(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の封止シート被覆半導体素子は、基板に接触する一方面と、一方面の他方側に配置される他方面とを有する半導体素子と、半導体素子の少なくとも他方面を被覆する封止シートとを備え、封止シートは、一方側から他方側に投影したときに、半導体素子の一方面に含まれず、かつ、一方面から露出する露出面を備える。そして、露出面は、半導体素子の一方面より他方側に位置する他方側部分を有している。
【0029】
以下、第1実施形態〜第9実施形態によって、
図1〜
図17を参照して、本発明の封止シート被覆半導体素子、その製造方法、半導体装置およびその製造方法を説明する。
【0030】
<第1実施形態>
図1において、紙面上下方向を第1方向(表裏方向)、紙面奥行方向を第2方向(前後方向)、紙面左右方向を第3方向という場合がある。また、表裏方向は、後述するLED4において一方面である裏面から他方面である表面に向かう方向と、裏面から表面に向かう方向との双方向であり、さらに、表面から裏面に向かう方向を表裏方向一方とし、裏面から表面に向かう方向を表裏方向他方とする。
図2以降の図面の方向についても
図1と同様である。また、
図3、
図6、および
図12において、後述する粘着層3は、後述する支持板2、貫通孔21(
図3および
図6のみ)および基準マーク18(
図3および
図12のみ)の相対配置を明確に示すために、省略している。
【0031】
図1に示すように、封止シート被覆半導体素子としての蛍光体層被覆LED10は、基板9(後述、
図2(f)参照)に接触して実装するための一方面としての裏面22と、裏面22の表側(表裏方向他方側、つまり、反対側)に配置される他方面としての表面23と、裏面22と表面23との間において、それらに連結される側面26とを有する半導体素子としてのLED4と、LED4の少なくとも表面23を被覆する封止シートとしての蛍光体シート5(
図2参照)から形成される蛍光体層7とを備える。
【0032】
LED4は、電気エネルギーを光エネルギーに変換する半導体素子(より具体的には、光半導体素子)であり、例えば、厚み(表裏方向の最大長さ)が面方向長さ(表裏方向に対する直交方向における最大長さ)より短い断面視略矩形状および平面視略矩形状に形成されている。また、LED4の表面23および側面26は、発光層(図示せず)によって形成されている。一方、LED4の裏面22の一部は、
図1において図示しないバンプ(
図20における符号22参照。)によって形成され、基板9(
図2(f)参照)の表面に設けられる端子(
図2においても図示せず)と電気的に接続されることにより、LED4が実装される。LED4としては、例えば、青色光を発光する青色LED(発光ダイオード素子)が挙げられる。なお、LED4の表面が段差を有する場合には、LED4において最も表裏方向他方側に位置する面がLED4の表面23であり、また、後述する
図20においても説明するが、LED4の裏面が段差を有する場合には、LED4において最も表裏方向一方側に位置する面がLED4の裏面22である。
【0033】
LED4の面方向の最大長さは、例えば、0.1mm以上、3mm以下であり、また、1辺の長さが、例えば、0.1mm以上、3mm以下である。また、LED4の厚みT0は、例えば、0.05mm以上、1mm以下である。
【0034】
蛍光体層7の裏側部分は、LED4の表側部分を埋設している。具体的には、蛍光体層7は、LED4の表面23および側面26の表側部分を被覆している。
【0035】
すなわち、蛍光体層7は、その表面25が、面方向(表裏方向に対する直交方向)に投影したときに、LED4の表面23より表側(表裏方向他方)に位置するように平坦状に形成されている。
【0036】
一方、蛍光体層7における裏面24は、面方向に投影したときに、LED4の裏面22より表側に位置し、LED4の表面23より裏側(表裏方向一方)に位置する。具体的には、蛍光体層7の裏面24において、表裏方向に投影したときに、LED4と重ならないで、LED4から露出する平坦状の露出面27が形成されている。蛍光体層7の露出面27は、底面視において、LED4を囲む枠状に形成されており、側面視において、露出面27の内端縁は、LED4の側面26の表裏方向中央に至るように形成されている。また、蛍光体層7の露出面27は、LED4の裏面22より表側(表裏方向他方側)に位置する表側部分(他方側部分)とされている。これによって、LED4の裏側部分は、蛍光体層7の露出面27から裏側(表裏方向一方)に突出している。
【0037】
面方向に投影したときの、LED4の表面23と、蛍光体層7の露出面27との表裏方向長さT1、すなわち、LED4が埋設される表裏方向長さ(LED4の埋設長さ)T1は、LED4の厚みT0に対して、例えば、5%以上、好ましくは、10%以上、より好ましくは、20%以上であり、また、例えば、95%以下、好ましくは、90%以下、より好ましくは、80%以下となるように、設定される。また、LED4の埋設長さT1は、後述する蛍光体シート5の圧着前の厚みT3(
図2(b)参照)に対して、例えば、5%以上、好ましくは、10%以上であり、また、例えば、95%以下、好ましくは、90%以下となるように、設定される。具体的には、LED4の埋設長さT1は、例えば、0.01mm以上、好ましくは、0.05mm以上、より好ましくは、0.1mm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.8mm以下、より好ましくは、0.5mm以下である。
【0038】
一方、面方向に投影したときにおいて、LED4の裏面22と、蛍光体層7の露出面27との表裏方向長さT2、すなわち、蛍光体層7の裏面24からLED4の裏側部分が裏側(表裏方向一方)に突出する突出長さT2は、LED4の厚みT0に対して、例えば、5%以上、好ましくは、10%以上、より好ましくは、20%以上であり、また、例えば、95%以下、好ましくは、90%以下、より好ましくは、80%以下となるように、設定される。また、突出長さT2は、後述する蛍光体シート5の圧着前の厚みT3(
図2(b)参照)に対して、例えば、5%以上、好ましくは、10%以上であり、また、例えば、95%以下、好ましくは、90%以下となるように、設定される。具体的には、LED4の突出長さT2は、例えば、0.01mm以上、好ましくは、0.05mm以上、より好ましくは、0.1mm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.8mm以下、より好ましくは、0.5mm以下である。
【0039】
また、蛍光体層7の厚みT4は、例えば、2mm以下、好ましくは、1mm以下であり、また、例えば、0.05mm以上、好ましくは、0.1mm以上でもある。
【0040】
なお、蛍光体層7の厚みT4は、蛍光体層被覆LED10における蛍光体層7の最大厚み(表裏方向の最大長さ)T4であって、詳しくは、表裏方向に投影したときに重ならず、LED4から露出する部分の蛍光体層7の厚み、具体的には、底面視において、露出面27が区画される蛍光体層7の厚み(すなわち、表面25および露出面27間の長さ)である。
【0041】
一方、蛍光体層7の最小厚みT5は、例えば、0.01mm以上、好ましくは、0.02mm以上であり、また、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下でもある。
【0042】
次に、この蛍光体層被覆LED10の製造方法を詳説する。
【0043】
蛍光体層被覆LED10の製造方法は、
図2(a)〜
図2(e)に示すように、支持シート用意工程(
図2(a)参照)、LED4を配置するLED配置工程(半導体素子配置工程の一例、
図2(b)参照)、LED被覆工程(
図2(c)および
図2(d)参照)、蛍光体層被覆LED10を得る切断工程(
図2(d)の破線参照)、および、LED剥離工程(
図2(e)および
図2(e’)参照)を備える。
【0044】
LED被覆工程は、LED配置工程の後に、封止シートとしての蛍光体シート5を、LED4の表面23および側面26の表側部分を被覆しつつ、蛍光体シート5の裏面24が上記位置にある露出面27となるように、LED4の表側部分に配置する蛍光体シート配置工程(封止シート配置工程の一例、
図2(c)参照)、および、蛍光体シート5を硬化させて、蛍光体シート5によってLED4の表側部分を封止するLED封止工程(
図2(d)参照)を備える。
【0045】
また、半導体装置としてのLED装置15の製造方法は、実装工程(
図2(f)参照)を備える。
【0046】
以下、第1実施形態における蛍光体層被覆LED10の製造方法およびのLED装置15の製造方法の各工程を詳述する。
【0047】
[支持シート用意工程]
支持シート用意工程は、支持シート1を用意する工程である。支持シート1は、
図2(a)および
図3に示すように、面方向に延びるシート形状をなし、平面視形状(表裏方向に投影したときの形状)は、例えば、略矩形状に形成されている。
【0048】
また、支持シート1は、後で説明する切断工程(
図2(d)の破線参照)において切断の基準となる基準マーク18が予め設けられるように、用意される。
【0049】
基準マーク18は、
図3に示すように、支持シート1における面方向における周端部において、間隔を隔てて複数設けられている。例えば、基準マーク18は、支持シート1において互いに対向する2辺にそれぞれ設けられており、基準マーク18は、支持シート1の2辺が対向する方向において対向する1対をなすように形成されている。1対の基準マーク18は、その後に配置されるLED4(破線)に対応して設けられ、基準マーク18を基準として蛍光体シート5を切断したときに、LED4を個片化できるように配置されている。
【0050】
各基準マーク18は、平面視において容易に認識される形状に形成されており、例えば、平面視略三角形状に形成されている。
【0051】
支持シート1のサイズは、最大長さが、例えば、10mm以上、300mm以下であり、また、1辺の長さが、例えば、10mm以上、300mm以下である。
【0052】
支持シート1は、複数のLED4(
図2(b)参照)を支持できるように構成されており、
図2(a)および
図3に示すように、例えば、支持板2と、支持板2の表面に積層される粘着層3とを備える。
【0053】
支持板2は、面方向に延びる板形状をなし、支持シート1における裏面に設けられており、支持シート1と平面視略同一形状に形成されている。
【0054】
また、支持板2には、基準マーク18が形成されている。基準マーク18は、断面視において、図示しないが、例えば、表面から表裏方向途中まで凹む凹部、あるいは、表裏方向を貫通する孔として形成されている。
【0055】
支持板2は、少なくとも面方向に延伸不能であって、硬質の材料からなり、具体的には、そのような材料として、例えば、酸化ケイ素(ガラス、石英など)、アルミナなどの酸化物、例えば、ステンレス、シリコンなどの金属などが挙げられる。
【0056】
支持板2の23℃におけるヤング率は、例えば、1×10
6Pa以上、好ましくは、1×10
7Pa以上、より好ましくは、1×10
8Pa以上であり、また、例えば、1×10
12Pa以下でもある。支持板2のヤング率が上記した下限以上であれば、支持板2の硬質を担保して、後述するLED4(
図2(b)参照)をより一層確実に支持することができる。なお、支持板2のヤング率は、例えば、JIS H 7902:2008の圧縮弾性率などから求められる。
【0057】
支持板2の厚みは、例えば、0.1mm以上、好ましくは、0.3mm以上であり、また、例えば、5mm以下、好ましくは、2mm以下でもある。
【0058】
また、支持板2には、後で説明するLED剥離工程(
図2(e)および
図2(e’)参照)において押圧部材14を挿入するための貫通孔21が形成されている。
【0059】
貫通孔21は、
図3に示すように、支持板2において、その後に配置されるLED4に対応して設けられ、間隔を隔てて複数設けられている。例えば、貫通孔21は、基準マーク18を基準として蛍光体シート被覆LED10’を個片化したときにそれぞれの蛍光体層被覆LED10を押圧できるように配置されている。
【0060】
より具体的には、複数の貫通孔21が平面視において前後左右に互いに等間隔を隔てるように、支持シート1に整列配置されている。
【0061】
貫通孔21の形状は、例えば、平面視円形状をなし、その大きさは、孔径が、例えば、0.1mm以上、好ましくは、0.2mm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.7mm以下でもある。
【0062】
また、貫通孔21の大きさ(平面積)は、LED4の大きさ(平面積)に対して、例えば、10%以上、好ましくは、20%以上であり、また、例えば、90%以下であり、好ましくは、80%以下でもある。
【0063】
粘着層3は、支持板2の表面全面に形成されている。
【0064】
つまり、粘着層3は、支持板2の表面に貫通孔21を被覆するように積層されている。
【0065】
粘着層3を形成する粘着材料としては、例えば、アクリル系感圧接着剤、シリコーン系感圧接着剤などの感圧接着剤が挙げられる。
【0066】
また、粘着材料としては、紫外線照射、薬液または加熱によって粘着力が低下するものの他、通常、粘着剤として用いることができるものから広範に選択することができる。
【0067】
粘着層3の厚みは、例えば、0.01mm以上、好ましくは、0.02mm以上であり、また、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下でもある。
【0068】
支持シート1を用意するには、例えば、支持板2と粘着層3とを貼り合わせる。
【0069】
支持シート1の厚みは、例えば、0.2mm以上、好ましくは、0.5mm以上であり、また、6mm以下、好ましくは、2.5mm以下でもある。
【0070】
[LED配置工程]
LED配置工程は、複数のLED4を用意して、複数のLED4を粘着層3に配置する工程である。LED配置工程では、
図2(b)および
図3の仮想線で示すように、LED4を複数用意して、複数のLED4を、それらの裏面22が支持シート1の表面に接触するように、互いに間隔を隔てて配置する。
【0071】
LED配置工程では、例えば、複数のLED4を、支持シート1の表面に整列配置する。具体的には、複数のLED4を、各LED4の側面26が、平面視において前後左右に互いに等間隔を隔てられるように、配置する。
【0072】
また、LED4の裏面22を、貫通孔21と表裏方向において対向するように、粘着層3の表面に接触するように配置し、
図2において図示しないバンプ(
図20における符号22参照。)が支持シート1に対向するように、粘着層3に貼着する。これによって、LED4は、整列状態が維持されるように、裏面22が粘着層3を介して支持板2の表面に支持(感圧接着)される。
【0073】
各LED4は、対応する貫通孔21が、その中央に位置するように配置される。
【0074】
各LED4間の間隔L1は、例えば、0.05mm以上、2mm以下である。
【0075】
[LED被覆工程]
LED被覆工程は、蛍光体シート5によってLED4の表面23および側面26の表側部分を被覆して、LED4と蛍光体シート5とを備える蛍光体層被覆LED10を得る工程である。LED被覆工程は、蛍光体シート配置工程(
図2(c)参照)、および、LED封止工程(
図2(d)参照)を備えている。
【0076】
(蛍光体シート配置工程)
蛍光体シート配置工程は、LED配置工程の後に、蛍光体シート5を、LED4を部分的に被覆し、かつ、蛍光体シート5の裏面24が上記位置にある露出面27となるように、LED4の表側部分に配置する工程である。具体的には、表裏方向に投影したときに、蛍光体シート5を、LED4の少なくとも表面23を被覆し、かつ、蛍光体シート5の露出面27が、支持シート1の表面より表側に位置する表側部分(他方側部分)を有するように、配置する。
【0077】
図2(b)の上側図および
図2(c)において、蛍光体シート5は、硬化性樹脂および蛍光体を含有する蛍光樹脂組成物から形成されている。
【0078】
硬化性樹脂としては、例えば、加熱により硬化する熱硬化性樹脂、例えば、活性エネルギー線(例えば、紫外線、電子線など)の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂などが挙げられる。好ましくは、熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0079】
具体的には、硬化性樹脂として、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。好ましくは、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0080】
シリコーン樹脂としては、例えば、2段階硬化型シリコーン樹脂、1段階硬化型シリコーン樹脂などのシリコーン樹脂が挙げられ、好ましくは、2段階硬化型シリコーン樹脂が挙げられる。
【0081】
2段階硬化型シリコーン樹脂は、2段階の反応機構を有しており、1段階目の反応でBステージ化(半硬化)し、2段階目の反応でCステージ化(完全硬化)する熱硬化性シリコーン樹脂である。一方、1段階硬化型シリコーン樹脂は、1段階の反応機構を有しており、1段階目の反応で完全硬化する熱硬化性シリコーン樹脂である。
【0082】
また、Bステージは、硬化性シリコーン樹脂が、溶剤に可溶なAステージと、完全硬化したCステージとの間の状態であって、硬化およびゲル化がわずかに進行し、溶剤に膨潤するが完全に溶解せず、加熱によって軟化するが溶融しない状態である。
【0083】
2段階硬化型シリコーン樹脂としては、例えば、縮合反応と付加反応との2つの反応系を有する縮合反応・付加反応硬化型シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0084】
硬化性樹脂の配合割合は、蛍光樹脂組成物に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、50質量%以上であり、また、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下でもある。
【0085】
蛍光体は、波長変換機能を有しており、例えば、青色光を黄色光に変換することのできる黄色蛍光体、青色光を赤色光に変換することのできる赤色蛍光体などが挙げられる。
【0086】
黄色蛍光体としては、例えば、Y
3Al
5O
12:Ce(YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット):Ce)、Tb
3Al
3O
12:Ce(TAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット):Ce)などのガーネット型結晶構造を有するガーネット型蛍光体、例えば、Ca−α−SiAlONなどの酸窒化物蛍光体などが挙げられる。
【0087】
赤色蛍光体としては、例えば、CaAlSiN
3:Eu、CaSiN
2:Euなどの窒化物蛍光体などが挙げられる。
【0088】
好ましくは、黄色蛍光体が挙げられる。
【0089】
蛍光体の形状としては、例えば、球状、板状、針状などが挙げられる。好ましくは、流動性の観点から、球状が挙げられる。
【0090】
蛍光体の最大長さの平均値(球状である場合には、平均粒子径)は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下でもある。
【0091】
蛍光体の配合割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、例えば、80質量部以下、好ましくは、50質量部以下でもある。
【0092】
さらに、蛍光樹脂組成物は、充填剤を含有することもできる。
【0093】
充填剤としては、例えば、シリコーン粒子などの有機微粒子、例えば、シリカ、タルク、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機微粒子が挙げられる。また、充填剤の配合割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、また、例えば、70質量部以下、好ましくは、50質量部以下でもある。
【0094】
