(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記巻線を供給電圧で励磁するステップと、前記供給電圧又は前記モータの速度の変化に応じて前記導通期間の長さを変化させるステップを含み、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の方法。
各モードは、前記巻線を供給電圧で励磁するステップと、前記供給電圧又は前記モータの速度の変化に応じて前記導通期間の長さを変化させるステップを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ブラシレス永久磁石モータの効率を改善する、ブラシレス永久磁石モータを制御する方
法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はブラシレス永久磁石モータを制御する方法を提供し、その方法は、電気的サイクルのそれぞれ半分を、導通期間とその後に続く1次惰性回転期間に分割するステップと、導通期間を、第1の励磁期間と、2次惰性回転期間と、第2の励磁期間とに分割するステップと、各励磁期間の間にモータの巻線を励磁するステップと、各惰性回転期間の間に巻線を
フリーホイールするステップとを含み、2次惰性回転期間は、巻線の逆起電力に関連する巻線の電流の高調波成分を減少させる導通期間内に位置及び長さを有する。
【0005】
永久磁石モータについては、励磁の間のトルク対電流比は、相電流の波形が逆起電力の波形と一致する時最大となる。したがって、逆起電力の波形に関連する相電流の波形の高調波成分を減少させる2次惰性回転期間を使用することにより、モータの効率が改善される。
【0006】
2次惰性回転期間は巻線の逆起電力が上昇する時に発生し得、1次惰性回転期間は逆起電力が主として低下する時に発生し得る。相巻線を励磁する時、相電流は逆起電力の速度より速い速度で上昇し得る。その結果、相電流は逆起電力より先行し得る。2次惰性回転期間は相電流の上昇を瞬間的に阻止する役割を果たす。その結果、相電流は導通期間の間より逆起電力の上昇に密接に追従する。1次惰性回転期間は、電源から如何なる追加の電力が引き出されることなくトルクが相電流により生成され続けるよう、巻線のインダクタンスを利用する。逆起電力が低下するにつれて、より少ないトルクが所与の相電流に対し生成される。したがって、逆起電力を低下させる期間に巻線を
フリーホイールすることにより、モータの効率はトルクに悪影響を及ぼさずに改善され得る。
【0007】
2次惰性回転期間の長さは、1次惰性回転期間、第1の励磁期間、及び第2の励磁期間のそれぞれより少なくなり得る。その結果、2次惰性回転期間は、モータの電力に悪影響を及ぼさずに相電流の上昇を瞬間的に阻止する役割を果たす。
【0008】
本方法は、巻線を供給電圧で励磁するステップと、供給電圧及び/又はモータの速度の変化に応じて導通期間の長さを変化させるステップを含み得る。その結果、モータの電力に関しより良い制御が達成され得る。
【0009】
供給電圧が減少するにつれ、より少ない電流とより少ない電力が同じ導通期間に亘りモータに駆動される。同様に、モータの速度が増加するにつれ、巻線において誘導される逆起電力の大きさは増加する。その後、より少ない電流とより少ない電力が同じ導通期間に亘りモータに駆動される。したがって、これを補償するため、本方法は、供給電圧の減少及び/又はモータの速度の増加に応じて導通期間を増加するステップを含み得る。
【0010】
第1の励磁期間及び第2の励磁期間は同じ長さを有し得る。これは少なくとも2つの利点を有する。第1に、相電流の高調波成分が2つの励磁期間に亘りより良くバランスが取れる。その結果、導通期間の間の相電流の全体の高調波成分は、2つの励磁期間の長さが異なるならば低下しやすくなる。第2に、ハードウェアで本方法を実行する際、ハードウェアは両方の励磁期間を規定するのに使用され得る単一の励磁期間を記憶するだけで良い。あるいは、本方法が供給電圧及び/又はモータの速度の変化に応じて導通期間の長さを変化するステップを含む場合、ハードウェアは各電圧及び/又は速度の点に対して単一の励磁期間を記憶するだけで良い。その結果、より少ないメモリが励磁期間を記憶するのに必要となる。
