(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6055493
(24)【登録日】2016年12月9日
(45)【発行日】2016年12月27日
(54)【発明の名称】耳ツボ用貼付治療具
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20161219BHJP
A61N 1/00 20060101ALI20161219BHJP
【FI】
A61N5/06 A
A61N1/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-9798(P2015-9798)
(22)【出願日】2015年1月21日
(65)【公開番号】特開2016-131806(P2016-131806A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2016年4月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512225771
【氏名又は名称】株式会社グレース
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 正寛
(72)【発明者】
【氏名】下村 鶴恵
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−174862(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3179639(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3184124(JP,U)
【文献】
特開2015−205155(JP,A)
【文献】
特開平11−47225(JP,A)
【文献】
特開2008−264220(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3061450(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3126864(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3196116(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
A61N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠赤外線を放射するホルンフェルス粉末と水溶性の有機ゲルマニウム粉末との混合粉末を塊状に成形した成形体が粘着シートの粘着面の一部分に貼着される耳ツボ用貼付治療具であって、
前記成形体は、上面と下面とが平坦であり、側面が外方に向けて膨らんだ略円柱形状であり、その厚さは0.3〜0.5mmで、その最小直径は0.6〜1.0mm、その最大直径は0.8〜1.2mmであり、前記上面または前記下面が前記粘着面との貼着面であるとともに、残りの上面または下面が耳ツボの皮膚表面に接触する面となり、前記ホルンフェルス粉末は成形体100重量部に対し1〜30重量部が含まれ、前記有機ゲルマニウム粉末は成形体100重量部に対し0.05重量部以上60重量部未満含まれる耳ツボ用貼付治療具。
【請求項2】
前記粘着シートは円形でその表面の中央部には、天然または人工のジュエリーが固着された請求項1に記載の耳ツボ用貼付治療具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、
耳ツボ用貼付治療具、詳しくは発汗作用を利用することにより健康増進に寄与する
耳ツボ用貼付治療具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、耳のツボ(以下、「耳ツボ」と記載する)を刺激して肩こり、腰痛などの緩和に利用される貼付治療具は市場等に各種存在する。例えば、小型の粘着シートの粘着面に直径数mm程度の金属粒が貼着され、粘着面の金属粒を除く部分に剥離紙を貼り合わせた製品が挙げられる。当該製品は、使用時に剥離紙を剥がし、金属粒を「こり」が発生した患部に対応する耳ツボにあてがうことにより、金属粒によるツボ押し効果でその部位の血液の流れを促進させ、患部の「こり」を改善する。
【0003】
また、生体電流の乱れに着目した貼付治療具として、例えば、特許文献1の「貼付治療具」が知られている。これは、皮膚と接触することで微弱電流を発生させ、かつ同一金属からなる複数枚の金属膜を積層した金属膜積層体と、この金属膜積層体が粘着面の中心部に貼着された粘着シートとを備えたものである。使用時、貼付治療具を前述の患部に対応する耳ツボに貼着することで、生体電流の乱れを整えて貼着部位の血液の流れを促進させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3179639号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の「貼付治療具」は、少なくとも2種以上の金属を耳ツボに貼着させなければ、電流が流れない。しかも、その電流は皮膚の表面に沿って流れるだけであり、耳ツボを刺激するためには、ツボ押し効果が必須であった。