そして、
図2(c)に示すように、蛍光体シート5を、複数のLED4を被覆し、かつ、蛍光体シート5の裏面24が上記位置にある露出面27となるように、配置するには、まず、
図2(b)の上側図に示すように、蛍光体シート5を用意する。蛍光体シート5を用意するには、硬化性樹脂および蛍光体ならびに必要により配合される充填剤を配合して、蛍光樹脂組成物を調製する。次いで、蛍光樹脂組成物を、離型シート6の表面に塗布し、その後、加熱させる。
【0095】
硬化性樹脂が2段階硬化型シリコーン樹脂を含有する場合には、上記した加熱によって、硬化性樹脂がBステージ化(半硬化)する。つまり、Bステージの蛍光体シート5が形成される。
【0096】
この蛍光体シート5の23℃における圧縮弾性率は、例えば、0.01MPa以上、好ましくは、0.04MPa以上であり、また、例えば、1.0MPa以下、好ましくは、0.5MPa以下でもある。
【0097】
蛍光体シート5の圧縮弾性率が上記下限以上であれば、十分な柔軟性を担保することができる。一方、蛍光体シート5の圧縮弾性率が上記上限以下であれば、LED4に過剰な応力がかかることを防止しながら、LED4を埋設することができる。
【0098】
この蛍光体シート5の厚みT3、すなわち、蛍光体シート5の圧着前の厚み(表裏方向の最大長さ)T3は、例えば、2mm以下、好ましくは、1mm以下であり、また、例えば、0.05mm以上、好ましくは、0.1mm以上である。
【0099】
次いで、
図2(c)に示すように、蛍光体シート5を、複数のLED4を部分的に被覆し、かつ、蛍光体シート5の裏面24が上記位置にある露出面27となるように、LED4の表側部分に配置する。
【0100】
すなわち、蛍光体シート5を、複数のLED4の表側部分を被覆しつつ、蛍光体シート5の裏面24が粘着層3の表面より表側部分に配置される露出面27となるように、LED4の表側部分に配置する。
【0101】
具体的には、蛍光体シート5を、LED4の表側部分に配置するには、例えば、蛍光体シート5を複数のLED4の表側部分に対して圧着する。圧着は、例えば、2つの金属平板を備える平板プレス装置によって実施される。これによって、蛍光体シート5の裏側部分を複数のLED4間の隙間の表側部分に埋め込ませる。
【0102】
蛍光体シート5の複数のLED4の表側部分に対する圧着では、圧力、あるいは、蛍光体シート5の押込量を制御することにより、実施する。
【0103】
圧力は、蛍光体シート5の23℃における圧縮弾性率に対応して適宜設定される。
【0104】
押込量は、図示しない所定厚みのスペーサを、支持シート1の表面において、複数のLED4を囲むように平面視略枠状に配置した後、プレスするか、あるいは、平板プレス装置におけるプレス板の表裏方向の変位量を調整して、制御される。スペーサの厚みは、例えば、LED4の厚みT0からLED4の埋設長さT1を差し引いた長さである。
【0105】
また、圧着は、減圧雰囲気下、あるいは、常圧雰囲気下で実施され、好ましくは、プロセスの簡略化の観点から、常圧雰囲気下で実施される。
【0106】
なお、蛍光体シート5を複数のLED4の表面に載置し、その後、蛍光体シート5を所定時間放置することにより、蛍光体シート5の自重および蛍光体シート5の柔軟性(低い圧縮弾性率)に基づいて、蛍光体シート5が裏側(表裏方向一方側)にわずかに垂れることによって、蛍光体シート5を複数のLED4間の隙間の表側部分に埋め込むこともできる。
【0107】
蛍光体シート5のうち、複数のLED4間の隙間の表側部分(表裏方向他方側部分)に埋め込まれる(めり込み)部分は、蛍光体シート5の表側部分から裏側に断面略矩形状に突出する進入部分31とされる。進入部分31は、その側面が、LED4の側面26の表側部分を被覆している。一方、蛍光体シート5は、LED4の側面26(複数のLED4が互いに対向する対向面)の裏側部分を被覆せず、露出している。進入部分31の厚み(表裏方向長さ)は、上記したLED4の埋設長さT1と同様である。
【0108】
なお、蛍光体シート5のLED4の表側部分に対する圧着によって、蛍光体シート5の25が平板プレスにより平坦形状を維持したまま、表裏方向に投影したときに、蛍光体シート5においてLED4と重なる部分は、面方向外側に移動し、つまり、LED4と重ならない部分に移動して、進入部分31より表側に配置される表側部分を構成する。そのため、圧着後の蛍光体層7の最大厚みT4は、蛍光体シート5の圧着前の厚みT3を上回る一方、圧着後の蛍光体層7の最小厚みT5は、蛍光体シート5の圧着前の厚みT3を下回る。
【0109】
これによって、各LED4の表面25および側面26の表側部分が蛍光体シート5によって被覆される一方、各LED4間の裏側部分が蛍光体シート5から露出される空間30が形成される。
【0110】
空間30は、複数のLED4の裏側部分の側面26、粘着層3の表面、および、蛍光体シート5の裏面(進入部分31の裏面)24によって区画される空間である。また、空間30は、各LED4の間において連通する空間である。具体的には、空間30は、
図3が参照されるように、平面視において、粘着層3の外形形状からLED4の形状を除いた略格子形状(略碁盤目形状)に形成される。なお、空間30において、LED4から露出する粘着層3の表面は、蛍光体シート5の裏面24に接触することなく、具体的には、進入部分31の裏面24と表裏方向において間隔が隔てられている。空間30の厚みは、LED4の突出長さT2と同様である。
【0111】
その後、
図2(c)の仮想線で示すように、離型シート6を蛍光体シート5の表面25から剥離する。
【0112】
(LED封止工程)
LED封止工程は、蛍光体シート5を硬化させて、可撓性の蛍光体シート5によってLED4の表側部分を封止する工程である。LED封止工程は、蛍光体シート配置工程(
図2(c)参照)の後に、実施する。
【0113】
LED封止工程では、
図2(d)に示すように、蛍光体シート5を硬化させる。具体的には、蛍光体シート5を、例えば、80℃以上、好ましくは、100℃以上、また、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下に、加熱する。
【0114】
硬化性樹脂が2段階硬化型シリコーン樹脂を含有し、LED4を埋設する蛍光体シート5がBステージである場合には、蛍光体シート5は、上記した加熱によって、完全硬化してCステージとなる。
【0115】
また、硬化性樹脂が1段階硬化型シリコーン樹脂を含有する場合には、かかる硬化性樹脂からなる蛍光体シート5は、上記した加熱によって、完全硬化してCステージとなる。
【0116】
あるいは、硬化性樹脂が活性エネルギー線硬化性樹脂である場合には、蛍光体シート5に活性エネルギー線を表側から照射する。
【0117】
硬化(完全硬化)した蛍光体シート5は、可撓性を有しており、具体的には、23℃における圧縮弾性率が、例えば、0.5MPa以上、好ましくは、1MPa以上であり、また、例えば、100MPa以下、好ましくは、10MPa以下でもある。
【0118】
蛍光体シート5の圧縮弾性率が上記上限以下であれば、可撓性を確実に担保することができ、例えば、次の切断工程(
図2(d)参照)において、カッティング装置(後述)を用いて、蛍光体シート5を切断することもできる。蛍光体シート5の圧縮弾性率が上記下限以上であれば、切断後の形状を保持することができる。
【0119】
これにより、LED4の表側部分の側面26および表面23が、蛍光体シート5によって密着状に被覆される。つまり、Cステージの蛍光体シート5によってLED4の表側部分が封止される。
【0120】
これによって、切断工程前の支持シート1の表側において、複数のLED4と、それらの表側部分をまとめて被覆して封止する蛍光体シート5とを備える、封止シート被覆半導体素子の一例としての蛍光体シート被覆LED10’を得る。蛍光体シート被覆LED10’は、複数のLED4の裏面22が支持シート1に密着する状態で得られる。また、蛍光体シート被覆LED10’において、蛍光体シート5の裏面24は、面方向に投影したときに、複数のLED4の裏面22より表側(表裏方向他方)に位置する露出面27とされる。
【0121】
[切断工程]
切断工程は、LED封止工程の後に、蛍光体シート5を、複数のLED4に対応して切断することにより、複数のLED4を備える蛍光体シート被覆LED10’から、1つのLED4を備える蛍光体層被覆LED10を得る工程である。
図2(d)の破線で示すように、切断工程では、複数のLED4の周囲の可撓性の蛍光体シート5を、表裏方向に沿って切断する。例えば、
図3の1点鎖線で示すように、蛍光体シート5を、例えば、各LED4を囲む平面視略矩形状に切断する。
【0122】
蛍光体シート5を切断するには、例えば、円盤状のダイシングソー(ダイシングブレード)を用いるダイシング装置、カッターを用いるカッティング装置、レーザー照射装置などの切断装置が用いられる。
【0123】
また、蛍光体シート5の切断は、基準マーク18を基準として実施する。具体的には、1対をなす基準マーク18を結ぶ直線(
図3において1点鎖線で示される)に沿って、蛍光体シート5を切り目8が形成されるように切断する。
【0124】
なお、蛍光体シート5の切断では、例えば、切り目8が支持シート1を貫通しないように、具体的には、粘着層3を貫通しないように、蛍光体シート5の表側から裏側に向かって切断する。
【0125】
切断工程によって、1つのLED4と、そのLED4の表側部分を被覆する蛍光体シート5から形成される蛍光体層7とを備える蛍光体層被覆LED10を、LED4が支持シート1に密着する状態で得る。つまり、複数のLED4を備える蛍光体シート被覆LED10’を各LED4に対応するように個片化して、1つのLED4を備える蛍光体層被覆LED10を得る。
【0126】
[LED剥離工程]
LED剥離工程は、
図2(e)に示すように、蛍光体層被覆LED10を粘着層3から剥離する工程である。LED剥離工程では、
図2(e’)に示すように、針などの押圧部材14と、コレットなどの吸引部材16とを備えるピックアップ装置17を用いて、貫通孔21を介して押圧部材14により粘着層3を押圧し、蛍光体層被覆LED10を支持板2および粘着層3から剥離する。
【0127】
詳しくは、まず、支持シート1をピックアップ装置17に設置して、押圧部材14を剥離したい蛍光体層被覆LED10に対応する貫通孔21に対して裏側から対向配置させる。
【0128】
そして、貫通孔21に、押圧部材14を裏側から挿入する。
【0129】
すると、貫通孔21に対応する粘着層3が、支持板2に対して相対的に表側に押圧され、蛍光体層被覆LED10とともに押し上げられる。
【0130】
押し上げられた蛍光体層被覆LED10は、吸引部材16によって吸引される。
【0131】
そして、蛍光体層被覆LED10は、吸引部材16によって吸引されながら、支持板2に対して相対的に表側へさらに移動し、その後、粘着層3から剥離する。
【0132】
なお、必要により、LED剥離工程の前に、紫外線照射、薬液または加熱によって粘着層3の粘着力を低下させてから、蛍光体層被覆LED10を容易に剥離することもできる。
【0133】
また、LED剥離工程において、蛍光体層7が粘着層3に接触しておらず、LED4のみが粘着層3に接触しているので、蛍光体層被覆LED10を粘着層3から容易に剥離できる。
【0134】
これによって、
図2(e)に示すように、支持シート1から剥離された蛍光体層被覆LED10を得る。
【0135】
[実装工程]
実装工程は、LED剥離工程の後、蛍光体層被覆LED10を基板9に実装する工程である。実装工程では、蛍光体層被覆LED10を発光波長や発光効率に応じて選別した後、
図2(f)に示すように、選別された蛍光体層被覆LED10を基板9に実装する。これによって、半導体装置としてのLED装置15を得る。
【0136】
具体的には、蛍光体層被覆LED10を、LED4の裏面22に設けられるバンプ(
図20における符号22参照。)が基板9の表面に設けられる端子(図示せず)と対向するように、基板9と対向配置させる。つまり、蛍光体層被覆LED10のLED4を基板9にフリップチップ実装する。
【0137】
これにより、基板9と、基板9に実装される蛍光体層被覆LED10とを備えるLED装置15を得る。LED装置15では、蛍光体層7の露出面27と基板9とは、表裏方向に間隔が隔てられている。つまり、蛍光体層7の露出面27は、面方向に投影したときに、基板9の表面より表側(表裏方向他方)に位置している。
【0138】
その後、必要により、
図2(f)の仮想線で示すように、LED装置15に、蛍光体層被覆LED10を封止する封止保護層20(蛍光体層7とは異なる封止層)を設けることもできる。これによって、LED装置15の信頼性を向上させることができる。
【0139】
そして、この蛍光体層被覆LED10および蛍光体シート被覆LED10’では、蛍光体シート5の露出面27は、LED4の裏面22より表側に位置するので、蛍光体シート5の露出面27がLED4の裏面22と同じ位置にある場合に比べて、蛍光体シート5中のボイドの発生が抑制される。
【0140】
そのため、蛍光体層被覆LED10および蛍光体シート被覆LED10’は、信頼性に優れる。
【0141】
また、この蛍光体層被覆LED10および蛍光体シート被覆LED10’では、露出面27は、すべて、LED4の裏面22より表側(表裏方向他方)に位置する表側部分(他方側部分)であるので、ボイドの発生をより一層抑制することができる。
【0142】
また、蛍光体を含有する蛍光体シート5によりLED4を被覆するので、蛍光体層7によって、LED4から発光される光、具体的には、LED4の少なくとも表面23を形成する発光層(図示せず)から発光される光の波長を変換して、高エネルギーの光を発光することができる。
【0143】
また、蛍光体シート被覆LED10’およびそれが実装されるLED装置15では、複数のLED4によって物性を向上させることができ、具体的には、複数のLED4の発光によって発光強度を向上させることができる。
【0144】
従って、このLED装置15では、蛍光体シート5中のボイドの発生が抑制された蛍光体層被覆LED10を備えるので、信頼性に優れる。
【0145】
また、上記した蛍光体層被覆LED10の製造方法によれば、表裏方向に投影したときに、LED4の裏面22に含まれず、かつ、LED4の裏面22から露出する露出面27を備える封止シートを、LED4の少なくとも表面23を被覆し、かつ、蛍光体シート5の露出面27が、支持シート1の表面より表側(表裏方向他方側)に位置する表側部分(他方側部分)となるように、配置する蛍光体シート配置工程を備える。そのため、蛍光体シート5においてLED4から露出する露出面27全面が支持シート1の表面と同じ位置にある場合に比べて、つまり、蛍光体シート5の露出面27全面と支持シート1の表面とが接触する場合に比べて、かかる接触が少なく。その分、蛍光体シート5と支持シート1との接触に起因する蛍光体シート5中のボイドの発生を抑制することができる。
【0146】
また、この方法において、蛍光体シート配置工程を常圧雰囲気下で実施すると、かかる工程を減圧雰囲気下で実施する場合に比べて、蛍光体シート配置工程を簡略化することができる。
【0147】
このLED装置15の製造方法は、簡略化された蛍光体シート配置工程を備える蛍光体層被覆LED10の製造方法によって、蛍光体層被覆LED10を用意するので、簡易な工程で半導体装置15を得ることができる。
【0148】
さらに、上記した蛍光体層被覆LED10では、蛍光体シート5を、複数のLED4を部分的に被覆し、かつ、互いに隣接するLED4間にわたる空間30が形成されるように、配置するので、蛍光体シート5が複数のLED4に接触(圧着)する際に、蛍光体シート5から複数のLED4にかかる応力を、空間30に逃がすことができる。そのため、蛍光体シート5から複数のLED4にかかる面方向の応力を低減することができる。その結果、LED4が面方向にずれる、LEDの位置ずれが抑制された蛍光体層被覆LED10を製造することができる。
【0149】
また、互いに対向するLED4の裏側部分の側面26が露出することによって、上記した空間30を確実に形成することができる。
【0150】
また、蛍光体を含有する蛍光体シート5をLED4の表側部分に接触させるので、蛍光体層7によってLED4から発光される光の波長を変換して、高エネルギーの光を発光することができる。
【0151】
そして、蛍光体層被覆LED10は、LEDの位置ずれが抑制されて、寸法バラツキが抑制されている。そのため、安定した光学特性、具体的には、安定した輝度、安定した色度、安定した配向性などを確保することができる。
【0152】
また、LED装置15の製造方法は、安定した光学特性が確保された蛍光体層被覆LED10を用意する工程を含むので、安定した光学特性を有するLED装置15を製造することができる。
【0153】
そして、LED装置15は、LEDの位置ずれが抑制されて、寸法バラツキが抑制されているので、安定した輝度、安定した色度、安定した配向性などを確保することができる。
【0154】
また、上記した蛍光体層被覆LED10の製造方法によれば、支持シート用意工程では、貫通孔21が予め形成されている硬質の支持板2を用意し、LED剥離工程では、上記したピックアップ装置17を利用して、支持板2の貫通孔21に押圧部材14を挿入して粘着層3を押圧することにより、蛍光体層被覆LED10を粘着層3から剥離する。
【0155】
そのため、LED剥離工程の前に、粘着層3の粘着力を低下させる工程を必要とせずとも、LED4を粘着層3から剥離することができる。
【0156】
その結果、蛍光体層被覆LED10の製造に要する工数を削減することができる。
【0157】
また、粘着層3の材料を、紫外線照射、薬液または加熱によって粘着力が低下するような材料だけでなく、広範に選択することができる。
【0158】
その結果、工程設計の自由度を向上させることができる。
【0159】
一方、この蛍光体層被覆LED10の製造方法は、切断工程を備え、切断工程の後に、蛍光体層被覆LED10を支持シート1から剥離する。つまり、切断工程では、硬質の支持板2を備える支持シート1により、LED4および蛍光体シート5を支持しながら、蛍光体シート5を切断することができる。そのため、寸法安定性に優れる蛍光体層被覆LED10を得ることができる。
【0160】
また、LED装置15は、寸法安定性に優れる蛍光体層被覆LED10を備えるので、信頼性に優れ、そのため、発光効率が向上されている。
【0161】
また、蛍光体シート5を硬化させるLED封止工程の後に、蛍光体シート5を切断する切断工程を実施するので、硬化で生じ得る蛍光体シート5の収縮に起因する公差を、切断工程においてキャンセルすることができる。そのため、寸法安定性により一層優れる蛍光体層被覆LED10を得ることができる。
【0162】
さらに、LED4の表側部分を封止する蛍光体シート5は、可撓性であるので、切断工程において、高価なダイシング装置だけでなく、比較的安価なカッティング装置を含む種々の切断装置を使用して、蛍光体シート5を円滑に切断することができる。
【0163】
さらに、この方法の蛍光体シート配置工程では、Bステージの蛍光体シート5によって、LED4の表側部分を埋設し、LED封止工程では、蛍光体シート5を硬化させてCステージにし、Cステージの蛍光体シート5によってLED4の表側部分を封止する。そのため、BステージのLED4の表側部分を蛍光体シート5によって容易かつ確実に被覆しながら、Cステージの蛍光体シート5によってLED4の表側部分を確実に封止することができる。
【0164】
従って、蛍光体層被覆LED10は、寸法安定性に優れる。
【0165】
また、蛍光体層被覆LED10は、その製造に要する工数が低減されているので、コストを低減することができる。
【0166】
また、LED装置15は、上記した蛍光体層被覆LED10を備えているので、コストを低減することができる。
【0167】
また、この方法における支持シート用意工程では、支持シート1を、切断工程において切断の基準となる基準マーク18が予め設けられるように、用意する。
【0168】
一方、疑似ウエーハを石英基板および粘着シートから剥離した後、ダイシングする特許文献1に記載の方法では、疑似ウエーハをダイシングするときには、疑似ウエーハは、石英基板の表側にはなく、上記したような基準マーク18を基準としてダイシングすることができない。
【0169】