【0011】
2次惰性回転期間の長さは固定され得る。これは本方法をハードウェアで実行する時、ハードウェアは単一の2次惰性回転期間を記憶するだけで良いという利点がある。この利点に拘わらず、それでもなお本方法は、巻線を供給電圧で励磁するステップと、供給電圧及び/又はモータの速度の変化に応じて2次惰性回転期間を変化させるステップを含み得る。特に、本方法は、供給電圧の増加又はモータの速度の減少に応じて2次惰性回転期間の長さを増加させるステップを含み得る。供給電圧が増加するにつれ、相巻線の電流は励磁の間より速い速度で上昇する。その結果、逆起電力の波形に関連する相電流の波形の高調波成分は増加しやすい。供給電圧の増加に応じて2次惰性回転期間を増加させることにより、相電流の上昇はより長い期間阻止され、よって相電流の波形の高調波成分は減少され得る。モータの速度が減少するにつれ、逆起電力はより遅い速度で上昇する。更に、逆起電力の大きさは減少し、よって相巻線の電流は励磁の間より速い速度で上昇する。よって逆起電力はより遅い速度で上昇し、一方相電流はより速い速度で上昇する。その結果、逆起電力の波形に関連する相電流の波形の高調波成分は増加しやすい。モータの速度の減少に応じて2次惰性回転期間を増加させることにより、相電流の上昇はより長い期間阻止され、よって相電流の波形の高調波成分は減少され得る。したがって、供給電圧の増加及び/又はモータの速度の減少に応じて2次惰性回転期間を増加させることは、効率の更なる改善をもたらし得る。
【0012】
本発明はブラシレス永久磁石モータを制御する方法を提供し、その方法は、第1の速度範囲に亘りデュアル・スイッチ・モードで作動するステップと、第2の速度範囲に亘りシングル・スイッチ・モードで作動するステップとを含み、第2の速度範囲は第1の速度範囲より高く、各モードは、電気的サイクルのそれぞれ半分を、導通期間とその後に続く1次惰性回転期間に分割するステップを含み、シングル・スイッチ・モードは、導通期間の間にモータの巻線を励磁するステップと、1次惰性回転期間の間に巻線を
フリーホイールさせるステップを含み、デュアル・スイッチ・モードは、導通期間を、第1の励磁期間と、2次惰性回転期間と、第2の励磁期間とに分割するステップと、各励磁期間の間に巻線を励磁するステップと、各惰性回転期間の間に巻線を
フリーホイールさせるステップを含む。
【0013】
第1の速度範囲に亘り作動する際、各電気的半サイクルの長さはより長く、よって逆起電力はより遅い速度で上昇する。更に、逆起電力の大きさは低くなり、よって相電流はより速い速度で上昇する。よって逆起電力はより遅い速度で上昇するが、相電流はより速い速度で上昇する。その結果、相電流は、励磁の間、逆起電力の速さより速い速度で上昇し得る。2次惰性回転期間を導入することにより、相電流の上昇は瞬間的に阻止され、その結果、相電流の上昇はより逆起電力の上昇に密接に追従する。その結果、逆起電力の波形に関連する相電流の波形の高調波成分は減少し、よってモータの効率は増加する。第2の速度範囲に亘り作動する際、各電気的半サイクルの長さは短くなり、よって逆起電力はより速い速度で上昇する。更に、逆起電力の大きさは高くなり、よって相電流はより遅い速度で上昇する。よって逆起電力はより速い速度で上昇するが、相電流はより遅い速度で上昇する。その結果、相電流は、励磁の間、逆起電力の速度と同様又はそれより遅い速度で上昇し得る。2次惰性回転期間は、逆起電力に関連する相電流の高調波成分を増加させるための役割を果たすのみであろう。したがって、デュアル・スイッチ・モードをより遅い速度で、及びシングル・スイッチ・モードをより速い速度で使用することにより、モータの効率は両方の速度範囲に亘り改善され得る。
