(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055478
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】再調整可能多軸椎弓根スクリュー
(51)【国際特許分類】
A61B 17/70 20060101AFI20161219BHJP
A61B 17/86 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
A61B17/70
A61B17/86
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-533808(P2014-533808)
(86)(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公表番号】特表2014-531942(P2014-531942A)
(43)【公表日】2014年12月4日
(86)【国際出願番号】EP2012065196
(87)【国際公開番号】WO2013050187
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年7月7日
(31)【優先権主張番号】102011054203.5
(32)【優先日】2011年10月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポイカート アンドリア
【審査官】
毛利 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−510468(JP,A)
【文献】
特表2010−537780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/70
A61B 17/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸椎弓根スクリュー(1)であって、
椎骨内に椎弓根スクリュー(1)をアンカー固定するためのねじ付きシャフト部分(2)であって、長手方向ビーム(30)のための装着スリーブ(8)に回転可能および/または回動可能に結合されたシャフト頭部(4)が設けられた1つの軸方向端部を有するシャフト部分(2)と、
前記シャフト部分(2)に対して前記装着スリーブ(8)を選択的に位置固定するための固定デバイス(20、32)であって、好ましくはグラブねじまたはねじ付きナットであるロック要素(32)及び調整リング(20)を備え、前記調整リング(20)が、機能位置において前記ロック要素(32)の保持力に対して反作用し、かつ、非機能位置において前記ロック要素(32)の保持力を選択的に解放するように設計および/または保持されている、固定デバイス(20、32)と、を備えており、
前記調整リング(20)が、前記装着スリーブ(8)とパンチ(24)の外側に配置されており、前記パンチ(24)が、前記装着スリーブ(8)内で軸方向に移動可能なように、かつ、前記ロック要素(32)と前記シャフト頭部(4)の間で力を伝達するように、前記装着スリーブ(8)内に支持されており、
前記調整リング(20)は、前記機能位置において前記装着スリーブ(8)と前記パンチ(24)に対して径方向内側に反力が作用するように設けられていることを特徴とする、多軸椎弓根スクリュー。
【請求項2】
前記調整リング(20)が前記機能位置にある場合には、前記ロック要素(32)が、前記シャフト部分(2)に対する前記装着スリーブ(8)の位置固定のために提供されるのに対して、前記ロック要素(32)がすでに固定状態にあるときには、前記調整リング(20)が、前記機能位置から前記非機能位置へシフトされ、前記ロック要素(32)の保持力を解放するために提供されることを特徴とする、請求項1に記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項3】
前記調整リング(20)が、手作業で破壊可能な使い捨て部品として設計され、および/または、前記調整リング(20)が、直径を変更することができ、および/または、前記機能位置から前記非機能位置へと移動させることのできるように移動可能に支持されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項4】
前記調整リング(20)が、前記シャフト部分(2)に対して前記装着スリーブ(8)を位置固定するための固定機構に対して作用することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項5】
前記調整リング(20)が、好ましくは前記装着スリーブ(8)および前記パンチ(24)の外側で軸方向に案内されるとともに、その機能位置において、前記装着スリーブ(8)および/または前記パンチ(24)に対して半径方向内向きの反力をかけるために設けられているテンショニングリングであることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項6】
前記テンショニングリング(20)が、前記装着スリーブ(8)の外面上で軸方向にシフト可能になるように支持されて、それによって機能位置または非機能位置に選択的に移動できることを特徴とする、請求項5に記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項7】
前記テンショニングリング(20)が、前記シャフト部分(2)の最大荷重より低い、所定の力をかけることで、手作業で破壊可能な材料で製作されるか、または手作業で作動可能な所定の破断点が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項8】
前記装着スリーブ(8)および/または前記パンチ(24)が、少なくとも、好ましくはテンショニングデバイスおよび/または締付けデバイスの形態である、さらに好ましくはテンショニングリングの形態である、前記調整リング(20)の領域において、少なくとも半径方向において作用する弾性を有する形態を備えていることを特徴とする、請求項5から7のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項9】
