一対の駆動輪体と左右一対の従動輪体との間にそれぞれ左右一対の無端体を巻回し、左右一対の無端体間に所定間隔をあけて搬送部材を横架し、前記搬送部材は、無端体の内周側に設けられる複数の第一搬送部材と、無端体の外周側に設けられる複数の第二搬送部材とからなり、無端体を構成するチェーンの所定ピッチごとに第一搬送部材を取り付ける第一支持プレートと、前記第一搬送部材と第二搬送部材の両方を取り付ける第二支持プレートとを固定し、前記第一支持プレートは、前記チェーンのピンの回動軌跡の内側方向に向かうように固定され、前記第二支持プレートは、前記回動軌跡の内外両方向に向かうように固定され、該第二支持プレートにおいて、前記回動軌跡の内側に第一搬送部材の軸部材が支持され、回動軌跡の外側に第二搬送部材の軸部材が支持され、前記第一搬送部材の軸部材の軸心は、無端体を構成するチェーンのピンの軸心の回動軌跡よりも内側に配置され、前記第二搬送部材の軸部材の軸心は、前記回動軌跡よりも外側に配置されるものである。
【0009】
請求項2においては、請求項1記載の野菜収穫機において、前記第一搬送部材と第二搬送部材は、共に、左右の無端体に横設される軸部材と、該軸部材に回転自在に外嵌されるカラーとを備え、該カラーは軸方向に三分割されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1においては、野菜搬送部の前部において、無端体が回動する外周の半径が、従来よりも短くなる。
つまり、野菜搬送部の前部における無端体となるチェーンが巻回される従動スプロケットの径が同一であっても、従動軸心からの距離は短くでき、その分、野菜搬送装置の前部の高さを低い位置まで下げることができる。
従って、野菜を拾い上げ易くなり、土中へ突っ込む量を低減でき、土の持ち上げも低減できる。
【0011】
請求項2においては、野菜搬送装置により畝上の野菜とともに土の塊が持ち上げられて搬送されても、全ての搬送部材を形成するカラーが3分割され回転自在となっているので、二条植えの畝の左右中央がかたくなっていても、搬送部材が撓んで変形し畝上面に沿うことができ掻き込み効率を悪化させることがない。
また、カラーは三分割されているため、それぞれ別々に回転するようになり、部分的に回転抵抗が大きい部分が生じても、全体の回転が止まることがない、従って、カラーに付着した土は振動や移動等により下方に回転して落下しやすくなり、篩落とし効果が高められ、コンテナへの混入を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る野菜収穫機の全体構成を示す側面図。
図2】同じく平面図。
図3】野菜搬送部のコンベアの前部側面断面図。
図4】同じく正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図1図2を参照して、野菜収穫機1の全体的な構成について説明する。尚、以下では本実施形態の野菜収穫機1によって収穫される野菜を人参として説明するが、本発明はこれに特に限定するものではなく、例えば、馬鈴薯、玉葱、または甘藷等の畝から引き抜かれて畝上に置かれている野菜であればよい。以下の説明においては、図1に示した矢印Aの方向を野菜収穫機1の進行方向、つまり前方向として、前後左右方向を規定するものとする。
【0014】
野菜収穫機1は、畝上に引き抜いて置かれた人参を回収し、コンテナ55・55・・・に収容する収穫機である。野菜収穫機1は、主として機体フレーム12、駆動部13、走行部14、操縦部15、野菜掻き込み部16、野菜搬送部17、野菜収容部18を具備する。野菜掻き込み部16は、野菜収穫機1の最前部に配置され、板状の弾性体を進行方向と直角方向に配置して後方へ回転させて、野菜掻き込み部16の下方に配設される野菜搬送部17の前部へ畝上の人参を送り込む。
【0015】
野菜搬送部17は、すだれ状の無端搬送体で構成され、前低後高に形設され、その最後部の下方に野菜収容部18が連設される。
【0016】
畝から引き抜かれて畝上に置かれている人参は、野菜掻き込み部16により掻き込まれて野菜搬送部17に受け渡され、野菜搬送部17にて後方へ保持・搬送される。野菜搬送部17の終端まで搬送された人参は、野菜収容部18にセットされるコンテナ55中へ収容される。
【0017】
以下では、図1から図2を参照して、野菜収穫機1の各部の構成について説明する。機体フレーム12は、野菜収穫機1の主たる構造体となるものである。機体フレーム12は、長手方向を前後方向として、複数の板材により構成される略箱状の部材である。
