特許第6055276号(P6055276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6055276遮熱塗料用黒色顔料組成物、それを用いた遮熱塗料、並びに調色、塗装のためのそれの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055276
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】遮熱塗料用黒色顔料組成物、それを用いた遮熱塗料、並びに調色、塗装のためのそれの使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20161219BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161219BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20161219BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20161219BHJP
   C09B 67/20 20060101ALN20161219BHJP
   C09B 67/22 20060101ALN20161219BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D7/12
   C09D5/00 Z
   C09D17/00
   !C09B67/20 G
   !C09B67/22 Z
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-243477(P2012-243477)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-91788(P2014-91788A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年5月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】北尾 晋介
(72)【発明者】
【氏名】堀 祥子
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−149266(JP,A)
【文献】 特開平05−293434(JP,A)
【文献】 特開平04−255769(JP,A)
【文献】 特開2007−238640(JP,A)
【文献】 特開2009−090555(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/096392(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09D 5/00
C09D 7/12
C09D 17/00
C09B 67/20
C09B 67/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の顔料としてのフタロシアニンブルー顔料、第二の顔料としてのフタロシアニングリーン顔料、第三の有彩色顔料としてのベンズイミダゾロン系顔料、第四の有彩色顔料としてのジケトピロロピロール系顔料からなる顔料組成物であって、当該顔料組成物合計100重量部に対して、フタロシアニンブルー顔料の重量組成をMb、フタロシアニングリーン顔料の重量組成をMg、第三と第四の有彩色顔料の重量組成の合計をM34としたとき、
Mb+Mg+M34=100
25<Mg+2.2Mb<50
であり、及び
5<Mb<20
1<Mg<30
55<M34<85
であることを特徴とする、遮熱塗料用黒色顔料組成物。
【請求項2】
フタロシアニンブルー顔料として、C.I.Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:6から選択される少なくとも一種の顔料が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物。
【請求項3】
フタロシアニングリーン顔料として、C.I.Pigment Green 7及び/またはC.I.Pigment Green 36が使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物。
【請求項4】
第一の顔料としてのフタロシアニンブルー顔料、第二の顔料としてのフタロシアニングリーン顔料、第三の有彩色顔料としての無機黄色顔料、第四の有彩色顔料としてのジケトピロロピロール系顔料及び/またはナフトール系顔料からなる顔料組成物であって、当該顔料組成物合計100重量部に対して、フタロシアニンブルー顔料の重量組成をMb、フタロシアニングリーン顔料の重量組成をMg、第三と第四の有彩色顔料の重量組成の合計をM34としたとき、
Mb+Mg+M34=100
25<Mg+2.2Mb<50
であることを特徴とする遮熱塗料用黒色顔料組成物。
【請求項5】
<Mb<15
10<Mg<30
60<M34<88
であることを特徴とする、請求項に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物。
【請求項6】
フタロシアニンブルー顔料として、C.I.Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:6から選択される少なくとも一種の顔料が使用されることを特徴とする、請求項4または5に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物。
【請求項7】
フタロシアニングリーン顔料として、C.I.Pigment Green 7及び/またはC.I.Pigment Green 36が使用されることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一つに記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物。
【請求項8】
0.05<Mg/Mb<25
であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一つに記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一つに記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物と、バインダー及び溶剤を少なくとも含むことを特徴とする遮熱用黒色塗料。
【請求項10】
更に白色無機顔料を含むことを特徴とする、請求項に記載の遮熱用黒色塗料。
【請求項11】
白色無機顔料が酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムから選択される白色顔料であることを特徴とする、請求項10に記載の遮熱用黒色塗料。
【請求項12】
バインダーが、アクリル樹脂、アクリル−シリコン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂から選択される樹脂であることを特徴とする、請求項11のいずれか一つに記載の遮熱用黒色塗料。
【請求項13】
有彩色または無彩色の塗料の調色のための、請求項12のいずれか一つに記載の遮熱用黒色塗料の使用。
【請求項14】
建物の屋根部または外壁部の塗装のための、請求項12のいずれか一つに記載の遮熱用黒色塗料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱塗料用黒色顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
夏季、建築物の屋根、外壁や舗装道路に照射された太陽光の熱が蓄積され、昼間の冷房負荷を大きくするだけでなく、夜間この熱が放出されることで、日没後も周囲の気温が下がらない、という都市部のヒートアイランド現象が、大きな問題になっている。夜間になっても気温が下がらないため、夜間もエアコンを運転するため、そこから発生する熱風が、ヒートアイランド現象に拍車をかける結果となっている。
