特許第6055243号(P6055243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055243
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】グリーン接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/00 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   B28B11/00
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-193916(P2012-193916)
(22)【出願日】2012年9月4日
(65)【公開番号】特開2014-46661(P2014-46661A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】石橋 聖志
【審査官】 伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−166528(JP,A)
【文献】 特開平01−169878(JP,A)
【文献】 特表2004−525849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/00− 11/24
C04B 37/00− 37/04
H01M 8/00− 8/0297
H01M 8/08− 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1無機粉体、分散媒、及びバインダを含むスラリーを成形・固化して得られた、穴部を有し且つ多孔質の板状のグリーン基体と、
前記第1無機粉体とは組成又は微構造が異なる第2無機粉体、分散媒、及びバインダを含むスラリーを成形・固化して得られたグリーンシートであって、前記グリーン基体の接合面に接合された、前記グリーン基体より薄いグリーンシートと、
を備えたグリーン接合体の製造方法であって、
前記グリーンシートの接合面に、分散媒、及びバインダを含む接合用のペーストの層を形成する第1工程と、
前記ペースト層が形成された前記グリーンシートの接合面を、前記ペースト層が乾燥していない状態で、且つ、常温下にて、前記グリーン基体の接合面に接触させる第2工程と、
常温下にて、前記ペースト層内の分散媒を前記グリーン基体内の気孔に吸収させて前記ペースト層を乾燥することによって前記グリーン基体と前記グリーンシートとを接合する第3工程と、
を含み、
前記グリーン基体の気孔率が40%以上70%以下であり、
前記第2工程において、前記グリーンシートの接合面を前記グリーン基体の接合面に接触させる際の押圧力が0.05kgf/cm2以上0.5kgf/cm2以下である、
グリーン接合体の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載のグリーン接合体の製造方法において、
前記第1工程において形成される前記ペースト層の厚さは、乾燥状態にて2μm以上20μm以下である、グリーン接合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のグリーン接合体の製造方法において、
前記グリーン基体のバインダとして、熱硬化性樹脂が使用された、グリーン接合体の製造方法。
【請求項4】
請求項に記載のグリーン接合体の製造方法において、
前記熱硬化性樹脂としてウレタン樹脂が使用された、グリーン接合体の製造方法。
【請求項5】
請求項乃至請求項の何れか一項に記載のグリーン接合体の製造方法において、
前記グリーンシートのバインダとして、平均分子量40000以上のブチラール樹脂が使用され、前記ペースト層のバインダとして、平均分子量32000以下のブチラール樹脂が使用された、グリーン接合体の製造方法。
【請求項6】
請求項乃至請求項の何れか一項に記載のグリーン接合体の製造方法において、
前記第1工程において、前記グリーンシートの接合面と反対側の面に前記グリーンシートの変形抑制用のキャリアが貼り付けられた状態で、前記グリーンシートの接合面の一部に前記ペースト層を形成し、前記グリーンシートの接合面の残りの部分には前記ペースト層を形成せず、
前記第3工程において、前記ペースト層の乾燥後、前記キャリアを剥がすことによって、前記グリーンシートにおける前記ペースト層が形成されていなかった部分が前記キャリアと共に除去されて、前記グリーン基体の接合面に、前記グリーンシートが形成された部分と形成されていない部分とを形成する、グリーン接合体の製造方法。
【請求項7】
請求項乃至請求項の何れか一項に記載のグリーン接合体の製造方法において、
前記第1無機粉体は、第1セラミックス粉体であり、
前記第2無機粉体は、前記第1セラミックス粉体とは組成又は微構造が異なる第2セラミックス粉体である、グリーン接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体、及び、グリーン接合体の製造方法に関する。本明細書において、「グリーン」とは、焼成前の状態を指す。
【背景技術】
【0002】
従来から、「穴部を有し、且つ、セラミックスで構成された板状のセラミックス基体」の接合面に、「前記セラミックス基体より薄く、且つ、前記セラミックス基体とは組成又は微構造が異なる緻密なセラミックスで構成されたセラミックス膜」が接合された焼成体(セラミックス接合体)が知られている。ここで、「穴部」とは、貫通孔、又は、凹部を指す。
【0003】