【0018】
前記駆動部13は、エンジン131を有し、野菜収穫機1を駆動するための動力を発生する動力源である。エンジン131は、機体フレーム12の左後部に搭載される。
【0019】
走行部14は、左右一対のクローラ走行装置によって構成される。クローラ走行装置は、機体フレーム12を支持し、野菜収穫機1を走行可能とするものである。クローラ走行装置は機体フレーム12の下部に配置され、前記エンジン131の動力がトランスミッションにより変速されて駆動される。ただし、走行部14をクローラで構成しているが、ホイール等で構成してもよい。
【0020】
操縦部15は、複数のレバー等を備え、オペレータによって野菜収穫機1の操縦が行われる部位である。操縦部15は、前記駆動部13の上方で、機体フレーム12の最後部から上後方へと突出するように配置される。操縦部15では、走行クラッチレバーや作業クラッチレバーや昇降レバー等が配置され、これらのレバー操作等によって、クローラ走行装置、野菜掻き込み部16、及び野菜搬送部17を別個に駆動操作できるように構成される。
【0021】
野菜掻き込み部16は、畝上に置かれている人参を掻き込んで野菜搬送部17に受け渡すための部位である。野菜掻き込み部16は、左右一対の支持アーム160・160、掻き込み駆動ケース161、掻き込み装置163等を具備する。
【0022】
支持アーム160・160は、掻き込み装置163を支持する部材である。支持アーム160・160は、その前端部で掻き込み装置163を挟み両側に左右一対に配置される。支持アーム160の後端部は、野菜搬送部17の搬送駆動ケース171の後端部に枢支される。
【0023】
掻き込み駆動ケース161には、チェーンやスプロケット等の動力伝達機構が内装され、エンジン131からの動力が掻き込み装置163の駆動軸164に伝達されるようにしている。
【0024】
掻き込み装置163は、畝上の人参を野菜搬送部17のコンベア270上に案内するための装置である。掻き込み装置163は、支持アーム160・160の前端部に回転可能に支持される駆動軸164と、駆動軸164の左右両側に固定される回転輪165・165と、左右の回転輪165・165の外周間に搖動自在に支持される掻き込み体167・167・・・等を具備する。
【0025】
このような構成により、掻き込み装置163を畝に近づけた状態で、図1において反時計回りに掻き込み体167・167・・・を回転させることで、畝上に置かれた人参を掻き込み、連設される野菜搬送部17に案内することができる。
【0026】
野菜搬送部17は、野菜掻き込み部16から受け渡された人参を後方へ搬送し、搬送途中で選別作業者(補助作業者)により傷ついたり、腐ったりした出荷できない人参が除去され、後端からコンテナ55に収容される部位である。野菜搬送部17は主として左右一対の搬送駆動ケース171・171やコンベア270を備える。
【0027】
搬送駆動ケース171・171は、動力伝達機構を内装するとともにコンベア270を支持するものである。搬送駆動ケース171・171の後端部は、回動支軸173に枢支される。回動支軸173は、機体フレーム12の後部に立設した支柱に支持される。回動支軸173はコンベア270の駆動軸を兼ねる。また、搬送駆動ケース171と機体フレーム12との間には、油圧シリンダ172が介装されており、油圧シリンダ172を動作させることによって、搬送駆動ケース171の機体フレーム12に対する相対高さを調整できる構成となっている。
【0028】
コンベア270は野菜掻き込み部16によって掻き込まれた畝上の野菜を後方へ搬送するものである。該コンベア270の詳細な構成は後述する。
【0029】
前記コンベア270の後部には草取りガイド20が配置される。草取りガイド20は、コンベア270の後部に取り付けられて、コンベア270により野菜とともに搬送されてきた雑草または茎や葉等の夾雑物を除去し、コンテナ55に入らないようにして、選別作業の負担を軽減するものである。
【0030】
草取りガイド20は、搬送駆動ケース171に取り付けるためのガイド板21と、ガイド板21に揺動自在に所定間隔をあけて取り付けられる複数のガイド棒22から構成される。コンベア270により野菜とともに搬送されてきた雑草、または、茎や葉等の夾雑物は、ガイド棒22に絡みつき、人参をコンテナ55に案内するシュータ9の前方から圃場に落下させる。