これに対して、上記の方法では、切断工程において、LED4は、支持シート1に支持されているため、このように基準マーク18を基準としてLED4を優れた精度で個片化することができる。
【0170】
[変形例]
図2の実施形態では、まず、切断工程において、
図2(d)の破線で示すように、複数のLED4、および、複数のLED4の表側部分を被覆する蛍光体シート5を有する蛍光体シート被覆LED10’を、複数の蛍光体層被覆LED10に個片化し、次いで、LED剥離工程において、
図2(e)に示すように、複数の蛍光体層被覆LED10のそれぞれを粘着層3から剥離している。しかし、
図4に示すように、切断工程において、蛍光体シート被覆LED10’を切断して個片化せずに、LED剥離工程において、蛍光体シート被覆LED10’における複数のLED4を蛍光体シート5とともに粘着層3から剥離することもできる。
【0171】
その場合には、ピックアップ装置17は、
図4に示すように、複数のLED4に対応して、複数の押圧部材14と複数の吸引部材16とを備え、複数の押圧部材14は連動して同時に表裏方向に移動する。
【0172】
複数のLED4を剥離するには、まず、複数のLED4を有する蛍光体シート被覆LED10’ピックアップ装置17に設置して、複数の押圧部材14をそれぞれ複数の貫通孔21に対して裏側から対向配置させる。
【0173】
そして、複数の貫通孔21に、複数の押圧部材14を裏側から同時に挿入する。
【0174】
すると、粘着層3全体が、支持板2に対して相対的に表側に押圧され、複数のLED4および蛍光体シート5とともに押し上げられる。
【0175】
押し上げられた複数のLED4および蛍光体シート5は、複数の吸引部材16によって吸引される。
【0176】
そして、複数のLED4および蛍光体シート5は、複数の吸引部材16によって吸引されながら、支持板2に対して相対的に表側さらに移動し、その後、粘着層3から剥離される。
【0177】
これによって、複数のLED4と、それらの表側部分を被覆する蛍光体シート5とを備える蛍光体シート被覆LED10’を得る。
【0178】
一方、
図2および
図3の実施形態では、
図2(b)に示すように、LED配置工程において、複数のLED4を支持シート1に配置し、LED被覆工程において、
図2(c)および
図2(d)に示すように、蛍光体シート被覆LED10’を作製し、その後、切断工程において、
図2(d)の破線で示すように、蛍光体シート被覆LED10’を切断して個片化して、蛍光体層被覆LED10を得ている。しかし、例えば、
図5および
図6に示すように、予め所望のサイズの支持シート1を用意し、続いて、1つのLED4を支持シート1に配置し、続いて、蛍光体シート5をLED4の表側部分に配置し、その後、切断工程(
図2(d)の破線参照)を実施することなく、蛍光体層被覆LED10を支持シート1から剥離して、蛍光体層被覆LED10を得ることもできる。
【0179】
すなわち、この実施形態は、
図5(a)〜
図5(e)に示すように、支持シート用意工程(
図5(a)参照)、LED配置工程(
図5(b)参照)、LED被覆工程(
図5(c)および
図5(d)参照)、および、LED剥離工程(
図5(e)および
図5(e’)参照)を備える。一方、この実施形態は、切断工程(
図2(d)の破線参照)を備えていない。
【0180】
支持シート用意工程では、
図5(a)および
図6に示すように、支持シート1を、1つのLED4を支持できるサイズに予め外形加工して、用意する。なお、支持シート1は、貫通孔21を備えるが、基準マーク18が形成されていない平面視略矩形状をなす。
【0181】
LED配置工程では、
図5(b)に示すように、1つのLED4を用意して、1つのLED4を粘着層3に配置する。
【0182】
LED被覆工程における蛍光体シート配置工程では、
図5(c)に示すように、蛍光体シート5を、蛍光体層被覆LED10の蛍光体層7(
図5(d)参照)に対応する形状およびサイズに予め外形加工して用意し、かかる蛍光体シート5を、LED4の表側部分を被覆し、かつ、蛍光体シート5の裏面24が上記位置にある露出面27となるように、LED4の表側部分に配置する。その後、
図5(d)に示すように、LED封止工程において、蛍光体シート5を硬化させて得られる蛍光体層7によって、LED4の表側部分を封止することにより、1つのLED4を備える蛍光体層被覆LED10を得る。
【0183】
その後、切断工程(
図2(d)の破線参照)を実施することなく、LED剥離工程において、
図5(e)に示すように、蛍光体層被覆LED10を粘着層3から剥離する。
【0184】
これにより得られる蛍光体層被覆LED10を、
図5(f)に示すように、基板9に実装して、LED装置15を得る。
【0185】
そして、この蛍光体層被覆LED10およびこれを備えるLED装置15は、上記した切断工程(
図2(d)の破線参照)を経由して得られる蛍光体層被覆LED10(
図2(e)参照)およびLED装置15(
図2(f)参照)と同様の作用効果を奏することができ、さらに、上記した製造方法によれば、切断工程(
図2(d)の破線参照)を実施しない分、工程を簡略化することができる。
【0186】
また、
図1の実施形態では、蛍光体層7の裏面24において、LED4から露出する露出面27を、面方向に投影したときに、LED4の表裏方向中央に配置しているが、例えば、
図7に示すように、LED4の表面23に配置することもできる。
【0187】
その場合には、蛍光体層7は、LED4の表面23のみを被覆し、側面26の全部(側面全面)を露出させている。つまり、蛍光体層7は、その裏面24が、LED4の表面23と同一平面上に位置するように形成されており、つまり、蛍光体シート5の裏面24とLED4の表面23とが、LED4の裏面22に平行する同一平面をなすように形成されている。
【0188】
このような蛍光体層被覆LED10を得るには、
図8(a)に示すように、蛍光体シート5を、進入部分31が形成されないように、複数のLED4の表面23に載置する。具体的には、蛍光体シート5を圧着せず、かつ、蛍光体シート5は、蛍光体シート5の自重に基づいて進入部分31が形成されないように、圧縮弾性率が設定されており、その場合には、蛍光体シート5の23℃における圧縮弾性率は、例えば、0.02MPa以上、好ましくは、0.05MPa以上であり、また、例えば、1.0MPa以下、好ましくは、0.5MPa以下でもある。
【0189】
続いて、
図8(b)に示すように、蛍光体シート5を硬化させる。これにより、LED4の表面23が、蛍光体シート5によって密着状に被覆される。つまり、Cステージの蛍光体シート5によってLED4の表面23が封止される。
【0190】
その後、切断工程(
図8(b)の破線参照)、LED剥離工程(
図8(c)参照)および実装工程(
図8(d)参照)を順次実施する。
【0191】
そして、
図7および
図8の実施形態によっても、
図1および
図2の実施形態と同様の作用効果を奏することができ、さらに、
図1および
図2に実施形態に比べると、進入部分31を形成する手間を省くことができ、その分、工程を簡略化することができる。さらに、
図7および
図8の実施形態であれば、LED4の裏面22と蛍光体層7の露出面27との表裏方向長さT2が、LED4の厚みT0と同一となり、十分な長さが確保される。そのため、蛍光体層7の裏面24全面と蛍光体層7の表面23とが接触することをより一層防止し、それによって、蛍光体層7におけるボイドの発生をより一層抑制することができる。
【0192】
なお、
図7および
図8の実施形態では、好ましくは、表面23のみを形成する発光層(図示せず)を有するLED4が用いられる。
【0193】
一方、
図1および
図2の実施形態であれば、進入部分31によって、LED4の側面26の表側部分を封止するので、表面23および側面26を形成する発光層(図示せず)を有するLED4を用いることができる。
【0194】
また、
図1の実施形態では、蛍光体層7の露出面27は、すべて、LED4の裏面22より表側に位置する表側部分(表裏方向他方側部分)としているが、例えば、
図9に示すように、露出面27の一部が、表側部分32とすることもできる。
【0195】
その場合には、
図9に示すように、蛍光体層7は、LED4の側面26の全部(側面26全面)を被覆している。つまり、蛍光体層7の露出面27は、LED4の裏面22と同一平面上に形成され、かつ、LED4の裏面22から外方に延び、支持シート1(
図10(a)および
図10(b)参照)および基板9(
図10(d)参照)に接触するための接触面34と、接触面34に連続し、面方向に投影したときに、LED4の裏面22に対して表側に間隔を隔てて湾曲状に形成される表側部分(他方側部分)としての湾曲面32(表側部分)とを有する。
【0196】
接触面34の幅L3は、例えば、0.01mm以上、好ましくは、0.02mm以上であり、また、0.5mm以下、好ましくは、0.3mm以下でもある。湾曲面32の幅(面方向における最短距離)L4は、例えば、0.01mm以上、好ましくは、0.02mm以上であり、また、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下でもある。幅L3が上記下限以上であれば、微小なボイド(長さ1〜10μm)の発生を抑制することができる。
【0197】
この方法では、蛍光体シート配置工程(
図10(a))後に、LED封止工程(
図10(b)参照)、切断工程(
図10(b)の破線参照)、LED剥離工程(
図10(c)参照)および実装工程(
図10(d)参照)を順次実施する。
【0198】
LED封止工程の蛍光体シート配置工程では、
図10(a)に示すように、蛍光体シート5の裏面24が、粘着層3の表面に接触する接触面34と湾曲面32とを有するように、蛍光体シート5をLED4に配置する。
【0199】
また、実装工程では、
図10(d)に示すように、蛍光体層7の接触面34が基板9の表面に接触する。
【0200】
図9および
図10の実施形態によっても、
図1および
図2の実施形態と同様の作用効果を奏することができ、さらに、
図1および
図2の実施形態と比べると、LED4の側面26全面が蛍光体シート5によって封止されているので、LED4の耐久性およびLED装置15の発光効率を向上させることができる。さらに、表面23および側面26の全面に発光層(図示せず)を有するLED4を好適に用いることができる。
【0201】
また、
図3および
図6において、貫通孔21を平面視円形状に形成しているが、その形状は、特に限定されず、例えば、平面視略矩形状、平面視略三角形状などの平面視略多角形状など、適宜の形状に形成することができる。
【0202】
また、
図3において、基準マーク18を平面視略三角形状に形成しているが、その形状は、特に限定されず、例えば、平面視略円形状、平面視略矩形状、平面視略X字形状、平面視略T字形状など、適宜の形状に形成することができる。
【0203】
また、第1実施形態では、本発明における半導体素子、封止シート被覆半導体素子および半導体装置として、それぞれ、LED4、蛍光体層被覆LED10(蛍光体シート被覆LED10’)およびLED装置15を一例として説明しているが、例えば、それぞれ、光半導体素子、蛍光体シート被覆光半導体素子および光半導体装置であってよく、具体例としては、それぞれ、LD(レーザーダイオード)4、蛍光体層被覆LD10(蛍光体シート被覆LD10’)およびレーザーダイオード装置7とすることができる。
【0204】
さらに、本発明における半導体素子、封止シート、封止シート被覆半導体素子および半導体装置として、それぞれ、LED4、蛍光体シート5(蛍光体層7)、蛍光体層被覆LED10(蛍光体シート被覆LED10’)およびLED装置15を一例として説明しているが、例えば、図示しないが、それらを、電子素子、封止シート(封止層)、封止層被覆電子素子(封止シート被覆電子素子)および電子装置とすることもできる。
【0205】
電子素子は、電気エネルギーを、光以外のエネルギー、具体例としては、信号エネルギーなどに変換する半導体素子であって、具体的には、トランジスタ、ダイオードなどが挙げられる。電子素子のサイズは、用途および目的によって適宜選択される。
【0206】
封止シートは、硬化性樹脂を必須成分として含有し、充填剤を任意成分として含有する封止樹脂組成物から形成されている。充填剤としては、さらに、カーボンブラックなどの黒色顔料などが挙げられる。充填剤の配合割合は、硬化性樹脂100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、99質量部以下、好ましくは、95質量部以下でもある。
【0207】
封止シートの光透過性以外の物性(具体的には、圧縮弾性率など)は、第1実施形態の蛍光体シート5のそれと同一である。
【0208】
封止層は、
図2(d)の破線が参照されるように、封止シートが切断されて、各電子素子の表面および側面の表側部分を被覆する保護層として形成される。
【0209】
<第2実施形態>
図11および
図12において、第1実施形態と同様の部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0210】
第1実施形態では、支持板2に貫通孔21を設けているが、例えば、
図11(a)および
図12に示すように、支持板2を貫通孔21のない平板状に形成することもできる。
【0211】
第2実施形態の蛍光体層被覆LED10の製造方法は、
図11(a)〜
図11(e)に示すように、支持シート1を用意する支持シート用意工程(
図11(a)参照)、LED4を支持シート1の表側に配置するLED配置工程(
図11(b)参照)、LED配置工程の後に、蛍光体シート5を、LED4を部分的に被覆し、かつ、蛍光体シート5の裏面24が上記位置にある露出面27となるように、LED4の表側部分に配置する蛍光体シート配置工程(
図11(c)参照)、蛍光体シート5を硬化させて、蛍光体シート5によってLED4の表側部分を封止するLED封止工程(
図11(d)参照)、LED封止工程の後に、蛍光体シート5を、LED4に対応して切断することにより、蛍光体層被覆LED10を得る切断工程(
図11(d)の破線参照)、および、切断工程の後に、蛍光体層被覆LED10を支持シート1から剥離するLED剥離工程(
図11(e)の仮想線参照)を備える。
【0212】
また、LED装置15の製造方法は、実装工程(
図11(f)参照)を備える。
【0213】
以下、第2実施形態における蛍光体層被覆LED10の製造方法およびのLED装置15の製造方法の各工程を詳述する。
【0214】
[支持シート用意工程]
図11(a)および
図12に示すように、支持シート1は、面方向に延びる平板シート形状をなし、平面視形状は、例えば、矩形状に形成されている。
【0215】
また、支持シート1は、
図12に示すように、後で説明する切断工程において切断の基準となる基準マーク18が予め設けられるように、用意される。一方、第1実施形態と異なり、支持シート1には、面方向中央に貫通孔21が設けられていない。
【0216】
支持シート1は、次に説明するLED4(
図11(b)参照)を支持できるように構成されており、
図11(a)および
図12に示すように、例えば、支持板2と、支持板2の表面に積層される粘着層3とを備える。
【0217】
支持板2は、面方向に延びる板形状をなし、支持シート1における裏面に設けられており、支持シート1と平面視略同一形状に形成されている。支持板2には、第1実施形態と異なり、貫通孔21が面方向中央に設けられていない。
【0218】
粘着層3は、支持板2の表面全面に形成されている。
【0219】
粘着層3を形成する粘着材料としては、例えば、第1実施形態と同様の感圧接着剤が挙げられる。また、粘着層3を、例えば、活性エネルギー線の照射によって粘着力が低下する活性エネルギー線照射剥離シート(具体的には、特開2005−286003号公報などに記載される活性エネルギー線照射剥離シート)、加熱によって粘着力が低下する熱剥離シート(具体的には、リバアルファ(登録商標、日東電工社製)などの熱剥離シート)などから形成することができる。具体的には、蛍光体シート5(
図11(b)の上側図参照)の蛍光樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合には、好ましくは、粘着層3を活性エネルギー線照射剥離シートから形成し、一方、後述する蛍光体シート5の蛍光樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する場合には、好ましくは、粘着層3を熱剥離シートから形成する。
【0220】
[LED配置工程]
LED配置工程では、
図11(b)および
図12の仮想線で示すように、LED4を複数用意して、それらを支持シート1の表側に配置する。
【0221】
[蛍光体シート配置工程]
図11(c)に示すように、蛍光体シート5を、複数のLED4の表側部分を被覆し、かつ、蛍光体シート5の裏面24が上記位置にある露出面27となるように、配置する。
【0222】
具体的には、
図11(b)の矢印で示すように、離型シート13に積層された蛍光体シート5を、例えば、粘着層3に向けて圧着する。また、圧着は、減圧雰囲気下、あるいは、常圧雰囲気下で実施される。プロセスの簡略化の観点から、好ましくは、常圧雰囲気下で実施される。
【0223】
その後、
図11(c)の仮想線で示すように、離型シート13を蛍光体シート5の表面25から剥離する。
【0224】
[LED封止工程]
LED封止工程は、蛍光体シート配置工程(
図11(c)参照)の後に、実施する。
【0225】
LED封止工程では、
図11(d)に示すように、蛍光体シート5を硬化させる。
【0226】
これにより、LED4の表側部分の側面26および表面23が、蛍光体シート5によって密着状に被覆される。つまり、Cステージの蛍光体シート5によってLED4の表側部分が封止される。
【0227】
[切断工程]
図11(d)の破線で示すように、切断工程では、LED4の周囲の可撓性の蛍光体シート5を、表裏方向に沿って切断する。例えば、
図12の1点鎖線で示すように、蛍光体シート5を、例えば、各LED4を囲む平面視略矩形状に切断する。
【0228】
切断工程によって、LED4と、LED4を被覆する蛍光体シート5から形成される蛍光体層7とを備える蛍光体層被覆LED10を、LED4が支持シート1に密着する状態で得る。
【0229】
[LED剥離工程]
図11(e)において、LED剥離工程では、蛍光体層被覆LED10を粘着層3の表面から剥離する。つまり、蛍光体層被覆LED10を支持板2および粘着層3から剥離する。具体的には、粘着層3に活性エネルギー線を照射するか、あるいは、粘着層3を加熱して、粘着層3の粘着力を低下させる。なお、LED剥離工程では、第1実施形態と異なり、押圧部材14(
図2(e’)参照)を用いることなく、蛍光体層被覆LED10を粘着層3から剥離する。
【0230】
また、LED剥離工程において、蛍光体層7が粘着層3に接触しておらず、LED4のみが粘着層3に接触しているので、蛍光体層被覆LED10を粘着層3から容易に剥離できる。
【0231】
これによって、支持シート1から剥離された蛍光体層被覆LED10を得る。
【0232】
[実装工程]
その後、蛍光体層被覆LED10を発光波長や発光効率に応じて選別した後、
図11(f)に示すように、選別された蛍光体層被覆LED10を基板9に実装する。これによって、LED装置15を得る。
【0233】
これにより、基板9と、基板9に実装される蛍光体層被覆LED10とを備えるLED装置15を得る。
【0234】
その後、必要により、
図11(f)の仮想線で示すように、LED装置15に、蛍光体層被覆LED10を封止する封止保護層20(蛍光体層7とは異なる封止層)を設ける。これによって、LED装置15の信頼性を向上させることができる。
【0235】
そして、第2実施形態の蛍光体層被覆LED10の製造方法では、第1実施形態のそれと同様の作用効果を奏することができる。
【0236】
なお、この第2実施形態の支持シート用意工程(
図11(a)参照)において、支持シート1を、支持板2および粘着層3を備えるように用意しているが、例えば、図示しないが、粘着層3を備えることなく、支持板2のみを備えるように支持シート1を用意することもできる。
【0237】
好ましくは、
図11(a)に示すように、支持シート1を、支持板2および粘着層3を備えるように用意する。
【0238】
これによって、