【0003】
このヒートアイランド現象を低減するために、建物屋根部、外壁部に熱伝導率の小さな材料を用いて断熱性を持たせた塗料を塗装することにより太陽光エネルギーを建物内部に拡散、侵入する現象を低減させる断熱塗料の開発が進められている。しかしながら一定以上の断熱効果を持たせようとすると、塗料の膜厚などを厚くせざるを得ないため、材料費や塗装費用が高くなるという問題点がある。
【0004】
ヒートアイランド現象を低減する他の原理は、建物屋根部、外壁部などに、赤外線を反射させることにより遮熱性を持たせた塗料を塗装することにより太陽光エネルギーを建物屋根部、外壁部で反射させ、内側に蓄積させない方法がある。この方法によれば、断熱塗料に比べて塗装膜厚が小さくとも大きな遮熱効果が得られるため、現在多くの企業により活発な開発が進められている。
【0005】
遮熱塗料としては、可視域から赤外波長までの光を吸収しない白色顔料を樹脂と溶剤に分散して得た白色塗料が、一般的には最も光反射効果が高くなり効果が大きい。しかしながら白色塗料を家屋外壁や倉庫屋根などに塗装すると、その高い反射率のために眩しく、近隣の住民に不快感を与え、トラブルの原因となることもある。それを低減するための着色手段として、カーボンブラックを塗料に添加する方法も考えられるが、眩しさを防止できても、カーボンブラックの赤外域の吸収のため、遮熱効果も小さくなるという問題点があった。
【0006】
カーボンブラックの代わりに、赤外線波長域の吸収の小さな有彩色顔料を用いて、遮熱塗料を形成し、防眩効果を高める方法の開発が進められている。その例として、例えば特許文献1には金属板、下地層、上塗遮熱層の構成の遮熱板において、赤外線透過率の高い有彩色顔料を上塗遮熱層に含有させる黒色遮熱塗料が記載されている。下地層にはルチル型二酸化チタンなどの白色顔料が含まれるために有彩色顔料を透過した赤外光を下地層、更には金属板により反射させることにより、遮熱機能を持たせている。
【0007】
このような黒色遮熱塗料を使用する場合、
1) 黒色塗料として使用、もしくはそれを明度調整して灰色等の無彩色塗料として塗装する方法と、
2) 上記1)の無彩色遮熱塗料を、YMCなどの有彩色塗料と混合して、有彩色塗料の明度、彩度を調整するための調色用として使用する方法
の二通りの方法がある。
【0008】
前者1)の方法で使用する場合、可視域で高い光吸収性(黒色)を持ちながら、隣接する赤外波長域では、入射する太陽光の赤外波長成分を下地で反射させるために高い光透過率が必要とされ、またカーボンブラック代替としてできる限り安価な顔料を使用することが求められている。
【0009】
前述の2)の明度調整用として使用する方法の場合には、その遮熱塗料用の顔料組成物には赤外波長での高透過率と共に、目的とする色彩に合致した色合わせが容易な光吸収特性が求められている。塗料の色調整の一般的な方法では、第一段階に先ず原色塗料を選び、必要によっては複数の原色塗料を混合した上で目的とする色相近くに色を合わせる。次いで、第二段階に彩度、明度を合わせるために白色塗料や黒色塗料を混合して目標とする色相、彩度、明度に合わせこむ方法が行われている。この塗料の色調整は、塗装工程で最も熟練が必要とされる工程の一つといわれ、その結果の良否が仕上がりの良否に大きく影響する。
【0010】
熟練を必要とする従来の調色作業に代えて、有彩色原色塗料の色彩パラメーター、無彩色塗料の色彩パラメーターをコンピューター上に登録しておき、目的とするパラメーターを入力し、登録パラメーターのコンピュータ演算により各塗料の調合割合を求めるコンピュータカラーマッチングも普及しつつあるが、それを遮熱塗料に適用しようとすると、既存の処方では遮熱性が劣るケースが発生する。黒色顔料組成物はカーボンブラックとの単純置き換えにより、既存の処方に遮熱性を付与するべきである。
【0011】
有彩色塗料と黒色塗料の混合による色相調整のための従来の一般的な処方作りには、カーボンブラック顔料を含有する黒色塗料が標準的に用いられていた。そのため遮熱塗料の場合にも、有彩色塗料の色相調整する黒色塗料としては、カーボンブラックの色相に近似した黒色遮熱塗料を用意し、有彩色塗料と混合して必要な明度、彩度などを得る方法が、調色の作業効率を上げる上で好ましい。
【0012】
しかしながらカーボンブラックを用いた黒色塗料は、前述したように赤外線波長域で大きな吸収により、太陽光の赤外線を強く吸収するために遮熱塗料としては好ましくない。そのために従来のカーボンブラック使用の黒色塗料に代えて、赤外線波長域での光吸収率が低い(赤外線波長域の光透過率が高い)黒色塗料が強く求められている。その場合、前述したようにその遮熱黒色塗料には、カーボンブラックから成る塗料にできるだけ近似した色相を有すること、換言すればカーボンブラック顔料と出来るだけ色差の小さな顔料組成物を用いることが、従来知見を基に色調整を行う上ために必要とされる。
【0013】
上記の目的に使用される黒色遮熱塗料を形成する顔料としては上記の光学特性以外に、クロムなどの有毒重金属を含まないこと、顔料分散安定性が良好であることなど多くの特性が求められているが、その中でも夏場の過酷な環境の中での高い耐候性が強く求められている。その場合、太陽光暴露前のカーボンブラック含有塗工物に色相が近似するのみならず、太陽光暴露後においてもカーボンブラック塗料に近似した特性が必要とされている。
【0014】
このようなニーズに対して、例えば特許文献2には黒色であるペリレン顔料を用いる方法が記載されているが、この方法では使用する顔料の価格が高く、塗料コストアップにつながりやすい問題点がある。また明度を調整するためにグレーなどの淡色にすると、緑が強く目立つようになる。そのため濃色で使用する場合に大きな問題とならなくとも、他の有彩色塗料と混合して、淡色化、調色しようとすると、その緑色を補正しながら色調整することが非常に難しくなるという欠点がある。
【0015】
上記の問題点を解決するための手段として、例えば特許文献3の実施例にはピグメントイエロー184、ピグメントバイオレット19、ピグメントブルー15:3の三種の顔料を用いて、三色混合法により、カーボンブラックに近似した黒色遮熱塗料を得る方法が考えられている。この方法は、明度の低い暗黒色の場合にはカーボンブラック塗料に近似した黒色に色調整することは比較的容易であるものの、その遮熱黒色塗料を希釈したり、白色塗料と混合して明度を上げにつれて、無彩色から有彩色へと色づきはじめ、結果としてカーボンブラック塗料と大きな色差を示しやすいという問題点があった。またこの方法による遮熱黒色塗料は、耐候性が不十分であり、暴露前はカーボンブラックと近似していても、太陽光暴露により色彩が大きく変化し、また遮熱性の低下が大きいという大きな問題点があった。
【0016】
以上述べた如く、高い赤外波長透過性を示しつつ、濃色から淡色域までの広い範囲でカーボンブラック塗料に近似した色相を示し、また実用的に満足できる耐候性を有し、且つ安価であるカーボンブラック代替可能な遮熱塗料用黒色顔料組成物はまだ見出されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平5−293434
【特許文献2】特開2009−202494
【特許文献3】特開2011−68737
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、赤外線透過性に優れ、濃色ばかりでなく淡色においてカーボンブラック顔料の色相と近似しているために、有彩色塗料及び白色塗料と混合した時に色相調整が容易であり、且つ耐候性に優れ、コストの面でも有利な遮熱塗料用黒色顔料組成物、及びそれを用いた遮熱塗料、更には調色、塗装のためのそれの使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者等は、こうした実状に鑑み、従来技術の欠点を解決すべく鋭意研究した結果、本発明の課題を解決するための指針として次のような指針を得た。
