【文献】
田中克二,石油がなくなったら−化学原料は? 身近な材料・商品とGSC−持続可能な社会を目指す化学技術の過去・現在・未来−,化学と教育,2006年12月,第54巻,12号,658〜661頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態に係る変性ジエン重合体について、詳細に説明する。
[変性ブタジエン重合体]
本発明の実施形態に係る変性ジエン重合体は、植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオブタジエン単量体を重合してなる変性ジエン重合体であって、該変性ジエン重合体中の官能基に由来する窒素原子、スズ原子、ケイ素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含む変性ジエン重合体であり、タイヤとして使用した際に、低発熱性、破壊特性、耐摩耗性などに優れるタイヤを得ることができる。
【0008】
本発明の変性ジエン重合体は、該重合体中の官能基に由来する窒素原子、スズ原子、ケイ素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含むものであり、後述する変性剤を用いて主として、未変性のジエン重合体に官能基を誘導することにより得られるものである。
【0009】
本発明の変性ジエン重合体は、植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオブタジエン単量体を用いて製造されるものであり、該変性ジエン重合体のδ13Cの値が−30から−28.5‰、又は−22以上であることが望ましい。ここで、変性ジエン重合体のδ13Cの値とは、安定同位体比測定装置により測定されたものである。
【0010】
δ13Cは、物質における安定同位体の比率を表す。δ13Cは、対象とする物質中の
13Cと
12Cとの比である
13C/
12Cが、標準試料(白亜紀のベレムナイト(矢石)類の化石)中の同位体比と比較して、どの程度ずれているかを表す指標であり、この比は、‰(千分率)で表される。δ13Cの値(負値)がゼロから離れるほど、物質中の
13Cの割合が低いことを意味する。
軽い同位体は、重い同位体よりも拡散が早く、反応性も高いことから、例えば、光合成によって植物体内に取り込まれた大気中の二酸化炭素の炭素原子の場合、
13Cよりも
12Cのほうが植物体内に固定され易いことがわかっている。
すなわち、植物体内に取り込まれた炭素原子は、大気中の炭素原子に比べて、相対的に
12Cが多く
13Cが少なくなる。したがって、植物体内に取り込まれた炭素の安定同位体比(δ13C)は、大気中に存在する炭素の安定同位体比よりも低くなる。
このようにして同位体比が変わることを同位体分別と呼び、Δ13Cで表される(Δ13Cは、δ13Cと区別される)。
Δ13C=(大気中のδ13C)−(試料中のδ13C)
従って、変性ジエン重合体のδ13Cの値から変性ジエン重合体の由来物質を特定することができる。
【0011】
変性ジエン重合体のδ13Cの値は、−21‰〜−12‰の範囲が好ましい。変性ジエン重合体のδ13Cの値は、−29.5‰〜−28.5‰の範囲が好ましい。また、変性ジエン重合体のδ13Cの値は、−30‰〜−29‰の範囲が好ましい。
【0012】
また、本発明の変性ジエン重合体は、植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオブタジエン単量体を重合してなるものであることから、変性ジエン重合体のΔ14Cの値が−75〜−225‰であることが望ましい。
ここで変性ジエン重合体のΔ14Cの値とは、ここで、変性ジエン重合体のΔ14Cの値とは、試料である炭素がδ13C=−25.0‰であると仮定したときの、
14C濃度(
14AN)に換算した値である。なお、変性ジエン重合体のδ13Cは前述したとおりであり、δ13Cの値は、安定同位体比測定装置により測定されたものである。
Δ14Cは、上述したδ13Cの値から、さらに下記のようにして算出できる。
δ14C=[(
14As−
14AR)/
14AR]×1000 (1)
δ13C=[(
13As−
13APDB)/
13APDB]×1000 (2)
ここで、
14As:試料炭素の
14C濃度:(
14C/
12C)sまたは(
14C/
13C)s
14AR:標準現代炭素の
14C濃度:(
14C/
12C)Rまたは(
14C/
13C)R
(1)式の
14C濃度を、δ13Cの測定値をもとに、次式に基づいて換算する。
14AN=
14As×(0.975/(1+δ13C/1000))
2 (
14Asとして
14C/
12Cを使用するとき)
または
14AN=
14As×(0.975/(1+δ13C/1000)) (
14Asとして
14C/
13Cを使用するとき)
以上より、
Δ14C=[(
14AN−
14AR)/
14AR]×1000 (‰)と算出される。
【0013】
ジエン重合体のΔ14Cの値が−75〜−225‰であることは、現在の大気中の二酸化炭素における炭素のΔ14Cと同等のレベルであり、現存生育する植物体内中に固定された有機物に含まれる炭素であることを意味する。
放射性炭素
14Cの半減期は、約5730年であるため、化石資源中に含まれる炭素には、放射性炭素
14Cは含まれない。化石資源由来のブタジエンのΔ14Cは、−1000‰程度である。
従って、ジエン重合体のΔ14C値、或いは放射性炭素
14Cの壊変毎分毎グラム量、δ13Cの値により、ジエン重合体の由来物質を特定することができる。この場合の放射性炭素
14Cの壊変毎分毎グラム量値は、0.1dpm/gC以上である。
【0014】
本発明の変性ジエン重合体の分子量は、1000から5000000とすることができる。好ましくは、100000〜500000であり、より好ましくは、150000〜300000である。
また、ジエン単量体の全質量に対して、バイオブタジエン単量体が、10〜100質量%含まれることが好ましい。
【0015】
<バイオブタジエン単量体成分>
バイオブタジエン単量体成分は、植物資源を含む生物由来の資源から合成されるバイオエタノールを出発物質として合成して得られる。
【0016】
[バイオブタジエン単量体の合成方法]
<合成方法>
植物資源を含む生物由来の資源(バイオマス)から合成されるバイオエタノールを出発物質として、バイオブタジエン単量体を合成する方法について説明する。