図11(b)に示すLED配置工程において、LED4を配置するときに、LED4を粘着層3を介して支持板2に接着することができる。そのため、支持シート1がLED4を確実に支持することができる。
<第3実施形態>
図13において、第1および第2実施形態と同様の部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0239】
第2実施形態におけるLED剥離工程(
図11(e)参照)では、蛍光体層被覆LED10を支持板2および粘着層3から剥離しているが、例えば、
図13(e)に示すように、まず、支持板2を粘着層3から剥離し、その後、
図13(f)に示すように、蛍光体層被覆LED10を粘着層3のみから剥離することもできる。
【0240】
つまり、蛍光体層被覆LED10の製造方法は、第2実施形態と同じ支持シート用意工程(
図13(a)参照)、LED配置工程(
図13(b)参照)、蛍光体シート配置工程(
図13(c)参照)、LED封止工程(
図13(d)参照)、切断工程(
図13(d)の破線参照)およびLED剥離工程(
図13(f)参照)を備え、さらに、切断工程(
図13(d)参照)の後で、LED剥離工程(
図13(f)参照)の前に、
図13(e)に示すように、支持板2を粘着層3から剥離する支持板剥離工程をさらに備える。
【0241】
[支持板剥離工程]
図13(e)に示すように、支持板剥離工程では、支持板2を粘着層3の裏面から引き剥がす。
【0242】
支持板2を粘着層3から引き剥がすには、例えば、粘着層3を、紫外線などの活性エネルギー線を照射することにより粘着力が低下する感圧接着剤から形成し、そして、かかる粘着層3に活性エネルギー線を照射して、粘着層3の粘着力を低下させる。その後、支持板2をかかる粘着層3から引き剥がす。
【0243】
あるいは、粘着層3を、加熱によって粘着力が低下する感圧接着剤から形成し、そして、かかる粘着層3に加熱して、粘着層3の粘着力を低下させる。その後、支持板2をかかる粘着層3から引き剥がす。
【0244】
[LED剥離工程]
次いで、
図13(f)の矢印で示すLED剥離工程では、蛍光体層被覆LED10を粘着層3から剥離する。
【0245】
具体的には、
図13(f’)に示すように、ピックアップ装置17によって、蛍光体層被覆LED10を粘着層3から剥離する。ピックアップ装置17では、押圧部材14が、剥離したい蛍光体層被覆LED10に対応する粘着層3を裏側から押圧する(押し上げる)ことによって、剥離したい蛍光体層被覆LED10を表側に押し上げて、押し上げられた蛍光体層被覆LED10をコレットなどの吸引部材16によって吸引しながら粘着層3から剥離する。
【0246】
これによって、
図13(f)に示すように、支持シート1から剥離された蛍光体層被覆LED10を得る。
【0247】
[実装工程]
その後、蛍光体層被覆LED10を発光波長や発光効率に応じて選別した後、
図13(g)に示すように、選別された蛍光体層被覆LED10を基板9に実装する。これによって、LED装置15を得る。
【0248】
そして、第3実施形態の方法によれば、LED剥離工程では、蛍光体層被覆LED10を粘着層3から剥離するので、上記したピックアップ装置17を利用して、蛍光体層被覆LED10を粘着層3から容易かつ確実に剥離することができる。
<第4実施形態>
図14において、第1〜第3実施形態と同様の部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0249】
第1実施形態〜第3実施形態のLED剥離工程(
図2(e)、
図11(e)および
図13(f)参照)では、蛍光体層被覆LED10を支持シート1から剥離し、実装工程(
図2(f)、
図11(f)および
図13(g)参照)では、蛍光体層被覆LED10をそのまま基板9に実装している。しかし、例えば、
図14(e)および
図14(f)に示すように、蛍光体層被覆LED10を転写シート11および延伸支持シート12に順次転写し、その後、
図14(g)に示すように、蛍光体層被覆LED10を延伸支持シート12から剥離することもできる。
【0250】
つまり、蛍光体層被覆LED10の製造方法は、第2実施形態と同じ支持シート用意工程(
図14(a)参照)、LED配置工程(
図14(b)参照)、蛍光体シート配置工程(
図14(c)参照)、LED封止工程(
図14(d)参照)および切断工程(
図14(d)の破線参照)を備え、さらに、上記したLED剥離工程(
図14(e)〜
図14(g)参照)を備える。また、LED装置15の製造方法は、実装工程(
図14(h)参照)を備える。
【0251】
[LED剥離工程]
LED剥離工程は、蛍光体層被覆LED10を延伸支持シート12に転写する転写工程(
図14(f)参照)、および、延伸支持シート12を面方向に延伸させながら、蛍光体層被覆LED10を延伸支持シート12から剥離する再剥離工程(
図14(g)および
図14(g’)参照)を備える。
【0252】
[転写工程]
蛍光体層被覆LED10を延伸支持シート12に転写するには、予め、
図14(d)の矢印および
図14(e)に示すように、切断工程(
図14(d)の破線)後の蛍光体層被覆LED10を転写シート11に転写する(第1転写工程)。
【0253】
転写シート11は、次に説明する延伸支持シート12と同様の材料および厚みで形成されている。
【0254】
蛍光体層被覆LED10の転写シート11への転写によって、図示しないバンプ(
図20における符号22参照。)が形成されるLED4の表面22(転写前の裏面22、
図14(d)参照)および側面26の表側部分(転写前の裏側部分、
図14(d)参照)は、LED4の周囲の蛍光体層7から露出する一方、蛍光体層7の裏面25(転写前の表面25、
図14(d)参照)は、転写シート11の表面に接触(密着)する。
【0255】
その後、
図14(f)に示すように、蛍光体層被覆LED10を延伸支持シート12に転写する(第2転写工程)。
【0256】
延伸支持シート12は、面方向に延伸可能な延伸可能粘着シートであって、例えば、活性エネルギー線の照射によって粘着力が低下する活性エネルギー線照射剥離シート(具体的には、特開2005−286003号公報などに記載される活性エネルギー線照射剥離シート)、加熱によって粘着力が低下する熱剥離シート(具体的には、リバアルファ(登録商標、日東電工社製)などの熱剥離シート)などが挙げられ、好ましくは、活性エネルギー線照射剥離シートなど挙げられる。
【0257】
延伸支持シート12の23℃における引張弾性率は、例えば、0.01MPa以上、好ましくは、0.1MPa以上であり、また、例えば、10MPa以下、好ましくは、1MPa以下でもある。
【0258】
延伸支持シート12の厚みは、例えば、0.1mm以上1mm以下である。
【0259】
延伸支持シート12は、市販品を用いることができ、具体的には、UEシリーズ(日東電工社製)などが用いられる。
【0260】
蛍光体層被覆LED10の延伸支持シート12への転写によって、図示しないバンプ(
図20における符号22参照。)が形成されるLED4の裏面22は、延伸支持シート12の表面に接触(密着)する一方、蛍光体層7の表面25は、露出する。
【0261】
[再剥離工程]
転写工程後、
図14(g)に示すように、延伸支持シート12を面方向に延伸させながら、蛍光体層被覆LED10を延伸支持シート12から剥離する。
【0262】
具体的には、まず、
図14(f)の矢印で示すように、延伸支持シート12を面方向外側に延伸させる。これによって、
図14(g)に示すように、蛍光体層被覆LED10は、延伸支持シート12に密着した状態で、切り目8に引張応力が集中するので、切り目8が広がり、そして、各LED4が互いに離間して、隙間19が形成される。隙間19は、各LED4を隔てるように、平面視略格子形状(略碁盤目形状)に形成される。
【0263】
続いて、
図14(g’)に示すように、押圧部材14によって、剥離したい蛍光体層被覆LED10に対応する延伸支持シート12を裏側から押し上げながら、かかる蛍光体層被覆LED10を表側に押し上げて、押し上げられた蛍光体層被覆LED10を吸引部材16によって吸引しながら延伸支持シート12から剥離する。
【0264】
また、延伸支持シート12が活性エネルギー線照射剥離シートである場合には、蛍光体層被覆LED10を延伸支持シート12から剥離するときに、延伸支持シート12に活性エネルギー線を照射する。あるいは、延伸支持シート12が熱剥離シートである場合には、延伸支持シート12を加熱する。これらの処理によって、延伸支持シート12の粘着力が低下するので、蛍光体層被覆LED10を延伸支持シート12から容易かつ確実に剥離することができる。
【0265】
これによって、支持シート1から剥離された蛍光体層被覆LED10を得る。
【0266】
[実装工程]
その後、蛍光体層被覆LED10を発光波長や発光効率に応じて選別した後、
図14(h)に示すように、選別された蛍光体層被覆LED10を基板9に実装する。これによって、LED装置15を得る。
【0267】
そして、第4実施形態の方法では、延伸支持シート12を面方向に延伸させながら、蛍光体層被覆LED10を延伸支持シート12から剥離する。
【0268】
そのため、蛍光体層被覆LED10の周囲には隙間19が形成されているので、かかる蛍光体層被覆LED10を、ピックアップ装置17を利用して、延伸支持シート12からより一層容易かつ確実に剥離することができる。
【0269】
しかも、剥離したい蛍光体層被覆LED10と、それに隣接する蛍光体層被覆LED10との間に隙間19が形成されるので、吸引部材16を剥離したい蛍光体層被覆LED10に近接させたときに、それに隣接する蛍光体層被覆LED10に吸引部材16が接触して、かかる蛍光体層被覆LED10が損傷することを防止することもできる。
<第5実施形態>
図15において、第1〜第4実施形態と同様の部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0270】
第4実施形態では、
図14(e)に示すように、切断工程(
図14(d)の破線)後の蛍光体層被覆LED10を転写シート11に転写している。しかし、
図15が参照されるように、
図15(d)の矢印および
図15(e)に示すように、まず、蛍光体層被覆LED10を転写シート11に転写し、その後、
図15(f)の破線で示すように、切断工程を実施することもできる。
【0271】
つまり、第5実施形態の蛍光体層被覆LED10の製造方法は、第4実施形態と同じ支持シート用意工程(
図15(a)参照)、LED配置工程(
図15(b)参照)、蛍光体シート配置工程(
図15(c)参照)、LED封止工程(
図15(d)参照)、転写工程(
図15(e)および
図15(f)参照)、切断工程(
図15(f)破線参照)および再剥離工程(
図15(g)参照)を備える。また、第5実施形態のLED装置15の製造方法は、実装工程(
図15(i)参照)を備える。
【0272】
図15(f)の破線で示される切断工程を、第1転写工程(
図15(e)参照)後で、第2転写工程(
図15(f)参照)の前に、実施する。
【0273】
そして、得られた蛍光体層被覆LED10を発光波長や発光効率に応じて選別した後、
図15(i)に示すように、選別された蛍光体層被覆LED10を基板9に実装する。これによって、LED装置15を得る。
<第6実施形態>
図16において、第1〜第5実施形態と同様の部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0274】
第5実施形態では、
図15(e)に示すように、第1転写工程において、蛍光体シート5および複数のLED4からなる蛍光体層被覆LED10を転写シート11に転写し、この際、支持板2および粘着層3からなる支持シート1を蛍光体層被覆LED10から引き剥がしている。しかし、
図16(d)に示すように、まず、支持シート1における支持板2を粘着層3から予め引き剥がしておき、次いで、
図16(e)の矢印および
図16(f)に示すように、蛍光体層被覆LED10を、粘着層3とともに、転写シート11に転写し、続いて、
図16(f)に示すように、延伸支持シート12の表側において、粘着層3を蛍光体層被覆LED10から引き剥がすこともできる。
【0275】
つまり、第6実施形態の蛍光体層被覆LED10の製造方法は、第5実施形態と同じ支持シート用意工程(
図16(a)参照)、LED配置工程(
図16(b)参照)、蛍光体シート配置工程(
図16(c)参照)、LED封止工程(
図16(d)参照)、転写工程(
図16(f)および
図16(h)参照)、支持板剥離工程(
図16(e)参照)、粘着層剥離工程(
図16(f)の矢印および
図16(g)参照)、切断工程(
図16(g)の破線参照)および再剥離工程(
図16(i)参照)を備える。また、第6実施形態のLED装置15の製造方法は、実装工程(
図15(j)参照)を備える。
【0276】
また、
図16(d)の矢印および
図16(e)で示す支持板剥離工程は、LED封止工程(
図16(d)参照)後に実施し、その後、
図16(f)に示すように、転写工程における第1転写工程において、粘着層3および蛍光体層被覆LED10を転写シート11に転写する。その後、
図16(f)の矢印および
図16(g)で示すように、粘着層剥離工程において、粘着層3を蛍光体層被覆LED10から剥離する。その後、
図16(g)に示すように、転写工程における第2転写工程において、蛍光体層被覆LED10を延伸支持シート12に転写する。
【0277】
そして、得られた蛍光体層被覆LED10を発光波長や発光効率に応じて選別した後、
図16(i)に示すように、選別された蛍光体層被覆LED10を基板9に実装する。これによって、LED装置15を得る。
【0278】
<第7実施形態>
図17において、第1〜第6実施形態と同様の部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0279】
第7実施形態の蛍光体層被覆LED10の製造方法は、
図17(a)〜
図17(e)に示すように、LED4を支持シート12の表面に配置するLED配置工程(
図17(a)参照)、蛍光体シート5を、LED4を部分的に被覆し、かつ、蛍光体シート5の裏面24が上記位置にある露出面27となるように、配置する蛍光体シート配置工程(
図17(b)参照)、活性エネルギー線を蛍光体シート5に照射して、蛍光体シート5によってLED4の表側部分を封止するLED封止工程(
図17(c)参照)、蛍光体シート5を、LED4に対応して切断する切断工程(
図17(d)参照)、および、蛍光体層被覆LED10を支持シート12から剥離するLED剥離工程(
図17(e)参照)を備える。また、第7実施形態のLED装置15の製造方法は、実装工程(
図17(f)参照)を備える。
【0280】
以下、第7実施形態における蛍光体層被覆LED10の製造方法およびのLED装置15の製造方法の各工程を詳述する。
<LED配置工程>
図17(a)に示すように、LED配置工程において、支持シート32は、面方向に延びるシート形状をなし、次に説明する蛍光体シート5と同一またはそれより大きい平面視略形状をなし、具体的には、平面視略矩シート形状に形成されている。
【0281】
支持シート32は、後述する蛍光体シート5の加熱硬化に対する耐熱性が不要であることから、耐熱性が低いシートから選択されることもできる。そのような支持シート32としては、LED4を支持可能で、かつ、面方向に延伸可能である。また、支持シート32は、例えば、加熱によって粘着力が低下する熱剥離シート(具体的には、リバアルファ(登録商標、日東電工社製)などの熱剥離シート)、または、活性エネルギー線(例えば、紫外線、電子線など)の照射によって粘着力が低下する活性エネルギー線照射剥離シート(具体的には、特開2005−286003号公報などに記載される活性エネルギー線照射剥離シート)であってもよい。なお、支持シート32が活性エネルギー線照射剥離シートである場合には、活性エネルギー線の蛍光体シート5への照射によって支持シート32の粘着力が低下しないように、活性エネルギー線硬化性樹脂や照射条件が選択される。
【0282】
支持シート32のサイズは、最大長さが、例えば、10mm以上、300mm以下であり、また、1辺の長さが、例えば、10mm以上、300mm以下である。
【0283】
支持シート32の23℃における引張弾性率は、例えば、1×10
4Pa以上、好ましくは、1×10
5Pa以上であり、また、例えば、1×10
9Pa以下でもある。支持シート32の引張弾性率が上記した下限以上であれば、支持シート32の面方向の延伸性を担保して、後述する支持シート32の面方向の延伸(
図17(e)参照)を円滑に実施することができる。
【0284】
支持シート32の厚みは、例えば、0.1mm以上、好ましくは、0.2mm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下でもある。
【0285】
LED配置工程では、例えば、複数のLED4を、支持シート32の表面に整列配置する。具体的には、複数のLED4が平面視において前後左右に互いに等間隔を隔てるように、LED4を支持シート32の表面に配置する。また、LED4の裏面22を、裏面22に設けられる図示しないバンプ(
図20における符号22参照。)が支持シート32の表面に対向するように、支持シート32の表面に貼着する。これによって、LED4の裏面22は、その整列状態が維持されるように、支持シート32の表面に支持(感圧接着)される。
【0286】
各LED4間の間隔は、例えば、0.05mm以上、2mm以下である。
<蛍光体シート配置工程>
蛍光体シート配置工程は、LED配置工程の後に実施する。
【0287】
図17(b)に示す蛍光体シート配置工程において、
図17(a)の上側図で示される蛍光体シート5は、活性エネルギー線硬化性樹脂および蛍光体を含有する蛍光樹脂組成物から形成されている。
【0288】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、活性エネルギー線の照射によって硬化する硬化性樹脂であり、具体的には、シリコーン半硬化体が挙げられ、そのようなシリコーン半硬化体は、第1のシリコーン樹脂組成物または第2のシリコーン樹脂組成物を加熱することにより、シートとして得られる。
【0289】
以下、第1のシリコーン樹脂組成物および第2のシリコーン樹脂組成物をそれぞれ詳述する。
[第1のシリコーン樹脂組成物]
第1のシリコーン樹脂組成物は、例えば、加熱によって縮合可能な少なくとも1対の縮合可能置換基と、活性エネルギー線によって付加可能な少なくとも1つの付加可能置換基とを含有する第1のポリシロキサンと、活性エネルギー線によって付加可能であり、第1のポリシロキサンの付加可能置換基と1対をなす、少なくとも1つの付加可能置換基を含有する第2のポリシロキサンとを含有する。
【0290】
1対の縮合可能置換基としては、例えば、ヒドロキシル基(−OH)、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基(−NH
2)、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基およびハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基と、ヒドロキシル基との組合せ(第1の組合せ群)が挙げられる。
【0291】
アルコキシ基は、−OR
1で示される。R
1は、アルキル基またはシクロアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシルチル基などの、直鎖状または分岐状の炭素数1以上20以下のアルキル基が挙げられる。好ましくは、炭素数1以上のアルキル基、また好ましくは、炭素数10以下のアルキル基、より好ましくは、炭素数6以下のアルキル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの、炭素数3以上6以下のシクロアルキル基が挙げられる。
【0292】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基など、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐状のアルキル基を有するアルコキシ基などが挙げられる。
【0293】
