特許第6055422号(P6055422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6055422コンベアベルト用ゴム組成物、コンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055422
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】コンベアベルト用ゴム組成物、コンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルト
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20161219BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20161219BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20161219BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20161219BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20161219BHJP
   B65G 15/32 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
   C08L9/06
   C08K3/36
   C08K3/04
   C08L93/04
   C08L45/00
   B65G15/32
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-553329(P2013-553329)
(86)(22)【出願日】2013年1月11日
(86)【国際出願番号】JP2013050448
(87)【国際公開番号】WO2013105655
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2015年12月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-5318(P2012-5318)
(32)【優先日】2012年1月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(72)【発明者】
【氏名】古畑 庸介
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−199892(JP,A)
【文献】 特開2000−198517(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/122977(WO,A1)
【文献】 特開2010−006859(JP,A)
【文献】 特開2011−236025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/00−9/10
45/00−45/02
93/00−93/04
B65G 15/32
C08K 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)スチレン−ブタジエンゴム100〜70質量部と、ブタジエンゴム及び天然ゴムから選択される少なくとも1種0〜30質量部とを含むゴム成分100質量部に対して、(B)シリカ5〜20質量部、(C)樹脂10〜25質量部、及び(D)窒素吸着比表面積(JISK6217−2:2001に準拠)100m2/g以上のカーボンブラック40〜70質量部を含有してなり、前記スチレン−ブタジエンゴムが、スチレン含量20〜25質量%のスチレン−ブタジエンゴムの1種以上とスチレン含量25超〜50質量%のスチレン−ブタジエンゴムの1種以上とを含む平均スチレン含量28〜35質量%のスチレン−ブタジエンゴム混合物であり、前記樹脂が、ロジン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油系炭化水素樹脂、芳香族多価カルボン酸・脂肪族多価アルコール縮合物、及びクマロン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1つの樹脂である、コンベアベルト用ゴム組成物。
【請求項2】
スチレン−ブタジエンゴム混合物が、スチレン含量20〜25質量%のスチレン−ブタジエンゴム40〜70質量%とスチレン含量25超〜50質量%のスチレン−ブタジエンゴム30〜60質量%とを含むものである請求項1に記載のコンベアベルト用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム組成物を用いてなるコンベアベルトカバー用ゴム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のゴム組成物を用いてなるコンベアベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアベルト用ゴム組成物、その組成物を用いたコンベアベルトカバー用ゴム及びコンベアベルトに関する。さらに詳しくは、上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムからなるコンベアベルトの上面カバー用ゴムとして有用なコンベアベルト用ゴム組成物、該ゴム組成物を用いてなるコンベアベルトカバー用ゴム及び該ゴム組成物を用いてなるコンベアベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンベアベルトは、物品を輸送する手段として極めて有用であり、多くの場所において使用されている。
このコンベアベルトは、通常、上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムからなっている。特に上面カバーゴムは、搭載された被輸送物との摩擦によって摩耗し易く、また、例えば被輸送物の角などによって衝撃を加えられた場合などに亀裂が入るおそれがあるため、ベルト全体の寿命を向上させるためには、耐摩耗性と耐カット性の両立を図る必要がある。