前記装着スリーブ(8)および/または前記パンチ(24)が、長手方向スロット(16)を備えて実現されており、半径方向外側に弾性的に曲がることができるとともに、前記調整リング(20)によって半径方向に共に選択的に保持される、ラグ(18)を生成すること、または前記装着スリーブ(8)および/または前記パンチ(24)の材料が、少なくとも部分的に半径方向に弾性的に拡張可能であることを特徴とする、請求項8に記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項10】
前記テンショニングリング(20)が軸方向にシフト可能である場合に、機能位置または非機能位置をマークするために、2つの軸方向に離間されたラッチ位置が、前記装着スリーブ(8)および/または前記パンチ(24)上に実現されていることを特徴とする、請求項5から9のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項11】
前記調整リングが、前記装着スリーブ(8)の半径方向の変形に対して反作用するように、その機能位置において半径方向の力を受けるとともに、その非機能位置において、画定された軸方向部分における前記装着スリーブ(8)の半径方向の変形を許容することを特徴とする、請求項1に記載の多軸椎弓根スクリュー。
【請求項12】
2つの脊椎体の長手方向の相互接続のための、少なくとも1つの長手方向ビーム(30)と、複数の請求項1から11のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー(1)とからなる、脊椎体安定化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して多軸椎弓根スクリューに関し、特に、請求項1のプリアンブルに記載の再調整可能多軸椎弓根スクリューに加えて、対応する椎骨安定化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
椎弓根スクリューは、基本的に、経椎弓根スクリュー連結システムにより、骨折、腫瘍、炎症、奇形および変性不安定性の場合の脊柱の背側安定化を行うのに役立つ。この配置では、椎弓根スクリューは隣接する椎骨の椎弓根に配置されて、軸方向に互いに重ねて配置された椎弓根スクリューと、軸方向に延びる長手方向ビームまたはウェブとの間に角度的に安定した連結を生成する。このような配置において、椎弓根スクリューと長手方向ビームは、椎骨安定化システムを形成する。
【0003】
この目的のために、椎弓根スクリューは、通常、軸方向のシャフト状の雄ねじ部を有しており、このねじ部に、ねじ頭部側の、いわゆるチューリップが隣接している。前記チューリップの構造は、長手方向にトンネル/スロットが設けられた、U字形の装着スリーブを形成するとともに、雌ねじを含み、2つの対向する長手方向スロットが、所定の間隙幅を有するスロット間隙をそれぞれ画定している。長手方向ビームは、互いに平行に延びる長手方向スロットに挿入され、雌ねじに螺合されるグラブねじまたはねじ付きナットによって、固定されている。
【0004】
原理的に、椎弓根スクリューは、2つの基本的な種類、すなわち単軸および多軸の椎弓根スクリューにグループ化される。単軸椎弓根スクリューの場合は、雄ねじ部とチューリップは、互いに強固に連結されるように、例えば溶接または半田付けされて、互いに一体に形成されている。しかし、多軸椎弓根スクリューは、別のシャフト部品として製造される雄ねじ部を備え、この雄ねじ部は、主にボール形または(半)球形のねじ頭部を有し、このねじ頭部は、相対的に回動可能にスリーブ形チューリップに包囲されるとともに、同時に、頭部とシャフトとの間の移行領域において、前記スリーブ形チューリップに係合されている。このように、シャフトに対する位置合わせとは実質的に関係なく、所望の位置および位置合わせを得るために、チューリップは、椎骨の椎弓根チャネル内で雄ねじ部を下げた後に、シャフトに対して旋回および/または回転させることが可能である。この場合に、アンダカットは、チューリップがシャフト頭部から引き離されるのを防ぐ。続いて、チューリップは、介在ウェブを備えるグラブねじを用いて(シングル・スクリュー方式)、または追加のスクリュー/スクリュー・ナットからによって(マルチ・スクリュー方式)、ねじ頭部上のそれ自体の位置に固定される。
【0005】
従来技術は、例えば、EP2301458A1によれば、雄ねじと球形頭部を備えるシャフト部品に加えて、長手方向スロットを設けられて、長手方向ビーム/ウェブを受け入れるための、U形装着スリーブ(チューリップ)からなる、シングル・スクリュー方式による多軸椎弓根スクリューを開示している。長手方向スロットの開口部に近づく軸方向領域において、装着スリーブは、グラブねじにねじ込むための雌ねじを有するとともに、それぞれのスロット基部に近づく軸方向領域においては、半径方向内側向きの円周突出部または肩部を備えている。さらに、ある種のピストンまたはパンチ(インレーとも呼ばれる)が、その中で軸方向にシフト可能となるように装着スリーブに挿入され、スナップリングにより脱落が防止される。
【0006】
EP2301458A1から既知である多軸椎弓根スクリューを組み立てるためには、最初に、装着スリーブを、シャフト部品上をその遠位端(シャフト頭部の反対側にある端部)から出発して、装着スリーブの半径方向内側肩部がシャフト頭部に(その下側で)当接するまで、滑らせる。続いて、パンチが、装着スリーブ中に(シャフト頭部の上から)押し込まれ、それによって装着スリーブとパンチの間に円周方向に配置されたスナップリングが、パンチ上および装着スリーブ上の対応する円周溝に、定位置にスナップ止めされて、軸方向に互いに隣接する2つの部分を保持する。このように、シャフト頭部は肩部とパンチの間(すなわちパンチの下に)に位置している。