(1)一般的なイエロー、マゼンタ、シアン顔料の組み合わせに代えて、フタロシアニンブルー顔料とフタロシアニングリーン顔料を必須要素として組み合わせると、その耐候性が著しく改良されること。
(2)フタロシアニンブルー顔料とフタロシアニングリーン顔料の二成分の組み合わせだけでは、カーボンブラックの色相に近似させることは困難である。カーボンブラックの色相との差異(色差)を小さくするためには、更に第三成分の有彩色顔料、必要によっては第四成分の有彩色顔料を加える必要があること。
(3)またフタロシアニンブルー顔料、フタロシアニングリーン顔料に第三、第四またはそれ以上の有彩色顔料を組み合わせ、カーボンブラック顔料に近似した濃色の黒色塗料(例えばマンセル表色系におけるN−1のような黒色)を作成したものを、他の有彩色塗料と混合調色しても、目的とする色調が得られない場合が多い。その理由は、有彩色顔料による黒色濃色塗料が視覚上ではカーボンブラックの黒色に近似していても、その可視光吸収特性が一致していないと、その黒色塗料を例えば白色塗料と混合して明度を上げると視覚がスペクトルの違いを認識して、大きな色差の原因となるためである。そのため調色用途に使用する遮熱塗料の顔料組成は、調色後の明度を想定して顔料の組成を決める必要がある。
(4)上記(3)の目的を達成するためには、遮熱塗料用有彩色顔料組成物合計に対してフタロシアニンブルーとフタロシアニングリーンの合計の量を特定の組成範囲内に調整する必要があること。
【0020】
上記の指針を基に、更に淡色域においてカーボンブラック塗料との色差(△E)を1.5以下とし、耐候性の良好な顔料組成を探索した結果、黒色濃色域でもカーボンブラックとの色相の差が小さな顔料組成物と遮熱黒色塗料を得ることができ、本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち本発明は、
1.第一の顔料としてのフタロシアニンブルー顔料、第二の顔料としてのフタロシアニングリーン顔料、及びその他の有彩色顔料を少なくとも1種含有する顔料組成物であって、当該顔料組成物合計100重量部に対して、フタロシアニンブルー顔料の重量組成をMb、フタロシアニングリーン顔料の重量組成をMg、その他の有彩色顔料の合計重量組成をMnとしたとき、
Mb+Mg+Mn=100
20<Mg+2.2Mb<60
であることを特徴とする遮熱塗料用黒色顔料組成物;
2.フタロシアニンブルー顔料として、C.I.Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:1、PigmentBlue 15:2、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:6から選択される少なくとも一種の顔料が使用されることを特徴とする、上記1に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
3.フタロシアニングリーン顔料として、C.I.Pigment Green 7及び/またはC.I.Pigment Green 36が使用されることを特徴とする、上記1または2に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
4.その他の有彩色顔料としての無機有彩色顔料及び/または有機有彩色顔料を含むことを特徴とする、上記1〜3のいずれか一つに記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
5.無機有彩色顔料が、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデートオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、群青、ビスマスバナジウムイエロー、バナジウムティンイエロー、バナジウムジルコニアイエロー、フェロシアン化物(紺青)、及び燐酸塩(マンガンバイオレット)から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、上記4に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
6.有機有彩色顔料が、アゾ系顔料、レーキ系顔料、チオインジゴ顔系料、アンスラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、キノフタロン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料及びイソインドリノン系顔料から選択される少なくとも一種であることを特徴とする、上記4に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
7.第一の顔料としてのフタロシアニンブルー顔料、第二の顔料としてのフタロシアニングリーン顔料、及びその他の有彩色顔料としての第三の顔料からなることを特徴とする、上記1〜6のいずれか一つに記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
8.第三の有彩色顔料として無機顔料を含有することを特徴とする、上記7に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
9.第三の有彩色顔料としてアンスラキノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料から選択される少なくとも1種の有彩色顔料を含有することを特徴とする、上記7に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
10.第三の有彩色顔料としてアンスラキノン系顔料のC.I.Pigment Red168を含有することを特徴とする、上記7に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
11.フタロシアニンブルー顔料組成Mb、フタロシアニングリーン顔料組成Mg、第三の有彩色顔料の顔料重量組成M3が
1<Mb<10
25<Mg<45
45<M3<70
であることを特徴とする、上記10に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
12.第一の顔料としてのフタロシアニンブルー顔料、第二の顔料としてのフタロシアニングリーン顔料、その他の有彩色顔料としての第三及び第四の顔料からなることを特徴とする、上記1〜6のいずれか一つに記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
13.第三の有彩色顔料がベンズイミダゾロン系顔料、第四の有彩色顔料がジケトピロロピロール系顔料であり、第三と第四の有彩色顔料の重量組成の合計をM34としたときに、
5<Mb<20
1<Mg<30
55<M34<85
であることを特徴とする、上記12に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
14.第三の有彩色顔料として無機黄色顔料、第四の有彩色顔料としてジケトピロロピロール系顔料及び/またはナフトール系顔料を含有することを特徴とする、上記12に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
15.第三と第四の有彩色顔料の重量組成の合計をM34としたとき
2<Mb<15
10<Mg<30
60<M34<88
であることを特徴とする、上記14に記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
16.
25<Mg+2.2Mb<50
であることを特徴とする、上記1〜15のいずれか一つに記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
17.