まず、バイオマスからバイオエタノールを生成する。生成されたバイオエタノールを加熱下において、金属元素として少なくともマグネシウム及びケイ素を含む複合金属酸化物に接触させることにより、バイオブタジエン単量体成分を含む混合物を生成する。この混合物からバイオブタジエン単量体成分を抽出し、抽出されたバイオブタジエン単量体成分を用いてブタジエン重合体を製造する。
この合成方法では、複合金属酸化物は、触媒として作用する。良好な触媒活性を発現させる観点から、バイオエタノールを複合金属酸化物に接触させる際における温度は、350℃〜450℃とすることが好ましい。
【0017】
(バイオエタノールの生成)
バイオエタノールの原料となる生物由来の資源としては、サトウキビ、トウモロコシ、甜菜、キャッサバ、ビート、木材、藻類などが挙げられる。これらの資源のなかでも、生産効率の面から糖質あるいはデンプン質を多く含む、サトウキビ、トウモロコシ、甜菜を用いることが好ましい。
【0018】
(複合金属酸化物)
複合金属酸化物は、金属元素として、少なくともマグネシウム及びケイ素を含む。なかでも、ゾルゲル法により合成したシリカ−マグネシアの複合酸化物を使用することが好ましい。使用可能な金属元素としては、亜鉛、ジルコニウム、銅、アルミニウム、カルシウム、リン、タンタルなどが挙げられる。
【0019】
(複合金属酸化物の製造方法)
複合金属酸化物の製造方法としては、ゾルゲル法や、金属塩の水溶液中とシリカを混合し、蒸発乾燥により担持させる方法などが挙げられる。
【0020】
(バイオエタノールと複合金属酸化物との接触反応)
複合金属酸化物とバイオエタノールとの接触反応は、一般的に知られている固定床ガス流通式触媒反応装置(例えば特開2009−51760)を用いることができる。
複合金属酸化物を反応管に充填し、前処理として窒素ガスなどのキャリアガス雰囲気下において加熱した後、反応管の温度を反応温度まで下げる。その後、所定量のキャリアガスと、バイオエタノールとを導入する。反応により生成したガスからバイオブタジエン単量体を分離する。分離方法としては、生成したガスを冷却した凝縮器に通し、未反応のバイオエタノールや水などの重質不純物を分離し、その後、反応ガスを有機溶媒中にバブリングし、バイオブタジエン単量体を溶媒中に溶解させて、溶液として回収する。エチレンやキャリアガスであるN
2などの軽質不純物は、有機溶媒中に溶解せずに通過させて、溶媒タンクから排出する。
【0021】
[変性ジエン重合体の製造方法]
本発明の変性ジエン重合体の製造方法について説明する。
本発明の変性ジエン重合体の製造方法としては、上記の記載で説明したバイオブタジエン単量体を用いて未変性のブタジエン重合体を製造し、窒素原子、スズ原子、ケイ素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含む変性剤とを反応させる方法がある。
【0022】
<未変性のジエン重合体の製造方法>
未変性のジエン重合体の製造方法としては、特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法、乳化重合法のいずれも用いることができるが、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。また、重合方法としては、有機金属化合物を重合開始剤とするアニオン重合法、及び希土類金属化合物を重合開始剤とする配位重合法のいずれも用いることができる。
アニオン重合法で使用する重合開始剤としては、有機金属化合物を用いることができ、金属種としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる1種であることが好ましく、アルカリ金属が好ましく、特にリチウム金属が好ましい。
また、配位重合法で使用する重合開始剤としては、希土類金属化合物を用いることができ、ネオジム、ランタン、ガドリウム化合物が好ましい。
【0023】
また、ニッケル系触媒等を用いることで、トランスポリブタジエンを合成することも可能である。また、特開平9−20811号公報に記載されている懸濁重合法により、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンを製造することも可能である。すなわち、ブタジエンの存在下、コバルト化合物、第I〜III族の有機金属化合物または水素化金属化合物、並びにケトン、カルボン酸エステル、ニトリル、スルホキシド、アミド及び燐酸エステルからなる群から選ばれた化合物を接触させて得られた熟成液(A成分)、並びに、二硫化炭素、イソチオシアン酸フェニル及びキサントゲン酸化合物からなる群から選ばれた化合物(B成分)からなる触媒等を用いて製造できる。また、可溶性コバルト−有機アルミニウム化合物−二硫化炭素−融点調節剤からなる触媒系からなる溶液重合法を用いてもよい。このような未変性のブタジエン重合体の分子末端には、使用された触媒から由来する活性金属部位が存在する。
【0024】
なお、ジエン重合体は、バイオブタジエン単量体と、このバイオブタジエン単量体と共重合可能な単量体とから製造された共重合体であってもよい。バイオブタジエン単量体と共重合可能な単量体としては、単量体としての共役ジエン化合物としては、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。一方、単量体としての芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。なお、バイオブタジエン単量体と共重合可能な単量体は、植物資源を含む生物由来の資源から合成されていても、石油化学由来のいずれでもよい。また、バイオエタノール由来ではない、通常のジエン単量体が所定量含まれていてもよい。
【0025】
<変性ジエン重合体の製造方法>
本願発明の変性ジエン重合体の製造方法について説明する。
本願発明の変性ジエン重合体の製造方法は、特に限定されるものではないが、代表的には以下5つの方法を挙げることができる。
(1)停止末端変性:重合触媒の存在下で重合させてジエン重合体を製造し、次いで得られたジエン重合体と窒素原子、スズ原子、ケイ素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含む変性剤とを反応させる方法。
(2)開始末端変性:窒素原子、スズ原子、ケイ素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含む変性重合開始剤を用いて該バイオブタジエン単量体を重合する方法。