【0007】
椎弓根スクリューが椎骨にねじ込まれ、その中にしっかりと固定されると、長手方向ビームが、固定されたシャフト部品に対して装着スリーブが回転および旋回することが可能な状態で、(パンチ上方の)装着スリーブのU字形(二重)スロットに挿入される。これによって、外科医が、長手方向ビームの位置合わせに応じて、装着スリーブを適合させることを可能になる。装着スリーブの適切な相対位置が調整されると、グラブねじが、それが長手方向ビームをパンチと接触させるとともに、装着スリーブの軸方向にシャフト頭部に対してパンチをさらに押圧するまで、装着スリーブにねじ込まれる。このように、椎弓根スクリューと長手方向ビームで構成されるシステム(椎骨安定化システム)全体を、単一のグラブねじを締め付けることによって、調整された位置に固定することができる。
【0008】
文献US2011/0046683A1は、例えば、マルチ・スクリュー方式による、多軸椎弓根スクリューを開示している。この椎弓根スクリューも、シャフトの近位端に一体型シャフト頭部を備える、シャフト状の雄ねじ部を有する。シャフト頭部は、回転自在および旋回自在の装着スリーブによって囲まれており、この装着スリーブは、同様に、雌ねじが設けられるとともに、長手方向ビーム用の2つのU字形の対向する長手方向スロットを備えている。
【0009】
ピストン/パンチ(インレー)が、その内部で軸方向にシフト可能になるように、装着スリーブ内に挿入されるとともに、このピストン/パンチには、U字形の長手方向スロットが同様に設けられており、この長手方向スロットは、装着スリーブ内の長手方向スロットとほぼ同じスロット幅寸法を有する。
【0010】
US2011/0046683A1から知られている椎弓根スクリューを組み立てるために、装着スリーブ/チューリップを、それがシャフト頭部において(その下側において)半径方向内側のスリーブ肩部に当接して、旋回可能および回転可能に軸方向に静止するまで、知られている方法で、シャフトの上を滑らせる。次のステップとして、(シャフト頭部の上の)パンチが、装着スリーブ内に挿入され、そのU字形スロットが、装着スリーブにおけるU形スロットに対応して位置合わせされる。次いで、必要な場合には、パンチ(インレー)をシャフト頭部に対して押圧するために、第1のねじ/ねじスリーブが、装着スリーブにねじ込まれて、直接的にパンチ(インレー)に作用する。この第1のねじ/ねじスリーブは、第2のねじ/グラブねじがその中にねじ込まれる雌ねじを有し、第2のねじ/グラブねじは、装着スリーブおよびパンチの長手方向スロットに横方向に挿入されるウェブ/長手方向ビームに押圧力を加えて、パンチに対してビームを締め付ける。
【0011】
US2011/0046683A1に記載の椎弓根スクリューが椎骨に挿入される場合には、シャフトが椎骨にねじ込まれ、次に装着スリーブの角度方位が、ねじ込まれたシャフトに対して位置合わせされる。装着スリーブの位置を固定するために、次に、第1のねじが締め付けられて、シャフト頭部に対して直接、パンチ(インレー)を押圧し、それによって装着スリーブをシャフト頭部ヘッドとブレースで締める。最後に、長手方向ビームが、シャフト頭部と第1のねじの間の長手方向のスロット内に、横向きに配置され、第2のねじを用いてパンチに対して締め付けられる。その結果として、US2011/0046683A1による、この椎弓根スクリューの利点は、多軸支持体および長手方向ビームを固定する工程が、互いに独立して行われることであるが、この場合には、比較的複雑なスクリュー設計が必要とされる。
【0012】
さらに、上記のすべての椎弓根スクリューは、埋め込み後に椎弓根スクリューから長手方向ビームが意図に反して脱離する危険性を回避するように、それらの固定デバイス/ロック要素(ねじ)を、実質的にセルフ・ロック設計で実現している。さらに、システム全体が高負荷に耐えて、シャフト、スリーブおよび長手方向ビームの間の調整された位置関係が変化しないようにする必要があるので、椎弓根スクリューと長手方向ビームとの間の固定力は大きい。しかしながら、これらの要件は埋め込みプロセス中に問題を引き起こす。
【0013】
外科医がロック要素(例えばグラブねじ)を力を入れて締めた場合には、装着スリーブとシャフトおよび/または装着スリーブと長手方向ビームの間に生じた位置関係は、それ以上は変更できないか、または大きな作用力でのみ変更できる。換言すれば、外科医は、すでに椎骨に固定された雄ねじ部を取り外すことなく、またはそれを破壊することなく、セルフ・ロック効果に反抗して(強い力で締め付けられている)ねじを緩める必要があることになる。さらに、ロック要素(ねじ)を緩めるその後の工程は、そのセルフ・ロック効果に悪影響を及ぼす可能性があり、それによって、椎弓根スクリュー全体としての機能が確保されなくなる。このことは、既知のシステムがフォールト・トレラントではないこと、または限定的にしかそうでないことの理由である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述の問題を考慮して、本発明の目的は、その固定デバイスが、固定の状態を解放し、再び確立するように準備された、多軸椎弓根スクリューを提供することである。本発明の目的は、既知のスクリューと同様に、追加の作業ステップを実施する必要がなく、通常の方法で、椎弓根スクリューの設置を継続する立場に外科医を置くことである。さらに、本発明の目的は、すでに固定された多軸支持体を、後の時点で無効化(ロック解除)するとともに、次いで、再び固定(ロック)することが可能となるように、フォールト・トレラント方式で椎弓根スクリュー、特にその固定デバイスを設計することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は、請求項1の特徴を含む、多軸椎弓根スクリュー(好ましくはシングル・スクリュー方式による)に加えて、請求項16の特徴を含む、椎骨安定化システムにより達成される。本発明の有利な構成は、特に従属請求項の主題である。
【0016】