このようなセラミックス接合体に関連して、例えば、特許文献1では、「セラミックスグリーンシートの表面に、電極パターンとこれを相補する余白パターンとをスクリーン印刷法などにより形成し、これを乾燥させる。そして、このセラミックスグリーンシートを複数用意し、これらを加熱加圧により積層する方法」が開示されている。或いは、「キャリアシート上に、電極パターンとこれを相補する余白パターンとをスクリーン印刷法などにより形成し、これを乾燥させた後、接着層を介してセラミックスグリーンシートに転写する。そして、このセラミックスグリーンシートを複数用意し、これらを加熱加圧により積層する方法」が開示されている。
【0004】
特許文献2では、「導体回路を転写したセラミックグリーンシートを熱プレス圧着する方法」が開示されている。また、熱プレス圧着する際の温度が80℃以上150℃以下であり、圧力が10kgf/cm以上300kgf/cm以下であることも開示されている。
【0005】
上記特許文献1、2に開示されている方法を適宜使用すると、上述したセラミックス接合体は、以下のように製造される。先ず、セラミックス基体の前駆体(焼成前の成形体)であるセラミックスグリーン基体と、セラミックス膜の前駆体(焼成前の成形体)であるセラミックスグリーンシートと、が準備される。次いで、前記セラミックスグリーンシートの接合面に、セラミック粉末、分散媒、及びバインダを含む接合用のペーストの層が形成される。次に、前記ペースト層が乾燥し、且つ、前記ペースト層が形成された前記セラミックスグリーンシートの接合面と前記セラミックスグリーン基体の接合面とが接触した状態で、セラミックスグリーン基体とセラミックスグリーンシートとが、80℃以上150℃以下程度の温度、且つ、10kgf/cm以上300kgf/cm以下程度の押圧力で、加熱圧着させられる。この結果、前記セラミックスグリーン基体と前記セラミックスグリーンシートとで構成されるグリーン接合体(焼成前の状態)が得られる。このグリーン接合体が焼成されて、上記のセラミックス接合体が得られる。
【0006】
ところで、上述したセラミックスグリーン基体(セラミックス基体の焼成前の成形体)は、穴部を有するので、外力を受けて変形や割れが発生し易い。このことに起因して、上記の熱圧着時に、セラミックスグリーン基体に変形や割れが発生し易い、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−211033号公報
【特許文献2】特開平10−242644号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明者は、上記のように「穴部を有するグリーン基体の接合面にグリーン膜が接合されたグリーン接合体」の製造方法であって、上記文献に記載の製造方法と比べて、グリーン基体の変形や割れの発生を抑制しつつ、薄いグリーン膜の良好な密着性が得られる製造方法を見出した。
【0009】
本発明に係る接合体の製造方法は、「第1無機粉体、分散媒、及びバインダを含むスラリーを成形・固化して得られた、穴部を有し且つ多孔質の板状のグリーン基体」の接合面に、「前記第1無機粉体とは組成又は微構造が異なる第2無機粉体、分散媒、及びバインダを含むスラリーを成形・固化して得られた、前記グリーン基体より薄いグリーンシート」を接合する方法である。この製造方法は、第1〜第3工程を含む。ここにおいて、第1、第2無機粉体は、典型的にはセラミックス粉体であるが、金属粉体であってもよい。
【0010】
第1工程では、予め準備された前記グリーンシートの接合面に、分散媒、及びバインダを含む接合用のペーストの層が形成される。前記ペースト層には、無機粉体(セラミックス粉体)が含まれていても良い。前記ペースト層に含まれる無機粉体としては、前記第1無機粉体と組成及び微構造が同じ無機粉体が使用されても、前記第2無機粉体と組成及び微構造が同じ無機粉体が使用されても、前記第1、第2無機粉体とは組成又は微構造が異なる無機粉体が使用されてもよい。
【0011】
このペースト層の形成方法としては、例えば、印刷、ディスペンサ等が挙げられる。第1工程にて形成されるペースト層の厚さは、乾燥状態にて(その後にペースト層を乾燥させた状態において)2μm以上20μm以下であることが好適である。
【0012】
第2工程では、前記ペースト層が乾燥していない状態で、前記ペースト層が形成された前記グリーンシートの接合面が、予め準備された前記グリーン基体の接合面に接触させられる。このときの接合圧力は、グリーンシートの自重相当でもよいが、好ましくは、0.05kgf/cm以上0.5kgf/cm以下であることが好適である。即ち、この接合圧力は、上記文献に記載の熱圧着時の接合圧力に比べて格段に小さい。従って、この第2工程では、グリーン基体の変形や割れが発生し難い。グリーン基体の気孔率は、40%以上70%以下であり、気孔の平均径は0.03μm以上2μm以下である。
【0013】
第3工程では、前記ペースト層内の分散媒を前記グリーン基体内の気孔に吸収させて前記ペースト層を乾燥することによって、前記グリーン基体と前記グリーンシートとが接合する。前記ペースト層内の分散媒が多孔質の前記グリーン基体内の気孔に吸収されていくのは、毛細管現象による。なお、前記グリーンシートは、前記グリーン基体より気孔率が小さい緻密膜であることが好ましい。このように毛細管現象を利用して、ペースト層内の分散媒の吸収(従って、ペースト層の乾燥)が進行していくことによって、薄いグリーンシート(膜)が、多孔質のグリーン基体の接合面に良好に密着し得る。
【0014】
以上、本発明に係る製造方法によれば、多孔質のグリーン基体の変形や割れの発生が抑制され、且つ、薄いグリーン膜の密着性が良好なグリーン接合体が得られる。
【0015】
