(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
特許文献2〜5に記載の走査型内視鏡システムについて詳述すると、該システムは、各圧電アクチュエータに所定の周期及び振幅の電圧を印加することで光ファイバを所定の方向に屈曲させ、光ファイバによって導光される連続光を観察部位に対して渦巻状に走査させる。そして、該システムは、走査領域(観察部位)からの反射光を所定周期のタイミング(以下、「サンプリング点」という。)で受光して画像化し、二次元の内視鏡画像を表示する。
【0006】
図9は、従来の走査型内視鏡システムにおける、光の走査軌跡とサンプリング点との関係を示す模式図である。
図9に示すように、従来の走査型内視鏡システムにおいては、走査領域の中心部分から周辺部分に向かって連続光を渦巻き状に走査する構成を採っている。ここで、走査領域の中心部分と周辺部分とでは光の走査速度が異なるため、走査領域の中心部分ではサンプリング点が集中しているのが判る。すなわち、走査領域の中心部分と周辺部分とでは、走査領域(観察部位)の単位面積当たりの光量(照射エネルギー)が大きく異なる。そのため、内視鏡画像の明るさが中心部分と周辺部分とで落差の大きいものとなるだけでなく、例えば、走査領域の周辺部分の明るさを確保するためにレーザ強度を上げた結果、走査領域の中心部分に位置する患部に必要以上のレーザ光が照射される虞がある。
【0007】
また、このような構成の走査型内視鏡システムを特許文献1に記載されているような、生体組織からの蛍光を利用する走査型共焦点内視鏡システムに適用すると、単位面積当たりの照射エネルギーが高い走査領域の中心部分で蛍光体の分解がより速く進行してしまう。その結果、走査領域の中心部分が周辺部分に比べて暗い画像となり(褪色し)、一様な明るさの内視鏡画像を得ることができないといった問題が生じる。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上述した問題の発生を抑えるべく、走査領域内における単位面積当たりの照射エネルギーのバラツキを抑えることが可能な走査型内視鏡システムを提供することである。
【0009】
本発明の一形態に係る走査型内視鏡システムは、所定の光源より供給される照射光を射出端まで導光し、該射出端から被写体に射出する第一の光ファイバと、第一の光ファイバの射出端から射出される照射光が第一の光ファイバの長手方向に延びる軸を中心とした略円形の走査領域内で中心部から周辺部に向って一定の回転周期で渦巻状に回転走査するように、第一の光ファイバの射出端を渦巻状に回転駆動させる光ファイバ走査手段と、照射光のオン/オフを制御する光源制御手段と、照射光により照射された被写体より戻される戻り光を受光し、所定の検出タイミングで画像信号を検出する画像信号検出手段と、検出された画像信号を用いて共焦点画像を生成する画像生成手段とを備え、光源制御手段は、照射光が走査領域内の中心部を走査するときに、照射光を所定のパルス幅を有する駆動パルスでパルス状に発光させ、照射光が走査領域内の周辺部を走査するときに、照射光を連続的に発光させることを特徴とする。
【0010】
このような構成により、従来照射エネルギーの高かった走査領域内の中心部分において照射光の照射エネルギーが減少するため、例えば走査領域の中心部分における褪色の進行を抑えることができ、また、走査領域の中心部分に位置する患部に必要以上のレーザ光が照射されるという問題を避けることができる。また、走査領域内において単位面積当たりの照射エネルギーのバラツキが抑えられ、走査領域の中心部分から周辺部分にかけて略一様な明るさの画像を得ることが可能となる。
【0011】
また、画像生成手段は、画像信号の検出タイミングに応じた二次元の画素位置を割り当て、該割り当てた画素位置に該画像信号を配列して画像を生成する構成としてもよい。また、光源制御手段は、連続する複数の画像信号の検出タイミングが同一の二次元の画素位置に割り当てられる場合に、該連続する複数の画像信号の検出タイミングの何れか1つを基準タイミングとして、該基準タイミングに基づいて駆動パルスを生成する構成としてもよい。このような構成によれば、画像信号の検出タイミングと同期のとれた駆動パルスを容易に生成することが可能となる。
【0012】
また、光源制御手段は、基準タイミングに先立って駆動パルスを発生させる構成とすることが好ましい。
【0013】
また、光源制御手段は、基準タイミングを含むように駆動パルスを生成することが好ましい。このような構成によれば、例えばパルス状の励起光によって被写体から発せられた蛍光や、被写体に照射されたパルス状の光の反射光を基準タイミングで確実に検出することが可能となる。
【0014】
また、光源制御手段は、ユーザからの入力を受け付ける第1の入力手段を備え、第1の入力手段が受け付けたユーザ入力に応じて、駆動パルスの発生タイミングと基準タイミングとの間の時間を調整するように構成することができる。このような構成によれば、照射光を照射し始めるタイミングを任意に調整することが可能となるため、例えばシステム構成や蛍光試薬の変更によって、信号の遅延時間や蛍光試薬の反応時間に変化が生じた場合であっても、パルス状の励起光によって被写体から発せられた蛍光や、被写体に照射されたパルス状の光の反射光を基準タイミングで確実に検出することが可能となる。
【0015】
また、画像信号の検出タイミングは、一定の周期であり、駆動パルスのパルス幅は、該画像信号の検出タイミングの周期よりも長いことが好ましい。このような構成によれば、被写体を十分に照射することが可能となるため、十分な光量の蛍光や反射光を得ることが可能となる。また、システムに起因する遅延時間等にバラツキがあるような場合であっても蛍光や反射光を確実に検出することが可能となる。
【0016】