0.05<Mg/Mb<25
であることを特徴とする、上記1〜16のいずれか一つに記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物;
18.上記1〜17のいずれか一つに記載の遮熱塗料用黒色顔料組成物と、バインダー及び溶剤を少なくとも含むことを特徴とする遮熱用黒色塗料;
19.更に白色無機顔料を含むことを特徴とする、上記18に記載の遮熱用黒色塗料;
20.白色無機顔料が酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムから選択される白色顔料であることを特徴とする、上記19に記載の遮熱用黒色塗料;
21.バインダーが、アクリル樹脂、アクリル−シリコン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂から選択される樹脂であることを特徴とする、上記18〜20のいずれか一つに記載の遮熱用黒色塗料;
22.有彩色または無彩色の塗料の調色のための、上記18〜21のいずれか一つに記載の遮熱用黒色塗料の使用;
23.建物の屋根部または外壁部の塗装のための、上記18〜21のいずれか一つに記載の遮熱用黒色塗料の使用;
に関する。
【発明の効果】
【0022】
上述したところからわかるように本発明によれば、太陽熱遮熱効果、耐候性に優れ、且つ淡色条件下でもカーボンブラックに色相が近似しているために、有彩色塗料の調色が容易で、コスト面でも有利な遮熱塗料用黒色顔料組成物を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、フタロシアニンブルー顔料の重量組成(Mb)を横軸、フタロシアニングリーン顔料の重量組成(Mg)を縦軸にした散布図である。
図2図2は、図1のうちΔE<1.5を示すMb、Mgにつき最小二乗法により近似曲線を取った図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
即ち本発明は、近赤外領域で高い光透過率と優れた耐候性を有し、カーボンブラックに近似した色相を有するものであって、フタロシアニンブルーとフタロシアニングリーンを必須顔料とし、それに少なくとも1種の有彩色顔料を混合含有した遮熱塗料用顔料組成物、及びそれを用いた遮熱塗料、調色、塗装のためのそれの使用を提供する。
【0025】
ここにおいてカーボンブラック顔料は、その原料、製造方法、粒径などにより変化するため、結果としてそれらを用いた黒色塗料もそれぞれ色調が微妙に異なる。本発明においては塗料分野で最も汎用性の高いピグメントブラック7(Degussa製商品名FW200)を基準顔料として選び、後述する実施例1で述べる方法により、日射反射率に関するJIS K5602で規定の白黒隠蔽紙に、白黒パターンが完全に隠蔽されるように塗布、乾燥したサンプルを作成したものを濃色基準サンプルとした。調色後の基準サンプルとしては、上記のピグメントブラック7とルチル型二酸化チタンを重量比で1:50となるように混合した塗料を作成し、上記の白黒隠蔽紙に塗布して淡色基準サンプルとした。これらのサンプルの色空間座標値を表1に示す。淡色基準サンプルは、マンセル表色系におけるN−5付近にあるため、淡色基準サンプルとの色差の小さな黒色遮熱塗料を用いれば、高明度に調色する場合も、低明度に調色する場合のいずれも、汎用性のカーボンブラック塗料に近似した調色が行いやすい長所を有する。
【0026】
【表1】
【0027】
本発明における淡色とはマンセル表色系における明度の高い色で、L*値が高いものであり、濃色とは相対的に明度が低く、L*値が低いものを指す。
更に、本発明における色差(△E)とは、淡色基準サンプルと測定物体の色相の違いを表現するもので、一般的にはL*a*b*色度空間図表における両者の空間距離で示されるもので、
ΔE=〔(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2で算出された値となっている。一般に△Eが1.5以下となると、両物体の色の差を人間の視覚で区別することが非常に難しくなるといわれている。
【0028】
本発明の遮熱黒色塗料は、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンを必須有彩色顔料として含有し、さらに他の色相の有彩色顔料を含む顔料組成物を用いた塗料である。これら複数の有彩色顔料を組み合わせることによりカーボンブラック近似の黒色を表現でき、且つ耐候性の良好な遮熱塗料を得ることができる。
【0029】
本発明に用いるフタロシアニンブルー顔料、フタロシアニングリーン顔料は共に金属含有フタロシアニン骨格を有する化学構造を有しており、光安定性、耐熱性、酸やアルカリなどの耐薬品性など総合的に優れた性能を示す結果、耐候性が優れている顔料として知られている。
【0030】
フタロシアニンブルー顔料が470nm近傍に最大透過率を有するのに対して、フタロシアニングリーン顔料は500nm近傍に最大透過率を有し、且つ400nm近傍に比較的大きな吸収を有する。そのため、フタロシアニンブルーとフタロシアニングリーンを混合することにより、Y、M、C三色減色法における黄色顔料としての機能を一部フタロシアニングリーンが担うことができる。
【0031】
一般的なイエロー顔料はフタロシアニングリーンやフタロシアニンブルーに比べて耐候性に劣るため、顔料組成物として暴露試験を行った際、イエロー顔料のみが退色し、耐候性試験後に黒色もしくは灰色を維持せず、青味あるいは緑味に変色する傾向にある。本発明の耐候性の高いフタロシアニン顔料を使用することにより、耐候性に劣るイエロー顔料の割合を小さくすることが可能となり、顔料組成物の耐光性を改良ことが可能になるが、黒色とするために更に第三、もしくは第四またはそれ以上の有彩色顔料の混合が必要である。
【0032】
フタロシアニンブルー顔料、フタロシアニングリーン顔料と第三の顔料を組み合わせ、混合する場合には、例えば次の考え方に沿って検討が行われる。
(1)耐候性を高める。
耐候性の高いフタロシアニンブルー顔料、フタロシアニングリーン顔料に加える第三成分の顔料として耐候性、耐熱性の高い顔料を選択する。耐熱性としては顔料の熱分解温度が高いものが好ましい。
(2)カーボンブラック顔料に色相を近似させる(淡色域での色差△Eを1.5以下とする)ことが可能な有彩色顔料の選択。
色度図上で減法混色で無彩色になるように、またカーボンブラック顔料との色差を小さくするような吸収スペクトルを有する顔料種を探索する。
(3)上記(1)、(2)のデータを基に、好ましい第三の顔料種を選択し、淡色域での色差△Eを1.5以下にできる有彩色顔料組成比を求める。
(4)上記三種の顔料だけで目標とする性能の実現が困難な場合には、上記(1)、(2)などの検討結果などを参考として、更に第四等の顔料を選択し、混合することにより、顔料組成物の可視光吸収特性をカーボンブラックに近似させる。
(5)得られた候補処方について耐光性試験を行い、耐候性の点で好ましい有彩色顔料組成組成範囲を求める。