【0014】
各モードは、巻線を供給電圧で励磁するステップと、供給電圧又はモータの速度の変化に応じて導通期間の長さを変化させるステップを含み得る。その結果、モータの電力に関し、より良い制御が達成され得る。上述の理由により、本方法は、供給電圧の減少及び/又はモータの速度の増加に応じて、導通期間を増加させるステップを含み得る。
【0015】
本発明は更に、ブラシレス永久磁石モータを制御する方法を提供し、その方法は、第1の速度範囲に亘りマルチ・スイッチ・モードで作動するステップと、第2の速度範囲に亘りデュアル・スイッチ・モードで作動するステップを含み、第2の速度範囲は第1の速度範囲より高く、マルチ・スイッチ・モードは、電気的サイクルのそれぞれ半分の間、モータの巻線の励磁及び
フリーホイールを複数回連続して行うステップを含み、巻線は、巻線の電流が所定の限度を超える場合に
フリーホイールし、デュアル・スイッチ・モードは電気的サイクルのそれぞれ半分を、導通期間とその後に続く1次惰性回転期間とに分割するステップと、導通期間を、第1の励磁期間と、2次惰性回転期間と、第2の励磁期間とに分割するステップと、各励磁期間の間に巻線を励磁するステップと、各惰性回転期間の間に巻線を
フリーホイールさせるステップを含む。
【0016】
第1の速度範囲に亘り作動する際、各電気的半サイクルの長さは比較的長く、よって逆起電力が上昇する速度は比較的遅い。更に、逆起電力の大きさは比較的低く、よって相電流が上昇する速度は比較的速い。その結果、第1の温度範囲で作動する際、相電流は逆起電力の速度よりずっと速い速度で上昇する。よって相巻線は、相電流が所定の限度を超える時は必ず
フリーホイールする。これは本方法を実行するのに使用されるハードウェアを過度の相電流から保護する。モータの速度が増加するにつれ、各電気的半サイクルの長さは減少し、よって逆起電力はより速い速度で上昇する。更に、逆起電力の大きさが上昇し、よって相電流がより遅い速度で上昇する。第2の速度範囲で作動する際、相電流は所定の限度を超えない。それでもなお相電流は、励磁の間、逆起電力の速度より速い速度で上昇する。2次惰性回転期間を導入することにより、相電流の上昇は瞬間的に阻止され、その結果、相電流の上昇はより逆起電力の上昇に密接に追従する。その結果、モータの効率は改善される。したがって、マルチ・スイッチ・モードをより遅い速度で、及びデュアル・スイッチ・モードをより速い速度で使用することにより、ハードウェアは、より遅い速度で過度の相電流から保護され、一方モータの効率はより速い速度で改善され得る。
【0017】
本発明は、更に先行する段落の何れか1つに記載された方法を実行するよう構成された制御回路と、ブラシレス永久磁石モータ及び制御回路を含むモータ・アセンブリを提供する。
【0018】
制御回路は、モータの巻線に結合するインバータと、ゲート・ドライバー・モジュールと、コントローラを含み得る。ゲート・ドライバー・モジュールは、コントローラから受信した制御信号に応じて、インバータのスイッチを制御する。コントローラは、電気的サイクルのそれぞれ半分を、導通期間及び1次惰性回転期間に分割することに関与し、また導通期間を、第1の励磁期間と、2次惰性回転期間と、第2の励磁期間とに分割することに関与する。コントローラは、各励磁期間に巻線を励磁し且つ各惰性回転期間に巻線を
フリーホイールさせる制御信号を生成する。
【0019】
本発明をより容易に理解可能とするため、本発明の実施形態が、例示として、添付の図面を参照して説明される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び
図2のモータ・アセンブリ1は、直流電源2により電源供給され、ブラシレス・モータ3と制御回路4を備える。
【0022】
モータ3は4極固定子6に関連して回転する4極永久磁石回転子5を備える。固定子6の周りに巻かれる導線6は共に結合され、単一の相巻線7を形成する。