また、光源制御手段は、ユーザからの入力を受け付ける第2の入力手段を備え、第2の入力手段が受け付けたユーザ入力に応じて、駆動パルスのパルス幅を調整する構成としてもよい。このような構成によれば、蛍光試薬の反応時間に応じて駆動パルスのパルス幅を調整することができるため、蛍光試薬の種類や被写体によって蛍光試薬の反応時間が変化するような場合であっても、被写体を十分に励起することができ、十分な光量の蛍光を得ることが可能となる。また、システムに起因する遅延時間等にバラツキがあるような場合であっても蛍光や反射光を確実に検出することが可能となる。
【0017】
また、走査領域内の中心部の直径は、走査領域の直径の略1/3以下であることが好ましい。
【0018】
また、光ファイバ走査手段は、第一の光ファイバの射出端を渦巻状に回転駆動させた後、所定の期間、第一の光ファイバの射出端の回転駆動を停止する構成としてもよい。この場合、光源制御手段は、所定の期間、照射光の発光を停止させる構成とすることが好ましい。このような構成によれば、不必要な励起光による褪色の進行を抑えることができ、また、患部に対する不要なレーザ光照射を抑えることができる。
【0019】
照射光は、例えば励起光である。画像信号検出手段は、励起光により励起された被写体から発生する蛍光を、励起光の集光点と共役の位置に配置された共焦点ピンホールを介して受光し、所定の検出タイミングで画像信号を検出する構成としてもよい。共焦点ピンホールは、例えば、励起光の集光点と共役の位置に配置された、第一の光ファイバの射出端である。
【0020】
照射光は、可視領域の波長を含む光であってもよい。画像信号検出手段は、可視領域の波長を含む光により照射された被写体からの反射光を受光し、所定の検出タイミングで画像信号を検出する構成としてもよい。可視領域の波長を含む光の一例は、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の各波長を含む光である。この場合、画像信号検出手段は、被写体からの反射光より、R、G、Bの各波長の光を分離して受光し、所定の検出タイミングで画像信号を検出するように構成される。
【0021】
また、画像信号検出手段は、被写体からの反射光が入射される第二の光ファイバと、第二の光ファイバに入射された反射光であって、R、G、Bの各波長の光に異なる光路差が付与されるように、第二の光ファイバの導光路中の異なる位置に配置された、R、G、Bの各波長に対応する波長選択手段と、波長選択手段により異なる光路差が付与されたR、G、Bの各波長の光を所定の時間差で受光する受光手段とを備え、所定の時間差で受光されたR、G、Bの各波長の光から所定の検出タイミングで画像信号を検出する構成としてもよい。
【0022】
本発明の一形態によれば、走査領域内における単位面積当たりの照射エネルギーのバラツキを抑えつつ、走査領域の中心部分における褪色の進行を抑えることができ、また、走査領域の中心部分の患部に対する必要以上のレーザ光照射を抑えることが可能な走査型内視鏡システムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の走査型内視鏡システムについて説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態の走査型共焦点内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。本実施形態の走査型共焦点内視鏡システム1は、共焦点顕微鏡の原理を応用して設計されたシステムであり、高倍率かつ高解像度の被写体を観察するのに好適に構成されている。
図1に示されるように、走査型共焦点内視鏡システム1は、システム本体100、共焦点プローブ200、モニタ300、キャリブレーションユニット400を有している。走査型共焦点内視鏡システム1を用いた共焦点観察は、可撓性を有する管状の共焦点プローブ200の先端面を被写体に当て付けた状態で行われる。
【0026】
システム本体100は、光源102、光分波合波器(フォトカップラ)104、ダンパ106、CPU108、CPUメモリ110、光ファイバ112、受光器114、映像信号処理回路116、画像メモリ118、リマップテーブル用メモリ119、映像信号出力回路120、レーザ制御回路122、操作パネル124、A/D130を有している。共焦点プローブ200は、光ファイバ202、共焦点光学ユニット204、サブCPU206、サブメモリ208、走査ドライバ210を有している。
【0027】
光源102は、CPU108の指示によるレーザ制御回路122の駆動制御に従い、患者の体腔内に投与された薬剤に含有されている蛍光物質を励起する励起光(例えば、波長488nmのレーザ光)を射出する。励起光は、光分波合波器104に入射する。光分波合波器104のポートの一つには、光コネクタ152が結合している。光分波合波器104の不要ポートには、光源102から射出された励起光を無反射終端するダンパ106が結合している。前者のポートに入射した励起光は、光コネクタ152を通過して共焦点プローブ200内に配置された光学系に入射する。
【0028】
光ファイバ202の基端は、光コネクタ152を通じて光分波合波器104と結合している。光ファイバ202の先端部分は、共焦点プローブ200の先端部に組み込まれた共焦点光学ユニット204内に収められている。光分波合波器104を射出した励起光は、光コネクタ152を通過して光ファイバ202の基端(システム本体100側の端部)に入射後、光ファイバ202を伝送して光ファイバ202の先端(共焦点プローブ200の先端側の端部)から射出される。
【0029】
図2(a)は、共焦点光学ユニット204の内部構成を概略的に示す図である。以下、共焦点光学ユニット204を説明する便宜上、共焦点光学ユニット204の長手方向をZ方向と定義し、Z方向に直交しかつ互いに直交する二方向をX方向、Y方向と定義する。
