特許第6055416号(P6055416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055416
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】金属構造を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/14 20060101AFI20161219BHJP
   C23C 18/18 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C23C18/14
   C23C18/18
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-539302(P2013-539302)
(86)(22)【出願日】2011年11月23日
(65)【公表番号】特表2013-545895(P2013-545895A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】EP2011070861
(87)【国際公開番号】WO2012069555
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年11月21日
(31)【優先権主張番号】102010052033.0
(32)【優先日】2010年11月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500449008
【氏名又は名称】ライプニッツ−インスティトゥート フィア ノイエ マテリアーリエン ゲマインニュッツィゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクタ ハフトゥンク
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ オリヴェイラ ペーター ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】モー カルステン
(72)【発明者】
【氏名】アルツ エドゥアルト
【審査官】 菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−051222(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0269510(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/012810(WO,A2)
【文献】 特開2007−186570(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0965904(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C18/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属構造を製造するためのプロセスであって:
(a)開始剤組成物を基板に適用し、開始剤層を形成する工程において、この組成物が、開始剤としてTiOナノロッドを含む、工程;
(b)金属層のための前駆体化合物を含む前駆体組成物を基板に適用する工程;
(c)構造テンプレートを開始剤層に適用して、前駆体組成物を部分的に排除する工程;および
(d)開始剤に対する電磁放射線の作用により前駆体化合物を金属に還元する工程を含み、
前記TiOナノロッドが、1000:1〜2:1の長さ対直径の比を有する、プロセス。
【請求項2】
前記TiOナノロッドが、10:1〜3:1の長さ対直径の比と共に、30〜100nmの長さを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記前駆体化合物が、銀、金、または銅錯体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記基板表面前処理した後、前記開始剤組成物を前記基板に適用し、前処理がプラズマ処理、コロナ処理、火炎処理ならびに/または有機−無機コーティングの適用および硬化を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記開始剤組成物が、マトリックス形成成分を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記前駆体組成物が工程(b)において構造テンプレートに適用され、構造テンプレートと共に工程(c)において開始剤層に適用されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の、特に導電性の構造を製造するためのプロセス、ならびにかかる基板およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,534,312号には、感光性金属錯体を基板に適用し、照射によりそれらを分解することによって金属構造を製造するための方法が記載されている。このプロセスは、感光性錯体を取り扱わなければならないので、複雑化される。さらに、典型的には金属酸化物が形成されていて、これらはさらなる工程において、通常は200℃を超える高温にて水素を用いて金属に還元されなければならない。
【0003】
文献US2004/0026258A1には、基板上にミクロ構造が最初に製造されるプロセスが記載されている。これらの構造は、さらなる電解堆積操作のための核として作用する。このプロセスにおいても、還元工程が堆積操作に加えて必要とされる。
【0004】
US2005/0023957A1には、一次元のナノ構造の製造が記載されている。この目的で、光触媒化合物のコーティングが基板に適用され、マスクを通して露光される。これにより、露光領域において励起された状態を形成する。次いで金属は、この潜像上に電解堆積される。この方法の不利点は、潜像の寿命が短いことであり、直ちにさらなる処理を必要とする。さらに、導電性構造を得るためにこの方法にはさらなる堆積工程も必要とされる。
【0005】
文献US2006/0144713A1において、ポリマーが、励起状態の寿命を延ばすために、光触媒化合物に適用される。このことが、このプロセスをさらにより複雑化する。刊行物Noh,C.−,et al.,Advances in Resist Technology and Processing XXII,Proceedings of SPIE,2005,5753,879−886,「A novel patterning method of low−resistivity metals」およびNoh,C.−,et al.,Chemistry Letters,2005 34(1),82−83,「A novel patterning method of low−resistivity metals」において、光触媒層として非晶質二酸化チタンの層を使用することも可能であることが記述されている。しかし、結晶性二酸化チタンナノ粒子を使用する場合、おそらく粒子のサイズのために、構造の十分な解像度を得ることはできなかったので、これが粗い表面をもたらす。非晶質二酸化チタンの相対的に低い光触媒活性のため、少量の金属だけが光触媒堆積可能である。
【0006】
文献US2009/0269510A1には、二酸化チタンナノ粒子のコーティング上の金属フィルムの製造が記載されている。この目的で、3nm〜20nmの直径を有する球体粒子が使用される。このプロセスにより、ある程度の構造化を達成できる。しかし、この構造は透明ではなく、解像度がごくわずかである。
【0007】
刊行物Jia,Huimin et al.Materials Research Bulletin,2009,44,1312−1316,「Nonaqueous sol−gel synthesis and growth mechanism of single crystalline TiO nanorods with high photocatalytic activity」には、露光による銀コーティングの製造のための、二酸化チタンのナノロッドの使用が示されている。
【0008】
すべてのプロセスは、構造を製造するために、露光用マスクが必要である。
【0009】
これまでITOコーティングによって通常は解決されていた課題であるが、光触媒堆積による透明な導電性構造を製造することもできるならば、有利となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が対処する課題は、単純な様式で金属構造、特に導電性構造の製造を可能にするプロセスを特定することである。プロセスはまた、透明構造の製造も可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、独立請求項の特徴を有する本発明によって解決される。本発明の有利な発展は、従属請求項にて特徴付けられる。すべての請求項の文言は、本明細書の文脈に参考により組み込まれる。本発明はまた、独立および/または従属請求項のすべての実行可能な、特にすべての記述された組み合わせを包含する。
