(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、携帯電話又は小型情報機器等の電子機器には、電子部品の一つとして水晶振動子又は水晶発振器が搭載されている。この水晶振動子又は水晶発振器は、基準信号源やクロック信号源として用いられる。そして、水晶振動子や水晶発振器の内部には、水晶振動素子が含まれている。その水晶振動素子の一例として、音叉型屈曲水晶振動素子(以下「振動素子」と略称する。)について説明する。
【0003】
一般に、振動素子は、二本の振動腕部と、各振動腕部に設けられた溝部と、を備えている。
図17[A]に、そのうちの一本の振動腕部112aと、振動腕部112aの一方の面に形成された二本の溝部113aとについて、平面形状を示す。ここで、特許文献1に開示された従来技術の振動素子の製造方法について、
図14乃至
図17に基づき説明する。
【0004】
まず、
図14[D]に示すように、水晶Z板からなる基板101の表面及び裏面に金属膜102を形成し、金属膜102の上にフォトレジスト膜103aを形成し、振動腕部112aとなる領域104のみにフォトレジスト膜103aが残るようにフォトレジスト膜103aの一部を除去することにより、外形パターニングを行う。
【0005】
続いて、
図14[E]に示すように、
図14[D]でフォトレジスト膜103aが形成されていない部分の金属膜102を、エッチングにより除去する。したがって、金属膜102が除去された部分には、水晶Z板からなる基板101が表れることになる。
【0006】
続いて、
図14[F]に示すように、
図14[E]で残っていたフォトレジスト膜103aを全て除去する。
【0007】
続いて、
図15[G]に示すように、水晶Z板からなる基板101の全面にフォトレジスト膜103bを形成する。
【0008】
続いて、
図15[H]に示すように、フォトレジスト膜103bの一部を除去する。このとき、振動腕部112aとなる領域104以外の部分のフォトレジスト膜103bを除去するだけでなく、溝部113aとなる領域105に相当する部分のフォトレジスト膜103bも除去することにより、溝部パターニングを行う。
【0009】
続いて、
図15[I]に示すように、外形エッチングを行う。すなわち、水晶Z板からなる基板101において、振動腕部112aとなる領域104のみを残してエッチングする。
【0010】
続いて、
図16[J]に示すように、溝部113aとなる領域105に相当する部分の金属膜102を除去する。
【0011】
続いて、
図16[K]に示すように、溝部エッチングを行う。すなわち、水晶Z板からなる基板101において、溝部113aとなる領域105を一定の深さにエッチングする。
【0012】
最後に、
図16[L]に示すように、金属膜102及びフォトレジスト膜103bを全て除去することにより、表面及び裏面に二本ずつの溝部113aが形成された振動腕部112aが得られる。その後、振動腕部112aに電極を形成することにより、振動素子が完成する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については同一の符号を用いる。また、図面に描かれた形状は、当業者が理解しやすいように描かれているため、実際の寸法及び比率とは必ずしも一致していない。
【0023】
図1は、実施形態1の製造方法で得られる振動素子を示す平面図である。
図2は、
図1におけるII−II線縦断面図である。
図3は、
図1の振動素子を素子搭載部材に実装した状態を示す概略断面図である。以下、これらの図面に基づき説明する。
【0024】
本実施形態1の振動素子10は、振動部としての二本の振動腕部12a,12bと、振動腕部12a,12bのそれぞれに設けられた溝部13a,13bと、を基本的に備え、更に基部11も備えている。
【0025】
振動腕部12a,12bは、それぞれ基部11から同じ方向に延設されている。基部11及び振動腕部12a,12bは、水晶振動片15を構成する。振動素子10は、水晶振動片15の他に、パッド電極21a,21b、励振電極22a,22b、周波数調整用金属膜23a,23b、配線パターン24a,24bなども備えている。
