(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
巻出ロールから巻き出し供給された帯状基材を、減圧されたチャンバ内で第1メインロールと第2メインロールの外周面に沿わせた状態で搬送しつつ、第1メインロールに対向配置させた第1薄膜形成部と第2メインロールに対向配置させた第2薄膜形成部とで当該帯状基材の両面に薄膜を形成し、巻取ロールに巻き取り回収する両面薄膜形成装置であって、
第1メインロールと第2メインロールとを収容するメインチャンバと、
巻出ロールと巻取ロールとを収容するサブチャンバとを備え、
メインチャンバとサブチャンバとは互いに連通する開口部を備え、
前記開口部にはメインチャンバとサブチャンバとの連通又は遮断状態を切り替えるゲート開閉部を備え、
メインチャンバ内の圧力とサブチャンバ内の圧力とを個別に設定する減圧調整部を備え、
第1薄膜形成部で片面に薄膜が形成されて第2メインロールに向けて搬送される帯状基材が、前記開口部を通って再び前記サブチャンバを通過する配置となっている
ことを特徴とする、両面薄膜形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の両面薄膜形成装置では、巻出ロールと巻取ロールはメインロールが収容された減圧チャンバとは独立した別個のサブチャンバ(いわゆる、ロードロックチャンバ)内に収容されており、離れた場所に配置されていた。そのため、それぞれのサブチャンバに真空ポンプや切替弁を設ける必要があり、装置のコストアップ要因となっていた。
【0007】
また、巻出ロールや巻取ロールを交換する際に、クレーンやリフターなどの付帯設備や補助機器を用いて作業が行われるが、巻出ロールと巻取ロールが離れた場所にあると、これらの付帯設備や補助機器を複数配置したり、移動通路を確保したり、設置場所(いわゆるフットプリント)を広くする必要があり、装置及びメンテナンスエリアを省スペースにすることが困難であった。
【0008】
そこで本発明は、装置のコストダウンと省スペース化が図れる両面薄膜形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
巻出ロールから巻き出し供給された帯状基材を、減圧されたチャンバ内で第1メインロールと第2メインロールの外周面に沿わせた状態で搬送しつつ、第1メインロールに対向配置させた第1薄膜形成部と第2メインロールに対向配置させた第2薄膜形成部とで当該帯状基材の両面に薄膜を形成し、巻取ロールに巻き取り回収する両面薄膜形成装置であって、
第1メインロールと第2メインロールとを収容するメインチャンバと、
巻出ロールと巻取ロールとを収容するサブチャンバとを備え、
メインチャンバとサブチャンバとは互いに連通する開口部を備え、
前記開口部にはメインチャンバとサブチャンバとの連通又は遮断状態を切り替えるゲート
開閉部を備え、
メインチャンバ内の圧力とサブチャンバ内の圧力とを個別に設定する減圧調整部を備え、
第1薄膜形成部で片面に薄膜が形成されて第2メインロールに向けて搬送される帯状基材が、前記開口部を通って再び前記サブチャンバを通過する配置となっている
ことを特徴とする、両面薄膜形成装置である。
【0011】
請求項
2に記載の発明は、
第1薄膜形成部で片面に薄膜が形成されて第2メインロールに向けて搬送される帯状基
材と当接しつつ当該基材の少なくとも厚み方向を含む方向に揺動する揺動ロールと、
前記帯状基材に加わる張力を測定する張力測定部と、
前記帯状基材に加わる張力に応じて前記揺動ロールの位置を調節する揺動ロール制御部と
を備え、
前記揺動ロールは第1メインロールと第2メインロールの間に備えられている
ことを特徴とする、請求項
1に記載の両面薄膜形成装置である。
【0012】
請求項
3に記載の発明は、
前記揺動ロールは前記サブチャンバ内に備えられており、
前記揺動ロール制御部は、
薄膜形成終了時には前記帯状基材を引き出す方向に前記揺動ロールを移動させ、