(3)主鎖変性1:窒素原子、スズ原子、ケイ素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含む変性モノマーを、該バイオブタジエン単量体と共重合する方法。なお、該変性モノマーは、該バイオブタジエン単量体とランダム共重合してもブロック共重合してもよい。
(4)主鎖変性2:ジエン重合体を重合反応により得た後に、変性剤をグラフト反応させる方法。
(5)主鎖変性3:ジエン重合体を重合反応により得た後に、該ブタジエン重合体の炭素間の二重結合部をエポキシ基、チオエポキシ基に変換する方法。
上記(1)〜(5)の方法は、単独で行なってもよいし、複数を組み合わせて行なってもよい。
【0026】
上記(1)〜(5)の方法を行なうに当たって、アニオン重合方法、配位重合方法、及び乳化重合方法を用いることができる。
特に、アニオン重合方法は、上記(1)〜(5)の各方法を行なう際に用いることが好ましい。また、配位重合方法は、上記(1)及び前記(3)〜(5)の各方法を行なう際に用いることが好ましい。そして、乳化重合方法は、上記(3)〜(5)の各方法を行なう際に用いることが好ましい。
【0027】
上記アニオン重合方法又は配位重合方法を用いて変性剤を反応させる方法は、例えば、WO2006/093051に開示されている。また、特開2003−246816号公報には、上記アニオン重合方法を用いて変性剤を反応させる方法が開示されている。また、配位重合方法を用いて変性剤を反応させる方法は、WO2006/112450に開示されている。そして、乳化重合方法を用いて変性剤を反応させる方法は、特開2007−204584号公報に開示されている。これらの公報に開示されている変性剤は、本発明で使用される変性剤となりうるものである。
本発明で使用される変性剤は、窒素原子、スズ原子、ケイ素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含む変性剤であり、これらの変性剤が官能基としての作用を有するものとなる。
【0028】
上記(1)〜(5)の方法で使用される具体的な変性剤を例示すれば、窒素原子を含む変性剤としては、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン等が挙げられる。これらの窒素含有化合物を変性剤として用いることで、置換及び非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基並びにピリジル基等の窒素を含む官能基を共役ジエン系重合体に導入することができる。
【0029】
また、ケイ素原子を含む変性剤としては、以下に記載する化合物を用いることができる。
ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば、(チオ)エポキシ基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2-グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン及びこれらの化合物におけるエポキシ基をチオエポキシ基に置き換えたものを挙げることができるが、これらの中でも、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0030】
また、イミン基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン,N-(シクロヘキシリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物,メチルジエトキシシリル化合物,エチルジエトキシシリル化合物,メチルジメトキシシリル化合物,エチルジメトキシシリル化合物等を挙げることができるが、これらの中でも、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びN-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンが特に好ましい。
【0031】
また、イミン(アミジン)基含有化合物としては、1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-4,5-ジヒドロイミダゾール,1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-4,5-ジヒドロイミダゾール,N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール,N-(3-イソプロポキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール,N-(3-メチルジエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール等が挙げられ、これらの中でも、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールが好ましい。
【0032】
そして、イソシアネート基含有化合物としては、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられ、これらの中でも、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0033】
そして更に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、テトラエトキシシランが特に好ましい。
【0034】