原理的には、本発明の要旨は、固定デバイス、例えば、グラブねじまたはねじ付きナットの、ロック要素の保持力に対して反作用する、外部の/個別的な(追加的に作動可能な)反力部を備える、(上述したように、公知の構造の)椎弓根スクリューの固定デバイスを供給することである。反力部は、(反力部を手動で操作することによって)反力部を用いて、ロック要素の保持力を選択的に解放することができる(すなわち、ロック要素の機能を一時停止することが可能である)ように設計および/または保持される。
【0017】
すなわち、本発明のこの基本原理は、固定デバイスの反力部が、ロック要素がその機能を発揮することができる準係合状態/位置にある間は、調整された多軸支持体の通例の位置固定のための、好ましくは既知の設計における、固定デバイスのロック要素を、使用するという考えに基づいている。しかしながら、固定状態を解放するためには、ロック要素を(手動で)解放するのではなく、反力部を、ロック要素の機能が無効化/低減される準脱離状態/位置に移動させるか、または切り換える。これによって、単に反力部を作動させることによって、固定状態を元に戻すとともに、ロック要素を作動させる必要なしに、それを再度確立することが可能になる。代替として、または追加として、実質的にいかなる作用力もなしに、ロック要素をロック解除する、すなわち、(もはや実質的にいかなる力も受けていないので)ロック要素のセルフ・ロック効果に影響を与えることなく、それをロック解除位置に移動させることも可能である。この場合には、反力要素は、次いで、力をかけない方法で、その結合状態に再度移してもよく、そのときには、ロック要素が、多軸支持体を固定するために作動されることになる。
【0018】
より具体的には、ロック要素、例えばグラブねじが、通常は直接、チューリップにねじ込まれ、好ましくは挿入された長手方向ビームを介して、パンチを軸方向にシャフト頭部に当接させて押圧し、好ましくはシングル・スクリュー方式によってチューリップ(および長手方向ビーム)と、スクリュー頭部とをブレースで締める。反力要素は、予荷重力をスクリュー頭部にかける、および/またはチューリップ中に伝達するという効果を有する。反力要素が不作動になる場合には、パンチおよび/またはロック要素が半径方向に動き、(軸方向に作用する)予荷重力が突然に無効化される。
【0019】
先に説明した基本原理は、原理的には、ロック要素の機能性を維持する。同時に、椎弓根スクリューの固定を損うか、または緩める危険性は、本発明によれば、椎骨においては従来技術と比較して大幅に低減される。
【0020】
別の反力部に対して、それを破壊することによってのみ脱離させることが可能であって、その後に、交換部品と交換される使い捨て部品として設計することをさらに提供することができる。代替的に、結合形状(結合寸法)から脱離形状(脱離寸法)に逆転させることができるようにするために、それを用いて反力部がその寸法を変更することができる開口機構を、反力部に設けてもよい。代替的または追加的に、反力部を機能位置(反力が生成される位置)から非機能位置(反力のない位置)にシフトさせることができるように、反力部を移動可能に支持することも可能である。
【0021】
多軸椎弓根スクリューの種類に応じて、反力部は、シャフトに対してチューリップ(装着スリーブ)を位置固定するための固定デバイスの固定機構、および/または長手方向ビームに対してチューリップを位置固定するための固定デバイスの固定機構に対して(だけ排他的に)作用してもよい。
【0022】
本発明の一態様は、反力部を、チューリップ(装着スリーブ)および/または上記説明によりそれ自体が知られている多軸椎弓根スクリューのパンチの形状および/または機能を選択的に維持することのできる、テンショニングデバイスまたは締付けデバイスとして設計することを提供する。
【0023】
好ましくは、反力部は、チューリップ(装着スリーブ)および/または(シャフト頭部の領域内の)パンチの外側で案内されるとともに、半径方向内向きの(反)力を、チューリップおよび/またはパンチに対して発揮することができる(テンショニング)リングである。
【0024】
さらに好ましくは、リングは、軸方向にシフト可能になるように支持され、それによってリングが、(シャフト頭部の軸方向領域における)機能位置または(シャフト頭部の軸方向領域に対して変位した)非機能位置に選択的に移動できるようにされる。これに対する代替案として、いわばその内部設計によって、リングを機能位置または非機能位置に選択的に移動させるために、リングに開口調整機構または幅調整機構を設けてもよい。最も単純な代替案としては、手で容易に破壊することができる、破壊可能な材料から、リングを製造すること、または手作業で作動可能な所定の破断点でそれを実現することを提供してもよい。これによって、アンカー固定を損うことなく、リングを破壊することが可能になる。
【0025】
チューリップ(装着スリーブ)および/またはパンチを、少なくとも、好ましくはテンショニングデバイスおよび/または締付けデバイスの形態である、より好ましくはテンショニングリングの形態である、反力部の領域において、弾性を有する形態とすることが有利である。この目的のために、長手方向スロットを有するチューリップおよび/またはパンチを成形し、半径方向外側に弾性的に曲げることができるとともに、先述の実施形態の1つによる反力部によって半径方向に共に選択的に保持される、ラグを作成することを提供してもよい。代替的に、チューリップおよび/またはパンチの材料に、少なくとも部分的に、弾性的な特性を与えることも可能である。これらのラグは、好ましくは、半径方向内向きの肩部(爪)を有し、この肩部は、シャフト頭部の背後に到達することが可能であって、それによって、実際に、テンショニングリングが(その機能位置において)ラグの半径方向の広がりを防止するときにはいつでも、締付け軸力をシャフト頭部に伝達することができる。
【0026】