巻出ロール又は巻取ロールの交換時には前記帯状基材を弛ませる方向に前記揺動ロールを
移動させる機能を備えた
ことを特徴とする、請求項
2に記載の両面薄膜形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
両面薄膜形成装置において、巻出ロールと巻取ロールとを1つのサブチャンバに収容するため、コストダウンと省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明を具現化する形態の一例を示す断面図である。
本発明にかかる両面薄膜形成装置1は、メインチャンバ10と、薄膜形成部2と、メインロール3と、巻出ロール4と、巻取ロール5と、サブチャンバ6と、減圧調節部8とを備えている。メインチャンバ10は、薄膜形成部2とメインロール3とを収容し、減圧調節部8と接続されている。
【0016】
薄膜形成部2は、薄膜形成対象物となる帯状基材(つまり、長尺フィルムシート。以下、シートSという)の表面に薄膜を形成するものである。薄膜形成部2は、例えばプラズマCVDによる薄膜形成を行う形態を例示でき、下述のような装置構成にすることで、シートSの両面に薄膜形成を行うことができる。
【0017】
薄膜形成部2は、第1薄膜形成部2Aと第2薄膜形成部2Bとを備え、メインロール3は、第1メインロール31と第2メインロール36とを備えている。
第1薄膜形成部2Aは、第1メインロール31と対向する位置に配置されており、シートSの第1メインロール31の外周面31fと接する面と反対側の面に、薄膜形成をするものである。
第2薄膜形成部2Bは第2メインロール36と対向する位置に配置されており、シートSの第2メインロール36の外周面36fと接する面と反対側の面に、薄膜形成をするものである。
【0018】
より具体的には、薄膜形成部2Aは、3組みの成膜チャンバ20(20a,20b,20c)、原料ガス導入部21(21a,21b,21c)、高周波発生部22(22a,22b,22c)を備え、薄膜形成部2Bは、3組みの成膜チャンバ25(25a,25b,25c)、原料ガス導入部26(26a,26b,26c)、高周波発生部27(27a,27b,27c)を備えている。そして、メインチャンバ10内を減圧状態にしておき、高周波発生部22,27に高周波の電気エネルギー印可し、成膜チャンバ20,25内に、原料ガス導入部21,26から原料ガスを導入する。そうすることで、シートSの表面に、所望の薄膜を形成することができる。なお、薄膜形成部2は、上述のプラズマCVD方式に限定されず、真空蒸着,スパッタなどの他の薄膜形成方式を用いても良い。
【0019】
第1メインロール31は、シートSを矢印31vの方向に搬送させるものである。より具体的には、第1メインロール31は、円筒状のロールで、回転軸32に取り付けられた駆動モータ33により、矢印31vの方向或いは、その逆方向に回転する構造をしている。シートSは、第1メインロール31の外周面31fに沿わせて配置されている。
【0020】
一方、第2メインロール36は、シートSを矢印36vの方向に搬送させるものである。より具体的には、第2メインロール36は、円筒状のロールで、回転軸37に取り付けられた駆動モータ38により、矢印36vの方向或いは、その逆方向に回転する構造をしている。シートSは、第2メインロール36の外周面36fに沿わせて配置されている。
【0021】
このとき、第1メインロール31の回転軸32と第2メインロール36の回転軸37とは、互いに略平行な状態に配置されており、シートSは、第1メインロール31の外周面31fと接した面と反対側(つまり、第1薄膜形成部2Aで薄膜形成された側)の面が、第2メインロール36の外周面36fと接するように架け渡されている。
さらに、シートSに付与された張力によりシートSの裏面が第2メインロール36の外周面36fに押しつけられる。そのため、第2メインロール36の外周面36fとシートSの裏面とには摩擦が生じる。