【0026】
次に、振動素子10の構成について更に詳しく説明する。
【0027】
基部11は、平面視略四角形の平板となっている。水晶振動片15は、基部11と振動腕部12a,12bとが一体となって音叉形状をなしており、成膜技術、フォトリソグラフィ技術、化学エッチング技術により製造される。
【0028】
溝部13a,13bは、振動腕部12aの表裏面に二本ずつ及び振動腕部12bの表裏面に二本ずつ、基部11との境界部分から振動腕部12a,12bの先端に向って、振動腕部12a,12bの長さ方向と平行に所定の長さで設けられる。なお、溝部13a,13bは、本実施形態1では振動腕部12aの表裏面に二本ずつ及び振動腕部12bの表裏面に二本ずつ設けられているが、それらの本数に制限はなく、例えば振動腕部12aの表裏面に一本ずつ及び振動腕部12bの表裏面に一本ずつ設けてもよく、また、表裏のどちらか片面にのみ設けてもよい。
【0029】
振動腕部12aには、水晶を挟んで対向する平面同士が同極となるように、両側面に励振電極22aが設けられ、表裏面の溝部13aの内側及び当該二つの溝部13aの間に励振電極22bが設けられる。同様に、振動腕部12bには、水晶を挟んで対向する平面同士が同極となるように、両側面に励振電極22bが設けられ、表裏面の溝部13bの内側及び当該二つの溝部13bの間に励振電極22aが設けられる。したがって、振動腕部12aにおいては両側面に設けられた励振電極22aと溝部13a内に設けられた励振電極22bとが異極同士となり、振動腕部12bにおいては両側面に設けられた励振電極22bと溝部13b内に設けられた励振電極22aとが異極同士となる。
【0030】
基部11には、パッド電極21a,21bと、パッド電極21a,21bと励振電極22a,22bの間を電気的に接続する配線パターン24a,24bと、が設けられる。パッド電極21a、励振電極22a、周波数調整用金属膜23a及び配線パターン24aは、互いに電気的に導通している。パッド電極21b、励振電極22b、周波数調整用金属膜23b及び配線パターン24bも、互いに電気的に導通している。
【0031】
振動素子10は、パッド電極21a,21b及び導電性接着剤31を介して、素子搭載部材32側のパッド電極33に固定されると同時に電気的に接続される。
【0032】
次に、振動素子10の動作を説明する。音叉型の振動素子10を振動させる場合、パッド電極21a,21bに交番電圧を印加する。印加後のある電気的状態を瞬間的に捉えると、振動腕部12aの表裏の溝部13aに設けられた励振電極22bはプラス電位となり、振動腕部12aの両側面に設けられた励振電極22aはマイナス電位となり、プラスからマイナスに電界が生じる。このとき、振動腕部12bの表裏の溝部13bに設けられた励振電極22aはマイナス電位となり、振動腕部12bの両側面に設けられた励振電極22bはプラス電位となり、振動腕部12aに生じた極性とは反対の極性となり、プラスからマイナスに電界が生じる。この交番電圧で生じた電界によって、振動腕部12a,12bに伸縮現象が生じ、所定の共振周波数の屈曲振動モードが得られる。
【0033】
図4乃至
図8は、本実施形態1の製造方法における各工程を示す断面図である。以下、
図1乃至
図8に基づき、本実施形態1の製造方法について説明する。
【0034】
振動腕部12a,12bの構造はどちらも同じであるので、
図4乃至
図8では振動腕部12aのみの製造工程を示す。本実施形態1の製造方法は、次の工程を含む。
【0035】
圧電効果を有する基板41の上に、振動腕部12aの外形を含む振動腕部12aを拡大した領域からなる振動部拡大領域42を覆う第一のマスク43を形成する第一のマスク形成工程(
図4[A]〜
図5[F])。
【0036】
第一のマスク43の上に、溝部13aを除く振動腕部12aとなる領域44を覆う第二のマスク45を形成する第二のマスク形成工程(
図6[G]〜
図7[J])。
【0037】
第二のマスク形成工程の後に、第一のマスク43を用いて基板41をエッチングすることにより、振動部拡大領域42の外形を形成する第一の基板エッチング工程(
図7[K])。
【0038】