図2(a)に示されるように、共焦点光学ユニット204は、各種構成部品を収容する金属製の外筒204Aを有している。外筒204Aは、外筒204Aの内壁面形状に対応する外壁面形状を持つ内筒204Bを同軸(Z方向)にスライド可能に保持している。光ファイバ202の先端202aは、外筒204A、内筒204Bの各基端面に形成された開口を通じて内筒204Bに収容された状態で不図示の保持部材により支持されている。先端202aは、走査型共焦点内視鏡システム1の二次的な点光源として機能する。点光源である先端202aの位置は、CPU108による制御に基づいて周期的に変化する。なお、
図2(a)中、中心軸AXは、共焦点光学ユニット204の中心軸を示す。光ファイバ202が初期位置にあるときは(光ファイバ202が振動されていない状態では)、中心軸AXと光ファイバ202の軸心とが一致する。
【0030】
サブメモリ208は、共焦点プローブ200の識別情報や各種プロパティ等のプローブ情報を格納している。サブCPU206は、システム起動時にサブメモリ208からプローブ情報を読み出して、共焦点プローブ200をシステム本体100に電気的に接続する電気コネクタ154を介してCPU108に送信する。CPU108は、送信されたプローブ情報をCPUメモリ110に格納する。CPU108は、格納したプローブ情報を必要時に読み出して共焦点プローブ200の制御に必要な信号を生成して、サブCPU206に送信する。サブCPU206は、CPU108から送信された制御信号に従って走査ドライバ210に必要な設定値を指定する。
【0031】
先端202a付近の光ファイバ202の外周面には、二軸アクチュエータ204Cが接着固定されている。
図2(b)は、二軸アクチュエータ204Cの構成を概略的に示す図である。
図2(b)に示されるように、二軸アクチュエータ204Cは、走査ドライバ210と接続された一対のX軸用電極(図中「X」、「X’」)及びY軸用電極(図中「Y」、「Y’」)を圧電体上に形成した圧電アクチュエータである。
【0032】
走査ドライバ210は、サブCPU206により指定される設定値に基づいてドライブ信号を生成し、生成されたドライブ信号によって二軸アクチュエータ204Cを駆動制御する。より詳細には、走査ドライバ210は、交流電圧Xを二軸アクチュエータ204CのX軸用電極間に印加して圧電体をX方向に共振させると共に、交流電圧Xと同一周波数であって位相が直交する交流電圧YをY軸用電極間に印加して圧電体をY方向に共振させる。交流電圧X、Yは夫々、振幅が時間に比例して線形に増加して、時間(X)、(Y)かけて実効値(X)、(Y)に達する電圧として定義される。光ファイバ202の先端202aは、二軸アクチュエータ204CによるX方向、Y方向への運動エネルギーが合成されることにより、X−Y平面に近似する面(以下、「XY近似面」と記す。)上において中心軸AXを中心に渦巻状のパターンを描くように移動する。先端202aの回転軌跡は、印加電圧に比例して大きくなり、実効値(X)、(Y)の交流電圧が印加された時点で最も大きい径を有する円の軌跡を描く。
図3に、XY近似面上の先端202aの回転軌跡を示す。
【0033】
光源102から射出される励起光は、二軸アクチュエータ204Cへの交流電圧の印加開始直後から印加停止までの期間中、レーザ制御回路122から光源102に供給されるレーザ駆動信号に従って、光ファイバ202の先端202aから所定の発光パターンで射出される。以下、説明の便宜上、この期間を「サンプリング期間」と記す。先端202aより射出される励起光は、先端202aがサンプリング期間中にXY近似面上で渦巻状に移動することにより、中心軸AXを中心とした所定の円形の走査領域を渦巻状に走査する。サンプリング期間が経過して二軸アクチュエータ204Cへの交流電圧の印加が停止すると、光ファイバ202の振動が減衰する。XY近似面上における先端202aの運動は、光ファイバ202の振動の減衰に伴って収束し、所定時間後にほぼゼロとなる(すなわち、先端202aは中心軸AX上でほぼ停止する。)。以下、説明の便宜上、サンプリング期間が終了してから先端202aが中心軸AX上にほぼ停止するまでの期間を「ブレーキング期間」と記す。ブレーキング期間の経過後、更に所定時間待機して、次のサンプリング期間が開始される。以下、説明の便宜上、ブレーキング期間が終了してから次のサンプリング期間の開始までの期間を「セトリング期間」と記す。セトリング期間は、先端202aを中心軸AX上に完全に停止させるための待機時間である。セトリング時間を設定することにより、先端202aの回転軌跡を安定させることができる。先端202aの回転軌跡を安定させることにより、被写体に対する走査の精度を保証できるようになる。一フレームに対応する期間は、一つのサンプリング期間と一つのブレーキング期間で構成されており、選択的にセトリング期間を追加することができる。フレームレートは、セトリング期間を調節することにより、柔軟に設定変更することができる。このように、セトリング期間は、先端202aが完全に停止するまでの時間とフレームレートとの関係から適宜設定することが可能となっている。なお、ブレーキング期間を短縮するため、ブレーキング期間の初期段階に二軸アクチュエータ204Cに逆相電圧を印加して制動トルクを積極的に加えてもよい。
【0034】
光ファイバ202の先端202aの前方には、対物光学系204Dが設置されている(
図2)。対物光学系204Dは、複数枚の光学レンズで構成されており、図示省略されたレンズ枠を介して外筒204Aに保持されている。対物光学系204Dの光軸は、中心軸AXと一致する。レンズ枠は、外筒204Aの内部において、内筒204Bと相対的に固定された状態で支持されている。そのため、レンズ枠に保持された対物光学系204Dは、外筒204Aの内部を内筒204Bと一体となってZ方向にスライドする。なお、外筒204Aの先端面は、図示省略されたカバーガラスにより封止されている。
【0035】
