特許第6055360号(P6055360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055360
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】真空製膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/56 20060101AFI20161219BHJP
【FI】
   C23C14/56 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-85338(P2013-85338)
(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-205898(P2014-205898A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(72)【発明者】
【氏名】熱田 直行
(72)【発明者】
【氏名】恩地 卓也
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−302474(JP,A)
【文献】 特開2003−144900(JP,A)
【文献】 特開2000−204478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C23C 16/00−16/56
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側処理ラインと下流側処理ラインとの間に配置される、内部真空化が可能な反転用チャンバーと、
この反転用チャンバーに設けられた、製膜対象の基板の導入口及び送出口と、
この反転用チャンバー内に設けられた、巻取り送り出しロールとを備えており、
この巻取り送り出しロールが、回転することにより、上記導入口を通して上流側処理ラインからの基板を巻取り、且つ、逆回転することにより、この基板を送出口を通して下流側処理ラインに送り出すように構成されており、
上記巻取り送り出しロールによって巻取り送り出される基板が、上記導入口を通過するときと送出口を通過するときとで、その表面と裏面とが逆を向くように構成されている、真空製膜装置用の反転機構。
【請求項2】
上記導入口が、上流側処理ラインに備わった処理用の第一製膜チャンバーに、大気に連通しない状態で連結可能に構成されており、上記送出口が、下流側処理ラインに備わった処理用の第二製膜チャンバーに、大気に連通しない状態で連結可能に構成されている請求項1に記載の反転機構。
【請求項3】
上記反転用チャンバー内に、介装シートが備えられており、
この介装シートは、基板が上記巻取り送り出しロールに巻き取られる際、基板の上流側処理ラインにおける処理面に重ね合わされる請求項1又は2に記載の反転機構。
【請求項4】
上流側処理装置と、
下流側処理装置と、
上記両処理の間に配置される、処理対象である基板の表裏を反転しうる反転機構とを備えており、
上記上流側処理装置が、供給ロールを備えた供給チャンバー、及び、第一製膜源を備えた第一製膜チャンバーを有しており、
上記下流側処理装置が、第二製膜源を備えた第二製膜チャンバー、及び、巻取りロールを備えた巻取りチャンバーを有しており、
上記反転機構が、請求項1から3のいずれかに記載の反転機構である真空製膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空製膜装置に関する。詳細には、本発明は、ロールからロールへ送られる帯状のワークに対し、塗布、真空蒸着等によって製膜するためのロール・トゥ・ロール製膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯状の基板の表面に、塗布、スパッタリング、化学蒸着、真空蒸着等によって膜を形成するために製膜装置が用いられる。この製膜装置の一種として、供給ロール(送り出しロール)から帯状の基板を送り出し、膜が形成された後の基板を、エンドロール(巻取りロール)に巻き取るロール・トゥ・ロール製膜装置が知られている。基板に膜を形成する製膜部は、供給ロールとエンドロールとの間に設けられる。供給ロールから送り出された基板は、製膜部を経由してエンドロールに向かって搬送される。このロール・トゥ・ロール製膜装置では、連続的に基板が製膜部に供給されつつ、この基板の表面に薄膜が形成される。このような装置の例が、特開2010−007113公報及び特開2010−053439公報に開示されている。
【0003】