したがって、第1メインロール31を矢印31vの方向に回転させ、第2メインロール36を矢印36vの方向に回転させるとことにより、シートSを矢印Svの方向に搬送させることができる。
【0022】
巻出ロール4は、シートSを第1メインロール31へ供給するものである。
巻出ロール4は、巻出軸41と、モータ42とを備えている。
巻出軸41は、長尺のシートSをロール状に巻き付けておくための円筒軸である。
モータ42は、第1メインロール31の回転に同期させて巻出軸41を矢印43の方向に回転させるものである。或いは、巻出軸41とモータ42との間にパウダークラッチ(図示せず)を備え、モータ42を矢印43と逆方向に回転させつつ、パウダークラッチの伝達トルクを調節することにより、シートSに所定の張力を付与しつつ、巻出軸41を矢印43の方向に回転可能な状態にしても良い。
【0023】
巻取ロール5は、シートSを第2メインロール36から回収するものである。
巻取ロール5は、巻取軸51と、モータ52とを備えている。
巻取軸51は、長尺のシートSをロール状に巻き付けておくための円筒軸である。
モータ52は、第2メインロール36の回転に同期させて巻取軸51を矢印53の方向に回転させるものである。或いは、巻取軸51とモータ52との間にパウダークラッチ(図示せず)を備え、モータ52を矢印53の方向により速く回転させつつ、パウダークラッチの伝達トルクを調節することにより、シートSに所定の張力を付与しつつ、巻取軸51を矢印53の方向に回転可能な状態にしても良い。
【0024】
そのため、巻出ロール4は、巻出軸41に巻き付けられた長尺のシートSを、第1メインロール31の回転に応じて矢印43,Svの方向に巻き出し、供給することができる。一方、巻取ロール5は、両面に薄膜が形成された長尺のシートSを、第2メインロール36の回転に応じて矢印53,Svの方向に巻き取り、巻取軸51に巻き付けて回収することができる。
【0025】
サブチャンバ6は、巻出ロール4と巻取ロール5とを収容し、減圧調節部8と接続されている。さらに、サブチャンバ6には、メインチャンバ10と互いに連通する開口部Hを備えている。さらに、開口部Hには、ゲート開閉部7が備えられている。
【0026】
開口部Hは、巻出側開口部H1と巻取側開口部H2を備えている。
詳細は後述するが、ゲート開閉部7は、巻出側ゲート開閉部7Aと巻取側ゲート開閉部7Bを備えている。
【0027】
減圧調節部8は、メインチャンバ10とサブチャンバ6の内部の圧力を、それぞれ個別に、減圧状態又は大気開放状態に切り替えるものである。減圧調節部8は、メインチャンバ10側に、真空ポンプ81と、切替弁82、排気ポート83とを備え、サブチャンバ6側に、真空ポンプ86、切替弁87、排気ポート88とを備えている。
メインチャンバ10には、排気ポート83が接続されており、切替弁82を介して、真空ポンプ81と接続されている。切替弁82は、排気ポート83を、真空ポンプ81と連通状態とするか、大気と連通状態とするかを切り替えることができる。なお、メインチャンバ10の、第1薄膜形成部2A側と第2薄膜形成部2B側とは、内部で連通しており、同じ圧力となる。
サブチャンバ6には、排気ポート88が接続されており、切替弁87を介して、真空ポンプ86と接続されている。切替弁87は、排気ポート88を、真空ポンプ86と連通状態とするか、大気と連通状態とするかを切り替えることができる。
【0028】
本発明に係る両面薄膜形成装置1は、必要に応じて、保護フィルム巻取ロール46、保護フィルム巻出ロール56を備えた形態とすることができる。
保護フィルム巻取ロール46は、巻出ロール4にてシートSの表面に合紙として挿入して巻き付けられた保護フィルムL1を巻き取るものである。巻取軸47に保護フィルムL1を巻き付け、巻出ロール4の回転軸41と同期させながら、巻取軸47を矢印48の方向に回転させる。
一方、保護フィルム巻出ロール56は、巻取ロール5にてシートSの表面に合紙として挿入しながら保護フィルムL2を巻き付けるものである。予め巻取軸47に保護フィルムL2を巻き付けておき、巻取ロール5の回転軸51と同期させながら、巻取軸57を矢印58の方向に回転させる。