【0031】
前記野菜搬送部17の前後方向中途部の左右両側に作業部19・19が配設される。作業部19は、選別作業者が位置してコンベア270の搬送面上の傷物等の不要物を取り除くための部位である。作業部19は、主としてステップ191、座席192、安全フレーム193を備える。
【0032】
ステップ191は、作業者が座席192に座るために乗降する部位である。ステップ191は、前後方向を長手とする板上の部材であって、機体フレーム12の側部に支持部材を介して取り付けられる。
【0033】
座席192は、ステップ191の上面の前部、前後中央部、および後部の任意の位置に配置され、不要物の除去作業を行う作業者が着座するためのものである。安全フレーム193は、座席192に着座した作業者がコンベア270内に入り込まないようにガードするものである。
【0034】
また、作業者は、座席192・192に着座しながら、安全フレーム193を握ることで体を支えて、または、安全フレーム193・193にもたれることで、コンベア270の搬送面を搬送される不良の人参や根や茎等の不要物の除去作業が容易に行えるようにしている。
【0035】
野菜収容部18は、コンベア270から搬送される人参をコンテナ55に収容するための部位である。野菜収容部18は、前記機体フレーム12の後端に受台8が設けられ、該受台8上にコンテナ55を載置可能に構成され、コンベア270の後部には、草取りガイド20と人参をコンテナ55にガイドするシュータ9が設けられている。シュータ9は、ゴム等の弾性板材で構成され、コンベア270の後端左側部と下部と、受台8に載置されたコンテナ55の上端との間に配設される。こうして、コンベア270後端から落下した人参はシュータ9により案内されてコンテナ55内に収容されるようになる。
【0036】
次に、コンベア270について図3図4より詳述する。コンベア270は、主として左右一対の駆動輪体となる駆動スプロケット271・271、回動支軸(駆動軸)173、左右一対の従動輪体となる従動ローラ273・273、無端帯として構成される左右一対の搬送チェーン275・275、左右の搬送チェーン275・275の間に横架される第一搬送部材276・276・・・、第二搬送部材277・277・・・等によって構成される。
【0037】
駆動スプロケット271・271、従動ローラ273・273、及び搬送チェーン275・275は、搬送駆動ケース171・171に内装される。駆動スプロケット271・271は回動支軸173の両端に固設されて搬送駆動ケース171・171の後端部に左右一対に配置され、従動ローラ273・273は搬送駆動ケース171・171の前端部に片持ち支持された従動軸278・278にそれぞれ固設される。
【0038】
搬送チェーン275・275は、駆動スプロケット271・271と従動ローラ273・273に巻き掛けられ、左右一対に配置される。このように構成することより、駆動スプロケット271・271が駆動装置(不図示)により回転駆動されると、これにともなって搬送チェーン275・275が回転駆動される。搬送チェーン275はピン275aと、前後二つのピン275aの左右両側を支持するリンクプレート275bと、ピン275aに回転自在に外嵌されるローラからなり、ピン275aとリンクプレート275bを無端状に連結して構成される。そして、リンクプレート275bには所定ピッチごとに第一搬送部材276を取り付けるための第一支持プレート279と、第一搬送部材276と第二搬送部材277を取り付けるための第二支持プレート280がリンクプレート275bに取り付けられる。本実施形態では、略三つの第一搬送部材276毎に第二搬送部材277が取り付けられるが、収穫する野菜に応じてその間隔は変更される。また、第一搬送部材276と第二搬送部材277の間の距離も野菜に応じて変更される。
【0039】
第一搬送部材276及び第二搬送部材277は、前後方向に所定間隔をあけて平行にそれぞれ左右の搬送チェーン275・275の間に横架される。第一搬送部材276は側面視における搬送チェーン275の中心回動軌跡C、つまり、ピン275aの軸心の回動軌跡Cの内側に配置される。第二搬送部材277は側面視における搬送チェーン275の中心回動軌跡C、つまり、ピン275aの軸心の回動軌跡Cの外側に配置される。
【0040】