例えば、薄膜太陽電池、有機エレクトロルミネッセンスパネル等のフレキシブル電子デバイスの分野においては、基板に複数層の膜を積層する製膜処理が知られている。その一例は、前工程で基板の一方の面に塗布によって塗膜を形成し、次工程でこの塗膜の上にさらに真空蒸着によって蒸着膜を形成する処理である。基板上に形成された塗膜は、大気に接触すると変質するおそれがあるため、大気に接触させることができない。
【0004】
図7には、直列2連のロール・トゥ・ロール製膜装置51が示されている。この製膜装置51は、積層された複数の膜からなる薄膜を、帯状の基板(ワークともいう)Wに形成するためのものである。この製膜装置51は、塗布処理を行う塗布装置52と、真空蒸着処理を行う真空蒸着装置53とを備えている。両装置52、53それぞれが、ロール・トゥ・ロール製膜装置として構成されている。製膜対象の基板Wの片面には、塗膜CFが形成された後、真空蒸着によってさらに膜DFが形成される。塗布装置52は、供給ロール54を備えた供給チャンバー55と、塗膜源56を備えた塗膜チャンバー57と、巻取りロール58を備えうる巻取りチャンバー59とを備えている。真空蒸着装置53は、供給ロール58を備えうる供給チャンバー60と、蒸着膜源61を備えた蒸着チャンバー62と、巻取りロール63を備えた巻取りチャンバー64とを備えている。塗布装置52において、塗膜処理された基板Wを巻き取った上記巻取りロール58は、真空蒸着装置53に供給ロール58として取り付けられる。
【0005】
図7に示されるように、塗膜処理は、その処理方向が上から下に向けられる必要があり、真空蒸着処理は、その処理方向が下から上に向けられる必要がある。一方、前述のとおり、基板に形成された塗膜の上に、さらに真空蒸着膜が形成される必要がある。塗膜と真空蒸着膜とは、基板Wの同一面に形成される必要がある。このため、塗布装置52の巻取りロール58は、上下反転させられた上で、真空蒸着装置53に取り付けられる必要がある。この反転取付作業を、塗膜に大気を触れさせずに行うことは非常に難しい。この作業は、電子デバイス等の製品の生産性を損なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2010−007113号公報
【特許文献1】特開平2010−053439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した現状に鑑みてなされたものであり、製膜対象である基板の前工程から後工程への移送に際して、基板の上面(表面)と下面(裏面)との反転を容易且つスムーズに行うことのできる反転機構を提供すること、及び、この反転機構を備えた真空製膜装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る真空製膜装置用の反転機構は、
上流側処理ラインと下流側処理ラインとの間に配置される、内部真空化が可能な反転用チャンバーと、
この反転用チャンバーに設けられた、製膜対象の基板の導入口及び送出口と、
この反転用チャンバー内に設けられた、巻取り送り出しロールとを備えており、
この巻取り送り出しロールが、回転することにより、上記導入口を通して上流側処理ラインからの基板を巻取り、且つ、逆回転することにより、この基板を送出口を通して下流側処理ラインに送り出すように構成されており、
この巻取り送り出しロールによって巻取り送り出される基板が、上記導入口を通過するときと送出口を通過するときとで、その表面と裏面とが逆を向く。
【0009】
好ましくは、上記導入口が、上流側処理ラインに備わった処理用の第一製膜チャンバーに、大気に連通しない状態で連結可能に構成されており、上記送出口が、下流側処理ラインに備わった処理用の第二製膜チャンバーに、大気に連通しない状態で連結可能に構成されている。
【0010】
好ましくは、上記反転用チャンバー内に、介装シートが備えられており、
この介装シートは、基板が上記巻取り送り出しロールに巻き取られる際、基板の上流側処理ラインにおける処理面に重ね合わされる。
【0011】
本発明に係る真空製膜装置は、
上流側処理装置と、
下流側処理装置と、
上記両処理装置の間に配置される、処理対象である基板の表裏を反転しうる反転機構とを備えており、
上記上流側処理装置が、供給ロールを備えた供給チャンバー、及び、第一製膜源を備えた第一製膜チャンバーを有しており、
上記下流側処理装置が、第二製膜源を備えた第二製膜チャンバー、及び、巻取りロールを備えた巻取りチャンバーを有しており、
上記反転機構が、前述したいずれかの反転機構である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、真空製膜装置において、基板の表面と裏面との反転を容易且つスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、基板の製膜処理の一工程中にある本発明の一実施形態に係る真空製膜装置の内部を概略的に示す正面図である。
