特許第6055357号(P6055357)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055357
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】円錐ころ軸受用樹脂製保持器
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/46 20060101AFI20161219BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   F16C33/46
   F16C19/36
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-79000(P2013-79000)
(22)【出願日】2013年4月4日
(65)【公開番号】特開2014-202284(P2014-202284A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000211695
【氏名又は名称】中西金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(72)【発明者】
【氏名】坂本 洋
(72)【発明者】
【氏名】黄金井 誠
(72)【発明者】
【氏名】富永 大介
(72)【発明者】
【氏名】南山 竜也
(72)【発明者】
【氏名】中村 成嘉
(72)【発明者】
【氏名】山本 喜芳
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−225492(JP,A)
【文献】 特開2010−048342(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1408248(EP,A2)
【文献】 国際公開第2010/005007(WO,A1)
【文献】 特開2007−032679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/46
F16C 19/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に離間した大径リング部及び小径リング部を、転動体である円錐ころの外周面に摺接する複数の柱部により繋いだ形状を成し、前記円錐ころを収容保持するための複数のポケットが周方向等分に形成された、アキシャルドロー型により射出成形される円錐ころ軸受用樹脂製保持器であって、
前記ポケットを区画する前記柱部には、軸方向に沿って延びる金型分割面が形成され、
隣り合う前記柱部の対向面において、前記金型分割面よりも外径側には、複数の前記円錐ころの各回転軸を繋ぐ仮想円錐面よりも内径側の部分に前記円錐ころの外周面に摺接する内径側円錐面が形成されるとともに、前記仮想円錐面よりも外径側の部分に前記内径側円錐面と連続する径方向の平面が形成され、前記金型分割面よりも内径側には、前記仮想円錐面よりも外径側の部分に前記円錐ころの外周面に摺接する外径側円錐面が形成されるとともに、前記仮想円錐面よりも内径側の部分に前記外径側円錐面と連続する径方向の平面が形成されることを特徴とする円錐ころ軸受用樹脂製保持器。
【請求項2】
前記柱部の対向面には、前記金型分割面に沿う凹溝が形成されることを特徴とする請求項1記載の円錐ころ軸受用樹脂製保持器。
【請求項3】
前記金型分割面は、前記内径側円錐面と前記外径側円錐面とが前記柱部の延出方向長さにおいて互いに等しくなるように、前記柱部の径方向中央部に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の円錐ころ軸受用樹脂製保持器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円錐ころ軸受に用いられる、ガラス繊維や炭素繊維等の強化材を充填した熱可塑性樹脂を射出成形して製作される保持器に関わり、特にアキシャルドロー型により射出成形される保持器に関する。
【背景技術】
【0002】
ころ軸受は、玉軸受よりもラジアル荷重の負荷能力が大きく、転動体として円錐台状のころ(円錐ころ)が組み込まれた円錐ころ軸受は、ラジアル荷重及びアキシャル(スラスト)荷重の合成荷重を支持することができることから、自動車、鉄道車輌、建設機械、工作機械、産業用ロボット等の各種機械装置における駆動装置、歯車減速装置及び動力伝達装置等の回転支持部に広く使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
円錐ころ軸受に用いられる保持器として、鋼板をプレス成形した金属製保持器に対して軽量性及び量産性に優れること並びに金属磨耗粉等の発生が無いこと等の長所があることから、ガラス繊維や炭素繊維等の強化材を充填した熱可塑性樹脂を射出成形した樹脂製保持器が広く用いられている。また、この樹脂製保持器は、製造コストを削減するために、一対の金型が軸方向に分離する金型構造、すなわちアキシャルドロー型を用いて射出成形されることが多い(例えば、特許文献1の段落[0011]及び図11参照。)。
【0004】
このようなアキシャルドロー型により射出成形される保持器では、ポケット内の金型分割面を境にして一方は円錐ころと接触し、他方は円錐ころと接触しない形状になるので、円錐ころは内径側より挿入でき、外径側へは脱落しないが、内径側へは脱落する。
従って、保持器と円錐ころだけでは円錐ころが脱落してしまうため、組立ラインの構成によっては、円錐ころ軸受の生産性が低下する。
【0005】