具体的には、第一搬送部材276は第一支持プレート279または第二支持プレート280を介して取り付けられ、第二搬送部材277は第二支持プレート280を介して取り付けられる。前記第一支持プレート279は正面視L字状に折り曲げ形成され、上下方向面が回動軌跡Cの内側方向に向かうようにして、横方向面がリンクプレート275bに固定される。第二支持プレート280は正面視横T字状に形成されて、上下方向面が回動軌跡Cの内外両方向に延設され、横方向面がリンクプレート275bに固定される。
【0041】
第一搬送部材276は略直線棒状の軸部材276aとカラー276bからなり、軸部材276aの両端は第一支持プレート279または第二支持プレート280に固定される。軸部材276aの第一支持プレート279への取付高さと、軸部材276aの第二支持プレート280への取付高さは、前記回動軌跡Cからの距離が同じとなるように取り付けられる。なお、軸部材276aは本実施形態では軽量化を図るためパイプで構成しているが、中実の棒材で構成することもできる。前記軸部材276aにパイプ状のカラー276bが回転自在に外嵌され、該カラー276bは軸方向に略均等に三分割されている。つまり、左カラー276bL・中カラー276bM・右カラー276bRから構成されている。
【0042】
第二搬送部材277は略直線棒状の軸部材277aとカラー277bからなり、軸部材277aの両端は第二支持プレート280に固定される。軸部材277aの支持プレート279への取付位置は、回動軌跡Cに対して軸部材276aの取付位置と反対側に取り付けられる。言い換えれば、第二支持プレート280において、回動軌跡C内側に軸部材276aが取り付けられ、回動軌跡Cの外側に軸部材277aが取り付けられる。なお、従来の搬送部材は、従動ローラ軸が左右の搬送駆動ケース171・171間に横架され、この従動ローラ軸と干渉しないように回動軌跡Cよりも外側に配置されていた。本実施形態では、従動ローラ軸278は左右両側で片持ち支持されているため、左右のローラ軸278・278間に第一搬送部材276が位置しても干渉することはない。前記軸部材277aにパイプ状のカラー277bが回転自在に外嵌され、該カラー277bは軸方向に略均等に三分割されている。つまり、左カラー277bL・中カラー277bM・右カラー277bRから構成されている。
【0043】
こうして、第一搬送部材276は搬送チェーン275の中心回動軌跡Cの内側を回転することになり、第二搬送部材277は搬送チェーン275の中心回動軌跡Cの外側を回転することになり、第一搬送部材276と第二搬送部材277が左右の搬送チェーン275・275の間に横架されて、前後方向に所定間隔をあけて平行に並べることで、すだれ状の搬送面が形成される。
【0044】
そして、上側搬送面において、第二搬送部材277は、第一搬送部材276の所定本数をあけて第一搬送部材276よりも高い位置に配置され、側面視で凹部が形成され、人参が凹部内に入り搬送されるように構成される。
【0045】
こうして、駆動スプロケット271・271を回転駆動することにより搬送チェーン275・275が回転駆動され、搬送部材276・277・・・を搬送方向に向かって移動させることにより、人参は、前記凹部に収容されて移動され、野菜収容部18へと搬送することができる。このとき、カラー276b・277bは回転自在に軸部材276a・277aに外嵌されているため、カラー276b・277bに土等が付着しても、土の重さにより下方に回転した慣性力やコンベア270自体の移動による振動等によって振り落される。また、カラー276b・277bはそれぞれ三分割されているため、畝の左右中央が固く軸部材276a・277aが撓んでも、個々に独立して回転でき、土落ちが容易に行われる。なお、第一搬送部材276の軸部材276aの直径は、第二搬送部材277の軸部材277aの直径よりも大きく構成し、カラー276bの外径はカラー277bの外径よりも大きく構成している。このように構成することで、凹部空間をできるだけ大きく構成し、底面側の第二搬送部材277の数を減らせるようにしている。
【0046】
また、第一搬送部材276は搬送チェーン275の中心回動軌跡Cの内側を回転するので、第一搬送部材276と第二搬送部材277とで形成される凹部の深さが同じで回動軌跡Cの外側に配置される構成に比べて、コンベア270前端部の上下幅を短くできる。つまり、第一搬送部材276及び第二搬送部材277と従動軸278の軸心からの距離を短くできて、コンベア270前部における拾い上げ高さを低くすることができることになり、拾い上げミスを低減できる。