上記本発明に係るグリーン接合体の製造方法では、前記グリーン基体のバインダとして、熱硬化性樹脂が使用されることが好適である。前記熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂が使用されるとより好ましい。
【0016】
接合用ペーストに使用される分散媒(有機溶剤、溶剤)は、「グリーン基体内に含まれるバインダを溶解しない特性」を有することが要求される。熱硬化性樹脂(典型的には、ウレタン樹脂等)を溶解する溶剤の種類は少ない。換言すれば、熱硬化性樹脂(典型的には、ウレタン樹脂等)を溶解しない溶剤の種類は非常に多い。以上より、上記構成によれば、接合用ペーストの分散媒として用いられる有機溶剤の選択肢を広げることができる。
【0017】
同様に、前記グリーンシートのバインダとして、平均分子量40000以上のブチラール樹脂(例えば、積水化学工業(株)製のBM−1)が使用され、前記ペースト層のバインダとして、平均分子量32000以下のブチラール樹脂(例えば、積水化学工業(株)製のBL−5)が使用されることが好適である。特に、平均分子量52000のブチラール樹脂(例えば、積水化学工業(株)製のBM−2)が使用され、前記ペースト層のバインダとして、平均分子量23000のブチラール樹脂(例えば、積水化学工業(株)製のBL−S)が使用されることが最適である。
【0018】
接合用ペーストに使用される分散媒(有機溶剤、溶剤)は、「グリーンシート内に含まれるバインダを溶解せず、且つ、接合用ペースト内に含まれるバインダを溶解する特性」を有することが要求される。「平均分子量40000以上のブチラール樹脂を溶解せずに平均分子量32000以下のブチラール樹脂を溶解する溶剤」の種類は非常に多い。従って、上記構成によっても、接合用ペーストの分散媒として用いられる有機溶剤の選択肢を広げることができる。このような接合用ペーストの分散媒としては、例えば、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、酢酸n−ブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)が使用され得る。
【0019】
上記本発明に係る製造方法によって作製されたグリーン接合体を焼成して得られる本発明に係る接合体は、「穴部を有するとともに無機材料で構成された板状の基体」と、「前記基体の接合面に接合された前記基体より薄い膜であって、前記基体とは組成又は微構造が異なる無機材料で構成された膜」と、を備えた焼成体である。典型的には、前記膜は、前記基体より気孔率が小さい緻密な無機材料で構成される。前記基体は、多孔質の無機材料(セラミックス)で構成されても緻密な無機材料(セラミックス)で構成されてもよい。なお、前記第1、第2無機粉体がそれぞれセラミックス粉体である場合、前記接合体において、前記基体はセラミックスで構成され、前記膜は、前記基体とは組成又は微構造が異なるセラミックスで構成される。
【0020】
以下、前記ペースト層に無機粉体が含まれる場合について付言する。ペースト層に含まれる無機粉体として前記第1無機粉体と組成及び微構造が同じ無機粉体が使用される場合、焼成後において、ペースト層の焼成体(焼成層)と膜との境界が残存する一方で、ペースト層の焼成体(焼成層)と基体とが一体化する(両者の境界がなくなる)。ペースト層に含まれる無機粉体として前記第2無機粉体と組成及び微構造が同じ無機粉体が使用される場合、焼成後において、ペースト層の焼成体(焼成層)と基体との境界が残存する一方で、ペースト層の焼成体(焼成層)と膜とが一体化する(両者の境界がなくなる)。一方、ペースト層に含まれる無機粉体として前記第1、第2無機粉体と組成又は微構造が異なる無機粉体が使用される場合、焼成後において、ペースト層の焼成体(焼成層)と基体との境界、及び、ペースト層の焼成体(焼成層)と膜との境界が共に残存する。なお、前記ペースト層に無機粉体が含まれない場合、焼成後において、ペースト層中の成分は全て揮発除去される。
【0021】
この接合体において、前記基体の穴部の断面形状における最大寸法(L1)に対する、前記基体の最薄部の厚さ(T1)の割合(T1/L1)が0.04以上0.69以下であることが好適である。典型的には、この接合体では、前記基体の気孔率は0%以上45%以下であり、前記膜の気孔率は0%以上10%以下であり、前記基体の厚さが1mm以上8mm以下であり、前記膜の厚さが2μm以上45μm以下である。
【0022】
本発明者は、上記本発明に係る製造方法によって作製されたグリーン接合体を焼成して得られる本発明に係る接合体について、少なくともこの条件が成立する場合においては、基体の変形や割れの発生が抑制され、且つ、薄い膜の良好な密着性が得られることを見出した(詳細は、後述する)。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るセラミックス接合体の全体の斜視図である。
図2図1の2−2断面図である。
図3図1に示した接合体の作製に使用されるセラミックスグリーン基体の全体の斜視図である。
図4図1に示した接合体の作製に使用される「PETフィルム付きセラミックスグリーンシート」の全体の斜視図である。
図5図4に示したセラミックスグリーンシートの上に接合用ペースト層が形成された状態を示す全体の斜視図である。
図6】セラミックスグリーン基体の上下面にセラミックスグリーンシートをそれぞれ接合する際の様子を示した図である。
図7】セラミックスグリーン基体の上下面に「PETフィルム付きセラミックスグリーンシート」がそれぞれ接合されたセラミックスグリーン接合体を示した図である。
図8図7に示した状態においてPETフィルムを剥がす様子を示した図である。