スズ原子を含む変性剤を具体的に例示すれば、トリフェニルスズラウレート、トリフェニルスズ−2−エチルヘキサテート、トリフェニルスズナフテート、トリフェニルスズアセテート、トリフェニルスズアクリレート、トリ−n−ブチルスズラウレート、トリ−n−ブチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリ−n−ブチルスズナフテート、トリ−n−ブチルスズアセテート、トリ−n−ブチルスズアクリレート、トリ−t−ブチルスズラウレート、トリ−t−ブチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリ−t−ブチルスズナフテート、トリ−t−ブチルスズアセテート、トリ−t−ブチルスズアクリレート、トリイソブチルスズラウレート、トリイソブチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリイソブチルスズナフテート、トリイソブチルスズアセテート、トリイソブチルスズアクリレート、トリイソプロピルスズラウレート、トリイソプロピルスズ−2−エチルヘキサテート、トリイソプロピルスズナフテート、トリイソプロピルスズアセテート、トリイソプロピルスズアクリレート、トリヘキシルスズラウレート、トリヘキシルスズ−2−エチルヘキサテート、トリヘキシルスズアセテート、トリヘキシルスズアクリレート、トリオクチルスズラウレート、トリオクチルスズ−2−エチルヘキサテート、トリオクチルスズナフテート、トリオクチルスズアセテート、トリオクチルスズアクリレート、トリ−2−エチルヘキシルスズラウレート、トリ−2−エチルヘキシルスズ−2−エチルヘキサテート、トリ−2−エチルヘキシルスズナフテート、トリ−2−エチルヘキシルスズアセテート、トリ−2−エチルヘキシルスズアクリレート、トリステアリルスズラウレート、トリステアリルスズ−2−エチルヘキサテート、トリステアリルスズナフテート、トリステアリルスズアセテート、トリステアリルスズアクリレート、トリベンジルスズラウレート、トリベンジルスズ−2−エチルヘキサテート、トリベンジルスズナフテート、トリベンジルスズアセテート、トリベンジルスズアクリレート、ジフェニルスズジラウレート、ジフェニルスズ−2−エチルヘキサテート、ジフェニルスズジステアレート、ジフェニルスズジナフテート、ジフェニルスズジアセテート、ジフェニルスズジアクリレート、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−ブチルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジ−n−ブチルスズジステアレート、ジ−n−ブチルスズジナフテート、ジ−n−ブチルスズジアセテート、ジ−n−ブチルスズジアクリレート、ジ−t−ブチルスズジラウレート、ジ−t−ブチルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジ−t−ブチルスズジステアレート、ジ−t−ブチルスズジナフテート、ジ−t−ブチルスズジアセテート、ジ−t−ブチルスズジアクリレート、ジイソブチルスズジラウレート、ジイソブチルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジイソブチルスズジステアレート、ジイソブチルスズジナフテート、ジイソブチルスズジアセテート、ジイソブチルスズジアクリレート、ジイソプロピルスズジラウレート、ジイソプロピルスズ−2−エチルヘキサテート、ジイソプロピルスズジステアレート、ジイソプロピルスズジナフテート、ジイソプロピルスズジアセテート、ジイソプロピルスズジアクリレート、ジヘキシルスズジラウレート、ジヘキシルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジヘキシルスズジステアレート、ジヘキシルスズジナフテート、ジヘキシルスズジアセテート、ジヘキシルスズジアクリレート、ジ−2−エチルヘキシルスズジラウレート、ジ−2−エチルヘキシルスズ−2−エチルヘキサテート、ジ−2−エチルヘキシルスズジステアレート、ジ−2−エチルヘキシルスズジナフテート、ジ−2−エチルヘキシルスズジアセテート、ジ−2−エチルヘキシルスズジアクリレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジオクチルスズジステアレート、ジオクチルスズジナフテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジアクリレート、ジステアリルスズジラウレート、ジステアリルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジステアリルスズジステアレート、ジステアリルスズジナフテート、ジステアリルスズジアセテート、ジステアリルスズジアクリレート、ジベンジルスズジラウレート、ジベンジルスズジ−2−エチルヘキサテート、ジベンジルスズジステアレート、ジベンジルスズジナフテート、ジベンジルスズジアセテート、ジベンジルスズジアクリレート、フェニルスズトリラウレート、フェニルスズトリ−2−エチルヘキサテート、フェニルスズトリナフテート、フェニルスズトリアセテート、フェニルスズトリアクリレート、n−ブチルスズトリラウレート、n−ブチルスズトリ−2−エチルヘキサテート、n−ブチルスズトリナフテート、n−ブチルスズトリアセテート、n−ブチルスズトリアクリレート、t−ブチルスズトリラウレート、t−ブチルスズトリ−2−エチルヘキサテート、t−ブチルスズトリナフテート、t−ブチルスズトリアセテート、t−ブチルスズトリアクリレート、イソブチルスズトリラウレート、イソブチルスズトリ−2−エチルヘキサテート、イソブチルスズトリナフテート、イソブチルスズトリアセテート、イソブチルスズトリアクリレート、イソプロピルスズトリラウレート、イソプロピルスズトリ−2−エチルヘキサテート、イソプロピルスズトリナフテート、イソプロピルスズトリアセテート、イソプロピルスズトリアクリレート、ヘキシルスズトリラウレート、ヘキシルスズトリ−2−エチルヘキサテート、ヘキシルスズトリナフテート、ヘキシルスズトリアセテート、ヘキシルスズトリアクリレート、オクチルスズトリラウレート、オクチルスズトリ−2−エチルヘキサテート、オクチルスズトリナフテート、オクチルスズトリアセテート、オクチルスズトリアクリレート、2−エチルヘキシルスズトリラウレート、2−エチルヘキシルスズトリ−2−エチルヘキサテート、2−エチルヘキシルスズトリナフテート、2−エチルヘキシルスズトリアセテート、2−エチルヘキシルスズトリアクリレート、ステアリルスズトリラウレート、ステアリルスズトリ−2−エチルヘキサテート、ステアリルスズトリナフテート、ステアリルスズトリアセテート、ステアリルスズトリアクリレート、ベンジルスズトリラウレート、ベンジルスズトリ−2−エチルヘキサテート、ベンジルスズトリナフテート、ベンジルスズトリアセテート、ベンジルスズトリアクリレートなどが挙げられる。
【0035】