また、円錐ころ軸受の生産性を向上するために、円錐ころ軸受の内外輪間への未組み込み状態で、保持器が円錐ころを抱き込んだまま保持可能なように、いわゆるケージ&ローラーが可能な形状とした円錐ころ軸受用樹脂製保持器も提案されている(例えば、特許文献2及び3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−127269号公報
【特許文献2】特許第3699249号公報
【特許文献3】特開2007−32679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の円錐ころ軸受用樹脂製保持器は、ケージ&ローラーが可能であるので、自動機による組立を容易に行うことができる等、円錐ころ軸受の組立が容易になる反面、ケージ&ローラーを実現するために、隣り合うポケット間の柱部に、円錐ころの内径側への脱落を防止するための、両端の円環状部よりも内径側に突出する内側突出部を形成している。このため、この保持器は、アキシャルドロー型により射出成形することができず、多数の金型を径方向に変位させる金型構造、すなわちラジアルドロー型により射出成形する必要があることから、金型が複雑で高価になるため保持器の製造コストが増大する。
また、特許文献3の円錐ころ軸受においても、ポケットの外周側及び内周側の開口縁部に、円錐ころの脱出を阻止する突部を設けており、アキシャルドロー型成形機により射出成形できない可能性があり、製造コストが増大する。
【0008】
そこで本発明は前述の状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケージ&ローラーが可能な形状でありながらアキシャルドロー型により射出成形することができる円錐ころ軸受用樹脂製保持器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
(1) 軸方向に離間した大径リング部及び小径リング部を、転動体である円錐ころの外周面に摺接する複数の柱部により繋いだ形状を成し、前記円錐ころを収容保持するための複数のポケットが周方向等分に形成された、アキシャルドロー型により射出成形される円錐ころ軸受用樹脂製保持器であって、
前記ポケットを区画する前記柱部には、軸方向に沿って延びる金型分割面が形成され、
隣り合う前記柱部の対向面において、前記金型分割面よりも外径側には、複数の前記円錐ころの各回転軸を繋ぐ仮想円錐面よりも内径側の部分に前記円錐ころの外周面に摺接する内径側円錐面が形成されるとともに、前記仮想円錐面よりも外径側の部分に前記内径側円錐面と連続する径方向の平面が形成され、前記金型分割面よりも内径側には、前記仮想円錐面よりも外径側の部分に前記円錐ころの外周面に摺接する外径側円錐面が形成されるとともに、前記仮想円錐面よりも内径側の部分に前記外径側円錐面と連続する径方向の平面が形成されることを特徴とする円錐ころ軸受用樹脂製保持器。
(2) 前記柱部の対向面には、前記金型分割面に沿う凹溝が形成されることを特徴とする(1)記載の円錐ころ軸受用樹脂製保持器。
(3) 前記金型分割面は、前記内径側円錐面と前記外径側円錐面とが前記柱部の延出方向長さにおいて互いに等しくなるように、前記柱部の径方向中央部に形成されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の円錐ころ軸受用樹脂製保持器。
なお、ここでいう、「径方向の平面」とは、径方向に沿って延びる平面や、対向面が互いに平行となる平面に限らず、金型を軸方向に抜くことができる範囲で径方向に向いた平面であればよい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明に係る円錐ころ軸受用樹脂製保持器によれば、隣り合う柱部の対向面に、金型分割面よりも外径側及び内径側に分けて互い違いに、円錐ころの外周面に摺接する円錐面及び径方向の平面が形成されているので、金型分割面よりも外径側の円錐面及び内径側の円錐面により円錐ころが保持されるため、円錐ころ軸受の内外輪間ヘの未組み込み状態で、円錐ころを抱き込んだまま保持できる。したがって、このようなケージ&ローラーにより、自動機による組立を容易に行うことができる等、円錐ころ軸受の組立が容易になる。
その上、特許文献2のような円錐ころの内径側ヘの脱落を防止するため内側突出部を形成する必要がなく、隣り合う柱部の対向面に、金型分割面よりも外径側及び内径側に分けて互い違いに、円錐ころの外周面に摺接する円錐面及び径方向の平面が形成されているので、金型を軸方向に抜くことができるため、アキシャルドロー型により射出成形することができる。したがって、金型が複雑で高価になることがないため、円錐ころ軸受用樹脂製保持器の製造コストが増大しない。
【0011】
また、柱部の対向面には、金型分割面に沿う凹溝が形成されることが好ましい。このような構成によれば、ポケットを区画する柱部に金型分割面に沿う凹溝が形成されているので、ポケット内に金型分割面があることによりバリが発生したとしても、凹溝内に留まる大きさのバリは円錐ころと干渉しないため、凹溝内に留まる大きさのバリを許容することができる。したがって、円錐ころ軸受の回転中に保持器からバリが脱落して円錐ころや内外輪の軌道面を傷めるリスクを大幅に低減できる。
【0012】
また、金型分割面は、内径側円錐面と外径側円錐面とが柱部の延出方向長さにおいて互いに等しくなるように、柱部の径方向中央部に形成されていることが好ましい。これにより、内径側円錐面と外径側円錐面によって円錐ころの内径側及び外径側への脱落を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る円錐ころ軸受用樹脂製保持器の斜視図である。
図2】同じく要部拡大斜視図である。
図3】同じく縦断正面端面図である。
図4】同じく要部拡大縦断正面端面図である。