前述したようにテンショニングリングを軸方向に変位させる場合には、機能位置および非機能位置をマークするために、2つの軸方向に離間したラッチ位置を、チューリップ上および/またはパンチ上に形成してもよい。ここでは、軸方向にシフトするテンショニングリングの上記の性能は、機能位置および非機能位置を画定する回転性能によって、置換してもよいことを明白に注記しておきたい。
【0027】
最後に、反力部を、チューリップおよび/またはパンチ内の所定位置にラッチ止めされる、挿入可能および選択的に作動可能なねじ付きスリーブとして、実現することも基本的に可能である。この場合には、ねじ付きスリーブは、ロック要素(グラブねじ)から、装着スリーブまたはパンチに(軸)力を伝達する。ロック要素を解除するためには、装着スリーブとその中に挿入されたねじ付きスリーブの間の相互のラッチ止めが、手で解除されて、これによって、ロック要素は、無負荷状態に変化する。
【0028】
以下では、添付の図面を参照しながら、好ましい例示的実施形態に基づいて、本発明を、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1a】機能位置にある、多軸椎弓根スクリューと、概略的に示された長手方向ビームとからなる、本発明の好ましい一実施形態による椎骨安定化システムをそれぞれ示す斜視図である。
【
図1b】機能位置にある、多軸椎弓根スクリューと、概略的に示された長手方向ビームとからなる、本発明の好ましい一実施形態による椎骨安定化システムをそれぞれ示す斜視図である。
【
図2】
図1による椎骨安定化システムの縦断面図である。
【
図3a】非機能位置にある、本発明の好ましい例示的実施形態による、椎骨安定化システムをそれぞれ示す斜視図である。
【
図3b】非機能位置にある、本発明の好ましい例示的実施形態による、椎骨安定化システムをそれぞれ示す斜視図である。
【
図4】
図3による、椎骨安定化システムの縦断面図である。
【
図6】非ロック状態の装着スリーブの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の好ましい例示的実施形態による、
図1a、1bに示す椎骨安定化システムは、雄ねじ付きシャフトまたはアンカー2からなる、多軸椎弓根スクリュー1を備え、このシャフトまたはアンカーは、好ましくは球形または少なくとも半球形のシャフト頭部4がその上に形成または一体形成された、近位端を有する。シャフト頭部4には、椎骨(図示せず)の椎弓根チャンネルにシャフト2をねじ込むことができるように、例えば、アレンレンチ、フィリップス型スクリュードライバなどのための、工具係合構造6が設けられている。
【0031】
図2でわかるように、シャフト頭部4は、そのねじ付きシャフト/シャフト部分2への移行領域において、軸方向に作用するアンダカットを形成する。この場合、このアンダカットは、シャフト頭部直径がシャフト直径よりも大きくなるように選択されることによって生成される。代替的に、シャフト2の近位端部に、旋盤加工溝(図示せず)によって、残りのねじ付きシャフト部分2に対して、シャフト頭部4を形成することも考えられる。
【0032】
図1a、1bおよび2によれば、シャフト頭部4は装着スリーブ8によって包囲されており、この装着スリーブ8は(始めは)、回転可能であるとともに、シャフト頭部4によって回動可能に保持されている。
【0033】
具体的には、装着スリーブ8は円筒状のスリーブ本体10を備え、このスリーブ本体10は、その両側において開放されており、そのスリーブ壁には、近位端面から出発するU字形スロットが設けられており、その結果として、スリーブ軸に対して実質的に垂直に延びる連続した横方向チャネル(スロット)12が得られる。U字形スロット12の開放側向きの軸方向領域において、装着スリーブ8には雌ねじが設けられおり、この雌ねじは、
図2のように、ほぼスリーブ8の軸方向中心部まで延びている。スリーブ8の反対側の軸方向領域において(換言すれば、軸方向の遠位端において)、すなわち、軸方向にU字形スロット12のスロット底部の後ろに、装着スリーブ8には、円周上の内側半径方向突出部/肩部14が設けられ、端面においてスリーブの内径を収縮させ、それによってアンダカットを形成している。ここで、内側半径方向突出部14の直径は、ねじ付きシャフト部分2の直径よりもわずかに大きいが、シャフト頭部4よりも小さくなるように寸法決めされている。さらに、スリーブ8の内径は、シャフト頭部4の直径よりわずかに大きい。
【0034】
本発明によれば、装着スリーブ8には、少なくともその内側半径方向突出部14の軸方向領域において、少なくとも半径方向に作用する、弾力機構または可撓性機構が設けられている。特に、装着スリーブ8の上記の遠位端ゾーンは、円周方向に離間するいくつかの長手方向スロット16を含み、その結果として、軸方向に互いに並行して延びるとともに、弾性的/可撓的に外向きに曲げることができる、いくつかのラグ形または舌形のスリーブ部分18が得られる。ここで、上述の可撓性機構は、設計的にいくぶん異なる方法で、例えば、弾性カラー(図示せず)を装着スリーブ8に軸方向から取り付けることによって、またはスリーブ壁内に解放グリッドまたは螺旋構造(同様に図示せず)を形成することによって、達成してもよいことを注記したい。
【0035】
装着スリーブ8の周囲には、カラー状の位置決めリングの形状で、反力部20が配置されており、この反力部20は、装着スリーブ8上を軸方向にシフト可能に案内されて、第1の位置(機能位置)において装着スリーブ8の、可撓的/弾性的に半径方向に拡張することのできる、遠位端部を、それと接触するように包囲する。
【0036】
具体的に、位置決めリング20はリング部20aからなり、このリング部20aは、円周方向に閉じており、2つの直径方向に対向する軸方向ウェブ20bが、装着スリーブ8の雌ねじ部の方向を向くように、その端面上に好ましくは一体に成型されている。軸方向ウェブ20bの各々は、本例示的実施形態では、2つの軸方向に離間したアンダカットまたはノッチ20dを含む、2つの軸方向の平行ばね舌部20cを形成する。使用時には、これらのノッチ20dは、位置決めリング20の機能位置(
図1a、1bおよび2に記載)および非機能位置(