【0047】
また、従動軸278は片持ちで支持され、左右の従動軸278と従動軸278の間には空間を構成することができるため、その空間に第一搬送部材276を通過させることが可能となり、従動ローラ273の直径を小さくできて、第一搬送部材276と第二搬送部材277を更に低い位置まで下げることができ、野菜搬送部17の前部で野菜をさらに拾い易くなるのである。また、左右の従動軸278と従動軸278の間の空間に土等が溜まったり、詰まったりすることを防止している。
【0048】
以上のように、走行部14と、前記走行部14の上部に配置される野菜搬送部17と、前記野菜搬送部17の前部上方に配置される野菜掻き込み部16と、を備えて、前記走行部14を駆動して機体を進行させながら野菜を掻き込んで収穫する野菜収穫機1であって、前記野菜搬送部17は、左右一対の駆動輪体となる駆動スプロケット271・271と左右一対の従動輪体となる従動ローラ273・273との間にそれぞれ左右一対の無端体となる搬送チェーン275・275を巻回し、左右一対の搬送チェーン275・275間に所定間隔をあけて第一搬送部材276・276・・・と第二搬送部材277・277・・・とを横架し、全ての搬送部材276・277・・・は、左右の搬送チェーン275・275に横設される軸部材276a・277aと、該軸部材276a・277aに回転自在に外嵌されるカラー276b・277bを備え、該カラー276b・277bは軸方向に三分割されるので、二条植えの畝の左右中央がかたくなっていても、搬送部材が撓んで変形し畝上面に沿うことができ掻き込み効率を悪化させることがない。また、カラーは三分割されているため、それぞれ別々に回転するようになり、部分的に回転抵抗が大きい部分が生じても、全体の回転が止まることがない、従って、カラーに付着した土は振動や移動等により下方に回転して落下しやすくなり、篩落とし効果が高められ、コンテナへの混入を低減することができる。
【0049】
また、前記搬送部材は、無端体の外周側に設けられる複数の第一搬送部材276・276・・・と、無端体の内周側に設けられる複数の第二搬送部材277・277・・・とからなり、前記第一搬送部材276の軸部材276aの軸心は、無端体を構成する搬送チェーン275のピン275aの軸心の回動軌跡Cよりも内側に配置され、第二搬送部材277の軸部材277aの軸心は、前記回動軌跡Cよりも外側に配置されるので、野菜搬送部17の前部において、搬送チェーン275が回動する外周の半径が、従来よりも短くなる。つまり、野菜搬送部17の前部における搬送チェーン275が巻回される従動ローラ273の径が同一であっても、従動軸心からの距離は短くでき、その分、野菜搬送部17の前部の高さを低い位置まで下げることができる。従って、野菜を拾い上げ易くなり、土中へ突っ込む量を低減でき、土の持ち上げも低減できる。また、図3に示すように、第一搬送部材276と第一搬送部材276との間の距離Aは、前記第一搬送部材276を前記回動軌跡Cよりも内側に配置することで、従動ローラ273側を周回するときの第一搬送部材276と第一搬送部材276との間の距離Bが従来(回動軌跡Cよりも外側配置)よりも短くなり、第一搬送部材276と第一搬送部材276との間から野菜がこぼれたり、挟み込んだりすることなく拾い上げて載せることができる。前記第一搬送部材276と第二搬送部材277との間の距離は従来と変わらず同じ凹部空間を形成でき、拾い上げた野菜を保持して確実に搬送できる。更に、前記野菜搬送部17の後部において、第一搬送部材276が駆動スプロケット271の周囲を回動するとき、従来は回動軌跡Cよりも外側に配置されていたので、第一搬送部材276と第一搬送部材276との間の距離Aは広がり、コンテナに収納される前にその間から落下することがあったが、本発明では、回動軌跡Cよりも内側に第一搬送部材276を配置しているため、第一搬送部材276と第一搬送部材276との間の距離は短くなることになり、野菜がその間から落下することなく、確実にコンテナ内に収容することができるようになった。
【符号の説明】
【0050】
C 回動軌跡
1 野菜収穫機
14 走行部
17 野菜搬送部
270 コンベア
271 駆動スプロケット
273 従動ローラ
275 搬送チェーン
276 第一搬送部材
277 第二搬送部材
276a・277a 軸部材
276b・277b カラー
図1
図2
図3
図4