また、アルコキシ基として、例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの、炭素数3以上6以下のシクロアルキル基を有するアルコキシ基なども挙げられる。
【0294】
アルコキシ基として、好ましくは、調製のし易さや熱安定性の観点から、炭素数1以上のアルキル基を有するアルコキシ基が挙げられ、また、好ましくは、炭素数10以下のアルキル基を有するアルコキシ基が挙げられ、より好ましくは、炭素数6以下のアルキル基を有するアルコキシ基、さらに好ましくは、メトキシ基が挙げられる。
【0295】
アシルオキシ基は、−OCOR
1で示される。R
1は、上記したアルキル基またはシクロアルキル基を示す。R
1として、好ましくは、アルキル基が挙げられる。
【0296】
アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基(−OCOCH
3)、−OCOC
2H
5、−OCOC
3H
7などが挙げられる。好ましくは、アセトキシ基が挙げられる。
【0297】
アルキルアミノ基は、モノアルキルアミノ基およびジアルキルアミノ基を含む。
【0298】
モノアルキルアミノ基は、−NR
2Hで示される。R
2は、アルキル基またはシクロアルキル基を示す。R
2として、好ましくは、アルキル基が挙げられる。モノアルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基など、N置換アルキル基の炭素数が1以上10以下のモノアルキルアミノ基が挙げられる。
【0299】
ジアルキルアミノ基は、−NR
22で示される。R
2は、同一または相異していてもよいアルキル基またはシクロアルキル基を示す。R
2は、上記と同義である。ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルn−プロピルアミノ基、メチルイソプロピルアミノ基など、N,N置換アルキルの炭素数が1以上10以下のジアルキルアミノ基が挙げられる。
【0300】
アルキルアミノ基として、好ましくは、ジアルキルアミノ基、より好ましくは、N,N置換アルキルの炭素数が同数のジアルキルアミノ基、さらに好ましくは、ジメチルアミノ基が挙げられる。
【0301】
アルケニルオキシ基は、−OCOR
3で示される。R
3は、アルケニル基、シクロアルケニルを示す。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などの炭素数3以上10以下のアルケニル基が挙げられる。シクロアルケニル基としては、例えば、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、ノルボルネニル基などの炭素数3以上10以下のシクロアルケニル基が挙げられる。
【0302】
アルケニルオキシ基として、好ましくは、炭素数2以上10以下のアルケニル基を含有するアルケニルオキシ基が挙げられ、より好ましくは、イソプロペニル基が挙げられる。
【0303】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。好ましくは、塩素原子が挙げられる。
【0304】
第1の組合せ群として、具体的には、例えば、ヒドロキシル基同士の組合せ、アルコキシ基とヒドロキシル基との組合せ、アシルオキシ基とヒドロキシル基との組合せ、アミノ基とヒドロキシル基との組合せ、アルキルアミノ基とヒドロキシル基との組合せ、アルケニルオキシ基とヒドロキシル基との組合せ、ハロゲン原子とヒドロキシル基との組合せなど、1対の組合せが挙げられる。
【0305】
さらに、例えば、アルコキシ基と、アシルオキシ基と、ヒドロキシル基との組合せなど、2対(具体的には、アルコキシ基とヒドロキシル基との1対と、アシルオキシ基とヒドロキシル基との1対との合計2対)以上の組合せも挙げられる。
【0306】
第1の組合せ群として、好ましくは、ヒドロキシル基同士の組合せ、アルコキシ基とヒドロキシル基との組合せ、より好ましくは、アルコキシ基とヒドロキシル基との組合せ、さらに好ましくは、炭素数1以上10以下のアルキル基を有するアルコキシ基とヒドロキシル基との組合せ、とりわけ好ましくは、メトキシ基とヒドロキシル基との組合せが挙げられる。
【0307】
そして、第1の組合せ群からなる1対の縮合可能置換基は、下記式(1)で示される縮合、つまり、シラノール縮合によって、2つのケイ素原子が酸素原子を介して結合する。
式(1):
【0309】
(式中、R
1〜R
3は、上記同義である。)
1対の縮合可能置換基として、例えば、ヒドロキシル基およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの置換基と、水素原子との組合せ(第2の組合せ群)も挙げられる。
【0310】
アルコキシ基としては、第1の組合せ群で挙げたアルコキシ基が挙げられる。
【0311】
第2の組合せ群として、具体的には、例えば、ヒドロキシル基と水素原子との組合せ、アルコキシ基と水素原子との組合せなど、1対の組合せが挙げられる。
【0312】
さらに、例えば、ヒドロキシル基と、アルコキシ基と、水素原子との組合せなど、2対(具体的には、ヒドロキシル基と水素原子との1対と、アルコキシ基と水素原子との1対との合計2対)以上の組合せも挙げられる。
【0313】
そして、第2の組合せ群からなる1対の縮合可能置換基は、下記式(2)で示される縮合、つまり、ヒドロシラン縮合によって、2つのケイ素原子が酸素原子を介して結合する。
式(2):
【0315】
(式中、R
1は、上記と同義である。)
上記した第1の組合せ群および第2の組合せ群を、第1のポリシロキサンに、単独の群で、または、複数の群を併用して、含有することができる。
【0316】
各縮合可能置換基は、第1のポリシロキサンの分子を構成する主鎖の末端、主鎖の途中、および/または、主鎖から分岐する側鎖におけるケイ素原子に結合する。好ましくは、一方の縮合可能置換基(好ましくは、ヒドロキシル基)が、主鎖の両末端のケイ素原子に結合し、他方の縮合可能置換基(好ましくは、アルコキシ基)が、主鎖の途中のケイ素原子に結合する(後述の式(16)参照)。
【0317】
1対の付加可能置換基において、一方の付加可能置換基は、第1のポリシロキサンに少なくとも1つ含有され、他方の付加可能置換基は、第2のポリシロキサンに少なくとも1つ含有されている。
【0318】
1対の付加可能置換基としては、例えば、ヒドロシリル基とエチレン性不飽和基含有基との組合せ、(メタ)アクリロイル基含有基同士の組合せ、エポキシ基含有基同士の組合せ、チオール基含有基とエチレン性不飽和基含有基との組合せなどが挙げられる。
【0319】
ヒドロシリル基は、−SiHで示され、ケイ素原子に水素原子が直接結合する基である。
【0320】
エチレン性不飽和基含有基は、分子内にエチレン性不飽和基を含有しており、エチレン性不飽和基含有基として、例えば、上記したアルケニル基、シクロアルケニル基が挙げられる。好ましくは、アルケニル基、より好ましくは、ビニル基が挙げられる。
【0321】
(メタ)アクリロイル基含有基は、分子内にメタクリロイル基(CH
2=C(CH
3)COO−)および/またはアクリロイル基(CH
2=CHCOO−)を含有し、具体的には、下記式(3)で示される。
式(3):
【0323】
(式中、Yは、水素原子またはメチル基、R
4は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される2価の炭化水素基を示す。)
2価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1以上6以下のアルキレン基、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などの炭素数3以上8以下のシクロアルキレン基などが挙げられる。
【0324】
2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などの炭素数6以上10以下のアリーレン基などが挙げられる。
【0325】
2価の炭化水素基として、好ましくは、2価の飽和炭化水素基、より好ましくは、アルキレン基、さらに好ましくは、プロピレン基が挙げられる。
【0326】
(メタ)アクリロイル基含有基として、具体的には、3−(メタ)アクリロキシプロピル基などが挙げられる。
【0327】
エポキシ基含有基は、分子内にエポキシ基を含有しており、エポキシ基含有基としては、例えば、エポキシ基、グリシジルエーテル基、エポキシシクロアルキル基などが挙げられる。好ましくは、グリシジルエーテル基、エポキシシクロアルキル基などが挙げられる。
【0328】
グリシジルエーテル基は、例えば、式(4)で示されるグリシドキシアルキル基である。
式(4):
【0330】
(式(4)中、R
4は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される2価の炭化水素基を示す。)
R
4で示される2価の炭化水素基は、上記式(3)の2価の炭化水素基と同義である。
【0331】
グリシジルエーテル基としては、例えば、3−グリシドキシプロピル基などが挙げられる。
【0332】
エポキシシクロアルキル基としては、例えば、下記式(5)で示されるエポキシシクロヘキシル基などが挙げられる。
式(5):
【0334】
(式中、R
4は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される2価の炭化水素基を示す。)
2価の飽和炭化水素基としては、上記式(3)の2価の炭化水素基が挙げられ、好ましくは、上記した炭素数1以上6以下のアルキレン基が挙げられ、より好ましくは、エチレン基が挙げられる。
【0335】
エポキシシクロアルキル基として、具体的には、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基などが挙げられる。
【0336】
チオール基含有基は、分子内にチオール基(−SH)を含有しており、例えば、チオール基、例えば、メルカプトメチル、メルカプトエチル、メルカプトプロピルなどのメルカプトアルキル基などが挙げられる。
【0337】
一方の付加可能置換基は、第1のポリシロキサンの主鎖の末端、途中および/または側鎖に置換している。他方の付加可能置換基は、第2のポリシロキサンの主鎖の末端、途中、および/または、側鎖に置換または位置している。
【0338】
付加可能置換基として、上記した各1対または2対以上の組合せが挙げられる。
【0339】
1対の付加可能置換基として、耐熱性および透明性の観点から、好ましくは、ヒドロシリル基とアルケニル基との組合せが挙げられる。
【0340】
そして、1対の付加可能置換基は、下記式(6)〜式(9)で示されるように、付加する。
式(6):
【0344】
(式中、Zは、水素原子またはメチル基を示す。)
式(8):
【0348】
具体的には、1対の付加可能置換基が、ヒドロシリル基とアルケニル基(具体的には、ビニル基)との組合せである場合には、上記式(6)で示すように、ヒドロシリル化(ヒドロシリル付加する。
【0349】
また、1対の付加可能置換基が、(メタ)アクリロイル基同士の組合せである場合には、上記式(7)で示すように、重合(付加重合)する。
【0350】
また、1対の付加可能置換基が、グリシジルエーテル基同士の組合せである場合には、上記式(8)で示すように、エポキシ基の開環に基づいて、開環付加する。
【0351】
また、1対の付加可能置換基が、チオール基とアルケニル基(具体的には、ビニル基)との組合せである場合には、上記式(9)で示すエン・チオール反応(付加)する。
【0352】
第1のポリシロキサンは、具体的には、下記式(10)で示される。
式(10):
【0354】
(式中、R
6は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基、縮合可能置換基および/または付加可能置換基を示す。また、SiR
6は、付加可能置換基を示してもよい。A〜Eは構成単位、AおよびEが末端単位、B〜Dが繰返単位を示す。Qは、B〜Eのうちいずれかの構成単位を示す。a+b+cは1以上の整数である。複数のR
6のうち、少なくとも1対のR
6は、縮合可能置換基を示し、かつ、少なくとも1つのR
6または少なくとも1つのSiR
6は、付加可能置換基を示す。)
式(10)中、R
6で示される1価の炭化水素基のうち、1価の飽和炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基などが挙げられる。アルキル基およびシクロアルキル基としては、それぞれ、上記R
1で挙げたアルキル基およびシクロアルキル基と同様である。
【0355】
式(10)中、R
6で示される1価の炭化水素基のうち、1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などの、炭素数6以上10以下のアリール基などが挙げられる。
【0356】
1価の炭化水素基として、好ましくは、メチル、フェニルが挙げられる。
【0357】
aは、例えば、0以上の整数、好ましくは、1以上の整数、より好ましくは、2以上の整数であり、また、例えば、100000以下の整数、好ましくは、10000以下の整数、より好ましくは、10000以下の整数でもある。
【0358】
bは、例えば、0以上100000以下の整数、好ましくは、0以上10000以下の整数である。
【0359】
cは、例えば、0以上100000以下の整数、好ましくは、0以上10000以下の整数である。
【0360】
a+b+cは、好ましくは、1以上100000以下の整数、より好ましくは、1以上10000以下の整数である。つまり、a〜cのうち、少なくともいずれか1つは、1以上の整数である。
【0361】
R
6で示される縮合可能置換基、および、R
6またはSiR
6で示される付加可能置換基としては、それぞれ、上記した縮合可能置換基および付加可能置換基が挙げられる。
【0362】
第1のポリシロキサンは、例えば、少なくとも1つの縮合可能置換基および少なくとも1つの付加可能置換基を併有する第1のケイ素化合物と、少なくとも1つの縮合可能置換基を含有する第2のケイ素化合物とを部分的に縮合させることにより、調製される(後述する式(16)参照)。
【0363】
第1のケイ素化合物は、例えば、下記式(11)で示される。
式(11):
【0365】
(式中、R
7またはSiR
7は、付加可能置換基、Bは、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基、X
1は、縮合可能置換基を示す。nは、0または1を示す。)
R
7またはSiR
7で示される付加可能置換基として、例えば、上記した付加可能置換基、好ましくは、1対の付加可能置換基を構成する置換基のうちの一方であり、より好ましくは、エチレン性不飽和基含有基、(メタ)アクリロイル基含有基、エポキシ基含有基が挙げられ、さらに好ましくは、エチレン性不飽和基含有基、とりわけ好ましくは、アルケニル基、最も好ましくは、ビニル基が挙げられる。
【0366】
X
1で示される縮合可能置換基として、例えば、上記した縮合可能置換基、好ましくは、1対の縮合可能置換基を構成する置換基のうちの一方であり、より好ましくは、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルケニルオキシ基、ハロゲン原子が挙げられ、より好ましくは、アルコキシ基が挙げられる。
【0367】
X
1で示されるアルコキシ基として、例えば、反応性の観点から、好ましくは、炭素数1以上10以下のアルキル基を有するアルコキシ基、より好ましくは、炭素数1以上6以下のアルキル基を有するアルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ基が挙げられる。
【0368】
Bで示される1価の炭化水素基は、式(10)のR
6で例示した1価の炭化水素基と同義である。
【0369】
nが0である場合には、第1のケイ素化合物は、下記式(12)で示され、3つの縮合可能置換基を含有する3官能型ケイ素化合物とされる。
式(12):
【0371】
(式中、R
7またはSiR
7は、付加可能置換基、X
1は、縮合可能置換基を示す。)
そのような3官能型ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン、ノルボルネニルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0372】
これら3官能型ケイ素化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0373】
3官能型ケイ素化合物として、好ましくは、上記式(12)において、R
7がビニル基、X
1が全てメトキシ基であるビニルトリメトキシシランが挙げられる。
【0374】
一方、上記式(11)において、nが1である場合には、第1のケイ素化合物は、下記式(13)で示され、2つの縮合可能置換基を含有する2官能型ケイ素化合物とされる。
式(13):
【0376】
(式中、R
7またはSiR
7は、付加可能置換基、Bは、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基、X
1は、縮合可能置換基を示す。)
R
7、SiR
7、BおよびX
1は、上記と同義である。
【0377】
2官能型ケイ素化合物としては、例えば、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルジエトキシメチルシラン、アリルジメトキシメチルシラン、プロペニルジメトキシメチルシラン、ノルボルネニルジメトキシメチルシラン、オクテニルジメトキシメチルシラン、オクテニルジエトキシメチルシラン、3−アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシメチルシランなどが挙げられる。
【0378】
これら2官能型ケイ素化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0379】
2官能型ケイ素化合物として、好ましくは、上記式(13)において、R
7がビニル基、Bがメチル基、X
1がすべてメトキシ基であるビニルジメトキシメチルシランが挙げられる。
【0380】
第1のケイ素化合物は、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0381】
第1のケイ素化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0382】
具体的には、3官能型ケイ素化合物の単独使用、2官能型ケイ素化合物の単独使用、3官能型ケイ素化合物と2官能型ケイ素化合物との併用などが挙げられる。好ましくは、3官能型ケイ素化合物の単独使用、3官能型ケイ素化合物と2官能型ケイ素化合物との併用が挙げられる。
【0383】
第2のケイ素化合物は、例えば、少なくとも2つの縮合可能置換基を含有するポリシロキサンが挙げられ、具体的には、主鎖の末端のケイ素原子に結合する縮合可能置換基、および/または、主鎖から分岐する側鎖のケイ素原子に結合する縮合可能置換基を含有する。
【0384】
第2のケイ素化合物は、好ましくは、主鎖の両末端のケイ素原子に結合する縮合可能置換基を含有する(2官能型ケイ素化合物)。
【0385】
そのような第2のケイ素化合物は、下記式(14)で示される両末端型ポリシロキサン(2官能型ポリシロキサン)である。
式(14):
【0387】
(式中、R
8は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基、X
2は、縮合可能置換基を示す。また、nは、1以上の整数を示す。)
式(14)において、R
8で示される1価の炭化水素基としては、上記式(10)のR
6で例示される1価の炭化水素基が挙げられ、好ましくは、メチル、フェニルが挙げられる。
【0388】
式(14)において、X
2で示される縮合可能置換基としては、上記式(10)のR
6で例示される縮合可能置換基が挙げられ、好ましくは、ヒドロキシル基、水素原子、より好ましくは、ヒドロキシル基が挙げられる。
【0389】
両末端型ポリシロキサンは、縮合可能置換基がヒドロキシル基である場合には、下記式(15)で示されるシラノール基両末端ポリシロキサン(両末端シラノール型シリコーンオイル)とされる。
式(15):
【0391】
(式中、R