ジフェニルスズビスメチルマレート、ジフェニルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジフェニルスズビスオクチルマレート、ジフェニルスズビスオクチルマレート、ジフェニルスズビスベンジルマレート、ジ−n−ブチルスズビスメチルマレート、ジ−n−ブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−n−ブチルスズビスオクチルマレート、ジ−n−ブチルスズビスベンジルマレート、ジ−t−ブチルスズビスメチルマレート、ジ−t−ブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−t−ブチルスズビスオクチルマレート、ジ−t−ブチルスズビスベンジルマレート、ジイソブチルスズビスメチルマレート、ジイソブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジイソブチルスズビスオクチルマレート、ジイソブチルスズビスベンジルマレート、ジイソプロピルスズビスメチルマレート、ジイソプロピルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジイソプロピルスズビスオクチルマレート、ジイソプロピルスズビスベンジルマレート、ジヘキシルスズビスメチルマレート、ジヘキシルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジヘキシルスズビスオクチルマレート、ジヘキシルスズビスベンジルマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスメチルマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスオクチルマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスベンジルマレート、ジオクチルスズビスメチルマレート、ジオクチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジオクチルスズビスオクチルマレート、ジオクチルスズビスベンジルマレート、ジステアリルスズビスメチルマレート、ジステアリルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジステアリルスズビスオクチルマレート、ジステアリルスズビスベンジルマレート、ジベンジルスズビスメチルマレート、ジベンジルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジベンジルスズビスオクチルマレート、ジベンジルスズビスベンジルマレート、ジフェニルスズビスメチルアジテート、ジフェニルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジフェニルスズビスオクチルアジテート、ジフェニルスズビスベンジルアジテート、ジ−n−ブチルスズビスメチルアジテート、ジ−n−ブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−n−ブチルスズビスオクチルアジテート、ジ−n−ブチルスズビスベンジルアジテート、ジ−t−ブチルスズビスメチルアジテート、ジ−t−ブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−t−ブチルスズビスオクチルアジテート、ジ−t−ブチルスズビスベンジルアジテート、ジイソブチルスズビスメチルアジテート、ジイソブチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジイソブチルスズビスオクチルアジテート、ジイソブチルスズビスベンジルアジテート、ジイソプロピルスズビスメチルアジテート、ジイソプロピルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジイソプロピルスズビスオクチルアジテート、ジイソプロピルスズビスベンジルアジテート、ジヘキシルスズビスメチルアジテート、ジヘキシルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジヘキシルスズビスメチルアジテート、ジヘキシルスズビスベンジルアジテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスメチルアジテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスオクチルアジテート、ジ−2−エチルヘキシルスズビスベン−エチルヘキシルスズビスベンジルアジテート、ジオクチルスズビスメチルアジテート、ジオクチルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジオクチルスズビスオクチルアジテート、ジオクチルスズビスベンジルアジテート、ジステアリルスズビスメチルアジテート、ジステアリルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジステアリルスズビスオクチルアジテート、ジステアリルスズビスベンジルアジテート、ジベンジルスズビスメチルアジテート、ジベンジルスズビス−2−エチルヘキサテート、ジベンジルスズビスオクチルアジテート、ジベンジルスズビスベンジルアジテートなどが挙げられる。
【0036】
さらに、ジフェニルスズマレート、ジ−n−ブチルスズマレート、ジ−t−ブチルスズマレート、ジイソブチルスズマレート、ジイソプロピルスズマレート、ジヘキシルスズマレート、ジ−2−エチルヘキシルスズマレート、ジオクチルスズマレート、ジステアリルスズマレート、ジベンジルスズマレート、ジフェニルスズアジテート、ジ−n−ブチルスズアジテート、ジ−t−ブチルスズアジテート、ジイソブチルスズアジテート、ジイソプロピルスズアジテート、ジヘキシルスズジアセテート、ジ−2−エチルヘキシルスズアジテート、ジオクチルスズアジテート、ジステアリルスズアジテート、ジベンジルスズアジテートなども挙げられる。
【0037】
また、硫黄原子を含む変性剤として具体的な化合物を例示すれば、エチレンチオケテン、ブチルチオケテン、フェニルチオケテン、トルイルチオケテン等のチオケテン化合物、2−チオフェンカルボニトリル、3−チオフェンカルボニトリル、ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボニトリル、ベンゾ[b]チオフェン−3−カルボニトリル、イソベンゾ[b]チオフェン−1−カルボニトリル、イソベンゾ[b]チオフェン−3−カルボニトリル、ナフト[2,3−b]チオフェン−2−カルボニトリル、ナフト[2,3−b]チオフェン−3−カルボニトリル等の硫黄原子を含む複素環基を有する化合物、また、チイラン、メチルチイラン、フェニルチイラン等のチイラン化合物などが挙げられる。