【0029】
また、本発明に係る両面薄膜形成装置1は、必要に応じてフリーロールR1,R2,R3,R4を適宜配置し、シートSをメインロール3に対して所定の巻付角で巻き付けつつ、シートSをスムーズに搬送できるように構成されている。
【0030】
なお、本発明に係る両面薄膜形成装置1は、シートSを下述のように架け渡す形態とすることがより好ましい。つまり、シートSのうち、第1メインロール31を通過して第1薄膜形成部2Aで片面に薄膜が形成された部分Stは、巻出ロール4と巻取ロール5の間を通過するように配置されており、第2メインロール36側に向けて搬送させる。さらに、シートSのうち、巻出ロール4から巻き出し供給された部分は、サブチャンバ6内から巻出側開口部H1を通過してメインチャンバ10へ搬送させる。そして、第1メインロール31を通過して第1薄膜形成部2Aで片面に薄膜が形成された部分Stは、再び巻出側開口部H1を通過してサブチャンバ6内に搬送させ、巻取側開口部H2を通過して第2メインロール36側に向けて搬送させる。そして、第2メインロール36を通過して第2薄膜形成部2Bでもう一方の片面に薄膜が形成され、シートSの両面に薄膜形成された部分が再び巻取側開口部H2を通過して、サブチャンバ6内に搬送させ、巻取ロール5に巻き付けられて回収させる。
【0031】
[ゲート開閉部]
図2は、本発明を具現化する形態のゲート開閉部の一例を示す斜視図である。
図2には、巻出側開口部H1の巻出側ゲート開閉部7Aの具体例が示されており、
図2(a)は巻出側ゲート開閉部7Aが開状態、
図2(b)は巻出側ゲート開閉部7Aが閉状態にある様子が示されている。
【0032】
巻出側ゲート開閉部7Aは、ゲート弁71と、アクチュエータ72と、リニアガイド73とを備えている。
巻出側開口部H1にはゲート弁71が備えられ、ゲート弁71はアクチュエータ72に取り付けられている。アクチュエータ72は、外部からの信号に基づいてON/OFF状態となり、このON/OFF状態と連動してゲート弁71が移動する構成となっている。
【0033】
サブチャンバ6の壁面W(つまり、メインチャンバ10との隔壁面)には、アクチュエータ72とリニアガイド73が取り付けられており、リニアガイド73を介してゲート弁71が開閉移動可能な状態で取り付けられている。そのため、アクチュエータ72に外部から送る信号を切り替えることで、巻出側開口部H1のゲート弁71が開状態と閉状態に切り替わり、メインチャンバ10とサブチャンバ6の連通又は遮断状態を切り替えることができる。
【0034】
なお、
図2(a)に示すように、巻出側ゲート開閉部7Aが開状態にあれば、巻出ロール4から巻き出されたシートSと、第1薄膜形成部2Aで片面に薄膜が形成された部分Stは、互いに及びゲート弁71と所定の距離を隔てた状態で搬送される。一方、
図2(b)に示すように、巻出側ゲート開閉部7Aが閉状態にあれば、巻出ロール4から巻き出されたシートSは、第1薄膜形成部2Aで片面に薄膜が形成された部分Stと共にゲート弁71で挟み込まれる。
【0035】
図3は、本発明を具現化する形態のゲート開閉部の一例を示す斜視図である。
図3には、巻取側開口部H2の巻取側ゲート開閉部7Bの具体例が示されており、
図3(a)は巻取側ゲート開閉部7Bが開状態、
図3(a)は巻取側ゲート開閉部7Bが閉状態にある様子が示されている。
【0036】
巻取側ゲート開閉部7Bは、ゲート弁76と、アクチュエータ77と、リニアガイド78とを備えている。
巻取側開口部H2にはゲート弁76が備えられ、ゲート弁76はアクチュエータ77に取り付けられている。アクチュエータ77は、外部からの信号に基づいてON/OFF状態となり、このON/OFF状態と連動してゲート弁76が移動する構成となっている。
【0037】