【0023】
制御回路4は、フィルタ8、インバータ9、ゲート・ドライバー・モジュール10、電流センサ11、電圧センサ12、位置センサ13、及びコントローラ14を備える。
【0024】
フィルタ8は、インバータ9の切り替えから生じる比較的高周波のリップルを平滑にするリンクコンデンサC1を備える。
【0025】
インバータ9は、相巻線7を電圧レールに結合させるフルブリッジの4つのパワー・スイッチQ1ないしQ4を備える。スイッチQ1ないしQ4のそれぞれは、フリーホイール・ダイオードを含む。
【0026】
ゲート・ドライバー・モジュール10は、コントローラ14から受信した制御信号に応じてスイッチQ1ないしQ4を遮断と導通に駆動する。
【0027】
電流センサ11は、インバータとゼロ電圧レールの間に配置された分流抵抗器R1を備える。電流センサ11にかかる電圧は、電源2に連結された際の相巻線7における電流の測定を提供する。電流センサ11にかかる電圧は、信号I_PHASEとしてコントローラ14へ出力される。
【0028】
電圧センサ12は、直流電圧レールとゼロ電圧レールの間に配置された分圧器R2及びR3を備える。電圧センサは信号V_DCをコントローラ14に出力し、この信号は電源2により提供される供給電圧の減少された測定値を表す。
【0029】
位置センサ13は、固定子6のスロット開口に配置されたホール効果センサを備える。位置センサ13は、位置センサ13を通る磁束の方向に応じて、論理的にハイ又はローのデジタル信号であるHALLを出力する。よってHALL信号は回転子5の角度位置の測定を提供する。
【0030】
コントローラ14は、プロセッサ、記憶装置、及び複数の周辺機器(例えば、AD変換器、比較器、タイマー他)を有するマイクロコントローラを備える。記憶装置は、プロセッサにより実行される命令と、作動中にプロセッサにより使用される制御パラメータと、参照テーブルを記憶する。コントローラ14は、モータ3の動作の制御に関与し、4つのパワー・スイッチQ1ないしQ4のそれぞれを制御する4つの制御信号S1からS4を生成する。制御信号はゲート・ドライバー・モジュール10に出力され、ゲート・ドライバー・モジュールはそれに応じてスイッチQ1ないしQ4を遮断及び導通に駆動する。
【0031】
図3は、コントローラ14による出力された制御信号S1ないしS4に応じて、スイッチQ1ないしQ4の許可された状態をまとめたものである。以下、用語「セット」及び「クリア」は、信号がそれぞれ論理的にハイ及びローにされたことを示すのに使用される。
図3から理解されるように、コントローラ14は、相巻線7を左から右に励磁するために、S1とS4をセットし、S2とS3をクリアする。逆に、コントローラ14は、相巻線7を右から左に励磁するために、S2とS3をセットし、S1とS4をクリアする。コントローラ14は、相巻線7を
フリーホイールさせるために、S1とS3をクリアし、S2とS4をセットする。
フリーホイールは、相巻線7内の電流がインバータ9のロー側のループの周りで再循環することを可能にする。本発明において、パワー・スイッチQ1ないしQ4は両方向での導通が可能である。したがって、コントローラ14は、惰性回転
期間の間、ロー側のスイッチQ2及びQ4の両方を導通とし、その結果、電流は、効率の落ちるダイオードではなくスイッチQ2及びQ4を通って流れる。場合によっては、インバータ9は一方向のみで導通するパワー・スイッチを備え得る。この場合、コントローラ14は、相巻線7を左から右に
フリーホイールさせるために、S1、S2及びS3をクリアし、S4をセットする。その後、コントローラ14は、相巻線7を右から左に
フリーホイールさせるために、S1、S3及びS4をクリアし、S2をセットする。その後、インバータ9のロー側のループの電流は、導通とされたロー側のスイッチ(例えば、Q4)を通って下へ流れ、遮断とされたロー側のスイッチ(例えば、Q2)のダイオードを通って上に流れる。