【0038】
また、酸素原子を含む変性剤としては、エポキシ化合物を挙げることができ、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エポキシ化大豆油、エポキシ化天然ゴムなどが挙げられる。
【0039】
更に、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジエチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジプロピルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジブチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−モルホリノフェニル)−1−フェニルエチレン等のフェニルエチレン化合物もあげられる。また2個の極性基を有するジフェニルエチレン誘導体を用いた場合も、同様に行えるが、1個の極性基を有するものの方が、炭化水素系溶媒への溶解性に優れるため、工業的に好ましい。
【0040】
乳化重合反応を利用した変性方法では、未変性ジエン重合体をラテックスの状態で得ておき、反応容器に仕込み、30〜80℃で10分〜7時間反応させることで、未変性ジエン重合体に上記変性剤がグラフト重合した変性ジエン重合体が得られる。更に、該変性ジエン重合体のラテックスを凝固させ、洗浄後、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の乾燥機を用いて乾燥することで変性ジエン重合体が得られる。変性ジエンラテックスを凝固するのに用いる凝固剤としては、特に限定されるものではないが、ギ酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩が挙げられる。上記変性剤の量は、ジエンラテックス中のゴム成分に対して0.01〜5.0質量%の範囲が好ましく、0.01〜1.0質量%の範囲が更に好ましい。
この変性反応後に、所望により、公知の老化防止剤や重合反応を停止する目的でアルコールなどを加えることができる。
このようにして変性処理したのち、脱溶媒などの従来公知の後処理を行い、目的の変性ジエン重合体を得ることができる。
【0041】
アニオン重合方法で用いられる触媒としては、有機アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の金属を含有する炭化水素化合物をあげることができ、なお好ましいものとしては、2〜20個の炭素原子を有するリチウム又はナトリウム化合物をあげることができる。その具体例としては、たとえば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、4−シクロペンチルリチウム、1,4−ジリチオ−ブテン−2などがあげられるが、迅速に反応が進行して分子量分布が狭いポリマーを与える点で、n−ブチルリチウム又はsec−ブチルリチウムが好ましい。
【0042】
炭化水素溶媒としては、アルカリ金属触媒を失活させないものであり、適当な炭化水素溶剤としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素から選ばれ、特に炭素数2〜12個を有するプロパン、n−ブタン、iso−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、iso−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどをあげることができる。また、これらの溶剤は2種以上を混合して使用することができる。
【0043】
該製造方法においては、得られた両末端が上記化合物で変性された変性ブタジエン重合体の活性末端を、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類の添加により停止させて、さらに変性させてもよい。
【0044】
本発明の変性ジエン重合体は、バイオブタジエン単量体と、このバイオブタジエン単量体と共重合可能な単量体とから製造された共重合体であってもよい。バイオブタジエン単量体と共重合可能な単量体としては、単量体としての共役ジエン化合物としては、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。一方、単量体としての芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。また、バイオブタジエン単量体と共重合可能な単量体は、植物資源を含む生物由来の資源から合成されていても、石油資源由来のいずれでもよい。さらに、バイオエタノール由来ではない、通常のジエン単量体が所定量含まれていてもよい。
【0045】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物としては、本発明の(共)重合体を含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の共重合体以外のゴム成分、無機充填剤、カーボンブラック、架橋剤、などを含むことが好ましい。
【0046】
<ゴム成分>
前記ゴム成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の(共)重合体、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、各種ブタジエンゴム、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンとp−メチルスチレンの共重合体の臭化物、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリロブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ゴム組成物には、必要に応じて補強性充填剤を配合することができる。前記補強性充填剤としては、カーボンブラック、無機充填剤、などを挙げることができ、カーボンブラック及び無機充填剤から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0047】
<無機充填剤>
前記無機充填剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、無機充填剤を用いる時は適宜シランカップリング剤を使用してもよい。