第一の基板エッチング工程の後に、第二のマスク45を用いて第一のマスク43をエッチングするマスクエッチング工程(
図7[L])。
【0039】
エッチングされた第一のマスク43を用いて基板41をエッチングすることにより、振動腕部12aの外形及び溝部13aを形成する第二の基板エッチング工程(
図8[M])。
【0040】
主に
図4[A]〜
図5[F]に基づき、第一のマスク形成工程について説明する。
【0041】
まず、
図4[A]に示すように、水晶Z板などの基板41を用意する。
【0042】
続いて、
図4[B]に示すように、基板41の上に互いに異なる金属からなる第一の耐食膜51及び第二の耐食膜52をこの順に積層する。本実施形態1では、第一の耐食膜51としてクロム、第二の耐食膜52として金を用いる。成膜方法は、スパッタリングや蒸着を用いる。
【0043】
続いて、
図4[C]に示すように、第二の耐食膜52の上にフォトレジスト膜53を形成する。フォトレジスト膜53は、ネガ型でもポジ型でもどちらでもよく、例えばスピンコート法によって形成される。
【0044】
続いて、
図5[D]に示すように、フォトレジスト膜53に第一のマスク43のパターンを露光及び現像する。このパターンは、振動部拡大領域42のパターンであり、外形パターンよりも一回り大きい。
【0045】
続いて、
図5[E]に示すように、現像したフォトレジスト膜53を用いて第一及び第二の耐食膜51,52をエッチングする。このとき、フォトレジスト膜53に覆われていない金からなる第二の耐食膜52を、ヨウ素及びヨウ化カリウムの混合液でエッチングする。この混合液ではクロムはエッチングされない。そして、第二の耐食膜52及びフォトレジスト膜53に覆われていないクロムからなる第一の耐食膜51を、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸の混合液でエッチングする。この混合液では金はエッチングされない。
【0046】
最後に、
図5[F]に示すように、残ったフォトレジスト膜53を剥離することにより、第一の耐食膜51からなる第一のマスク43を形成する。
【0047】
主に
図6[G]〜
図7[J]に基づき、第二のマスク形成工程について説明する。
【0048】
まず、
図6[G]に示すように、第二の耐食膜52の上にフォトレジスト膜54を形成する。フォトレジスト膜54は、ネガ型でもポジ型でもどちらでもよく、例えばスピンコート法によって形成される。
【0049】
続いて、
図6[H]に示すように、フォトレジスト膜54に第二のマスク45のパターンを露光及び現像する。このパターンは、溝部13aを除く振動腕部12aとなる領域44であり、振動部拡大領域42よりも一回り小さく、かつ、溝部13aとなる領域46が抜けている。
【0050】
続いて、
図6[I]に示すように、現像したフォトレジスト膜54を用いて第二の耐食膜52をエッチングする。このとき、金からなる第二の耐食膜52をヨウ素及びヨウ化カリウムの混合液でエッチングする。
【0051】
最後に、
図7[J]に示すように、残ったフォトレジスト膜54を剥離することにより、第二の耐食膜52からなる第二のマスク45を形成する。
【0052】
主に
図7[K]に基づき、第一の基板エッチング工程について説明する。
【0053】
第一の基板エッチング工程では、第一のマスク43に覆われていない基板41すなわち水晶の露出面を、バッファードフッ酸(HF+NH4F)を用いて完全に抜くことにより、振動部拡大領域42の外形を形成する。
【0054】
主に
図7[L]に基づき、マスクエッチング工程について説明する。
【0055】
マスクエッチング工程では、第二のマスク45に覆われていない第一のマスク43すなわちクロムの露出面を、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸の混合液でエッチングする。
【0056】
主に
図8[M]に基づき、第二の基板エッチング工程について説明する。
【0057】