【0032】
コントローラ14は、回転子5の速度に応じて、3つのモードの内の1つにおいて作動する。第1の閾値より下の速度で、コントローラ14はマルチ・スイッチ・モードで作動する。第1の閾値より上で、第2の閾値より下の速度で、コントローラ14はデュアル・スイッチ・モードで作動する。第3の速度閾値より上の速度で、コントローラ14はシングル・スイッチ・モードで作動する。回転子5の速度はHALL信号の連続するエッジの間隔から決定され、以下、この間隔はHALL期間と呼ばれる。
【0033】
マルチ・スイッチ・モードはモータ3の加速の間に使用され、一方、デュアル・スイッチ・モード及びシングル・スイッチ・モードは定常状態の間に使用される。各モードの説明が以下になされる。デュアル・スイッチ・モードは、シングル・スイッチ・モードに対して小さいが重要な変化を含む。したがって、変化の性質及び重要性がより良く理解されるために、シングル・スイッチ・モードの説明がデュアル・スイッチ・モードの前になされる。
【0034】
3つすべてのモードにおいて、コントローラ14は、HALL信号のエッジに応じて相巻線7を転流する。各HALLエッジは、回転子5の極性の変化、したがって相巻線7により誘導された逆起電力(逆EMF)の極性の変化に対応する。より詳細には、各HALLエッジは逆起電力のゼロ交差に対応する。転流は相巻線7を通る電流の方向の逆転を含む。その結果、電流が左から右の方向に相巻線7を通って流れる場合、転流は右から左に巻線を出ることを含む。
【0035】
説明を簡単にするため、コントローラ14がHALLエッジと同期して、即ち逆起電力のゼロ交差と同期して相巻線を転流することが仮定される。しかし実際は、コントローラ14は、HALLエッジに対して、転流を先行、同期、又は遅延させ得る。
【0036】
マルチ・スイッチ・モード
マルチ・スイッチ・モードで作動する際、コントローラ14は、電気的サイクルのそれぞれ半分に亘り、連続して相巻線7を励磁及び
フリーホイールさせる。より詳細には、コントローラ14は、相巻線7を励磁し、電流信号であるI_PHASEを監視し、相巻線7の電流が所定の限度を超えた場合に相巻線7を
フリーホイールさせる。
フリーホイールは、所定の惰性回
転期間の間継続し、その間、相巻線7の電流は電流の限度以下のレベルまで低下する。惰性回
転期間が終了すると、コントローラ14は再び相巻線7を励磁する。この相巻線7の励磁と
フリーホイールのプロセスは、電気的半サイクルの全体の長さに亘り継続する。よってコントローラ14は、各電気的半サイクルの間、励磁から
フリーホイールへの切り替えを複数回行う。
【0037】
図4は、マルチ・スイッチ・モードで作動する際の、HALL信号、逆起電力、相電流、相電圧、及び2、3のHALL期間に亘る制御信号の波形を示す。
【0038】
比較的遅い速度では、相巻線7内で誘導された逆起電力の大きさは比較的小さい。よって相巻線7の電流は、励磁の間、比較的速く上昇し、惰性回転
期間の間、比較的遅く低下する。加えて、各HALL期間の長さ、したがって各電気的半サイクルの長さは比較的長い。その結果、コントローラ14が励磁から
フリーホイールに切り替わる頻度は比較的高い。しかし、回転速度が増加するにつれ、逆起電力の大きさは増加し、よって電流は、励磁の間、より遅い速度で上昇し、惰性回転
期間の間、より速い速度で低下する。なお、各電気的半サイクルの長さは減少する。その結果、切り替えの頻度は減少する。
【0039】
シングル・スイッチ・モード
シングル・スイッチ・モードで作動する際、コントローラ14は、電気的サイクルの各半分を、導通期間とその後に続く惰性回転期間とに分割する。その後、コントローラ14は、導通期間に相巻線7を励磁し、惰性回転期間に相巻線7を
フリーホイールさせる。シングル・スイッチ・モード内で作動する際、相電流は励磁の間に電流の限度を超えない。その結果、コントローラ14は、各電気的半サイクルの間に、一度だけ励磁から