【0012】
こうした課題は、金属構造を製造するためのプロセスによって解決され、ここで開始剤組成物が基板に適用されて開始剤層を形成し、この組成物は開始剤として光触媒活性な無機物質を含む。さらなる工程において、金属層のための前駆体化合物を含む前駆体組成物が基板に適用される。基板に対して、前駆体組成物を部分的に置き換える構造テンプレートが開始剤層に適用される。部分的な置き換えにより、構造テンプレートと開始剤層の表面との間の接触をもたらす。
【0013】
さらなる工程において、前駆体化合物は、開始剤に対する電磁放射線の作用下で金属に還元される。部分的な置き換えの結果として、これは、構造テンプレートにより前駆体組成物、ひいては前駆体化合物が置き換えられていない場所でのみ生じる。
【0014】
これは、典型的には、金属層を形成する。ここで金属性層は、金属の層を意味するように、本発明の文脈において理解される。かかる層は、十分な厚さがあれば、導電性であることもできる。かかる導電性層は、特に好ましい。「導電性」は、本質的にコンダクタトラックを構成する構造の製造を意味するとは必ずしも理解されない。導電性材料のドットの製造も、原理上導電性である構造を構成する。
【0015】
個々のプロセス工程は、以降で詳細に記載される。工程は、特定される順序で必ずしも行われる必要はなく、概要されるべきプロセスはまた、特定されていないさらなる工程を有していてもよい。
【0016】
記載されるプロセスは、前駆体組成物の制御された置き換えにより、単純な様式で構造化を達成できるという利点を有する。かかる構造テンプレートは、単純な様式で製造できる。
【0017】
光触媒開始剤を用いてコーティングされるべき基板は、この目的に好適ないかなる材料であってもよい。好適な材料の例は、金属または金属合金、ガラス、セラミック(酸化物セラミック、ガラスセラミックまたはポリマーを含む)、ならびにさらに紙および他のセルロース系材料である。もちろん、上述の材料の表面層を有する基板を使用することも可能である。表面層は、例えば、金属化またはエナメル加工操作から生じさせてもよく、ガラスまたはセラミック層であってもよく、または塗装操作から生じさせてもよい。
【0018】
金属または金属合金の例は、スチール(ステンレススチールを含む)、クロム、銅、チタン、スズ、亜鉛、黄銅、およびアルミニウムである。ガラスの例は、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、鉛結晶およびシリカガラスである。ガラスは、例えばパネルガラス、中空ガラス、例えば容器ガラス、または実験設備ガラスであってもよい。セラミックは、例えば酸化物、SiO、Al、ZrOまたはMgO、または対応する混合酸化物に基づくセラミックであってもよい。金属でも同様にフィルムの形態で存在し得るポリマーの例は、ポリエチレン(PET)、例えばHDPEまたはLDPE、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチラール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、再生セルロース、セルロースニトレート、セルロースアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、またはゴム塩酸塩である。---塗装された表面は、標準ベースコートまたはペイントから形成されてもよい。好ましい実施形態において、基板は、フィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリイミドフィルムである。
【0019】
開始剤組成物は、開始剤として光触媒活性の無機物質を含む。光触媒活性物質は、それ自体はプロセス中に分解されることなく、金属錯体またはさらなる物質の酸化活性化を通して、金属錯体中の金属イオンの金属への直接的および/または間接的な還元をもたらす化合物を意味すると理解される。酸化過程で形成する生成物は、金属錯体の分解および錯体中の金属イオンの還元をもたらす。光触媒材料はZnOまたはTiOであってもよく、好ましくはTiOであってもよい。より好ましくは、TiOはアナターゼ形態である。
【0020】
TiOはまた、非晶質TiOの形態であってもよい。TiOのナノスケール粒子またはロッドが好ましい。例えば、TiOのナノスケール粒子が含まれていてもよく、これらは200nm未満の平均直径、好ましくは50nm未満の平均直径、より好ましくは10nm未満の平均直径を有する(TEMによって決定される)。
【0021】
例えばUS2009/0269510A1において記載されるようなリオサーマル条件下にて、準化学量論量の水と共に得られる粒子が特に好ましい。かかる粒子はまた、ドープされた形態において製造されてもよい。
【0022】
好ましい実施形態において、開始剤組成物は、ナノロッドを含む。本発明の文脈において、これらは、一般に球体ナノ粒子とは対照的に、細長い物体を意味すると理解される。かかるロッド形状物体は、例えば2つのパラメータに基づいて記載できる:第1にロッドの直径および第2にロッドの長さ。ナノロッドは、特に100nm未満、好ましくは50nm未満、好ましくは40nm未満、より好ましくは30nm未満の直径を有することが重要である。その長さは、500nm未満、好ましくは400nm未満、より好ましくは200nm未満である。寸法は、TEMによって決定できる。ナノロッドは、TEMでは通常は長い方を横にする。そのため、決定された直径は、異なる配向のナノロッドの直径の平均を構成する。組成物において、ナノロッドの凝集体も生じ得る。図は、常に1つのナノロッドに基づく。
【0023】
好ましい実施形態において、ナノロッドは、1000:1〜1.5:1、好ましくは500:1〜2:1、より好ましくは100:1〜5:1の直径対長さの比を有する。
【0024】
好ましい実施形態において、ナノロッドは、10:1〜3:1の長さ対直径の比と共に、30〜100nmの長さを有する。
【0025】
それらの伸長により、ナノロッドは、特に高い光触媒活性を有する。
【0026】
ナノロッドの製造に関して、当業者に既知のすべてのプロセスが有用である。これらは、例えば加水分解または非加水分解ゾル−ゲルプロセスである。かかるプロセスに関して、ナノロッドが得られる条件は公知である。
【0027】
ナノロッドは、非加水分解ゾル−ゲルプロセスによって好ましくは製造される。この目的で、加水分解性チタン化合物および/または亜鉛化合物は、アルコールまたはカルボン酸と、好ましくは保護ガス雰囲気下で反応させる。反応は、好ましくは10℃〜100℃、好ましくは15℃〜30℃の温度にて行われる。1つの実施形態において、反応は室温にて行われ得る。
【0028】
加水分解性チタン化合物は、特に式TiXの化合物であり、式中、加水分解性X基は、互いに異なり、または好ましくは同じであり、例えば水素、ハロゲン(F、Cl、BrまたはI、特にClおよびBr)、アルコキシ(好ましくはC1〜6−アルコキシ、特にC1〜4−アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、ブトキシ、i−ブトキシ、sec−ブトキシおよびtert−ブトキシ)、アリールオキシ(好ましくはC6〜10−アリールオキシ、例えばフェノキシ)、アシルオキシ(好ましくはC1〜6−アシルオキシ、例えばアセトキシまたはプロピオニルオキシ)またはアルキルカルボニル(好ましくはC2〜7−アルキルカルボニル、例えばアセチル)である。-ハライドの1つの例は、TiClである。さらに、加水分解性X基は、アルコキシ基、特にC1〜4−アルコキシである。具体的なチタネートは、Ti(OCH、Ti(OCおよびTi(n−またはi−OCである。好ましくは、TiClである。
【0029】
亜鉛化合物の場合、亜鉛のカルボン酸化合物、例えばZn(OAc)が選択肢である。
【0030】
アルコールおよびカルボン酸は、一般に低級アルコールおよびカルボン酸である。かかる化合物の例は、アルキルアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、ネオペンタノール、グリコール、1,3プロパンジオールまたはベンジルアルコール類、例えばベンジルアルコールであり、これはまた芳香族環において置換されていてもよい。カルボン酸の例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸が挙げられる。溶媒の混合物を使用することも可能である。好ましいのは、ベンジルアルコールの使用である。化合物はまた、好ましくは溶媒として、すなわち明らかな過剰量で使用される。
【0031】
結晶性ナノロッドを得るために、熱処理、好ましくは自生圧力下での熱処理を行うことも必要な場合がある。この目的で、反応混合物は、50℃〜300℃、好ましくは50℃〜100℃の温度において、2時間から48時間、閉じた容器において処理される。
【0032】
得られたナノロッドは、単純な遠心分離および溶媒の除去によって得られ得る。
【0033】
ナノロッドまたはナノ粒子はまた、例えば、それらの吸収を他のスペクトル領域にシフトさせるために、ドープされてもよい。