第二の基板エッチング工程では、エッチングされた第一のマスク43に覆われていない基板41すなわち水晶の露出面を、バッファードフッ酸(HF+NH4F)を用いエッチングする。このとき、溝部13aとなる領域46は貫通しないように一定の深さまでエッチングし、振動腕部12aとなる領域44は外形の外側を完全に抜くようにエッチングする。振動腕部12aとなる領域44は側面からもエッチングされるので、溝部13aとなる領域46よりも実質的なエッチングレートが大きい。
【0058】
その後の工程について説明する。その後、
図8[N]に示すように、残った第一及び第二の耐食膜51,52を除去することにより、表裏面に二本ずつ溝部13aが設けられた振動腕部12aが得られる。そして、
図2に示すように、水晶振動片15に電極膜を形成することにより、振動腕部12aにも励振電極22a,22bが形成され、振動素子10が完成する。なお、
図7[J]においてフォトレジスト膜54を剥離せずに
図6[I]に示すように残しておき、
図8[M]と
図8[N]との間で電極膜を形成してフォトレジスト膜54を剥離することにより、電極をリフトオフで形成してもよい。
【0059】
次に、本実施形態1の製造方法の効果について説明する。
【0060】
本実施形態1では、振動腕部12aの外形を含む振動部拡大領域42を覆う第一のマスク43を用いて基板41をエッチングした後に、溝部13aを除く振動腕部12aとなる領域44を覆う第二のマスク45を用いて基板41を更にエッチングして振動腕部12aの外形及び溝部13aを同時に形成する。つまり、第二のマスク45の元となるフォトマスクには外形パターンと溝部パターンとが一枚に描かれているので、第二のマスク45は溝部13aを除く振動腕部12aとなる領域44を覆うことから、これらのパターン間にアライメント誤差は発生しない。しかも、振動部拡大領域42を設けたため第一のマスク43のパターンと第二のマスク45のパターンとの位置ずれの影響も無くすことができ、振動素子10の特性の向上及び歩留まりの向上を達成できる。
【0061】
一回の基板エッチング工程だけで溝部と振動腕部の外形とを同時に形成する技術(例えば特許文献2)が知られている。この技術では、エッチング時間を長くすれば溝部が貫通してしまうので、水晶の結晶異方性によって生じる振動腕部の外形のエッチング残渣を小さくすることが難しく、エッチング時間を短くすれば振動腕部の外形が貫通せずに残ってしまうので、溝部を適当な深さで止めることも難しかった。これに対し、本実施形態1では、第一の基板エッチング工程(
図7[K])において、振動腕部12aの外形を最終的な寸法よりも大きく形成し、第二の基板エッチング工程(
図8[M])において、振動腕部12aに溝部13aを形成すると同時に振動腕部12aの外形を最終的な寸法に形成している。そのため、本実施形態1によれば、第一の基板エッチング工程において振動腕部12aの外形のエッチングに十分な時間をかけられるのでエッチング残渣を小さくでき、かつ、第二の基板エッチング工程において振動腕部12aの外形のエッチングは比較的短い時間でもよいので溝部13aを所望の深さに形成できる。
【0062】
また、本実施形態1によれば、第二の耐食膜52が金属からなるので、第二の耐食膜52の密着性及び耐エッチング性に優れている。なお、第一の耐食膜51及び第二の耐食膜52(
図4[B])を互いに異なる金属にした理由は、第二の耐食膜52からなる第二のマスク45を用いて第一の耐食膜51からなる第一のマスク43をエッチングすること(
図7[L])を、可能にするためである。つまり、第一の耐食膜51の金属と第二の耐食膜52の金属とが異なれば、第一の耐食膜51の金属を溶解し第二の耐食膜52の金属を溶解しないエッチング液を選択することが可能となり、このエッチング液と第二のマスク45とを用いて第一のマスク43をエッチングすることができるからである。
【0063】
本実施形態1の製造方法の効果について、更に詳しく説明する。
【0064】
図5[D]に示す第一マスク43のパターニングの工程では、フォトマスク(図示せず)に描かれた振動部拡大領域42のパターンをフォトレジスト膜53に露光する。
図6[H]に示す第二のマスク45のパターニングの工程では、フォトマスク(図示せず)に描かれた溝部13aを除く振動腕部12aとなる領域44のパターンをフォトレジスト膜54に露光する。