図9】PETフィルムが剥がされたセラミックスグリーン接合体を焼成した後の状態を示す図である。
図10】セラミックス接合体(焼成体)の各部の寸法を示す第1の図である。
図11】セラミックス接合体(焼成体)の各部の寸法を示す第2の図である。
図12】セラミックス接合体(焼成体)の各部の寸法を示す第3の図である。
図13】本発明の実施形態の変形例に係るセラミックス接合体の図1に対応する斜視図である。
図14図13の14−14断面図である。
図15図13に示した接合体の図5に対応する斜視図である。
図16図13に示した接合体の図6に対応する図である。
図17図13に示した接合体の図7に対応する図である。
図18図13に示した接合体の図8に対応する図である。
図19図13に示した接合体の図9に対応する図である。
図20図19のY部の拡大図である。
図21】比較例に係る図20に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る接合体、並びに、その製造方法について説明する。
【0025】
(セラミックス接合体の構成)
図1図2は、本発明の実施形態に係るセラミックス接合体を示す。この接合体は、直方体状のセラミックス基体10と、セラミックス基体10の上下面にそれぞれ接合されたセラミックス膜20、20と、から構成された焼成体である。この接合体では、セラミックス基体10の上下面の全域に亘ってセラミックス膜20、20がそれぞれ形成されている。この接合体の幅A(y軸方向)、奥行きB(x軸方向)、高さT(z軸方向)はそれぞれ、例えば、10mm以上100mm以下、50mm以上500mm以下、1mm以上8mm以下である。セラミックス基体10の内部には、奥行き方向(x軸方向)に沿ってそれぞれ延びる複数の「断面円形の貫通孔11」が、幅方向(y軸方向)に所定の間隔を空けて互いに平行に形成されている。
【0026】
セラミックス基体10は、第1セラミックスで構成された多孔質の又は緻密な焼成体である。第1セラミックスとしては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケルが使用され得る。セラミックス基体10の気孔率は、0%以上45%以下であり、気孔が含まれる場合、気孔の平均径は0.2μm以上10μm以下である。セラミックス基体10の厚さは、1mm以上8mm以下である。なお、本明細書にて「気孔」とは、物体内に形成された空間を指す。
【0027】
各セラミックス膜20は、セラミックス基体10より薄く、且つ、第2セラミックスで構成された緻密な焼成膜である。第2セラミックスは、第1セラミックスに対して組成又は微構造が異なる。第2セラミックスとしては、例えば、酸化ジルコニウムが使用され得る。セラミックス膜20の気孔率は、セラミックス基体10の気孔率より小さくて、0%以上10%以下である。セラミックス膜20の厚さは、2μm以上45μm以下である。
【0028】
(セラミックス接合体の製造方法)
次に、図1図2に示したセラミックス接合体の製造方法について、図3図9を参照しながら説明する。以下、各図において符号の末尾に「g」が付された部材は、「焼成前の状態」(グリーン)を表すものとする。また、焼成前の状態の成形体を単に「成形体」と呼び、「成形体」を焼成したものを「焼成体」と呼ぶものとする。
【0029】
先ず、図3に示すように、セラミックス基体10に対応する形状を有する多孔質のセラミックスグリーン基体10gが準備される。即ち、セラミックスグリーン基体10gは、奥行き方向(x軸方向)に沿ってそれぞれ延びる複数の断面円形の貫通孔が幅方向(y軸方向)に所定の間隔を空けて互いに平行に形成された、直方体状の成形体である。セラミックスグリーン基体10gの気孔率は、40%以上70%以下であり、気孔の平均径は0.03μm以上2μm以下である。セラミックスグリーン基体10gの厚さは、1mm以上12mm以下である。
【0030】
セラミックスグリーン基体10gは、「第1セラミック粉体、分散媒、及びバインダを含むスラリー」をセラミックス基体10に対応する形状に成形・固化して得られる。第1セラミックス粉体としては、例えば、「酸化イットリウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケルの混合物」の粉体が使用され得る。「酸化イットリウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケルの混合物」の粉体のメジアン径は、例えば、0.9μm以上10μm以下である。なお、「酸化ジルコニウム」とは、例えばイットリア安定化ジルコニアなどの添加元素を含む材料をも含む。
【0031】
分散媒としては、例えば、炭化水素系(トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等)、エーテル(エチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルカ
ルビトールアセテート等)、アルコール(イソプロパノール、1−ブタノール、エタノール、2−エチルヘキサノール、テルピネオール、エチレングリコール、グリセリン等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル(酢酸ブチル、グルタル酸ジメチル、トリアセチン等)、多塩基酸(グルタル酸等)が使用され得る。特に、多塩基酸エステル(例えば、グルタル酸ジメチル等)、多価アルコールの酸エステル(例えば、トリアセチン等)等の、2以上のエステル結合を有する溶剤を使用することが好ましい。バインダとしては、例えば、イソシアネート、エチレングリコールなどのポリオールが使用され得る。