【0034】
この目的で、ナノロッドまたはナノ粒子の場合、それらの製造過程において、好適な金属化合物は、例えば酸化物、塩または錯体、例えばハライド、ニトレート、スルフェート、カルボキシレート(例えばアセテート)またはアセチルアセトネートをドープするために使用できる。化合物は、適切には、ナノロッドの製造のために使用される溶媒中に可溶性であるべきである。好適な金属は、いずれかの金属、特に元素周期表の5族から14族、ならびにランタノイドおよびアクチニドから選択される金属である。ここで族は、Roempp Chemie Lexikon,第9版に示されるように新しいIUPACシステムに従って記述される。金属は、化合物において、いずれかの好適な初期酸化状態にて生じ得る。
【0035】
金属化合物に好適な金属の例は、W、Mo、Zn、Cu、Ag、Au、Sn、In、Fe、Co、Ni、Mn、Ru、V、Nb、Ir、Rh、Os、PdおよびPtである。好ましくはW(VI)、Mo(VI)、Zn(II)、Cu(II)、Au(III)、Sn(IV)、In(III)、Fe(III)、Co(II)、V(V)およびPt(IV)の金属化合物が使用される。非常に良好な結果は、特にW(VI)、Mo(VI)、Zn(II)、Cu(II)、Sn(IV)、In(III)およびFe(III)に関して得られる。好ましい金属化合物の具体例は、WO、MoO、FeCl、酢酸銀、塩化亜鉛、塩化銅(II)、酸化インジウム(III)および酢酸スズ(IV)である。
【0036】
金属化合物とチタンまたは亜鉛化合物との比はまた、使用される金属およびそれらの酸化状態に依存する。一般に、例えば使用される比は、金属化合物中の金属と、チタンまたは亜鉛化合物中のチタン/亜鉛とのモル比(Me/Ti(Zn))が0.0005:1〜0.2:1、好ましくは0.001:1〜0.1:1、より好ましくは0.005:1〜0.1:1という結果になる比である。
【0037】
ナノ粒子のドーピングは、US2009/0269510A1に記載されており、この内容は、説明の主題にこれにより組み込まれる。本質的に、上述の金属化合物はまた、調製中に添加される。
【0038】
得られたナノロッドまたはナノ粒子はまた、例えば、使用されるマトリックス材料との相溶性を付与するために、表面修飾されてもよい。例えばフッ素化基による表面修飾を通して、開始剤層内のナノロッドの濃度勾配を達成することも可能になる。ナノロッドは、適用後に露光された開始剤層の表面にて蓄積し、照射過程において基板を損傷し得ない。
【0039】
開始剤組成物は、一般に少なくとも1つの溶媒中のナノロッドの分散液を含む。ナノロッドの割合は、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満である。好ましい範囲は、0.5重量%〜3重量%である。例は、1重量%、1.5重量%、2重量%、および2.5重量%である。ここでの割合は、開始剤組成物に基づく。
【0040】
好適な溶媒は、ナノ粒子に関する当業者に公知の溶媒である。150℃未満の沸点を有する溶媒が好ましい。それらの例は、脱イオンHO、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールまたはブタノールである。混合物を使用することも可能である。かかる混合物の例は、80:20重量%〜20:80重量%、好ましくは50:50重量%〜20:80重量%のHO:アルコールであり、好ましくは使用されるアルコールはエタノールである。
【0041】
開始剤組成物の適用に関して、標準プロセス、例えば浸漬、ローリング、ナイフコーティング、フローコーティング、ドローイング、噴霧、スピニングまたは塗装を使用することができる。適用された分散液は、場合により乾燥および熱処理され、例えば硬化または圧密される。このために使用される熱処理は、もちろん基板に依存する。ポリマー基板またはポリマー表面の場合、それは一般にバリア層(以下を参照)を有するが、もちろん非常に高温を使用することはできない。例えば、ポリカーボネート(PC)基板は、約130℃で1時間熱処理される。一般に、熱処理は、例えば100〜200℃の温度にて、ポリマーが存在しない場合には500℃までまたはそれ以上にて行われる。熱処理は、例えば2分から2時間行われる。
【0042】
異なる厚さを有する層を得ることができる。例えば、5nm〜200μmの厚さを有する層を得ることができる。好ましい層の厚さは、10nm〜1μm、好ましくは50nm〜700nmである。層の厚さはまた、20μm〜70μmであってもよい。
【0043】
次の工程において、金属層のための少なくとも1つの前駆体化合物を含む前駆体組成物が基板に適用される。前駆体組成物の適用に関して、慣用方法、例えば浸漬、ローリング、ナイフコーティング、フローコーティング、ドローイング、噴霧、スピニングまたは塗装を使用することができる。典型的には、前駆体組成物は、少なくとも1つの前駆体化合物の溶液または懸濁液である。この溶液はまた、複数の前駆体化合物の混合物を含んでいてもよい。還元剤または湿潤助剤などのさらなる補助剤を溶液に存在させることも可能である。
【0044】
前駆体化合物は、好ましくは金属錯体である。これは、少なくとも1つの金属イオンまたは金属原子、および少なくとも1種のリガンドを含む。金属は、例えば銅、銀、金、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、タングステン、白金またはパラジウムである。好ましい実施形態において、前駆体化合物は、銀、金または銅錯体、より好ましくは銀錯体である。前駆体化合物はまた、いくつかのタイプの金属または金属錯体混合物を含んでいてもよい。
【0045】
使用されるリガンドは、一般にキレートリガンドである。これらは、特に安定な錯体を形成することができる。これらは、複数のヒドロキシル基および/またはアミノ基を有する化合物である。200g/mol未満の分子量を有する化合物が好ましく、少なくとも1つのヒドロキシル基および少なくとも1つのアミノ基を有する化合物が特に好ましい。可能な化合物の例は、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−1−ブタノール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、NH、ニコチンアミド、または6−アミノヘキサン酸である。これらのリガンドの混合物を使用することもできる。好ましい銀錯体の場合、TRISがリガンドとして好ましい。
【0046】
前駆体組成物は、好ましくは前駆体化合物の溶液である。有用な溶媒としては、すべて好適な溶媒が挙げられる。これらは、例えば水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノールまたはi−プロパノールである。溶媒の混合物、好ましくは水およびエタノールの混合物を使用することもできる。好適な混合比は、50:50重量%から20:80重量%までのHO:アルコール、好ましくはエタノール比である。
【0047】
前駆体組成物は、界面活性剤または促進還元剤などのさらなる補助剤を追加的に含んでいてもよい。
【0048】
前駆体組成物は、いずれかの所望の様式で基板に適用できる。前駆体組成物は、開始剤層の光触媒活性が、金属イオンの金属への還元を直接的または間接的に誘発することができるように適用される。これは、典型的には、開始剤層に前駆体組成物を直接適用することによって行われる。
【0049】
前駆体組成物の適用に関して、慣用方法、例えば浸漬、噴霧、ローリング、ナイフコーティング、フローコーティング、ドローイング、スピニングまたは塗装を使用することができる。
【0050】
例えば、前駆体組成物の適用は、基板上に置かれるフレームによって行われ得、前駆体組成物はフレームによって境界が定められた空間に導入された後に形成される。フレームは、弾性材料からなってもよい。フレームは、いずれかの所望の形状を有していてもよい。長方形のフレームが慣用的である。フレームは、例えば基板上で1cm〜625cmの面積を包囲し、1cm〜25cmの辺長を有する。基板上のフレームの高さは、適用された前駆体組成物の厚さを決定する。フレームは、25μm〜5mm、好ましくは30μm〜2mmの高さを有していてもよい。
【0051】
さらなる工程において、構造テンプレートが、前駆体組成物を部分的に置き換えて、開始剤層上に適用される。構造テンプレートは、任意の形状を有するテンプレートであり、開始剤層の表面と接触させることによって、これらのポイントにて前駆体組成物を置き換える。この場合、開始剤層の表面における前駆体組成物の粘度または流動性は、置き換えが可能となるようなものでなければならない。
【0052】
構造テンプレートは、例えばスタンプまたはスクリーンであってよい。構造テンプレートは、任意の所望の材料から形成されていてよい。開始剤層の照射、ひいては同様に前駆体化合物の還元はまた、基板上の構造テンプレートの適用後であってもなおも可能でなければならないことに留意すべきである。構造テンプレートが、使用される放射線に対して透明ではない場合、基板を通した照射を行う必要がある場合がある。好ましくは、構造テンプレートは、前駆体組成物が適用時に向けられるくぼみにおいては少なくとも、使用される放射線に対して透明である。