ところで、皮膚表面の電気抵抗に着目した場合、患者の患部に対応する耳ツボが存在する位置の皮膚表面の電気抵抗は、その位置以外の皮膚表面の電気抵抗より低いことが知られている(Raphael Nogier著「Nogier博士の耳介治療ハンドブック」シービーアール 2012年)。そこで、発明者は皮膚表面の電気抵抗に着目し、ホルンフェルス粉末から発生する遠赤外線により発汗が促されるとともに、汗の主成分である塩化ナトリウム水溶液と有機ゲルマニウムとの酸化還元電位による微弱電流が発生し、その微弱電流が電気抵抗の低い部分に流れることによって、耳ツボを刺激することで、健康維持に寄与することができることを知見し、この発明を完成させた。
【0006】
この発明は、患者の患部に対応する耳ツボが存在する位置の皮膚表面の電気抵抗の差を利用して、健康増進に寄与する
耳ツボ用貼付治療具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、遠赤外線を放射するホルンフェルス粉末と水溶性の有機ゲルマニウム粉末との混合粉末を塊状に成形した成形体が粘着シートの粘着面の一部分に貼着される
耳ツボ用貼付治療具であって、前記成形体は、上面と下面とが平坦であり、側面が外方に向けて膨らんだ略円柱形状であり、
その厚さは0.3〜0.5mmで、その最小直径は0.6〜1.0mm、その最大直径は0.8〜1.2mmであり、前記上面または前記下面が前記粘着面との貼着面であるとともに、残りの上面または下面が耳ツボの皮膚表面に接触する面となり、前記ホルンフェルス粉末は成形体100重量部に対し1〜30重量部が含まれ、前記有機ゲルマニウム粉末は成形体100重量部に対し0.05重量部以上60重量部未満含まれる耳ツボ用貼付治療具である。
【0008】
ここでいう「ホルンフェルス粉末」は、熱による変成(接触変成作用)によって生じる接触変成岩(ホルンフェルス)を粉末状にしたものであり、この発明ではホルンフェルスのうち遠赤外線を放射するものを使用する。例えば、宮崎県の高千穂地方で採掘される天照石が一般的に挙げられる。ホルンフェルスは、成形体100重量部に対し1〜30重量部含まれる。成形体100重量部に対し1重量部以上含まれていなければ、遠赤外線による発汗作用が十分に発揮できない。成形体100重量部に対し30重量部以上含まれている場合には、成形が困難となる。
「有機ゲルマニウム粉末」は、水溶性であり、炭素の酸化物や金属の炭酸塩などを除いた炭素と炭素原子と結合した水素原子を1個以上持つものを含む化合物(有機化合物)の構造の中にゲルマニウムを含むものを粉末状にしたものをいう。有機ゲルマニウムとしては、例えばカルボキシエチルゲルマニウムセスキオキシド、L−アルギニンゲルマニウム、L−リジンゲルマニウム等が挙げられる。
有機ゲルマニウム粉末は成形体100重量部に対し0.05重量部以上含まれていなければ、塩化ナトリウム水溶液と有機ゲルマニウムとの酸化還元電位による微弱電流の電流値が小さすぎて、耳ツボの刺激による患部の機能改善効果が得られない。有機ゲルマニウム粉末が成形体100重量部に対し60重量部以上含まれている場合には、成形が困難となる。
【0009】
成形体に含まれるホルンフェルス粉末から発生する遠赤外線により、患部と成形体との接触部位において発汗が促される。そして、汗の主成分である塩化ナトリウム水溶液と有機ゲルマニウムとの酸化還元電位による微弱電流が発生し、その微弱電流が電気抵抗の低い部分に流れる。このため、皮膚表面の電気抵抗が低く、耳ツボが存在する位置における皮膚表面に成形体が接触すれば、微弱電流により耳ツボが刺激され、その結果、耳ツボに対応する患部の状態が改善する。
【0010】
成形体の大きさは直径
0.6〜1.2mm、厚さは0.3〜0.5mmである。
成形体の
形状は、上面と下面とが平坦であり、側面が外方に向けて膨らんだ略円柱形状である。
ホルンフェルス粉末と有機ゲルマニウム粉末との混合粉末に、さらにトルマリン等のように、熱することで電荷を帯びる物質を混在させてもよい。この場合、有機ゲルマニウムと汗とによる微弱電流だけでなく、トルマリン等から生じる電荷による電気刺激により、耳ツボを刺激し、耳ツボに対応する患部の状態がより改善することができる。また、ホルンフェルス粉末と有機ゲルマニウム粉末との混合粉末に磁性体を含ませ、磁気刺激による血流の改善を図るようにしてもよい。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
前記粘着シートは円形でその表面の中央部には、天然または人工のジュエリーが固着された請求項1に記載の耳ツボ用貼付治療具である。