【0033】
本発明は上記(1)〜(5)の検討経過を経てなされたもので、赤外線透過率が高く、且つ耐候性が良好で、カーボンブラックに近似した色相を得ようとすると、フタロシアニンブルー顔料とフタロシアニンブルー顔料の合計重量組成(Mb+Mg)が特定の関係にあることが必要なことを見出し、更にフタロシアニングリーン顔料とフタロシアニンブルー顔料との組成比(Mg/Mb)が特定範囲にあることが性能上、特に好ましいことを見出し、本発明に到達したものである。
【0034】
本発明に用いるフタロシアニンブルー顔料としては、C.I.Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:1、PigmentBlue 15:2、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:6などが使用される。
【0035】
本発明に用いるフタロシアニングリーン顔料としては、C.I.Pigment Green 7、C.I.Pigment Green 36などを使用することができる。
【0036】
本発明において第一の顔料としてのフタロシアニンブルー顔料、第二の顔料としてのフタロシアニングリーン顔料、及びその他の有彩色顔料を少なくとも1種含有する顔料組成物であって、当該顔料組成物100重量部に対して、フタロシアニンブルー顔料の組成(重量部)をMb、フタロシアニングリーン顔料の組成(重量部)をMg、その他の有彩色顔料の合計組成をMnとしたとき、
Mb+Mg+Mn=100
20<Mg+2.2M<60、好ましくは25<Mg+2.2M<50
の式を満たす必要がある。(M+2.2M)が20重量部以下の場合、第三や第四の有彩色顔料の割合が大きくなるため、カーボンブラックに近似した吸収スペクトルを得ることが困難となる。(M2.2Mb)が60重量部以上の場合も同様に、カーボンブラックに近似した吸収スペクトル(色相)を得ることが困難となる(フタロシアニン骨格による500nm以長の波長での着色力が大きすぎるため、第三、第四などの顔料添加によっても調整困難なため)。
【0037】
本発明では、フタロシアニンブルーとフタロシアニングリーンを必須顔料としているが、単に黒色塗料を得るためだけであれば、この条件は必須ではない。例えばフタロシアニングリーンに赤色顔料を混合すれば、その補色関係からブルー顔料を加えずとも黒色を得ることは可能である。しかしながら淡色条件下で、耐候性を向上させようとすると、これら2成分の混合だけでは困難であり、フタロシアニンブルーを加えることが特に好ましいことを本発明者らは見出した。
【0038】
その推測される理由は、緑顔料と赤顔料二成分系に太陽光が暴露されて赤顔料が退色すると、緑顔料のみが残るため、一部でも赤顔料が分解すると変色が著しく目立つ。それに対して、フタロシアニンブルーとフタロシアニングリーンを共存させると、吸収スペクトルが異なる二成分顔料によりブロードな可視吸収が起き、グリーン単独に比べ彩度が低下する結果、赤色顔料が光退色しても、色味の発生が抑制されるためと推察される。
【0039】
本発明の目的を達成するためには、フタロシアニンブルー顔料の重量組成Mbと、グリーン顔料の重量組成Mgが、下記の条件を満たすことが特に好ましい。
0.05<Mg/Mb<25
Mg/Mbが0.05以下の場合、上述したようにフタロシアニングリーン顔料の組成が小さいために、上述の可視光吸収幅が狭くなり、目視上で退色が目立ちやすい。また400から500nm近傍に吸収を持つ黄色顔料などの第三の有彩色顔料を添加する必要があるが、一般の黄色顔料はフタロシアニングリーン顔料に比べて耐候性に劣るため、Mg/Mbが0.05以下では遮熱塗料の耐候性が低下しやすい。
【0040】
Mg/Mb<25とする理由も同様であり、ブルー成分が多すぎると、可視光吸収幅が狭くなり、目視上で退色が目立ちやすいことが挙げられる。
【0041】
本発明に用いるフタロシアニンブルー顔料、フタロシアニングリーン顔料を2種混合しても、前述したようにそれぞれの顔料は450nmから550nm近傍の光吸収率が小さいため、カーボンブラック顔料に近似した色相を表現することは困難である。そのために第三の顔料、必要によっては第四等の顔料を混合する。
【0042】
本発明の第三、もしくは第四等の顔料として使用することができる顔料としては、400nmから550nmを選択的に吸収し、赤外波長領域で40%以上の透過率を有する顔料が望ましい。上記を満たす顔料であれば無機有彩色顔料、有機有彩色顔料共に使用できるが、暴露後の色相変化を考慮すると、フタロシアニンブルー及びグリーンと同等の耐候性を有する顔料が望ましい。
【0043】
無機有彩色顔料には、コバルトブルーなどの酸化物系、酸化鉄黄、ビリジアンなどの水酸化物系、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッドなどの硫化物系、黄鉛、モリブデートオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメートなどのクロム酸塩系、群青などのケイ酸塩系、ビスマスバナジウムイエロー、バナジウムティンイエロー、バナジウムジルコニアイエローなどのバナジウム系顔料の他に、フェロシアン化物(紺青)、燐酸塩(マンガンバイオレット)などが市場の供されているが、これらの中から上述の光学特性を有するものであれば特に限定されない。
【0044】
無機有彩色顔料は、有機顔料に比べ一般に耐光性、耐熱性、隠蔽性などに優れているため、焼付塗料などに適している反面、着色力が低く、クロムなどの有害な重金属を含むものも多い。また酸やアルカリに弱いとされ、そのために風雨と太陽光の強い刺激のある屋外用途に対して必ずしも適合した有彩色顔料とは言えない。その中で、バナジウム系顔料は着色力が高く、低い毒性と高い耐候性の点で本発明の有彩色顔料として特に好ましい。
【0045】
有機顔料としては例えば、アゾ系顔料、レーキ系顔料、チオインジゴ顔系料、アンスラキノン系顔料(例えばアンサンスロン顔料、ジアミノアンスラキノニル顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、アントラピリミジン顔料など)、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、キノフタロン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料及びイソインドリノン系顔料が挙げられ、それらの中から赤色系、黄色系などの色相のものから適宜選択される。
【0046】
本発明の第三の顔料として好ましいのはアンスラキノン系顔料が好ましい。
特にその中でもアンサンスロン系顔料が好ましく、その例としては例えばC.I.Pigment Red 168、Pigment Orange 77、Pigment Red 177などが挙げられ、特にその中でもC.I.Pigment Red 168が、耐候性の点で好ましい。