8は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基を示す。また、nは、1以上の整数を示す。)
R
8は、上記と同義である。
【0392】
上記式(14)および上記式(15)おいて、nは、好ましくは、安定性および/または取り扱い性の観点から、1以上10000以下の整数、さらに好ましくは、1以上1000以下の整数である。
【0393】
両末端型ポリシロキサンとして、具体的には、シラノール基両末端ポリジメチルシロキサン、シラノール基両末端ポリメチルフェニルシロキサン、シラノール基両末端ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。
【0394】
第2のケイ素化合物は、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0395】
第2のケイ素化合物の数平均分子量は、安定性および/または取り扱い性の観点から、例えば、100以上、好ましくは、200であり、また、例えば、1000000以下、好ましくは、100000以下である。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンで換算されて算出される。第2のケイ素化合物以外の原料の数平均分子量についても、上記と同様にして算出される。
【0396】
第1のケイ素化合物と第2のケイ素化合物とを部分的に縮合させるには、それらからなる縮合原料を縮合触媒とともに配合する。
【0397】
第2のケイ素化合物の配合割合は、第1のケイ素化合物および第2のケイ素化合物の総量(つまり、縮合原料の総量)100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、50質量部以上、さらに好ましくは、80質量部以上であり、また、例えば、99.99質量部以下、好ましくは、99.9質量部以下、より好ましくは、99.5質量部以下でもある。
【0398】
また、第1のケイ素化合物の縮合可能置換基(上記式(11)におけるX
1、具体的には、アルコキシ基)に対する、第2のケイ素化合物の縮合可能置換基(上記式(14)におけるX
2、具体的には、ヒドロキシル基)のモル比(X
2/X
1)は、例えば、20/1以下、好ましくは、10/1以下であり、また、例えば、1/5以上、好ましくは、1/2以上でもあり、もっとも好ましくは、実質的に1/1である。
【0399】
モル比が上記上限を超える場合には、第1および第2のケイ素化合物を部分的に縮合させて第1のポリシロキサンを得、その後、第1および第2のポリシロキサンとを完全に縮合させるときに、適度な靭性を有するシリコーン半硬化体が得られない場合があり、一方、モル比が上記下限に満たない場合には、第1のケイ素化合物の配合割合が過度に多く、そのため、得られるシリコーン硬化体の耐熱性が低下する場合がある。
【0400】
また、モル比が上記範囲内(好ましくは、実質的に1/1)であれば、第1のケイ素化合物の縮合可能置換基(具体的には、アルコキシ基)と、第2のケイ素化合物の縮合可能置換基(具体的には、ヒドロキシル基)とを過不足なく完全に縮合させることができる。
【0401】
また、3官能型ケイ素化合物と2官能型ケイ素化合物とが併用される場合には、2官能型ケイ素化合物の、3官能型ケイ素化合物に対する比(2官能型ケイ素化合物の質量部数/3官能型ケイ素化合物の質量部数)は、質量基準で、例えば、70/30以下、好ましくは、50/50以下であり、また、例えば、1/99以上、好ましくは、5/95以上でもある。また、3官能型ケイ素化合物と2官能型ケイ素化合物とが併用される場合には、3官能型ケイ素化合物の縮合可能置換基(上記式(12)におけるX
1、具体的には、アルコキシ基)に対する、第2のケイ素化合物の縮合可能置換基(上記式(14)におけるX
2、具体的には、ヒドロキシル基)のモル比(X
2/X
1)は、例えば、20/1以下、好ましくは、10/1以下であり、また、例えば、1/5以上、好ましくは、1/2以上でもあり、もっとも好ましくは、実質的に1/1である。一方、3官能型ケイ素化合物と2官能型ケイ素化合物とが併用される場合において、2官能型ケイ素化合物の縮合可能置換基(上記式(13)におけるX
1、具体的には、アルコキシ基)に対する、第2のケイ素化合物の縮合可能置換基(上記式(14)におけるX
2、具体的には、ヒドロキシル基)のモル比(X
2/X
1)は、例えば、20/1以下、好ましくは、10/1以下であり、また、例えば、1/5以上、好ましくは、1/2以上でもあり、また、もっとも好ましくは、実質的に1/1である。
【0402】
縮合触媒としては、第1のケイ素化合物および第2のケイ素化合物の縮合を促進する触媒であれば特に限定されない。縮合触媒としては、例えば、酸、塩基、金属系触媒などが挙げられる。
【0403】
酸としては、例えば、塩酸、酢酸、ギ酸、硫酸などの無機酸(ブレーンステッド酸)などが挙げられる。また、酸は、ルイス酸を含み、そのようなルイス酸として、例えば、ペンタフルオロフェニルホウ素、スカンジウムトリフラート、ビスマストリフラート、スカンジウムトリフリルイミド、オキソバナジウムトリフラート、スカンジウムトリフリルメチド、トリメチルシリルトリフリルイミドなどの有機ルイス酸が挙げられる。
【0404】
塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムなどが挙げられる。好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの有機塩基が挙げられる。
【0405】
金属系触媒としては、例えば、アルミニウム系触媒、チタン系触媒、亜鉛系触媒、スズ系触媒などが挙げられる。好ましくは、スズ系触媒が挙げられる。
【0406】
スズ系触媒としては、例えば、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズ(II)、ジオクタン酸スズ(II)(ジカプリル酸スズ(II))、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ネオデカノエート)スズ、スズオレエートなどの、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐状のカルボン酸を含有するジ(またはビス)(カルボン酸)スズ(II)などのカルボン酸スズ塩、例えば、ジブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジメチルスズジバーサテート、ジブチルスズジバーサテート、ジブチルスズジアセテート(ジブチルジアセトキシスズ)、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルビス(2−エチルヘキシルマレエート)スズ、ジオクチルジラウリルスズ、ジメチルジネオデカノエートスズ、ジブチルスズジオレエート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジオクチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)塩、テトラメチル−1,3−ジアセトキシジスタノキサン、ビス(トリエチルスズ)オキサイド、テトラメチル−1,3−ジフェノキシジスタノキサン、ビス(トリプロピルスズ)オキサイド、ビス(トリブチルスズ)オキサイド、ビス(トリブチルスズ)オキサイド、ビス(トリフェニルスズ)オキサイド、ポリ(マレイン酸ジブチルスズ)、ジフェニルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルビス(トリエトキシ)スズなどの有機スズ化合物などが挙げられる。
【0407】
スズ系触媒として、好ましくは、カルボン酸スズ塩、より好ましくは、炭素数1以上20以下の直鎖状または分岐状のカルボン酸を有するジ(カルボン酸)スズ(II)、さらに好ましくは、炭素数4以上14以下の直鎖状または分岐状のカルボン酸を有するジ(カルボン酸)スズ(II)、とりわけ好ましくは、炭素数6以上10以下の分岐状のカルボン酸を有するジ(カルボン酸)スズ(II)が挙げられる。
【0408】
縮合触媒は、単独使用または併用することができる。
【0409】
縮合触媒は、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0410】
また、縮合触媒は、例えば、溶媒に溶解して縮合触媒溶液として調製することができる。縮合触媒溶液における縮合触媒の濃度は、例えば、1質量%以上99質量%以下に調整される。
【0411】
縮合触媒の配合割合は、第2のケイ素化合物100モルに対して、例えば、0.001モル以上、好ましくは、0.01モル以上であり、また、例えば、50モル以下、好ましくは、5モル以下でもある。
【0412】
次いで、この方法では、第1のケイ素化合物、第2のケイ素化合物および縮合触媒を配合した後、例えば、温度0℃以上、好ましくは、10℃以上であり、また、例えば、80℃以下、好ましくは、75℃以下で、例えば、1分間以上、好ましくは、2時間以上、また、例えば、24時間以下、好ましくは、10時間以下、攪拌混合する。
【0413】
そして、上記した混合によって、第1および第2のケイ素化合物が、縮合触媒の存在下で、部分的に縮合する。
【0414】
具体的には、第1のケイ素化合物の縮合可能置換基(上記式(11)におけるX
1)と、第2のケイ素化合物の縮合可能置換基(上記式(14)におけるX
2)とが、部分的に縮合する。
【0415】
詳しくは、第1のケイ素化合物の縮合可能置換基がアルコキシ基であり、第2のケイ素化合物の縮合可能置換基がヒドロキシル基である場合には、下記式(16)で示すように、それらが部分的に縮合する。
式(16):
【0417】
なお、第2のケイ素化合物の一部は、縮合せず、残存しており、次のさらなる縮合(完全硬化工程)によって、第1のポリシロキサンの縮合可能置換基と縮合する。
【0418】
このようにして得られる第1のポリシロキサンは、液状(オイル状)であって、Aステージである。
【0419】
第2のポリシロキサンとしては、例えば、下記式(17)で示され、少なくとも1つの縮合可能置換基を側鎖に含有する側鎖型ポリシロキサンが挙げられる。
式(17):
【0421】
(式中、F〜Iは構成単位であり、FおよびIが末端単位、GおよびHが繰返単位を示す。R
8は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基、R
9またはSiR
9は、付加可能置換基を示す。dは、0または1、eは0以上の整数、fは1以上の整数を示す。但し、全てのR
8またはR
9は、同一でも相異してもよい。)
式(17)において、R
8で示される1価の炭化水素基としては、上記式(10)のR
6で例示した1価の炭化水素基が挙げられ、好ましくは、メチル、フェニルが挙げられる。
【0422】
式(17)において、R
9またはSiR
9で示される付加可能置換基としては、例えば、上記した付加可能置換基、好ましくは、1対の付加可能置換基を構成する置換基のうちの他方であり、より好ましくは、ヒドロシリル基、エチレン性不飽和基含有基(具体的には、ビニル基)が挙げられ、より好ましくは、ヒドロシリル基が挙げられる。
【0423】
dが1である場合には、側鎖型ポリシロキサンは直鎖状ポリシロキサンであり、dが0である場合には、側鎖型ポリシロキサンは環状ポリシロキサンである。
【0425】
eは、構成単位Gの繰返単位数を示し、反応性の観点から、好ましくは、0以上の整数、より好ましくは、1以上の整数であり、また、好ましくは、100000以下の整数、より好ましくは、10000以下の整数ある。
【0426】
fは、構成単位Hの繰返単位数を示し、反応性の観点から、好ましくは、1以上の整数、より好ましくは、2以上の整数であり、また、好ましくは、100000以下の整数、より好ましくは、10000以下の整数でもある。
【0427】
側鎖型ポリシロキサンの数平均分子量は、例えば、安定性や取り扱い性の観点から、100以上1000000以下、好ましくは、100以上100000以下である。
【0428】
側鎖型ポリシロキサンとして、具体的には、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン−CO−メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン−CO−ビニルメチルポリシロキサン、エチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン−CO−メチルフェニルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン−CO−メチルフェニルポリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0429】
これら側鎖型ポリシロキサンは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0430】
好ましくは、R
8がメチル基、R
9が水素原子(つまり、SiR
9がヒドロシリル基)またはビニル基、dが1、eが1以上の整数、hが2以上の整数である直鎖状の側鎖型ポリシロキサンが挙げられる。
【0431】
また、第2のポリシロキサンとして、例えば、下記式(18)で示され、縮合可能置換基を分子の両末端に含有する両末端型ポリシロキサン(付加可能置換基両末端含有ポリシロキサン)が挙げられる。
式(18):
【0433】
(式中、R
8は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基、R
9またはSiR
9は、付加可能置換基、gは1以上の整数を示す。但し、全てのR
8またはR
9は、同一でも相異してもよい。)
R
8で示される1価の炭化水素基としては、上記式(10)のR
6で示される1価の炭化水素基が挙げられ、好ましくは、メチル、フェニルが挙げられる。
【0434】
R
9またはSiR
9で示される付加可能置換基としては、例えば、上記した付加可能置換基、好ましくは、1対の付加可能置換基を構成する置換基のうちの他方であり、より好ましくは、ヒドロシリル基、エチレン性不飽和基含有基(具体的には、ビニル基)が挙げられ、より好ましくは、ヒドロシリル基が挙げられる。
【0435】
gは、反応性の観点から、好ましくは、1以上の整数、より好ましくは、2以上の整数であり、また、好ましくは、100000以下の整数、より好ましくは、10000以下の整数でもある。
【0436】
両末端型ポリシロキサンの数平均分子量は、安定性や取り扱い性の観点から、例えば、100以上1000000以下、好ましくは、100以上100000以下である。
【0437】
両末端型ポリシロキサンとしては、例えば、両末端ヒドロシリル型ポリジメチルシロキサン、両末端ビニル型ポリジメチルシロキサン、両末端ヒドロシリル型ポリメチルフェニルシロキサン、両末端ビニル型ポリメチルフェニルシロキサン、両末端ヒドロシリル型ポリジフェニルシロキサン、両末端ビニル基含有ポリジメチルシロキサン、両末端ビニル基含有ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。
【0438】
これら両末端型ポリシロキサンは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0439】
好ましくは、R
8が全てメチル基、R
9が水素原子(つまり、SiR
9がヒドロシリル基)またはビニル基、gが2以上10000以下の整数である、両末端ヒドロシリル型ポリジメチルシロキサン(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)または両末端ビニル基含有ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0440】
上記した側鎖型ポリシロキサンおよび両末端型ポリシロキサンのうち、第2のポリシロキサンとして、好ましくは、両末端型ポリシロキサンが挙げられる。
【0441】
第2のポリシロキサンは、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0442】
そして、第1のシリコーン樹脂組成物を調製するには、第1のポリシロキサンと第2のポリシロキサンとを、配合する。好ましくは、第1のポリシロキサンと第2のポリシロキサンとを、付加触媒とともに、配合する。
【0443】
また、第2のポリシロキサンの付加可能置換基(他方側、好ましくは、ヒドロシリル基(式(18)のSiR
9))に対する、第1のポリシロキサンの付加可能置換基(一方側、好ましくは、ビニル基(式(11)のR
7))のモル比(R
7/SiR
9)は、例えば、20/1以下、好ましくは、10/1以下、より好ましくは、5/1以下であり、また、例えば、1/20以上、好ましくは、1/10以上、より好ましくは、1/5以上でもある。
【0444】
また、第2のポリシロキサンの配合割合は、第1のポリシロキサンおよび第2のポリシロキサンの総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、50質量部以上、さらに好ましくは、80質量部以上であり、また、例えば、99.99質量部以下、好ましくは、99.9質量部以下、より好ましくは、99.5質量部以下でもある。
【0445】
付加触媒としては、第1のポリシロキサンの付加可能置換基と、第1のポリシロキサンの付加可能置換基との付加、具体的には、上記式(6)〜式(9)の付加を促進する触媒であれば特に限定されない。好ましくは、活性エネルギー線による縮合を促進する観点から、活性エネルギー線に対して活性を有する光触媒が挙げられる。
【0446】
光触媒として、例えば、ヒドロシリル化触媒などが挙げられる。
【0447】
ヒドロシリル化触媒は、ヒドロシランシリル基とアルケニル基とのヒドロシリル化付加を促進する。そのようなヒドロシリル化触媒として、例えば、遷移元素系触媒が挙げられ、具体的には、白金系触媒、クロム系触媒(ヘキサカルボニルクロム(Cr(CO)
6)など)、鉄系触媒(カルボニルトリフェニルホスフィン鉄(Fe(CO)PPh
3など)、トリカルボニルビスフェニルホスフィン鉄(trans−Fe(CO)
3(PPh
3)
2)、ポリマー基質−(アリール−ジフェニルホスフィン)5−n[カルボニル鉄](polymer substrate−(Ar−PPh
2)
5−n[Fe(CO)
n])、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)
5)など)、コバルト系触媒(トリカルボニルトリエチルシリルコバルト(Et
3SiCo(CO)
3)、テトラカルボニルトリフェニルシリルコバルト(Ph
3SiCo(CO)
4)、オクタカルボニルコバルト(Co
2(CO)
8)など)、モリブデン系触媒(ヘキサカルボニルモリブデン(Mo(CO)
6)など)、パラジウム系触媒、ロジウム触媒系などが挙げられる。
【0448】
ヒドロシリル化触媒として、好ましくは、白金系触媒が挙げられる。白金系触媒としては、例えば、白金黒、塩化白金、塩化白金酸などの無機系白金、例えば、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体、白金−シクロペンタジエニル錯体、白金−アセチルアセトナート錯体などの白金錯体などが挙げられる。
【0449】
好ましくは、反応性の観点から、白金錯体が挙げられ、より好ましくは、白金−シクロペンタジエニル錯体、白金−アセチルアセトナート錯体が挙げられる。
【0450】
白金−シクロペンタジエニル錯体としては、例えば、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)、トリメチル(シクロペンタジエニル)白金(IV)錯体などが挙げられる。
【0451】
白金−アセチルアセトナート錯体としては、例えば、2,4−ペンタンジオナト白金(II)(白金(II)アセチルアセトナート)などが挙げられる。
【0452】
なお、遷移元素系触媒は、例えば、下記文献などに記載されたものを挙げることもできる。
【0453】
文献:ISSN 1070−3632, Russian Journal of General chemistry,2011,Vol.81,No.7, pp. 1480−1492 「Hydrosilyation on Photoactivated Catalysts」D.A.de Vekki