【0032】
なお、セラミックスグリーン基体10gには、造孔材(焼成で消失する材料であり、例えば、アクリル樹脂の粒子)が含まれてもよい。これにより、セラミックスグリーン基体10gの状態では気孔でなかった部分のうち、造孔材が占めていた部分は、焼成後のセラミックス基体10では気孔となる。この場合、セラミックス基体10の内部において大きな気孔(例えば、直径が2μm以上10μm以下)が形成され得る。
【0033】
バインダとして、ウレタン樹脂のようにゲル化反応(化学反応、例えば、イソシアネートとポリオールとの間で生じるウレタン反応)により固化するゲル化剤(熱硬化性樹脂)が使用され得る。この場合、セラミックスグリーン基体10gは、セラミックス基体10の形状に対応する成形空間を有する成形型にスラリーを注入し、そのスラリーをバインダのゲル化反応によって成形・固化することによって得ることができる。この手法は、「ゲルキャスト法」とも呼ばれる。なお、バインダとして、ゲル化剤以外の材料(即ち、化学反応では固化せず、乾燥によってのみ固化する材料)が使用されてもよい。
【0034】
また、図4に示すように、セラミックス膜20に対応する形状を有するセラミックスグリーンシート20gが準備される。即ち、セラミックスグリーンシート20gは、セラミックスグリーン基体10gよりも薄い直方体状の成形体である。また、セラミックスグリーンシート20g内のセラミック粉体の充填率は38体積%以上60体積%以下である。セラミックスグリーンシート20gの厚さは、2μm以上50μm以下である。
【0035】
セラミックスグリーンシート20gは、非常に薄くて変形し易いので、図4に示すように、PETフィルムに貼り付けられた状態(以下、「PETフィルム付シート20g」と呼ぶ)で準備される。このPETフィルム付シート20gは、2セット準備される。ここにおいて、PETフィルムが前記「キャリア」に対応する。前記「キャリア」としてPETフィルム以外のものが使用されてもよい。
【0036】
セラミックスグリーンシート20gは、「第2セラミック粉体、分散媒、及びバインダを含むスラリー」を成形・固化した後、セラミックス膜20に対応する形状に切り出して得られる。第2セラミックス粉体は、第1セラミックス粉体に対して組成又は微構造が異なる。第2セラミックス粉体としては、例えば、酸化ジルコニウムの粉体が使用され得る。酸化ジルコニウムの粉体のメジアン径は、例えば、0.2μm以上0.9μm以下である。分散媒としては、例えば、キシレンとブタノールとの混合液が使用され得る。バインダとしては、例えば、平均分子量40000以上のブチラール樹脂(例えば、積水化学工業(株)製のBM−1)が使用され得る。
【0037】
次に、各PETフィルム付きシート20gについて、常温下にて、図5に示すように、シート20gの接合面(シート20gにおけるPETフィルムが貼られていない側の表面)に、接合用のペースト層30gが形成される。ペースト層30gの形成方法としては、例えば、印刷、ディスペンサ等が挙げられる。
【0038】
ペースト層30gの厚さは、乾燥状態で(その後にペースト層を乾燥させた状態において)、2μm以上20μm以下である。なお、ペースト層30gの厚さとして、乾燥状態での値を指標とするのは、ペースト層30gが乾燥していない状態(以下、「ウエット状態」と呼ぶ)では、ペースト層30gの膜厚の測定が非常に困難であることに基づく。
【0039】
ペースト層30gに使用されるペーストは、分散媒、及びバインダを含む。セラミック粉体が含まれていても良い。以下、ペースト層30gに「第2セラミック粉体と組成(化学式)及び微構造(粒径)が同じセラミック粉体」が含まれる場合を例にとって説明を続ける。
【0040】
分散媒としては、例えば、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、酢酸n−ブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)が使用され得る。バインダとしては、例えば、平均分子量32000以下のブチラール樹脂(例えば、積水化学工業(株)製のBL−5)が使用され得る。
【0041】
続いて、ペースト層30gが「ウエット状態」で、且つ、常温下にて、図6に示すように、セラミックスグリーン基体10gが、基体10gの上方位置及び下方位置にそれぞれ配置された2つのPETフィルム付シート20gによって挟まれる。これにより、セラミックスグリーン基体10gの上下面(接合面)がそれぞれ、ウエット状態にあるペースト層30gを介して、PETフィルム付シート20gの接合面と接触させられる。
【0042】
図6から理解できるように、上方及び下方のPETフィルム付シート20g、20gのセラミックスグリーン基体10gに対する押圧力の調整は、シリコンゴムシートを介してPETフィルム付シート20g、20gを押圧するスライダA及びスライダBの駆動状態(押圧状態)を調整することによってなされる。なお、シリコンゴムシートは、軟質材で構成される限りにおいてこれに限られず、例えば、ウレタンフォームが使用されてもよい。
【0043】
2つのPETフィルム付シート20gによるセラミックスグリーン基体10gに対する押圧力(接合圧力)は、0.05kgf/cm以上0.5kgf/cm以下であることが好適である。このような押圧状態は、常温にて、例えば、10秒間以上300秒間以下に亘って継続される。
【0044】
