【実施例】
【0031】
本発明について、以下の実施例によって、更に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されない。
【0032】
本実施例では、以下の製品から複合材料を製造した:
C−LiFePO
4 ; Phostech社製の炭素被覆されたLiFePO
4粒子からなる材料。
アセチレンブラック ; 電気化学工業株式会社(日本)製のデンカブラック(商品名)。
VGCF(商標) ; 昭和電工株式会社(日本)製の炭素繊維(繊維径:150nm、繊維長:約10μm、比表面積:13m
2/g、導電率:0.1mΩ.cm、純度:99.95%以上)。
PVDF ; 株式会社クレハ(日本)製のポリフッ化ビニリデン。
SBR ; 日本ゼオン株式会社(日本)製のスチレンブタジエンゴム、BM400(商標)。
【0033】
共粉砕混合は以下の粉砕機で行った:
NOB300−ノビルタ(登録商標) ; ホソカワミクロン株式会社製
メカノフュージョン ; ホソカワミクロン株式会社製
【0034】
得られた材料は、走査電子顕微鏡法(SEM)、透過電子顕微鏡法(TEM)、およびX線回折法(XRD)で分析した。
【0035】
(実施例1)
C−LiFePO
4300gとVGCF9gとをノビルタ粉砕機で5分間混合した。次に、NMPに溶解されたPVDF16.25g(LiFePO
4、VGCFおよびPVDFの合計重量に対して5%に相当する量)を添加した。得られたスラリーをポリプロピレンシートに塗布した。NMPを蒸発させて除去した後、測定された被膜の抵抗値は7Ω.cmである。
【0036】
(比較例1)
VGCF(商標)の代わりにアセチレンブラックABを9g用いて、実施例1と同じ操作を行った。試料の抵抗値は30Ω.cmであり、実施例1よりはるかに高い。
【0037】
図1および2は、それぞれ、ノビルタ粉砕機で共粉砕混合し、次いでNMPを除去した後の、C−LiFePO
4/VGCF混合物およびC−LiFePO
4/AB混合物のSEM顕微鏡写真である。
図1中の矢印は繊維状炭素を指し示している。
図2中の矢印は非繊維状のアセチレンブラックを指し示している。
【0038】
(実施例2)
C−LiFePO
4300gとVGCF9gとをメカノフュージョン(登録商標)粉砕機で30分間混合した。次に、NMPに溶解されたPVDF16.25g(LiFePO
4、VGCF、およびPVDFの合計重量に対して5%に相当する量)を添加した。得られたスラリーをポリプロピレンシートに塗布した。NMPを除去した後、測定された被膜の抵抗値は8Ω.cmである。
【0039】
(比較例2)
VGCFの代わりにアセチレンブラック9gを用いて、実施例2と同じ操作を行った。試料の抵抗値は35Ω.cmであり、実施例2よりはるかに高い。
【0040】
(実施例3)
C−LiFePO
4300gとVGCF9gとをメカノフュージョン粉砕機で30分間混合した。次に、NMPに溶解させたPVDF16.25g(LiFePO
4、VGCF、およびPVDFの合計重量に対して5%に相当する量)を添加した。得られたスラリーをアルミニウム製集電体に塗布した。NMPを除去した後、得られた電極にプロピレンカーボネート(PC)を染み込ませた。5秒以内で電極にPCが完全に浸透した。
【0041】
(比較例3)
VGCFの代わりにアセチレンブラック9gを用いて、実施例3と同じ操作を行った。電極にPCが完全に浸透するのに、実施例3よりはるかに長い370秒を要した。
【0042】
(実施例4)
C−LiFePO
4300gとVGCF9gとをメカノフュージョン粉砕機で30分間混合した。次に、水に溶解させたSBR17.98g(LiFePO
4、VGCF、およびSBRの合計重量に対して5.5%に相当する量)を添加した。得られたスラリーをアルミニウム製集電体に塗布した。水を除去した後、集電体上の複合材料の面積比重量は10mg/cm
2である。このようにして得られた電極に、プロピレンカーボネート(PC)を染み込ませた。
【0043】
VGCFの代わりにアセチレンブラックを用いた以外、または炭素を加えなかった以外は、上記と同じ操作を行って、種々の試料をさらに製造した。
【0044】
図3は、電極密度D(g/cm
3)に対する時間T(秒)の関係を表している。「電極密度」Dは、電極材の体積単位あたりの重量を意味する。電極材は、複合酸化物、もしあれば加えられた炭素(カーボンファイバーまたはアセチレンブラック)、およびもしあれば吸収されたPCを含んでいる。時間Tは、PC3μLが完全に吸収されるまでの時間を表している。
◆は、炭素を含有しない試料に対応する。
△は、アセチレンブラックを含有する試料に対応する。そして、
■は、VGCFを含有する試料に対応する。
【0045】
図3は、電極密度Dが2g/cm
3付近で、PC3μLを完全に吸収したものを表している。カーボンファイバーを含む材料では2000秒以内で該密度に達する。アセチレンブラックを含む材料では3000秒以内で該密度に達する。炭素を加えていない材料では3500秒以上で該密度に達する。
【0046】
(実施例5)
C−LiFePO
4とVGCFとをメカノフュージョン粉砕機で30分間混合した。次に、水に溶解されたSBRを、C−LiFePO
4、VGCF、およびSBRの合計重量の3重量%に相当する量で添加した。得られたスラリーをアルミニウム製集電体に塗布した。水を除去した後、集電体上の複合材料の面積比重量は28mg/cm
2である。このようにして得られた電極に、プロピレンカーボネート(PC)を染み込ませた。