【0047】
第三の顔料としてアンスラキノン系顔料を使用する場合、黒色顔料組成物100重量部中のフタロシアニンブルー組成(Mb)、フタロシアニングリーン組成(Mg)、第三の顔料組成(M3)は、それぞれ次の式を満たすのが好ましい。
【0048】
1<Mb<10
25<Mg<45
45<M3<70
特に好ましい範囲は、
2<Mb<7
30<Mg<40
55<M3<65
である。
【0049】
それぞれの顔料の組成が上記関係式の数値以下の場合には所望の色相、または耐候性を得ることが難しく、また上記関係式の数値以上の場合にも同様の結果となる。
【0050】
本発明の第三として使用することができる顔料としては、色相と耐候性両方を満たす上でベンズイミダゾロン系顔料が好ましい。特にその中でもC.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 214、C.I.Pigment Orange 36が高耐候性を有するため好ましい。これらのベンズイミダゾロン系顔料を使用する場合には、カーボンブラックの色相に近づけるために赤色系顔料、例えばジケトピロロピロール系顔料を第四顔料として加えることが特に好ましい。その場合の顔料組成は以下の条件に従うことが好ましい。
【0051】
5<Mb<20
1<Mg<30
55<M34<85
特に第三の顔料としてC.I.Pigment Yellow 154、第四の顔料としてC.I.Pigment Red254を使用する場合には、就中、次の顔料組成が好ましい。
【0052】
3<Mb<15
15<Mg<30
55<M34<80
特に好ましくは、
5<Mb<13
18<Mg<27
60<M34<75
それぞれの顔料の組成が上記関係式の数値以下の場合には所望の色相、または耐候性を得ることが難しく、また上記関係式の数値以上の場合にも同様の結果となる。
【0053】
本発明の第三として使用することができる顔料としては上記の有機顔料以外に、無機顔料も使用できる。無機顔料は有機顔料に比べ一般に耐熱性が高く、そのために耐熱性が必要とされる塗料、例えば金属板への焼付塗料用に使用する場合に特に好ましい。
【0054】
本発明に用いられる無機有彩色顔料としては、例えばC.I.Pigment Yellow 184(ビスマスバナデート系顔料)、Pigment Yellow 42等が挙げられる。この中で特に好ましいのはC.I.Pigment Yellow 184であり、4BiVO・3Bi2MoOの化学式を有し、耐熱性、耐候性が高いために、鉄板などに焼付塗装して遮熱層を設ける場合に特に好ましい。
【0055】
第三の顔料としてC.I.Pigment Yellow 184等の無機黄色顔料を用いる場合には、カーボンブラックの色相に近づけるために赤色系顔料、例えばC.I.Pigment Red254等のジケトピロロピロール系顔料やC.I.Pigment Red170等のナフトール系顔料を第四顔料として加えることが特に好ましい。
【0056】
黒色顔料組成物100重量部中のフタロシアニンブルー組成(Mb)、フタロシアニングリーン組成(Mg)、無機黄色顔料(M3)とジケトピロロピロール系顔料及び/またはナフトール系顔料(M4)との合計組成(M34)の組成は
2<Mb<15
10<Mg<30
60 <M34<88
の式を満たすことが好ましい。特に好ましくは
3<Mb<10
15<Mg<25
65<M34<82
それぞれの式の下限、または上限を超えると、カーボンブラックとの色差が大きくなり、好ましくない。
【0057】
本発明の遮熱塗料には上述したように、フタロシアニンブルー顔料、フタロシアニングリーン顔料などの有彩色顔料に加え、白色顔料を加えることが出来る。濃色黒色顔料組成物を含む塗料に白色顔料を加えることにより塗装色の明度を予め調整した塗料を準備することができるため、他の有彩色塗料の調色の作業を簡略化することができる。そのような白色顔料としてはルチル型二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛などの金属酸化物が使用され、特に二酸化チタンが高屈折率で白色度が高く好ましい。
【0058】
本発明の顔料組成物は、上記指針に基づいて得ることが出来るが、例えば、次の方法によって製造することができる。具体的には、それぞれ単独に乾燥、粉砕した、上記個々の有彩色顔料を、カーボンブラックの黒色に近似する様に、上記指針に基づいて所定重量割合で均一混合することによって得ることが出来るが、最終的に得られる着色樹脂の耐色別れ性や発色性をより高めるには、2種以上の有彩色顔料の水性スラリーを混合して、撹拌した後、ろ過、洗浄を行い、乾燥させ、粉砕するのが好ましい。
【0059】
上記の製造方法において、有彩色顔料の水分散液を作成する際に、界面活性剤を併用することもできる。界面活性剤の種類としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン活性剤、カチオン系活性剤等が挙げられる。
【0060】
アニオン系の界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0061】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0062】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。上記製造方法において、界面活性剤を併用する場合の使用量は、通常、有彩色顔料100重量部に対して10重量部以下、中でも3〜10重量部の範囲が好ましい。界面活性剤の使用量が10重量部よりも多い場合、塗膜にしたときにブリスターが出易くなるといった好ましくない現象が表れる傾向にあるので好ましくない。
【0063】
本発明の顔料組成物を、公知の分散機により分散媒に分散することにより着色樹脂分散体が得られる。その分散媒としてはバインダー樹脂と溶剤を混合したものが使用される。樹脂としては特に限定されないが、例えば、アルキド樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、アクリル−シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミド樹脂、メラミン樹脂、エーテル樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、PETやPBT等のポリエステル、変性ポリフェニレンエーテル等の合成樹脂が使用される。これらの中でアクリル−シリコン樹脂、シリコン樹脂が、耐候性の点で特に好ましい。
【0064】
顔料の分散媒としての溶剤としては水、トルエンやキシレンの如き芳香族炭化水素系溶剤、ミネラルスピリットの如き脂肪族炭化水素系溶剤、メタノールやエタノールの如きアルコール系溶剤、酢酸エチルの如きエステル系溶剤、メチルエチルケトンの如きケトン系溶剤及びエチレングリコールの如きエーテル系溶剤等が挙げられる。
【0065】