この押圧状態が常温下にて継続されている間、ウエット状態にあるペースト層30g内の分散媒が、毛細管現象によって、セラミックスグリーン基体10g内の気孔に吸収されていく。これに伴い、ペースト層30gの乾燥が進行していく。この結果、ペースト層30gが乾燥することによって、図7に示すように、「セラミックスグリーン基体10gの上下面にPETフィルム付シート20gがそれぞれ接合された接合体」が得られる。なお、この押圧状態の終了後、ペースト層30gの乾燥をより確実に進行させるため、この接合体に対して、50℃以上150℃以下で5分間以上60分間以下程度の乾燥処理(加熱処理)を施してもよい。
【0045】
次いで、図8に示すように、図7に示す接合体からPETフィルムが剥がされる。この結果、「セラミックスグリーン基体10gの上下面にセラミックスグリーンシート20gがそれぞれ接合されたセラミックスグリーン接合体」が得られる。
【0046】
そして、このセラミックスグリーン接合体が、400℃以上750℃以下で1時間以上10時間以下に亘って脱脂される。その後、脱脂後のセラミックスグリーン接合体が、1350℃以上1600℃以下で1時間以上10時間以下に亘って焼成される。この結果、セラミックスグリーン接合体の内部に残存していた分散媒、及びバインダが揮発・除去されて、図9に示す焼成体(即ち、図1図2に示すセラミックス接合体)が得られる。
【0047】
なお、この例の場合、上述のように、ペースト層30gに含まれるセラミックス粉体として第2セラミック粉体と組成(化学式)及び微構造(粒径)が同じセラミック粉体が使用されている。このことに起因して、焼成後において、図9に示すように、ペースト層の焼成体(焼成層)とセラミックス基体10との境界が残存している一方で、ペースト層の焼成体(焼成層)とセラミックス膜20とが一体化している(両者の境界がなくなっている)。
【0048】
(作用・効果)
以上、本実施形態に係るセラミックス接合体の製造方法によれば、毛細管現象を積極的に活用してペースト層30gの乾燥が進行させられる。このことに起因して、接合圧力が0.05kgf/cm以上0.5kgf/cm以下程度と非常に小さくても、セラミックスグリーンシート20gが多孔質のセラミックスグリーン基体10gに良好に密着・接合し得る。従って、「貫通孔を有することによって外力に対して変形し易いセラミックスグリーン基体10g」の変形や割れの発生が抑制され、且つ、薄いセラミックスグリーンシート20gの密着性が良好なセラミックスグリーン接合体が得られる。この結果、このセラミックスグリーン接合体の焼成体(セラミックス接合体)においても、セラミックス基体10の変形・割れが抑制され、並びに、緻密なセラミックス膜20の良好な密着性が得られる。
【0049】
また、接合用ペーストに使用される分散媒(有機溶剤、溶剤)は、「セラミックスグリーン基体内に含まれるバインダを溶解せず、且つ、セラミックスグリーンシート内に含まれるバインダを溶解せず、且つ、接合用ペースト内に含まれるバインダを溶解する特性」を有することが要求される。
【0050】
この観点からみれば、セラミックスグリーン基体のバインダとして、熱硬化性樹脂(典型的には、ウレタン樹脂)が使用されると好ましい。熱硬化性樹脂(典型的には、ウレタン樹脂等)を溶解しない溶剤の種類は非常に多い。従って、これによれば、接合用ペーストの分散媒として用いられる有機溶剤の選択肢を広げることができる。
【0051】
同様に、セラミックスグリーンシートのバインダとして、平均分子量40000以上のブチラール樹脂が使用され、ペースト層のバインダとして、平均分子量32000以下のブチラール樹脂が使用されることが好適である。「平均分子量40000以上のブチラール樹脂を溶解せずに平均分子量32000以下のブチラール樹脂を溶解する溶剤」の種類は非常に多い。従って、これによっても、接合用ペーストの分散媒として用いられる有機溶剤の選択肢を広げることができる。
【0052】
以下、本実施形態に係るセラミックス接合体の製造方法(具体的には、膜形成方法)が、「セラミックス基体の変形・割れの抑制」、並びに、「セラミックス膜の緻密性の確保」の点で、従来の他の膜形成方法と比べて有利であることを確認した試験について説明する。
【0053】
(試験)
この試験では、セラミックス基体の変形・割れの発生のし易さに大きな影響を与えると考えられる、「貫通孔の断面形状における最大寸法L1」、並びに、「セラミックス基体の最薄部の厚さT1」に着目された(図10図12を参照)。L1としては、図10図12に示すように、貫通孔の断面形状が円形の場合には直径が採用され、図11に示すように、貫通孔の断面形状が楕円形の場合には長径が採用され得る。T1としては、セラミックス基体の表面と貫通孔との間の最小肉厚、並びに、隣接する貫通孔同士の間の最小肉厚のうち小さい方の値が採用された。
【0054】
この試験では、表1に示すように、セラミックス基体の表面形状(平面か波形か)、セラミックス基体の厚さ、貫通孔の断面形状、貫通孔径の最大値L1、貫通孔のピッチの組み合わせが異なる(従って、L1及びT1の組み合わせが異なる)7種類(S1〜S7)の基体形状パターンが想定された。各基体形状パターンにつき、セラミックス基体の変形・割れの発生のし易さを表す指標値として、値「T1/L1」が算出された。表面形状が波形の場合(図12を参照)における山・谷間の高低差は、0.1mm程度である。なお、表1内の数値は、焼成体(セラミックス接合体)についての寸法を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