【0047】
VGCFの代わりにアセチレンブラックを用いた以外、または炭素を加えなかった以外は、上記と同じ操作を行って、種々の試料をさらに製造した。
【0048】
図4は、吸収されたPCの量に関連する電極密度D(g/cm
3)に対する時間T(秒)の関係を表している。時間Tは、PC3μLが完全に吸収されるまでの時間を表している。
aは、アセチレンブラックを3%(重量/重量)含有する試料に対応する。
bは、VGCF1%(重量/重量)を含有する試料に対応する。
cは、VGCF2%(重量/重量)を含有する試料に対応する。
dは、VGCF0.5%(重量/重量)を含有する試料に対応する。
【0049】
図4に示されるように、アセチレンブラックを含む材料ではプロピレンカーボネートが浸透するまでに非常に長い時間(1500秒以上)を要する。これに対して、カーボンファイバーを含有する材料では1000秒未満でPCを吸収する。
【0050】
電極材の放電容量のために有用である電子伝導材としての炭素を添加することにおいて、この図は、従来のアセチレンブラックの代わりに気相成長繊維形状の炭素の添加が有利であることを示している。
【0051】
(実施例6)
電極を実施例3の操作に従って製造した。さらにリチウムアノードと1MのLiPF
6のEC−DEC(3:7)溶液を含浸させたセルガード3501製セパレーターを備える電池に該電極を組み込んだ。
異なる放電レート(C/2、2C、および4C)で電池を放電した。放電レートC/2における容量は155mAh/g、放電レート2Cにおける容量は155mAh/g、放電レート4Cにおける容量は153mAh/gであった。
【0052】
(比較例6)
比較例3に従って製造された電極を用いた以外は実施例6と同じ操作で電池を組み立てた。
異なる放電レート(C/2、2C、および4C)で電池を放電した。放電レートC/2における容量は150mAh/g、放電レート2Cにおける容量は148mAh/g、放電レート4Cにおける容量は120mAh/gであった。
実施例6と比較例6は、本発明のカソード材料によって高い放電容量が可能となり、高い放電電流に対応する高放電レートにおいて最も大きな差異が生じることを示している。
【0053】
(実施例7)
C−LiFePO
4とVGCFとをメカノフュージョン粉砕機で30分間混合した。次に、水に溶解させたSBRを、C−LiFePO
4、VGCFおよびSBRの合計重量の5.5重量%に相当する量で添加した。得られたスラリーを面積比重量10mg/cm
2でアルミニウム製集電体に塗布した。このようにして得られた電極をプロピレンカーボネート(PC)に浸して、電極密度を1.7g/cm
3にした。
VGCFを2重量%、3重量%、および5重量%で含有する電極をそれぞれ複数製造した。
リチウムアノードと1MのLiPF
6のEC−MEC(3:7)溶液を含浸させたセルガード3501製セパレーターとを備える電池に各電極を組み込んだ。
異なる放電レート(C/2、2C、および4C)で電池を放電した。
【0054】
図5、6、および7は、放電レート0.5C(
図5)、放電レート2C(
図6)、および放電レート4C(
図7)における、三電極式セルの放電容量(mAh/g)に対する電位(V vs Li)を、それぞれ表している。
△は、VGCF5重量%を含有する電極に対応する。
◆は、VGCF3重量%を含有する電極に対応する。
■は、VGCF2重量%を含有する電極に対応する。
【0055】
図5〜7に示すように、高放電レートにおいては、VGCFの含有量が多いほど、高い放電電位が得られる。低放電レートにおいては、VGCF含有量が少なくても十分に高い放電電位が得られる。本発明の複合材料を含有する電極を低放電レートの装置で使用しようとする場合は、VGCF含有量は非常に少なくてよい。本発明の複合材料を含有する電極を高放電レートの装置で使用しようとする場合は、VGCF含有量は好ましくは多めに、より好ましくは5重量%近くにする。
【0056】
(実施例8)
C−LiFePO
4と炭素とをメカノフュージョン粉砕機で30分間混合した。次に、水に溶解させたSBRを、C−LiFePO
4、炭素およびSBRの合計重量の5.5重量%に相当する量で添加した。得られたスラリーを面積比重量10mg/cm
2でアルミニウム製集電体に塗布した。このようにして得られた電極にプロピレンカーボネート(PC)を染み込ませた。
VGCFを2重量%、3重量%、および5重量%で含有する電極、アセチレンブラックABを2重量%、および3重量%で含有する電極、および炭素を全く含有しない電極をそれぞれ複数製造した。
次いで、リチウムアノードと1MのLiPF
6のEC−MEC(3:7)溶液を含浸させたセルガード3501製セパレーターとを備える電池に各電極を組み込んだ。
様々な電極密度Dにおける電気抵抗Rを測定した。結果を
図8に示す。
【0057】
図8において:
◆は、VGCF2重量%を含有する電極に対応する。
■は、VGCF3重量%を含有する電極に対応する。
●は、VGCF5重量%を含有する電極に対応する。
△は、AB2重量%を含有する電極に対応する。
*は、AB5重量%を含有する電極に対応する。
○は、炭素を添加していない電極に対応する。
【0058】
図8に示すように、導電性炭素を添加していない電極において最も高い抵抗値になり、VGCFの含有量が最も高い電極において最も低い抵抗値になった。同じ炭素含有量の場合には、抵抗値は、VGCFを含有するときより、ABを含有するときに高くなる。