内筒204Bの基端面と外筒204Aの内壁面との間には、圧縮コイルばね204E及び形状記憶合金204Fが取り付けられている。圧縮コイルばね204Eは、自然長からZ方向に初期的に圧縮挟持されている。形状記憶合金204Fは、Z方向に長尺な棒形状を持ち、常温下で外力が加わると変形して、一定温度以上に加熱されると形状記憶効果で所定の形状に復元する性質を有している。形状記憶合金204Fは、形状記憶効果による復元力が圧縮コイルばね204Eの復元力より大きくなるように設計されている。走査ドライバ210は、サブCPU206が指定した設定値に応じたドライブ信号を生成し、生成されたドライブ信号によって形状記憶合金204Fを通電し加熱することにより、形状記憶合金132Fの伸縮量を制御する。形状記憶合金204Fは、伸縮量に応じて内筒204Bを光ファイバ202ごとZ方向に進退させる。具体的には、形状記憶合金204Fは、加熱されてZ方向に延びる(復元する)ことにより、内筒204Bを光ファイバ202ごと前方(Z方向)に押し出す。形状記憶合金204Fはまた、徐冷が進むにつれて形状記憶効果による復元力が低下することに伴い、圧縮コイルばね204EによりZ方向に圧縮されて、内筒204Bを光ファイバ202ごと後方(Z方向)に引っ込める。
【0036】
光ファイバ202の先端202aを射出した励起光は、対物光学系204Dを透過して被写体の表面又は表層でスポットを形成する。スポット形成位置は、点光源である先端202aの進退に応じてZ軸方向に変位する。すなわち、共焦点光学ユニット204は、二軸アクチュエータ204Cによる先端202aのXY近似面上の周期的な円運動とZ方向の進退を併せることで、被写体を三次元走査する。
【0037】
光ファイバ202の先端202aは、対物光学系204Dの前側焦点位置に配置されているため、共焦点ピンホールとして機能する。先端202aには、励起光により励起された被写体より発せられる蛍光のうち先端202aと光学的に共役な集光点からの蛍光のみが入射する。先端202aより光ファイバ202内に入射した蛍光は、光ファイバ202を伝送後、光コネクタ152を通過して光分波合波器104に入射する。光分波合波器104は、入射した蛍光を光源102から射出される励起光と分離して光ファイバ112に導く。蛍光は、光ファイバ112を伝送して受光器114で検出される。受光器114は、微弱な光を低ノイズで検出するため、例えば光電子増倍管等の高感度光検出器を採用することができる。
【0038】
受光器114によって検出された検出信号は、映像信号処理回路116に入力される。映像信号処理回路116は、CPU108の制御下で動作して、検出信号を一定のレートでサンプルホールド及びAD変換してデジタル検出信号を得る。ここで、サンプリング期間中の光ファイバ202の先端202aの位置(軌跡)が決まると、スポット形成位置とサンプリング点とがほぼ一義的に決まる。ここで、スポット形成位置とは、先端202aが任意の位置に来た時に射出される励起光により走査領域内に形成されるスポットの位置をいう。また、サンプリング点とは、上記スポット形成位置からの戻り光(蛍光)を受光器114で受光してデジタル検出信号を得る信号取得タイミングをいう。後述するように、本実施形態においては、予め、キャリブレーションユニット400を用いて先端202aの軌跡を測定し、その実測結果を基にスポット形成位置及びサンプリング点を推定している。そして、当該サンプリング点から対応する画像上の位置(モニタ300に表示される内視鏡画像の画素位置)及び励起光の発光パターンを決定している。サンプリング点と内視鏡画像の画素位置(画素アドレス)との対応関係は、リマップテーブルとして映像信号処理回路116に接続されたリマップテーブル用メモリ119に格納される。リマップテーブルのサンプリング点及び画素アドレスと励起光の発光パターンとの対応関係は、発光パターンデータとしてレーザ制御回路122に内蔵されている発光パターン用メモリ122aに格納される。これらデータの格納に関する詳細は後述する。
【0039】
映像信号処理回路116は、リマップテーブルを参照して、各サンプリング点で得られる各デジタル検出信号を、対応する画素アドレスのデータとして割り当てる。以下、説明の便宜上、上記の割り当て処理をリマッピングと記す。映像信号処理回路116は、リマッピング結果に従って、各点像の空間的配列によって構成される画像の信号を画像メモリ118にフレーム単位でバッファリングする。バッファリングされた信号は、所定のタイミングで画像メモリ118から映像信号出力回路120に掃き出されて、NTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換された後、モニタ300に出力される。モニタ300の表示画面には、高倍率かつ高解像度の被写体の三次元共焦点画像が表示される。
【0040】
図3に示すように、被写体は、XY方向に関して走査領域の中心から周辺に向かって渦巻き状に走査(スパイラルスキャン)されるが、光ファイバ202は共振運動を行うため、各スパイラルの周期(一回転の走査にかかる時間)は同じである。このため、走査領域の中心ほど励起光の照射密度(単位面積当たりの照射エネルギー)が高くなり、蛍光体の分解がより速く進行して褪色が起きる。その結果、観察主体が位置する観察領域中央部で画像が暗くなる不具合が生じる。そこで、本実施形態の走査型共焦点内視鏡システム1では、励起光の発光パターンを適切に制御することで蛍光の褪色を好適に抑えるように構成している。
【0041】
図4(a)は、光ファイバ202の先端202aの動きを示す図である。
図4(b)は、光源102が射出する励起光の強度を示す図である。
図4(a)、(b)の横軸は共に時間軸である。
図4(a)の縦軸は、中心軸AXを基準とした先端202aのX(又はY)方向の変位量を示す。
図4(b)の縦軸は、励起光の強度を示す。