この試験では、表2に示すように、セラミックスグリーン膜(シート)の形成方法に関し、本実施形態に対する比較例として、印刷法、並びに、「背景技術の欄に記載した熱圧着法」が導入された。表2に示すように、本実施形態については、セラミックスグリーンシートの厚さ、ペースト層の厚さ、並びに、接合圧力の組み合わせが異なる5種類(M1〜M5)の膜形成パターンが想定された。印刷法(セラミックスグリーンシートが不要)については、ペースト層の厚さが異なる3種類(M6〜M8)の膜形成パターンが想定された。熱圧着法については、セラミックスグリーンシートの厚さ、ペースト層の厚さ、並びに、接合圧力の組み合わせが異なる4種類(M9〜M12)の膜形成パターンが想定された。なお、表2内の数値は、焼成前の成形体(セラミックスグリーン接合体)についての寸法を示す。
【0057】
【表2】
【0058】
以下、セラミックス基体(従って、セラミックスグリーン基体)の表面形状が波形の場合について付言する。この例の場合、表面波形における山・谷間の高低差は、0.1mm程度である。従って、本実施形態、並びに、熱圧着法について、上述した図6に示したように、比較的変形し難いPETフィルムを介してシリコンゴムシートがセラミックスグリーンシートを押圧するように構成しても、PETフィルム(従って、セラミックスグリーンシート)がセラミックグリーン基体の表面形状(波形)に沿うように変形し得る。この結果、前記押圧状態において、セラミックスグリーンシートに均等に圧力を加えることができる。この結果、セラミックスグリーンシートが、膜厚を一定に維持した状態でセラミックグリーン基体の表面形状(波形)に沿うように変形し得る。この結果、図12に示すように、セラミックスグリーン基体の表面(波形)に接合されたセラミックスグリーンシート(従って、焼成後のセラミックス膜)の膜厚を均一とすることができる。
【0059】
なお、冷間等方圧加圧法(Cold Isostatic Pressing、CIP)等を用いて、前記押圧状態において、セラミックスグリーンシートに均等に圧力を加えることによっても、上記と同様、図12に示すように、セラミックスグリーンシートをセラミックグリーン基体の表面形状(波形)に沿うように変形させ、且つ、セラミックスグリーンシートの膜厚を均一とすることができる。本実施形態、並びに、熱圧着法について、表2に示したシート厚さの数値は、この「均一な膜厚」の値である。
【0060】
一方、印刷法については、セラミックス基体(従って、セラミックスグリーン基体)の表面形状が波形の場合には、セラミックスグリーン膜厚(即ち、ペースト層厚)を均一とすることができない。従って、印刷法について、表2に示したペースト層厚の数値は、ペースト層の厚さの平均値である。
【0061】
この点、本実施形態について、セラミックス基体の接合面にセラミックス膜の全体が密着し、且つ、「セラミックス基体の接合面の平面度が、セラミックス膜の(均一な)厚さの0.5倍以上20倍以下となる」セラミックス接合体が実現され得る、ことが別途確認されている。ここで、平面度とは、例えば、JIS
B0621で規定される値である。膜形成法として少なくとも印刷法が使用された場合、このようなセラミックス接合体は、実現され得ない。
【0062】
この試験では、上記のS1〜S7のそれぞれの基体形状パターン(表1を参照)について、上記のM1〜M12の膜形成パターン(表2を参照)を使用してセラミックスグリーン膜がそれぞれ形成された。得られた各セラミックスグリーン接合体がそれぞれ焼成されて、7×12種類のセラミックス接合体が得られた。各セラミックス接合体の幅A、及び奥行きB(図1を参照)はそれぞれ、50mm、100mmであった。各セラミックス接合体のセラミックス基体及びセラミックス膜を構成するセラミックス材料はそれぞれ、「酸化イットリウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケルの混合物」、及び、酸化ジルコニウムであり、セラミックス基体の気孔率は0%以上45%以下であった。そして、各セラミックス基体について、セラミックス基体の変形、割れの有無、並びに、セラミックス膜の緻密性が評価された。この結果を表3〜表5に示す。表3〜表5において、○は「優」、△は「良」、×は「不可」を示す。
【0063】
【表3】
【表4】
【表5】
【0064】
表3は、セラミックス基体の変形・割れの有無についての評価結果を示す。表3から理解できるように、本実施形態(M1〜M5)、並びに、印刷法(M6〜M8)の場合は、セラミックス基体の変形・割れが無い(或いは、比較的少ない)。これは、膜形成時において比較的強い外力(接合圧力)がセラミックスグリーン基体に付与されないことに基づく、と考えられる。一方、熱圧着法(M9〜M12)では、セラミックス基体の変形・割れが多い。これは、膜形成時において比較的強い外力(接合圧力)がセラミックスグリーン基体に付与されることに基づく、と考えられる。
【0065】
表4は、セラミックス膜の緻密性についての評価結果を示す。表4から理解できるように、本実施形態(M1〜M5)、並びに、熱圧着法(M9〜M12)の場合は、セラミックス膜の緻密性が非常に高い。一方、印刷法(M6〜M8)では、セラミックス膜の緻密性が非常に低い。
【0066】
表5は、表3、表4の結果に基づく総合評価の結果を示す。表5において、○は「表3、4の両方で○のもの」、△は「表3、4の両方では○ではなく、且つ、表3、4で×がないもの」、×は「表3、4の少なくとも1つで×があるもの」を示す。
【0067】
表3〜表5から理解できるように、「セラミックス基体の変形・割れの抑制」、並びに、「セラミックス膜の緻密性の確保」の点で、本実施形態(M1〜M5)は、印刷法(M6〜M8)、及び、熱圧着法(M9〜M12)と比較して有利である、といえる。更には、これらの結果に加えて、表1の値「T1/L1」にも着目すると、少なくとも値「T1/L1」が0.04以上0.69以下(M1〜M5)の範囲内では、本実施形態は、「セラミックス基体の変形・割れの抑制」、並びに、「セラミックス膜の緻密性の確保」の点で、印刷法、及び、熱圧着法と比較して有利である、ということもできる。