図3a、3bおよび4に記載)を画定する。一方、2つの直径方向に対向する軸方向溝22が、装着スリーブ8の外面上に形成され、この溝は、2つの軸方向ウェブ20bを案内する役割を果たすとともに、軸方向ウェブ20bのノッチ20dに機能的に係合することができる少なくとも1つのラッチ突起(こぶ)22aを含む。
【0037】
図1a、1bおよび2に示した前述の位置決めリング設計の代替として、この場合には、基本的には、
図1a、1bに示す機能位置にある(すなわち移動不能である)、位置決めリング20が、例えば、工具を用いて、破断させることのできる、所定の破断点(図示せず)を備える、位置決めリング20を実現することもできる。位置決めリング20の軸方向の可動性を、回転と組み合わせることも考えられる。この場合、
図1a、1bに示す軸方向ラッチ止め手段の代わりに、バヨネット・ロック(図示せず)の一種を設けてもよく、このバヨネット・ロックは、位置決めリング20を回転させることによって解除され、そのときに、装着スリーブ8に沿ったリング20の軸方向の変位が可能である。
【0038】
図2に示すように、パンチまたはスタッド24が、スリーブ8内の可撓性ラグ/舌部18の軸方向領域に配置されるように、装着スリーブ8内に挿入される。ここで、パンチ24は、その外辺側に少なくとも1つの弾力戻り止め26を有し(
図2によれば、2つの戻り止めが直径方向に配置されている)、この戻り止めは、半径方向に突出しており、装着スリーブ8の内側の、半径方向に位置合わせされた凹部28内のパンチ24の設置位置に、スナップ位置決めされる。このように、少なくとも1つの戻り止め26は、安全手段を形成し、パンチ24が脱落するのを妨げる。同時に、半径方向凹部28は、装着スリーブ8内でパンチ24が軸方向に所定距離だけ移動することができるように、寸法決めされている。
【0039】
装着スリーブ8の内向き突出部14の方向に向く端面上では、パンチ24は、シャフト頭部4と実質的に平面/面積接触にすることができるように、平坦または球形である。他方の端面上では、パンチ24は、丸棒長手方向ビームまたはウェブ30の円周囲面が、パンチ24と面積接触ができるようにチャネル状に形成されている。最後に、
図1a、1bおよび
図2は、グラブねじ(または止めねじ)32の形状をした、ロック要素を示し、このロック要素は、装着スリーブ8内で、その雌ねじに螺合されており、パンチ24の端面に長手方向ビーム30を押しつけるために、すでにU字形スロットに配置された、長手方向ビーム30に作用することができる。
【0040】
本発明による椎弓根スクリューの動作モード、および
図1a、1b〜6による脊椎体安定化システムの動作モードについて以下に説明する。
【0041】
本発明による椎弓根スクリュー1a、1bは、
図1a、1bおよび2による機能位置にある位置決めリング20が与えられて、前記状態において挿入される。この機能位置では、位置決めリング20は、装着スリーブ8のばねラグ18を包囲し、それによって、それらのラグは、半径方向に曲げられるか、もしくは拡張されることがないか、または無視できる程度に曲げられるか、もしくは拡張される。これは、装着スリーブ8の内径、したがって内側半径方向突出部14は固定されていることを意味する。この状態では、装着スリーブ8は、回転可能であるだけでなく、回動可能にシャフト頭部4を包囲し、同時に、内側半径方向突出部14は、シャフト頭部4の背後/下方で、ねじ付きシャフト部分2への移行領域に係合する。これによって、装着スリーブ8からシャフト頭部4への押圧力の伝達を可能にする。
【0042】
本発明による椎弓根スクリュー1が移植される場合には、外科医は、冒頭で説明したような構造による、従来型の椎弓根スクリューでそれを行うように、椎骨の椎弓根チャンネル内にそれをねじ込む。このことは、外科医は、ねじ締め工具(図示せず)を使用して、それを、シャフト頭部4上の工具係合構造6に挿入して、ねじ込み力をシャフト2に直接、加えることを意味する。この組立段階において、工具を通過させるための軸方向貫通穴を設けられた、パンチ24は、工具が、パンチ24を真っ直ぐに通過して、シャフト頭部4の工具係合構造6と係合できるように、事前に装着スリーブ8内に挿入されていてもよい。しかしながら、この段階では、グラブねじ32は、まだねじ込まれていない。
【0043】
ねじ付きシャフト2が椎骨にしっかりとねじ込まれる(アンカー固定される)と、パンチ(インレー)24が装着スリーブ8内の所定の位置にスナップ止めされるとともに、グラブねじ32の位置またはねじ深さによってその開口長が決まる、装着スリーブ8内のパンチ24とグラブねじ32間の横方向貫通穴が存在するように、グラブねじ32が、短いねじ深さだけ(好ましくは工具を用いて)ねじ込まれる。
【0044】
異なる、軸方向に離間した椎骨にねじ込まれる、本発明のいくつかの椎弓根スクリューを互いに結合する目的で、長手方向ビーム30が、(パンチ24とスクリュー32との間で)装着スリーブ8の横方向貫通孔(すなわち、U字形スロット12)に挿入され、同時に、装着スリーブ8が(回転および旋回させることによって)シャフト2に対して位置合わせされる。前述の手順の代替として、長手方向ビーム30を、最初に装着スリーブ8の横方向貫通穴に挿入し、次いで、グラブねじ32を(好ましくは、工具を用いて)締めることも可能であり、また有利な場合がある。この組立変形形態は、長手方向ビーム30を挿入するための貫通穴が、予め締められるグラブねじ32によって過度に狭められないという利点がある。
【0045】
長手方向ビーム30が、上記の変形形態の1つに従って挿入されて、グラブねじ32が締められている場合には、(グラブ)ねじ32は、(ねじ締め)工具を使用して締め付けられる。そうすることで、前記ねじは、長手方向ビーム30に対する押圧力を発揮し、この押圧力が、パンチ24を介して、当接部として作用するシャフト頭部4の上にさらに伝達される。このことは、グラブねじ32が、長手方向ビーム30を締め付けながら、パンチ24をシャフト頭部4に対して押圧し、それによって後者が、装着スリーブ8の内側半径方向突出部14とパンチ24の間で締められることを意味する。半径方向突出部の軸方向領域に補強の位置決めリング20が存在するために、スリーブ8が広がることができないので(特に