図9[A]は、第一のマスク43の振動腕部12aにおける中心線431と第二のマスク45の振動腕部12aにおける中心線451とが一致した場合である。この場合は、当然のことながら所望の特性の振動素子10が得られる。
【0065】
一方、
図9[B]は、第一のマスク43の振動腕部12aにおける中心線431と第二のマスク45の振動腕部12aにおける中心線451とがずれた場合の一例である。中心線431に対して中心線451が図において右方向にアライメント誤差Sだけずれているものの、溝部113aを含めた振動腕部12aは左右対称となるので、この場合でも所望の特性の振動素子10が得られる。これは、振動部拡大領域42の上にこれよりも一回り小さい振動腕部12aとなる領域44が形成されるため、振動部拡大領域42の上で領域44がずれたとしても所望の形状の振動腕部12aが得られるからである。
【0066】
したがって、
図9[A]に示す振動部拡大領域42の大きさと振動腕部12aとなる領域44の大きさとの差Dは、第一のマスク形成工程(
図5[D])における露光時の第一のマスク43のパターンと第二のマスク形成工程(
図6[H])おける露光時の第二のマスク45のパターンとの位置ずれ(アライメント誤差S)よりも大きいことが望ましい。つまり、D≧Sであれば振動腕部12aは所望の形状を保つが、D<Sとなると(S−D)の分だけ、振動腕部12aの形状が欠けることになるので、振動素子10の特性が劣化することになる。なお、
図9ではわかりやすくするために一軸方向の位置ずれのみ示しているが、実際の位置ずれは全方向に発生するので、差Dも全方向に設けることが望ましい。もちろん、基部11にも差Dを設けてもよい。
【0067】
ただし、差Dは大きればよいというものでもない。つまり、振動部拡大領域42は、第二の基板エッチング工程(
図8[M])において溝部13aが形成される時間内に振動腕部12aとなる領域44までエッチングされる大きさであることが望ましい。第二の基板エッチング工程(
図8[M])において差Dに相当する基板41は除去されるが、差Dが大きすぎると、エッチングに時間がかかりすぎて、溝部13aが貫通してしまうからである。
【0068】
ここで一例を述べれば、振動腕部12aとなる領域44の幅(図において左右方向)が50μmであれば、振動部拡大領域42の幅は55μmであり、差Dは2.5μmである。このとき、アライメント誤差Sは少なくとも1μm程度である。
【0069】
また、本実施形態1では、ウェットエッチングを用いているが、ドライエッチングを用いることもできる。ただし、基板41が水晶からなる場合は、エッチングレートが大きいウェットエッチングが望ましい。
【0070】
図10乃至
図13は、本実施形態2の製造方法における各工程を示す断面図である。以下、
図1乃至
図3及び
図10乃至
図13に基づき、本実施形態2の製造方法について説明する。
【0071】
実施形態1における第二の耐食膜が金属からなるのに対して、本実施形態2では第二の耐食膜がフォトレジストからなる。そのため、本実施形態2では第二のマスク形成工程が実施形態1と最も異なる。
【0072】
振動腕部12a,12bの構造はどちらも同じであるので、
図10乃至
図13では振動腕部12aのみの製造工程を示す。本実施形態2の製造方法は、次の工程を含む。
【0073】
圧電効果を有する基板41の上に、振動腕部12aの外形を含む振動腕部12aを拡大した領域からなる振動部拡大領域42を覆う第一のマスク43を形成する第一のマスク形成工程(
図10[A]〜
図11[F])。
【0074】
第一のマスク43の上に、溝部13aを除く振動腕部12aとなる領域44を覆う第二のマスク45を形成する第二のマスク形成工程(
図12[G]〜
図12[H])。
【0075】
第二のマスク形成工程の後に、第一のマスク43を用いて基板41をエッチングすることにより、振動部拡大領域42の外形を形成する第一の基板エッチング工程(
図12[I])。
【0076】
第一の基板エッチング工程の後に、第二のマスク45を用いて第一のマスク43をエッチングするマスクエッチング工程(
図13[J])。
【0077】
エッチングされた第一のマスク43を用いて基板41をエッチングすることにより、振動腕部12aの外形及び溝部13aを形成する第二の基板エッチング工程(