前記補強性充填剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、5質量部〜200質量部が好ましい。
前記補強性充填剤の含有量が、5質量部未満であると、補強性充填剤を入れる効果があまりみられないことがあり、200質量部を超えると前記ゴム成分に補強性充填剤が混ざり込まなくなる傾向があり、ゴム組成物としての性能を低下させることがある。
【0048】
<架橋剤>
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム−ニトロソアミン系架橋剤硫黄などが挙げられるが、中でもタイヤ用ゴム組成物としては硫黄系架橋剤がより好ましい。
前記架橋剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、0.1質量部〜20質量部が好ましい。
前記架橋剤の含有量が0.1質量部未満では、架橋がほとんど進行しなかったり、20質量部を超えると一部の架橋剤により混練り中に架橋が進んでしまう傾向があったり、加硫物の物性が損なわれたりすることがある。
【0049】
<その他の成分>
その他に加硫促進剤を併用することも可能であり、加硫促進剤としては、グアジニン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の化合物が使用できる。
また必要に応じて、補強剤、軟化剤、充填剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、その他の配合剤など公知のものをその使用目的に応じて使用することができる。
【0050】
<架橋ゴム組成物>
本発明の架橋ゴム組成物は、本発明のゴム組成物を架橋して得られたものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記架橋の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、温度120℃〜200℃、加温時間1分間〜900分間が好ましい。
【0051】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物、又は、本発明の架橋ゴム組成物を用いたものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のゴム組成物、又は、本発明の架橋ゴム組成物のタイヤにおける適用部位としては、例えば、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラーなどが挙げられるが、これに限定されない。
前記タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望のタイヤを製造することができる。
【0052】
また、本発明のゴム組成物、又は、本発明の架橋ゴム組成物は、タイヤ用途以外にも、防振ゴム、免震ゴム、ベルト(コンベアベルト)、ゴムクローラ、各種ホース、モランなどに本発明のゴム組成物、又は、本発明の架橋ゴム組成物を使用することができる。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
[バイオブタジエン共重合体の製造例]
<触媒の製造>
触媒として、ゾルゲル法により合成したシリカ−マグネシアの複合酸化物を使用した。この触媒の合成方法は以下の通りである。まずMg(NO
3)
2・6H
2O(64g)を蒸留水100mLに溶解した溶液に、14%アンモニア水溶液100mLを滴下することでMg(OH)
2ゲルを合成した。一方で、Si(OC
2H
5)
4(55mL)をエタノール150mLに溶解した溶液に1.38M硝酸12.5mLおよび14%アンモニア水溶液50mLを滴下することによりSi(OH)
4ゲルを合成した。得られたMg(OH)
2ゲルは蒸留水で洗浄後、吸引ろ過を行い、Si(OH)
4ゲルについてはエタノールで洗浄後、吸引ろ過を行った。これら二種類のゲルを混合し、混合後のゲルを風乾、その後80℃乾燥、500℃、N
2雰囲気下において焼成を行うことで、シリカ−マグネシアの複合酸化物触媒を製造した。
【0054】
<バイオブタジエン単量体の製造>
出発物質として、サトウキビ、タピオカ、トウモロコシのデンプン質を酵母で発酵させて得たバイオエタノールを使用した。
上記方法により製造した触媒と、上記バイオエタノールとを接触させることによりバイオブタジエン単量体を生成した。
反応装置は、固定床ガス流通式触媒反応装置(株式会社大倉理研製)を用いた。製造したシリカ−マグネシア複合酸化物触媒を、石英製の反応管に充填し、前処理としてキャリアガス雰囲気下(N
2;ガス流量66mL/min)で500℃、2時間加熱処理を行った。
前処理終了後、触媒管の温度を反応温度まで下げ、N
2で希釈したバイオエタノールガスを導入した。この時の反応温度は350℃もしくは450℃で行った。
反応により生成したガスに対し、以下の分離操作を行うことでバイオブタジエン単量体を含む混合物を回収した。まず、生成ガスをヘキサン中にバブリングすることで、目的物であるバイオブタジエン単量体を溶媒中に溶解させた。回収したブタジエン溶液を乾燥精製し、不純物であるエタノール、アセトアルデヒド、ジエチルエーテル、エトキシエチレン、酢酸エチルを更に除去した。
【0055】
<重合体Aの製造>
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液、及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン60g及びスチレン15gとなるように加え、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.36mmolを加え、更にn−ブチルリチウム(BuLi)0.72mmolを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合反応を行なった。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。
次に、重合反応系に、N、N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン0.65ミリモルを加え、さらに50℃で30分間変性反応をおこなった。その後、重合反応系に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールのイソプロパノール5質量%溶液0.5mlを加えて重合反応を停止させ、常法に従い乾燥し変性重合体Aを得た。得られた変性重合体Aの数平均分子量、結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第2表に示す。