図5参照)、シャフト頭部4へのかなりの予荷重が実現可能であり、この予荷重は、シャフト2に対する装着スリーブ8の場所/位置だけでなく、負荷の下でも長手方向ビーム30の位置を固定するのに十分な大きさである。グラブねじ32は、予期される荷重を受けるときに緩まないように、すなわちセルフ・ロックするように作用するように、設計されている。さらに、装着スリーブ8とシャフト頭部4との間の摩擦連結は、グラブねじ32がねじ戻されても、前記摩擦連結が解除されないか、または解除され難いようにされている。
【0046】
これにより、本発明による椎弓根スクリュー1、および椎骨安定化システムの埋め込みが終了する。
【0047】
しかし、椎弓根スクリュー1の座部を、後の時点で再補正しなくてはならないことは起こり得る。このために、位置決めリング20は、
図1a、1bおよび2に示すその機能位置(半径方向突出部の半径周り)から、
図3a、3bおよび4に示すその非機能位置(半径方向突出部に対して軸方向にオフセット)に切り替えられる。この状態は、特に
図6に拡大スケールで示されている。
【0048】
換言すれば、位置決めリング20が、手動で、またはより詳細には示されていないレバー工具を用いて、装着スリーブ8上を外部溝22に沿ってグラブねじ32に向かって、ノッチ20dによって長手方向ウェブ20bにマークされている非機能位置に到達するまで、動かされる。
図3a、3bおよび4による、この非機能位置において、位置決めリング20は、長手方向ラグ18がそこに形成されている、装着スリーブ8の前記軸方向部分を包囲せず(または部分的にのみ包囲し)、その結果として、長手方向ラグ18は、可撓的に、好ましくは弾性的に、半径方向外向きに曲がることができる。これによって、装着スリーブ8の内径、特に、この領域におけるラグ18の遠位自由端における内側半径方向突出部14の内径の拡張が可能となり、それによって、装着スリーブ8の内側半径方向突出部14がシャフト頭部4上で滑ることができる。このことは、ロック要素(グラブねじ)32のための反力部として、ラグ18を半径方向において圧縮/保持した、位置決めリング20は、今、この機能を失い、それによって、グラブねじ(ロック要素)32の締付け力が解除されることを意味する。このために、スクリュー1の多軸支持体は、もはやロックされていない。
【0049】
このときに、グラブねじ32に作用する締付け力は実質的になくなり、それによって、グラブねじ32は、ほとんど何の努力もなく、緩めることができる。椎弓根スクリュー1、したがって、多軸支持体を再びロックする場合は、位置決めリング20を、その解除位置から上記定義による機能位置まで実質的に何の力もなくシフトさせることだけが必要となり、そのときに、グラブねじ32を再び締め付けることができる。この時に、ねじ32を作動させることは必須ではないということを、明示的に注記しておきたい。むしろ、位置決めリング20を(ねじを作動させることなく)再び係合位置に切り換えて、新規の相対位置を固定するために、位置決めリング20を、チューリップがシャフトに対して移動が可能である、解除位置に切り換えるだけで十分である場合がある。
【0050】
最後に、要約すると、本発明は、椎骨内に椎弓根スクリュー1をアンカー固定するための、ねじ付きシャフト部分2を含む、多軸椎弓根スクリュー1であって、長手方向ビーム30のための装着スリーブ8に回転可能および/または回動可能に結合された、シャフト頭部4が設けられた、1つの軸方向端部を有するとともに、シャフト部分2に対して装着スリーブ8を選択的に位置固定するための(ロック要素32と反力部20からなる)固定デバイスを備える、椎弓根スクリューに関する。本発明によれば、固定デバイスは、ロック要素、好ましくは(グラブ)ねじ32に加えて、ロック要素、好ましくはグラブねじ32またはねじ付きナットの保持力を打ち消す反力部、好ましくは(移動可能および/または回転可能な)位置決めリング20を備えるとともに、ロック要素32の保持力を、反力部20を用いることによって、すなわち(ほとんど)いかなる影響もなしに、選択的に解放することができるように設計および/または保持されている。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
[項目1]
椎骨内に椎弓根スクリュー(1)をアンカー固定するための、ねじ付きシャフト部分(2)を備える、多軸椎弓根スクリュー(1)であって、長手方向ビーム(30)のための装着スリーブ(8)に回転可能および/または回動可能に結合された、シャフト頭部(4)が設けられた、1つの軸方向端部を有するとともに、前記シャフト部分(2)に対して前記装着スリーブ(8)を選択的に位置固定するための固定デバイス(20、32)を備える、椎弓根スクリュー(1)において、
前記固定デバイス(20、32)が、ロック要素(32)に加えて、前記ロック要素(32)、好ましくはグラブねじ、またはねじ付きナットの保持力に対して反作用する、別の反力部(20)を備えるとともに、前記ロック要素(32)の保持力を、前記反力部(20)を用いて選択的に解放できるように、前記反力部(20)が設計および/または保持されていることを特徴とする、多軸椎弓根スクリュー。
[項目2]
前記反力部(20)が力受け状態または機能位置にある場合には、前記ロック要素(32)が、前記調整された多軸支持体の位置固定のために提供されるのに対して、前記ロック要素(32)がすでに固定状態にある場合には、前記反力部(20)が、前記ロック要素(32)の機能を無効化または低減するために提供されることを特徴とする、項目1に記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目3]