図13[K])。
【0078】
主に
図10[A]〜
図11[F]に基づき、第一のマスク形成工程について詳しく説明する。第一のマスク形成工程では、基板41の上に金属からなる第一の耐食膜51を形成し(
図10[A][B])、第一の耐食膜51の上にフォトレジスト膜53を形成し(
図10[C])、フォトレジスト膜53に振動部拡大領域42に相当する第一のマスク43のパターンを露光及び現像し(
図11[D])、現像したフォトレジスト膜53を用いて第一の耐食膜51をエッチングし(
図11[E])、残ったフォトレジスト膜53を剥離することにより(
図11[F])、第一の耐食膜51からなる第一のマスク43を形成する。
【0079】
主に
図12[G]〜
図12[H]に基づき、第二のマスク形成工程について詳しく説明する。第二のマスク形成工程では、第一のマスク43の上にフォトレジストからなる第二の耐食膜54aを形成し(
図12[G])、第二の耐食膜54aに領域44に相当する第二のマスク45のパターンを露光及び現像することにより(
図12[H])、第二の耐食膜54aからなる第二のマスク45を形成する。
【0080】
次に、本実施形態2の製造方法の効果について説明する。
【0081】
本実施形態2によれば、第二の耐食膜54aがフォトレジストからなることにより、第二の耐食膜が金属からなる実施形態1に比べて次の効果を奏する。フォトレジストは金属に比べて、成膜及び剥離が容易でありかつ安価であるので、製造の容易化及び低価格化を達成できる。しかも、実施形態1における第二の耐食膜52を積層する工程(
図4[B])、第二の耐食膜52をエッチングする工程(
図6[I])及びフォトレジスト膜54を剥離する工程(
図7[J])が不要になることにより、製造工程を簡素化できる。ただし、第二の耐食膜の密着性及び耐エッチング性などについては、本実施形態2のフォトレジストよりも実施形態1の金属の方が優れている。
【0082】
次に、本実施形態2の変形例について説明する。
【0083】
ネガ型のフォトレジストは、露光されると現像液に対して溶解性が低下し、現像後に露光部分が残る。これに対して、ポジ型のフォトレジストは、ネガ型とは逆に、露光されると現像液に対して溶解性が増大し、現像後に露光部が除去される。第二の耐食膜がポジ型のフォトレジストからなる場合は、次のような変形例を採ることも可能である。
【0084】
第一のマスク形成工程では、基板41の上に金属からなる第一の耐食膜51を形成し(
図10[A][B])、第一の耐食膜51の上にポジ型のフォトレジストからなる第二の耐食膜(フォトレジスト膜53)を形成し(
図10[C])、第二の耐食膜(フォトレジスト膜53)に第一のマスク43のパターンを露光及び現像し(
図11[D])、現像した第二の耐食膜(フォトレジスト膜53)を用いて第一の耐食膜51をエッチングすることにより、第一の耐食膜51からなる第一のマスク43を形成する(
図11[E])。
【0085】
第二のマスク形成工程では、第二の耐食膜54a(実際は第一の耐食膜51上に残っているフォトレジスト膜53)に第二のマスク45のパターンを露光及び現像することにより、第二の耐食膜54a(実際はフォトレジスト膜53)からなる第二のマスク45を形成する(
図12[H])。
【0086】
また、第二の耐食膜54a(実際はフォトレジスト膜53)に第二のマスク45のパターンを露光する工程は、第一の耐食膜51をエッチングする工程(
図11[E])の前でもよい。つまり、第二の耐食膜54a(実際はフォトレジスト膜53)に第二のマスク45のパターンを露光した状態で、第一の耐食膜51をエッチングすることもできる。
【0087】
この変形例によれば、フォトレジスト膜53を剥離する工程(
図11[F])及びフォトレジストからなる第二の耐食膜54aを形成する工程(
図12[G])が不要になるので、更に製造工程を簡素化できる。
【0088】
なお、本実施形態2及びその変形例におけるその他の構成、作用及び効果は、実施形態1のそれらと同様である。
【0089】
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。