【0053】
構造テンプレートについて可能な材料は、ミクロ構造化スタンプの分野から当業者に公知である。それらはまた、例えばリソグラフィ方法を用いて得られ得る。例は、金属、例えばニッケル、半金属、例えばケイ素またはフォトレジストである。PDMS(ポリジメチルシロキサン)などのシリコーンも使用できる。
【0054】
有利なことには、構造テンプレートは、使用される電磁放射線に対して透明な材料、好ましくはPDMSで構成される。
【0055】
例えばフッ素化シランでの処理によって構造テンプレートの表面を処理することが必要な場合がある。
【0056】
例えば置き換えられる前駆体化合物および内包される空気のために十分な空間を与えるために、前駆体組成物の層の厚さに、構造テンプレートの構成を適合させる必要がある場合がある。これは、同様に、構造テンプレートの厚さによって、またはそれらの表面に存在するくぼみの深さによって、影響され得る。
【0057】
構造テンプレートは、接触表面に対して、所望の金属構造のネガ型を構成する。
【0058】
前駆体組成物は、まず構造テンプレートに適用され、この2つを共に開始剤層に適用することも可能である。
【0059】
次の工程において、前駆体化合物の金属イオンは、開始剤への電磁放射線の作用によって金属に還元される。これは、金属性層を形成する。電磁放射線は、開始剤の励起のための波長を有する放射線である。照射は、ランプなどの大面積放射線源の使用により、またはレーザーによって達成できる。電磁スペクトルの可視または紫外領域の波長、好ましくは<500nm、例えば200〜450nmまたは210nm〜410nmの波長を有する放射線を用いるのが好ましい。<400nmの波長を有する放射線が好ましい。
【0060】
光源は、いずれかの好適な光源であってもよい。光源の例は、水銀蒸気ランプまたはキセノンランプである。
【0061】
光源は、露光されるべき基板から好適な距離にて配置される。距離は、例えば2.5cm〜50cmであってもよい。放射線の強度は、30mW/cm〜70mW/cmであってもよく、スペクトルの範囲は250nm〜410nmである。
【0062】
照射は、可能であれば、露光されるべき表面に直角にて行われるべきである。
【0063】
照射は、金属性層の形成に十分な期間で行われる。期間は、コーティング、開始剤のタイプ、ランプのタイプ、使用される波長範囲および照射強度に依存する。導電性構造が製造されるべきである場合、より長い照射が必要とされる場合がある。5秒〜10分、好ましくは20秒〜4分の照射期間が好ましい。
【0064】
レーザーが照射に使用される場合、例えば10mWアルゴンイオンレーザー(351nm)を使用可能であり、その集光および平行レーザービームが基板に対して2mm/sの速度で照射されるように行われる。
【0065】
可能な限り、照射は、構造テンプレートの片側からまたは基板を通して行われ得る。構造テンプレートを通す照射が好ましい。
【0066】
照射後、構造テンプレートが除去される。
【0067】
本発明のさらなる実施形態において、基板が、前駆体化合物の処理および還元後さらに処理される。例えば、還元されていない過剰の前駆体組成物は、例えば脱イオン水または別の好適な物質で表面をすすぐことによって除去できる。コーティングされた基板は、次いで、例えばオーブン中で加熱することにより、圧縮空気によりおよび/または室温での乾燥により、乾燥できる。
【0068】
また、例えばコーティングされた表面の酸化および水からの保護またはUV照射からの保護のためにさらなる層を適用できる。
【0069】
本発明の1つの実施形態において、構造化は、前駆体組成物の適用過程においておよび/または還元過程において追加的に行われる。本発明の文脈において、これは、金属構造の空間的に制限された製造の調製を意味することが理解される。これは、異なる方法において可能である。まず、基板は、特定領域においてのみ、開始剤組成物でコーティングできる。特定領域にのみ前駆体組成物を適用することも可能である。加えて、もちろん特定領域に、電磁放射線の作用を制限することも可能である。これらのプロセスは、もちろん組み合わせても使用できる。例えば、広域にわたって前駆体組成物を適用し、次いでマスクを通して露光することが可能である。もちろん同様に、前駆体組成物を選択的に適用し、次いで全域を露光することも可能である。
【0070】
得られた構造の質に関して重要な因子は、開始剤の光触媒活性だけでなく、質、例えば前駆体組成物に関して開始剤層の湿潤性または粗さである。具体的には、本発明の開始剤組成物は、前駆体組成物の制御された適用および/または前駆体化合物の非常に制御された還元がそこで可能であることが重要である。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、構造化は、500μm未満の最小横寸法を有する構造を含む。これは、基板上で製造される構造が、500μmの最小幅を有し、好ましくは100μm、50μm、20μm、より好ましくは10μm未満の寸法が好ましいことを意味する。5μm未満または1μm未満の均一構造が可能である。
【0072】
達成される金属構造の解像度、すなわち金属層の形成に関して重要な因子は、形成された光触媒層の構造である。ナノロッドの使用に加えて、基板の前処理により達成される解像度を得ることも可能である。かかる前処理はまた、さらなる層の適用を意味し得る。
【0073】
本発明の好ましい発展において、前処理は、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理および/または有機−無機コーティングの適用および硬化を含む。プラズマ処理、コロナ処理および/または火炎処理は、特にフィルム基板の場合、とりわけポリマーフィルムの場合の1つの選択肢である。かかる処理は、得られる光触媒層の質を改善することがわかった。
【0074】
真空条件下でプラズマを維持することが可能な方法が文献にて頻繁に記載されている。電気エネルギーは、誘導性または容量性手段によって制約され得る。それは、直流または交流であってもよく、交流の周波数は、数kHzからMHz範囲にまでに及び得る。マイクロ波範囲(GHz)のエネルギー供給も可能である。
【0075】
使用される一次プラズマガスは、例えばHe、アルゴン、キセノン、N、O、H、スチームまたは空気、および同様にこれらの化合物の混合物であってもよい。酸素プラズマであるのが好ましい。
【0076】
典型的には、基板は前もって清浄される。これは、溶媒を用いた単純なすすぎにより達成できる。次いで基板は、場合により乾燥され、次いで5分未満の間プラズマで処理される。処理時間は、基板の感受性に依存してもよい。典型的には1〜4分である。
【0077】
光触媒層の質を改善するさらなる手段は、表面の先行火炎処理である。かかる処理は、当業者に公知である。選択されるべきパラメータは、処理されるべき特定基板によって規定される。例えば、火炎温度、火炎強度、滞留時間、基板とオーブンとの距離、燃焼ガスの性質、空気圧力、湿分が問題の基板に適合される。使用される火炎ガスは、例えばメタン、プロパン、ブタン、または70%ブタンおよび30%プロパンの混合物であってもよい。この処理は、非常に好ましくはフィルムの場合、より好ましくはポリマーフィルムの場合での使用が見出される。
【0078】
本発明のさらなる実施形態において、開始剤組成物は、少なくとも2つの極性基を有する化合物を含む。これらは、好ましくは有機化合物である。極性基は、O、NまたはSを含有する基を意味することが理解される。それらは、好ましくは、少なくとも2つのOH、NH、NHまたはSH基を含有する化合物である。かかる化合物は、得られる開始剤層における改善を導き得る。かかる化合物の例は、化合物、例えば1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミンのオリゴマーであり、それぞれが酸素、窒素または硫黄原子を介して接続される。この場合、オリゴマーは、2〜4個の上述の化合物の2〜4個からなる。例は、モノエチレングリコール(MEG)、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコールである。
【0079】
化合物は、好ましくは、懸濁液中のナノロッドの質量に基づいて10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1〜4重量%の割合で使用される。
【0080】