【0056】
<重合体Bの製造>
変性重合体Aの製造で使用した1,3−ブタジエンを上記バイオブタジエン単量体の製造で得られたバイオブタジエンとした以外は、同様にして変性重合体Bを得た。得られた変性重合体Bの数平均分子量、結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第2表に示す。
【0057】
[評価方法]
<スチレン−ブタジエン共重合体の各物性>
≪ミクロ構造[結合スチレン含量(%)、ビニル結合含量(%)]≫
フーリエ変換赤外分校光度計(FT/IR−4100、日本分光社製)を使用し、赤外法(モレロ法)によって測定した。
≪スチレン−ブタジエン共重合体の重要平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)≫
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(商品名「HLC−8120GPC」、東ソー社製)を使用し、検知器として示差屈折計を用いて、以下の条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した。
カラム;商品名「GMH-XL」(東ソー社製) 2本
カラム温度;40℃
移動相;テトラヒドロフラン
流速;1.0ml/min
サンプル濃度;10mg/20ml
【0058】
<δ13Cの測定>
トウモロコシ、サトウキビ、タピオカ由来のエタノールから生成されたブタジエン重合体のδ13Cの値を安定同位体比測定装置により測定した。
【0059】
<Δ14Cの測定>
出発物質として、サトウキビ、タピオカ、トウモロコシのデンプン質を酵母で発酵させて得たバイオエタノールから生成されたブタジエン重合体のδ13Cの値を安定同位体比測定装置により測定し、上述した換算方法により、Δ14Cを算出した。
【0060】
<
14Cの壊変毎分毎グラム量の測定>
トウモロコシ、サトウキビ、タピオカ由来のエタノールから生成されたブタジエン重合体の
14Cの壊変毎分毎グラム量値を加速器質量分析法(Accelerator Mass Spectrometry ;AMS)、液体シンチレーション法(Liquid Scintillation Counting Method; LSC)により測定した。
【0061】
<ゴム組成物の耐亀裂成長性、及び低発熱性の評価>
出発物質として、サトウキビ、タピオカ、トウモロコシのデンプン質を酵母で発酵させて得たバイオエタノールから生成されたバイオブタジエン単量体を重合してなるスチレン−ブタジエン共重合体を含むゴム組成物の耐亀裂成長性および低発熱特性を下記方法によって測定した。
なお、本発明のゴム組成物には、上記スチレン−ブタジエン共重合体を含むゴム成分、カーボンブラックのほか、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、シランカップリング剤などのゴム業界で通常使用される配合剤を適宜選択し配合することができる。なお、上記ゴム組成物は、ゴム成分に、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0062】
≪ムーニー粘度≫
JIS K 6300−1に準拠し、130℃で1分間予熱し、その後の4分値を測定した。
【0063】
≪低発熱性(3%tanδ)≫
動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を使用し、引張動歪3%、周波数15Hz、50℃の条件で測定した。表2においては、重合体Aを配合した比較例1を100とする指標で表した。指標値が小さいほど、低発熱性(低ロス性)に優れることを示す。
【0064】
≪耐摩耗性≫
ランボーン型摩耗試験機を使用して室温で摩耗量を測定し、該摩耗量の逆数を算出し、それぞれ比較例を100として指数表示をした。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性が良好であることを示す。
【0065】
[実施例1、比較例1]
重合体A,Bのそれぞれを用いて、表1に示す配合処方によりゴム組成物を調製し、145℃で33分間加硫して加硫ゴムを得た。
重合体A,Bの物性及びδ13Cの値を上記方法により測定した。また、得られた加硫ゴムのムーニー粘度、低発熱性(3%tanδ)及び耐摩耗性を、上述した評価方法に従って測定した。結果を表2に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
※1:使用したカーボンブラックの窒素吸着比表面積;42m
2/g
※2:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−p−フェニレンジアミン、大内新興化学(株)製、ノクラック6C
※3:2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学(株)製、ノクラック224
※4:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学(株)製、ノクセラーCZ−G
※5:ジベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学(株)製、ノクセラーDM−P
【0068】
【表2】
【0069】
得られた重合体Aの結合スチレン含量は、19.6%であり、ビニル含量は57.4%であった。
また、得られた重合体Bの結合スチレン含量は、20.1%であり、ビニル含量は56.7%であった。
得られた重合体Aのδ13Cの値は、−23.00、重合体Bのδ13Cの値は−14.69であった。
また、得られた重合体AのΔ14Cの値は−1000‰であり、重合体BのΔ14Cの値は−100‰であった。
更に、得られた重合体Aの
14Cの壊変毎分毎グラム量値は0.05dpm/gCであり、重合体Bの
14Cの壊変毎分毎グラム量値は0.2dpm/gCであった。
上記結果から、石油資源由来を原料とした重合体Aを使用した比較例1とバイオブタジエン単量体を原料とした重合体Bを使用した実施例1とは、低発熱性及び耐摩耗性において、従来品と遜色ないことがわかった。