図2図2は、基板の製膜処理の他の工程中にある本発明の一実施形態に係る真空製膜装置の内部を概略的に示す正面図である。
図3図3は、基板の製膜処理のさらに他の工程中にある本発明の一実施形態に係る真空製膜装置の内部を概略的に示す正面図である。
図4図4は、基板の製膜処理のさらに他の工程中にある本発明の一実施形態に係る真空製膜装置の内部を概略的に示す正面図である。
図5図5は、基板の製膜処理のさらに他の工程中にある本発明の一実施形態に係る真空製膜装置の内部を概略的に示す正面図である。
図6図6は、基板の製膜処理のさらに他の工程中にある本発明の一実施形態に係る真空製膜装置の内部を概略的に示す正面図である。
図7図7は、基板の製膜処理工程中にある従来の真空製膜装置の内部を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1に示された製膜装置1は、帯状の基板Wに、複数層の薄膜を積層する装置である。この製膜装置1では、基板Wの一方の面に、不活性ガス雰囲気下で薄膜が形成され、その薄膜の上に、真空雰囲気下でさらに薄膜が形成される。この装置1は、塗布処理を行う上流側処理装置としての塗布装置2と、真空蒸着処理を行う下流側処理装置としての真空蒸着装置3とを備えている。これらいずれの装置2、3も、後述する基板反転機構14が接続されることにより、ロール・トゥ・ロール製膜装置として構成される。塗布装置2により、基板Wの片面に塗膜CFが形成され、真空蒸着装置3により、塗膜CFの上面に蒸着膜DFが形成される。
【0016】
塗布装置2は、供給ロール4を備えた供給チャンバー5と、第一製膜源としての塗膜源6を備えた第一製膜チャンバーとしての塗膜チャンバー7とを有している。真空蒸着装置3は、第二製膜源としての蒸着膜源10を備えた第二製膜チャンバーとしての蒸着チャンバー11と、巻取りロール12を備えた巻取りチャンバー13とを有している。製膜装置1は、基板反転機構14をも備えている。この基板反転機構14は、巻取り送り出しロール8を備えた反転用チャンバー9を有している。
【0017】
この反転用チャンバー9は移動式に構成されている。反転用チャンバー9の上流側部分は、塗布装置2の塗膜チャンバー7の下流側部分に接続されうる(図1図2)。反転用チャンバー9の下流側部分は、真空蒸着装置3の蒸着チャンバー11の上流側部分に接続されうる(図3図4図5図6)。反転用チャンバー9には、移動容易のために、キャスター29が装備されている。
【0018】
反転用チャンバー9が塗膜チャンバー7に接続されているときは、巻取り送り出しロール8が、塗布装置2にとっての巻取りロールとして動作しうる(図1)。一方、反転用チャンバー9が蒸着チャンバー11に接続されているときは、巻取り送り出しロール8は、真空蒸着装置3にとっての供給ロールとして動作しうる(図6)。反転用チャンバー9内には、巻取り送り出しロール8に加えて、介装シート供給ロール15、上流側フリーロール16,上流側テンションロール17、下流側テンションロール18及び下流側フリーロール19が装備されている。これらフリーロール及びテンションロールの周面の両端近傍には、図示しない凸条又は段が周方向に形成されている。この一対の凸条又は段の間隔は、基板Wの幅に略等しい。基板Wがフリーロール及びテンションロールに巻掛けられるとき、基板Wの両側縁近傍がこの凸条又は段に当接する。その結果、基板Wの膜が形成された部分とフリーロール及びテンションロールの周面との間に隙間が生じる。これにより、膜は、フリーロール及びテンションロールの周面との接触によって損傷することが防止される。
【0019】
塗布装置2における供給チャンバー5と塗膜チャンバー7との間には、ゲート弁20が装備されている。このゲート弁20により、両チャンバー5、7同士が、連通され、また、遮断されもする。真空蒸着装置3における蒸着チャンバー11と巻取りチャンバー13との間にも、ゲート弁21が装備されている。このゲート弁21により、両チャンバー11、13同士が連通され、遮断されうる。
【0020】