好ましい実施形態において、開始剤組成物は、無機マトリックス形成材料または有機修飾無機マトリックス形成材料を含む。これは、特に、無機ゾルまたは有機修飾無機ハイブリッド材料またはナノコンポジットを含み得る。これらの例は、少なくとも1つのガラス形成またはセラミック形成元素M、特に元素周期表3〜5族および/または12〜15族からの元素M、好ましくはSi、Al、B、Ge、Pg、Sn、Ti、Zr、VおよびZnの元素M、特にSiおよびAlの元素M、最も好ましくはSi、またはこれらの混合物の場合により、有機修飾酸化物、加水分解物および(重)縮合物である。周期表1族および2族の元素(例えば、Na、K、CaおよびMg)、および周期表5〜10族(例えばMn、Cr、FeおよびNi)またはランタノイドの一部が、酸化物、加水分解物または(重)縮合物としても存在できる。好ましい有機修飾無機ハイブリッド材料は、ポリオルガノシロキサンである。この目的で、ガラス形成またはセラミック形成元素、特にケイ素の加水分解物を用いることが、特に好ましい。
【0081】
無機マトリックス形成材料または有機修飾無機マトリックス形成材料は、好ましくは、光触媒活性物質とマトリックス形成材料との比が、組成物全体の重量%に基づいて、300:1〜1:300、好ましくは約30:1〜1:30、より好ましくは1:20〜1:2である量にて添加される。
【0082】
リオサーマル製造されたチタンナノ粒子の場合、有機修飾無機マトリックス形成材料が、好ましくは、チタン化合物中のチタンとガラスまたはセラミック形成元素Mとのモル比が100:0.01〜0.01:100、好ましくは300:1〜1:300となるような量で添加される。非常に良好な結果は、モル濃度Ti/M比が約10:3〜1:30である場合に得られる。
【0083】
この添加により、接着が改善される。有機修飾無機マトリックス形成材料が使用される場合、存在するガラス形成元素またはセラミック形成元素Mのすべてまたは一部だけが、非加水分解性基として1つ以上の有機基を有していてもよい。
【0084】
無機マトリックス形成材料または有機修飾無機マトリックス形成材料は、公知のプロセス、例えば火炎熱分解、プラズマプロセス、気相縮合プロセス、コロイド技術、沈殿プロセス、ゾル−ゲルプロセス、制御式核形成・成長プロセス、MOCVDプロセスおよび(ミクロ)エマルションプロセスによって製造され得る。
【0085】
無機ゾルおよび特に有機修飾ハイブリッド材料は、好ましくはゾル−ゲルプロセスによって得られる。ゾル−ゲルプロセスにおいて、これはまた粒子の分離製造のために使用でき、通常の加水分解性化合物は、水、場合により酸性または塩基性触媒作用で加水分解され、場合により少なくとも部分的に縮合される。加水分解および/または縮合反応は、化合物の形成またはヒドロキシルまたはオキソ基および/もしくはオキソ架橋を有する縮合物の形成を導き、これが前駆体として作用する。化学量論量の水を使用することができるだけでなく、少量または多量の水を使用することもできる。形成するゾルは、好適なパラメータ、例えば縮合度、溶媒またはpHによってコーティング組成物のために所望される粘度に調整できる。ゾル−ゲルプロセスのさらなる詳細は、例えばC.J.Brinker,G.W.Scherer:「Sol−Gel Science−The Physics and Chemistry of Sol−Gel−Processing」,Academic Press,Boston,San Diego,New York,Sydney(1990)に記載されている。
【0086】
好ましいゾル−ゲルプロセスは、上述のガラス形成材料またはセラミック形成元素の加水分解性化合物からの加水分解および/または縮合によって酸化物、加水分解物および/または(重)縮合物を付与し、これは場合により付加的に、有機修飾無機ハイブリッド材料の製造のために非加水分解性有機置換基を保持する。
【0087】
無機ゾルは、特に一般式MXの加水分解性化合物からのゾル−ゲルプロセスによって形成され、式中、Mは、上記で定義されたガラス形成元素またはセラミック形成元素であり、Xは、以下の式(I)にて定義される通りであり、ここで2つのX基は、オキソ基によって交換されてもよく、nは、元素の価数に対応し、通常は3または4である。加水分解性Si化合物、特に以下の式(I)の化合物が好ましい。
【0088】
Si以外の元素Mの有用な加水分解性化合物の例は、Al(OCH、Al(OC、Al(O−n−C、Al(O−i−C、Al(O−n−C、Al(O−sec−C、AlCl、AlCl(OH)、Al(OCOC、TiCl、Ti(OC、Ti(O−n−C、Ti(O−i−C、Ti(OC、Ti(2−エチルヘキソキシ)、ZrCl、Zr(OC、Zr(O−n−C、Ar(O−i−C、Zr(OC、ZrOCl、Zr(2−エチルヘキソキシ)、および錯化基を有するZr化合物、例えばβ−ジケトンおよび(メタ)アクリロイル基、ナトリウムメトキシド、酢酸カリウム、ホウ酸、BCl、B(OCH、B(OC、SnCl、Sn(OCH、Sn(OC、VOClおよびVO(OCHである。
【0089】
好ましいケイ素に関する続いての見解も、他の元素Mについて準用する。より好ましくは、ゾルまたは有機修飾無機ハイブリッド材料は、1つ以上の加水分解性の縮合性シラン、場合により非加水分解性有機基を有する少なくとも1つのシランから得られる。以下の一般式(I)および/または(II)を有する1つ以上のシランを用いることが特に好ましい。
【0090】
【化1】
式中、X基は、同一または異なっており、それぞれ加水分解性基またはヒドロキシル基である。
【0091】
【化2】
式中、Rは、同一または異なっており、場合により官能基を有する非加水分解性基であり、Xは、上記で定義される通りであり、aは、1、2または3、好ましくは1または2の値を有する。
【0092】
上記式において、加水分解性X基は、例えば水素またはハロゲン(F、Cl、BrまたはI)、アルコキシ(好ましくはC1〜6−アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、およびブトキシ)、アリールオキシ(好ましくはC6〜10−アリールオキシ、例えばフェノキシ)、アシルオキシ(好ましくはC1〜6−アシルオキシ、例えばアセトキシまたはプロピオニルオキシ)、アルキルカルボニル(好ましくはC2−7−アルキルカルボニル、例えばアセチル)、アミノ、モノアルキルアミノまたは好ましくは1〜12個、特に1〜6個の炭素原子をアルキル基に有するジアルキルアミノである。
【0093】
非加水分解性R基は、例えばアルキル(好ましくはC1〜6−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチルおよびt−ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはシクロヘキシル)、アルケニル(好ましくはC2〜6−アルケニル、例えばビニル、1−プロペニル、2−プロペニルおよびブテニル)、アルキニル(好ましくはC2〜6−アルキニル、例えばアセチレニルおよびプロパルギル)、およびアリール(好ましくはC6〜10アリール、例えばフェニルおよびナフチル)である。
【0094】
記述されたRおよびX基は、場合により、1つ以上の慣用置換基、例えばハロゲン、エーテル、リン酸、スルホ、シアノ、アミド−、メルカプト、チオエーテルまたはアルコキシ基を官能基として有していてもよい。
【0095】
R基は、架橋が可能である官能基を含有し得る。R基の官能基の具体例は、エポキシ、ヒドロキシル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、アリル、ビニル、アクリロイル、アクリロイルオキシ、メタクリロイル、メタクリロイルオキシ、シアノ、アルデヒドおよびアルキルカルボニル基である。これらの基は、好ましくは、酸素もしくは硫黄原子または−NH−基によって中断され得るアルキレン、アルケニレンまたはアリーレン架橋基を介して、ケイ素原子に結合する。記述された架橋基は、例えば上述のアルキル、アルケニルまたはアリール基に由来する。R基の架橋基は、好ましくは1〜18個、特に1〜8個の炭素原子を含有する。
【0096】
一般式(I)の特に好ましい加水分解性シランは、テトラアルコキシシラン、例えばテトラメトキシシラン、特にテトラエトキシシラン(TEOS)である。酸性触媒作用、例えばTEOS加水分解物によって得られる無機ゾルが特に好ましい。一般式(II)の特に好ましいオルガノシランは、エポキシシラン、例えば3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランおよびアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランであり、GPTS加水分解物が有利に使用可能である。
【0097】
有機修飾無機ハイブリッド材料が調製される場合、式(II)のシラン単独で、または式(I)および(II)のシランの混合物を使用することが可能である。無機ケイ素系ゾルにおいて、式(I)のシラン単独で使用され、場合により、上記式MXの加水分解性化合物の割合の添加を伴う。
【0098】
チタン系ゾルから調製される有機修飾無機ハイブリッド材料が特に好ましい。式(I)および/または(II)のシランを使用することも可能である。
【0099】
無機ゾルが溶媒中に分散した明確な酸化物粒子からなる場合、それらは層の硬度を改善できる。これらの粒子は、特にナノスケールの無機粒子である。粒子サイズ(X線撮影によって決定される体積平均)は、例えば、200nm未満、特に100nm未満、好ましくは50nm未満、例えば1nm〜20nmの範囲である。
【0100】