【発明の効果】
【0012】
この発明の
耳ツボ用貼付治療具によれば、成形体に含まれるホルンフェルス粉末から発生する遠赤外線により、患部と成形体との接触部位において発汗が促される。そして、汗の主成分である塩化ナトリウム水溶液と有機ゲルマニウムとの酸化還元電位による微弱電流が発生し、その微弱電流が電気抵抗の低い部分に流れる。このため、皮膚表面の電気抵抗が低く、耳ツボが存在する位置に成形体が接触すれば、微弱電流により耳ツボが刺激され、その結果、耳ツボに対応する患部の状態が改善する。
【0013】
さらに、成形体の形状が単純であることから、耳ツボに対応する患部の状態が改善できる
耳ツボ用貼付治療具を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の実施例に係る
耳ツボ用貼付治療具を示す斜視図である。
【
図2】この発明の実施例に係る
耳ツボ用貼付治療具の成形体を示す斜視図である。
【
図3】この発明の実施例1に係る
耳ツボ用貼付治療具の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。ここでは、胃腸の調子を整える耳のツボ(「胃」)を刺激するための
耳ツボ用貼付治療具を例とする。
【実施例】
【0016】
図1および
図2において、この発明の実施例に係る
耳ツボ用貼付治療具10は、皮膚と接触することで発汗を促す成形体11が、粘着シート12の粘着面12bの一部分に貼着されたものである。
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
【0017】
成形体11は、天照石粉末、有機ゲルマニウム粉末、セルロース系硬化剤を混合した混合粉末を押し固めて成形したものである。
天照石粉末は、宮崎県の高千穂地方で採掘される天照石を粉砕したものを用いる。天照石粉末の重量は、成形体全体の重量の15%である。
有機ゲルマニウム粉末は、水溶性のものを用い、この実施例においては株式会社神戸メディケアが販売するゲルマニウム商品(成分名:ビス(2−カルボキシエチルゲルマニウム)セスキオキシド)を採用した。有機ゲルマニウム粉末の重量は、成形体全体の重量の50%である。
天照石と有機ゲルマニウム粉末とセルロース系硬化剤とを混合した後に、必要量を採取し、押し固めて、成形する。
図2に示すように、成形体11は、粘着シートに貼付したとき、上面(皮膚接触面11a)と下面(粘着面に接触する面11b)が平坦な平行面であり、側面が外方に向けて膨らんだ略円柱形状である。すなわち、成形体11の高さ方向と
直交する方向に切断した場合、円形である切断面の直径が側面の高さ方向の中央に近づくにつれ徐々に長くなるように、成形体11が形成されている。つまり、成形体11の高さ方向の中央に近づくにつれ徐々に膨らみ量が多くなっている。
成形体11の最大直径は0.8〜1.2mm、最小直径が0.6〜1.0mm、厚さは0.3〜0.5mmである。
【0018】
粘着シート12は、特殊ポリエチレン製の厚さ300μm、直径3mmの円形の基材シート12aの裏面に、耐水性を有したアクリル系粘着剤(アクリル酸エステル重合体)からなる粘着層を積層したものである。この粘着層の露出面(外面)が、粘着シート12の粘着面12bとなる。粘着面12bの中央部には、前記成形体11が貼着されている。
なお、貼付治療具10のデザイン性を高めるため、基材シート12の表面の中央部に、天然または人工のジュエリーを固着してもよい。
【0019】
貼付治療具10は、平面視して矩形状の1枚の大判の剥離紙(クラフト紙)の表面に、縦横一定ピッチの格子配列で複数枚が貼着されている。
【0020】
次に、
図3を参照して、この発明の実施例に係る貼付治療具10の使用方法を説明する。
剥離紙より剥がした1つの貼付治療具10を、胃腸の調子を整える耳のツボの一つである胃に貼着する。これにより、成形体11の皮膚接触面11aが皮膚に接触し、成形体11に含まれる天照石粉末から放射される遠赤外線が耳の貼着部位に作用し、当該部位に発汗が促される。そして、汗の主成分である塩化ナトリウム水溶液と有機ゲルマニウムとの酸化還元電位による微弱電流が発生し、その微弱電流が電気抵抗の低い部分に流れる。
【0021】
胃腸の調子が優れないとき、胃腸の調子を整える耳のツボの一つである胃が存在する皮膚表面の電気抵抗は低い。このため、この発明の実施例に係る貼付治療具10を胃が存在する位置における皮膚表面に貼付することで胃が微弱電流により刺激される。これにより、胃腸の調子を整えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明の
耳ツボ用貼付治療具は、ツボ押しによる機能改善効果が得られる疾患等の治療用具の技術として有用である。
【符号の説明】
【0023】
10
耳ツボ用貼付治療具、
11 成形体、
12 粘着シート、
12b 粘着面。