図4(b)に示されるように、励起光は、サンプリング期間の開始から所定の期間(以下、「パルス駆動期間」という。)パルス状に射出される。励起光は、パルス駆動期間経過後は連続的に射出される。後述するように、パルス駆動期間中の励起光の発光パターン(発光タイミング)は、リマップテーブルに基づいて生成された発光パターンデータによって定まる。本実施形態では、発光タイミングは、発明者らが行った実機検証の結果に基づいて、サンプリング期間の最初の1/3の期間がパルス駆動期間に設定される。すなわち、CPU108は、サンプリング期間の最初の1/3の期間を蛍光の褪色が発生する期間(すなわち、走査領域の中心部分)とみなして、励起光をパルス状に発光するように制御している。従って、本実施形態によれば、走査領域の中心部分における励起光の照射エネルギーが連続的な励起光を照射する場合と比べて減少するため、蛍光体の分解が極端に進行することはなく、蛍光の褪色が抑えられることとなる。また、走査領域の周辺部分では励起光が連続的に照射されるため、観察領域周辺部で検出光の光量不足が生ずることがない。励起光の照射エネルギーの高い走査領域の中心部分において照射エネルギーを減少させることにより、走査領域内において単位面積当たりの照射エネルギーのバラツキが抑えられ、走査領域の中心部分から周辺部分にかけて略一様な光量の蛍光を得ることが可能となる。また、本実施形態においては、ブレーキング期間中、励起光の射出が停止するように制御される。従って、ブレーキング期間中の不必要な励起光によって蛍光体の分解が進行することもない。
【0042】
上述したように、本実施形態においては、パルス駆動期間中の励起光の発光パターンは、リマップテーブルに基づいて生成される発光パターンデータによって定められる。以下、本実施形態のリマップテーブル及び発光パターンデータの作成方法について詳述する。
【0043】
リマップテーブルは、キャリブレーションユニット400(
図1)を用いて光ファイバ202の先端202aの回転軌跡を測定することによって作成される。キャリブレーションユニット400による先端202aの回転軌跡の測定は、本実施形態の走査型共焦点内視鏡システム1を使用する前に行う、いわゆる校正作業であり、キャリブレーションユニット400を共焦点光学ユニット204の先端に配置して行われる。
【0044】
図1に示すように、キャリブレーションユニット400は、PSD(Position Sensitive Detector)402、アンプ404を備えている。PSD402は、半導体位置検出素子であり、共焦点光学ユニット204から射出される励起光の位置を検出する光センサである。キャリブレーションユニット400が共焦点光学ユニット204の先端に配置されると、PSD402は、共焦点光学ユニット204の光ファイバ202の先端202aと対向して配置される。そして、この配置状態で、CPU108は、光源102及び走査ドライバ210を制御し、光ファイバ202の先端202aを渦巻き状に走査(回転)させながら励起光を連続的に射出する。光ファイバ202の先端202aから射出された励起光は、PSD402によって受光され、渦巻き状に走査される励起光の位置情報が逐次電流に変換されて出力される。PSD402から出力された電流は、アンプ404によって電圧に変換されて、システム本体100のA/D130に送られる。そして、励起光の位置情報(電圧信号)は、A/D130によって、所定のサンプリング周波数(例えば、54MHz)でサンプリングされた上で、デジタル値に変換される。デジタル値に変換された励起光の位置情報は、CPUメモリ110に順次記憶される。ここで、サンプリング周波数は、走査領域の周辺部分において内視鏡画像の略1画素を走査するのに掛かる時間に対応する周波数である。
【0045】
次に、CPU108は、CPUメモリ110に記憶された励起光の位置情報を画像メモリ118に対応付けてリマップテーブルを作成し、リマップテーブル用メモリ119に格納する。すなわち、リマップテーブルは、励起光の位置情報とモニタ300に表示される内視鏡画像との対応関係を記述するテーブルであり、例えば、内視鏡画像を15×15ピクセルとした場合、順次サンプリングされた励起光の位置(サンプリング点)と内視鏡画像の画素位置(ラスタ座標)との関係は
図5のようになる。従って、CPU108は、この関係に基づいてサンプリング点から内視鏡画像の画素位置(ラスタ座標)を求めてリマップテーブルを作成する。そして、更に本実施形態においては、走査領域の中心部分でサンプリング点が集中して褪色が発生するのを防止するため、励起光をパルス状に射出させるための発光パターンデータを作成している。
【0046】
図6は、CPU108によって作成された走査領域の中心部分のリマップテーブルと発光パターンデータとの関係、及びサンプリング点とラスタ座標(内視鏡画像の画素アドレス)との関係を説明する図である。
図6(a)は、本実施形態のリマップテーブル及び発光パターンデータの一例であり、
図6(b)は、回転軌跡に沿って連続する10個のサンプリング点及びラスタ座標との対応関係を示す図である。ここで、
図6(b)の各サンプリング点に付された番号は、
図6(a)のサンプリング点の番号に対応している。
図6(a)及び(b)に示すように、サンプリング点1〜3は、ラスタ座標(6,8)に対応し、サンプリング点4、5は、ラスタ座標(6,7)に対応し、サンプリング点6は、ラスタ座標(7,7)に対応し、サンプリング点7、8は、ラスタ座標(7,6)に対応し、サンプリング点9、10は、ラスタ座標(8,6)に対応するものとして説明する。
【0047】
CPU108は、各サンプリング点が対応するラスタ座標を求めた後、各サンプリング点のラスタ座標について次のサンプリング点のラスタ座標との差(デルタ座標)を求める。CPU108は、デルタ座標に基づいてリマップテーブルを完成させる。例えば、サンプリング点3のラスタ座標(6,8)とサンプリング点4のラスタ座標(6,7)との差を求めた場合、サンプリング点3のデルタ座標は(0,−1)となり、サンプリング点5のラスタ座標(6,7)とサンプリング点6のラスタ座標(7,7)との差を求めた場合、サンプリング点5のデルタ座標は(1,0)となる。このように、連続するサンプリング点に対して順番にデルタ座標を求めることにより、ラスタ座標が変化するサンプリング点(すなわち、異なる画素との境界に位置するサンプリング点)を求めている。完成したリマップテーブルは、リマップテーブル用メモリ119に送られて記憶される。