フリーホイールに切り替えを行う。
【0040】
図5は、シングル・スイッチ・モードで作動する際の、HALL信号、逆起電力、相電流、相電圧、及び2、3のHALL期間に亘る制御信号の波形を示す。
【0041】
相巻線7を励磁するのに使用される供給電圧の大きさは変化し得る。例えば、電源2は使用時に放電する電池を備えても良い。あるいは、電源2は、交流電源、整流器及び比較的平滑な電圧を提供する平滑コンデンサを備えていても良いが、交流電源のRMS電圧は変化し得る。供給電圧の大きさの変化は、導通期間に相巻線7に駆動される電流の量に影響するであろう。その結果、モータ3の電力は供給電圧の変化に影響を受けやすい。供給電圧に加え、モータ3の電力は回転子5の速度の変化に影響を受けやすい。回転子5の速度が変化する(例えば、負荷の変化に応じて)のと同じように、逆起電力の大きさも変化する。その結果、導通期間に相巻線7に駆動される電流の量は変化し得る。よって、コントローラ14は、回転子5の速度及び/又は供給電圧の大きさの変化に応じて、導通期間の長さを変化させる。その結果、コントローラ14は、回転子速度及び/又は供給電圧の変化に応じてモータ3の電力をより良く制御できる。
【0042】
導通期間の長さを変化させるために、コントローラ14は、異なる電圧及び/又は速度に対する異なる導通期間の参照テーブルを記憶する。コントローラ14は、供給電圧及び/又は回転子速度を使用して参照テーブルにインデックスを付し、(例えば、各HALLエッジ又はn番目のHALLエッジに応じて)導通期間を選択する。回転子5の速度はHALLエッジの長さから得られ、一方、供給電圧はV_DC信号から得られる。
【0043】
参照テーブルは、各電圧及び/又は速度の点において特定の出力電力を達成する導通期間を記憶する。供給電圧が減少するにつれ、より少ない電流及びより少ない電力が同じ導通期間に亘りモータ3に駆動される。同様に、回転子速度が増加するにつれ、逆起電力の大きさが増加する。したがって、より少ない電流、よってより少ない電力が同じ導通期間に亘りモータ3に駆動される。したがって、この動作を補償するため、コントローラ14は、供給電圧の減少又は回転子速度の増加に応じて増加する導通期間を使用し得る。
【0044】
デュアル・スイッチ・モード
相巻線の励磁の間、トルク対電流比は、相電流の波形が逆起電力の波形と一致する時に最大となる。よってモータ3の効率の改善は、相電流の波形を逆起電力の波形とより良く一致するよう形成すること、即ち逆起電力の波形に関連する相電流の波形の高調波成分を減少させることにより達成される。出願人は、シングル・スイッチ・モード内でより遅い速度で作動する際、モータ3の効率の改善が比較的小さい2次惰性回転期間を導通期間に挿入することにより達成されることを発見した。
【0045】
より遅い回転子速度において、HALL期間の長さは長くなり、よって逆起電力はより遅い速度で上昇する。更に、逆起電力の大きさは低くなり、よって供給電圧が変わらないと仮定すると、相巻線の電流はより速い速度で上昇する。その結果、より遅い速度で、逆起電力はより遅い速度で上昇するが、相電流はより速い速度で上昇する。その結果、相電流は、導通期間の初期の部分の間、逆起電力の速度より速い速度で上昇する。出願人は、比較的小さい2次惰性回転期間を導通期間の間に導入することにより、相電流の上昇が瞬間的に阻止され、その結果、相電流の上昇が逆起電力の上昇により密接に追従することを発見した。その結果、逆起電力の波形に関連する相電流の波形の高調波成分は減少し、よってモータ3の効率は増加される。
【0046】
デュアル・スイッチ・モードで作動する際、コントローラ14は、電気的サイクルのそれぞれ半分を、導通期間と、その後に続く1次惰性回転期間とに分割する。その後、コントローラ14は、導通期間を、第1の励磁期間と、その後に続く第2の惰性期間と、その後に続く第2の励磁期間とに分割する。その後、コントローラ14は、2つの励磁期間のそれぞれの間、相巻線7を励磁し、2つの惰性回転期間のそれぞれの間、相巻線を