【0068】
以下、図13図19しながら、図1図9に示した上記実施形態の変形例について簡単に説明する。図13図14はそれぞれ、図1図2に対応し、図15図19はそれぞれ図5図9に対応している。
【0069】
図1及び図2と、図13及び図14と、の比較から理解できるように、この変形例は、セラミックス基体10の上下面のそれぞれの中央部においてセラミックス膜20が形成されていない部分(以下、「窓部21」と呼ぶ)が存在する点においてのみ、セラミックス基体10の上下面の全域に亘ってセラミックス膜20がそれぞれ形成されている上記実施形態と異なる。
【0070】
この変形例では、上記窓部21を形成するため、以下の手法が採用される。即ち、図15に示すように、PETフィルム付シート20gの接合面において、上記窓部21に対応する部分(以下、「窓対応部31g」と呼ぶ)にはペースト層30gが形成されず、残りの部分にペースト層30gが形成される。この場合、ペースト層30gの形成法として、印刷法が採用されることが好適である。印刷法の採用により、窓対応部31gの正確な輪郭パターンを得ることができる。
【0071】
このように、窓対応部31gが存在するようにペースト層30gが形成された場合、図18に示すように、PETフィルム付シート20gの押圧後に、図17に示すグリーン接合体からPETフィルムが剥がすと、セラミックスグリーンシート20gにおいて、窓対応部31gに対応しない部分(即ち、ペースト層30gが形成されていた部分)はセラミックスグリーン基体10gの接合面に密着した状態で維持される一方、窓対応部31gに対応する部分(従って、ペースト層30gが形成されていなかった部分)はPETフィルムに貼りついた状態でPETフィルムと共に除去される。この結果、図19に示すように、窓21が形成される。
【0072】
なお、厳密には、セラミックスグリーンシート20gにおける窓対応部31gに対応する部分の周縁部では、完全に除去されない残存部分も発生し得る。セラミックスグリーンシート20gの厚さが大きいほど、この傾向が大きくなる。このように除去されなかった残存部分は、粘着ローラ等を用いて除去されてもよい。
【0073】
以上の手法を採用することで、セラミックス基体の接合面上において、セラミックス膜が形成される部分と形成されない部分とが存在する場合において、「セラミックス膜が形成された部分と形成されない部分との境界」に対応するセラミックス膜の縁部(図19では、窓部21の輪郭に対応するセラミックス膜20の縁部)の形状が安定することが判明した。
【0074】
具体的には、図19の拡大図である図20に示すように、セラミックス膜20の厚さの平均値をTBとし、セラミックス膜20の前記縁部の厚さをTB’としたとき、窓部21の輪郭の全周に亘って、値「TB’/TB」が0.7以上1.3以下の範囲内で安定することが別途確認されている。なお、値「TB’/TB」は、焼成体における値である。
【0075】
なお、上記窓部21を形成するため、「セラミックスグリーン基体10gの接合面上における窓部21に対応する領域にマスキング部材を載置した状態で、ディッピングにより窓部21を除いた領域にペースト層を形成し、ペースト層の乾燥後にマスキング部材を除去する」という手法も考えられる。しかしながら、この場合、図21に示すように、窓部21の輪郭に対応するセラミックス膜20の縁部の形状が安定し難い。換言すれば、値「TB’/TB」が0.7以上1.3以下の範囲内で安定し得ない。これは、セラミックス膜20の縁部の形状が、「マスキング部材の材料に対するペーストの接触角」の影響を受けることに起因する、と考えられる。
【0076】
本発明は上記実施形態及び変形例に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態及び変形例では、セラミックス基体の「穴部」として貫通孔が採用されているが、凹部(貫通しない穴)が採用されてもよい。また、上記実施形態及び変形例では、前記基体が「セラミックスで構成されたセラミックス基体」であり、前記膜が「前記基体とは組成又は微構造が異なるセラミックスで構成されたセラミックス膜」であるが、前記基体が「金属で構成された基体」であり、前記膜が「前記基体とは組成又は微構造が異なる金属で構成された膜」であってもよい。また、前記基体及び前記膜の何れか一方がセラミックスで構成され、他方が金属で構成されてもよい。
【0077】
また、上記実施形態及び変形例では、セラミックス基体とセラミックス膜との間で、セラミックスの組成が異なっているが、セラミックスの組成が同じでセラミックスの微構造(例えば、気孔率、粒径等)が異なっていても良い。
【0078】
また、上記実施形態及び変形例では、セラミックス基体が多孔質の又は緻密なセラミックスで構成され、且つセラミックス膜が緻密なセラミックスで構成されているが、セラミックス基体に加えてセラミックス膜も多孔質のセラミックスで構成されてもよい。
【0079】
また、上記実施形態及び変形例では、前記押圧状態(図6図16を参照)において、前記接合体は常温下に置かれているが、前記押圧状態において、前記接合体が加熱されてもよい。これにより、ペースト層の乾燥の進行速度をより一層高めることができる。
【符号の説明】
【0080】
10…セラミックス基体、20…セラミックス膜、21…窓部、10g…セラミックスグリーン基体、20g…セラミックスグリーンシート、30g…ペースト層、31g…窓対応部
図1
図2
図3
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