【0048】
次に、CPU108は、デルタ座標が(0,0)以外の値を有するサンプリング点(すなわち、ラスタ座標が変化するサンプリング点)を抽出し、その発光パターンデータのみを「1」とする(換言すれば、それ以外は「0」とする)処理を行って発光パターンデータを生成する。すなわち、発光パターンデータは、同一のラスタ座標を有する連続する複数のサンプリング点のうち、ラスタ座標が変化するサンプリング点(すなわち、異なる画素との境界に位置するサンプリング点)でのみ「1」となるデータである。同一のラスタ座標を有する連続する複数のサンプリング点は、1つのサンプリング点に間引かれて、対応する内視鏡画像の画素(ラスタ座標)に発光パターンデータとして割り当てられる。なお、
図6(b)においては、発光パターンデータが「1」となるサンプリング点を黒丸で示し、発光パターンデータが「0」となるサンプリング点を白丸で示している。このように生成された発光パターンデータは、レーザ制御回路122に内蔵の発光パターン用メモリ122aに送られて記憶される。本実施形態においては、パルス駆動期間(すなわち、走査領域の中心部分)の励起光を発光パターンデータに基づいたレーザ駆動信号でパルス状に照射することで、走査領域の中心部分で蛍光の褪色が発生するのを防止している。なお、
図6においては、説明の便宜上、走査領域の中心部分のリマップテーブル及び発光パターンデータを示して説明を行ったが、走査領域の周辺部分のリマップテーブル及び発光パターンデータも同様に作成される。ただし、走査領域の周辺部分においてはパルス駆動期間外となるため、各サンプリング点の発光パターンデータは全て「1」とされる。
【0049】
リマップテーブル及び発光パターンデータが完成すると、キャリブレーションユニット400を共焦点光学ユニット204の先端から取り外すことで、通常の共焦点観察(内視鏡観察)が可能となる。すなわち、CPU108は、光ファイバ202の先端202aを渦巻き状に走査(回転)させながら、光源102から発光パターンデータに応じた励起光が射出されるようにレーザ制御回路122を制御する。具体的には、CPU108が制御するレーザ制御回路122は、発光パターン用メモリ122aから各サンプリング点の発光パターンデータを順に呼び出しながら、レーザ駆動信号を生成し、光源102に供給することで励起光のオン/オフ制御を行う。
【0050】
図7は、発光パターンデータに基づいてパルス状に照射される励起光と、ラスタ座標(内視鏡画像の画素アドレス)との関係を模式的に示す図である。上述したように、発光パターンデータは、同一のラスタ座標を有する連続する複数のサンプリング点を1つに間引くことによって生成されたデータである。従って、
図7に示すように、励起光が発光パターンデータに基づいて照射される結果、走査領域の中心部分の内視鏡画像の各画素には、その画素に含まれる回転軌跡の数(すなわち、径方向の走査ライン数)に相当するパルスの励起光が照射されることとなる。例えば、
図7の場合、ラスタ座標(7,6)の画素には、1つの走査ラインしか含まれないため、1パルスの励起光が照射され、ラスタ座標(8,10)の画素には、2つの走査ラインが含まれるため、2パルスの励起光が照射される。
【0051】
図8は、各サンプリング点とレーザ駆動信号との関係を示すタイミングチャートである。
図8中、黒丸は、発光パターンデータが「1」のサンプリング点を示し、白丸は、発光パターンデータが「0」のサンプリング点を示している。
図8に示すように、本実施形態のレーザ駆動信号は、発光パターンデータが「1」のサンプリング点を中心とした一定の幅(例えば、5サンプリング分)を持ったパルス信号としている。これは、1つのサンプリング点に対応する時間で励起光を照射した場合、励起光の照射時間が約18.5ns(1/54MHz)となり、蛍光試薬の反応時間との関係から十分な光量の蛍光を得ることが難しいことと、システムに起因する遅延時間等の影響により励起光をサンプリング点に正確に照射することが難しいことによる。なお、システムに起因する遅延時間は使用する部品によってもバラツキがあり、また、蛍光試薬の反応時間は、その種類、観察対象によっても変化する。そのため、ユーザが操作パネル124を操作することによって、レーザ駆動信号のパルス幅が可変できるように構成してもよい。
【0052】
また、システム構成や蛍光試薬の変更によって、信号の遅延時間や蛍光試薬の反応時間が変化することが考えられる。そのため、本実施形態においては、ユーザが操作パネル124を操作することによって、レーザ駆動信号の立ち上がりをサンプリング点に対して任意に早めることができる(すなわち、励起光を照射し始めるタイミングを任意に調整することができる)ように構成されている。
【0053】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。例えば、本実施形態においては、実機検証の結果に基づいてサンプリング期間の最初の1/3の期間(すなわち、走査領域の直径の略1/3を直径とする円内)を蛍光の褪色が発生する領域であるとしてパルス駆動期間に設定した。このパルス駆動期間は、蛍光の褪色具合に応じて、サンプリング期間の最初の1/3の期間よりも長く設定してもよく、また短く設定してもよい。また、ユーザが操作パネル124を操作することによって、パルス駆動期間を任意に設定できる構成としてもよい。
【0054】
また、本実施形態においては、走査領域の周辺部分のリマップテーブルについて、各サンプリング点の発光パターンデータを全て「1」に設定する構成としたが、この構成に限定されるものではなく、例えば、走査領域の周辺部分については、発光パターンデータを設定せず、励起光を連続照射するように構成してもよい。このような構成とすれば、パルス駆動期間に相当するサンプリング点についてのみ発光パターンデータを生成すればよく、処理を効率化することができ、また、リマップテーブルのデータサイズを小さくすることができる。
【0055】