フリーホイールする。シングル・スイッチ・モードのように、相電流は、励磁の間、電流限度を超えない。したがって、コントローラ14は、電気的半サイクルのそれぞれの間、励磁から
フリーホイールに2回切り替えを行う。
【0047】
図6は、デュアル・スイッチ・モードで作動する際、2、3のHALL期間に亘るHALL信号、逆起電力、相電流、相電圧、及び制御信号の波形を示す。
【0048】
コントローラ14は、従来コントローラ14がシングル・スイッチ・モードで作動していた低い速度で、デュアル・スイッチ・モードで作動する。シングル・スイッチ・モードのように、コントローラ14は、供給電圧の大きさ及び/又は回転子5の速度の変化に応じて、導通期間の長さを変化させる。この目的を達成するために、コントローラ14は、異なる電圧及び/又は速度のための異なる励磁期間の参照テーブルを記憶する。その後、コントローラ14は、供給電圧及び/又は回転子速度を使用して参照テーブルにインデックスを付し、励磁期間を選択する。その後、選択された励磁期間は、第1の励磁期間及び第2の励磁期間の両方を規定するために使用され、即ちコントローラ14は、選択された励磁期間に相巻線7を励磁し、2次惰性回転期間に相巻線7を
フリーホイールし、選択された励磁期間に再び相巻線7を励磁する。
【0049】
第1の励磁期間及び第2の励磁期間は同じ長さであるため、2次惰性回転期間は導通期間の中心で発生する。これは少なくとも2つの利点を有する。第1に、相電流の高調波成分は2つの励磁期間に亘りより良くバランスが取れる。その結果、導通期間に亘る相電流の全体の高調波成分は、2つの励磁期間の長さが異なるならば低くなりやすい。第2に、参照テーブルは、各電圧及び/又は速度の点毎に1つの励磁期間を記憶するだけで良い。その結果、より少ないメモリが参照テーブルに必要となり、よってより安価なコントローラが使用され得る。上述の利点に拘わらず、供給電圧及び/又は回転子速度の変化に応じて2次惰性回転期間の位置を変えることが望ましい可能性がある。これは、各電圧及び/又は速度の点のために、第1の励磁期間と第2の励磁期間を記憶する参照テーブルを使用することにより達成され得る。
【0050】
コントローラ14は固定の長さの2次惰性回転期間を使用する。これは、コントローラ14のメモリ要件を減少させる利点がある、即ちコントローラ14は単一の2次惰性回転期間を記憶するだけで良い。しかし代替的に、コントローラ14は、供給電圧及び/又は回転子速度の変化に応じて変化する2次惰性回転期間を使用するかもしれない。特に、コントローラ14は、供給電圧の増加又は回転子速度の減少に応じて増加する2次惰性回転期間を使用し得る。供給電圧が増加するにつれ、回転子速度及び逆起電力の大きさが変化しないと仮定すると、相巻線7の電流は、励磁の間、より速い速度で上昇する。その結果、逆起電力の波形に関連する相電流の波形の高調波成分は増加しやすい。供給電圧の増加に応じて2次惰性回転期間の長さを増加させることにより、相電流の上昇がより長い期間阻止され、相電流の波形の高調波成分は減少され得る。回転子速度が減少するにつれ、HALL期間の長さは増加し、よって逆起電力はより遅い速度で上昇する。更に、逆起電力の大きさは減少し、供給電圧が変化しないと仮定すると、相巻線7の電流はより速い速度で上昇する。その結果、回転子速度が減少するにつれ、逆起電力はより遅い速度で上昇するが、相電流はより速い速度で上昇する。よって逆起電力の波形に関連する相電流の波形の高調波成分は増加しやすい。回転子速度の減少に応じて2次惰性回転期間を増加させることにより、相電流の上昇はより長い時間阻止され、よって相電流の波形の高調波成分は減少され得る。したがって、供給電圧の増加及び/又は回転子速度の減少に応じて2次惰性回転期間を増加させることは、効率の更なる改善をもたらし得る。