上記反転用チャンバー9の、上流側部分に基板Wの導入口24が形成され、下流側部分に基板Wの送出口25が形成されている。この導入口24には、基板Wが通過しうる差動排気方式のバルブ(差動排気弁という)22が装備され、送出口25にも差動排気弁23が装備されている。導入口24の差動排気弁22は、塗膜チャンバー7の下流側部分に接続されうる。送出口25の差動排気弁23は、蒸着チャンバー11の上流側部分に接続されうる。塗膜チャンバー7の下流側部分には、上記差動排気弁22が接続されうる開閉口27が形成されている。蒸着チャンバー11の上流側部分には、差動排気弁23が接続されうる開閉口28が形成されている。これら差動排気弁により、不活性ガスの充填、真空引き、チャンバー同士の脱着等が、スムーズ且つ効率良く行われる。上記開閉口27、28は、単独で気密に閉止することができ、且つ、これを開口することができる弁機構を含む。開閉口27、28として、例えば、ゲート弁が採用されうる。上記した差動排気弁及びゲート弁は、基板Wを保持した状態で気密に閉止することが可能である。
【0021】
図1に示された製膜装置1においては、塗布装置2が塗膜形成処理を実行している。塗布装置2と基板反転機構14とが接続されている。供給チャンバー5と塗膜チャンバー7との間のゲート弁20、及び、塗膜チャンバー7と反転用チャンバー9との間の差動排気弁22は、ともに開放されている。反転用チャンバー9の下流側部分の差動排気弁23は閉じている。基板Wが、供給チャンバー5内の供給ロール4から、塗膜チャンバー7を経由して、実質的水平方向に、反転用チャンバー9内の巻取り送り出しロール8に送られている。供給チャンバー5、塗膜チャンバー7及び反転用チャンバー9の各内部は窒素ガス雰囲気にされている。塗膜チャンバー7において、塗膜源6により、基板Wの上面に対し、上方から塗膜CFが形成されている。塗膜源6に対向する位置に、基板Wを下方から支持するための載置床30が設けられている。基板Wは、塗膜源6と載置床30との間を通過して送られている。
【0022】
待機中の真空蒸着装置3の各チャンバー11、13も、内部が窒素ガス雰囲気にされている。巻取りチャンバー13内の巻取りロール12には、将来の蒸着処理時のために、案内用のわずかな基板Wが巻掛けられている。この案内用基板Wの先端は、蒸着チャンバー11内に引き出されている。
【0023】
反転用チャンバー9内では、基板Wが、介装シート(合紙ともいう)Pを介在させた上で巻取り送り出しロール8に巻き取られている。ここでは、巻取り送り出しロール8は巻取りロールとして動作している。基板Wは、その塗膜CF形成面が上を向いた状態で、時計回りに回転する巻取り送り出しロール8に巻き取られている。介装シートPも同時に巻き取られている。介装シートPは、基板Wの塗膜CFの面が、基板Wの裏面と接触することによって生じうる損傷を防止する。
【0024】
図2から図5に示されるように、所定量の基板Wに対する塗膜形成が終了すると、この基板Wに対する真空蒸着の準備がなされる。図2では、塗膜チャンバー7の上流側部分のゲート弁20及び下流側部分の差動排気弁22が閉止されている。作業員が、塗膜チャンバー7を開放して、基板Wを切断する。閉止されているゲート弁20及び差動排気弁22により、供給チャンバー5及び反転用チャンバー9への大気の進入が阻止されている。
【0025】
図3に示されるように、反転用チャンバー9は、塗膜チャンバー7の開閉口27との接続が解かれ、蒸着チャンバー11の開閉口28に接続される。一方のゲート弁20、及び、両方の差動排気弁22、23は閉じられている。作業員が、反転用チャンバー9に設けられたグローブボックス31を使用して、反転用チャンバー9内の基板Wを切断する。大気に触れ、且つ、差動排気弁22に把持された基板の切れ端は、使用されず、処理終了まで放置される。
【0026】
図4に示されるように、作業員が、グローブボックス31を使用して、巻取り送り出しロール8に巻き取られている塗膜CF形成済みの基板Wを、下流側テンションロール18及びフリーロール19に巻き掛ける。反転用チャンバー9と蒸着チャンバー11との間の差動排気弁23が開放される。塗膜CF形成済みの基板Wの先端が、上記差動排気弁23を通して、蒸着チャンバー11内に送られる(図5)。このように、塗膜CF形成面が上を向いた状態で巻取り送り出しロール8に巻き取られていた基板Wが、巻取り送り出しロール8の逆回転により、巻き取られた向き(左から右)と同じ向き(左から右)に送り出される。従って、このとき、基板Wの塗膜CF形成面は下を向く。このとき、同時に、介装シートPは、巻取り送り出しロール8から介装シート供給ロール15に巻き戻される。
【0027】
図5に示されるように、作業員が、蒸着チャンバー11に設けられたグローブボックス32を使用して、塗膜CF形成済みの基板Wの先端を、前述した巻取りロール12に巻掛けられた案内用の未処理基板Wに接続する。ここで、前述のごとく、基板Wの塗膜CFが形成された面は下方を向いている。この作業と並行して、上記差動排気弁23が閉止される。次いで、図示しない真空ポンプにより、反転用チャンバー9の内部が真空にされる。引き続き、蒸着チャンバー11及び巻取りチャンバー13の内部が真空にされる。その後、差動排気弁23が開放される。以上で、真空蒸着のための準備が完了する。