また、本実施形態では、走査型共焦点内視鏡システムについて説明したが、本実施形態における励起光の発光制御は、特許文献5に例示される、別のタイプ(例えばカラー画像を撮影可能なタイプ)の走査型内視鏡システムにも適用することができる。
図10は、別の実施形態の走査型内視鏡システム1Mを構成する、システム本体500の一部及び走査型内視鏡600の構成を示す模式図である。
図11は、モニタ300及びシステム本体500の構成を示すブロック図である。
図11においては、システム本体500と走査型内視鏡600との接続関係等を明確にするため、走査型内視鏡600の一部の構成も模式的に示している。なお、別の実施形態において、本実施形態と説明が重複する部分については適宜省略又は簡略する。
【0056】
図11に示されるように、システム本体500の前面には光コネクタ502及び電気コネクタ504が設けられており、走査型内視鏡600の基端には光コネクタ602及び電気コネクタ604が設けられている。光コネクタ602が光コネクタ502に差し込まれることにより、システム本体500と走査型内視鏡600とが光学的に接続され、電気コネクタ604が電気コネクタ504に差し込まれることにより、システム本体500と走査型内視鏡600とが電気的に接続される。なお、
図10においては、システム本体500と走査型内視鏡600との接続関係等を分かり易くするため、光コネクタ502と光コネクタ602との接続部分を敢えて三つに分けて図示している。
【0057】
システム本体500は、各種回路の信号処理タイミングを統括的に制御するCPU520を有している。また、システム本体500は、R、G、Bの各波長の光(以下、夫々、「R光」、「G光」、「B光」と記す。)を射出可能なレーザ光源510R、510G、510Bを有している。また、特殊光観察に適した波長の光(以下、「特殊光」と記す。)を射出するレーザ光源510Sを有している。なお、これら4つのレーザ光源は、例えば広帯域(可視光および特殊光を含む帯域)であるスーパーコンティニューム光等を射出する単一のファイバレーザに置き換えてもよい。また、光源は、レーザ光源に限らず例えばLED(Light Emitting Diode)等の他の形態の光源に置き換えてもよい。
【0058】
システム本体500は、レーザ光源510R、510G、510B、510Sの各レーザ光源の発光を制御するレーザ制御回路512を有している。レーザ制御回路512には発光パターン用メモリ512aが内蔵されている。発光パターン用メモリ512aには、キャリブレーションユニット400(
図10及び
図11では不図示)を用いて作成された、本実施形態と同様の発光パターンデータが格納されている。レーザ制御回路512は、発光パターン用メモリ512aに格納された発光パターンデータに基づいてレーザ光源510R、510G、510B、510Sの発光制御を行い、R光、G光、B光、特殊光を同期したタイミングで射出させる。一例として、レーザ制御回路512は、R光、G光、B光、特殊光の各波長の光を、サンプリング期間の開始から所定期間(パルス駆動期間であり、例えばサンプリング期間の最初の1/3の期間)中はパルス状に射出させ、パルス駆動期間経過後の残りのサンプリング期間中には連続的に射出させる。
【0059】
各レーザ光源から射出されたR光、G光、B光、特殊光は、光結合器514に入射される。光結合器514は、入射された各波長の光を結合し、走査型内視鏡600が有するシングルモードファイバ610の入射端610aに入射させる。シングルモードファイバ610に入射された光は、シングルモードファイバ610内を伝送されて、走査型内視鏡600の先端部620内に配されたシングルモードファイバ610の射出端610bより射出される。
【0060】
図12は、走査型内視鏡600の先端部620の内部構造を示す側断面図である。また、
図13は、先端部620の内部構造を示す斜視図である。
図12に示されるシース622は、可撓性を有する走査型内視鏡600の保護チューブである。シース622は、先端部620から光コネクタ602にまで延びた形状を有し、走査型内視鏡600が有する各種内蔵部品を保護している。シース622の外径は、走査型内視鏡600がイメージセンサ等を搭載しない構成であるため、従来型の電子スコープの外径に比べて格段に細い。そのため、走査型内視鏡600は、従来型の電子スコープに比べてより一層の低浸襲性が達成されている。
【0061】
シース622内部には、支持体624が取り付けられている。シングルモードファイバ610の先端部分610cは、支持体624の貫通穴に挿入され通されて片持ち梁の状態で支持されている。支持体624には二軸アクチュエータ626も支持されている。システム本体500が有する走査ドライバ530は、交流電圧Xを二軸アクチュエータ626CのX軸用電極間に印加して圧電体をX方向に共振させると共に、交流電圧Xと同一周波数であって位相が直交する交流電圧YをY軸用電極間に印加して圧電体をY方向に共振させる。これにより、シングルモードファイバ610の射出端610bは、XY近似面上において中心軸AXを中心に渦巻状のパターンを描くように移動する。射出端610bより射出される光は、サンプリング期間中、走査型内視鏡600の先端に取り付けられた集光レンズ628を介して、中心軸AXを中心とした所定の円形の走査領域を渦巻状に走査する。
【0062】
被写体を走査した光の反射成分は、集光レンズ628を介してシース622内に入射される。ここで、シース622内において、支持体624の端面624aには、複数の貫通穴が円環状に並べて形成されている。各貫通穴には検出用ファイバ630が埋設されている。シース622内に戻された被写体からの反射光は、各検出用ファイバ630の入射端630aに入射される。各入射端630aに入射された反射光は、検出用ファイバ630内を終端に向かって伝送される。
【0063】