【0003】
上記の性能のうち、耐カット性及び耐衝撃性を向上させるため、天然ゴムとスチレン−ブタジエンゴムとの混合比(質量比)が50/50〜80/20であるゴム100質量部に対して、窒素吸着比表面積100m2/g以上、DBP吸油量100cm3/100g以上であるカーボンブラックを45〜65質量部、シリカを5〜20質量部および樹脂を2〜7質量部を含有するコンベアベルトカバー用ゴム組成物が開示されているが(特許文献1参照)、耐摩耗性の点では、未だ不十分であった。
【0004】
これに対し、耐摩耗性と耐カット性の両立を達成するために、(A)スチレン−ブタジエンゴム90〜60質量部、並びにブタジエンゴム及び/又は天然ゴム10〜40質量部を含むゴム成分100質量部に対して、(B)窒素吸着比表面積100m2/g以上のカーボンブラックを50〜70質量部、及び(C)樹脂を10〜30質量部を含有してなるコンベアベルト用ゴム組成物が開示されているが(特許文献2参照)、耐衝撃性と耐カット性の両立はある程度達成されているものの、耐カット性には更なる改良の余地があり、しかも製造作業性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−198517号公報
【特許文献2】特開2006−199892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下で、耐摩耗性を低下させることなく、耐カット性と製造作業性とを両立させた、コンベアベルト用ゴム組成物、さらには該ゴム組成物を用いてなるコンベアベルトカバー用ゴム及び該ゴム組成物を用いてなるコンベアベルトを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、SBRとして、スチレン含量の異なる2種以上のSBRを混合してなる、特定の平均スチレン含量のSBRを使用することにより上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[4]に関する。
[1](A)スチレン−ブタジエンゴム100〜70質量部と、ブタジエンゴム及び天然ゴムから選択される少なくとも1種0〜30質量部とを含むゴム成分100質量部に対して、(B)シリカ5〜20質量部、(C)樹脂10〜30質量部、及び(D)窒素吸着比表面積(JIS K 6217−2:2001に準拠、以下同じ)100m2/g以上のカーボンブラック40〜70質量部を含有してなり、前記スチレン−ブタジエンゴムが、スチレン含量20〜25質量%のスチレン−ブタジエンゴムの1種以上とスチレン含量25超〜50質量%のスチレン−ブタジエンゴムの1種以上とを含む平均スチレン含量28〜35質量%のスチレン−ブタジエンゴム混合物である、コンベアベルト用ゴム組成物。
[2]前記スチレン−ブタジエンゴム混合物が、スチレン含量20〜25質量%のスチレン−ブタジエンゴム40〜70質量%とスチレン含量25超〜50質量%のスチレン−ブタジエンゴム30〜60質量%とを含むものである上記[1]のコンベアベルト用ゴム組成物。
[3]上記[1]又は[2]のゴム組成物を用いてなるコンベアベルトカバー用ゴム。
及び
[4]上記[1]又は[2]のゴム組成物を用いてなるコンベアベルト。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、耐摩耗性を低下させることなく、耐カット性と製造作業性とを両立させた、コンベアベルト用ゴム組成物、さらには該ゴム組成物を用いてなるコンベアベルトカバー用ゴム及び該ゴム組成物を用いてなるコンベアベルトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本明細書中、好ましいとする記載は任意に採用することができ、任意に組み合わせることができる。好ましいとする記載の組み合わせは、より一層好ましいと言える。
本発明では、スチレン−ブタジエンゴム(以下、SBRという)として、スチレン含量20〜25質量%(好ましくは22〜25質量%)のSBRの1種以上とスチレン含量25超〜50質量%(好ましくは30〜50質量%、より好ましくは40〜50質量%)のSBRの1種以上とを含むSBR混合物を用いる。該SBR混合物の平均スチレン含量は28〜35質量%であり、好ましくは30〜35質量%である。
このようなSBR混合物を用いることにより、耐摩耗性を低下させることなく、耐カット性と製造作業性とを両立させることが可能となる。
SBR混合物は、上記平均スチレン含量の範囲内であれば、それら以外のスチレン含量のSBRの1種以上を含んでも差し支えない。但し、SBR混合物は、スチレン含量20〜25質量%のSBR40〜70質量%とスチレン含量25超〜50質量%のSBR30〜60質量%とを含むものであることが、耐摩耗性、耐カット性等のゴム物性及び作業性の点で好ましい。
【0010】
SBRとしては、乳化重合SBR、溶液重合SBRのいずれをも用いることができる。また、市販品を用いることができ、例えば、乳化重合SBRとしては、JSR1500、JSR1502、JSR1712(いずれもスチレン含量23.5質量%)、JSR0122(スチレン含量37質量%)、JSR0202(スチレン含量46質量%)(いずれもJSR株式会社製)等が、溶液重合SBRとしては、SL552(スチレン含量24質量%)、SL555(スチレン含量24質量%)、SL556(スチレン含量24質量%)、SL574(スチレン含量15質量%)、(いずれもJSR株式会社製)等が挙げられる。
【0011】
また、ブタジエンゴム(以下、BRという)は、ニッケル系触媒により重合されるBR、例えば、BR01、BR11(いずれもJSR株式会社製)や、リチウム系触媒により重合されるBR、例えば、BR71(JSR株式会社製)であってもよいが、ネオジウム系触媒により重合されたブタジエンゴム(以下、Nd−BRという)であることが好ましい。ここで、BRの二重結合部分の構造にはシス体とトランス体があるが、本発明におけるNd−BRはシス体が80%以上であることが好ましく、さらには90%以上であることが好ましい。シス体が80%未満であると耐摩耗性に劣る場合があるからである。