本発明によれば、例えばSiO、ZrO、GeO、CeO、ZnO、Ta、SnOおよびAl(すべての多形において、特にベーマイトAlO(OH)形態)、好ましくはSiO、Al、ZrO、GeOおよびこれらの混合物の無機ゾルをナノスケール粒子として使用することができる。この種のいくつかのゾルはまた、例えばシリカゾル、例えばBayer AGからのLevasile(登録商標)として市販されている。
【0101】
使用される無機マトリックス形成材料または有機修飾無機マトリックス形成材料はまた、かかるナノスケール粒子と、加水分解物または(重)縮合物の形態で存在する有機修飾ハイブリッド材料または無機ゾルとの組み合わせであってもよく、これをここではナノコンポジットと称する。
【0102】
場合により、あらゆる種類の有機モノマー、オリゴマーまたはポリマーが、有機マトリックス形成材料として存在することもでき、これが軟化剤として作用し、これらは標準の有機結合剤であってもよい。これらは、コーティング性を改善するために使用できる。一般に、それらは、層の完了時に光触媒分解される。オリゴマーおよびポリマーは、架橋が可能な官能基を有していてもよい。この架橋可能性はまた、場合により、上記で詳述された有機修飾無機マトリックス形成材料の場合に可能である。無機、有機修飾無機および/または有機マトリックス形成材料の混合物も可能である。
【0103】
使用可能な有機マトリックス形成材料の例は、極性基、例えばヒドロキシル、一級、二級または三級アミノ、カルボキシルまたはカルボキシレート基を有するポリマーおよび/またはオリゴマーである。典型的な例は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピリジン、ポリアリルアミン、ポリアクリル酸、ポリビニルアセテート、ポリメチルメタクリル酸、デンプン、アラビアガム、他のポリマー性アルコール、例えばポリエチレン−ポリビニルアルコールコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリ(4−ビニルフェノール)、またはそれらから誘導されるモノマーもしくはオリゴマーである。
【0104】
既に上述したように、感受性材料からなるまたはかかる感受性材料の表面層(例えばペイントまたはエナメル層)を有する基板の場合、直接適用は、そうであったとしても困難であり得る。バリア層は、基板(場合により表面コーティングを有する)と光触媒層との間に配置されてもよい。この目的で、無機マトリックス形成材料の無機層が使用されてもよい。この目的で、上述の無機ゾルが使用されてもよい。
【0105】
光触媒層中の光触媒活性ナノロッドまたはナノ粒子の濃度勾配を形成することによって、「組み込まれた」バリア層を有する光触媒層を製造することもできる。これは、例えば疎水性基、特にフッ素化有機基または有機アルキル基による光触媒活性物質の表面修飾によって達成できる。表面修飾のためのプロセスは、当業者に既知である。
【0106】
マトリックス形成材料はまた、二酸化チタンを、例えば非晶質TiO、TiOナノ粒子またはTiOナノロッドとして追加的に含んでいてもよい。これらの成分は、開始剤組成物の調製の際に、マトリックス形成材料の組成物に基づいて、10重量%〜80重量%、好ましくは25重量%〜65重量%の割合で存在してもよい。
【0107】
マトリックス形成成分として上述した化合物はまた、有機−無機コーティングの適用および硬化時に基板の前処理のために使用できる。ゾルを使用するか、または加水分解性金属化合物の溶液を提供することのいずれかが可能である。
【0108】
式IIのシランの溶液を適用することが好ましい。Rが架橋可能な官能基を含有する式IIのシランが特に好ましい。R基の官能基の具体例は、エポキシ、ヒドロキシル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、アリル、ビニル、アクリロイル、アクリロイルオキシ、メタクリロイル、メタクリロイルオキシ、シアノ、アルデヒドおよびアルキルカルボニル基である。これらの基は、好ましくは、酸素もしくは硫黄原子または−NH−基によって中断され得るアルキレン、アルケニレンまたはアリーレン架橋基を介して、ケイ素原子に結合する。記述された架橋基は、例えば上述のアルキル、アルケニルまたはアリール基に由来する。R基の架橋基は、好ましくは1〜18個、特に1〜8個の炭素原子を含有する。
【0109】
特に好ましいオルガノシランは、エポキシシラン、例えば3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTS)およびアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランである。
【0110】
適用後、層は乾燥され、それらの官能基に従って架橋される。これは、架橋開始剤の添加を伴い得る。
【0111】
プロセスの後、さらなる層がまた、例えば基板のコーティングされた表面をUV放射線に対して保護するために、適用されてもよい。
【0112】
本発明に従うプロセスの特定の利点は、使用される組成物が単純な様式において基板に適用される。光触媒活性物質を有する開始剤層は、わずかな工程だけで特に微細な構造の製造を可能にする。この目的で、すべて公知の印刷プロセス、例えばインクジェット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷またはレリーフ印刷およびフレキソ印刷が使用される。多くの場合、電気機能性の印刷に関して、上述の印刷プロセスの組み合わせプリントも使用される。例えばそれらの表面エネルギーを適合させることによって、使用される印刷プレートまたはローラーまたはスタンプを組成物の特性に適合させることが必要な場合がある。
【0113】
構造化によって適用される構造において、実際には制限はない。例えば、コンダクタトラックなどの接続された構造を適用できる。加えて、ポイント構造も適用できる。良好な解像度のため、フィルムに対して目に見えない導電性ドットを適用することも、プロセスによって可能である。これは、タッチスクリーンのための表面の製造に非常に重要である。
【0114】
構造テンプレートの適用による構造化は、慣用の印刷プロセスに組み込まれることさえも可能であり、構造テンプレートがプリント原本を置き換える。
【0115】
本発明はまた、本発明に従ったプロセスによって得られるコーティングされた基板に関する。かかる基板は、光触媒活性ナノロッドを含む開始剤層を特徴とする。この層は、50nm〜200μmの厚さを有する。好ましい層の厚さは、100nm〜1μm、好ましくは50nm〜700nmである。層の厚さはまた、20〜70μmであってもよい。層はまた、プロセスに関して既に記載されているように、マトリックス材料を含んでいてもよい。有機修飾無機マトリックス材料が好ましい。
【0116】
この層において、少なくとも開始剤層、金属層の表面の領域に適用される。この層は200nm以内に限る。好ましい層厚は、20〜100nm、好ましくは50nm〜100nmである。金属として、特に銅、銀、金、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、タングステン、白金またはパラジウムが考慮され、銀または金が好ましい。
【0117】
本発明の発展において、金属層は、50μm、好ましくは10μm未満の寸法を有する構造要素による構造化を、開始剤層上に有する。
【0118】
本発明の特に有利な発展において、コーティングされた基板は、少なくとも部分的に透明である金属構造を有する。これは、例えば20μm未満、好ましくは10μm未満の解像度を有する構造の透明基板への適用によって達成できる。それらはまた、5μm未満またはさらには1μmの解像度を有する構造であってもよい。「解像度」は、構造が、記述される解像度未満の最小寸法を有する構造を有することを意味する。これらは、金属化された領域または金属化されていない領域であってもよい。
【0119】
本発明に従うプロセスによって得られるコーティングされた基板は、多くの用途に使用できる。まず、このプロセスは、反射性金属層の表面への適用に好適である。これらは、例えばホログラフ用途の反射層として使用できる。
【0120】
本発明の特定の利点は、導電性構造の製造にある。これらは、電子用途におけるコンダクタトラックとして、タッチスクリーンディスプレイ、ソーラーコレクタ、ディスプレイにおいて、REIDアンテナとしてまたはトランジスタにおいて好適である。そのため、それらは、これまでITO(インジウムスズ酸化物)に基づいて製造されていた製品における、例えばTCOコーティング(TCO:透明導電性酸化物)における置換物として好適である。
【0121】
しかし、構造はまた、トランジスタセクタにおいても使用できる。
【0122】
さらなる詳細および特徴は、従属請求項に関連して続く好ましい実施例の説明から明らかである。ここでは、特定の特徴が、単独で実施できる、またはいくつかを互いに組み合わせて実施できる。問題を解決する手段は、実施例に制限されない。例えば、記述された範囲は、すべての特定されていない中間値およびすべての考えられ得る成分間隔を常に含む。