【0051】
2次惰性回転期間の長さは比較的短く、相電流の上昇を瞬間的に阻止することのみを意図する。したがって、2次惰性回転期間は1次惰性回転期間と各励磁期間の両方より短い。2次惰性回転期間の実際の長さは、モータ・アセンブリ1の特定の特徴、即ち、相巻線7のインダクタンス、供給電圧の大きさ、及び逆起電力の大きさ等に依存するであろう。長さに関係なく、2次惰性回転期間は相巻線7の逆起電力を上昇させる期間に生じる。これは、全部ではないとしても逆起電力を低下させる期間に主に生じる1次惰性回転期間と対照的である。1次惰性回転期間は相巻線7のインダクタンスを使用し、その結果、電源2から如何なる追加の電力も引き出さずにトルクが相電流により生成され続ける。逆起電力が低下するにつれ、より少ないトルクが所与の相電流に対し生成される。したがって、逆起電力を低下させる期間に相巻線7を
フリーホイールさせることにより、モータ3の効率は、トルクに悪影響を及ぼさずに改善され得る。
【0052】
上述の実施形態では、コントローラ14は、定常状態の間、2つの異なるモードで作動する。第1の速度範囲に亘り作動する際は、デュアル・スイッチ・モードが使用され、第2のより速い速度範囲に亘り作動する際は、シングル・スイッチ・モードが使用される。これは、定常状態内で速度範囲全体に亘りモータ3の効率を改善する。より速い速度範囲で作動する際に第2の惰性回転速度が使用されるならば、少なくとも本実施形態ではモータ3の効率は悪くなるであろう。これは、より速い速度範囲で作動する際、相電流は一般に逆起電力の速度と同様の又はそれより遅い速度で上昇するためである。したがって、2次惰性回転期間の導入は、逆起電力に関連する相電流の高調波成分を増加させる役割を果たすのみであろう。
【0053】
前の段落でなされた説明に拘わらず、ことによると、デュアル・スイッチ・モードは、より遅い速度の場合と同様に、より速い速度でも使用され得る。例えば、相巻線7のインダクタンスは比較的遅く、その結果、比較的速い速度で作動していても、相インダクタンスに関連する時定数(L/R)はHALL期間の長さに比べて特に短い。その結果、相電流は逆起電力に比べて比較的迅速に上昇する。あるいは、おそらく速い速度での逆起電力に関連する供給電圧の大きさは比較的高く、その結果、相電流は逆起電力に比べて比較的迅速に上昇する。これらの場合の両方とも、効率の改善は、遅い速度の場合と同様に、速い速度でもデュアル・スイッチ・モードを使用することにより達成され得る。
【0054】
上述の実施形態において、コントローラ14は、シングル・スイッチ・モードで使用する導通期間とデュアル・スイッチ・モードで使用する励磁期間の参照テーブルを記憶する。1次惰性回転期間は、導通期間をHALL期間から減算することにより計算可能である。あるいは、相巻線7が各HALLエッジと同期して転流される場合、
1次惰性回転期間は、次のHALLエッジがコントローラ14により感知されるまで無制限に継続し得る。コントローラ14は導通期間及び励磁期間の参照テーブルを記憶するが、異なる手段により同じレベルの制御が達成され得ることが分かるであろう。例えば、導通期間及び励磁期間の参照テーブルを記憶するよりむしろ、コントローラ14は1次惰性回転期間の参照テーブルを記憶可能であり、その参照テーブルは、同様に供給電圧の大きさ及び/又は回転子5の速度を使用してインデックスが付される。導通期間は、HALL期間から1次惰性回転期間を減算することにより得られ、各励磁期間は、HALL期間から第1及び2次惰性回転期間を減算し、その結果を2で割ることにより得られるであろう。
T_CD=T_HALL−T_FW_1
T_EXC=(T_HALL−T_FW_1−T_FW_2)/2
ここで、T_CDは導通期間であり、T_EXCは第1及び第2の励磁期間のそれぞれであり、T_HALLはHALL期間であり、T_FW_1は1次惰性回転期間であり、T_FW_2は2次惰性回転期間である。