サブチャンバ6の壁面W(つまり、メインチャンバ10との隔壁面)には、アクチュエータ77とリニアガイド78が取り付けられており、リニアガイド78を介してゲート弁76が開閉移動可能な状態で取り付けられている。そのため、アクチュエータ77に外部から送る信号を切り替えることで、巻出側開口部H2のゲート弁76が開状態と閉状態に切り替わり、メインチャンバ10とサブチャンバ6の連通又は遮断状態を切り替えることができる。
【0038】
なお、
図3(a)に示すように、巻取側ゲート開閉部7Bが開状態にあれば、シートSのうち、第1薄膜形成部2Aで片面に薄膜が形成された部分Stと、第2薄膜形成部2Bでもう一方の片面に薄膜が形成された部分Srとは、互いに及びゲート弁76と所定の距離を隔てた状態で搬送される。一方、
図3(b)に示すように、巻取側ゲート開閉部7Bが閉状態にあれば、シートSのうち、第1薄膜形成部2Aで片面に薄膜が形成された部分Stと、第2薄膜形成部2Bでもう一方の片面に薄膜が形成された部分Srとは、共にゲート弁76で挟み込まれる。
【0039】
本発明にかかる両面薄膜形成装置1は、上記のような構成をしているので、ゲート開閉部7を閉状態とし、メインチャンバ10内を減圧状態に維持したまま、サブチャンバ6内のみを大気開放状態にして、巻出ロール4や巻取ロール5を交換することができる。このとき、巻出ロール4と巻取ロール5とを1つのサブチャンバ6に収容されているため、減圧調節部が1つで済み、コストダウンを図ることができる。
【0040】
また、巻出ロール4と巻取ロール5が、1つの場所に集まって配置されているため、クレーンやリフターなどの付帯設備や補助機器を1つの場所に配置することができる。そのため、移動通路や設置場所は必要最小限確保するだけで済み、装置及びメンテナンスエリアを省スペースにすることができる。
【0041】
[揺動ロールを備えた形態]
図4は、本発明を具現化する形態の別の一例を示す断面図である。
本発明にかかる両面薄膜形成装置1bは、基本的な構成を両面薄膜形成装置1と同様であるので、相違する部分について説明する。
本発明に係る両面薄膜形成装置1bは、両面薄膜形成装置1の構成に加え、揺動ロール9と、張力測定部と、揺動ロール制御部とをさらに備えている。
【0042】
揺動ロール9は、シートSのうち、第1メインロール31を通過して第1薄膜形成部2Aで片面に薄膜が形成されて第2メインロール36に向けて搬送される部分(つまり、片面のみ薄膜形成された部分St)と当接しつつ、シートSの少なくとも厚み方向を含む方向に揺動するものである。揺動ロール9は、シートSの搬送経路の途中であって、第1メインロールと第2メインロールの間に備えられており、シートSの搬送に応じて自在に回転するものである。ここで言う、シートSの少なくとも厚み方向を含む方向とは、シートSの厚み方向だけでなく、当該厚み方向を含む斜め方向を含む方向であり、シートSの搬送方向と平行でない方向を意味する。
【0043】
張力測定部は、シートSのうち片面に薄膜形成された部分Stに加わる張力を測定するものである。具体的には、張力測定部は、フリーロールR2やフリーロールR3に加わる力を検出するものや、フリーロールR2,R3の間に取り付けた張力測定器を用いることができる。
【0044】
揺動ロール制御部は、シートSに加わる張力に応じて揺動ロール9の位置を調節するものである。具体的には、上述の張力測定部で測定したシートSに加わる張力に応じて、揺動ロール9の位置を変更し、シートSに加わる張力を調整する。つまり、シートSに加わる張力が弱ければ、シートSに張力が加わる方向(つまり、紙面上方)に揺動ロール9を移動させる。一方、シートSに加わる張力が強ければ、シートSに加わる張力が弱くなるよう(つまり、紙面下方)に揺動ロール9を移動させる。そうすることにより、シートSに加わる張力を一定の範囲内に保つことができる。
【0045】
なお、揺動ロール9は、
図4に示すようにサブチャンバ6内に配置する形態としても良いし、メインチャンバ10内に備えられたフリーロールR2又はフリーロールR3の一方の位置を、シートSの少なくとも厚み方向を含む方向に移動可能な構成(不図示)としても良い。フリーロールR2又はフリーロールR3を揺動ロール9とする場合、張力測定部は、揺動ロールとしない方のフリーロールR3又はR2を用いたり、フリーロールR2,R3の間に取り付けた張力測定器を用いたりすれば良い。