【図面の簡単な説明】
【0123】
図1】TiOのナノロッドのTEM画像。
図2】ナノロッドの電子回折図形。
図3A】本発明に従ったプロセスの1つの実施形態の概略図である(30:構造テンプレート;32:前駆体組成物;34:開始剤層;36:基板;38UV光)。
図3B】市販のニッケルマスターからの型穴操作によって製造され、使用されたPDMSスタンプテンプレートの画像である。
図3C図3Bに示されるPDMSスタンプの表面構造の光学顕微鏡写真である。
図4】製造された金属構造の光学顕微鏡写真(反射された光画像)である。明るい色の領域が銀堆積物である。
図5】製造された金属構造の光学顕微鏡写真(透過光画像)である。暗色の領域が銀堆積物である。
図6】製造された金属構造にレーザー放射線を通過させることを含む、干渉パターンを実証するための実験設定の写真である。
図7】TiOナノロッドを用いて製造される線状金属堆積物の光学顕微鏡写真(透過光画像)である。暗色領域は銀堆積物を示す。目盛りは、10μmに相当する。
図8】TiOナノロッドを用いて製造される構造化された金属堆積物の光学顕微鏡写真(透過光画像)である。暗色領域は銀堆積物を示す。目盛りは、10μmに相当する。
【発明を実施するための形態】
【0124】
図1は、TiOの本発明のナノロッドのTEM画像(透過型電子顕微鏡)を示す。それらの伸長は明らかに明白である。
【0125】
図2は、TiOのナノロッドの回折図形を示す。反射は、ナノロッドの結晶性構造を示す。
【0126】
図3Aは、本発明に従うプロセスの一実施形態の概略図を示す。基板(36)を、光触媒活性開始剤層(34)でコーティングする。この層に、前駆体組成物(32)の層を適用する。このようにコーティングされた基板に、構造テンプレート(30)を適用し、この構造テンプレート(30)が、開始剤層(34)と少なくとも部分的に接触する。これにより、結果として、これらの部位にて前駆体組成物の置き換えが生じる。前駆体化合物(32)は、開始剤層(34)と接触していない構造テンプレート(30)のくぼみと置き換わる。次いで、露光を構造テンプレートを通してUV光(38)で行う。これにより、前駆体化合物が還元され、前駆体組成物が置き換えられていない部位にて金属層を堆積させる。
【0127】
図3Bは、ニッケルマスターからの型穴操作を介して製造された実施例に使用されるPDMSスタンプを示す。かかるスタンプの製造は、当業者の専門的な知識の一部である。
【0128】
図3Cは、図3Bに示されるスタンプの表面構造の光学顕微鏡写真を示す。スタンプは、正六角形パターンにて円筒状の隆起を有する。故にこの構造テンプレートを用いて製造された金属構造は、円形のコーティングされていない領域の規則的な配置を示す。
【0129】
図4は、本発明に従うプロセスによって製造される金属構造の光学顕微鏡写真を示す。金属構造の堆積物の鮮明な区切られた領域は、明らかに明白である。金属構造の鮮明さはまた、10μm未満の構造化を有する示された構造よりも、かなり微細な構造がプロセスによって可能となることも示す。
【0130】
図5は、本発明に従うプロセスによって製造される金属構造の光学顕微鏡写真を示す。図4とは対照的に、円形ピンプルを有する構造テンプレートを使用したが、画像上に金属化されていない円として現れる。この種の構造テンプレートであっても、高い解像度を達成できる。
【0131】
図6は、透明な本発明の金属構造の干渉を示す実験設定を示す。これは、本発明に従って構造化された基板を通した、レーザーを用いた露光を含む。表面上の均一な構造は、特定の距離にて設定された表面上で目に見える干渉現象をもたらす。同心円が明らかに明白である。これは、写真で同心円を目に見えるようにするために、そこに置かれたフィルタによって表面上でレーザー光スポットを弱めることを伴っていた。この実験設定は、まず、得られたコーティングの透明性を示し、同様に規則的な構造テンプレートを使用する場合に、高い画像形成正確度を示す。非常に高い画像形成正確度の場合にのみ干渉がある。
【0132】
図7は、対応するスタンプを用いて製造された線状金属構造の光学顕微鏡写真を示す。
【0133】
図8は、図5と同様の円形パターンを有する金属構造を示す。
【0134】
記載される実施例の多数の変更および発展が実施可能である。
【実施例】
【0135】
(1)使用した基板
使用した基板は、種々のフィルムおよびガラスであった。例えば、使用したフィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリイミドフィルム、ポリカーボネート基板およびPMMA基板であったが、使用したガラスはソーダ石灰ガラスまたはホウケイ酸塩ガラスであった。基板のサイズは5cm×5cm〜10cm×10cmで変動した。基板の厚さは、0.075mm〜5mmで変動した。
【0136】
(2)ナノロッドの製造
Jia,Huimin et al.,materials Research Bulletin,2009,44,1312−1316,「Nonaqueous sol−gel synthesis and growth mechanism of single crystalline TiOnanorods with high photocatalytic activity」から採用した方法。
【0137】
240mlのベンジルアルコールを、スターラーフレアを有する500mlのSchott瓶に最初に投入した。続いて、すべて(ベンジルアルコール、シリンジ、四塩化チタン)を、アルゴン下でグローブバッグに導入し、ベンジルアルコール瓶を開放し、バッグを激しく撹拌しながらアルゴンで2回フラッシングした(=Arで満たし、部分的に空にし、再び満たした)。20mlのシリンジおよび長いカニューラによって、12mlのTiClを引き抜き、カニューラをシリンジから除去し、TiClを激しく撹拌しながらベンジルアルコールに滴下した。
【0138】
添加したTiClのすべての液滴が、クラックまたはバンのようなノイズを生じ、多量の煙の発生が観察された。同時に、溶液は濃い赤色になり、熱くなった。添加完了時、溶液は、濃い橙黄色であり、赤色凝集体が形成された。混合物をAr雰囲気下、蓋を開けてさらに約1時間撹拌し続け、次いでグローブバッグから取り出した。溶液は濃い黄色であり、いくつかの、小さく幾分粘性のある白色/黄色凝集体を有した。
【0139】
次いで、ドラフトチャンバ下、混合物を開放させたままさらに約1時間撹拌した後、より粘性のある塊を伴わずに2つのTeflon容器(それぞれ約130g)に分割し、オートクレーブした(ブロックAの加圧温浸;時間2×23時間59分;温度:80℃)。
【0140】
両方のTeflon容器の上澄みをピペットにより除去し、ゲル様白色沈殿物をスラリー化し、遠心分離管に導入し、遠心分離した(15分、2000RCFにて;RTにて;制動力:0)。遠心分離物をデカントし、クロロホルムを残渣に添加した。混合物を一晩放置した。
【0141】
遠心分離管を、クロロホルムを用いて対で釣り合わせ、より大きな凝集体がもはや観察不可能となるまで適切に振とうし、遠心分離した(15分;3000RCF;RT;制動力:0)。遠心分離物を再びデカントし、クロロホルムを残渣に添加した。その後の、さらなる手順は上述の通りであった(一晩放置はしなかった)。全体として、粒子をクロロホルムで3回洗浄した。
【0142】
最後のデカント操作後、遠心分離管を開放し、ドラフトチャンバ下で一晩放置し、次の朝、乾燥したナノロッドをスナップ蓋付き瓶に移した。
【0143】
(3)銀錯体溶液の調製
0.1284g(1.06mmol)のTRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)を0.5g(27.75mmol)の脱イオンHOおよび0.5g(10.85mmol)のEtOHに溶解させた。--加えて、0.0845g(0.5mmol)のAgNOを0.5g(27.75mmol)の脱イオンHOおよび0.5g(10.85mmol)のEtOHに溶解させた。AgNO溶液を撹拌しながら第1の溶液に添加した。形成された金属錯体の溶液は無色透明であった。溶液はまた、純粋な脱イオン水において調製することもできる。
【0144】
(4)TiO粒子(lyo−TiO)のリオサーマル合成
48.53gのTi(O−i−Pr)を52.73gの1−PrOH(n−プロパノール)に添加した。この溶液に、塩酸(37%,3.34g)溶液および10.00gの1−PrOHをゆっくりと滴下した。次いでこの溶液に、4.02gのHOおよび20.00gの1−PrOHの混合物を滴下した。得られた溶液は淡黄色である場合があり、圧力熟成容器(約130g)に移した。この容器に、溶液を210℃で2.5時間処理した。
【0145】
混合物をデカントし、得られた粒子をフラスコに移し、溶媒を40℃で減圧下、回転蒸発器にて除去した。
【0146】
さらなる使用のために、得られた粒子を水中に懸濁させた。
【0147】
(5)一般的使用