図5】円錐ころ軸受用樹脂製保持器の変形例に係る要部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る円錐ころ軸受用樹脂製保持器について、添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず、特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。なお、本発明の実施の形態に係る円錐ころ軸受用樹脂製保持器を円錐ころ軸受に装着した際における軸受の軸方向を軸方向、径方向を径方向とし、また、該樹脂製保持器において、大径リングを上側、小径リングを下側にし、軸方向を鉛直にした状態で側方から見た図を正面図とする。
【0015】
図1図4に示すように、樹脂製保持器1は、軸方向に離間した大径リング部2及び小径リング部3を、転動体である円錐ころR(図4参照。)の外周面に摺接する複数の柱部4,4,・・・により繋いだ形状を成し、円錐ころR,R,・・・を収容保持するための複数のポケットP,P,・・・が周方向等分に形成される。
【0016】
樹脂製保持器1は、アキシャルドロー型により射出成形され、射出成形に用いるガラス繊維や炭素繊維等の強化材を充填した熱可塑性樹脂を使用することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリフェニレンサルファイド(PPS)が使用される。また、ガラス繊維の含有量は、25重量パーセント添加したものを使用することができる。ただし、熱可塑性樹脂の種類並びに強化繊維の種類及び充填率は上記例に限定されるものではない。
【0017】
図4に示すように、ポケットP,P,・・・を区画する柱部4,4,・・・の径方向中央部を金型分割面Aとしているため、固定側キャビティと可動側キャビティとを合わせてポケットP,P,・・・が形成される。
【0018】
図2及び図4に示すように、隣り合う柱部4,4の対向面において、金型分割面Aよりも外径側には、複数の円錐ころR,R,・・・の各回転軸(中心軸)を繋ぐ仮想円錐面Bよりも内径側の部分に円錐ころRの外周面に摺接する内径側円錐面5Aが形成されるとともに、仮想円錐面Bよりも外径側の部分に内径側円錐面5Aと連続する径方向の平面6Aが形成される。また、隣り合う柱部4,4の対向面において、金型分割面Aよりも内径側には、仮想円錐面Bよりも外径側の部分に円錐ころRの外周面に摺接する外径側円錐面5Bが形成されるとともに、仮想円錐面Bよりも内径側の部分に外径側円錐面5Bと連続する径方向の平面6Bが形成される。
【0019】
さらに、隣り合う柱部4,4の対向面には、金型分割面Aに沿う凹溝7,7が形成される。
【0020】
このような構成によれば、隣り合う柱部4,4の対向面に、金型分割面Aよりも外径側及び内径側に分けて互い違いに、円錐ころの外周面に摺接する円錐面5A,5B及び径方向の平面6A,6Bが形成されているので、金型分割面Aよりも外径側の円錐面5A及び内径側の円錐面5Bにより円錐ころRが保持されるため、円錐ころ軸受の内外輪間ヘの未組み込み状態で、円錐ころR,R,・・・を抱き込んだまま保持できる。
したがって、このようなケージ&ローラーにより、自動機による組立を容易に行うことができる等、円錐ころ軸受の組立が容易になる。
【0021】
また、特許文献2のような円錐ころの内径側ヘの脱落を防止するため内側突出部を形成する必要がなく、隣り合う柱部4,4の対向面に、金型分割面Aよりも外径側及び内径側に分けて互い違いに、円錐ころの外周面に摺接する円錐面5A,5B及び径方向の平面6A,6Bが形成されているので、図4中の矢印に示すように金型を軸方向に抜くことができるため、アキシャルドロー型により射出成形することができる。
したがって、金型が複雑で高価になることがないため、円錐ころ軸受用樹脂製保持器1の製造コストが増大しない。
【0022】
さらに、ポケットP,P,・・・を区画する柱部4,4,・・・に金型分割面Aに沿う凹溝7,7,・・・が形成されているので、ポケットP内に金型分割面Aがあることによりバリが発生したとしても、凹溝7内に留まる大きさのバリは円錐ころRと干渉しないため、凹溝7内に留まる大きさのバリを許容することができる。
したがって、円錐ころ軸受の回転中に保持器1からバリが脱落して円錐ころや内外輪の軌道面を傷めるリスクを大幅に低減できる。
【0023】
また、金型分割面Aは、内径側円錐面5Aと外径側円錐面5Bとが柱部4の延出方向長さにおいて互いに等しくなるように、柱部4の径方向中央部に形成されている。これにより、内径側円錐面5Aと外径側円錐面5Bによって円錐ころ13の内径側及び外径側への脱落を確実に防止することができる。
なお、金型分割面Aは、柱部4の径方向中央部であることが好ましいが、内径側円錐面5Aと外径側円錐面5Bによって円錐ころ13の脱落を防止できるものであれば、柱部4の径方向中央部付近、即ち、径方向中央部から内径側または外径側に若干ずれて形成されてもよい。
【0024】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、適宜、変形、改良などが可能である。
例えば、上記実施形態では、金型分割面Aに沿って凹溝7が形成されているが、凹溝7は柱部4の強度を低下させる原因ともなるため、凹溝7はできるだけ小さく形成することが好ましい。たとえば、図5に示す変形例のように、金型分割面Aは、上記実施形態のような凹溝を有しない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0025】
A 金型分割面
B 円錐ころの回転軸を繋ぐ仮想円錐面
P ポケット
R 円錐ころ
1 円錐ころ軸受用樹脂製保持器
2 大径リング部
3 小径リング部
4 柱部
5A 内径側円錐面
5B 外径側円錐面
6A、6B 平面
7 凹溝
図1
図2
図3
図4
図5