付加触媒は、単独使用または併用することができる。
【0454】
付加触媒は、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0455】
付加触媒は、例えば、溶媒に溶解して付加触媒溶液として調製することができる。付加触媒溶液における付加触媒の濃度は、例えば、1質量%以上99質量%以下であり、また、付加触媒が遷移元素系触媒である場合には、例えば、遷移元素の濃度が、0.1質量%以上50質量%以下に調整される。
【0456】
付加触媒の配合割合は、第1のシリコーン樹脂組成物全体100質量部に対して、例えば、1.0×10
−11質量部以上、好ましくは、1.0×10
−9質量部以上であり、また、例えば、0.5質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下でもある。
【0457】
また、付加触媒は、必要に応じて、適宜の量の、光活性剤、光酸発生剤、光塩基発生剤などの光助剤と併用することもできる。
【0458】
そして、第1のポリシロキサンと第2のポリシロキサンとを含む各成分を上記した配合割合で配合し、攪拌混合することにより、第1のシリコーン樹脂組成物を得ることができる。
【0459】
なお、第1のシリコーン樹脂組成物は、第1のポリシロキサンの調製において残存する第2のケイ素化合物の一部を含んでいる。
【0460】
そして、上記のようにして得られた第1のシリコーン樹脂組成物は、例えば、液状、好ましくは、オイル状(粘調な液状)であり、25℃、1気圧の条件下における粘度は、例えば、100mPa・s以下、好ましくは、1000mPa・s以下であり、また、例えば、100000mPa・s、好ましくは、50000mPa・s以下でもある。なお、粘度は、1気圧の条件下でレオメータを用いて測定した。なお、粘度は、第1のシリコーン樹脂組成物を25℃に温度調節し、E型コーンを用いて、回転数99s
−1で測定した。
【0461】
具体的に、第1のシリコーン樹脂組成物を得るには、まず、シラノール基両末端ポリジメチルシロキサンと、ビニルトリメトキシシランと、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズ(II)(縮合触媒)とを配合して、オイル状の第1のポリシロキサンを調製し、その後、両末端ヒドロシリル型ポリジメチルシロキサン(第2のポリシロキサン)と、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)溶液または白金(II)アセチルアセトナート(付加触媒)とを加える。
【0462】
あるいは、まず、シラノール基両末端ポリジメチルシロキサンと、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリメトキシシランと、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズ(II)(縮合触媒)とを配合して、オイル状の第1のポリシロキサンを調製し、その後、両末端ヒドロシリル型ポリジメチルシロキサン(第2のポリシロキサン)と、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)錯体溶液または白金(II)アセチルアセトナート(付加触媒)とを加える。
[第2のシリコーン樹脂組成物]
第2のシリコーン樹脂組成物は、例えば、加熱によって縮合可能な少なくとも1対の縮合可能置換基と、活性エネルギー線によって付加可能な少なくとも1対の付加可能置換基とを含有する第3のポリシロキサンを含有する。
【0463】
1対の縮合可能置換基は、第1のシリコーン樹脂組成物の第1のポリシロキサンにおける1対の縮合可能置換基と同様である。1対の縮合可能置換基は、第3のポリシロキサンの主鎖の末端、途中および/または側鎖に置換している。
【0464】
1対の付加可能置換基は、第1のシリコーン樹脂組成物の第1および第2のポリシロキサンの付加可能置換基と同様である。1対の付加可能置換基は、第3のポリシロキサンの主鎖の末端、途中および/または側鎖に置換している。
【0465】
第3のポリシロキサンは、例えば、下記式(21)で示される。
式(21):
【0467】
(式中、R
6は、飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基から選択される1価の炭化水素基、縮合可能置換基および/または付加可能置換基を示す。J〜Nは構成単位であり、JおよびNは末端単位、K〜Mは繰返単位を示す。Pは、K〜Mのうちいずれかの構成単位を示す。k+l+mは1以上の整数を示す。但し、R
6は、少なくとも1対の縮合可能置換基と、少なくとも1対の付加可能置換基とを含む。)
R
6で示される1価の炭化水素基、縮合可能置換基および付加可能置換基は、上記した上記式(10)で例示される1価の炭化水素基、縮合可能置換基および付加可能置換基が挙げられる。
【0468】
k+l+mは、安定性や取り扱い性の観点から、好ましくは、1以上100000以下の整数、より好ましくは、1以上10000以下の整数である。
【0469】
kは、例えば、0以上の整数、好ましくは、1以上の整数であり、また、例えば、100000以下の整数、好ましくは、10000以下の整数である。
【0470】
lは、例えば、0以上100000以下の整数、好ましくは、0以上10000以下の整数である。
【0471】
mは、例えば、0以上100000以下の整数、好ましくは、0以上10000以下の整数である。
【0472】
第3のポリシロキサンの数平均分子量は、例えば、100以上、好ましくは、200以上であり、また、例えば、1000000以下、好ましくは、100000以下でもある。
【0473】
第3のポリシロキサンは、市販品を用いることができ、また、公知の方法に従って合成したものを用いることもできる。
【0474】
第3のポリシロキサンの含有割合は、第2のシリコーン樹脂組成物に対して、例えば、60質量%以上、好ましくは、90質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下でもある。
【0475】
第2のシリコーン樹脂組成物からシリコーン半硬化体を得るには、第1のシリコーン樹脂組成物と同様の条件で、第3のポリシロキサンを、縮合触媒とともに加熱し、その後、付加触媒を加える。
[蛍光体]
蛍光体としては、第1実施形態で挙げた蛍光体と同様の蛍光体が挙げられる。蛍光体の配合割合は、活性エネルギー硬化性樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、例えば、80質量部以下、好ましくは、50質量部以下でもある。
[充填剤]
さらに、蛍光樹脂組成物は、充填剤を含有することもできる。充填剤としては、第1実施形態で挙げた充填剤と同様の充填剤が挙げられる。充填剤の配合割合は、活性エネルギー硬化性樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、また、例えば、70質量部以下、好ましくは、50質量部以下でもある。
[蛍光体シート5の作製]
蛍光体シート5を作製するには、Aステージの第1のシリコーン樹脂組成物または第2のシリコーン樹脂組成物および蛍光体ならびに必要により配合される充填剤を配合して、それらの混合物を、離型シート13の表面に塗布し、その後、加熱して、蛍光樹脂組成物をシート状に調製する。なお、蛍光体および必要により配合される充填剤を、Aステージの第1のシリコーン樹脂組成物または第2のシリコーン樹脂組成物の調製において、各成分の配合時、反応前、反応中、反応後のいずれにおいても加えることができる。
【0476】
離型シート13としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム(PETなど)などのポリマーフィルム、例えば、セラミクスシート、例えば、金属箔などが挙げられる。好ましくは、ポリマーフィルムが挙げられる。また、離型シートの表面には、フッ素処理などの剥離処理を施すこともできる。
【0477】
混合物の塗布では、例えば、キャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどが用いられる。
【0478】
加熱条件として、加熱温度は、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上であり、また、例えば、180℃以下、好ましくは、150℃以下でもあり、加熱時間は、例えば、0.1分間以上であり、また、例えば、180分間以下、好ましくは、60分間以下でもある。
【0479】
加熱条件が上記範囲内にあれば、低分子成分(例えば、水を含む溶媒など)を確実に除去して、縮合を完結させて、第1または第2のシリコーン樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)することができる。
【0480】
そして、混合物が第1のシリコーン樹脂組成物から調製される場合には、上記した加熱によって、第1のポリシロキサンが含有する少なくとも1対の縮合可能置換が縮合する。これによって、第1のケイ素化合物の縮合可能置換基がアルコキシ基であり、第2のケイ素化合物の縮合可能置換基がヒドロキシル基である場合には、下記式(19)に示すように、第1のポリシロキサンの分子量が増大して、それによって、第1のシリコーン樹脂組成物がゲル化する。つまり、第1のシリコーン樹脂組成物が半硬化(Bステージ化)して、シリコーン半硬化体が得られる。
式(19):
【0482】
あるいは、混合物が第2のシリコーン樹脂組成物から調製される場合には、上記した加熱によって、第3のポリシロキサンが含有する少なくとも1対の縮合可能置換が縮合する。これによって、第3のポリシロキサンの分子量が増大して、それによって、第2のシリコーン樹脂組成物がゲル化する。つまり、第2のシリコーン樹脂組成物が半硬化(Bステージ化)して、シリコーン半硬化体が得られる。
【0483】
これにより、シリコーン半硬化体および蛍光体(ならびに必要により配合される充填剤)を含有する蛍光樹脂組成物から形成される蛍光体シート5が得られる。
【0484】
蛍光体シート5の23℃における圧縮弾性率は、例えば、0.01MPa以上、好ましく、0.04MPa以上であり、また、例えば、1.0MPa以下でもある。
【0485】
蛍光体シート5の圧縮弾性率が上記上限以下であれば、十分な柔軟性を担保することができる。一方、蛍光体シート5の圧縮弾性率が上記下限以上であれば、LED4に過剰な応力がかかることを防止しながら、LED4を埋設することができる。
【0486】
また、蛍光体シート5の波長400nm以下における光透過率は、例えば、50%以上、好ましくは、60%以上である。
【0487】
また、蛍光体シート5の光透過率が上記下限以上であれば、光透過性を確実に担保することができ、輝度に優れるLED装置15(後述)を得ることができる。
【0488】
蛍光体シート5の圧着前の厚みT3は、例えば、10μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、5000μm以下、好ましくは、2000μm以下でもある。
【0489】
これによって、
図17(a)の上側図に示すように、離型シート13に積層される蛍光体シート5を作製(用意)する。
【0490】
その後、作製した蛍光体シート5を、複数のLED4の表側部分を被覆し、かつ、互いに隣接するLED4間に連通する空間30が形成されるように、配置する。
【0491】
その後、必要により、
図17(b)の仮想線で示すように、離型シート13を蛍光体シート5から引き剥がす。
<LED封止工程>
蛍光体シート配置工程後、
図17(c)の矢印で示すように、LED封止工程では、活性エネルギー線を蛍光体シート5に照射する。
【0492】
活性エネルギー線は、例えば、紫外線、電子線などを含み、例えば、波長180nm以上領域、好ましくは、200nm以上、また、例えば、460nm以下、好ましくは、400nm以下の領域にスペクトル分布を持つ活性エネルギー線が挙げられる。
【0493】
活性エネルギー線の照射には、例えば、ケミカルランプ、エキシマレーザ、ブラックライト、水銀アーク、炭素アーク、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどの照射装置が用いられる。なお、上記波長領域より長波長側あるいは短波長側の活性エネルギー線を発生させることができる照射装置を用いることもできる。
【0494】
照射量は、例えば、0.001J/cm
2以上、また、例えば、100J/cm
2以下、好ましくは、10J/cm
2以下でもある。
【0495】
照射時間は、例えば、10分間以下、好ましくは、1分間以下であり、また、5秒間以上でもある。
【0496】
また、活性エネルギー線を、例えば、表側および/または裏側から蛍光体シート5に向けて照射し、好ましくは、
図17(c)の矢印で示すように、表側から蛍光体シート5に向けて照射する。
【0497】
なお、活性エネルギー線の蛍光体シート5への照射において、支持シート32が活性エネルギー線照射剥離シートである場合には、活性エネルギー線の蛍光体シート5への照射によって支持シート32の粘着力が低下しないように、活性エネルギー線照射剥離シートや照射条件が選択される。
【0498】
上記した活性エネルギー線の照射とともに、加熱することもできる。
【0499】
加熱の時期は、活性エネルギー線の照射とともに、あるいは、活性エネルギー線の照射の前または後に実施でもよく、好ましくは、活性エネルギー線の照射後に実施する。
【0500】
加熱条件では、温度が、例えば、50℃以上、好ましくは、100℃以上であり、また、例えば、250℃以下、また、200℃以下でもあり、また、加熱時間は、例えば、0.1分間以上、また、例えば、1440分間以下、好ましくは、180分間以下でもある。
【0501】
上記した活性エネルギー線の照射(および必要により実施される加熱)によって、蛍光体シート5が完全硬化してCステージとなる。
【0502】
具体的には、シリコーン半硬化体が第1のシリコーン樹脂組成物から調製される場合には、活性エネルギー線の照射(および必要により実施される加熱)によって、下記式(20)に示すように、第1のポリシロキサンの付加可能置換基が、ビニル基であり、第2のポリシロキサンの付加可能置換基がヒドロシリル基である場合には、それらが付加(ヒドロシリル付加)する。
式(20):
【0504】
あるいは、シリコーン半硬化体が第2のシリコーン樹脂組成物から調製される場合には、活性エネルギー線の照射(および必要により実施される加熱)によって、第3のポリシロキサンの付加可能置換基が、ビニル基およびヒドロシリル基である場合には、それらが付加(ヒドロシリル付加)する。
【0505】
これによって、シリコーン半硬化体が完全硬化する。つまり、蛍光体シート5が完全硬化(Cステージ化)する。
【0506】
なお、完全硬化における、縮合の進行度は、例えば、固体NMR測定によって、縮合可能置換基に由来するピーク強度で確認できる。
【0507】
Cステージ化(完全硬化)した蛍光体シート5は、可撓性を有しており、具体的には、23℃における圧縮弾性率が、例えば、0.5MPa以上、好ましくは、1.0MPa以上であり、また、例えば、100MPa以下、好ましくは、10MPa以下でもある。
【0508】
蛍光体シート5の圧縮弾性率が上記上限以下であれば、可撓性を確実に担保することができ、例えば、次の切断工程(
図17(d)の破線参照)において、比較的安価なカッティング装置を用いて、蛍光体シート5を切断することもできる。蛍光体シート5の圧縮弾性率が上記下限以上であれば、切断後の形状を保持することができる。
【0509】
これにより、LED4の表側部分の側面26および表面23が、蛍光体シート5によって密着状に被覆される。つまり、Cステージの蛍光体シート5によってLED4の表側部分が封止される。
<切断工程>
LED封止工程後、
図17(d)の破線で示すように、切断工程では、LED4の周囲の可撓性の蛍光体シート5を、表裏方向に沿って切断する。例えば、蛍光体シート5を、例えば、各LED4を囲む平面視略矩形状に切断する。
【0510】
これによって、基板9に実装するための裏面22、および、裏面22の表側(表裏方向他方側、つまり、反対側)に配置される表面23を有するLED4と、LED4の表面23および側面26の表側部分を被覆して封止する蛍光体シート5から形成される蛍光体層7とを備える蛍光体層被覆LED10を、LED4が支持シート32に密着する状態で得る。
<LED剥離工程>
切断工程後、
図17(e)に示すように、支持シート32を面方向に延伸させながら、蛍光体層被覆LED10を支持シート32から剥離する。
【0511】
具体的には、まず、
図17(d)の矢印で示すように、支持シート32を面方向外側に延伸させる。これによって、
図17(e)に示すように、蛍光体層被覆LED10は、支持シート32に密着した状態で、切り目8に引張応力が集中するので、切り目8が広がり、そして、各LED4が互いに離間して、隙間19が形成される。隙間19は、各LED4を隔てるように、平面視略格子形状に形成される。
【0512】
その後、蛍光体層被覆LED10を支持シート32の表面から剥離する。
【0513】
具体的には、
図17(e’)に示すように、例えば、針などの押圧部材14と、コレットなどの吸引部材16とを備えるピックアップ装置17によって、蛍光体層被覆LED10を支持シート32から剥離する。ピックアップ装置17では、押圧部材14が、剥離したい蛍光体層被覆LED10に対応する支持シート32を裏側から押圧する(押し上げる)ことによって、剥離したい蛍光体層被覆LED10を表側に押し上げて、押し上げられた蛍光体層被覆LED10をコレットなどの吸引部材16によって吸引しながら支持シート32から剥離する。
【0514】
そして、支持シート32を面方向に延伸すれば、剥離したい蛍光体層被覆LED10と、それに隣接する蛍光体層被覆LED10との間に隙間19が形成されるので、吸引部材16を剥離したい蛍光体層被覆LED10に近接させたときに、それに隣接する蛍光体層被覆LED10に吸引部材16が接触して、かかる蛍光体層被覆LED10が損傷することを防止することもできる。
【0515】
また、上記した支持シート32の延伸に代えて、または、支持シート32の延伸に加えて、上記した支持シート32が、熱剥離シートでもある場合には、支持シート32を、例えば、50℃以上、好ましくは、70℃以上、また、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下に加熱することもできる。
【0516】
また、上記した支持シート32の延伸に代えて、または、支持シート32の延伸に加えて、上記した支持シート32が、活性エネルギー線照射剥離シートでもある場合には、支持シート32に活性エネルギー線を照射することもできる。
【0517】
これらの処理によって、支持シート32の粘着力が低下して、蛍光体層被覆LED10を支持シート32からより一層容易に剥離することができる。
【0518】
これによって、
図17(e)に示すように、支持シート32から剥離された蛍光体層被覆LED10を得る。
<実装工程>
LED剥離工程後、蛍光体層被覆LED10を発光波長や発光効率に応じて選別した後、
図17(f)に示すように、選別された蛍光体層被覆LED10を基板9に実装する。これによって、LED装置15を得る。
【0519】
その後、必要により、
図17(f)の仮想線で示すように、LED装置15に、蛍光体層被覆LED10を封止する封止保護層20を設ける。これによって、LED装置15の信頼性を向上させることができる。
【0520】
そして、第7実施形態の蛍光体層被覆LED10の製造方法では、活性エネルギー線の照射によって硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂および蛍光体を含有する蛍光樹脂組成物から形成される蛍光体シート5を、LED4の表側部分を被覆し、かつ、蛍光体シート5の裏面24が上記位置にある露出面27となるように、LED4の表側部分に配置し、その後、活性エネルギー線を蛍光体シート5に照射して、蛍光体シート5によってLED4の表側部分を封止する。そのため、支持シート32の損傷を抑制しながら、LED4の表側部分を封止して、LED4の周囲に蛍光体を均一に分散させることができる。