【0028】
図6に示されるように、巻取り送り出しロール8から基板Wが送り出される。介装シートPは、巻取り送り出しロール8から介装シート供給ロール15に巻き戻される。基板Wは、蒸着膜源10の上方を通過して、巻取りロール12に巻き取られる。基板Wの塗膜CFが形成されている下面に対し、蒸着膜源10からの膜用ソースが下方から蒸着され、蒸着膜DFが形成される。
【0029】
本実施形態に係る基板反転機構14は、移動可能であり、塗膜チャンバー7及び蒸着チャンバー11との間で着脱可能にされている。しかし、かかる構成には限定されない。基板反転機構14が、上記両チャンバー7、11間に常時接続されている真空製膜装置であってもよい。
【0030】
本実施形態では、巻取り送り出しロール8が時計回りに回転して、塗布装置2からの基板Wを巻き取っている。しかし、かかる構成には限定されない。巻取り送り出しロール8が反時計回りに回転して基板Wを巻き取るようにしてもよい。この場合、巻取り送り出しロール8は、時計回りに回転して基板Wを送り出す。
【0031】
本実施形態では、前工程で基板Wの面に上方から製膜され、後工程で当該面に下方から製膜されている。しかし、かかる構成には限定されない。前工程で基板Wの面に下方から製膜され、後工程で当該面に上方から製膜される装置であってもよい。
【0032】
本実施形態では、反転用チャンバー9の導入口24及び送出口25を通過するときの基板Wの姿勢は、いずれも水平状態である。しかし、水平には限定されない。総じて言えば、前処理の終わった基板Wを正転方向に回転して巻き取った巻取り送り出しロールは、逆転方向に回転して後工程にこの基板送り出す。このとき、基板の表裏の面の向きを容易に反転することができる。
【0033】
本実施形態では、反転用チャンバー9が移動式に構成されている。しかし、かかる構成には限定されない。反転用チャンバー9は、必要に応じて、常時塗膜チャンバー7及び蒸着チャンバー11の両方に同時に接続された状態の固定式の構成であってもよい。すなわち、全チャンバーが固定式であってもよい。また、任意に固定式及び移動式のチャンバーを選定することが可能である。例えば、反転用チャンバー9が床に固定され、供給チャンバー5、塗膜チャンバー7、蒸着チャンバー11及び巻取りチャンバー13が、移動式に構成されてもよい。
【0034】
本実施形態では、塗布装置2には一台の塗膜チャンバー7が備えられ、真空蒸着装置3には一台の蒸着チャンバー11が備えられている。しかし、かかる構成には限定されない。塗布装置2に複数台の塗膜チャンバーが直列に配置されてもよい。複数台の塗膜チャンバーには、異なる塗膜源が装備されてもよい。真空蒸着装置3にも、複数台の蒸着チャンバーが直列に配置されてもよい。複数台の蒸着チャンバーには、異なる蒸着膜源が装備されてもよい。上記各装置2、3に、複数台のチャンバーが並列に配置されてもよい。この場合、反転機構14に、複数台の反転用チャンバーが備えられてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、チャンバーにゲート弁が装備されている。必要に応じて、これらのゲート弁に代えて、差動排気弁が用いられてもよい。
【0036】
本実施形態にかかる真空製膜装置として、塗布装置と真空蒸着装置との組み合わせが例示されている。しかし、かかる構成には限定されない。例えば、真空スパッタ装置と真空蒸着装置との組み合わせであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る反転機構は、種々のロール・トゥ・ロール真空製膜装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1・・・製膜装置
2・・・塗布装置
3・・・真空蒸着装置
4・・・供給ロール
5・・・供給チャンバー
6・・・塗膜源
7・・・塗膜チャンバー
8・・・巻取り送り出しロール
9・・・反転用チャンバー
10・・・蒸着膜源
11・・・蒸着チャンバー
12・・・巻取りロール
13・・・巻取りチャンバー
14・・・反転機構
15・・・介装シート供給ロール
16、19・・・フリーロール
17、18・・・テンションロール
20、21・・・ゲート弁
22、23・・・差動排気弁
24・・・導入口
25・・・送出口
27、28・・・開閉口
29・・・キャスター
30・・・載置床
31、32・・・グローブボックス
CF・・・塗膜
DF・・・蒸着膜
P・・・介装シート
W・・・基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7