図13において図示省略するが、各検出用ファイバ630は支持体624の後方で束ねられ、光ファイババンドル630Bを構成している。光ファイババンドル630Bは、走査型内視鏡600の先端部620から光コネクタ602に延びている。光ファイババンドル630Bの終端は、光コネクタ602に収容されている。光コネクタ602内において、光ファイババンドル630Bの終端は、光サーキュレータ640により波長選択ファイバ650の一端と光学的に結合されている。
【0064】
ファイババンドル630B(検出用ファイバ630)内を伝送された反射光は、光サーキュレータ640によりファイババンドル630Bの終端と結合された波長選択ファイバ650の結合端に入射される。光サーキュレータ640は、ファイババンドル630Bからの反射光を波長選択ファイバ650にのみ入射させるように構成されている。つまり、ファイババンドル630Bからの反射光を後述の光ファイバ660には入射させないように構成されている。
【0065】
波長選択ファイバ650は、光コネクタ602内に蜷局を巻くように収容されている。波長選択ファイバ650の導光路中には、結合端側から順にR(Red)、G(Green)、B(Blue)の各波長に対応するファイバブラッググレーティング670R、670G、670Bが形成されている。そのため、波長選択ファイバ650に入射され伝送される反射光は、まず、ファイバブラッググレーティング670RによりR成分について強い後方反射が引き起こされる。つまり、ファイバブラッググレーティング670Rは、反射光に含まれるR光のみを反射させて波長選択ファイバ650の結合端側に戻すとともに他の成分を透過させる。ファイバブラッググレーティング670G、ファイバブラッググレーティング670Bにおいても同様の光学的作用が引き起こされる。すなわち、ファイバブラッググレーティング670GにおいてはG光のみが、ファイバブラッググレーティング670BにおいてはB光のみが夫々反射されて波長選択ファイバ650の結合端側に戻される。
【0066】
ファイバブラッググレーティング670R、670G、670Bは、R、G、Bの各波長の反射光に所定の光路差を付与するように位置が決められ形成されている。ここで、光サーキュレータ640は、波長選択ファイバ650からの光を光ファイバ660にのみ入射させるように構成されている。つまり波長選択ファイバ650からの光をファイババンドル630Bには入射させないように構成されている。そのため、波長選択ファイバ650の結合端に所定の時間遅延をもって到達したR、G、Bの各波長の反射光は、当該所定の時間差を維持しつつ光ファイバ660に順次入射される。
【0067】
光ファイバ660の終端660aは、光コネクタ502と光コネクタ602とを接続させたとき、システム本体500が有するカップリングレンズ542RGBを介して光検出器544RGBと結合される。そのため、光検出器544RGBには、R、G、Bの各波長の反射光が所定の時間差をもって順次受光される。
【0068】
一方、ファイババンドル630Bからの反射光に含まれる特殊光に対応する成分は、波長選択ファイバ650を伝送中、何れのファイバブラッググレーティングによっても反射されること無く波長選択ファイバ650の終端650aより射出される。終端650aは、光コネクタ602をコネクタ502に接続させたとき、システム本体500が有するカップリングレンズ542Sを介して光検出器544Sと光学的に結合される。そのため、光検出器544Sには、特殊光に対応する成分が受光される。
【0069】
光検出器544RGB及び544Sにより受光され検出された各信号は、映像信号処理回路550に入力される。映像信号処理回路550は、CPU520の制御下で動作して、検出信号を一定のレートでサンプルホールド及びAD変換してデジタル検出信号を得る。
【0070】
システム本体500は、リマップテーブル用メモリ560を有している。リマップテーブル用メモリ560には、キャリブレーションユニット400を用いて作成された、本実施形態と同様のリマップテーブルが格納されている。映像信号処理回路550は、リマップテーブル用メモリ560に格納されたリマップテーブルに基づいてリマッピングを行う。具体的には、映像信号処理回路550は、光検出器544RGBで検出されたR、G、Bの各波長に対応するデジタル検出信号をリマッピングし、画像メモリ570にフレーム単位でバッファリングする。バッファリングされた信号は、所定のタイミングで画像メモリ570から映像信号出力回路580に掃き出されて、所定の規格に準拠した映像信号に変換されてモニタ300に出力される。これにより、モニタ300の表示画面に、被写体のカラー画像が表示される。また、映像信号処理回路550は、光検出器544Sで検出された特殊光の波長に対応するデジタル検出信号をリマッピングして画像メモリ570にフレーム単位でバッファリングし、映像信号出力回路580を介してモニタ300に出力することもできる。この場合、モニタ300の表示画面には、特殊光の波長に対応する生体が強調された被写体の強調画像が表示される。なお、被写体のカラー画像と強調画像は、モニタ300に択一的に表示されてもよく、二画面分割で同時に表示されてもよい。
【0071】
上述した別の実施形態によれば、サンプリング期間の開始から所定期間(パルス駆動期間であり、例えばサンプリング期間の最初の1/3の期間)中、レーザ光をパルス状に射出させることにより、走査領域の中心部分においてレーザ光の照射エネルギーが連続的なレーザ光を照射する場合と比べて減少する。そのため、例えば、走査領域の周辺部分の明るさを確保するためにレーザ強度を上げた結果、走査領域の中心部分に位置する患部に必要以上のレーザ光が照射されるという問題の発生を避けることができる。また、走査領域の周辺部分ではレーザ光が連続的に照射されるため、周辺部分で光量不足が生ずることがない。レーザ光の照射エネルギーの高い走査領域の中心部分において照射エネルギーを減少させることにより、走査領域内において単位面積当たりの照射エネルギーのバラツキが抑えられ、中心部分から周辺部分にかけて略一様な明るさの内視鏡画像を得ることが可能となる。