【0012】
前記ネオジウム系触媒としては、種々のものがあるが、ネオジウムを含む化合物又はこれらとルイス塩基との反応物等を使用し得る。具体的には、ネオジウムのカルボン酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、アルコキシド等が好適である。
また、助触媒としてアルミノキサンを用いることが好ましく、特にメチルアルミノキサンが好適である。
【0013】
また、Nd−BRは、末端変性がなされていることが好ましい。Nd−BRの末端変性方法としては、変性剤を使用してNd−BRの活性末端を変性する方法を用いることができる。変性剤としては、例えば、四塩化スズ及び四臭化スズ等のハロゲン化スズ、トリブチルスズクロライド等のハロゲン化有機スズ化合物、四塩化ケイ素及びクロロトリエチルシラン等のケイ素化合物、フェニルイソシアネート等のイソシアネート基含有化合物、アミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物並びにイソシアヌル酸誘導体等が挙げられる。この中で特にスズ系化合物を用いて末端変性をすることが好ましい。また、本発明で用いる末端変性Nd−BRは、分子量に関しては特に制限されない。
【0014】
(A)成分としてのゴム成分は、SBR100〜70質量部と、BR及び天然ゴムから選択される少なくとも1種0〜30質量部とを含むものである。(A)成分中、SBR配合量が70質量部未満であると、耐カット性が低下する。
【0015】
ゴム成分としては、上記のSBR、BR、天然ゴムの他に、本発明の目的に反しない範囲で、コンベアベルトという用途に応じて、少量(例えば、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下)の種々の他の合成ゴムを含むことができる。他の合成ゴムとしては、イソプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムが好ましく、さらに臭素化ブチルゴム、パラメチルスチレン基を有するブチルゴム(具体的にはイソブチレンとp−ハロゲン化メチルスチレンとの共重合体等)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)なども好適なものとして挙げることができる。また、本発明における天然ゴムの一部をイソプレンゴムに置換し得る。
【0016】
(B)成分としてのシリカは、特に限定せず、乾式シリカ及び湿式シリカのいずれをも用いることができる。また、市販品を用いることができ、例えば、ニップシールAQ(商品名:湿式、東ソー・シリカ株式会社製)等を挙げることができる。
【0017】
シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、5〜20質量部である。シリカの配合量が20質量部を超えると製造作業性が低下するため、また、5質量部未満であると耐カット性が低下するため、本発明の目的を満足し得ないからである。
【0018】
(C)成分としての樹脂は、特に限定しないが、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油系炭化水素樹脂(脂肪族、芳香族共に用いられ得る)芳香族多価カルボン酸・脂肪族多価アルコール縮合物、クマロン樹脂の単体若しくはそのブレンドを用いる事が、耐カット性、耐摩耗性及び製造作業性を考慮すると望ましい。
【0019】
樹脂の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、10〜30質量部である。樹脂の配合量が30質量部を超えると耐摩耗性が低下するため、また、10質量部未満であると耐カット性が低下するため、本発明の目的を満足し得ないからである。同様の観点から、樹脂の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15〜30質量部、より好ましくは15〜25質量部である。
【0020】
(D)成分のカーボンブラックとしては、ISAF級以上、即ち、窒素吸着比表面積100m2/g以上のカーボンブラックを用いる。ISAF級のカーボンブラックとしては、ISAF(N220)、例えば、旭#80(窒素吸着比表面積115m2/g、DBP吸収量(JIS K 6217−4:2001に準拠、以下同じ)113ml/100g:旭カーボン株式会社製)、ISAF−HS(N234)、例えば、シースト7HM(窒素吸着比表面積126m2/g、DBP吸収量125ml/100g:東海カーボン株式会社製)が用いられる。これらのうち、高ストラクチャー、即ち、DBP吸収量120ml/100g以上の、ISAF級以上のカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積およびDBP吸収量の上限を定めるものではないが、窒素吸着比表面積として、150m2/g以下、DBP吸収量150ml/100g以下が好ましい。
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、40〜70質量部である。カーボンブラック配合量が70質量部を超えると加工性が低下するため、また、40質量部未満であると耐摩耗性及び耐カット性が低下するため、本発明の目的を満足し得ないからである。
【0021】
本発明のゴム組成物には、通常加硫剤としての硫黄を配合する。この硫黄の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.3〜5質量部の範囲が好ましい。硫黄の配合量が0.3質量部未満では十分な加硫効果が得られず、目標性能を達成できなくなる場合がある。また5質量部を超えると、ゴムが脆くなり、ゴムの疲労性能が低下するなど好ましくない場合がある。
【0022】