本発明の顔料組成物を分散して得られた分散体中の本発明の顔料組成物の割合は、通常90重量%以下が好ましく、0.01〜50重量%の範囲が特に好ましい。なお、残部は分散媒、添加剤等となる。
【0066】
また、必要に応じて、分散湿潤剤、皮張り防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種助材や安定剤を用いてもかまわない。
【0067】
この分散媒への本発明の顔料組成物の分散条件は、分散媒及び分散機によって異なるため、分散温度や分散時間は一概には言えないが、分散温度が室温〜240℃、好ましくは室温〜150℃、分散時間が120時間以内、好ましくは5時間以内である。
【0068】
これら分散媒に本発明顔料組成物を分散する分散機としては、特に限定されるものではないが、ディスパー、ホモミキサー、ビーズミル、ボールミル、二本ロール、三本ロール、加圧ニーダー等の公知の分散機が挙げられる。
【0069】
これらの本発明顔料組成物の分散体は、必要に応じて他の添加剤等と混合され最終的な塗料に調製され使用される。塗料使用の方法としては、下層に赤外反射率の高い顔料が原料に含まれる塗工物を使用し、上層に本発明品からなる赤外透過性の高い塗料を濃色塗料として積層、もしくは他の色相の塗料と混合して淡色化した上で使用する二層系での塗装方法がある。赤外反射率の高い酸化チタン等を混合して淡色化して使用する場合は、上記のような多層構造での使用の他に、単層での使用が可能となる。
【0070】
本発明による遮熱黒色塗料は、他の色相の塗料と混合して調色して塗装する場合、その調色作業を効率化する上で好ましいが、それにとどまらず混合しないでその色調のまま基体に塗装する用途にも好適に使用できる。調色する場合には、本発明の顔料組成物を用いて作成した濃色黒色塗料と、他の色調の塗料、例えば白色塗料を目的の色調になるように所定の比率で混合し、塗装される。
【0071】
本発明の遮熱黒色塗料を用いて目的とする色調を得るための調色方法として、コンピュータを用いた調色方法も有効である。本発明の遮熱黒色塗料のCIE色空間の座標を予めコンピュータに登録しておき、他の原色塗料などの色座標データを組み合わせてコンピュータ演算を行い、目的とする色調(ターゲット)とするための各塗料の混合比率を得るためのシステムであり、熟練作業を必要とせずに的確な調色が可能となる。本発明の顔料組成物で作成された黒色塗料は、濃色と淡色両条件で従来のカーボンブラック黒色塗料と色相が近いため、複雑なコンピュータ演算による色補正なしに調色できる点で、調色システム設計が容易となる効果を有する。
【0072】
上記の方法により得られた遮熱黒色塗料は、赤、青などの他の有彩色塗料、白色塗料などと混合されて、目的とする基体上に塗装し得る。基体としてはトタンやスレート、瓦などの屋根、モルタル壁、スチール製のタンク、アスファルト道路など、反射性、非反射性を問わず各種の材質のものがそれぞれの目的に応じて使用される。また塗装する場合には、下地塗料、塗装方法などは従来の塗装で使用されているものを適宜使用することができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。例中、「部」「%」は、「重量部」「重量%」をそれぞれ表す。尚、樹脂はアルキド樹脂CYTEC社製Vialkyd AC 451n/70SNB、Vialkyd AC 451n/60X、硬化剤はメラミン樹脂INEOS社製Maprenal MF600/55BIBを使用した。
また実施例、比較例で使用した顔料とその商品名を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
下記の実施例及び比較例により得たサンプルを、以下の方法により評価を行った。
【0076】
・ 色差測定
それぞれの顔料組成物を用いて作製した白黒隠蔽紙もしくは金属への塗工物を試験板とし、DIN5033−7、ISO7724−2に準じた独自のプログラムPQCを搭載した分光光度計を使用し、測定を実施した。
2)耐候性評価
それぞれの顔料組成物を用いて作製した金属への塗工物を試験板とし、耐候性試験器(Atlas社製ウエザオメーターCi4000)を使用し、促進曝露を実施した。促進曝露試験前と後との色差測定を実施し評価した。曝露条件は、ISO4892−2に準じた方法で実施し、キセノンランプを使用した。
3)赤外反射率測定
以下の実施例、比較例の遮熱塗料サンプルを白黒隠蔽紙へ塗工したものを試験板とし、分光光度計(Lambda社製750 Spectrometer)を使用し測定を実施した。(測定部位は、白黒隠蔽紙の白地部分に塗布された塗工物の反射率と、黒地部分に塗布された塗工物の反射率を測定し評価を実施した。)
【0077】
実施例1
下記の三種の顔料を次の重量比で混合して、顔料組成物1Aを得た。
【0078】
(顔料組成物1A)
C.I.Pigment Blue 15:1 3.3重量部(=Mb)
C.I.Pigment Green 7 35.8重量部(=Mg)
C.I.Pigment Red 168 60.9重量部(=M3)
このとき、Mg+2.2Mb=43.06、Mg/Mb=10.8である。
【0079】
この顔料組成物1Aを、4.0重量部取り、分散ワニスP130.0 部と混合したものをミルベースとして、分散機(LAU社製DAS200K)で60分分散して顔料分散体1Bを得た。
【0080】
得られた分散体1Bの17重量部を、塗料中の顔料含有率が2.0%となるように希釈ワニスP283重量部加え、分散機(DAS200K)で5分混合して塗料1Cを得た。
【0081】
分散ワニスP1の組成は、Vialkyd AC 451n/70SNB 50重量%、ソルベントナフサ50重量%、アルキド樹脂分35重量%であり、希釈ワニスP2の組成は、Vialkyd AC 451n/70SNB 26.4重量%、Vialkyd AC 451n/60X 29.4重量%、Maprenal MF600/55BIB 35.8重量%、高沸点溶剤混合物6.2重量%、ソルベントナフサ2.2重量%、アルキド樹脂分55.8重量%であった。
【0082】
(白塗料作製方法)
TiOを、1.0重量部取り、分散ワニスP133.0重量部と混合したものをミルベースとして、分散機(オーウェル社製DAS200K)で60分分散して白顔料分散体1Wを得、塗料中の顔料含有率が1.0%となるように希釈ワニスP266重量部を加え、分散機(DAS200K)で5分混合して白塗料を得た。
【0083】
(遮熱塗工サンプル)
1) 淡色塗工サンプル1E
塗料1Cを2.8重量部取り、上記の方法で作製した白塗料(TiO濃度1%)23.0重量部と混合し、遮熱塗料1Dを得た。塗料1Dをバーコーター(8番)で金属板(鉄)に展色し、水平のまま、室温で20分静置した後、140℃で20分加熱して乾燥し、淡色塗工サンプル1Eを得た。
サンプル1Eのハンター白色度は、23.8であった。
2) 濃色塗工サンプル1F
上記塗料1Cを用いた以外は淡色サンプル作成と同様の方法により、ハンター白色度1.1の濃色塗工サンプル1Fを作成した。