【0046】
揺動ロール9は、メインチャンバ10内又はサブチャンバ6内の空きスペース(いわゆるデッドスペース)内で揺動する構成にしておく。そうすれば、メインチャンバ10やサブチャンバ6の容量を増やすことなく、省スペース化を図ることが出来る。
【0047】
[シート交換時の揺動ロール位置]
さらに、揺動ロール9をサブチャンバ6内に備え、揺動ロール制御部は、成膜終了時には前記帯状基材を引き出す方向に前記揺動ロールを移動させ、巻出ロール及び巻取ロール交換時には前記帯状基材を弛ませる方向に前記揺動ロールを移動させる機能を備えることが、より好ましい。具体的には、薄膜形成終了時に、揺動ロール制御部に対して外部から信号を送る。その信号を受信したら、揺動ロール制御部は、巻出ロール4と巻取ロール5の張力を制御しつつ、シートSを引き出す方向(つまり、シートSの搬送距離が最も長くなる位置。
図3では紙面上方)に揺動ロール9を移動させる。そして、ゲート開閉部7を閉状態に切り替え、巻出側ゲート開閉部7Aと巻取側ゲート開閉部7Bとで、シートSを挟み込んだ状態にする。そして、巻出ロール4又は巻取ロール5を交換する。このとき、揺動ロール9が巻出ロール4から遠ざかる位置にあれば、巻出ロール4を交換する。その後、シートSを弛ませる方向(シートSを引き出す方向と逆方向。
図3では紙面下方)に揺動ロール9を移動させる。このとき、揺動ロール9が巻取ロール5から遠ざかる位置にあれば、巻出ロール4を交換する。
【0048】
上述では、
図3に示したシートSの搬送方向と、巻出ロール4、巻取ロール5の配置に基づいて、揺動ロール9の位置について説明したが、巻出ロール4と巻取ロール5の配置が、
図3と上下逆になっていれば、交換順序も逆になる。
また、揺動ロール9が、シートSの両面からフリーローラなどで挟み込む形態で、紙面下方に向かって移動することで、シートSを弛ませる構成としても良い。この場合、巻出ロール4と巻取ロール5の交換は、揺動ロール9が遠ざかる位置にある巻出ロール4又は巻取ロール5から先ず交換する。その後、揺動ロール9を移動させ、揺動ロール9が遠ざかる位置となった、巻取ロール5又は巻出ロール4を交換する。
【0049】
このように、揺動ロール9がサブチャンバ6内で位置変更できる構成であれば、巻出ロール4、巻取ロール5の交換に対して、作業性を向上させて、交換作業を容易にするために、サブチャンバの大きさを大きくしたり、大きくなったサブチャンバに併せて真空ポンプの能力を上げたりする必要がなくなる。そのため、装置のコストダウンと省スペース化が図ることができる。
【0050】
つまり、
図1に示すような揺動ロールが無い形態や、揺動ロールが固定されたまま、若しくは、揺動ロールが可動式であってもシートSのたるみがほとんど無い状態の場合、巻出ロール4や巻取ロール5の交換の際に、シートの折返し部分Stが、ゲート弁71,76で挟まれて、ピンと張った状態のままになってしまう。これにより、サブチャンバ内の空間が、巻出ロール4や巻取ロール5の交換作業を行う上で、狭い状態のままであるという懸念があった。しかし、上述の発明を適用することにより、当該懸念が解消される。
【0051】
なお、本発明に係る両面薄膜形成装置において、メインチャンバ10は、
図4に示すように第1メインチャンバ10Aと第2メインチャンバ10Bとが互いに独立していても良い。この場合、減圧調整部8は、第1メインチャンバ10Aに接続された排気ポート83の途中を分岐させ、第2メインチャンバ10Bに接続された排気ポート83bと接続しておく。そうすることで、メインチャンバ10内の圧力を、サブチャンバ6とは独立させて、調整することができる。つまり、
図1,
図4に示すどちらの形態であっても、ゲート開閉部7を閉状態とし、メインチャンバ10内を減圧状態に維持したまま、サブチャンバ6内のみを大気開放状態にして、巻出ロール4や巻取ロール5を交換することができる。