また、本発明のゴム組成物には、前記各成分以外に、ゴム業界で通常使用される配合剤を通常の配合量で適宜配合することができる。具体的には、アロマオイル等の軟化剤、ジフェニルグアニジン等のグアニジン類、メルカプトベンゾチアゾール等のチアゾール類、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド類、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム類などの加硫促進剤、酸化亜鉛等の加硫促進助剤、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、フェニル−α−ナフチルアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン類などの老化防止剤等である。
【0023】
本発明のゴム組成物は、開放混合式の練りロール機や密閉式混合機のバンバリーミキサー等の混練機を用いて混練りすることにより得ることができる。そして、得られたゴム組成物をカレンダーや押出し機などでシート状に成形し、補強材である帆布又はスチールコードを芯材として、これを覆うようにシート状ゴム成形物を貼り合わせ、その後、加硫を行うことによりコンベアベルトを得ることができる。
【0024】
前記したように、コンベアベルトは、通常上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムからなっており、被輸送物と接触するのは上面カバーゴムである。本発明のコンベアベルトは、上面カバーゴム、補強材及び下面カバーゴムからなるベルトの、上面カバーゴムに本発明のゴム組成物を使用したものである。補強材及び下面カバーゴムには、この種のベルト用として従来から知られていたものを使用し得るが、無論、下面カバーゴムに本発明のゴム組成物を使用しても、一向に差し支えない。本発明のコンベアベルトは、従来公知のコンベアベルトの何れにも使用可能である。すなわち、本発明は、本発明のゴム組成物を用いてなるゴムからなるベルトを、従来公知のコンベアベルト用ベルトに代えて装着したコンベアベルトをも提供するものである。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
ここで、評価法について下記する。
(耐カット性:落錘カット試験)
縦60mm×横70mm×高さ30mmのゴムブロックを加硫し、サンプルを作成する。室温でサンプルの80cm高さから重量15kgの錘をつけた角度60度の鋭利な刃を落下させ、生じた亀裂深さ(mm)を測定した。亀裂深さが小さい程、耐カット性が良好である。
(耐摩耗性:DIN摩耗試験)
DIN摩耗試験機を用い、JIS K 6264−2:2005に準拠して、耐摩耗試験を行った。耐摩耗試験は室温で行い、摩耗量をmm3で表わした。摩耗量が少ない程、耐摩耗性が良好である。
(製造作業性)
練りゴム1kgを10インチのロール機(ロール温度60℃)にて、厚さ4mmになるように圧延作業をした際の作業性を確認した。
特に問題が無かったものを「○」、ロールにゴムが巻きつかなかったり、又はロールにゴムが密着し、ゴムの切りかえしがし難いものを「×」と判定した。
【0026】
実施例1〜15及び比較例1〜6
第1表及び第2表に記載した配合処方によりゴム組成物を調製し、落錘カット試験、DIN摩耗試験及び製造作業性の評価を行った。その結果を第1表及び第2表に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
第1表及び第2表の各組成物に用いられた各成分について以下に説明する。
*SBR1:JSR1500(JSR株式会社製/スチレン含量23.5質量%)
*SBR2:JSR0202(JSR株式会社製/スチレン含量46.0質量%)
*SBR3:JSR0122(JSR株式会社製/スチレン含量37.0質量%)
*BR:T0700(JSR株式会社製/ネオジウム触媒BR、助触媒:メチルアルミノキサン)
*天然ゴム:BR01(JSR株式会社製)
*シリカ:ニップシールAQ(東ソー・シリカ株式会社製)
*樹脂1:クイントン1920(日本ゼオン株式会社製/ジシクロペンタジエン・スチレン類石油樹脂C4〜5炭化水素共重合体)
*樹脂2:ハイロジンS(大社松精油株式会社製/ロジン)
*樹脂3:エスクロンV−120(大内新興化学工業株式会社製/クマロン樹脂)
*カーボンブラック N234: シースト7HM(東海カーボン株式会社製/窒素吸着比表面積126m2/g、DBP吸収量125ml/100g)
*老化防止剤RD:ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)(大内新興化学工業株式会社製、「ノクラック224」)
*老化防止剤6C:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(住友化学株式会社製、「ANTIGENE 6C」)
*加硫促進剤CZ: N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業株式会社製、「ノクセラーCZ」)
【0030】
第1表より明らかなごとく、実施例のゴム組成物は、耐摩耗性を低下させることなく、耐カット性と製造作業性とを両立できている。
一方、第2表より、SBR混合物のスチレン含量とゴム成分中の配合量とが規定範囲外である比較例1では、耐カット性に乏しいことが分かる。シリカの配合量が少ない比較例2では、耐カット性に乏しく、シリカの配合量が多い比較例3では、耐摩耗性が低下し、さらに製造作業性が悪化した。樹脂の配合量が少ない比較例4では、耐カット性が乏しくなり、樹脂の配合量が多い比較例5では、耐摩耗性に乏しく、さらに製造作業性が悪化した。また、SBR混合物のスチレン含量が少ない比較例6では、耐カット性が乏しかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のコンベアベルト用ゴム組成物は、耐摩耗性を低下させることなく、耐カット性と製造作業性とを両立させたもので、コンベアベルト等、特にコンベアベルトカバーに好適に用いられる。