続く工程を各サンプルについて行った。基板をエタノール、プロパノールおよび柔らかいティッシュで予め清浄した。種々の懸濁液を、フローコーティングまたはナイフコーティングのいずれかによって適用した。得られたTiO層を100℃〜150℃、特に120℃または140℃の温度にてオーブン中で5〜30分間乾燥した。その後、基板を脱イオン水ですすぎ、残渣を除去し、圧縮空気で乾燥した。
【0148】
その後、銀錯体の溶液を適用した。通常はPDMSスタンプである構造テンプレートを表面に適用し、UV放射線で照射した。その後、過剰の銀錯体を、脱イオン水ですすぐことによって除去し、コーティングされた基板を圧縮空気で乾燥させた。使用した光源は、水銀−キセノンランプ(LOT−Orielソーラシミュレータ、1000W,10cm×10cmの領域に集光)であった。ランプの強度は、「UV−Integrator」デジタル測定機器(BELTRON)を用いて測定し、250〜410nmのスペクトル範囲内において55mW/cmであった。
【0149】
(6)TiOナノロッドのHO/EtOH懸濁液
まず、TiOナノロッドを脱イオン水に懸濁させた。その後、適切な量のエタノールを添加した。すべての懸濁液において、懸濁液中のHOとEtOHとの比は、HO:EtOH→20:80(重量%)または10:90(重量%)であった。TiO層の製造のために、次の懸濁液を調製した:
−HO/EtOH中の1.5重量%のTiOナノロッド
(7)TiO層の多孔質SiO層への適用
TiOナノロッドの懸濁液を、ガラス上の多孔質SiO層へのフローコーティングによって適用した。この目的で、標準SiOゾルを使用した。
【0150】
(8)構造テンプレートの製造
ニッケルマスターの鋳造物としてのエンボス加工スタンプの製造
以下は、ニッケルマスターの鋳造物としてのPDMS(シリコーンゴム)から製造したエンボス加工スタンプの製造の説明である。
【0151】
1.ニッケルマスターおよび鋳造金型の説明
ニッケルマスターは、電気メッキによって製造されるニッケル箔であり、100mm×100mmの寸法を有し、これにミクロ構造(直径5μm、高さ10μm、および分離5μmを有する規則的な配置の円筒状くぼみ)を適用した。このニッケル箔を、アルミニウムまたは同様の材料から製造された鋳造金型のベースに付着させ、または強磁性接着性フィルムによって載置する。ここで、ニッケルマスターは、あらゆるむらが後のスタンプに反映されるので、完全に平坦な状態で適用するべきであることに留意すべきである。
【0152】
加えて、鋳造金型は、後のエンボス加工スタンプが均一な厚さを有するために、実質的に非常に水平な位置に置かれなければならない。
【0153】
2.シリコーンゴムおよび金型鋳造の混合
PDMS(例えば、Dow CorningからのSylgard184)の2つの成分を、適切な比(例えば10:1)で組み合わせ、2つの成分を撹拌によって混合する。製作されるべき量は、エンボス加工スタンプの所望の厚さによって導かれる(典型的なスタンプの厚さ:2〜4mm)。混合容器は、後続の脱気操作においてオーバーフローを防止するために、混合物の体積の3倍であるべきである。
【0154】
撹拌中に混合される気泡を除去するために、混合物を真空乾燥キャビネット(室温にて)に導入し、すべての気泡が除去されるまでエバキュエートする。
【0155】
脱気されたPDMS混合物を、次いで鋳造金型に導入し、混合物を硬化させる。多くの場合、鋳造金型の温度制御によって硬化を加速することが妥当である。典型的には、鋳造金型の70℃までの1時間にわたる加熱は、PDMSの完全な硬化を導く。
【0156】
3.離型操作
PDMSスタンプの離型を、外周全体にわたって鋳造金型の垂直壁からPDMSを切除するためにメスまたは別の鋭利な刃物を用いることによって達成し、次いでそれを平坦で鈍いツール(例えばフラットスパチュラ)を用いて縁部から持ち上げ、次いでニッケルマスターから注意深く取り外す。
【0157】
縁部の不規則部位を、次いで鋭利な刃物(例えばカーペットナイフ)を用いて切除することができる。
【0158】
スタンプ材料としてPDMSを使用する理由は、UV光に対するこの材料の透明性であり、これを光化学的に実施される金属化に使用される。この文脈において、好適なスタンプ材料はまた、UV透明性の要求およびニッケルマスターの鋳造物としてのエンボス加工スタンプの製造の上述の例のポイント3に従う離型性の要求を満たすいずれかの他の材料でもある。
【0159】
(9)銀ミクロ構造の製造
基板(例えば、ガラス、PMMA、PET、PVC、PSなど)を、TiOナノロッドでコーティングした。透明コーティングを得た。その後、コーティングされた表面を、銀錯体を有する溶液で湿潤させた。PDMSスタンプ(ポリメチルジシロキサン)を基板に加圧した。この過程において、光触媒層と接触するスタンプおよびポイントの隆起は、これらのポイントにおける銀錯体を有する溶液と置き換わる。次いで基板を透明スタンプを通してUV光(例えばLOT−Orielソーラーシュミレータ、1000WのHg(Xe)光源,10×10cmの領域に集光)を用いて20秒から2分間照射した。スタンプを取り除き、過剰の銀錯体を洗浄によって除去した。その後、基板を乾燥した。例えば50℃〜200℃の温度で熱後処理を行うこともできる。-場合により、さらなる保護層を適用し、積層させた。この操作により、1μmまでの解像度を有する構造を得る。
【0160】
図に示される金属構造について、ナノロッドのTiO層を、約60nmの厚さで結合剤システムを用いずに懸濁液として適用し、銀錯体の溶液を適用した。適切な形状を有するPDMSスタンプの適用の後、20秒〜60秒間の露光を続けた。スタンプは<10μmの構造深さを有していたが、この場合それは、露光の間に銀錯体の溶液の層の厚さにおおまかに対応する。
【0161】
プロセスは、2つのコーティング組成物のみを用いて単純な様式にて金属構造の製造を可能にする。
【0162】
(10)PDMSスタンプを有する金属構造の製造
1.
(5)に従って開始剤コーティングされた基板を、露光ユニットの下に置き、実施例(5)に記載されるような前駆体組成物の懸濁液を用いて湿潤させる(オーバーコーティングする)。
【0163】
2.
次いで、(8)に記載されるように製造されたPDMSエンボス加工スタンプを一方の側に45°の角度で湿潤した基板に向かって移動させ、基板上に完全に平らになるまで徐々に配置する。これは、構造化された金属化合物の質に悪影響を与え得る、起こり得る空気の包含を防止することに役立つ。
【0164】
3.
次いで、エンボス加工スタンプを、開始剤層の後の露光のためのビーム経路が妨げられないままであるような方法で全領域にわたって加重して下げる。これは、UV透明石英ガラスシートを全領域にわたってそれらの上に置くことによって達成され、この寸法は、エンボス加工スタンプよりも大きい。この上に、PDMSスタンプを通るビーム経路を妨害しないようにし、石英ガラスシートに、ひいては同様にスタンプに単に重さにより沈下させるように作用するいずれかの材料で構成されたフレームを置く。このプロセスの目的は、構造化されたスタンプの隆起領域下に前駆体組成物の懸濁液を、これと開始剤層でコーティングされた基板との間で完全に置き換えることである。このために必要とされる最小圧力は、構造タイプおよびスタンプサイズに依存し、使用されるスタンプ毎に実験的に決定する。金属化の結果の質に悪影響を与えずに働かせ得る最大圧力は、まず最初に同様に実験的に決定される。これは、構造タイプおよびサイズだけでなく、スタンプ材料の変形性の結果として構造のアスペクト比にも依存する。適用の文脈において、金属化の結果の悪影響は、スタンプの可塑性変形から生じる金属構造の低減した解像度または変更された形状であり、あるいは他にはエンボス加工スタンプの非隆起領域(裂け目に等しい)からの前駆体組成物の懸濁液の置き換えから生じる金属層の得られた厚さが薄いことである。
【0165】
4.
次いで、開始剤を、(5)に記載されているように、UV透明石英ガラス層、UV透明エンボス加工スタンプおよび前駆体組成物のUV透明懸濁液を通して照射する。
【0166】
5.
十分な照射時間後、光源のビーム経路をシャッタにより遮断し、同時にまたは引き続いて加重フレーム、石英ガラスシートおよびエンボス加工スタンプを基板から取り除き、これを(9)に記載されているようにすすぎ、乾燥し、場合により(9)に記載されているように熱後処理する。
【0167】
6.
本実施例1のポイント1の代わりに、スタンプを、湿潤していない場合を除き、本実施例のポイント2に記載されているようにまず基板に適用することもでき、ポイント3に記載されているように加重することができる。続いて、前駆体組成物の懸濁液を、毛細管力のためにスタンプと基板との間の裂け目が完全に同じ懸濁液で満たされ、空気がそこから除去されるまで、スタンプの縁部にて任意の数の部位にて基板に適用する。この目的で、スタンプ、石英ガラスおよびフレームと共に基板を傾斜させることが必要または有利である場合がある。
【0168】
その後、さらなる手順は、本実施例のポイント4および5に従う。
参照番号
30 構造テンプレート
32 前駆体組成物
34 開始剤層
36 基板
38 UV光

引用文献
【0169】
【表1】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8