【0521】
つまり、蛍光体シート5を、加熱せずとも、または、加熱を低減しつつ、蛍光体シート5を活性エネルギー線の照射によって、かかる蛍光体シート5を硬化させることにより、LED4の表側部分を封止できるので、蛍光体シート5を支持する支持シート32が耐熱性を有する必要がなく、すなわち、耐熱性が低い支持シート32を利用することができる。
【0522】
しかも、蛍光体シート5を完全硬化させる場合に、活性エネルギー線を照射する照射時間は、加熱のみによって蛍光体シート5を完全硬化させる場合に比べて、短時間に設定することができる。
【0523】
また、蛍光体シート5を、LED4に対応して切断することにより、LED4と、LED4の表面23および側面26の表側部分を被覆する蛍光体シート5から形成される蛍光体層7とを備える蛍光体層被覆LED10を得、その後、蛍光体層被覆LED10を支持シート32から剥離する。そのため、損傷が抑制された支持シート32に支持される蛍光体シート5を、優れた寸法安定性で切断して、寸法安定性に優れる蛍光体層被覆LED10を得ることができる。
【0524】
また、切断工程において、蛍光体シート5を支持シート32によって支持しながら切断し、その後、LED剥離工程において、支持シート32を加熱すれば、すでに切断工程において蛍光体シート5を支持してその役割を終えた支持シート32を、加熱して、それから蛍光体層被覆LED10を剥離するので、効率的に、寸法安定性に優れる蛍光体層被覆LED10を得ることができる。
【0525】
従って、この蛍光体層被覆LED10は、寸法安定性に優れる。
【0526】
また、LED装置15は、寸法安定性に優れる蛍光体層被覆LED10を備えるので、信頼性に優れ、そのため、発光効率が向上されている。
<変形例>
上記した第7実施形態では、支持シート32を1層から形成しているが、例えば、図示しないが、面方向に延伸不能な硬質の支持板と、支持板の表側に積層される粘着層との2層から形成することもできる。
【0527】
支持板を形成する硬質材料として、例えば、酸化ケイ素(石英など)などの酸化物、例えば、ステンレスなどの金属などが挙げられる。支持板の厚みは、例えば、0.1mm以上、好ましくは、0.3mm以上であり、また、例えば、5mm以下、好ましくは、2mm以下でもある。
【0528】
粘着層は、支持板の表面全面に形成されている。粘着層を形成する粘着材料としては、例えば、アクリル系感圧接着剤などの感圧接着剤が挙げられる。粘着層の厚みは、例えば、0.1mm以上、好ましくは、0.2mm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下でもある。
【0529】
好ましくは、
図17(a)の上側図に示すように、面方向に延伸可能な支持シート32を1層から形成する。
【0530】
これによれば、
図17(e)に示すLED剥離工程では、支持シート32を面方向に延伸させながら、蛍光体層被覆LED10を支持シート32から剥離できるので、
図17(e’)に示すように、上記したピックアップ装置17を利用して、蛍光体層被覆LED10を支持シート32から容易かつ確実に剥離することができる。
【0531】
なお、支持シート32には、硬質の支持板が設けられていないので、
図17(e’)が参照されるように、ピックアップ装置17の押圧部材14によって、裏側から支持シート32およびそれに対応する蛍光体層被覆LED10を押し上げることができる。
【0532】
しかも、硬質の支持板を粘着層に積層する必要がないので、プロセスの簡便化を図ることができる。
【0533】
<第8実施形態>
図18において、第1〜第7実施形態と同様の部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0534】
第8実施形態の蛍光体層被覆LED10の製造方法は、支持シート1を用意する支持シート用意工程(
図18(a)参照)、LED4を、支持板2に粘着層3を介して貼着するLED貼着工程(半導体素子配置工程の一例、
図18(b)参照)、蛍光体シート5によってLED4の表側部分を封止するLED封止工程(
図18(c)および
図18(d)参照)、蛍光体シート5を、LED4に対応して切断する切断工程(
図18(d)の破線参照)、および、蛍光体層被覆LED10を粘着層3から剥離するLED剥離工程(
図18(e)参照)を備える。また、第8実施形態のLED装置15の製造方法は、実装工程(
図18(f)参照)を備える。
【0535】
以下、第8実施形態の各工程について詳述する。
<支持シート用意工程>
図18(a)に示すように、支持シート1は、支持板2と、支持板2の表面に積層される粘着層3とを備える。
【0536】
支持板2としては、第1実施形態の支持板2と同様の支持板2が挙げられる。
【0537】
粘着層3は、活性エネルギー線の照射によって粘着力が低下する材料から、活性エネルギー線照射剥離層(シート)として形成されており、具体的には、例えば、アクリル系感圧接着剤層などの感圧接着剤層が挙げられる。また、粘着層3は、例えば、特開2001−308116号公報に記載の活性エネルギー線照射剥離層(シート)から形成することもできる。
【0538】
粘着層3の厚みは、例えば、0.01mm以上、好ましくは、0.02mm以上であり、また、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下でもある。
【0539】
支持シート1を用意するには、例えば、支持板2と粘着層3とを貼り合わせる。支持シート1の厚みは、例えば、0.2mm以上、好ましくは、0.5mm以上であり、また、6mm以下、好ましくは、2.5mm以下でもある。
<LED貼着工程>
LED貼着工程は、支持シート用意工程の後に、実施する。
【0540】
LED貼着工程では、
図18(b)の下側図に示すように、例えば、複数のLED4を、粘着層3の表面に整列状に貼着する。具体的には、複数のLED4が平面視において前後左右に互いに等間隔を隔てるように、LED4を粘着層3の表面に貼着する。また、LED4を、裏面22に設けられる図示しないバンプ(
図20における符号22参照。)が粘着層3の表面に対向するように、裏面22を粘着層3の表面に貼着する。これによって、LED4は、その整列状態が維持されるように、粘着層3の表面に支持(感圧接着)される。
<LED封止工程>
LED封止工程は、LED貼着工程の後に、実施する。
【0541】
図18(b)の上側図において、蛍光体シート5は、第1実施形態の蛍光樹脂組成物と同様の蛍光樹脂組成物から、面方向に延びるシート状に形成されている。
【0542】
そして、
図18(c)に示すように、蛍光体シート5によってLED4の表側部分を封止するには、まず、
図18(b)の上側図に示すように、蛍光体シート5を用意する。
【0543】
次いで、
図18(c)に示すように、蛍光体シート5を、LED4の表側部分を被覆し、かつ、蛍光体シート5の裏面24が上記位置にある露出面27となるように、LED4の表側部分に配置する(封止シート配置工程の一例としての蛍光体シート配置工程)。
【0544】
その後、
図18(c)の仮想線で示すように、離型シート13を蛍光体シート5の表面25から剥離する。
【0545】
その後、
図18(d)に示すように、蛍光体シート5を硬化させる。硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合には、蛍光体シート5を熱硬化させる。具体的には、蛍光体シート5を、例えば、80℃以上、好ましくは、100℃以上、また、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下に、加熱する。
【0546】
熱硬化性樹脂が2段階硬化型シリコーン樹脂を含有し、LED4を埋設する蛍光体シート5がBステージである場合には、蛍光体シート5は、上記した加熱によって、完全硬化してCステージとなる。
【0547】
また、熱硬化性樹脂が1段階硬化型シリコーン樹脂を含有する場合には、蛍光体シート5は、上記した加熱によって、完全硬化してCステージとなる。
【0548】
あるいは、硬化性樹脂が活性エネルギー線硬化性樹脂である場合には、蛍光体シート5に活性エネルギー線を表側から照射する。なお、活性エネルギー線を表側から照射する場合には、それによって粘着層3の粘着力が低下しないように、硬化性樹脂や照射条件が選択される。
【0549】
硬化(完全硬化)した蛍光体シート5は、可撓性を有しており、また、蛍光体シート5の波長400nm以下における光透過率は、例えば、50%以上、好ましくは、60%以上である。蛍光体シート5の光透過率が上記した下限以上であれば、蛍光体層7における活性エネルギー線の透過性を担保して、活性エネルギー線が蛍光体層7を透過して粘着層3に到達することができる。同時に、輝度に優れるLED装置15(後述)を得ることができる。
【0550】
これにより、LED4の側面26の表側部分および表面23が、蛍光体シート5によって密着状に被覆される。つまり、Cステージの蛍光体シート5によってLED4の表側部分が封止される。
<切断工程>
LED封止工程後、
図18(d)の破線で示すように、切断工程では、LED4の周囲の蛍光体シート5を、表裏方向に沿って切断する。例えば、
図3の1点鎖線で示すように、蛍光体シート5を、例えば、各LED4を囲む平面視略矩形状に切断する。
【0551】
切断工程によって、基板9に実装するための裏面22、および、裏面22の表側(表裏方向他方側、つまり、反対側)に配置される表面23を有するLED4と、LED4の表面23および側面26の表側部分を被覆して封止する蛍光体シート5から形成される蛍光体層7とを備える蛍光体層被覆LED10を、LED4が支持シート1に密着する状態で得る。つまり、蛍光体シート5を、LED4に対応して個片化する。なお、蛍光体層7の物性(光透過率など)は、蛍光体シート5のそれと同一である。
<LED剥離工程>
切断工程後、
図18(e)において、LED剥離工程では、蛍光体層被覆LED10を粘着層3の表面から剥離する。
【0552】
蛍光体層被覆LED10を粘着層3の表面から剥離するには、まず、
図18(e)の下向き矢印で示すように、活性エネルギー線を表側から蛍光体シート5を介して粘着層3に照射する。
【0553】
活性エネルギー線は、例えば、紫外線、電子線などを含み、例えば、波長180nm以上領域、好ましくは、200nm以上、また、例えば、460nm以下、好ましくは、400nm以下の領域にスペクトル分布を持つ活性エネルギー線が挙げられる。
【0554】
活性エネルギー線の照射には、例えば、ケミカルランプ、エキシマレーザ、ブラックライト、水銀アーク、炭素アーク、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどの照射装置が用いられる。なお、上記波長領域より長波長側あるいは短波長側の活性エネルギー線を発生させることができる照射装置を用いることもできる。
【0555】
照射量は、例えば、0.001J/cm
2以上、好ましくは、0.01J/cm
2以上であり、また、例えば、100J/cm
2以下、好ましくは、10J/cm
2以下でもある。照射量が上記下限以上であれば、粘着層3の粘着力を確実に効率よく低下させることができる。一方、照射量が上記上限以下であれば、コスト増大を抑制して、機器の損傷を有効に防止することができる。
【0556】
照射時間は、例えば、10分間以下、好ましくは、1分間以下であり、また、例えば、5秒間以上でもある。照射時間の上限が上記した上限以下であれば、LED剥離工程にかかる時間を短縮することができる。
【0557】
そして、活性エネルギー線の全部または一部は、表側から蛍光体層7を透過して粘着層3に照射される。
【0558】
この活性エネルギー線の照射によって、粘着層3の粘着力が低下する。
【0559】
この状態で、
図18(e)の上向き矢印で示すように、蛍光体層被覆LED10を粘着層3から引き剥がす。なお、蛍光体層被覆LED10を粘着層3から引き剥がすには、必要により、図示しないが、コレットなどの吸引部材を備えるピックアップ装置を用いることができる。具体的には、吸引部材によって蛍光体層被覆LED10を吸引しながら粘着層3から引き剥がすことができる。
【0560】
蛍光体層被覆LED10の粘着層3からの引き剥がしでは、LED4の裏面22が、粘着層3の表面から剥離される。
【0561】
これによって、粘着層3から剥離された蛍光体層被覆LED10を得る。
【0562】
[実装工程]
LED剥離工程後、蛍光体層被覆LED10を発光波長や発光効率に応じて選別した後、
図18(f)に示すように、選別された蛍光体層被覆LED10を基板9に実装する。これによって、LED装置15を得る。
【0563】
これにより、基板9と、基板9に実装される蛍光体層被覆LED10とを備えるLED装置15を得る。
【0564】
その後、必要により、
図18(f)の仮想線で示すように、LED装置15に、蛍光体層被覆LED10を封止する封止保護層20を設ける。これによって、LED装置15の信頼性を向上させることができる。
【0565】
そして、第8実施形態の方法によれば、LED剥離工程では、活性エネルギー線を表側から蛍光体シート5を介して粘着層3に照射する。すると、活性エネルギー線が蛍光体シート5を透過して粘着層3に照射される。そのため、支持板2を、活性エネルギー線を透過させる基板材料から形成して、その支持板2に活性エネルギー線を透過させる必要がない。その結果、支持板2として、活性エネルギー線透過性の支持板に限らず、活性エネルギー線遮断性の支持板からも選択することができる。
【0566】
また、切断工程後に、LED剥離工程を実施する。つまり、切断工程では、硬質の支持板2を備える支持シート1により、LED4および蛍光体シート5を支持しながら、蛍光体シート5を切断することができる。そのため、寸法安定性に優れる蛍光体層被覆LED10を得ることができる。
【0567】
さらに、この方法では、LED剥離工程において、活性エネルギー線を粘着層3に照射するので、粘着層3の加熱によって粘着層3の粘着力を低減する方法に比べると、加熱に起因する支持シート1の変形を防止して、寸法安定性をより一層向上させることができる。
【0568】
従って、この蛍光体層被覆LED10は、寸法安定性に優れる。
【0569】
また、LED装置15は、寸法安定性に優れる蛍光体層被覆LED10を備えるので、信頼性に優れ、そのため、発光効率が向上されている。
<変形例>
なお、
図18(e)の実施形態のLED剥離工程では、活性エネルギー線を表側のみから粘着層3に照射しているが、第8実施形態において、活性エネルギー線を少なくとも表側から照射すればよく、例えば、支持板2が活性エネルギー線透過性材料または活性エネルギー線半透過性材料から形成される場合には、活性エネルギー線を表側および裏側の両側から粘着層3に照射することもできる。その場合には、支持シート1の裏側から照射される活性エネルギー線は、全部または一部が、支持板2を透過して粘着層3に到達する。
【0570】
このような変形例によれば、LED剥離工程において、粘着層3の粘着力を低下させるために要する時間、つまり、活性エネルギー線の照射時間をより一層短縮することができ、蛍光体層被覆LED10の製造効率を向上させることができる。
【0571】
<第9実施形態>
図19において、第1〜第8実施形態と同様の部材については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0573】
しかし、
図19が参照されるように、
図19(a)に示すように、複数のLED4を予め基板9に実装しておき、その後、
図19(b)に示すように、蛍光体シート5を、複数のLED4の表側部分を被覆し、かつ、蛍光体シート5の裏面24が上記位置にある露出面27となるように、LED4の表側部分に配置することもできる。
【0574】
第9実施形態では、
図19(a)に示すように、複数のLED4は、前後左右に互いに等間隔を隔てるように、基板9に予め実装されている。
【0575】
その後、蛍光体シート5を、蛍光体シート5の裏面24が上記位置にある露出面27となるように、基板9の表側に配置する。蛍光体シート5を配置するには、まず、蛍光体シート5を用意する。その後、
図19(b)に示すように、蛍光体シート5を複数のLED4の表側部分に対して圧着する。また、圧着は、減圧雰囲気下、あるいは、常圧雰囲気下で実施され、好ましくは、プロセスの簡略化の観点から、減圧雰囲気下で実施される。これによって、空間30が形成される。その後、蛍光体シート5が硬化性樹脂を含んでいれば、蛍光体シート5を硬化させて、複数のLED4の表側部分を封止する。
【0576】
これによって、基板9の表側において、蛍光体層被覆LED10が形成されるとともに、基板9、複数のLED4および蛍光体シート5を備えるLED装置15を得る。
【0577】
その後、
図19(b)の仮想線で示すように、必要により、封止保護層20を設けた後に、各LED4に対応して、LED装置15を個片化することもできる。また、LED装置15の製造とともに、蛍光体層被覆LED10が作製される。
【0578】
第9実施形態であれば、蛍光体層被覆LED10を発光波長や発光効率に応じて選別することなく、予めLED4を基板9に実装するので、上記した蛍光体層被覆LED10の選別の手間を省くことができる。
[LEDの表面および裏面の説明]
第1〜第9実施形態では、LED4を断面視略矩形状に形成しているが、LED4の断面視形状は特に限定されず、例えば、
図20に示すように、裏面に段差を有する形状に形成することできる。
【0579】
この場合において、LED4は、例えば、支持基板42と、支持基板42の裏面に形成される光半導体層43と、光半導体層43の裏面に形成される電極部44とを備えている。
【0580】
支持基板42は、例えば、透明硬質基材などから、平面視において、LED4の外形形状に対応するように、断面略矩形状に形成されている。
【0581】
光半導体層43は、支持基板42に支持されており、半導体材料から、表裏方向に投影した時に、支持基板42に含まれるように形成されている。光半導体層43は、例えば、緩衝層46、その裏面に形成されるN形半導体層47、その裏面に形成される発光層48、および、その裏面に形成されるP形半導体層49を備えている。緩衝層46は、支持基板42の裏面全面に形成されている。N形半導体層47は、緩衝層46の裏面全面に形成されている。発光層48は、緩衝層46の裏面において、面方向一方側(右側)端部において所定パターンに形成されている。P形半導体層49は、発光層48の裏面全面に、発光層48と同一パターンに形成されている。
【0582】
電極部44は、導電材料から形成され、光半導体層43と電気的に接続されており、アノード電極50およびカソード電極51を備えている。アノード電極50は、P形半導体層49の裏側に、透明電極52を挟むように形成されており、透明電極52を介してP形半導体層49と電気的に接続されている。透明電極52は、P形半導体層49の裏面に形成され、厚み方向に投影したときに、P形半導体層49に含まれるように、配置されている。アノード電極50は、厚み方向に投影したときに、透明電極52に含まれるパターンに形成されている。カソード電極51は、P形半導体層49および発光層48から露出するN形半導体層47の裏面に形成されている。カソード電極51は、N形半導体層47と電気的に接続されている。
【0583】
また、電極部44には、バンプ53が設けられている。
【0584】
バンプ53は、アノード電極50の裏面と、カソード電極51の裏面とにそれぞれ形成されている。各バンプ53は、それぞれ、平面視において、アノード電極50およびカソード電極51に含まれるパターンに形成されている。バンプ53は、基板9(
図2(f)参照)の端子(図示せず)と実質的に同一パターンに形成されている。さらに、すべてのバンプ53の裏面は、同一平面上に配置され、具体的には、面方向(具体的には、左右方向)に投影したときに、同一位置となるように、設けられている。
【0585】
そして、このLED4において、LED4において最も表裏方向一方側に位置する、バンプ53の裏面がLED4の裏面22であり、LED4において最も表裏方向に他方側に位置する、支持基板42の表面がLED4の表面23である。
【0586】
また、
図20の仮想線で示すように、このようなLED4を備える蛍光体層被覆LED10では、蛍光体層7の裏面24が、バンプ53の裏面22より表側(表裏方向他方側)に位置する。