前記反力部(20)が、手作業で破壊可能な使い捨て部品として設計され、および/または、それを用いて前記反力部(20)が寸法を変更することができる開口機構が設けられ、および/または、機能位置から非機能位置へと移動させることのできるように移動可能に支持されていることを特徴とする、項目1または2に記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目4]
前記反力部(20)が、前記シャフト部分(2)に対して前記装着スリーブ(8)を位置固定するための前記固定デバイスの固定機構、および/または長手方向ビーム(30)に対して前記装着スリーブ(8)を位置固定するための前記固定デバイスの固定機構に対して作用することを特徴とする、項目1から3のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目5]
前記反力部(20)が、前記装着スリーブ(8)および/または前記ロック要素(32)から前記シャフト頭部(4)へ力を伝達するために、前記装着スリーブ(8)内に支持されているパンチ(24)の形状および/または機能を選択的に維持することのできる、テンショニングデバイスまたは締付けデバイスとして設計されていることを特徴とする、項目1から4のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目6]
前記反力部(20)が、好ましくは前記装着スリーブ(8)および/または前記装着スリーブ内で、その中で軸方向に移動可能になるように支持されて、前記ロック要素(32)と前記シャフト頭部(4)の間で力を伝達するためのパンチ(24)の外側で案内されるとともに、調整された形状および/または位置に応じて、前記装着スリーブ(8)および/または前記パンチ(24)に対して半径方向内向きの反力をかけるために設けられているテンショニングリングであることを特徴とする、項目1から5のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目7]
前記反力部(20)が、前記ロック要素(32)を受け入れるためのねじ付きスリーブであり、前記ねじ付きスリーブは、前記ねじ付きスリーブに配置された前記ロック要素(32)の予荷重力を前記装着スリーブ(8)に伝達するか、またはそれを選択的に解放するために、前記装着スリーブ(8)内に、好ましくはバヨネット・ロックまたはクリップロックによって、選択的に脱着可能に定位置にラッチ止めされることを特徴とする、項目1から5のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目8]
前記リング(20)が、前記装着スリーブ(8)の外面上で軸方向にシフト可能になるように支持されて、それによって機能位置または非機能位置に選択的に移動できることを特徴とする、項目6に記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目9]
前記リング(20)に、前記リング(20)を内部的に機能位置または非機能位置に、それを軸方向にシフトさせることなく、選択的に移動させる、開口または幅調整機構が設けられていることを特徴とする、項目6に記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目10]
前記リング(20)が、前記シャフト部分(2)の最大荷重より低い、所定の力をかけることで、手作業で破壊可能な材料で製作されるか、または手作業で作動可能な所定の破断点が設けられていることを特徴とする、項目6に記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目11]
前記装着スリーブ(8)および/または前記パンチ(24)が、少なくとも、好ましくはテンショニングデバイスおよび/または締付けデバイスの形態である、さらに好ましくはテンショニングリングの形態である、前記反力部(20)の領域において、少なくとも半径方向において作用する弾性を有する形態を備えていることを特徴とする、項目6から10のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目12]
前記装着スリーブ(8)および/または前記パンチ(24)が、長手方向スロット(16)を備えて実現されており、半径方向外側に弾性的に曲がることができるとともに、前記反力部(20)によって半径方向に共に選択的に保持される、ラグ(18)を生成すること、または前記装着スリーブ(8)および/または前記パンチ(24)の材料が、少なくとも部分的に半径方向に弾性的に拡張可能であることを特徴とする、項目11に記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目13]
前記テンショニングリング(20)が軸方向にシフト可能である場合に、機能位置または非機能位置をマークするために、2つの軸方向に離間されたラッチ位置が、前記装着スリーブ(8)および/または前記パンチ(24)上に実現されていることを特徴とする、項目6から12のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目14]
前記反力部(20)を、前記ロック要素(32)がその効果を発揮することができる第1の作動位置まで、および前記ロック要素(32)がいかなる効果も発揮することができない第2の非作動位置まで、好ましくは手動で、移動させることができることを特徴とする、項目1から13のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目15]
前記反力部が、前記装着スリーブ(8)の半径方向の変形に対して反作用するように、その第1の作動位置において半径方向の力を受けるとともに、その第2の非作動位置において、画定された軸方向部分における前記装着スリーブ(8)の半径方向の変形を許容することを特徴とする、項目1または14に記載の多軸椎弓根スクリュー。
[項目16]
2つの脊椎体の長手方向の相互接続のための、少なくとも1つの長手方向ビーム(30)と、複数の項目1から14のいずれかに記載の多軸椎弓根スクリュー(1)とからなる、脊椎体安定化システム。