【0084】
尚、色相、耐候性評価の基準塗工サンプルS1(淡色)、S2(濃色)は、実施例1で顔料組成物の代わりにカーボンブラック顔料(C.I.Pigment Black 7; DEGUSSA社製 FW−200)1.0重量部を用いた以外は、上記の条件と同様にして黒色塗料を調製し、次いで、遮熱塗工サンプル作成方法で、上記黒色塗料を1.0重量部取り、上記の方法で作製した白塗料(TiO濃度1%)50.0重量部を用いた以外は同様の方法で塗工し、淡色基準塗工サンプルS1を得た。更に濃色塗工サンプル作成と同様の方法で、濃色基準塗工サンプルS2を作製した。得られた遮熱塗料サンプル1E、F及び基準塗工サンプルのL*、a*、b*を測定し、その結果から遮熱サンプルと基準塗工サンプル色差を計算し、下記表3に示した。またサンプル1E、1Fの赤外線透過率は75%と、基準サンプル1S、2Sに比べて非常に高い赤外反射率を示した。
【0085】
比較例1
下記の三種の顔料を次の重量比で混合して、比較用顔料組成物1aを得た。
【0086】
(顔料組成物1
C.I.Pigment Blue 15:1 25重量部(=Mb)
C.I.Pigment Green 7 25重量部(=Mg)
C.I.Pigment Red 168 50重量部(=M3)
このとき、Mg+2.2Mb=80、 Mg/Mb=1.0である。
【0087】
この比較用顔料組成物1aを用いる以外は、実施例1と同様の方法により、比較塗料1c,dを得、これらから比較塗工サンプル1e、fを作成し、実施例1と同様の方法により評価を行い、その結果を表3に示した。
【0088】
これからMg+2.2Mb=43.06の実施例1は、暴露前の基準サンプルとの色差△E=0.8と極めて良好であり、それに対してMg+2.2Mb=80の比較例1は△E=12.2と劣るものであった。また、暴露前の赤外反射率も優れた性能を示した。3000時間後のキセノンランプ暴露による耐候性テスト後においても色差ΔEは優れた性能を示していた。また表3には濃色塗工サンプルのCIE表色系L*について、濃色基準塗工サンプルとの差(△L*)を表示してあるが、実施例1は△E、△L*共にカーボンブラック基準サンプルに近似した値を示していた。それに対して比較例1は、濃色サンプルの△L*は良好であるにもかかわらず、△Eが大きく、淡色化により標準サンプルとの色相のずれが非常に大きくなっていることがわかる。
【0089】
【表3】
【0090】
実施例2
下記の四種の有彩色顔料を次の重量比で混合して、顔料組成物2Aを得た。
C.I.Pigment Blue 15:1 7.7重量部(=Mb)
C.I.Pigment Green 7 23.1重量部(=Mg)
C.I.Pigment Yellow 154 30.8重量部(=M3)
C.I.Pigment Red 254 38.4重量部(=M4)
このとき、Mg+2.2Mb=40.04、 Mg/Mb=3.0である。
【0091】
この顔料組成物2Aを用いた以外は実施例1と同様に方法により、遮熱塗料2Cを作成した。
【0092】
また、この塗料2Cを1.3重量部取り、上記(白塗料作製方法)に従い得られた白塗料(TiO2濃度1%)17.0重量部と混合し、遮熱塗料2Dを得た。
【0093】
実施例1と同様に、淡色、濃色塗工サンプル2E、2Fの作製、基準サンプルS1、S2と比較して評価を行い、その結果を表4に示した。
【0094】
比較例2〜4
実施例2の有彩色顔料の組み合わせは同じで、その顔料組成比のみを表4に示した条件に変えた以外は、実施例1と同様の方法により比較塗料2c,d、3c,d、4c,dを調製し、これらから比較塗工サンプル2e,f、3e,f、4e,fを作成した。
【0095】
これら比較サンプル2e,f〜4e,fにつき、実施例1と同様により評価を行い、その結果を表4に示した。
【0096】
【表4】
【0097】
実施例3
下記の四種の顔料を次の重量比で混合して、顔料組成物3Aを得た。
C.I.Pigment Blue 15:1 5.0重量部(=Mb)
C.I.Pigment Green 7 20.0重量部(=Mg)
C.I.Pigment Yellow 184 50.0重量部(=M3)
C.I.Pigment Red 254 25.0重量部(=M4)
このとき、Mg+2.2Mb=31、Mg/Mb=4.0である。
【0098】
この顔料組成物3Aを用いた以外は実施例1と同様の方法により、遮熱塗料3Cを調製し、これから濃色塗工サンプル3Fを作成した。
【0099】
また、塗料3Cを2.0重量部取り、白塗料(TiO2濃度1%)17.0重量部と混合し、遮熱塗料3Dを得た。実施例1と同様にして淡色塗工サンプル3Eを作製、評価し、その結果を表5に示した。
【0100】
比較例5
実施例3の有彩色顔料の組み合わせは同じで、その顔料組成比のみを表5に示した条件に変えた以外は、実施例1と同様の方法により塗料5c,dを得、これらから比較塗工サンプル5e,fを作成した。
【0101】
これらの比較サンプル5e,fにつき、実施例1と同様に評価を行い、その結果を表5に示した。
【0102】
【表5】
【0103】
実施例4〜20
有彩色顔料の組み合わせとその顔料組成比を表6に示した条件とした以外は、実施例1と同様の方法により淡色塗工サンプル4E〜20Eを作成し、実施例1と同様に評価を行い、その結果を表6に示した。
【0104】
【表6】
【0105】
比較例6〜19
有彩色顔料の組み合わせとその顔料組成比を表7に示した条件とした以外は、実施例1と同様の方法により淡色塗工サンプル6e〜19eを作成し、実施例1と同様に評価を行い、その結果を表7に示した。
【0106】
【表7】
【0107】
上記の実施例及び比較例による評価結果をまとめて図1に示す。図1において横軸フタロシアニンブルー顔料の重量組成Mb、縦軸はフタロシアニングリーン顔料Mgの重量組成、◆印は、△E<1.5の実施例データ、×印は△E≧1.5の比較例データを示している。△E<1.5のデータについて最小二乗法により近似曲線を取るとR=約0.8でy=−2.2x+39.13の式が導出される(図2)。この式からMb、Mg、Mg+2.2Mb、ΔEの関係を次の表8に纏める。実施例のMg+2.2Mbの最小値が27.56(実施例19)、最大値が46.48(実施例16)であり、他方、比較例の最小値が62.7(比較例4、18)であり、これから、
20<Mg+2.2Mb<60、好ましくは25<Mg+2.2Mb<50
の範囲にある顔料組成領域において、色差△E<1.5と良好な性能を期待できることが分かる。
【0108】
【表8】
【0109】
上述の実施例からわかるように、本発明による熱遮塗料用黒色顔料組成物、及びそれを用いた塗料の効果は、カーボンブラックと類似の黒色の色相を有した塗板作成が可能であり、他の色彩の塗料と混合した際の調色などの色合わせが容易であり、赤外反射性が高く、さらに耐候性も優れており、いわゆる熱遮蔽に優れていたことが判った。
図1
図2